特許文献1に記載の強誘電体材料を挟んで互いに直交するX方向およびY方向にストライプ電極を形成した単純マトリックス型のメモリでは、従来同様の複雑なプロセスを高価な装置を用いて実現する必要がある。非特許文献1記載の有機材料を用いたメモリでは、原理は開示されているが、具体的に、大量のメモリを集積して製造することは実現されていない。また、記録層にあたる自己組織化膜は単分子膜であるので、記録層の基板となる第1の電極表面に分子長さレベルの極めて高い平坦性が必要となり、電極表面の凹凸が大きい場合、記録層となる単分子膜に被覆されない部分が生じやすいため、前記第1の電極と前記第2の電極の間で短絡を生じやすい。
本発明の目的は、メモリを大量に集積することが容易で、安価に実現可能であり、しかも信頼性の高いメモリ素子とその製造技術を提供することである。
前記の課題を解決するためになされた本発明のメモリ素子は、図1に示す如く、第1の電極12と、該第1の電極12上に配置された、メモリ機能を有する有機化合物を含む層16が微粒子15の表面に形成された複合微粒子14と、前記第1の電極12に対して、前記複合微粒子14を介して配置された第2の電極191から構成される。
一般に、電極表面は凹凸を持っており、特に長距離にわたって分子長レベルでの凹凸の少ない平坦な表面を得ることは極めて困難である。これに対して微粒子では、第1の電極の表面の凹凸と比較して滑らかな表面を持つものを容易に作製しうる。従って、微粒子表面には、メモリ機能を有する有機化合物を均一に被覆し易い。本発明のメモリ素子においては、メモリ機能を有する有機化合物を含む層16が微粒子15の表面に形成された複合微粒子14を、第1の電極12と第2の電極191との間に介在させた構成を採ることで、分子の膜ではカバーしきれない電極表面の凹凸を、該凹凸よりも相対的に大きな複合微粒子を用いることにより、凹凸を十分カバーして複合微粒子を当該電極上に配置することができる。これによって、導電性の微粒子と第1の電極間、導電性の微粒子と第2の電極間の短絡を生じにくくすることができ、更に、第1の電極と第2の電極との間の短絡についてはより生じにくくすることができる。
なお、本明細書中における「メモリ機能を有する有機化合物」とは、外部からの入力、たとえば、電界、電流、熱、磁界などにより、状態1から別の状態2へと変換が可逆的あるいは非可逆的に可能な有機化合物であり、かつ、状態1と状態2の差異が、外部に情報(たとえば、電圧、電流、磁界など)として出力することができる有機化合物を指す。状態1、状態2とは、たとえば、導電性(抵抗)、分極、磁性などの一状態である。また、外部からの入力あるいは、外部への出力、または、その両方が、第1の電極と第2の電極を介して行われる。
本発明のメモリ素子における第2の電極は、導電性材料からなる微粒子で構成されるのが好ましい。導電性材料からなる微粒子の表面は一般に極めて滑らかな表面を有しており、メモリ機能を有する有機化合物を含む層が形成されている微粒子が導電性の微粒子であっても、メモリ機能を有する有機化合物を含む層が形成されている微粒子や第1の電極と短絡を生じにくい。このような導電性材料からなる微粒子で構成される第2の電極は、たとえば塗布法、印刷法、インクジェットプリント法など、常温近傍の温度でのプロセスにて形成することが可能であり、蒸着法やスパッタ法などのようにエネルギーを持った原子やクラスタを供給する方法と比較して、第2の電極形成時に、吸着しているメモリ機能を有する有機化合物にダメージを与えにくい。
また前記メモリ機能は、有機化合物の導電率が、印加された電圧に対してヒステリシスを持つことを利用して実現されたものであるのが好ましい。有機化合物の導電率が、印加された電圧に対してヒステリシスを持つとは、たとえば、初期状態である状態1の有機化合物(導電率はS1)を挟む2つの電極の間にかける電圧を0から大きくしていく時、ある閾値電圧V1以上の電圧で、有機化合物の状態が状態2に転移し、それに伴い導電率がS2に変化し、この状態から電圧を降下していくとき、V1よりも小さい電圧でも状態2を有機化合物は維持し、V1より小さい電圧V2以下で導電率がS1である初期状態の状態1に戻る現象を意味する。このような場合、電圧V2以下の電圧の印加または、電圧V1以上の電圧の印加で、データの書き込みまたは消去を行い、電圧V3(V2<V3<V1)の印加時の導電率を計測することで、データの書込み/読出しが可能なメモリが実現される。2つの電極でメモリ機能を有する有機化合物を挟んだ単純な構造でデータの書き込みと読み出しが実現できるので、容易に大量のメモリを集積することが可能である。
前記メモリ機能を有する有機化合物を含む層は、自己組織化単分子膜(Self−assembled Monolayer:SAM)で構成されるのが好ましい。SAMとは、膜を構成させる有機化合物の溶液に基板を浸すだけで自発的に形成される組織化された膜を意味する。SAMには、代表的なものとしてアルカンチオールSAMなどの有機硫黄系のSAMやシランカップリング剤を用いた有機シラン系のSAMのほか、静電的な吸着を利用したSAMがある。SAM膜を利用することにより、緻密で単分子層の極めて薄い膜が、非常に簡単なプロセス(基本的に、基板を目的有機化合物の溶液に浸すのみ)で作製可能である。
本発明のメモリ素子は、通常、基板の一方側(基板の厚さ方向一方側)に第1の電極12、複合微粒子14および第2の電極191が順次形成されて実現される。本発明においては、第1の電極と第2の電極の交差する領域(すなわち、基板の厚さ方向に関しメモリ素子をみたときに第1の電極と第2の電極とが互いに重なり合う領域)以外の基板表面および第1の電極の表面が、電気的に絶縁性の有機化合物で被覆されていてもよい。電気的に絶縁性とは、少なくとも、メモリの動作電圧の範囲内において電気的な絶縁性を有することを意味する。絶縁性の有機化合物の存在により、記録に関与する領域(記録領域)を制限することができるので、漏れ電界により記録領域が第1の電極と第2の電極の交差する領域の周囲に広がることを防止し、隣接する記録単位の間の相互作用(干渉など)を抑えることができる。
第1の電極と第2の電極は、それぞれ帯状で、交差した配置にすることが集積などの点で好ましい。ある厚さを有する第1の電極が、平坦な基板表面の上に形成されている場合には、第1の電極の厚さ分の大きさの段差を越えて第2の電極を形成する必要がある。この場合、段差による断線や、段差に起因した第1の電極と第2の電極の間の短絡などを防止するためには、第1の電極の厚さは薄い方が好ましいが、第1の電極の抵抗値を低くするためには、ある程度の厚さが必要である。また、第1の電極と基板との間の段差は、第1の電極あるいは基板の上に吸着あるいは反応させる有機化合物の層における分子の並びや、密度などの均一性に乱れを生じる原因となるので、できるだけ小さい方が望ましい。
また本発明においては、一表面側に凹部を有する基板を用い、第1の電極が、前記基板の凹部に埋設されたかたちで形成されてもよい。これにより、平坦な基板表面に第1の電極を形成する場合と比較して、基板と第1の電極によって生じる段差を小さくでき、電極の断線や短絡、有機化合物の層における分子の並びや密度などの均一性の乱れを抑えることが可能となり、素子の信頼性を高めることが可能となる。
本発明のメモリ素子は、上述した構成を備えるならば、その製造方法は特に制限されるものではないが、本発明においては、上記メモリ素子を好適に製造することができるメモリ素子の新規な製造方法も提供する。本発明のメモリ素子の製造方法は、基板に第1の電極を形成する工程と、該第1の電極の上に、第1の有機化合物を含む層を形成する工程と、前記基板の上に第2の有機化合物を含む層を形成する工程と、所定の形状の領域の前記第1の有機化合物を含む層および前記第2の有機化合物を含む層を除去する工程と、メモリ機能を有する第3の有機化合物を含む層が第1の微粒子の表面を覆って吸着または反応して形成された複合微粒子を、前記第1の有機化合物を含む層が除去された前記第1の電極の上に選択的に吸着させる工程と、第4の有機化合物を含む層を前記第2の有機化合物を含む層が除去されて露出した前記基板上に形成する工程と、分散媒に分散させた導電性の第3の微粒子を、第3の有機化合物を含む層および第4の有機化合物を含む層の表面に供給し、前記分散媒を蒸発、乾燥させて前記第3の有機化合物を含む層および前記第4の有機化合物を含む層の存在する領域の上に導電性の前記第3の微粒子から構成される第2の電極を形成する工程とを基本的に含み、前記第1の電極に吸着または反応した前記第1の有機化合物を含む層の表面側、および、前記基板に吸着または反応した前記第2の有機化合物を含む層の表面側が前記分散媒と親和性がなく、かつ、前記第3の有機化合物を含む層の表面側、および前記第4の有機化合物を含む層の表面側が前記分散媒と親和性を有することを特徴としている。なおここで「表面側」とは、各層において基板から離反した側を指す。
本発明において、親和性が大きいとは、単独でいるよりも親和性を有する対象に接触していた方が系の自由エネルギーが小さいことを意味する。親和性の代表的なものとしては、材料の水に対する親和性を表す疎水性、親水性が挙げられる。疎水性及び親水性は、それぞれ水に対する親和性小さいこと及び水に対する親和性が大きいことを意味する。ある対象物の液体に対する親和性の計測は、たとえば接触角測定法によって評価できる。接触角測定法とは、平面状の前記対象物表面に前記液体の液滴1つを乗せたときの液滴と表面との接触面の境界線のある一点における液滴表面の接線と前記対象物表面との間の角度(接触角)を測定する方法である。接触角が大きいほど親和性が小さく、接触角が小さいほど親和性は大きい。なお、本発明においては、たとえば液体が水である場合には、接触角測定法によって測定された接触角が概ね50°以下の場合には親和性が大きく、概ね90°を越える場合には親和性が小さいものと評価する。
前述の本発明のメモリ素子の製造方法において、第1の電極の形成よりも後の工程は、室温近傍の温度で実行可能であり、特に加熱などの工程を経ないので、熱によるダメージを受けやすい材料を使用することが可能である。所定の形状の領域の前記第1の有機化合物を含む層、および前記第2の有機化合物を含む層を除去する工程で、パターン形成のためのマスクを使用する場合があるが、パターン同士を厳密に位置合わせする必要のある工程がないので、簡便な工程で素子を作製できる。前記複合微粒子を前記第1の電極上に吸着または反応させてパターンを形成する工程は、有機化合物と被吸着物との選択的な吸着または反応を利用しており、また、前記第3の微粒子から構成される第2の電極のパターンを形成する工程では、分散媒と各層の表面側との親和性の違いを利用している。両者共に材料を供給するだけで自己組織的に進行する工程であるので、通常のフォトリソグラフィーとエッチングによるパターン形成工程と比較して、簡便で、ステッパなどの高価な装置も必要ではなく、工程に伴うダメージも少ない。
第4の有機化合物として前記分散媒と親和性のある官能基を有するものを用い、前記官能基が外側となるように第4の有機化合物を第2の微粒子に吸着させてなる複合微粒子を用いることによって前記第4の有機化合物を含む層を形成するようにしてもよい。このようにして第4の有機化合物を含む層を形成することで、第2の微粒子の大きさを適当な大きさにすることにより、第1の電極上の領域と基板上の領域での高さをほぼ同じにそろえることができる。これにより、第1の電極上と基板上の領域の段差に起因して第2の電極が不連続になる可能性を少なくすることができる。
第1の有機化合物および第2の有機化合物として親水基または疎水基を有するものを用い、かつ、第3の有機化合物および第4の有機化合物として疎水基または親水基を有するものを用い(すなわち、第1の有機化合物および第2の有機化合物として親水基を有するものを用いる場合には、第3の有機化合物および第4の有機化合物として疎水基を有するものを用いる)、これら有機化合物を含む各層を、いずれも前記官能基が表面側となるように形成するようにしてもよい。
第1の有機化合物および第2の有機化合物として疎水基を有するものを用い、かつ、第3の有機化合物および第4の有機化合物として親水基を有するものを用い、これらの有機化合物を含む各層を、いずれも前記官能基が表面側となるように形成する場合、前記第3の微粒子から構成される第2の電極のパターンを形成する工程において、前記第3の微粒子を分散する分散媒として親水性の分散媒を用いることにより、前記第3の微粒子を分散する分散媒を、第3の有機化合物を含む層の表面側および第4の有機化合物を含む層の表面側に供給するだけで、分散媒と各層の表面側の親和性の違いを利用して、第1の有機化合物を含む層および第2の有機化合物を含む層の存在する疎水性の領域では、分散媒がはじかれ、前記第3の有機化合物を含む層および前記第4の有機化合物を含む層の存在する親水性の領域にのみ、前記第3の微粒子を分散した分散媒を自己組織的に凝集させることができる。前記第3の有機化合物を含む層および前記第4の有機化合物を含む層の存在する親水性の領域にのみ自己組織的に前記第3の微粒子を分散した分散媒を蒸発などにより除去すると、導電性の第3の微粒子からなる第2の電極が前記第3の有機化合物を含む層および前記第4の有機化合物を含む層の存在する親水性の領域にのみ自己組織的に形成される。このような第2の電極の形成は、材料を供給するだけで自己組織的に進行する工程であるので、通常のフォトリソグラフィーとエッチングによるパターン形成工程と比較して、簡便で、ステッパなどの高価な装置も必要ではなく、工程に伴うダメージも少ない。
第1の有機化合物および第2の有機化合物として親水基を有するものを用い、かつ、第3の有機化合物および第4の有機化合物として疎水基を有するものを用い、これらの有機化合物を含む各層を、いずれも前記官能基が表面側となるように形成する場合には、第3の微粒子を疎水性の溶媒に分散させることにより、同様の効果が得られる。
また本発明においては、上記とは異なる以下のようなメモリ素子の製造方法も提供する。すなわち、基板に第1の電極を形成する工程と、該第1の電極の上に、第1の有機化合物を含む層を形成する工程と、前記基板の上に、第2の有機化合物を含む層を形成する工程と、所定の形状の領域の前記第1の有機化合物を含む層および前記第2の有機化合物を含む層を除去する工程と、メモリ機能を有する第3の有機化合物を含む層が表面に形成された第1の微粒子を、前記第1の有機化合物を含む層が除去された前記第1の電極の上に選択的に吸着させる工程と、第4の有機化合物を含む層を前記第2の有機化合物を含む層が除去されて露出した前記基板上に形成する工程と、導電性の第3の微粒子を、前記の表面に供給し、第3の有機化合物を含む層および第4の有機化合物を含む層の存在する領域の上に導電性の前記第3の微粒子から構成される第2の電極が形成する工程とを基本的に含み、前記第3の微粒子が、前記第1の有機化合物を含む層の表面側および前記第2の有機化合物を含む層の表面側とは吸着性または反応性がなく、かつ、前記第3の有機化合物を含む層の表面側および前記第4の有機化合物を含む層の表面側と吸着性または反応性がある官能基を表面に有するか、該官能基を有する有機化合物を表面に吸着または反応させたものであることを特徴とするメモリ素子の製造方法である。
かかる態様のメモリ素子の製造方法においても、第1の電極の形成よりも後の工程は、室温近傍の温度で実行可能であり、特に加熱などの工程を経ないので、熱によるダメージを受けやすい材料を使用することが可能である。所定の形状の領域の前記第1の有機化合物を含む層および前記第2の有機化合物を含む層を除去する工程で、パターン形成のためのマスクを使用する場合があるが、パターン同士を厳密に位置合わせする必要のある工程がないので、簡便な工程で素子を作製できる。
前記第3の有機化合物を含む層または前記第4の有機化合物を含む層が表面に形成された微粒子を前記第1の電極上または前記基板上への吸着または反応させてパターンを形成する工程および、前記第3の微粒子から構成される第2の電極のパターンを形成する工程では、有機化合物を含む層同士(有機化合物の官能基同士)の選択的な吸着または反応を利用しており、これらは材料を供給するだけで自己組織的に進行する工程であるので、通常のフォトリソグラフィーとエッチングによるパターン形成工程と比較して、簡便で、ステッパなどの高価な装置も必要ではなく、工程に伴うダメージも少ない工程である。
第4の有機化合物を含む層が、第4の有機化合物を第2の微粒子に吸着させてなる複合微粒子を用いて形成され、前記第2の微粒子が、前記第3の有機化合物を含む層の表面側および前記第4の有機化合物を含む層の表面側と吸着性または反応性を有する官能基を有する有機化合物を予め吸着されてなるものであってもよい。前記複合微粒子を用いて第4の有機化合物を含む層を形成することで、第2の微粒子の大きさを適当な大きさにすることにより、第1の電極上の領域と基板上の領域での高さをほぼ同じにそろえることができる。これにより、第1の電極上と基板上の領域の段差に起因して第2の電極が不連続になる可能性を少なくすることができる。
また、本発明のメモリ素子の製造方法においては、前記いずれの態様であっても、第1の有機化合物を含む層および第2の有機化合物を含む層を除去する工程が、電子線、光または粒子線を照射する工程であってもよい。所定の領域にのみ電子線、光または粒子線を照射することで、所定の形状の領域の第1の有機化合物を含む層および第2の有機化合物を含む層のみを除去することができる。所定の領域にのみ電子線、光または粒子線を照射する方法としては、たとえば、所定の形状のマスクを通して照射する方法、電子線、光または粒子線を適当な断面積のビーム状に絞り、このビームを操作することで所定の領域にのみ電子線、光または粒子線を照射する方法などがある。
基板上に第1の電極を形成する工程が、前記基板に形成された凹状のパターンに、前記第1の電極を埋め込む工程であってもよい。第1の電極と第2の電極は、それぞれ帯状で、交差した配置にすることが集積などの点で好ましい。その場合には第1の電極の厚さに依存した段差を通って第2の電極を形成する必要があるので、段差による断線や段差に起因した第1の電極と第2の電極の間の短絡などを防止するためには、第1の電極の厚さは薄い方が好ましいが、第1の電極の抵抗値を低くするためには、ある程度の厚さが必要である。また、第1の電極と基板との間の段差は、第1の電極あるいは基板の上に形成される有機化合物を含む層の構造や、密度などの均一性に乱れを生じる原因となるので段差はできるだけ小さい方が望ましい。基板に形成された凹状のパターンに、第1の電極を埋め込むことにより、基板と第1の電極によって生じる段差を小さくすることが可能となる。これにより、電極の断線や短絡、有機化合物を含む層における分子の並びや密度などの均一性の乱れを抑えることが可能となり、素子の信頼性を高めることが可能となる。
本発明によれば、2つの電極の間に分子層レベル程度の極めて薄い薄膜の記録層を持つメモリ素子において、電極間の短絡の可能性の少ない信頼性の高い構造を実現できる。また、本発明に関する構造を、有機化合物を含む層へのダメージが少なく、簡便で、安価な製造工程で製造することが可能となる。
以下、本発明に基づく有機メモリ素子の実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
本実施形態を、図を用いて説明する。
<構造>
図2は、本発明に基づくメモリ素子の構造の1例を示す斜視図である。本発明に基づくメモリ素子は、基板21に配置された第1の電極22と、該第1の電極22上に配置されたメモリ機能を有する第3の有機化合物を含む層26が第1の微粒子25の表面に形成された複合微粒子27と、前記第1の電極22に対して、前記複合微粒子27を介して配置された第2の電極291を、基本的に備える。
前記基板21としては、該基板21自体が所定の絶縁性を有する材料で構成されていてもよいし、少なくとも表面に、絶縁性の材料からなる層が形成されたものでもよい。
前記第1の電極22は、図2に示すように、前記基板21に埋設されていてもよい。基板に形成された凹部の深さは、前記第1の電極22の厚さに応じて適宜選択することができるが、通常、数nm〜1μm、好ましくは数十nm〜数百nmである。
前記基板21および前記第1の電極22の表面のうち、メモリ機能を有する前記第3の有機化合物を含む層26が表面に形成された前記第1の微粒子25、および第4の有機化合物を含む層28が配置されていない領域が、第1の有機化合物を含む層23および第2の有機化合物を含む層24で被覆されていてもよい。かかる場合、第1の有機化合物および第2の有機化合物は、少なくともメモリの動作電圧の範囲内において電気的に絶縁性であることが好ましい。
前記第2の電極291は、導電性材料からなる第3の微粒子29で構成されていてもよい。前記第3の微粒子29の粒子径は、数nm〜1μm、好ましくは数十nm〜100nmである。前記第3の微粒子29の形状は、表面に突起や凹凸が少なく、滑らかな面であることが望ましい。また特に好ましいのは、表面の滑らかな略球状あるいは略楕円球状である。
前記第1の微粒子25の大きさは、数nm〜1μm、好ましくは数十nm〜100nm程度である。また、前記第1の微粒子25の大きさは、前記第1の電極22の表面粗さの大きさと同程度以上の大きさが好ましい。前記第1の微粒子25の形状は、表面に突起や凹凸が少なく、滑らかな面であることが望ましい。また特に好ましいのは、表面の滑らかな略球状あるいは略楕円球状である。
前記第1の有機化合物を含む層23、前記第2の有機化合物を含む層24、前記第3の有機化合物を含む層26および前記第4の有機化合物を含む層28は、その少なくともいずれかが、自己組織化単分子膜(SAM膜)であることが好ましい。
<製法>
図3〜図5は、本発明に基づくメモリ素子の製造工程の1例を説明するためのフロー図である。まず、基板31に埋め込まれた第1の電極32を作製する。図3(a)に示す如く、前記基板31に公知のリソグラフィー法とエッチングにより、凹状のパターンを形成する。
次に、図3(b)に示す如く、凹部の深さ以上の膜厚の前記第1の電極32を構成する材料からなる薄膜を形成する。該薄膜の作製方法としては、特に限定されないが、蒸着法、スパッタリング法、CVD法、塗布法、めっき法などの公知の方法が用いられうる。
次いで、図3(c)に示す如く、凹部の前記薄膜の表面が前記基板31の表面とほぼ同一表面になり、前記基板31の表面が露出するまで前記薄膜を研磨する。研磨方法については、公知の方法が用いられうるが、前記第1の電極の材料が金属の場合、たとえば、化学機械研磨(CMP)法が好ましい例として挙げられる。CMP法によれば、電極面と基板面の高低差を極めて小さく(数10nm程度が可能)することが可能である。前記のような、基板に埋め込まれた電極を作製する一連の方法は、ダマシン法と呼ばれ、LSIの多層配線技術の一つとして公知である。
次に図3(d)に示す如く、前記基板31の表面に、たとえば親水性/疎水性のように溶媒に対して特定の親和性を有する第2の有機化合物を用いて、当該第2の有機化合物を含む層34を形成する。第2の有機化合物を含む層34は、たとえば有機SAM膜を利用して形成するのが好ましい。前記第2の有機化合物としては、一方の端が前記基板31の材料に選択的に反応または吸着する官能基を有し、他方の端は、たとえば親水性/疎水性のようにある溶媒に対して特定の親和性を有する官能基を有する有機化合物が本方法では用いられ、特には、自己組織的に均一な分子膜を形成する有機化合物が好ましく用いられる。前記第2の有機化合物を適当な溶媒に溶解した溶液に、前記第1の電極32を埋設した前記基板31を浸漬すると、前記第2の有機化合物の一方の官能基が前記基板31に吸着または反応し、前記第2の有機化合物の他端を表面側にして、単分子膜が形成される。
次に、図4(e)に示す如く、前記第1の電極32の表面に、たとえば親水性/疎水性のように溶媒に対して特定の親和性を有する第1の有機化合物を含む層33を形成する。形成方法としては、たとえば有機自己組織化単分子膜(SAM膜)を利用した方法が好ましい。前記第1の有機化合物を含む層33として、一方の端が前記第1の電極32の材料に選択的に反応または吸着する官能基を有し、他方の端は、たとえば親水性/疎水性のように溶媒に対して特定の親和性を有する官能基を有する分子で、自己組織的に均一な分子膜を形成するものが本方法では用いられる。前記の分子の溶液に、前記の第1の電極32を埋設した基板31を浸漬すると、前記第1の有機化合物の一方の官能基が前記第1の電極に吸着し、前記第1の有機化合物の他端を表面側にして、単分子膜が形成される。
前記第2の有機化合物を含む層34を前記基板31の上に形成する工程と、
前記第1の有機化合物を含む層33を前記第1の電極32の上に形成する工程を実施する順番は、特に限定されない。
次に、図4(f)に示す如く、帯状の前記第1の電極32の長手方向とは平行でない方向、好ましくはほぼ直交する方向の帯状の形状の領域に、たとえばUVなどの光、電子線、粒子線などのエネルギー束を照射し、照射された部分の前記第1の有機化合物を含む層33および前記第2の有機化合物を含む層34を除去する。所定の領域にのみ電子線、光、粒子線を照射する方法としては、たとえば、所定の形状のマスクを通して照射する方法、電子線、光、粒子線を適当な断面積のビーム状に絞り、このビームを操作することで所定の領域にのみ電子線、光、粒子線を照射する方法などが用いられうる。照射する電子線、光、粒子線には、前記第1の有機化合物と前記第1の電極32、および、前記第2の有機化合物と前記基板31の吸着エネルギーまたは結合エネルギー以上のエネルギーが必要とされる。具体的には、たとえば、光としてUV光を用いる場合には、波長193nmのArFレーザー光や、波長248nmのKrFレーザー光などが用いられる。
次に、図4(g)に示す如く、第4の有機化合物を含む層38を、前記基板の前記第2の有機化合物を含む層34が除去された領域に形成する。具体的な方法としては、たとえば、一方の端が前記基板31に吸着または反応する官能基を有し、かつ、他端に前記第3の有機化合物と同様の親和性を有する官能基を有する第4の有機化合物を、前記基板31に選択的に反応または吸着させる。前記第4の有機化合物を溶解した溶液に、前記第2の有機化合物が除去された構造体を浸漬することで、前記第4の有機化合物を含む層38が自己組織的に形成される。前記第4の有機化合物は、メモリ機能、導電性などの性質は特に限定されないが、メモリ機能を有しない、非導電性の有機化合物であることが望ましい。
次いで、図4(h)に示す如く、前記第1の有機化合物を含む層33が除去された前記第1の電極32のパターン上に、複合微粒子37を選択的に吸着させる。複合微粒子37は、前述のように第1の微粒子35の表面に、メモリ機能を有する第3の有機化合物を含む層36が形成されてなる構成のものである。第3の有機化合物を含む層36は、第1の微粒子35の表面を覆って吸着または反応することで形成されてなる。前記第3の有機化合物としては、一方の端が前記第1の微粒子35に吸着または反応する官能基を有し、他方の端に前記第1の電極32に吸着または反応する官能基であって、かつ、前記第1の有機化合物および前記第2の有機化合物と親和性がある溶媒に対して親和性を有しない官能基を有する有機化合物を用いる。メモリ機能を有する前記第3の有機化合物を含む層36は、たとえば前記第3の有機化合物の溶液に、前記第1の微粒子35を投入することにより自己組織的に形成できる。複合微粒子37を前記第1の有機化合物を含む層33が除去された前記第1の電極32のパターン上に選択的に吸着させる方法としては、たとえば前記第3の有機化合物を含む層36が表面を覆って吸着または反応した第1の微粒子35を溶媒に分散させ、この分散液中に前記第1の有機化合物を含む層33および前記第2の有機化合物を含む層34を所望の領域にわたって除去した構造体を浸漬することで、自己組織的に作製する方法が挙げられる。
次に、
前記第1の有機化合物を含む層33および第2の有機化合物を含む層34の表面側(基板31側とは反対の側)の末端の官能基と親和性がなく、かつ、前記第3の有機化合物を含む層36および前記第4の有機化合物を含む層38の表面側の末端の官能基と親和性のある分散媒に分散させた導電性の第3の微粒子39を、前記の表面に供給する。
導電性の前記第3の微粒子39が分散された分散媒は、前記第1の有機化合物および前記第2の有機化合物と親和性がないので、前記分散媒と親和性のある前記第3の有機化合物および前記第4の有機化合物の存在する帯状の領域上にのみ凝集させることができる。溶媒を蒸発、乾燥させることで、図5(i)に示す如く、前記第3の有機化合物を含む層36および前記第4の有機化合物を含む層38の存在する帯状の領域の上にのみ導電性の前記第3の微粒子39が残り、第2の電極391が形成できる。
導電性の第3の微粒子39を分散させた分散液を表面に供給する方法は、たとえば、浸漬法、塗布法、スピンコート法などが用いられうる。一回の過程で前記第2の電極391の形成が不充分である場合には、分散液の供給と乾燥を数回繰り返してもよい。また一回の過程で前記第2の電極391の形成が不充分である場合には、数回繰り返す代わりに、電解めっき法や無電解めっき法などの方法を用いてもよい
。
<材料>
基板としては、少なくとも表面に、絶縁性の材料からなる膜が形成されたもので、特定の官能基との反応または吸着を生じる性質を有するものであれば特に限定されない。前記絶縁性の材料としては、たとえば、シリコン酸化膜、アルミニウム酸化膜が、通常水酸基で表面が覆われているため、特に好ましいものとして挙げることができる。
第1の電極の材料としては、所定の導電性を有していれば特に限定されないが、たとえば、金、銀、銅、白金、パラジウムなどの金属のほか、ポリアニリン類、ポリアセチレン類などの導電性高分子、ITOなどの酸化物導電体などが用いられうる。
第1の有機化合物は、たとえばn−アルカンや、それに側鎖を持つもの、あるいは、これらの分子の水素の一部がフッ素で置換されたものなどを主たる骨格構造として持ち、その一方の端に前記第1の電極の材料に選択的に反応または吸着する官能基を有し、他方の端は、前記第3の微粒子を分散させている分散媒に対し親和性を有しない官能基を有する分子が用いられうる。
自己組織的に均一な分子膜を形成するものがより好ましい。電極材料と該電極材料に選択的に吸着または反応する官能基の組合せとしては、たとえば、金、銀、およびパラジウムとチオール基またはジチオール基、アルミニウムとリン酸基などがある。また、電極材料に分子が吸着または反応するように、電極材料が、特定の官能基で修飾されていてもよい。電極材料を修飾する官能基と、これに選択的に吸着または反応する官能基の組み合わせとしては、たとえば、水酸基と水酸基、クロロ基と水酸基、水酸基とカルボキシル基、水酸基とメトキシ基、水酸基とエトキシ基、アミノ基とアルデヒド基、などが挙げられる。また、前記第1の有機化合物は、電気的に絶縁性であることが好ましい。
前記第1の有機化合物と前記第1の電極の材料との組み合わせは多様であり、特に制限されるものではないが、たとえば前記第1の電極の材料が金、銀、銅である場合には、第1の有機化合物としてアルカンチオール類、フルオロアルカンチオール類などを組み合わせるのが好ましい。
前記第2の有機化合物としては、たとえば、n−アルカンや、それに側鎖を持つもの、あるいは、これらの分子の水素の一部がフッ素で置換されたものなどを主たる骨格構造として持ち、その一方の端に前記基板の材料に選択的に反応または吸着する官能基を有し、他方の端は、前記第3の微粒子を分散させている分散媒に対し親和性を有しない官能基を有する有機化合物が用いられうる。自己組織的に均一な分子膜を形成するものが好ましい。主鎖の長さは、たとえばn−アルカンでは、炭素数が3以上が好ましい。基板の材料とこれに選択的に反応または吸着する官能基の組み合わせとしては、基板材料表面の官能基、あるいは、基板材料の表面を修飾する官能基として例を挙げると、水酸基と水酸基、クロロ基と水酸基、水酸基とカルボキシル基、水酸基とメトキシ基、水酸基とエトキシ基、アミノ基とアルデヒド基、水酸基とクロロシランなどが挙げられる。また、第2の有機化合物は、電気的に絶縁性の有機化合物が好ましい。
第2の有機化合物と前記基板の材料との組み合わせは多様であり、特に制限されるものではないが、たとえば、基板の材料がガラスやシリコン酸化膜である場合には、アルキルシラノール類、フルオロアルキルシラノール類、アルキルメトキシシラン類、フルオロアルキルメトキシシラン類、アルキルエトキシシラン類、フルオロアルキルエトキシシラン類、アルキルクロロシラン類などを組み合わせるのが好ましい。
第3の有機化合物にて表面を覆われることで前記複合微粒子を形成する第1の微粒子を構成する材料としては、電極材料として所定の導電性を有しているものが好ましい。たとえば、金、銀、銅、白金、パラジウムなどの金属のほか、導電性高分子、酸化物導電体などが好ましい材料として用いられうる。
メモリ機能を有する第3の有機化合物としては、たとえば鎖状の有機化合物の両端に電圧を印加することで、その導電性を可逆的に変化させることができる有機化合物が好ましい。かかる第3の有機化合物の具体的な例としては、2’−アミノ−4−エチニルフェニル−4’−エチニルフェニル−5’−ニトロ−1−ベンゼンチオール、4−エチニルフェニル−4’−エチニルフェニル−2’−ニトロ−1−ベンゼンチオールなどが公知である。たとえばこれらの有機化合物を金電極表面に吸着させて層を形成した後、該膜上に金電極を形成して、前記有機化合物が金電極でサンドイッチされた構造を形成する。上下の金電極間に印加する電圧を0から大きくしていきつつ、電流を計測すると、ある閾値電圧V1以上の電圧で、急激に電流が流れ始める(高抵抗状態から低抵抗状態に変化する)。次に、逆に電圧を低下させていくと、前記の閾値電圧V1以下になっても電流が流れ(低抵抗状態が維持され)、前記閾値電圧V1より小さい電圧V2以下で電流が急激に流れなくなる(低抵抗状態から高抵抗状態に変化する)。本発明に用いられる前記第3の有機化合物としては、前記の公知の有機化合物において、チオール基を置換する官能基、および、チオール基とは反対側の末端のフェニル基に付加される官能基として、前記第1の電極の形成材料と吸着または反応する官能基、および、前記第3の微粒子を分散させた分散媒と親和性を有する官能基を有する有機化合物が例として挙げられる。前記第1の電極の形成材料と吸着または反応する官能基としては、前記第1の電極の材料に応じて適宜選択することができるが、たとえば、前記第1の電極が、金、銀、銅およびパラジウムの場合には、チオール基が好ましい例として挙げられる。
前記第3の微粒子を分散させた分散媒と親和性を有する官能基としては、たとえば親水性の分散媒に親和性を有する官能基としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、カルボニル基、硫酸基などが挙げられる。疎水性の分散媒に親和性を有する官能基としては、メチル基などのアルキル基、フェニル基、フルオロ基、フッ素化アルキル基、シリコーン基などが挙げられる。
前記第4の有機化合物は、メモリ機能、導電性などの性質は特に限定されないが、メモリ機能を有しない、非導電性の有機化合物であることが望ましい。たとえばアルカン、フッ素化アルカン類や、それに側鎖を持つものなどの骨格構造の一方の端に前記基板の材料に選択的に反応または吸着する官能基を有し、かつ、該官能基が、前記第3の微粒子を分散させている分散媒と親和性を有し、かつ、他方の端は、前記第2の微粒子に吸着または反応する官能基を有する有機化合物で、自己組織的に均一な分子膜を形成するものが用いられる。前記基板31の材料と、これに選択的に反応または吸着する官能基の組み合わせとしては、基板表面自体の官能基、あるいは、基板材料の表面を修飾する官能基として例を挙げると、水酸基と水酸基、クロロ基と水酸基、水酸基とカルボキシル基、水酸基とメトキシ基、水酸基とエトキシ基、アミノ基とアルデヒド基、水酸基とクロロシランなどが挙げられる。前記基板の材料との組み合わせは多様であるが、具体的に好ましい1例を挙げれば、たとえば、ガラスやシリコン酸化物からなる基板、ガラスやシリコン酸化物からなる前記第2の微粒子のように、表面が水酸基で終端されている材料の場合には、ヒドロキシアルキルクロロシラン類、ヒドロキシアルキルメトキシシラン類、ヒドロキシアルキルシラノール類などが挙げられる。
前記第3の微粒子を構成する材料としては、導電性の材料であって、微粒子として適当な溶媒に分散できるものであれば特に限定されないが、たとえば、金、銀、銅、白金、パラジウムなどの金属のほか、導電性高分子、酸化物導電体などが用いられうる。
<有機化合物を含む層(膜)の評価>
第1、第2、第3、第4の有機化合物を含む層(膜)の形成状態は、たとえば接触角測定、X線光電子分光法(XPS)、可視紫外吸収分光法などの従来公知の方法を適宜用いて評価することができる。
接触角測定は、前述のように平面状の前記対象物表面に液滴を乗せたときの液滴と対象物表面との接触面の境界線における液滴表面の接線と前記対象物表面との間の角度(接触角)を測定する方法である。接触角が大きいほど親和性が小さく、接触角が小さいほど親和性は大きい。接触角は、対象物最表面の官能基の種類および密度と、液体の種類の組み合わせで決まる。従って、既知の官能基を表面に持つ膜と既知の液体との接触角を測ることにより、官能基を表面に持つ膜を構成する分子の密度を相対的に評価することが出来る。
XPSは、X線を試料に照射したときに、生成して真空中に脱出した電子の運動エネルギーを計測する方法であり、その電子を放出した原子の結合エネルギーを評価し、組成および結合状態を調べることが出来る。
可視紫外吸収分光法は、分子による可視から紫外域にわたる光の吸収を測定する方法であり、吸収波長から特定の分子構造の存在を知ることが出来、吸収量からその分子構造を分子内に持つ分子の量を見積もることが出来る。これらの評価法およびその組み合わせにより、第1、第2、第3、第4の有機化合物を含む層(膜)の形成状態を評価することが出来る。
<効果>
微粒子では、第1の電極の表面の凹凸と比較して滑らかな表面を持つものを容易に作製しうる。従って、微粒子表面には、メモリ機能を有する有機化合物を含む層を均一に形成し易い。有機化合物を含む層が均一に形成できると、導電性の微粒子と第1の電極間、導電性の微粒子と第2の電極間の短絡が生じにくい。更には、第1の電極と第2の電極は、メモリ機能を有する有機化合物を含む層を介して配置されているので、第1の電極と第2の電極との間の短絡が生じにくくなる。
第2の電極が導電性の微粒子で構成される場合、第2の電極の作製方法として塗布法、印刷法、インクジェットプリント法など、常温近傍の温度のプロセスが利用可能であり、蒸着法やスパッタ法などのようにエネルギーを持った原子やクラスタを供給する方法と比較して、第2の電極形成時に、吸着しているメモリ機能を有する有機化合物の層に対してダメージを与えにくい。
前記第1の有機化合物を含む層、第2の有機化合物を含む層、第3の有機化合物を含む層または第4の有機化合物を含む層として、有機自己組織化膜(SAM膜)を利用することにより、緻密で極めて薄い単分子層(膜)が、基本的に、基板を目的分子の溶液に一定時間の間浸漬するだけの極めて簡単なプロセスで作製可能である。
第1の有機化合物および第2の有機化合物として絶縁性の有機化合物を利用することにより、記録に関与する領域(記録領域)を制限することができるので、記録領域が第1の電極と第2の電極の交差する領域を外れて周囲に広がることを防止でき、また、隣接する記録単位の間の相互作用(干渉など)を抑えることも可能となる。
第1の電極を基板に埋設することにより、基板と第1の電極によって生じる段差を小さくすることが可能となる。これにより分子の並びや密度などの均一性の乱れを抑えることが可能となり、素子の信頼性を高めることが可能となる。
第1の有機化合物を含む層、第2の有機化合物を含む層、メモリ機能を有する第3の有機化合物が吸着しまたは反応した第1の微粒子とを含む複合微粒子で形成された層(第3の有機化合物を含む層)、あるいは、第4の有機化合物を含む層(第4の有機化合物が第2の微粒子の表面に吸着または反応した複合微粒子を用いて形成された層)を製造する工程は、通常のフォトリソグラフィーとエッチングによるパターン形成工程と比較して、簡便で、ステッパなどの高価な装置も必要ではなく、工程に伴うダメージも少ない工程である。
(実施の形態2)
本発明に基づく図2の構造のメモリ素子は、以下に記載の方法でも作製することが可能である。
<製法>
実施の形態1において、第1の有機化合物を含む層33を形成する工程と第2の有機化合物を含む層34を形成する工程の順序が逆であってもよい。また、実施の形態1において、第3の有機化合物36が第1の微粒子35の表面を覆って吸着または反応して形成された複合微粒子を前記第1の有機化合物を含む層33が除去された前記第1の電極32上に選択的に吸着させる工程と、第4の有機化合物を含む層38を第2の有機化合物を含む層34が除去されて露出した前記基板31の上に選択的に吸着させる工程の順序が逆であってよい。
以下、具体的に説明する。
図2において、実施の形態1の記載の方法と同様にして、基板21に埋め込まれた第1の電極22を形成する。
次に、前記第1の電極22の表面に選択的に反応または吸着する、メモリ機能を有しない第1の有機化合物を用いて、第1の電極22の表面に当該第1の有機化合物の層(膜)23を形成する。形成方法としては、たとえば有機SAM膜を利用した方法が好ましい。前記第1の有機化合物としては、一方の端に前記第1の電極22の材料に選択的に反応または吸着する官能基を有する有機化合物であって、自己組織的に均一な分子膜を形成するものが好適に用いられる。前記第1の有機化合物の溶液に、前記第1の電極22を埋設した基板21を浸漬すると、前記第1の有機化合物の前記官能基が前記第1の電極22に吸着し、単分子膜が形成される。
前記基板21の表面に選択的に反応または吸着する、メモリ機能を有しない第2の有機化合物を用いて、基板21の表面に当該第2の有機化合物の層(膜)24を形成する。形成方法としては、たとえば有機SAM膜を利用した方法が好ましい。前記第2の有機化合物としては、一方の端が前記基板21の材料に選択的に反応または吸着する官能基を有する有機化合物であって、自己組織的に均一な分子膜を形成するものが特に好適に用いられる。
次に、実施の形態1に記載と同様にして、部分的に前記第1の有機化合物を含む層24および前記第2の有機化合物を含む層23を除去し、次いで、第1の微粒子25の表面を覆ってメモリ機能を有する第3の有機化合物を含む層26が形成されてなる複合微粒子27を、前記第1の有機化合物を含む層24が除去された前記第1の電極22上に選択的に吸着させ、更に、基板に選択的に反応または吸着する第4の有機化合物を、第2の有機化合物を含む層23が除去されて露出した前記基板21の上に選択的に吸着させて、第4の有機化合物を含む層28を形成する。
次いで、前記第1の有機化合物を含む層24の表面側および前記第2の有機化合物を含む層23の表面側とは反応または吸着せず、かつ、前記第3の有機化合物を含む層26の表面側および第4の有機化合物を含む層28の表面側とは反応または吸着する材料からなる導電性の第3の微粒子29を、前記第3の有機化合物を含む層26および前記第4の有機化合物を含む層28上に吸着または反応させて、第2の電極291を形成する。
前記第3の微粒子29は、前記第1の有機化合物を含む層24の表面側および前記第2の有機化合物を含む層23の表面側とは反応または吸着せず、かつ、前記第3の有機化合物を含む層26の表面側および前記第4の有機化合物を含む層28の表面側の官能基と反応または吸着する官能基で修飾されているか、該官能基を有する有機化合物が該官能基を表面側にして吸着されているものでもよい。
また、前記第3の微粒子29の吸着工程で前記第2の電極291が不完全な場合は、電解めっき法や無電解めっき法などの方法で不完全性を補ってもよい。
<材料>
基板、第1の電極の材料は、実施の形態1に記載と同様である。
第1の有機化合物は、たとえばn−アルカンや、それに側鎖を持つもの、あるいは、これらの分子の水素の一部がフッ素で置換されたものなどの骨格構造の一方の端に、前記第1の電極の材料に選択的に反応または吸着する官能基を他方の端に有する有機化合物が用いられる。自己組織的に均一な分子膜を形成するものが好ましい。
電極材料と該電極材料に選択的に吸着または反応する官能基の組合せとしては、実施の形態1と同様である。また、実施の形態1の記載と同様に、電極材料に第1の有機化合物が吸着または反応するように、電極材料が、特定の官能基で修飾されていてもよい。
第1の有機化合物において、前記第1の電極の材料に選択的に反応または吸着する官能基に対して前記骨格構造を挟んで他方の端の官能基は、前記第3の有機化合物、第4の有機化合物、および第3の微粒子の表面または、該第3の微粒子の表面を修飾する官能基、あるいは、該第3の微粒子の表面に吸着または反応した有機化合物の前記表面側の末端の官能基と、吸着または反応しない官能基である。そのような官能基の例としては、フルオロ基、メチル基、フッ素置換のメチル基などがある。前記第1の電極の材料と第1の有機化合物の組み合わせは多様であるが、具体的に好ましい1例を挙げれば、前記第1の電極の材料が金、銀、銅の場合には、アルカンチオール類、フルオロアルカンチオール類などが挙げられる。
第2の有機化合物は、たとえばn−アルカンや、それに側鎖を持つもの、あるいは、これらの有機化合物の水素の一部がフッ素で置換されたものなどの骨格構造の一方の端に前記基板の材料に選択的に反応または吸着する官能基を有する分子が用いられる。自己組織的に均一な分子膜を形成するものが好ましい。
基板材料と該基板材料に選択的に吸着または反応する官能基の組合せとしては、実施の形態1と同様である。また、実施の形態1の記載と同様に、基板材料に分子が吸着または反応するように、基板材料が、特定の官能基で修飾されていてもよい。
第2の有機化合物において、前記基板の材料に選択的に反応または吸着する官能基に対して、前記骨格構造を挟んで他方の端の官能基は、前記第3の有機化合物、第4の有機化合物、および第3の微粒子の表面または、該第3の微粒子の表面を修飾する官能基、あるいは、該第3の微粒子の表面に吸着または反応した有機化合物の前記表面側の末端の官能基と、吸着または反応しない官能基である。そのような官能基の例としては、フルオロ基、メチル基、フッ素置換のメチル基などがある。
前記基板の材料と前記第2の有機化合物の組み合わせは多様であるが、具体的に好ましい1例を挙げれば、たとえば、基板の材料がガラスやシリコン酸化膜である場合には、アルキルシラノール類、フルオロアルキルシラノール類、アルキルメトキシシラン類、フルオロアルキルメトキシシラン類、アルキルエトキシシラン類、フルオロアルキルエトキシシラン類などが挙げられる。
第3の有機化合物に表面が覆われた第1の微粒子を構成する材料としては、実施の形態1の記載と同様である。
本実施の形態2において用いられるメモリ機能を有する第3の有機化合物としては、実施の形態1に記載の公知の有機化合物において、チオール基を置換する官能基、および、チオール基とは反対側の末端のフェニル基に付加される官能基として、前記第1の電極材料と吸着または反応する官能基、および、前記第3の微粒子または該第3の微粒子の表面を修飾する官能基、または、前記第3の微粒子表面に吸着または反応している有機化合物の外側(すなわち、第3の微粒子表面から離反した側)の官能基と吸着または反応する官能基を有する有機化合物が例として挙げられる。前記第1の電極材料と吸着または反応する官能基としては、実施の形態1に記載したのと同様である。前記第3の微粒子と吸着または反応する官能基としては、第3の微粒子を構成する材料との組み合わせにより多様であるが、たとえば、第3の微粒子を構成する材料が金、銀、またはパラジウムである場合にはチオール基、ジチオール基、第3の微粒子を構成する材料がアルミニウムである場合にはリン酸基が挙げられる。該第3の微粒子の表面を修飾する官能基または前記第3の微粒子表面に吸着または反応している有機化合物の外側の官能基に対して、吸着または反応する官能基の組み合わせとしては、水酸基と水酸基、クロロ基と水酸基、水酸基とカルボキシル基、水酸基とメトキシ基、水酸基とエトキシ基、アミノ基とアルデヒド基などが挙げられる。
第4の有機化合物としては、基板または該基板表面を修飾する官能基と吸着または反応する官能基と、第3の微粒子または該第3の微粒子に吸着または反応している有機化合物の表面側の官能基または前記第3の微粒子表面を修飾している官能基とを、骨格となる構造の両端に有する有機化合物が用いられる。骨格となる構造としては、自己組織化単分子膜を形成しうる絶縁性の骨格構造が好ましく、たとえば、アルキル鎖、フルオロアルキル鎖などが挙げられる。基板材料と該基板材料に選択的に吸着または反応する官能基の組合せとしては、実施の形態1と同様である。第3の微粒子または該第3の微粒子に吸着または反応している有機化合物の外側(すなわち、第3の微粒子表面から離反した側)の官能基、または前記第3の微粒子表面を修飾している官能基の組み合わせとしては、前記第3の有機化合物の場合と同様である。第4の有機化合物の具体的な例としてはたとえば、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
第3の微粒子を構成する材料は、実施の形態1に記載したのと同様である。
<効果>
実施の形態1では、導電性の第3の微粒子を分散させた分散媒と、メモリ機能を有する分子を吸着または反応させた微粒子との親和性を利用して、導電性を有する第3の微粒子からなる第2の電極を形成していた。これに対し、本実施の形態2では、第3の有機化合物または第4の有機化合物を含む層の表面側に対し吸着または反応する官能基を表面に有するか、該官能基を有する有機化合物で表面が修飾された導電性の第3の微粒子を吸着または反応させることで第2の電極を作製することができるので、第3の微粒子を分散させる分散媒に対する制約はない。
(実施の形態3)
<構造>
図6は、本発明に基づくメモリ素子の構造の別の1例を示す斜視図である。図6の構造において、前記第4の有機化合物を含む層(膜)48が、第4の有機化合物を含む層48が表面に形成された第2の微粒子47から構成されている点で、図2の構造と異なっている。それ以外の構成は、図1の構成と同様である。前記第2の微粒子47の粒子径は、前記第1の微粒子45と同程度であることが望ましい。
<製法>
図6の構成のように、前記第4の有機化合物を前記基板41に吸着または反応させる代わりに、前記第4の有機化合物が表面に吸着した第2の微粒子47を前記基板に吸着または反応させてもよい。それ以外の製法は、実施の形態1または実施の形態2と同様である。
また、第4の有機化合物が表面に吸着した第2の微粒子47が吸着または反応しやすいように、予め基板表面を有機化合物などで修飾しておいてもよい。
<材料>
基板41、第1の電極42、第1の有機化合物、第2の有機化合物および第3の有機化合物については、実施の形態1または実施の形態2と同様である。
前記第2の微粒子47は、導電性などの性質は特に限定されないが、非導電性であることが望ましい。第2の微粒子47が導電性の場合、その表面に反応または吸着させる第4の有機化合物が絶縁性の材料であれば、第4の有機化合物が表面に吸着した第2の微粒子47全体としては絶縁性の構造体となる。前記第4の有機化合物が表面に吸着した前記第2の微粒子の材料としては、前記基板と同様の材料が好ましく用いられうる。たとえば、ガラス、酸化シリコン、酸化アルミニウムなどの酸化物や、アクリルアミド、ラテックスなどの高分子が挙げられる。
第4の有機化合物は、骨格構造の両端に前記第2の微粒子47の表面に対して吸着または反応する官能基と、前記第3の微粒子を分散させた分散媒と親和性を有し、かつ、前記基板41の表面に対して吸着または反応する官能基とを有する有機化合物が例として挙げられる。第4の有機化合物の骨格構造は、特に限定されないが、たとえばn−アルカンや、それに側鎖を持つもの、あるいは、これらの分子の水素の一部がフッ素で置換されたものなどが好ましい例として挙げられる。第4の有機化合物において、前記第2の微粒子47の表面に対して吸着または反応する官能基としては、たとえば、前記第2の微粒子47の形成材料がガラス、酸化シリコン、酸化アルミニウムなどの酸化物の場合には水酸基、クロロ基、カルボキシル基、メトキシ基及びエトキシ基などが挙げられる。第4の有機化合物において、前記第3の微粒子49を分散させた分散媒と親和性を有し、かつ、前記基板41の表面に対して吸着または反応する官能基としては、たとえば、基板がガラス、酸化シリコン、酸化アルミニウムなどの酸化物で、第3の微粒子49を分散させた分散媒が親水性の場合には水酸基、カルボキシル基、チオール基などが挙げられる。
第4の有機化合物の具体例として好ましい1例を挙げれば、たとえば、前記第2の微粒子47及び基板41の構成材料がガラス、酸化シリコン、酸化アルミニウムなどの酸化物で、第3の微粒子49を分散させる分散媒が親水性の分散媒である場合には、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトアルキルシラン類、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノアルキルシラン類、3−プロピルトリメトキシシランなどのメルカプトアルキルシラン類などが挙げられる。
第1の電極42と第2の電極491が交差している部分近傍にのみ電圧が印加されるので、第3の有機化合物と第4の有機化合物、第1の微粒子45と第2の微粒子47の材料は、それぞれ同じ材料であってもよい。これにより、素子作製の工程数を少なくすることが可能となる。
<効果>
前記第4の有機化合物を前記基板41に吸着または反応させる代わりに、前記第4の有機化合物が表面に吸着した第2の微粒子47を前記基板41に吸着または反応させることで、前記第1の電極42上と前記基板上41の領域での高さをほぼ同じにそろえることができる。これにより、前記第1の電極42上と前記基板41上の領域の段差に起因した第2の電極491の不連続の可能性を少なくすることができる。
以下、実施例を用いて、本発明をさらに具体的に説明するが、これらに限定されない。
21,31,41 基板、12,22,32,42 第1の電極、23,33,43 第1の有機化合物を含む層、24,34,44 第2の有機化合物を含む層、14,27,37 複合微粒子、15,25,35,45 第1の微粒子、16,26,36,46 第3の有機化合物を含む層、47 第2の微粒子、28,38,48 第4の有機化合物を含む層、29,39,49 第3の微粒子、191,291,391,491 第2の電極。