JP4192230B2 - 鋳鉄の非破壊評価方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、渦電流を利用して、フェライト基地若しくはパーライト基地の判定又はフェライト/パーライト率の同定を正確に測定できる鋳鉄の非破壊評価方法及び非破壊評価装置に関する。
なお、本明細書で使用する「非破壊評価」は、通常単なる傷又は欠陥等の存在を検知する意味で使用されている非破壊検査又は探傷という意味だけでなく、鋳鉄固有の組織の量的割合を測定する意味において使用する。
したがって、「非破壊評価」は非破壊検査又は探傷を含む概念で使用するものであり、検査又は探傷のみを目的とする場合には、非破壊検査又は探傷という言葉に置換えることもできる。
【0002】
【従来の技術】
鋳鉄は、自動車(ガソリン車)用エンジン・部品、船舶用又は車両用ジーゼルエンジン、産業機械などの構造用材料として広く使用されている。
鋳鉄は、内部の黒鉛の形状から大きくねずみ鋳鉄(片状黒鉛鋳鉄)と球状黒鉛鋳鉄の2つに分けられる。前者は内部に片状黒鉛を多数含み、これが内部切り欠きとして作用し、一般に低強度で強度にばらつきを示す信頼性の低い材料である。しかし、鋳造性はよく、バランスのとれた工業的性質を持つため、広く鋳造材として使用されている一般向け材料である。
これに対して、後者は片状黒鉛を球状化したものであり、高強度かつ高靭性を示す。
【0003】
鋳鉄のマトリックスとなる基地の種類は、完全なパーライト地から完全なフェライト地があり、およその地の比率は製造条件により変えることができる。
一方のフェライト基地は、延性に優れ、鋳鉄材料の靭性を向上させるが、強度を低下させるという性質がある。他方、パーライト基地は硬く、鋳鉄材料の強度を上昇させるが、靭性を低下させるというフェライトとは反対の性質をもつ。
前記球状黒鉛又は片状黒鉛という黒鉛の形状とともに、鋳鉄中のフェライト基地とパーライト基地の面積比率は鋳鉄の機械的な性質を決める重要なパラメータである。
鋳鉄には、さらに製造過程で急冷される箇所に大きなセメンタイトFe3C組織が発生する場合がある。このセメンタイト組織は、鋳鉄組織の中で最も硬くて脆くて割れやすい性質がある。従って、一般に強度の高い構造部材用鋳鉄には、チル化組織があれば不良品として扱われる。
【0004】
一般に製造工程が同一であれば殆ど同じ製品ができるものであるが、鋳造品の場合は、その製造上の性格から、かなり変動がある。このため、鋳造品は工程の管理を厳密にすると同時に、材質や欠陥存否の検査が重要である。
しかし、現在鋳造品の材質、欠陥に関する包括的な非破壊評価は確立しておらず、破壊試験に頼っているのが現状である。
以上から、鋳造品の製造法改良、品質保証、供用中検査を真の意味で実現するためには、簡便かつ信頼性のある非破壊評価手法を確立する必要がある。
このような中で、超音波鋳鉄評価を中心に鋳造欠陥検査および材質評価の技術開発が行われており、引張り強度と関係する黒鉛球状化率の評価は可能となった。
しかし、強度及び靭性に関係するフェライト/パーライト率、チル化組織の有無の評価については全く解決されていない。また、超音波試験による欠陥検出では、表面近傍の深さ5mm以内が不感帯となり、これも問題となっている。
ドイツにて開発されている電磁的手法として、高調波法に基づく磁性測定により鉄鋼材料の硬さを推定するものがある。しかし、このシステムは複雑であり、また取得できる情報は磁性に関係する材質に限定されている。
【0005】
このように、フェライト/パーライト率、チル化組織の有無に関する非破壊評価手法が確立していない現在、材質や機械特性を調べるためには切出し及び研磨による顕微鏡観察、押込み式の硬さ試験、引張り試験等を実施しなければならない。これらの試験は、製品を切断する、或いは製品に圧痕を残すといった破壊試験である。
従って、現状の検査技術では、多くの費用と労力を必要とするばかりでなく、実製品の全数検査が原理的に不可能であるという課題があり、非破壊評価手法の確立が待たれている。
一方、製品のフェライト/パーライト率、チル化組織の分布が非破壊で容易に把握できれば、製品結果を設計に容易に反映させることも可能である。材質評価が簡便に行うことが出来ない現在、鋳造品製造過程において材質をコントロールあるいは改良することは非常に難しい。
簡便な非破壊評価はこれまで難しかった製造過程へのフィードバックを容易にし、製造方法を最適化することが可能である。例えば、鋳鉄の軽量化といった製品の高性能化につながるものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、渦電流を利用して、フェライト基地若しくはパーライト基地の判定又はフェライト/パーライト率の同定を正確に測定し、従来の非破壊評価の弱点を解決できる鋳鉄の非破壊評価方法及び非破壊評価装置を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を行った結果、渦電流の渦電流信号により検出することにより、フェライト基地若しくはパーライト基地の判定又はフェライト/パーライト率の同定を、より正確に測定できるとの知見を得た。
本発明はこの知見に基づき、
1.被検査体である鋳鉄のフェライト・パーライト相の電磁的性質の差異に基づいてフェライト基地若しくはパーライト基地の判定又はフェライト/パーライト率の同定を、それぞれ渦電流によるインピーダンスの変化、誘導起電力又は磁束密度の電磁気的情報を渦電流信号として検出し、当該渦電流を用いて鋳鉄の非破壊評価を行うに際して、被検査体である鋳鉄とプローブ間の距離及び10kHzから1MHzの間でコイル励起周波数を調節することにより被検査体である鋳鉄に渦電流を誘起させると共に、誘起した渦電流を検出し、この渦電流信号に基づいて検量線を求め、この検量線との対比から新たな被検査体である鋳鉄のフェライト基地若しくはパーライト基地の判定又はフェライト/パーライト率の同定を行うことを特徴とする鋳鉄の非破壊評価方法
2.2個以上のプローブを用いて複数の周波数により測定することを特徴とする上記1記載の渦電流を用いた鋳鉄の非破壊評価方法
3.多数の鋳鉄のフェライト/パーライト率と渦電流信号との相関を調べた検量線をデータ−ベースとして保存するとともに、個々の鋳鉄の渦電流による渦電流信号を測定して、前記保存されたデータ−ベースの検量線との対比から、鋳鉄のチル化組織の有無若しくは量又はフェライト/パーライトの有無若しくは量を決定することを特徴とする上記1又は2記載の渦電流を用いた鋳鉄の非破壊評価方法
4.パーライト率と硬度、引張強さ又は靭性との相関から、鋳鉄の硬さ、引張強さ又は靭性を求めることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の渦電流を用いた鋳鉄の非破壊評価方法
5.一方で超音波により鋳鉄内の黒鉛形状である球状化率を測定するとともに、他方でフェライト/パーライト率を測定することにより、鋳鉄の引張強さ、硬さ又は靭性を求めることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の鋳鉄の非破壊評価方法、を提供する。
【0008】
本発明は、また
6.上記1〜5のいずれかに記載する鋳鉄の非破壊評価方法に用いる渦電流を用いた鋳鉄の非破壊評価装置であって、プローブを被検査体である鋳鉄に、リフトオフ調節可能に配置したことを特徴とする渦電流を用いた鋳鉄の非破壊評価装置
7.2個以上のプローブを備え、複数の周波数により測定することを特徴とする上記6記載の渦電流を用いた鋳鉄の非破壊評価装置
8.2個以上のプローブが、被検査体に対してタンデムに配置されていることを特徴とする上記7記載の渦電流を用いた鋳鉄の非破壊評価装置、を提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は、プローブに高周波の交流電流を流すことにより、被検査体である鋳鉄に渦電流を誘起させる。この渦電流の電磁気的情報は、コイルのインピーダンス(変化の)信号、誘導起電力、磁束密度等の渦電流信号として取得できる。
例えば、コイルのインピーダンスZについては、直流抵抗R、インダクタンスL、及び交流の各周波数ωによって複素数として、L=R+JωLと表される。
この電磁気的情報の中には、被検査体の形状、導電率及び透磁率が含まれるが、プローブと被検査体間の距離及びコイル励磁周波数を変化させることにより、導電率、透磁率を求めることができる。フェライト相、パーライト相の電磁的性質が異なるので、鋳鉄のフェライト/パーライト率を知ることができる。
具体的には、鋳鉄の被検査体に近接させてプローブを配置し、該プローブに高周波の交流電流を流すことにより被検査体に渦電流を誘起させ、この渦電流の電磁気的情報を渦電流信号として検出する。
【0010】
被検査体とプローブ間の距離又はコイル励起周波数を変化させることにより、より正確に導電率及び透磁率を求めることができる。
従来、金属の非破壊検査における渦電流を利用したものとして、渦電流探傷装置があり、試験品の欠陥が試験コイルに入った場合にブリッジのバランスが崩れ、欠陥によるコイルのインピーダンス変化に応じた出力を利用して、傷の探査を行う手法が知られている。
プローブのインピーダンス変化を利用している意味では、原理的には本発明に類似している。しかし、これが鋳鉄のフェライト基地若しくはパーライト基地の判定又はフェライト/パーライト率の同定を求める手段として用いることができるということは、全く知られていなかった。
【0011】
本発明においては、様々な組成のパーライト率と渦電流信号を測定することにより図1の結果を得ることができ、渦電流信号とパーライト率の相関を得た。
さらに、同一組成の鋳鉄試料でパーライト率を変えて測定したところ、図2の結果を得ることができた。
これによって、一定組成の鋳鉄では渦電流信号(コイルのインピーダンス信号等)が、パーライト率に比例して上昇するという検量線が求まることを確認した。
この検量線はプローブの形状、周波数、リフトオフ等に左右されるので、測定する条件に合わせて検量線を求める必要がある。
被検査体とコイルの間のリフトオフを変えることでリフトオフ曲線が得られ、これも併せて測定することにより、信頼性を向上させることができる。
【0012】
励磁に用いる交流電流の周波数は、通常10kHzから1MHzの間とし、複数の周波数で測定する。なお、必要に応じて上記周波数の範囲外でも使用できる。評価する際には複数の周波数で測定し、複数の検量線を求めることにより推定するフェライト/パーライト率の信頼性を上げることができる。
このように目的の鋳鉄の渦電流信号を測定し、多角的に検量線を求めパーライト率を推定することが可能となる。
検査された信頼性のある多数の鋳鉄のフェライト/パーライト率と渦電流信号との相関の検量線は、データ−ベースとして保存する。
一方、新たに測定の対象となった、被検査体である個々の鋳鉄の渦電流によるインピーダンス等の渦電流信号を測定し検量線を求め、これを前記保存されたデータ−ベースの検量線との対比から、該フェライト/パーライトの有無若しくは量等をより精度良く決定することができる。
【0013】
図3に示すように、鋳鉄においては渦電流信号とビッカース硬度との相関が知られており、図2の渦電流信号とパーライト率の相関から、パーライト率より硬度を求めることができる。他にパーライト率との相関からも同様に、引張強さや靭性を知ることができる。
また、一方で超音波により鋳鉄内の黒鉛形状である球状化率を測定するとともに、他方でフェライト/パーライト率を測定することにより、鋳鉄の引張強さ、硬さ又は靭性を求めることができる。
以上のようにして、本発明の非破壊評価法により、鋳鉄の硬さ、引張強さ、靭性等の機械的性質を総合的に求めることができる。
上記パーライト率の決定法及び球状黒鉛率、鋳鉄の硬さ、引張強さ、靭性等の機械的性質を総合的に求める手法の、一連のアルゴリズムを図5及び6に示す。
【0014】
本発明の渦電流を用いた鋳鉄の非破壊評価装置は、プローブを被検査体である鋳鉄に、リフトオフ調節可能に配置する。このプローブは通常1個で測定できるが、これを2個以上とし、複数の周波数により測定することができる。
さらに、これらの2個以上のプローブを被検査体に対してタンデムに配置することができる。図4は、その装置構造の一例であり、高周波の交流電流を流したコイルを導電性の試験体に上から近づける差分コイルを示す。
図4のコイル1に電流が流れることにより電磁誘導の現象によって被検査体である鋳鉄2の内部に誘導電流(渦電流)3が発生する。鋳鉄2に渦電流3が流れることによりコイル1に誘導電流が流れるので、このコイルに流れた電流のインピーダンス等の渦電流信号を測定する。
材料に近い方から検出された信号4と材料から遠いコイル5により拾った環境ノイズ6との差分を取り、目的の鋳鉄の渦電流信号とする。
【0015】
各々の鋳鉄の化学組成及びフェライト/パーライト率によって、特定の渦電流信号が検出され、それによって鋳鉄の材質を評価することができる。
渦電流信号を測定する方法としては、1個のコイルを用いた絶対値型プローブを使用する方法があり、上記のように2個以上のプローブを使用する場合には、励磁コイル及び検出コイル又は磁気センサーをそれぞれ1又は複数組み合わせて使用する方法がある。
非破壊被評価対象となる鋳鉄製品の形状、サイズ(大きさ)、組成、組織等の検査若しくは測定又は評価条件に応じて、適宜これらのプローブ設計し、採用することができる。本発明は、これらの全てを包含する。
【0016】
【発明の効果】
本発明は、従来は不能とされてきた鋳鉄のフェライト基地若しくはパーライト基地の判定又はフェライト/パーライト率の同定を非破壊評価により正確にかつ容易に得ることが可能となるという優れた効果を有する。
従来、製品を切断する又は製品に圧痕を残すといった破壊試験であったが、これを根本から改善することができ、多くの費用と労力を節約するばかりでなく、実製品の全数検査が原理的に可能であり、さらに製品のフェライト/パーライト率が非破壊評価により容易に把握できるので、製品結果を設計に容易に反映させ得るという著しい効果がある。
これによって、材質評価を簡便に行うことができ、鋳造品製造過程において材質をコントロールし又は改良すること、すなわち製造過程へのフィードバックを容易にし、製造方法を最適化することが可能となり、例えば、鋳鉄の軽量化といった製品の高性能化につながるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】複数の組成のパーライト率と渦電流信号との関係を示す図である。
【図2】パーライト率と渦電流信号の関係を示す図である。
【図3】パーライト率とビッカース硬度の相関を示す図である。
【図4】差分コイルを用いた渦電流によるフェライト/パーライト率及びチル化組織の分布を測定する装置の一例を示す説明図である。
【図5】渦電流信号によるパーライト率測定の工程説明図である。
【図6】渦電流信号によるパーライト率の特定と超音波による黒鉛形状の特定及びこれらによる引張強さ、硬さ、靭性の特定による鋳鉄の評価アルゴリズムを示す図である。
【符号の説明】
1 コイル
2 鋳鉄
3 誘導電流(渦電流)
4 検出された信号
5 材料から遠いコイル
6 環境ノイズ
Claims (8)
- 被検査体である鋳鉄のフェライト・パーライト相の電磁的性質の差異に基づいてフェライト基地若しくはパーライト基地の判定又はフェライト/パーライト率の同定を、それぞれ渦電流によるインピーダンスの変化、誘導起電力又は磁束密度の電磁気的情報を渦電流信号として検出し、当該渦電流を用いて鋳鉄の非破壊評価を行うに際して、被検査体である鋳鉄とプローブ間の距離及び10kHzから1MHzの間でコイル励起周波数を調節することにより被検査体である鋳鉄に渦電流を誘起させると共に、誘起した渦電流を検出し、この渦電流信号に基づいて検量線を求め、この検量線との対比から新たな被検査体である鋳鉄のフェライト基地若しくはパーライト基地の判定又はフェライト/パーライト率の同定を行うことを特徴とする鋳鉄の非破壊評価方法。
- 2個以上のプローブを用いて複数の周波数により測定することを特徴とする請求項1記載の渦電流を用いた鋳鉄の非破壊評価方法。
- 多数の鋳鉄のフェライト/パーライト率と渦電流信号との相関を調べた検量線をデータ−ベースとして保存するとともに、個々の鋳鉄の渦電流による渦電流信号を測定して、前記保存されたデータ−ベースの検量線との対比から、鋳鉄のチル化組織の有無若しくは量又はフェライト/パーライトの有無若しくは量を決定することを特徴とする請求項1又は2記載の渦電流を用いた鋳鉄の非破壊評価方法。
- パーライト率と硬度、引張強さ又は靭性との相関から、鋳鉄の硬さ、引張強さ又は靭性を求めることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の渦電流を用いた鋳鉄の非破壊評価方法。
- 一方で超音波により鋳鉄内の黒鉛形状である球状化率を測定するとともに、他方でフェライト/パーライト率を測定することにより、鋳鉄の引張強さ、硬さ又は靭性を求めることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の鋳鉄の非破壊評価方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載する鋳鉄の非破壊評価方法に用いる渦電流を用いた鋳鉄の非破壊評価装置であって、プローブを被検査体である鋳鉄に、リフトオフ調節可能に配置したことを特徴とする渦電流を用いた鋳鉄の非破壊評価装置。
- 2個以上のプローブを備え、複数の周波数により測定することを特徴とする請求項6記載の渦電流を用いた鋳鉄の非破壊評価装置。
- 2個以上のプローブが、被検査体に対してタンデムに配置されていることを特徴とする請求項7記載の渦電流を用いた鋳鉄の非破壊評価装置。
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| JP2002061397A JP4192230B2 (ja) | 2002-03-07 | 2002-03-07 | 鋳鉄の非破壊評価方法及び装置 |
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