JP4193393B2 - 駆動力配分制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、駆動力配分制御装置にかかり、特に、前輪及び後輪のうちいずれか一方を直接駆動輪とすると共に他方を副駆動輪とする四輪駆動車に備えられ、直接駆動輪と副駆動輪との回転速度差と四輪駆動車自体の駆動トルクとに基づいた所定の伝達トルクを、副駆動輪に伝達するよう制御する駆動力配分制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、車両の前後輪のうちいずれか一方(例えば前輪)が直接駆動で、他方(例えば後輪)がトルク配分用クラッチを介して駆動力が伝達されることにより駆動するという副駆動輪である四輪駆動車が知られている。この場合に、トルク配分用クラッチは、電子制御可能なクラッチ等によって構成される駆動力配分器であって、この配分器のクラッチ締結力を駆動力配分制御装置が制御することにより、前輪と後輪との間の動力配分を調整するようになっている。例えば、特開昭61−157437号公報に開示されている。
【0003】
具体的には、上記のようなの駆動力配分制御装置は、前輪と後輪の回転速度差に応じ、エンジンよって直接的に駆動される駆動輪(FFベース車では前輪,FR車ベースでは後輪)と駆動力配分器を介してエンジンに接続された副駆動輪(FFベース車では後輪,FRベース車では前輪)との間の動力配分を調整するものである。そして、当該装置は、一般に、回転速度差が小さい場合にはクラッチの締結力を小さく、回転速度差が大きい場合には大きくとるよう制御することにより、前者の場合には副駆動輪へ少なめに、また、後者の場合には副駆動輪へ多めに駆動力が配分されるようになる。このように、四輪駆動側に駆動力配分を変更することで、直接駆動輪のスリップを防止するよう制御するというものである。
【0004】
しかし、上述した従来における制御装置は、回転速度差に対応してクラッチの締結力を制御するため、前後輪の回転速度差が生じている場合しか副駆動輪に駆動力が伝わらない。その結果、回転速度差が生じていない状況下では副駆動輪に駆動力が伝達されず、四輪駆動車として十分な牽引力を発揮できない。逆に、副駆動輪に駆動力配分されて四輪駆動の状態であるほど回転速度差が多いということになるが、かかる状態では、直接駆動輪側のスリップが大きくなり、その結果駆動力が低下してしまい、牽引力や旋回性能等で四輪駆動の性能を十分に発揮できないという問題が生じていた。
【0005】
そして、旋回性能を改善する方法としては、特開昭63−141831号公報に記載されているような装置がある。この装置は、まず、横加速度により路面状態を間接的に判定し、同時に旋回状態を判定する。そして、横加速度が大きい時はクラッチ締結力の増大割合を小さく、横加速度が小さい時はクラッチ締結力の増大割合を大きくすることにより、後輪が直接駆動輪である車両の旋回性能を向上させている。例えば、横加速度が大きい場含は、高μ路であるので、後輪の駆動力割含を増大させ、パワードリフト走行が行える。横加速度が小さい場含は低μ路の可能性があり、前輪へのトルク配分を増大させ、走行安定性を確保する。
【0006】
しかし、上記のような装置は、横加速度を検出するためのセンサが必要となり製造コストが増大するという不都合が生じる。特に、前輪が直接駆動輪である場含には、二輪駆動でアンダーステアである特性を四輪駆動でニュ一トラルステアに近づける程度の旋回特性の変化に留まり、このような車両ではパワードリフト走行は要求されない。したがって、特に前輪が直接駆動輪である車両においては、上記手法のメリットが少なく、より製造コストの面で不利となるという問題が生じていた。
【0007】
そこで、上述した問題を解決するために、前後輪の一方は直接駆動輪で、他方はトルク配分用クラッチを介して駆動力が伝達される副駆動輪である4輪駆動車において、少なくとも前後輪の回転速度差に基づく制御量(回転差成分)と、駆動トルクに基づく制御量(トルク成分)とを加算してトルク配分用クラッチの伝達トルクを算出し、この値に応じてクラッチの締結力を制御するようにすることが考えられる。このとき、上記前後輪の回転速度差を検出するにはABS用の車輪速センサの信号を用いて、左右の前輪車輪速の平均を前輪車輪速、左右の後輪車輪速の平均を後輪車輪速とし、それら平均値の差を前後輪の回転速度差としている。これにより、既存の装置を用いることにより、製造コストの低減を図ることができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したように前後輪の回転速度差と駆動トルクとに基づく伝達トルクを算出して駆動力を配分制御する場合であっても、上記回転速度差や駆動トルクを算出するために必要な情報を取得することができない場合、例えば、各種センサが故障等おこした場合には、車両情報が得られず、現在の車両状態に応じた適切なトルク配分制御を実行することができない。従って、四輪駆動車としての機能を十分に発揮することができないという問題が生じる。かかる場合に、クラッチの伝達トルクを零とすれは上記のような問題はないが、副駆動輪に駆動力が伝達されないため、四輪駆動車としての性能が全く発揮できず、上記の問題はさらに顕著なものとなる。
【0009】
【発明の目的】
本発明は、上記従来例の有する不都合を改善し、特に、四輪駆動車において四輪駆動としての性能を維持しつつ、副駆動輪に安定して適切な駆動力を配分することができる駆動力配分制御装置を提供することをその目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明では、直接駆動輪と副駆動輪との回転速度差を算出する回転速度差演算手段と、副駆動輪に伝達される伝達トルクのうち回転速度差の値に対応して設定されるトルク量である回転差成分を算出する回転差成分算出手段と、四輪駆動車自体の駆動トルクを算出する駆動トルク演算手段と、副駆動輪に伝達される伝達トルクのうち前記駆動トルクの値に対応して設定されるトルク量であるトルク成分を算出するトルク成分算出手段と、回転差成分とトルク成分とを加算して伝達トルクを算出すると共に当該伝達トルクに対応する制御信号をトルク配分制御クラッチに出力する配分制御手段とを備えている。そして、前記回転速度差演算手段が、前記回転速度差を算出するために必要な信号を読み取り当該信号が異常であることを検出する第1の異常検出手段を備え、
前記駆動トルク演算手段が、前記駆動トルクを算出するために必要な信号を読み取り当該信号が異常であることを検出する第2の異常検出手段を備え、
前記第1の異常検出手段により前記回転速度差算出用信号が異常であると検出されたときに、前記回転差成分算出手段は前記回転差成分をほぼ零の値に設定すると共に、前記トルク成分算出手段は前記算出されたトルク成分の値を増大するよう補正する機能を備え、
前記第2の異常検出手段により前記駆動トルク算出用信号が異常であると検出されたときに、前記トルク成分算出手段は前記トルク成分をほぼ零の値に設定すると共に、前記回転差成分算出手段が前記回転差成分の値を増大補正する機能を備えた、という構成を採っている(請求項1)。
【0011】
このような構成にすることにより、まず、左右一対の車輪からなる直接駆動輪(例えば前輪)及び副駆動輪(例えば後輪)の回転速度が算出され、各回転速度の差が算出される。続いて、副駆動輪に伝達される伝達トルクの一部である回転速度差に対応した回転差成分が算出される。また、一方で、エンジンからの所定の情報から四輪駆動車自体に発生する駆動トルクが算出される。そして、副駆動輪に伝達される伝達トルクの一部である駆動トルクに対応したトルク成分が算出される。このとき、上述した回転速度差を算出するための信号を検出できないなどの異常が検出された場合には、回転差成分算出手段は回転差成分をほぼ零の値に設定すると共に、トルク成分算出手段は前記算出されたトルク成分の値を増大するように補正する。また、駆動トルク算出用信号が異常であると検出されたときには、トルク成分算出手段はトルク成分をほぼ零の値に設定すると共に、回転差成分算出手段が回転差成分の値を増大補正する。その後、回転差成分とトルク成分とが加算されて伝達トルクとなり、かかる値に基づいてトルク配分制御クラッチの締結力が制御される。
【0012】
つまり、前後輪の回転速度差を算出するために必要な信号を検出することができず、当該回転速度差に基づく回転差成分の正常な値が算出できない場合には、当該回転差成分がほぼ零の値に設定され、この設定された回転差成分と増大補正されたトルク成分とが加算されて伝達トルクが算出されるため、当該伝達トルクが副駆動輪に伝達されるよう制御されることとなる。その結果、正常でない回転差成分にてトルク配分制御が行われることにより不安定な制御が実行されることが抑制されると共に、当該回転差成分に増大補正されたトルク成分の値が補填されるため、伝達トルクの減少が抑制され、四輪駆動車の四輪駆動性能の低下を抑制することができる。
【0013】
一方、駆動トルクを算出するための信号のみが検出されない場合にあっては、当該異常が検出された信号の替わりにあらかじめ定められた値(ほぼ零)が用いられるため、所定の値を有する仮のトルク成分を算出することができる。このとき、正常に算出することができる回転差成分を増大補正することにより、トルク成分を補完することができ、四輪駆動車の四輪駆動性能の低下を抑制することができる。
【0015】
さらに、駆動トルク算出用信号が異常であると検出されたときに当該信号の値をあらかじめ定められたバックアップ値に設定して駆動トルクを算出する機能を備えることが望ましい(請求項2)。
【0016】
これにより、駆動トルクを算出するための信号を検出することができない場合であっても、かかる信号にあらかじめ定められた値を代入することで、かかる代入値に基づいて駆動トルクが算出され、そして、トルク成分を算出することができる。従って、回転差成分及びトルク成分を算出するために必要な信号をすべて検出することができない場合であっても、少なくともトルク成分を算出することができるため、所定の値の伝達トルクを算出することができ、四輪駆動車の四輪駆動性能の低下を抑制することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
〈一実施形態〉
以下、本発明の一実施形態を、図1乃至図7を参照して説明する。図1は、本発明である駆動力配分制御装置が備えられた四輪駆動車の構成を示すブロック図である。図2は、駆動力配分制御装置の構成を示す機能ブロック図である。図3乃至図5は、駆動力配分制御装置の動作を示すフローチャートである。図6乃至図7は、伝達トルクを算出するときに用いられるデータである。
【0024】
(全体構成)
図1に示すように、本発明である駆動力配分制御装置1は、左右一対の車輪TF1,TF2,TR1,TR2からなる前輪TF1,TF2あるいは後輪TR1,TR2のうち、いずれか一方を直接駆動輪とすると共に他方を副駆動輪とする四輪駆動車に備えられている。ちなみに、本実施形態では、説明上、前輪を直接駆動輪TF1,TF2とし、後輪を副駆動輪TR1,TR2とする。すなわち、四輪駆動車は、FFベースの車両であるものとする。但し、これに限定されず、上記の逆、すなわち、後輪が直接駆動輪、前輪が副駆動輪のFRベースの車両であってもよい。そして、直接駆動輪TF1,TF2と副駆動輪TR1,TR2との回転速度差(回転差)と、エンジンから出力される駆動トルクと、に応じた駆動力を副駆動輪TR1,TR2に伝達するようトルク配分制御クラッチの締結力を制御するというものである。以下、これを詳述する。
【0025】
(四輪駆動車)
四輪駆動車は、一般的な四輪駆動車が有する構成を採っている。例えば、図1に示すように、前輪TF1,TF2側にエンジンEを備えていて、当該前輪TF1,TF2が直接駆動輪となっている。そして、このエンジンEからの駆動力がドライブシャフトを介して後輪TR1,TR2に伝達されるが、ドライブシャフト上には電磁式のトルク配分制御クラッチTCが備えられている。このトルク配分制御クラッチTCの締結力は、上述した駆動力配分制御装置1にて制御され、後輪に伝達されるトルク値を調節することができる。
【0026】
また、各車輪TF1,TF2,TR1,TR2には、当該車輪の回転速度を検出する車輪速センサ(回転速度検出手段)21,22,23,24がそれぞれ備えられている。
【0027】
そして、上述した駆動力配分制御装置1が、上記エンジンEや車輪速センサ21等からの所定の信号を検出したり、トルク配分制御クラッチTCの締結力を制御する信号を出力している。従って、所定の信号を検出したり出力することができるよう、駆動力配分制御装置1には種々の信号線が接続されている。具体的に、制御装置1に入力される信号としては、上記各車輪速センサ21等から車輪速信号、エンジンEからはエンジン回転速度信号及びスロットル開度信号である。また、当該制御装置1から出力される信号は、後述するように、これら入力信号や、あらかじめ制御装置1内に記憶されている所定のデータに基づいて算出されたトルク配分制御クラッチTCの締結力制御値に応じた制御信号である。
【0028】
ここで、車輪速センサ21等はABS用のものと共用であって、エンジン回転信号はエンジン・コントロールユニット(ECU)からメータ一用に出力されており、スロットル開度もオートマチックトランスミッション(AT)用にECUから出力されたものを使用する。従って、新たに追加するセンサ類は無いため、製造コストの低減を図ることができる。
【0029】
(駆動力配分制御装置)
駆動力配分制御装置1は、直接駆動輪TF1,TF2と副駆動輪TR1,TR2との回転速度差を算出する回転速度差演算手段11と、副駆動輪TR1,TR2に伝達される伝達トルクのうち回転速度差の値に対応して設定されるトルク量である回転差成分を算出する回転差成分算出手段12と、四輪駆動車自体の駆動トルクを算出する駆動トルク演算手段13と、副駆動輪TR1,TR2に伝達される伝達トルクのうち駆動トルクの値に対応して設定されるトルク量であるトルク成分を算出するトルク成分算出手段14と、回転差成分とトルク成分とを加算して伝達トルクを算出すると共に当該伝達トルクに対応する制御信号をトルク配分制御クラッチTCに伝達する配分制御手段15とを備えている。
【0030】
ここで、駆動力配分制御装置1は、所定の演算処理能力を有する演算部(CPU)と、所定の記憶容量を有する記憶部(メモリ)とを備えている。そして、上述した各手段は、当該各手段用プログラムがあらかじめメモリに記憶されていて、これらプログラムがCPUに組み込まれることにより、実現することができる。すなわち、当該CPUが各手段として作動するようになる。
【0031】
(回転速度差演算手段)
回転速度差演算手段11は、基本動作として、4つの車輪TF1,TF2,TR1,TR2にそれぞれ備えられた車輪速センサ21,22,23,24から、各車輪の回転速度を検出するよう作動する。ここで、図2においては、左右一対の車輪TF1,TF2から検出される2つの車輪速信号を、まとめて前輪車速信号と、同様に後輪に関しては後輪車速信号と表すこととする。
【0032】
また、回転速度差演算手段11は、上記検出した各車輪の回転速度信号を用いて前輪(直接駆動輪)TF1,TF2の回転速度と、後輪(副駆動輪)TR1,TR2の回転速度とを検出すると共に、これらの回転速度の差を算出する回転差算出手段11Aを備えている。例えば、前輪であれば、左右一対の車輪TF1,TF2の回転速度の平均値を算出し、これを当該前輪(直接駆動輪)の回転速度とする。そして、同様に後輪(副駆動輪)の回転速度も算出し、これらの差を算出する。
【0033】
さらに、回転速度演算手段手段11は、回転速度差を算出するために必要な信号を読み取り当該信号が異常であることを検出する第1の異常検出手段11Bを備えている。回転速度差を算出するために必要な信号とは、上述したように、各車輪TF1,TF2,TR1,TR2に備えられた車輪速センサ21,22,23,24から検出した信号である。
【0034】
そして、第1の異常検出手段11Bは、具体的には、前輪車速信号異常検出手段11Baと、後輪車速信号異常検出手段11Bbと、回転差成分算出不可判断手段11Bcとにより構成されている。前輪車速信号異常検出手段11Baは、前輪車速信号と後輪車速信号とを検出して、車両走行中(後輪車速が所定の車速以上)において、前輸の車速が左右とも0である場含、前輪車速信号が異常であると判断する。このとき、左右どちらか一方のみ0である場合は他方の値を前輸車速として取り扱い、他の計算は正常時と同じ処理を行う。また、後輸車速信号異常の検出も、同様に、前輪後輪の車速信号を検出して、車両走行中(前輸車速が所定の車速以上)において、後輸の車速が左右とも0である場合後輸車速信号が異常であると判断する。このとき、左右どちらか一方のみ0である場合は他方の値を後輸車速として取り扱い、他の計算は正常時と同じ処理を行う。
【0035】
また、回転差成分算出不可判断手段11Bcは、前輪後輪の車速信号の検出が正常であるか否かの信号を取り入れて、これらの信号から後述する回転差成分が算出可能か否かを判定する。そして、判定された情報は、回転差成分算出手段12及びトルク成分算出手段14に出力される。
【0036】
ちなみに、前輪の回転速度信号が正常であるか異常であるかの信号は、前輪車速信号異常検出手段11Baにて、後述する減速比算出手段13Acと、駆動トルク値フェールセーフ中判定手段13Cとに出力される。
【0037】
(回転差成分算出手段)
ここで、上述した回転差成分算出手段12は、回転差成分算出不可判定手段11Bcからの信号が、回転差成分を算出可能である旨の信号である場合には、後述するように、回転速度差の値に対応して設定されるトルク量であって副駆動輪TR1,TR2に伝達される伝達トルクの一部である回転差成分を算出する。このとき、トルク成分を算出する際に所定の補正を行った場合、すなわち、駆動トルクを算出するための情報のうち、いずれかが異常であると判断されている場合には、算出された回転差成分に所定の補正を行うことで、当該算出時の回転差成分を増大するよう演算する。これについても、後に詳述する。
【0038】
一方、回転差成分算出不可判断手段11Bcからの信号が、回転差成分を算出不可能である旨の信号である場合には、回転差成分をあらかじめ定められた所定の値に設定する。所定の値とは、例えば零である。そして、この値はあらかじめ制御装置1内の所定のメモリに格納されている。これにより、回転差成分の正しい値が算出されないときに、かかる値を用いて制御することにより当該トルク配分制御が不安定になることを抑制することができる。従って、回転差成分として代入される値は、副駆動輪に伝達されても影響が少ない零に近い値であると望ましい。
【0039】
(駆動トルク演算手段)
駆動トルク演算手段13は、基本的には、エンジンEからスロットル開度信号と、エンジン回転速度信号を検出し、これらの値から駆動トルクを算出する。また、必要に応じて、前輪の回転速度をも検出して演算に用いる。
【0040】
さらに詳述すると、駆動トルク演算手段13は、現在の車両の状態における駆動トルクを算出する駆動トルク算出手段13Aaと、駆動トルクを算出するパラメータとなるエンジントルク、減速比をそれぞれ算出するエンジントルク算出手段13Ab、減速比算出手段13Acとを備えている。また、上記駆動トルクを算出するために必要な信号(スロットル開度信号、エンジン回転信号、前輪車速信号)を読み取りこれら信号が異常であることを検出する第2の異常検出手段13Bと、これらの異常が検出されたときに駆動トルク値がフェールセーフ中であると判定する駆動トルク値フェールセーフ中判定手段13Cとを備えている。
【0041】
ここで、第2の異常検出手段13は、図2を参照すると、スロットル信号の異常を検出するスロットル信号異常検出手段13Baと、エンジン回転信号異常検出手段13Bbとから成っているが、第1の異常検出手段11Bに含まれる前輪車速信号異常検出手段11Baをも含めることとする。そして、これらによって検出された各信号が異常であるか否かの情報は、駆動トルク値フェールセーフ中判定手段13Cに出力される。駆動トルク値フェールセーフ中判定手段13Cは、所定の信号が異常であることを検出した場合には、駆動トルク値がフェールセーフ処理されていることを表す情報を、上述した回転差成分算出手段に出力する。
【0042】
また、駆動トルク演算手段13は、駆動トルク算出用信号(スロットル信号等)が異常であると検出されたときに当該信号の値をあらかじめ定められたバックアップ値に設定して駆動トルクを算出する機能を備えている。この機能は、具体的には、上述したエンジントルク算出手段手段13Abと減速比算出手段13Acとに備えられている。そして、バックアップ値はあらかじめ制御装置1内のメモリに記憶されていて、例えば、エンジン回転数が検出できないときには、当該エンジン回転数に対応したバックアップ値が現在のエンジン回転数として用いられる。これにより、仮の駆動トルクを算出することができる。
【0043】
(トルク成分算出手段)
トルク成分算出手段14は、算出された駆動トルクの値に対応して設定されるトルク量であるトルク成分であって、副駆動輪に伝達される伝達トルクの一部を算出する。その算出手順は後述するが、特に、回転速度差算出用信号が異常であると検出されたときに算出されたトルク成分の値を増大するよう補正する機能を備えている。すなわち、上述した回転差成分算出不可判定手段11Bcにて回転差成分が算出不可能であると判断されて、その旨の信号が入力された場合に、実際に算出されたトルク成分をさらに増大するよう補正する。これは、回転差成分が算出不可能である場合には、上述したように回転差成分が零に設定されるため、当該回転差成分とトルク成分とから成る伝達トルクが大幅に減少を抑制するためである。
【0044】
(配分制御手段)
配分制御手段15は、まず、上述したように算出された回転差成分とトルク成分とを加算する。この加算された値は、副駆動輪TR1,TR2に配分される伝達トルクである。そして、この伝達トルクの値に相当する駆動力が副駆動輪に伝達されるような制御信号をトルク配分制御クラッチTCに出力する。これにより、当該制御信号に基づいてトルク配分制御クラッチTCの締結力が制御され、目標値である伝達トルク値に相当する駆動力が副駆動輪に伝達されるようになる。
【0045】
(動作)
次に、本実施形態における動作を、図3乃至図7を参照して説明する。図3は、駆動力配分制御装置1の動作を示すフローチャートであり、図4は、その続きを、図5はさらにその続きを示すフローチャートである。図6は、駆動力配分制御装置1内に記憶されたトルク成分算出時に用いられるデータであり、図6(a)はエンジントルクマップを、図6(b)は駆動トルクテーブルデータを、図6(c)は前輪車速テーブルデータを示す図である。図7は、駆動力配分制御装置内に記憶された回転差成分算出時に用いられるデータであり、図7(a)は基本回転差成分テーブルデータを、図7(b)は回転差成分補正係数テーブルデータを示す図である。
【0046】
駆動力配分制御装置1は、まず、各種センサから各種信号の取り込みを行う(ステップS101)。具体的には、エンジンEからスロットル開度信号及びエンジン回転速度が検出され、スロットル開度信号はスロットル信号異常検出手段13Ba及びエンジントルク算出手段13Abに、エンジン回転速度はエンジン回転信号異常検出手段13Bb及びエンジントルク算出手段13Ab、減速比算出手段13Acに取り込まれる。また、各車輪TF1等に備えられた車速センサ21等から車速信号が検出され、前輪の車速信号は回転差算出手段11A、前輪車速信号異常検出手段11Ba、後輪車速信号異常検出手段11Bb、エンジン回転信号異常検出手段13Bb、減速比算出手段13Acに、後輪の車速信号は、回転差算出手段11A、前輪車速信号異常検出手段11Ba、後輪車速信号異常検出手段11Bbに取り込まれる(図2参照)。但し、これら信号線の接続状態は一例を示したものであり、これと異なる接続状態であってもよい。
【0047】
続いて、スロットル信号異常検出手段13Baにて、スロットル開度信号が異常か否かが検出される(ステップS102)。検出方法としては、ECUからPWM信号(パルス幅変調信号)で送られてくるスロットル開度信号の有無で判断し、PWM信号が検出されない場合はスロットル開度信号が異常であると判断される。
【0048】
また、このとき、エンジン回転信号異常検出手段13Bbにて、エンジン回転信号が異常か否かが検出される(ステップS103)。検出方法としては、まず、取り込んだ前輪の車速信号から、当該車速信号が所定の車速以上であるか否かが判断され、所定の車速以上である場合には車両が走行中であると判断される。そして、かかる場合に取り込んだはずのエンジン回転信号(エンジンの回転に同期したパルス信号)が検出されない場含、エンジン回転信号が異常であると判断される。
【0049】
さらに、前輪、後輪車速信号異常検出手段11Ba,11Bbにて、前輸及び後輪車速信号異常の検出が行われる(ステップS104,S105)。前輪における検出方法としては、車両走行中(後輪車速が所定の車速以上)において、前輸の車速が左右とも零である場含、前輪車速信号が異常であると判断される。左右どちらか一方のみ零である場合は他方の車輪速の値を前輸車速として取り扱い、他の計算(回転差算出手段11Aなどによる演算)は正常時と同じ処理が行われることとする。これは、一方が零である場合に左右の平均を取って前輪の車速としてしまうと、正常時のほぼ半分になってしまい、正常な制御を図ることができなくなってしまうからである。このとき、後輪車速が所定の車速以上であるとの判断は、取り込んだ後輪車速信号と、あらかじめ記憶されている所定の車速データとを比較することから判断する。そして、後輪における検出方法も、前輪の場合と同様に、車両走行中(前輸車速が所定の車速以上)において、後輸の車速が左右とも零である場合後輸車速信号が異常であると判断される。左右どちらか一方のみ零である場合は他方の値を後輸車速として取り扱い、他の計算は正常時と同じ処理を行う。
【0050】
上述のようにして種々の信号を検出した後に、各信号が異常であると判断された場合に、第2の異常検出手段13Bでは、以下のような処理が行われる。スロットル開度信号が異常の場合には、伝達トルクが過大とならないようにするため、所定のバックアップ値(例えば、スロットル全開時の10%の値)がスロットル開度信号として代入される(ステップS106,S107)。また、エンジン回転信号が異常の場含にも、伝達トルクが過大とならないようにするため、所定のバックアップ値(例えば、1500rpm)がエンジン回転信号として代入される(ステップS108,S109)。そして、実際に検出された信号や、代入された信号は、エンジントルク検出手段13Abや減速比算出手段13Acに出力される。
【0051】
また、信号が異常か否かを表す信号が駆動トルク値フェールセーフ中判定手段13Cに出力される。ここでは、信号が異常であるという旨の信号を一つでも受け取ると、駆動トルク値がフェールセーフされていると判定する。これは、上述したように所定の信号が異常であるとバックアップ値が代入されているためである。このとき、駆動トルク値フェールセーフ中判定手段13Cには、前輪車速信号異常検出手段11Baからも前輪車速信号が異常であるか否かを表す信号が入力される。そして、上記同様に、異常である旨の信号を受け取ると、フェールセーフ中であるとの判定が行われる。これは、後述するステップS111,S112にて、前輪車速信号が異常であると、駆動トルクを算出するために必要な減速比の値にバックアップ値が代入されるためである。ここで、上記各バックアップ値は、駆動力配分制御装置1内に備えられている所定のメモリ(図示せず)にあらかじめ記憶されている。
【0052】
続いて、ステップS110〜S119では、四輪駆動車の現在の走行状態における駆動トルクに基づいた副駆動輪TR1,TR2に配分されるトルク配分量(トルク成分)があらかじめ用意されているデータを参照して算出される。ここで、あらかじめ用意されているデータは、駆動力配分制御装置1内に備えられている所定の記憶媒体(メモリ)に記憶されている。そのデータの内容は、図6(a)に示すエンジン回転速度とスロットル開度に対応したエンジントルクとして予め設定しておいたデータ(エンジントルクマップ)、図6(b)に示す駆動トルクに対応したトルク配分クラッチTCの伝達トルクとして予め設定しておいたデータ(駆動トルクテーブルデータ)、図6(c)に示すトルク成分を車速に応じて増量又は減量するための補正係数であって、前輪車速(直接駆動輪が後輪である場合には後輪車速)に応じて予め設定したデータ(前輪車速テーブルデータ)、である。
【0053】
ステップS110では、エンジントルク算出手段13Abにて、エンジントルクマップから実際に検出されたエンジン回転速度及びスロットル開度をマッチングすることにより、エンジントルクが検索されて現在のエンジントルクが推定される。この推定されたエンジントルク値は、制御装置1内の所定のメモリ(RAMなど)に一時的に保持される。なお、各処理にて使用されるパラメータや、算出された値なども同様に、RAMなどに一時的に保持される。
【0054】
そして、このエンジントルクと減速比とを乗算することにより、駆動トルクを算出することができるが、正常な減速比を算出するためには実際に検出されたエンジン回転信号と前輪車速信号とが必要となる。従って、減速比算出手段13Acでは、エンジン回転信号と前輪車速信号とが異常か否かが判断される(ステップS111)。どちらか一方でも異常の場含はステップS112へ進み、それ以外の場合はステップS113へ進む。
【0055】
ステップ112では、エンジン回転信号と前輪車速信号が少なくともどちらか一方が異常であるので減速比を計算することができない。従って、伝達トルクが過大とならないようにするため、最高速段に相当する減速比をバックアップ値として設定する。この減速比用のバックアップ値は、制御装置1内のメモリにあらかじめ記憶されているものである。一方、ステップS113ではエンジン回転信号と前輪車速信号が共に正常であるので、検出されたエンジン回転速度と前輪車輪速との比からトランスミッションにおける実際の減速比が算出される。
【0056】
このようにして算出されたエンジントルクや減速比は、それぞれエンジントルク算出手段13Abあるいは減速比算出手段13Acから駆動トルク算出手段13Acへと出力される。そして、駆動トルク算出手段13Acでは、上記の推定したエンジントルクと減速比を乗算することにより駆動トルクが算出される(ステップS114)。この算出された駆動トルクは、トルク成分算出手段14に出力される。
【0057】
トルク成分算出手段14では、まず、上述した駆動トルクテーブルデータから基本トルク成分が検索される(ステップS115)。基本トルク成分マップは、図7(b)に示すように、基本トルク成分が駆動トルクに略比例するように設定され、この値により後輪へのトルク配分を能動的に行うことができる。具体的には、駆動トルクが零付近では一定値をとり、当該駆動トルクが所定の値以上になると、基本トルク成分が比例的に増加するというデータである。
【0058】
このとき、トルク成分はエンジントルクと減速比を乗算して算出した駆動トルクに対応した値となるため、変速等によって駆動力が変化してもトルク配分の比は常に略一定とすることができる。すなわち、低速段では駆動トルクが大きくなるが、これに対応して基本トルク成分も大きい値となり、一方、高速段では駆動トルクが小さくなると共に、これに対応して基本トルク成分も小さい値となる(図7(b)の駆動トルクテーブルデータ参照)ため、駆動トルクの増減と共に副駆動輪に伝達される基本トルク成分も増減し、その割合は略一定となる。従って、例えば、高速段では減速比が小さくなるため駆動トルクも小さくなるが、これに伴ってトルク配分クラッチの伝達トルク(基本トルク成分)も小さくなるため、高速走行時に伝達トルクが過剰となることが抑制され、高速走行時の燃費の改善を図ることができる。
【0059】
続いて、トルク成分算出手段14では、上述のようにして算出された基本トルク成分が、車速に応じて増量又は減量するための補正係数が前輪車速テーブルから検索されて求められる(ステップS116)。この補正によって、車速に応じて副駆動輪に伝達されるトルク配分を変えることにより、高速域では後輪へのトルク配分を少なくし、ステア特性をアンダーステア傾向にして安定性を高めるようにしたり、極低速域では後輪へのトルク配分を少なくしてタイトコーナーブレーキ現象を緩和するために用いる。ここで、図6(c)において用いる車速は、通常前輪車速を用いるが、前輪車速が異常と判断されている場含は後輸車速を用いてよい。
【0060】
続いて、トルク成分算出手段14では、前輪車速信号が異常であるか又は後輸車速信号が異常であるかが判断される(ステップS117)。このとき、いずれかの車輪速度が異常であるか否かの判断は、回転差成分算出不可判定手段11Bcからの信号を用いて行われる。そして、どちらか一方でも異常の場含はステップS119へ進み、そうでない場含はステップS118へ進む。
【0061】
そして、ステップS118では、基本トルク成分にトルク成分補正係数を乗算し、この値がトルク配分制御クラッチTCにて副駆動輪(後輪)に伝達される伝達トルクのトルク成分とされる。一方、ステップ119では、後述するように、前輪あるいは後輪の車速信号が異常であると、回転差に基づく制御量(回転差成分)が計算不可であるので、基本トルク成分にトルク成分補正係数を乗算した値に、さらに、回転差検出不可時補正係数を乗算して増量補正し、トルク配分クラッチ伝達トルクのトルク成分とする。このようにすることで、回転差成分が零に設定された場合に、当該回転差成分を補填べくトルク成分が増大されるため、四輪駆動の性能の低減を抑制することができる。そして、算出されたトルク成分は、配分制御手段15に出力される。
【0062】
続いて、ステップS120〜S127では、四輪駆動車の現在の走行状態における前輪と後輪との回転速度差に基づいた副駆動輪TR1,TR2に配分されるトルク配分量(回転差成分)があらかじめ用意されているデータを参照して算出される。ここで、あらかじめ用意されているデータは、駆動力配分制御装置1内に備えられている所定の記憶媒体(メモリ)に記憶されている。そのデータの内容は、図7(a)に示す前輪後輪の回転速度差に対応したトルク配分クラッチの伝達トルクとして予め設定しておいたデータ(基本回転差成分テーブルデータ)、図7(b)に示す回転差成分を車速に応じて増量又は減量するための補正係数を前輪車速に応じて予め設定したデータ(回転差成分補正係数テーブルデータ)、である。
【0063】
ステップS120では、前輪、後輪車速信号異常検出手段11Ba,11Bbにて、回転差に基づく制御量(回転差成分)が計算可能かどうかを判断するため、前輪車速信号が異常であるか又は後輸車速信号が異常であるかを判断する。いずれか一方でも異常の場含は回転差成分が計算できないのでステップS127へ進み、そうでない場合はステップS121へ進む。
【0064】
ステップS121では、各車輪の車速センサ21等から検出された前輪車輪速と後輪車輪速との差から、トルク配分クラッチの相対回転速度(回転速度差)を計算する。具体的な算出方法は、上述したとおりである。この算出された回転速度差(回転差)は、回転差成分算出手段12に出力される。
【0065】
続いて、回転差成分算出手段12にて、上述した基本回転差成分テーブルデータから、基本回転差成分が検索される(ステップS122)。この基本回転差成分は、回転差の絶対値が大きくなるほど伝達トルクが大きくなるようにあらかじめ設定されている。このようにすることで、例えば、前輪のスリップが発生した場合にスリップが過剰とならないように作動し、受動的に動作する。エンジンブレーキ時には、回転差が負になる場含があるので、当該回転差が負の場含の伝達トルクも設定されている。
【0066】
続いて、回転差成分補正係数テーブルデータから、現在の前輪車輪速に対応した回転差成分補正係数が検索されて求められる。この係数は、上述のトルク成分補正係数と同様に、高速域で後輪へのトルク配分を少なくしステア特性をアンダーステア傾向にして安定性を高めるために用いる。そして、ステップ113では、基本回転差成分に回転差成分補正係数を乗算し、トルク配分クラッチ伝達トルクの回転差成分とされる。
【0067】
続いて、回転差成分算出手段12では、トルク成分を計算する際にフェールセーフ処理を行ったかどうかを認識するため、スロットル開度信号が異常かどうか、又はエンジン回転信号が異常かどうか、又は前輪車速信号が異常かどうかの判断が行われる。具体的には、上述した駆動トルク値フェールセーフ中判断信号を読み取ることで判断する。すべて異常でない場合は、フェールセーフ処理を行ってないと判断しステップS125へ進む。いずれか異常の場合はトルクに基づく制御量を計算する際フェールセーフ処理を行ったと判断し、ステップS126へ進む。
【0068】
そして、ステップS125では、基本回転差成分に回転差成分補正係数を乗算しトルク配分クラッチ伝達トルクの回転差成分とする。一方、ステップS126では、トルク成分がフェールセーフ処理された値であるので、基本回転差成分に回転差成分補正係数を乗算した値に、さらに、トルク成分関連フェール時補正係数を乗算して増量補正し、トルク配分制御クラッチの伝達トルクの回転差成分とする。このとき、トルク成分関連フェール時補正係数は、あらかじめ所定のメモリに記憶されている。
【0069】
ここで、上述したように、ステップS120にて前輪あるいは後輪の車速信号が異常であると判断された場合には、回転差に基づく制御量が計算できない場合であるので、回転差成分としてバックアップ値である零を代入する(ステップS127)。
【0070】
このようにして算出された副駆動輪に伝達されるトルク値であるトルク成分と回転差成分とは、その後、伝達トルク値算出手段13にて加算され、トルク配分クラッチの伝達トルク値として算出される(ステップS128)。そして、算出した伝達トルクがトルク配分制御クラッチにて発生するよう、当該トルク配分制御クラッチの締結力を制御する配分制御信号が、配分制御手段にて当該クラッチに出力される(ステップS129)。
【0071】
このように、トルク成分と回転差成分を加算することにより、四輪ともグリツプして前後輪の回転差が少ない場合でも、トルク成分で決まるトルク配分により後輪にトルクを伝達できるので、応答性が良くステア特性を任意に設定することができる。さらに、回転差が生じた場合には回転差成分が加算されるので、過剰な前輪の空転を防止でき車両の安定性が増す。
【0072】
そして、トルク成分や回転差成分を検出するために必要なパラメータである車輪速信号やエンジン回転速度信号、スロットル開度信号が正常に検出されない場合であっても、かかる信号にあらかじめ定められた値を代入することで、かかる代入値に基づいて駆動トルクが算出され、所定の値を有するトルク成分を算出することができるため、四輪駆動車の四輪駆動性能の低下を抑制することができる。
【0073】
〈他の実施形態〉
以下、本発明の他の実施形態について説明する。当該他の実施形態における駆動力配分制御装置1は、図2に示す制御装置1とほぼ同一の構成となっている。但し、本実施形態においては、トルク成分算出手段14が、駆動トルク算出用信号が異常であると検出されたときにトルク成分をあらかじめ定められた値に設定する機能を備えている。従って、これに伴い、第2の異常検出手段13Bから異常を知らせる旨の信号がトルク成分算出手段に出力されるようになっている。
【0074】
このとき、あらかじめ定められた値とは、例えば、ほぼ零の値であって、かかる場合には、回転差成分算出手段12が、駆動トルク算出用信号が異常であると検出されたときに回転差成分の値を増大補正する機能を備えると望ましい。従って、上記同様に、回転差成分算出手段12にも、第2の異常検出手段13Bから車両情報が異常である旨を通知する信号が出力されるようになっている。
【0075】
このようにすることにより、スロットル開度信号やエンジン回転速度信号を正常に検出することができず、トルク配分制御クラッチの締結力を制御する制御量の一部であるトルク成分を正常に算出することができない場合であっても、かかる値に基づく制御量をある一定値あるいは零にして、副駆動輪に伝達される駆動力の配分制御が不安定になることを抑制することができる。そして、このとき、回転差に基づくクラッチ締結力を制御する制御量である回転差成分を増大することにより、トルク成分に相当する制御量を補填することができるため、四輪駆動性能を維持することができる。
【0076】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成され機能するので、これによると、前後輪の回転速度差を算出するために必要な信号を検出することができないなどの異常が検出された場合には、回転差成分算出手段は回転差成分をほぼ零の値に設定すると共に、トルク成分算出手段は前記算出されたトルク成分の値を増大するように補正し、また、駆動トルク算出用信号が異常であると検出されたときには、トルク成分算出手段がトルク成分をほぼ零の値に設定すると共に、回転差成分算出手段が回転差成分の値を増大補正し、これらの回転差成分とトルク成分とが加算されて伝達トルクが算出されるため、当該伝達トルクが副駆動輪に伝達されるよう制御されることとなり、その結果、正常でない回転差成分にてトルク配分制御が行われることにより不安定な制御が実行されることが抑制されると共に、当該回転差成分に所定の値が補填されるため、四輪駆動車の四輪駆動性能の低下を抑制することができる、という従来にない優れた効果を有する。
【0077】
特に、回転速度差算出用信号が異常であると検出されたときに回転差成分をほぼ零の値に設定すると共に、回転速度差算出用信号が異常であると検出されたときに算出されたトルク成分の値を増大するよう補正する機能を備えたことにより、正常に算出されない回転差成分を零にすることで、不安定に制御される可能性がある要素を取り除き、安定性の向上を図ると共に、この回転差成分の制御量分を補填すべくトルク成分が増大されるため、伝達トルクの減少が抑制されるため、四輪駆動車の四輪駆動性能の低下を抑制することができる。
【0078】
さらに、駆動トルク算出用信号が異常であると検出されたときに当該信号の値をあらかじめ定められたバックアップ値に設定して駆動トルクを算出する機能を備えたことにより、駆動トルクを算出するための信号を検出することができない場合であっても、かかる信号にあらかじめ定められた値を代入することで、かかる代入値に基づいて駆動トルクが算出され、そして、トルク成分を算出することができると共に所定の値の伝達トルクを算出することができ、四輪駆動車の四輪駆動性能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明である駆動力配分制御装置が備えられた四輪駆動車の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態における構成を示す機能ブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態における動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態における動作であって、図3に示す動作の続きを示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態における動作であって、図4に示す動作の続きを示すフローチャートである。
【図6】図6は、駆動力配分制御装置内に記憶されたトルク成分算出時に用いられるデータである。図6(a)はエンジントルクマップを、図6(b)は駆動トルクテーブルデータを、図6(c)は前輪車速テーブルデータを示す図である。
【図7】図7は、駆動力配分制御装置内に記憶された回転差成分算出時に用いられるデータである。図7(a)は基本回転差成分テーブルデータを、図7(b)は回転差成分補正係数テーブルデータを示す図である。
【符号の説明】
1 駆動力配分制御装置
11 回転速度差演算手段
12 回転差成分算出手段
13 駆動トルク演算手段
14 トルク成分算出手段
15 配分制御手段
21,22,23,24 回転速度検出手段(車輪速センサ)
11B 第1の異常検出手段
13B 第2の異常検出手段
E エンジン
TC トルク配分制御クラッチ
TF1,TF2 前輪(直接駆動輪)
TR1,TR2 後輪(副駆動輪)
Claims (2)
- 左右一対の車輪からなる前輪あるいは後輪のうち、いずれか一方を直接駆動輪とすると共に他方を副駆動輪とする四輪駆動車に備えられ、所定の駆動力を前記副駆動輪に伝達するようトルク配分制御クラッチの締結力を制御する駆動力配分制御装置であって、
前記直接駆動輪と副駆動輪との回転速度差を算出する回転速度差演算手段と、前記副駆動輪に伝達される伝達トルクのうち前記回転速度差の値に対応して設定されるトルク量である回転差成分を算出する回転差成分算出手段と、前記四輪駆動車自体の駆動トルクを算出する駆動トルク演算手段と、前記副駆動輪に伝達される伝達トルクのうち前記駆動トルクの値に対応して設定されるトルク量であるトルク成分を算出するトルク成分算出手段と、前記回転差成分とトルク成分とを加算して前記伝達トルクを算出すると共に当該伝達トルクに対応する制御信号を前記トルク配分制御クラッチに出力する配分制御手段とを備え、
前記回転速度差演算手段が、前記回転速度差を算出するために必要な信号を読み取り当該信号が異常であることを検出する第1の異常検出手段を備え、
前記駆動トルク演算手段が、前記駆動トルクを算出するために必要な信号を読み取り当該信号が異常であることを検出する第2の異常検出手段を備え、
前記第1の異常検出手段により前記回転速度差算出用信号が異常であると検出されたときに、前記回転差成分算出手段は前記回転差成分をほぼ零の値に設定すると共に、前記トルク成分算出手段は前記算出されたトルク成分の値を増大するよう補正する機能を備え、
前記第2の異常検出手段により前記駆動トルク算出用信号が異常であると検出されたときに、前記トルク成分算出手段は前記トルク成分をほぼ零の値に設定すると共に、前記回転差成分算出手段が前記回転差成分の値を増大補正する機能を備えたことを特徴とする駆動力配分制御装置。 - 左右一対の車輪からなる前輪あるいは後輪のうち、いずれか一方を直接駆動輪とすると共に他方を副駆動輪とする四輪駆動車に備えられ、所定の駆動力を前記副駆動輪に伝達するようトルク配分制御クラッチの締結力を制御する駆動力配分制御装置であって、
前記直接駆動輪と副駆動輪との回転速度差を算出する回転速度差演算手段と、前記副駆動輪に伝達される伝達トルクのうち前記回転速度差の値に対応して設定されるトルク量である回転差成分を算出する回転差成分算出手段と、前記四輪駆動車自体の駆動トルクを算出する駆動トルク演算手段と、前記副駆動輪に伝達される伝達トルクのうち前記駆動トルクの値に対応して設定されるトルク量であるトルク成分を算出するトルク成分算出手段と、前記回転差成分とトルク成分とを加算して前記伝達トルクを算出すると共に当該伝達トルクに対応する制御信号を前記トルク配分制御クラッチに出力する配分制御手段とを備え、
前記回転速度差演算手段が、前記回転速度差を算出するために必要な信号を読み取り当該信号が異常であることを検出する第1の異常検出手段を備え、
前記駆動トルク演算手段が、前記駆動トルクを算出するために必要な信号を読み取り当該信号が異常であることを検出する第2の異常検出手段を備え、
前記第1の異常検出手段により前記回転速度差算出用信号が異常であると検出されたときに、前記回転差成分算出手段は前記回転差成分をほぼ零の値に設定すると共に、前記トルク成分算出手段は前記算出されたトルク成分の値を増大するよう補正する機能を備え、
前記第2の異常検出手段により前記駆動トルク算出用信号が異常であると検出されたときに、前記トルク成分算出手段は当該トルク算出用信号の値をあらかじめ定められたバックアップ値に設定して前記駆動トルクを算出し前記トルク成分を設定すると共に、前記回転差成分算出手段が前記回転差成分の値を増大補正する機能を備えたことを特徴とする駆動力配分制御装置。
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