JP4194069B2 - 潤滑被膜形成装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、プレス機によって冷間鍛造される冷間塑性加工用素材(鉄鋼、チタン合金、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金よりなる棒材、管材、平材、焼結材等をいう)の金属材料の表面に化成処理を施さず優れた潤滑性を付与することを目的とした冷間鍛造用の潤滑被膜形成方法と、その潤滑剤の乾燥被膜を形成するために用いられる潤滑被膜形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的な塑性加工用潤滑処理の最も基本的な処理工程として、冷間塑性加工用素材に水系の潤滑剤を塗布した後、所定の加熱乾燥を行うものがある。物理的研削(ショットブラスト、ウエストブラスト)工程、脱脂工程、水洗工程、酸洗工程、化成被膜処理工程、潤滑剤塗布工程、乾燥工程からなり、種々の処理液に冷間塑性加工用素材が接触される。最近、冷間塑性加工用素材に新しい冷間鍛造用潤滑処理方法と潤滑剤とが開発されてきており、化成被膜処理工程を行わずに塑性加工用素材に水系の潤滑剤を塗布し乾燥させて、潤滑剤の乾燥被膜を形成することが行われている。この潤滑剤は、冷間鍛造用一工程潤滑薬剤とも称され、例えば「日本パーカライジング株式会社」製の商品名「ファインリューベE700、E740シリーズ」等がある。
【0003】
従来の技術としては、例えば「水溶性高分子またはその水性エマルションを基材とし、固体潤滑剤と化成被膜形成剤とを配合した潤滑剤組成物(特開昭52−20967号公報)」等があるが、化成被膜処理に匹敵するようなものは得られていない。また、特開平10−8085号に開示された発明は、(A)水溶性無機塩、(B)固体潤滑剤、(C)鉱油、動植物油脂および合成油から選ばれる少なくとも1種の油成分、(D)界面活性剤および(E)水からなる、固体潤滑剤および油が均一にそれぞれ分散および乳化した、金属の冷間塑性加工用水系潤滑剤に関するものである。しかし、この発明による潤滑剤は油成分を乳化しているために工業的に使用するには不安定であり、高い潤滑性を安定的に発揮するには至っていない。また、特開2000−63880号の発明に開示された発明は、(A)合成樹脂、(B)水溶性無機塩および水を含有し、この固形分重量比(B)/(A)が0.25/1〜9/1であって、合成樹脂が溶解または分散している、金属材料の塑性加工用潤滑剤組成物に関するものである。しかし、この発明による潤滑剤は合成樹脂を主成分としており、厳しい加工条件では充分な潤滑性を安定的に発揮するには至っていない。
【0004】
最近、冷間塑性加工の適応範囲が拡大し、かつ、多数の冷間塑性加工用素材を一度に潤滑被膜処理をすることが非常に多く行われるようになり、潤滑被膜形成に関する新規な方法が要望されている。
【0005】
従来の潤滑被膜形成装置としては、潤滑剤の塗布前に冷間塑性加工用素材を加熱し、潤滑剤の塗布後の乾燥を容易にする装置が一般的である。この潤滑被膜形成装置は、まず潤滑剤を塗布した後、搬送コンベア上に載せられた塗布物を、熱風入口からコンベアを包むケーシング内に導入される熱風で乾燥させるものである。塗布物を乾燥させた熱風は熱風出口より排出される。また、水平方向に移動する方式には、搬送装置の一部または全部を超音波等により機械的に振動させて、塗布物を一方向に移動させつつ熱風で乾燥する方法も含まれる。
【0006】
潤滑剤を塗布した後、内周面に搬送用スクリューを備えたドラム内(いわゆるスパイラル管)に塗布物を貯留し、ドラムを回転させて、塗布物を攪拌・乾燥させる装置がある。塗布物を乾燥させた熱風は熱風出口より排出される。
【0007】
潤滑剤を塗布した後、円筒もしくは角筒の中空筒型バレルに塗布物を貯留し、バレルを水平姿勢で連続的に回転させつつ、バレルの外側周囲より熱風を導入することで、塗布物を攪拌・乾燥させる装置がある。しかしこの装置を用いると、乾燥前に塗布物が相互に密着しているので、そのまま乾燥させると塗布物同士が固着したり、塗布物に対する水系の潤滑剤の付着性が部分的にかなり不均一になる場合がある。その場合には、バレル容器の内壁面に平板状、円筒などの突起を突出形成し、バレルを連続回転させ、突起を乗り越えた塗布物がバレル容器の内壁面に落下するときの衝撃により、塗布物同士の固着を解消させて、塗布物に対する水系の潤滑剤の付着不良を低減させている。
【0008】
特開2001−170733号公報には、冷間塑性加工用素材を予め加熱し、素材の表面に潤滑剤を塗布し、加熱された冷間塑性加工用素材の温度より低温の冷風を冷間塑性加工用素材にあてて、塗布された潤滑剤を乾燥する装置が開示されている。
【0009】
上述した従来の潤滑被膜形成装置には、次の問題があった。▲1▼コンベアやスパイラル等を利用しているものは、塗布物を充分に乾燥させるために滞留時間を多くとると、乾燥に要する距離(コンベアの長さ等)が長くなり、設置面積を多く必要とする。また、摺動部分、回転部(ローラの組み合わせたもの)、振動部が多くあるために、焼付き、磨耗等による故障が多く発生していた。▲2▼振動方式を含めたコンベアを利用する装置には、塗布物同士が重なり合っているとそのまま乾燥し塗布物同士が固着しやすいという問題がある。予め塗布物同士が単独になるような工夫が必要であり、装置が複雑化し、装置の設置面積が増える。また、潤滑剤が高粘度の液体であると、塗布物同士を事前に単独に分離させずに潤滑剤に接触させると、塗布物同士が密着してしまう。▲3▼スパイラル装置、バレル装置では、バレル容器の壁面に形成された多数の穴を介して、熱風がバレル内に導入されることにより、塗布物の乾燥が促進される。バレルおよびスパイラル容器の回転に伴って、塗布物が突起物を飛び越えて落し、もしくは、突起物により持ち上げられた後自由落下するという塗布物の運動態様が固定化するので、塗布物同士の密着防止の効果が低く、塗布物同士が固着して水系の潤滑剤の付着が不均一になるという問題が発生する。そのため塗布物の乾燥時間を長時間にして塗布物同士の固着防止を図り、水系の潤滑剤の付着を均一にすることを強いられ乾燥効率が低下する。また、連続回転中は、バレル容器の材料投入用開口部を蓋で閉じるので、バレル内部への熱風の通過性が悪化し、乾燥効率が低下する。▲4▼特開平2001−170733号公報は、乾燥被膜の形成時間を短縮することによってプレス機の速度に追従できる高速の潤滑被膜形成装置を開示している。当該潤滑被膜処理装置は、塗布・乾燥工程も含め、基本的に単数処理する方式を採用しているため、複数の高速プレス機に供給対応できるように生産能力を大幅に向上させたい場合には、処理列を複数化する必要があり、潤滑被膜処理装置の規模が増大し、設置面積が増大するという問題を生ずる。また、冷間塑性加工用素材をひとつずつ処理するインライン処理方式とは異なり、冷間塑性加工用素材を所定個数ひとまとめにして一括処理するバッチ式の処理方式には、前述の装置では対応が難しかった。
【0010】
さらに、最近、潤滑剤に高度な潤滑性が要求されており、潤滑剤の塗布付着量が1g/m2から20g/m2、より望ましくは5g/m2から20g/m2と一層増加してきている。このため、前記の塗布物同士の固着を防ぐために、今まで以上の乾燥効率が要求されてきている。つまり、所定個数を一度に処理する方式であると、冷間塑性加工用素材同士が乾燥前の潤滑剤を介して互いに密着してしまうので、乾燥時における塗布物を充分に揺動させることが必須となる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、複数の高速プレス機に対応しうる大量処理が可能な、多数の冷間塑性加工用素材を同時に一括して処理できる潤滑被膜形成方法を提供することを目的とするものである。また本発明は、前記潤滑被膜形成方法に使用され、多数の冷間塑性加工用素材を同時に一括処理して生産能力が高く、小型で、塗布物同士の固着や水系の潤滑剤の付着不良が解消されて高い乾燥効率を有する潤滑被膜形成装置を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、所定の方法にて表面を清浄化した冷間塑性加工用素材を複数個、所定の温度に加温された(A)水溶性無機塩と(B)ワックス、二硫化モリブデンのいずれか1種以上とを含有する水系の潤滑剤を含む処理液に所定時間接触させ、次いでこれら素材を前記処理液から離して所定時間の液切れを行い、その後、所定の条件下で乾燥させて、前記冷間塑性加工用素材に付着量として1〜20g/m2の潤滑被膜を形成させることにより、多数の冷間塑性加工用素材を同時に一括して処理できることを見出し、本発明である潤滑被膜形成方法を完成するに至った。また、前記潤滑被膜形成方法に使用される装置に関しては、バレルの回転を交互に正逆反転させつつ熱風を送風することが重要であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明に係る潤滑被膜形成装置は、冷間鍛造用の水系の潤滑剤が塗布された冷間塑性加工用素材を内部に突起を有するバレルに貯留し、バレルの回転を交互に正逆反転させながら熱風をバレルに送風する乾燥手段を備え、バレルの回転が交互に正逆反転するのに伴って、潤滑剤が塗布された冷間塑性加工用素材が突起によって持ち上げられ、突起の反対側に落下して、冷間塑性加工用素材同士が効果的に混合することにより、冷間塑性加工用素材同士の付着を解消しつつ、潤滑剤を乾燥させることを特徴とする。
【0014】
この乾燥手段は、塗布物のバレル内部での揺動を飛躍的に向上させ、塗布物同士の密着防止に非常に効果があることがわかった。特に最近開発された水系の潤滑剤では、乾燥過程における塗布物の運動が重要であり、バレルの回転を交互に正逆反転させることにより、従来の一方向のみにバレルを回転させる場合と比較して、冷間塑性加工用素材の潤滑剤の塗布性がかなり良好になった。また、この乾燥手段で処理をすると、冷間塑性加工用素材に塗布された水系の潤滑剤の被膜が、非常に強固に密着しており、一層潤滑性を向上させることがわかった。これは、潤滑剤が塗布された冷間塑性加工用素材同士が乾燥過程で連続的に接触することによるアンカー効果が原因と考えられる。尚、バレルの正回転、逆回転の各回転数は任意であり、冷間塑性加工用素材の形状等に応じて最適化すればよい。さらに鋭意検討したところ、正回転、逆回転の回転数は、1回転以下で充分な場合が多く、更に好ましいのは、4分の1回転から6分の1回転であることが分かった。ここで4分の1回転とは、最初のバレルの位置を基準として1回転で360度の角度となるので、90度の角度までバレルを回転させることを意味する。バレルの形状は、任意で良いが、通常角筒バレルであれば、側板の形状が3角形から10角形となる。より望ましいのは、4角形から6角形である。また、円筒バレルも望ましい。バレルの容量は任意であるが、投入した塗布物の全容積が、バレル容積の3%から40%となるのが望ましく、5%から20%となるのがより望ましい。さらに、側板の形状は、幾何学的に均等な形状、つまり正三角形、正四角形、正五角形などである必要はなく、必要に応じ、台形などを選択しても構わない。
【0015】
潤滑被膜形成装置としては、(1) バレルの内部に突起があり、バレルの回転の正逆交互反転により潤滑剤が塗布された冷間塑性加工用素材が突起によって持ち上げられて突起の反対側に落下することで、塗布物同士を効果的に混合し、塗布物同士の付着を解消させる方式のもの、又は (1) と (2) バレルに開口部がある、または、その開口部にバレル内側に開閉する蓋が付設されバレルの回転により蓋が開閉する方式のものとの両方を兼ね備えた方式のものを用いるのが好ましい。バレルの内部に突起を設けることで、バレルの回転の正逆交互反転による塗布物同士の混合が飛躍的に向上することがわかった。バレルの突起は、冷間塑性加工用素材の形状などにより変化するが、一般的にはバレル内部に1個以上の突起物を設ければ良い。また、その突起物にボルト、ナット、ビス等を植設して微細な凹もしくは凸、または凸凹を設けると更に乾燥効率が向上する。バレルに開口部があることにより、回転中に熱風がバレル内部に流入しやすくなり、塗布物の乾燥効率が向上し、塗布物同士の密着を防止できる。開口部の数には制限がなく、1箇所で充分な場合がある。また、開口部の大きさは、バレルの円周に対して任意であるが、5%から30%が良好であり好ましい。バレルに導入する熱風の温度は、潤滑剤の特性に応じて変化するが、50℃から150℃であり、60℃から120℃がより望ましい。尚、開口部に蓋を設け、バレルの回転により開口部が鉛直方向に上に向いているときは、蓋が開き、2分の1回転させた時などは、蓋が閉まるようにしてもよい。この方法は、バレル回転中に塗布物が開口部より飛び出すのを予防する効果があり、また、蓋が開いたときに熱風が導入されるので、乾燥効率が向上することがわかっている。また、さらに、バレル内部に突起を設けることと、バレルに開口部を設けることで更なる効果が期待できることはいうまでもない。
【0016】
本発明に係る潤滑被膜形成装置は、上述した手段以外に、冷間塑性加工用素材に潤滑剤を塗布するための潤滑剤塗布手段と、塗布された潤滑剤のうち過剰な潤滑剤を除去するための液切れ手段と、潤滑剤を塗布し乾燥させた冷間塑性加工用素材を収容する収容手段と、冷間塑性加工用素材を貯蔵するための貯蔵手段のうち、いずれか1つを備えるのが望ましい。潤滑剤塗布手段は、冷間塑性加工用素材を収容した容器を潤滑剤に接触させる手段であるが、その接触方法には浸漬法、スプレー法等があり、望ましいのは、浸漬法である。潤滑剤の液温を所定の温度まで昇温させて、乾燥効率を向上させるのが望ましい。潤滑剤の加温は、ヒーター、蒸気等の熱源を直に使用しても良いが、湯浴を使用して潤滑剤を昇温するのが望ましい。湯浴を使用すれば、潤滑剤に対する加熱による影響を最小限にすることが可能である。塗布された潤滑剤のうち過剰な潤滑剤を除去するための液切れ手段は、前記容器内の冷間塑性加工用素材に潤滑剤を接触させた後、その容器を乾燥手段まで移動させる間に、過剰な潤滑剤を除去するために設けられている。移動経路の下に樋を設け、過剰な潤滑剤がその樋にたれ落ち、潤滑剤塗布手段に戻るようになっており、潤滑剤の過剰な消費を抑制することが可能である。前記容器は乾燥手段のバレルに冷間塑性加工用素材を投入するが、鉛直方向に上に向いているバレル開口部に対し、前記容器が所定の回転をすることにより、すみやかに塗布物がバレルに投入される。潤滑剤を塗布し乾燥させた冷間塑性加工用素材を収容する収容手段は、収容箱と落滴受箱とを有している。バレルで塗布物を乾燥させている過程で過剰な潤滑剤が落滴するので、乾燥中はバレル容器の真下に落滴受け箱が置かれ、乾燥後は、バレル容器の真下に収容箱が置かれる。貯蔵手段の貯蔵箱に、冷間塑性加工用素材を1度にまとめて投入すれば、冷間塑性加工用素材自動的に分画され、処理毎に半連続的に後続の処理手段に供給される。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の内容をより詳細に説明する。本発明の潤滑被膜形成方法には、ショットブラスト、サンドブラスト、アルカリ脱脂および酸洗浄から成る群から選ばれる少なくとも1種の方法で表面を清浄化することが必要となる。従来、水系の潤滑剤の処理液に金属材料を接触させる方法としては、表面を清浄化しない方法と、ショットブラスト、サンドブラスト、アルカリ脱脂、酸洗浄等により表面を清浄化する方法とがある。今回、多数個処理を前提とした場合に、ショットブラスト、サンドブラスト、アルカリ脱脂および酸洗浄からなる群から選ばれる1種類の方法による表面の清浄化が必須である。これは多数個処理の場合には、冷間塑性加工用素材がいわゆる最密充填構造に近い形で積み重なっているために、冷間塑性加工用素材の表面が充分に清浄化されていないとその後にある水系の潤滑剤の接触が不充分となり、形成された潤滑被膜の外観が悪化し、最終的には潤滑被膜の潤滑性が低下するからである。つまり、1個処理と比較し潤滑剤の接触程度が大幅に低くなるからである。
【0018】
本発明の潤滑被膜形成方法に使用される水系の潤滑剤は、(A)水溶性無機塩と(B)ワックス、二硫化モリブデンのいずれか1種類以上とを含有するものである。(A)水溶性無機塩として、硫酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩よりなる群から選ばれる少なくとも一種を使用することが好ましい。一例として硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、ケイ酸カリウム、ホウ酸ナトリウム(四ホウ酸ナトリウム)、ホウ酸カリウム(四ホウ酸カリウム等)、ホウ酸アンモニウム(四ホウ酸アンモニウム等)、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、タングステン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上組み合わせても良い。
【0019】
(B)ワックスとしては、構造や種類を特定するものではないが合成ワックスを使用するのが好ましい。ワックス成分は塑性加工時に発生する熱により融解し被膜の滑り性を良くするために添加する。そのため加工初期に効果を発揮するように、融点が70〜150℃で、更に水溶液中で安定でかつ被膜強度を落とさないものが望ましい、具体的には、例えば、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カルナウバワックス等を挙げることが出来る。これらは水ディスパージョンや水エマルジョンの形態で他成分と混合して本発明の塑性加工用水系潤滑剤に含有させるのが良い。また、二硫化モリブデンも使用できる。
【0020】
本発明で使用する水系の潤滑剤には、この他、脂肪酸の各種金属塩を潤滑性の更なる向上の目的で含有させてもよい。例えばC12〜C26の飽和脂肪酸と亜鉛、カルシウム、バリウム、アルミニウム、マグネシウム、及びリチウムから成る群から選ばれた少なくとも一種の金属を反応させて得られたものを用いるのが好ましい。この中ではステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウムを使用するのが好ましい。これら金属塩を本発明の水系の潤滑剤に配合する上において、必要に応じ公知の界面活性剤を用いることが出来る。
【0021】
なお前述の脂肪酸の金属塩、ワックスを分散させるために界面活性剤が必要な場合には、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤のいずれも用いることができる。非イオン界面活性剤としては、特に限定されないが、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン(エチレンおよび/またはプロピレン)アルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール(もしくはエチレンオキシド)と高級脂肪酸(例えば炭素数12〜18)とから構成されるポリオキシエチレンアルキルエステル、ソルビタンとポリエチレングリコールと高級脂肪酸(例えば炭素数12〜18)とから構成されるポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等が挙げられる。陰イオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば脂肪酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩、ジチオリン酸エステル塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えばアミノ酸型およびベタイン型のカルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩等が挙げられる。陽イオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば脂肪酸アミン塩、第四級アンモニウム塩等が挙げられる。これらの界面活性剤は各々単独でまたは2種以上組み合わせて使用することが出来る。
【0022】
本発明の潤滑被膜形成方法は、前記清浄化した冷間塑性加工用素材を前記水系潤滑剤に接触させ、液切りをし、乾燥させることにより、前記冷間塑性加工用素材に付着重量として1〜20g/m2の潤滑被膜を形成させることを特徴とするものである。次に、水系の潤滑剤の処理液に冷間塑性加工用素材を多数個接触させることなる。従来から冷間塑性加工用素材と水系潤滑剤を接触させる方法としては、浸漬法、フローコート法、スプレー法などがあるが、基本的には表面が充分に水系潤滑剤に覆われていればよい。鋭意検討した結果、より望ましい接触方法は浸漬法である。必要な接触時間は、0.5分から10分間である。接触時間が0.5分未満であると冷間塑性加工用素材が充分に加熱されないために、素材の物温が所定の温度まで上昇せず、乾燥時の乾燥性が悪いために、乾燥不良となり、形成された潤滑被膜の潤滑性が低下する。接触時間が10分間を超えた場合は、それ以上接触させていても効果は変わらないが、生産性が低下するという問題が生じ、ひいては安価な表面処理装置を開発することができない。また、必要な接触温度は、30℃から70である。接触温度が30℃未満の場合は、冷間塑性加工用素材が充分加熱されないことからくる、乾燥不良が発生し、結果的に形成された潤滑被膜の潤滑性が低下する。さらに、接触温度が低いということは、水系の潤滑剤の処理液温が低いということになる。これは、処理液の粘度が充分小さくならないことになり、その後の液切れ時の液切れ性を悪化させることにつながり、所定の潤滑性が確保できない。また、接触温度が70℃を超えた場合には、前記素材の加熱性は変わらない一方、水系の潤滑剤に変質が起こる場合があることと、処理液の水の蒸発が著しくなり、水系の潤滑剤の処理液が皮張りをし、正常な潤滑被膜が形成されず、潤滑性の低下と、処理液の管理の複雑化を招くという問題がある。
【0023】
次にこれらの素材は水系の潤滑剤の処理液から離され、液切れがされる。液切れは特に重要である。多数個処理の場合には、これらの素材が密に充填された状態で処理液から離されるために、目標とする潤滑被膜形成に必要な量以上に処理液から潤滑剤を持ち出してしまうからである。そのまま乾燥させてしまうと、余分な潤滑剤が浪費され、余分な潤滑剤が乾燥し、異物となって潤滑被膜に付着し、その後の潤滑性を低下させたり、乾燥性を大きく低下させたりする。また、それらの異物が潤滑被膜形成装置の周囲を汚染したりして、作業環境にも良くない。液切れ時間は重要であり、5秒から60秒は必要である。5秒未満であると充分に液切れされず、また60秒を超えた場合には、それ以上放置しても効果があがらない。より望ましくは、10秒から60秒である。
【0024】
つぎに、乾燥工程であるが、多数個処理を行う上において、この乾燥時間と乾燥温度が非常に重要である。つまり、50℃から150℃の温風を0.5分から10分間あてることが重要である。多数個処理の場合には、一般的には冷間塑性加工用素材が密に充填された状態で乾燥されるために、乾燥が充分に行き渡らず、かつ、素材間にたまった潤滑剤が乾燥不良を起こし、潤滑被膜が充分に形成されないという不都合が生じ、その後の潤滑性を低下させることにつながる。乾燥温度が50℃未満では、充分に乾燥されず、150℃を超えると、熱により潤滑被膜が変質し、乾燥被膜の潤滑性が低下することがわかった。乾燥時間に関しては、0.5分未満であると乾燥が行き渡らずに、乾燥不十分による潤滑被膜の潤滑性の低下をまねくし、10分を超えると、長時間の加熱により潤滑被膜が変質し、乾燥被膜の潤滑性が低下することがわかった。
【0025】
金属表面に形成させる潤滑被膜の付着量は、その後の加工の程度により適宜コントロールされるが、1.0〜20g/m2である。この付着量が1.0g/m2未満の場合は潤滑性が不充分となる。また、付着量が20g/m2を超えると潤滑性は問題ないが、多数個処理の為に、冷間塑性加工用素材に潤滑被膜が厚くつくことと、素材間の乾燥被膜の付着量に大きな変動を生じてしまい、結果的に金型へのカス詰まり等の潤滑性不良が生じ好ましくない。なお、付着量は処理前後の金属材料の重量差および表面積より計算することができる。
前述の付着量範囲になるようにコントロールするためには水系潤滑剤の固形分重量(濃度)を適宜調節する。実際には、高濃度の潤滑剤を希釈し、その処理液にて使用する場合が多い。希釈調整する水は、特に限定されないが、脱イオン水、蒸留水が好ましい。
【0026】
次に潤滑被膜形成装置であるが、これは図面を参酌しつつ、冷間鍛造される冷間塑性加工用素材1の表面に冷間鍛造用の水系の潤滑剤を塗布し、塗布した潤滑剤を乾燥することによって冷間塑性加工用素材の表面に潤滑剤の乾燥被膜を形成する本発明の代表的な潤滑被膜形成装置の一実施形態について説明する。
<実施例>本発明の潤滑被膜形成方法に関する実施例を比較例と共に挙げ、その効果をより具体的に説明する。
<素材>
後方せん孔試験片
後方せん孔試験に供した材料は市販のS45C球状化焼鈍材で、一度に250個の試験片を処理した。試験片の形状は直径30mmφで、高さが18〜40mmまで2mm単位で変えたものである。
<処理工程>
工程A
▲1▼脱脂:市販の脱脂剤(登録商標 ファインクリーナー4360,日本パーカライジング(株)製)濃度20g/L、温度60℃、浸漬10分
▲2▼水洗:水道水、60℃、浸漬30秒
▲3▼表面処理:本発明の処理剤、60℃、浸漬1分
▲4▼液切れ:30秒
▲5▼乾燥:80℃、3分
工程B
▲1▼ショットブラスト:ショット球φ0.5mm、5分
▲2▼水洗:水道水、90℃、浸漬90秒
▲3▼表面処理:本発明の処理剤、70℃、浸漬0.5分
▲4▼液切れ:60秒
▲5▼乾燥:100℃、5分
工程C
▲1▼サンドブラスト:金剛砂#60、10分
▲2▼水洗:70℃、浸漬20秒
▲3▼表面処理:本発明の処理剤、55℃、浸漬5分
▲4▼液切れ:40秒
▲5▼乾燥:80℃、10分
工程D
▲1▼湯洗:60℃、120秒
▲2▼表面処理:本発明の処理剤、50℃、浸漬1分
▲3▼液切れ:60秒
▲4▼乾燥:120℃、6分
工程E
▲1▼ショットブラスト:ショット球φ0.5mm、5分
▲2▼水洗:70℃、浸漬20秒
▲3▼表面処理:本発明の処理剤、50℃、浸漬10秒
▲4▼液切れ:60秒
▲5▼乾燥:90℃、4分
工程F
▲1▼脱脂:市販の脱脂剤(登録商標 ファインクリーナー4360,日本パーカライジング(株)製)濃度30g/L、温度55℃、浸漬5分
▲2▼水洗:水道水、70℃、浸漬30秒
▲3▼表面処理:本発明の処理剤、50℃、浸漬0.5分
▲4▼液切れ:3秒
▲5▼乾燥:100℃、3分
工程G
ショットブラスト:ショット球φ1.0mm、4分
▲2▼水洗:水道水、70℃、浸漬20秒
▲3▼表面処理:本発明の処理剤、10℃、浸漬1分間
▲4▼液切れ:50秒
▲5▼乾燥:60℃、8分
工程H
▲1▼脱脂:市販の脱脂剤(登録商標 ファインクリーナー4360,日本パーカライジング(株)製) 濃度30g/L、温度55℃、浸漬5分
▲2▼水洗:水道水、70℃、浸漬30秒
▲3▼表面処理:本発明の処理剤、50℃、浸漬30秒
▲4▼液切れ:30秒
▲5▼乾燥:30℃、5分
工程I
▲1▼脱脂:市販の脱脂剤(登録商標 ファインクリーナー4360,日本パーカライジング(株)製) 濃度30g/L、温度55℃、浸漬5分
▲2▼水洗:水道水、70℃、浸漬30秒
▲3▼表面処理:本発明の処理剤、50℃、浸漬30秒
▲4▼液切れ:30秒
▲5▼乾燥:200℃、5分
工程J
▲1▼脱脂:市販の脱脂剤(登録商標 ファインクリーナー4360,日本パーカライジング(株)製) 濃度30g/L、温度55℃、浸漬5分
▲2▼水洗:水道水、70℃、浸漬30秒
▲3▼表面処理:本発明の処理剤、50℃、浸漬30秒
▲4▼液切れ:30秒
▲5▼乾燥:150℃、30分
工程K
▲1▼脱脂:市販の脱脂剤(登録商標 ファインクリーナー4360,日本パーカライジング(株)製) 濃度30g/L、温度55℃、浸漬5分
▲2▼水洗:水道水、70℃、浸漬30秒
▲3▼表面処理:本発明の処理剤、50℃、浸漬30秒
▲4▼液切れ:30秒
▲5▼乾燥:150℃、10秒
<評価>
▲1▼冷間塑性加工用素材の潤滑被膜外観
多数個で潤滑被膜形成処理を行い、その後の潤滑被膜を肉眼で観察して、その被膜状態を評価した。
○=1個毎づつ潤滑被膜が正常に形成されている。×=潤滑被膜が乾燥不十分であったり、1個毎に冷間塑性加工用素材が分離せず、2個以上のかたまりが生じている。または、付着量過多からくる異物が冷間塑性加工用素材に付着したり、乾燥過剰から生じる潤滑被膜の変質が認められる。さらに、冷間塑性加工用素材の表面が清浄でない為に、潤滑被膜が不均一である。
▲2▼後方せん孔試験片
一組の円筒型試験材を、順次200トンクランクプレスのダイとパンチによって成形加工し、カップ状成型品を作成する。成形においては、15mmを残し、減面率60%の加工である。内面にキズが入っていない試験片のカップ内高さを良好穿孔深さ(mm)とする。
後方せん孔試験に供した材料は市販のS45C球状化焼鈍材で、試験片の形状は直径25mmφで、高さが16〜44mmまで2mm単位で変えたものである。なお、ダイはSKD11、パンチはHAP40、加工速度は30ストローク/分である。
【実施例1】
以下に示す水系潤滑剤1(分散のためにノニオン系界面活性剤1重量%添加)を用い、工程Aにて処理した。
水系潤滑剤1
(A)水溶性無機塩:ホウ酸カリウム
(B)ワックス:ポリエチレンワックス
被膜重量,g/m2:15
【実施例2】
水系潤滑剤1を用い、工程Bにて処理をした。
【実施例3】
水系潤滑剤1を用い、工程Cにて処理をした。
【実施例4】
以下に示す水系潤滑剤2(分散のためにノニオン系界面活性剤2重量%添加)
を用い、工程Aにて処理した。
水系潤滑剤2
(A)水溶性無機塩:ケイ酸カリウム
(B)ワックス:プロピレンワックス
被膜重量,g/m2:20
【実施例5】
以下に示す水系潤滑剤3(分散のためにノニオン系界面活性剤1.5重量%添加)を用い、工程Bにて処理した。
水系潤滑剤3
(A)水溶性無機塩:モリブデン酸アンモニウム
(B)二硫化モリブデン
被膜重量,g/m2:5
【実施例6】
以下に示す水系潤滑剤4(分散のためにノニオン系界面活性剤1重量%添加)を用い、工程Cにて処理した。
水系潤滑剤4
(A)水溶性無機塩:硫酸カリウム
(B)ワックス:カルナバワックス
脂肪酸の金属塩:ステアリン酸カルシウム
被膜重量,g/m2:6
【実施例7】
以下に示す水系潤滑剤5(分散のためにノニオン系界面活性剤1重量%添加)を用い、工程Aにて処理した。
水系潤滑剤5
(A)水溶性無機塩:4ホウ酸ナトリウム+硫酸カリウム(重量比=1:1)
(B)ワックス:マイクロクリスタリンワックス+パラフィンワックス
(重量比=1:1)
被膜重量,g/m2:3
【比較例1】
水系潤滑剤1を用い、工程Dにて処理をした。
【比較例2】
水系潤滑剤1を用い、工程Eにて処理をした。
【比較例3】
水系潤滑剤1を用い、工程Fにて処理をした。
【比較例4】
水系潤滑剤1を用い、工程Gにて処理をした。
【比較例5】
水系潤滑剤1を用い、工程Hにて処理をした。
【比較例6】
水系潤滑剤1を用い、工程Iにて処理をした。
【比較例7】
水系潤滑剤1を用い、工程Jにて処理をした。
【比較例8】
水系潤滑剤1を用い、工程Kにて処理をした。
【比較例9】
以下に示す水系潤滑剤6(分散のためにノニオン系界面活性剤1重量%添加)を用い、工程Aにて処理した。
水系潤滑剤6
(A)水溶性無機塩:硫酸カリウム
(B)ワックス:パラフィンワックス
被膜重量、g/m2:0.5
【比較例10】
以下に示す水系潤滑剤7(分散のためにノニオン系界面活性剤1重量%添加)を用い、工程Bにて処理した。
水系潤滑剤7
(A)水溶性無機塩:硫酸カリウム
被膜重量、g/m2:15
【比較例11】
以下に示す水系潤滑剤8(分散のためにノニオン系界面活性剤1重量%添加)を用い、工程Cにて処理した。
水系潤滑剤8
(B)ワックス:カルナバワックス
被膜重量、g/m2:10
【比較例12】
以下に示す水系潤滑剤9(分散のためにノニオン系界面活性剤2重量%添加)を用い、工程Dにて処理した。
水系潤滑剤9
(A)水溶性無機塩:4ホウ酸ナトリウム
(B)ワックス:カルナバワックス
被膜重量、g/m2:30
【0027】
以上の試験の結果を図1に示す。図1から明らかなように、本発明の潤滑被膜形成方法を用いた実施例1から7は簡便な工程により優れた潤滑性を発揮するとともに、冷間塑性加工用素材1個ごとに正常な潤滑被膜が形成されていることがわかる。比較例1は表面の清浄化を行っていないために、多数個処理の場合、水系潤滑剤の被覆が不均一になり、潤滑性が劣っていた。比較例2、比較例4は、表面処理の条件が悪く、冷間塑性加工用素材の加熱が不十分であるため、乾燥不良となり、潤滑被膜の外観が悪化し、潤滑性が低下した。比較例5、比較例8は、乾燥条件が悪く、乾燥不良となり、潤滑処理後の外観が悪化し、潤滑性が低下した。比較例3は、液切れ時間が不足しており、過剰の水系潤滑剤が冷間塑性加工用素材に残存したため、異物が付着することによる潤滑性の低下が起きた。比較例6および比較例7は、乾燥条件が不適切なために、潤滑被膜が変質し、その結果、潤滑性の低下を招いた。比較例9は、潤滑被膜の被膜量が低すぎるために、潤滑性が悪化した。比較例10、比較例11は、所定の水系潤滑剤でないために、潤滑性が低下し、比較例12は、過剰な潤滑被膜量のために、多数個処理のもとでは、冷間塑性加工用素材がそれぞれ分離せず、2個以上が固まった素材があり、また、異物も発生したために、潤滑性が低下した。
【0028】
潤滑被膜形成装置の実施例を図2〜10を参照しつつ説明する。本発明の潤滑被膜形成装置は種々の形状の冷間塑性加工用素材1に対応できるが、本実施形態においては、中空の円盤の形状をした冷間塑性加工用素材1について説明する。本実施形態における潤滑被覆形成装置は、図2にその正面図を概略的に示しているが、冷間塑性加工用素材1に所定の潤滑剤を塗布するための乾燥手段2からなるのが基本である。尚、実施形態の一つとしては、冷間塑性加工用素材1を貯蔵するための貯蔵手段6から、冷間塑性加工用素材1を潤滑剤塗布手段3に供給し、所定時間後に液切れ手段4において過剰の潤滑剤を除去し、乾燥手段2に冷間塑性加工用素材1を投入し、所定の乾燥後に収容手段5に収容するものがある。この一実施形態では、ショットブラスト、サンドブラスト、アルカリ脱脂および酸洗浄からなる群から選ばれる少なくとも1種類の清浄化手段については説明していないが、現在通常に使われている各種手段で構わない。したがって、冷間塑性加工用素材1は、予めショットブラスト等により清浄化処理されているものとして、この一実施形態の各工程を順に詳しく説明する。
【0029】
前記貯蔵手段6は、図2、図3に示す如く、冷間塑性加工用素材1を貯蔵する4個の貯蔵箱(ホッパー)と、各貯蔵箱の底板が下に落ちるいわゆる落し蓋7と、落し蓋に接続している開閉用アーム8、9と、開閉用のエアシリンダー10と、貯蔵箱を支持する支持棒11と、支持台12とから構成されている。エアシリンダー10にはエアー配管を経由して圧縮エアーが送圧されている。エアシリンダー10の開閉は、電気的に、または、手動で制御している。ここではエアー駆動であるが、油圧駆動、水圧駆動などでも可能である。エアシリンダー10が一方向に移動すると、開閉用アーム8、9が従動し、指定の貯蔵箱の底板が、下方に開く。エアーの送圧の方向を変えることにより、逆の運動をすることができる。ホッパーは4分画であるが、ホッパーの数は任意であり、必要に応じ、1個から10個以上設けても当然に構わない。また、ホッパーの上に同機構のホッパーを積み重ね、ホッパーとホッパーの間に計量桝を設けて、分画を2段回もしくは、それ以上行っても良い。これは、冷間塑性加工用素材1が規定の移動箱に保管されており、まとめてホッパー等に貯蔵したい場合に利用される。ホッパーから落下した冷間塑性加工用素材1は、貯蔵箱の下に配設された、傾斜した筒13の中を通過する。筒13は、塗布手段3のバスケットに間違いなく冷間塑性加工用素材1を導入するためのものである。冷間塑性加工用素材1の通過を促すために、必要に応じて外部から筒13に振動を与えてもよい。ホッパーの落し蓋7および筒13の傾斜は少しでもあればよいが、望ましくは10度から90度、更に望ましくは、30度以上90度が望ましい。90度の傾斜とは、落し蓋が鉛直に垂下することをいう。
【0030】
前記塗布手段3は、冷間塑性加工用素材1を潤滑剤に接触させれば足りる。本実施例では、図2、図3に示す如く、冷間塑性加工用素材1を収納した容器3(以下、バスケット3)を潤滑剤に接触させている。潤滑剤槽15は、2重の槽で構成されていて、内側に潤滑剤14、外側に加熱液体が入るようになっている。外側の加熱液体は、水等が使用できるが、電気ヒーター16により加熱することができ、潤滑剤14は所定の温度まで加温され、当該温度に維持される。所定の温度とは、30℃から70℃、より望ましくは60℃から70℃である。また、潤滑剤槽15には、移動機構17が付与され、必要に応じ、複数の潤滑剤槽15を入れ替えることも可能である。接触時間は、0.5分から10分間であるが、望ましくは4分から10分間である。又、潤滑剤槽15の内側と外側にある液体の混合を目的として、ポンプ循環や、プロペラ攪拌、超音波振動、超振動などを行うことも可能である。
【0031】
バスケット3は、図2において、右斜め上に上昇し、液切れ手段4(とい4)の上空を通過し、冷間塑性加工用素材1を乾燥手段2(バレル2)に投入する。潤滑剤槽15から出槽したバスケット3から、過剰な潤滑剤が落滴するので、それをとい4に受ける。過剰な潤滑剤は、とい4のくだり斜面に沿って潤滑剤槽15に戻る。この方式により、潤滑剤の使用量を最小限に抑制し、過剰な潤滑剤が乾燥するのを確実に避けることができる。バスケット3は、冷間塑性加工用素材1をバレル2に投入した後、移動開始前の位置に戻る。液切れ時間は、5秒から60秒間、望ましくは10秒から60秒間である。
【0032】
バスケット3は図2〜図4に示す如く、移動体18に装着されている。移動体18には2本の車軸19a、19bが装着され、それぞれの車軸には2個のベアリング20が装着されている。バスケット3は車軸19bに固定されていおり、ベアリング20を介して自由に回転しうる状態にある。また、車軸19bに装着されているベアリング20間で歯車21が車軸19bに固定されている。移動体18のベアリング20を上下から挟むようにレール22が2列並行に設置され、かつ、移動体18の移動方向の上端と下端とに接続部23a、23bを有するチェーン23が接合されている。チェーン23はレール22の上端と下端とにある歯車24、25に巻きついている。モーター26の回転に従い、チェーン23が移動する。チェーン23の移動に従い、移動体18も移動する。モーターの回転を正逆反転させることにより、移動体をレールの上方、下方に移動させることが可能となる。さらに、レール20間に固定された板状の歯27が、移動体18の歯車21とかみ合うようになっている。移動体18が移動して、歯車21が板状の歯27にかみ合うと、車軸19bが時計方向に回転し、バスケット3も時計方向に回転し、バスケット3に収納されている冷間塑性加工用素材1が、バスケット3から排出され、ガイド28を介してバレル2に投入される。
【0033】
乾燥手段2(バレル2)は、図5〜図8に示す如く、開口部29を有し、もしくは、開口部29と内蓋30とを有している。バレル2内部には突起31a、31bが必要に応じ設置される。図2、図3に示す如く、バレル2の側板に接続された車軸31が、バレル2の両側にあるベアリング32により支持される。モーター33により車軸31を回転駆動することができる。バレル2の実施例として円筒のみを掲げているが、角筒などでも良く、円筒に限定されない。突起31が、更に細かな突起32a(円形)、32b(角型)等の凸凹を有していると、潤滑剤が塗布された冷間塑性加工用素材1同士の固着を防ぐ効果が高くなる。また、バレル2には、熱風の通過性を向上させるための穴が設けられている。突起31の設置数は、冷間塑性加工用素材1に応じて変更が可能である。望ましくは1個から6個であり、より望ましくは、2個から4個である。穴のサイズは基本的に任意であるが、冷間塑性加工用素材1が通過しないサイズの穴であればよく、バレルの強度との関係で穴のサイズが決まる。穴のサイズは、望ましくは3mmφから15mmφ、よりのぞましくは、6mmφから8mmφである。穴の形状は、丸型、角型、鉤型、楕円型、十字型など任意である。また、穴の間隔は、熱風の通過性できめればよいが、望ましくは0.5cmから5cm、更に望ましくは1cmから3cmである。バレル2は、適当な熱源41で加熱する。本発明の実施形態では、石油ジェットヒーターであるが、遠赤外ヒーター、電気ヒーター等の乾燥手段を使用することもできる。乾燥時間は、0.5分から10分間であるが、より望ましくは、4分から10分間である。
【0034】
潤滑剤が塗布され乾燥された冷間塑性加工用素材1を、収容手段5に収容することもできる。収容手段5は、図9、図10に示す如く、収容箱34と、落滴箱35と、両者が同乗したトレイ台36とからなる。トレイ台36は、モーター37の駆動により歯車38が回転し、トレイ台36に装着された板歯39が従動して、車輪40により移動する。定常状態では、トレイ台36にある落滴箱35は、バレル2の真下に配置されている。冷間塑性加工用素材1がバレル2に投入された後、乾燥の過程で、冷間塑性加工用素材1から落滴する多少の過剰の潤滑剤を、落滴箱35で受ける。乾燥終了後、バレル2は開口部29が真下になるように回転するが、その際にはモーター37の駆動によりトレイ台36が移動し、収容箱34がバレル2の真下へ移動する。潤滑剤が塗布され乾燥された冷間塑性加工用素材1が、収容箱34に収容される。この後、モーター37の回転を正回転から逆回転に切り替えることにより、トレイ台36を元の位置に戻すことができる。
【0035】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の潤滑被膜形成方法を用いると、複数の高速プレス機に対応しうる大量処理が可能となる。つまり多数の冷間塑性加工用素材を同時に一括して処理することが可能となる。
【0036】
また、本発明の潤滑被膜形成装置では、潤滑剤を塗布した冷間塑性加工用素材1を内部に突起を有するバレル2に貯留し、バレル2の回転を交互に正逆反転させ、潤滑剤が塗布された冷間塑性加工用素材を突起によって持ち上げ、突起の反対側に落下させながら、熱風乾燥するので、塗布物のバレル内部での揺動が飛躍的に向上し、塗布物同士の密着が非常に効果的に防止される。さらに、バレル2に開口部を設け、または、開口部に内蓋を設置することで、乾燥効率が非常に向上する。さらに、塗布手段3、液切れ手段4、収容手段5、貯蔵手段6を併設することで、多数個をひとまとめで処理することが可能となる。このような潤滑被膜形成装置は、多数の冷間塑性加工用素材を同時に一括して処理できるので生産能力が高く、小型であり、潤滑剤が塗布された冷間塑性加工用素材同士の固着や水系の潤滑剤の付着不良を解消できるので乾燥効率が高く、産業上の利用価値が非常に高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の潤滑被膜形成方法の実施例と比較例との性能比較表である。
【図2】本発明の一実施形態における潤滑被膜形成装置の概略を示す正面図である。
【図3】同実施形態の潤滑被膜形成装置の平面図である。
【図4】同実施形態の潤滑被膜形成装置の液切れ手段の正面図である。
【図5】同実施形態のバレル(乾燥手段)の一部破断線を含む正面図である。
【図6】同バレルの一部破断線を含む側面図である。
【図7】同バレルの一部破断線を含む正面図である。
【図8】同バレルの一部破断線を含む側面図である。
【図9】同実施形態の収容手段の正面図である
【図10】同収容手段の側面図である。
【符号の説明】
1 冷間塑性加工用素材
2 乾燥手段
3 潤滑剤塗布手段
4 液切れ手段
5 収容手段
6 貯蔵手段
Claims (8)
- 冷間鍛造用の水系の潤滑剤が塗布された冷間塑性加工用素材を内部に突起を有するバレルに貯留し、バレルの回転を交互に正逆反転させながら熱風をバレルに送風する乾燥手段を備え、バレルの回転が交互に正逆反転するのに伴って、潤滑剤が塗布された冷間塑性加工用素材が突起によって持ち上げられ、突起の反対側に落下して、冷間塑性加工用素材同士が効果的に混合することにより、冷間塑性加工用素材同士の付着を解消しつつ、潤滑剤を乾燥させることを特徴とする潤滑被膜形成装置。
- バレルに開口部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の潤滑被膜形成装置。
- 開口部にバレル内側に開閉する蓋が付設され、バレルの回転により蓋が開閉することを特徴とする請求項2に記載の潤滑被膜形成装置。
- 潤滑剤塗布手段を備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の潤滑被膜形成装置
- 潤滑剤塗布手段は、所定の温度まで加温した潤滑剤に、冷間塑性加工用素材を収容容器ごと接触させて、冷間塑性加工用素材を所定の温度まで加熱することを特徴とする請求項4に記載の潤滑被膜形成装置。
- 塗布された潤滑剤のうち過剰な潤滑剤を除去するための液切れ手段を備え、液切れ手段は、冷間塑性加工用素材を収容した容器を乾燥手段まで移動させながら過剰な潤滑剤を除去し、乾燥手段のバレルに冷間塑性加工用素材を投入することを特徴とする請求項4又は5に記載の潤滑被膜形成装置。
- 潤滑被膜を有する冷間塑性加工用素材を収容する収容手段を備え、収容手段は、収容箱と、過剰な潤滑剤の落滴受け箱とを有し、前記箱が交互に乾燥手段のバレルの直下へ移動することを特徴とする請求項6に記載の潤滑被膜形成装置。
- 冷間塑性加工用素材を貯蔵するための貯蔵手段を有し、貯蔵手段は、1個もしくは2個以上の分画用貯蔵箱を有し、落し蓋により分画された冷間塑性加工用素材が、潤滑剤塗布手段に供給されることを特徴とする請求項7に記載の潤滑被膜形成装置。
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