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JP4191889B2 - ポリアクリロニトリル系炭素化体の製造方法 - Google Patents
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
ポリアクリロニトリルを不炎化処理する技術は、これまで繊維の形態で不炎化繊維として取り組まれている。
【0002】
その得られた不炎化繊維はまた、炭素繊維を製造する中間体として位置付けられ、不炎化繊維を更に焼成することより高性能な炭素繊維を得る目的で技術展開がなされて来た。
【0003】
なお、本願明細書において、不炎化処理とは、当該対象に自己消火性を付与する処理を意味し、通常、酸化、環化、架橋化等の各種の化学反応が関与する。また、このような自己消化性を有する物を不炎化体という。
【0004】
これまで取り組まれてきた炭素化繊維を製造する技術としては、例えば、特開平5−339813号公報には、ポリアクリロニトリルのみからなるホモポリマーでは、酸化、環化および架橋化反応が遅いためにアクリル酸などのカルボン酸基含有ビニルモノマーを共重合させて反応を促進させ効率的に不炎化繊維を得る方法が記載されている。
【0005】
しかしながら、酸化反応には酸素あるいは空気を必要としており、依然300℃に近い高温が必要とされているし、アクリロニトリル以外の共重合成分により、繊維としての物性や、後の炭素繊維の物性に悪影響を及ぼすことが懸念されている。
【0006】
更には、酸素や空気の存在下での反応を必須とするために、後の炭素繊維化での収率を下げる要因になっている。
【0007】
上記と同様な目的で例えば、Carbon Vol.29,No.8,pp.1081−1090(1991)には、ポリアクリロニトリルに塩基性物質や求核剤を環化助剤として処理せしめ環化を促進する方法が紹介されている。
【0008】
例えば、J.Mats.Sci.Letts.7,pp.628(1988)には、過マンガン酸カリウム水溶液でポリアクリロニトリル繊維を処理し環化を促進することが報告されている。
【0009】
しかしながら、実用に到る効果的な方法が見出されていないのが実状である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本願発明の目的は、効率的にアクリロニトリル樹脂の炭素化体を製造する方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
我々は、ポリアクリロニトリルの不炎化、炭素化の一連の検討の中で、上記のような課題に対して鋭意検討した結果、まず、ポリアクリロニトリルのホモポリマーをヨウ素ガスと接触させ、低い温度条件下においてすみやかに不炎化できる方法を見出した。更に該不炎化体を焼成することにより従来の炭素化体製造方法には無い特徴として炭化収率が高いことを見出し、本願発明に到った。
【0012】
すなわち本願発明は、下記の通り、ポリアクリロニトリル樹脂をヨウ素ガスと接触させることを特徴とするポリアクリロニトリル系炭素化体の製造方法である。
【0013】
1. ポリアクリロニトリル樹脂をヨウ素ガスと接触せしめ不炎化体とした後、300〜3000℃の不活性ガスの雰囲気内で焼成することを特徴とするポリアクリロニトリル系炭素化体の製造方法。
【0014】
2. ポリアクリロニトリル樹脂中のアクリロニトリルモノマー成分が80〜100モル%であることを特徴とする上記1記載のポリアクリロニトリル系炭素化体の製造方法。
【0015】
3. ポリアクリロニトリル樹脂の形態が繊維状であることを特徴とする上記1または2記載のポリアクリロニトリル系炭素化体の製造方法。
【0016】
4. ポリアクリロニトリル樹脂の形態がフィルム状であることを特徴とする上記1または2記載のポリアクリロニトリル系炭素化体の製造方法。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に本願発明を詳述する。
【0018】
本願発明においては、まず、ポリアクリロニトリル樹脂をヨウ素ガス中に存在せしめて不炎化処理することによって、炭素化体の前駆体である不炎化体を低温で効率よく製造することができる。
【0019】
本願発明に用いられるポリアクリロニトリル樹脂は、公知の方法で調製される、アクリロニトリルモノマー成分が80〜100モル%からなるポリマーを用いることができる。
【0020】
また、従来技術の酸化促進効果を持たせるためにアクリロニトリルモノマー以外に他のモノマーを20〜0モル%を共重合せしめて得られる共重合ポリアクリロニトリルも用いることができる。
【0021】
好ましくはアクリロニトリル100モル%から重合せしめて調製されるポリアクリロニトリル樹脂である。
【0022】
本願発明においては、上記ポリアクリロニトリル樹脂をヨウ素ガスと接触処理する。
【0023】
本願発明に用いられるヨウ素ガスは、公知の方法で調製されるガスを用いることができるが、純度の高いヨウ素を用いることが望ましい。
【0024】
純度が低いと目的の不炎化体が得られなくなったり、不炎化体の力学物性が低下するため、好ましくない。好ましくは99重量%以上、より好ましくは99.5重量%以上、更に好ましくは99.9重量%以上の純度のヨウ素を使用する。
【0025】
固体ヨウ素は、加熱することによりガス化せしめポリアクリロニトリル樹脂が存在する系内へ導入することが望ましい。
【0026】
以下、ポリアクリロニトリル樹脂をヨウ素ガスにて処理する条件を詳述する。
【0027】
不炎化処理の温度条件としては、0〜500℃の温度条件が好ましい。温度がこの範囲を外れると、目的の不炎化体が得られなくなったり、不炎化体の力学物性が低下するため好ましくない。より好ましくは100〜450℃の範囲である。更に好ましくは200〜400℃の範囲である。
【0028】
ヨウ素ガスは、不活性ガス、酸素、空気などとの混合ガスの状態で用いても何ら問題はないが、その際にはヨウ素ガス濃度を気体全体のモル量に対して、1〜100モル%の間に保つことが好ましい。濃度がこの範囲を外れると、目的の不炎化体が得られなくなったり、不炎化体の力学物性が低下するため好ましくない。
【0029】
また、その際の圧力条件としては、用いる混合ガスの種類にもよるが、実質的には、全圧として1Pa〜100MPaの範囲である。接触時間は特に制限はないが、好ましくは1秒から10時間である。
【0030】
なお、上記温度は、ポリアクリロニトリル樹脂とガスとの双方の温度を意味するが、両者が同一である必要はなく、また、たとえば一方の温度が両者の接触前に好ましい温度範囲を逸脱していても、両者の接触の結果、好ましい温度範囲に入れば十分である。むしろ、たとえば一方の温度が両者の接触前に好ましい温度範囲を逸脱していても両者の接触の結果、不炎化体が得られれば、好ましい温度範囲に入ったものと推察することができる。故に、加熱されたヨウ素ガスを加熱されていないポリアクリロニトリルと接触させることによって、優れた不炎化体を得ることも可能である。
【0031】
本願発明では、上記のようにして得られたポリアクリロニトリル不炎化体を300〜3000℃の不活性ガスが充填された雰囲気内で焼成することにより、炭素化体を得る。
【0032】
焼成温度は、300〜3000℃が好ましい。より好ましくは400〜2900℃、更に好ましくは500〜2800℃の範囲である。また昇温の方法は、段階的に上げても、連続的に上げても何ら問題が無い。なお、より均一な炭素化体を得るには連続的に上げた方が好ましい場合が多い。
【0033】
目的とする炭素化体の形態が繊維の場合には、昇温の際に引張応力を作用させて収縮あるいは伸張の具合を制御することは、何ら問題無く行うことができる。
【0034】
焼成に用いる不活性ガスとしては、アルゴン,窒素などを用いることが好ましい。
【0035】
本願発明の炭素化体の製造における形態には制限はないが、本願発明は、形態が繊維状あるいはフィルム状のポリアクリロニトリル系炭素化体を得るための製造方法として有用である。
【0036】
すなわち、ポリアクリロニトリル樹脂を一度可溶性の有機溶媒に溶解せしめたのち、繊維状、フィルム状あるいは他の形態に成形せしめ、これをヨウ素ガス処理することで、目的の繊維状あるいはフィルム状の炭素化体を得ることができる。
【0037】
用いる有機溶媒としては、ポリアクリロニトリルが可溶であれば特に制限はないが、以下に挙げる有機溶媒、すなわち、ハロゲン化炭化水素、非プロトン性極性溶媒を好ましく用いることができる。1,1,2,2−テトラクロロエタン、クロロホルム、ジメチルクロライド、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドがより好ましく、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドがさらに好ましい。
【0038】
【発明の効果】
本願発明によれば、まず、ポリアクリロニトリル樹脂をヨウ素ガスと接触させることによって、低温においても効率的に不炎化体を得ることができる。
【0039】
これは、ヨウ素ガスが、ポリアクリロニトリル樹脂を速やかに酸化、環化および架橋化反応を進行せしめているからと考えられる。
【0040】
更に、得られたポリアクリロニトリル不炎化体を経て焼成して得られた炭素化体は、従来の方法に比べて炭化収率が高く、強度的に優れた炭素繊維が安定して得られ、プリプレグ、複合材料へ展開することによって従来より機械的強度に優れた製品を安価に得ることができる。
【0041】
【実施例】
以下に本願発明の実施例を詳述する。ただし、本願発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
<燃焼試験>
ガスバーナーの炎を2センチ大の大きさに調整し、そこへ切り取った不炎化体試験サンプルをピンセットで挟んで、炎に近づける。
【0043】
炎が試験サンプルに燃え移ったことを確認した後、炎からサンプルを遠ざけ、その後の様子を観察し、自然に炎が消え、自己消火性を示した場合は「○」とし、遠ざけてもそのまま炎が燃えつづける場合を「×」とした。
【0044】
ポリアクリロニトリル樹脂は、アルドリッチ社製のものを使用した。
【0045】
ヨウ素は、関東化学製のもの(純度99.8重量%)を、昇華精製等で精製して使用した。
【0046】
<炭化収率>
不炎化処理に至る前の乾燥処理したポリアクリロニトリル樹脂の重量に対する焼成後に得られた炭素化体の重量を「炭化収率」として100分率で示した。
【0047】
[参考例1]
ポリアクリロニトリル粉末34Kgを、N−メチルピロリドン166Kgに溶解させ、17重量%の溶液を調製した。得られた溶液を湿式紡糸し、単糸0.11テックス,繊維束333テックスのポリアクリロニトリル繊維を得た。
【0048】
[参考例2]
ポリアクリロニトリル粉末34gを、N−メチルピロリドン166gに溶解させ、17重量%の溶液を調製した。得られた溶液をフィルムキャスト法により製膜し、乾燥させることにより、厚さ50μmのポリアクリロニトリルフィルムを得た。
【0049】
[実施例1,2]
参考例1,2で得られたポリアクリロニトリル繊維およびフィルムをそれぞれ耐圧ガラス瓶(容量420mL)の中に入れ、固体ヨウ素1.066gを入れた後、窒素置換をして密閉した。その耐圧瓶ごと200℃の熱風乾燥機の中に入れ,2時間後、取りだし放冷した。
【0050】
取り出したサンプルを、燃焼試験を行った結果、いずれの繊維、フィルムも自己消火性を示した不炎化体であった。
【0051】
上記で得られた不炎化体について、窒素ガス流量100mL/分で充填された焼成炉(シリコニット製電気炉「1800SpUSH」)内で700℃,次いで1300℃の条件で段階的に焼成し、それぞれの焼成後に得られた炭素化体の結果を表1にまとめた。
【0052】
[実施例3,4]
200℃,2時間の条件に代えて、250℃,1時間とした以外は実施例1,2と同様な処置を行った。それぞれの焼成後に得られた炭素化体の結果を表1にまとめた。
【0053】
[比較例1,2]
参考例1,2で得られたポリアクリロニトリル繊維およびフィルムを、それぞれそのまま(すなわち固体ヨウ素を入れ、窒素置換をするという操作をせずに)200℃の熱風乾燥機の中に入れた以外は実施例1,2と同様な処置を行った。それぞれの焼成後に得られた炭素化体の結果を表1にまとめた。
【0054】
[比較例3,4]
参考例1,2で得られたポリアクリロニトリル繊維およびフィルムをそれぞれ耐圧ガラス瓶(容量420mL)の中に入れ、固体ヨウ素を入れずに窒素置換をして密閉した以外は実施例1,2と同様な処置を行った。それぞれの焼成後に得られた炭素化体の結果を表1にまとめた。
【0055】
[比較例5,6]
参考例1,2で得られたポリアクリロニトリル繊維およびフィルムを、それぞれそのまま(すなわち固体ヨウ素を入れ、窒素置換をするという操作をせずに)250℃の熱風乾燥機の中に入れた以外は実施例1,2と同様な処置を行った。それぞれの焼成後に得られた炭素化体の結果を表1にまとめた。
【0056】
なお、表の炭化収率の欄中、「−」は、燃焼試験により、耐炎化が不十分であるために、後に炭化処理を行っても、断糸、破断などが起こるため炭化収率の測定が不可能であったことを意味する。
【0057】
【表1】
Figure 0004191889

Claims (4)

  1. ポリアクリロニトリル樹脂を酸素の非存在下ヨウ素ガスと接触せしめ不炎化体とした後、300〜3000℃の不活性ガスの雰囲気内で焼成することを特徴とするポリアクリロニトリル系炭素化体の製造方法。
  2. ポリアクリロニトリル樹脂中のアクリロニトリルモノマー成分が80〜100モル%であることを特徴とする請求項1記載のポリアクリロニトリル系炭素化体の製造方法。
  3. ポリアクリロニトリル樹脂の形態が繊維状であることを特徴とする請求項1または2記載のポリアクリロニトリル系炭素化体の製造方法。
  4. ポリアクリロニトリル樹脂の形態がフィルム状であることを特徴とする請求項1または2記載のポリアクリロニトリル系炭素化体の製造方法。
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