JP4194782B2 - 複合材ヒンジ一体桁の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、航空機の機体構造等に適用される複合材ヒンジ一体桁の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
航空機の舵面等桁構造には、取付け部としてのヒンジが必要であり、複合材製桁を航空機の舵面等に使用するには、図15および図16に示すように、複合材製桁1は、複合材で断面コ字状に成形した桁部材2とアルミ合金等の金属材料を機械加工して2枚のラグ3aと取付フランジ3bを有する耳金(ラグ)形状としたヒンジ金具3を別々に作り、桁部材2とヒンジ金具3をファスナ4を用いて結合することで作られる。
【0003】
特願平7−154756号公報には、RTM(RESIN TRANSFER MOLDING)成形法により一体成形された繊維強化複合材の構造体が記載されているが、この繊維強化複合材の構造体では、一体化されているのはスティフナーのみであり、複合材ヒンジの一体成形についてはなにも記載されていない。この技術を航空機の舵面等に適用するには、従来技術と同様に、複合材桁部材とヒンジ金具を各別に製作し、複合材桁部材とヒンジ金具をファスナを用いて組み立てることが必要である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術においては、複合材ヒンジ付き桁構造を製造するには、複合材桁部材とヒンジ金具を各別に製作し、複合材桁部材とヒンジ金具をファスナを用いて結合する必要があり、部品点数が多くなるとともに、シムを用いたファスナの組立調整と、金属と複合材との電解腐食防止のための接触界面への合わせ面シール等が必要となり、コスト高となるとともに、重量も増大するという問題がある。
【0005】
ヒンジ金具を複合材化して、複合材ヒンジと複合材桁部材を一体成形することが、桁構造のコスト低減、軽量化のために有効であることは分かっているが、ヒンジ部のような複雑な構造を有する桁構造をプリプレグのレイアップにより形成するには、複雑な手順を必要とし、かえってコスト高の要因となってしまう。
【0006】
本発明は、上記した点を考慮してなされたもので、複合材ヒンジと複合材桁を一体成形し、コスト低減および軽量化を図ることを可能にする複合材ヒンジ一体桁の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明による複合材ヒンジ一体桁の製造方法は、ドライプリフォームからなる箱型ヒンジ要素と、箱型ヒンジ要素を2つ割りした端部ヒンジ要素とを連結してヒンジ部材を形成し、ドライプリフォームで形成したヒンジ部材とドライプリフォームで形成した桁部材を成型治具にセットし、樹脂を成型治具内に注入し、注入した樹脂をヒンジ部材と桁部材に含浸し、含浸した樹脂を加熱硬化することで構成される。
【0008】
本発明の複合材ヒンジ一体桁の製造方法では、ヒンジ部材に貫通孔を設け、貫通孔にブッシュを装着することができる。
【0009】
本発明の複合材ヒンジ一体桁の製造方法では、ヒンジ部材を箱型ヒンジ要素と箱型ドライプリフォームを2つ割りした端部ヒンジ要素で形成することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1において、符号11は本発明による複合材ヒンジ一体桁の製造方法により成型された複合材ヒンジ一体桁を示す。複合材ヒンジ一体桁11は、複合材桁部材12と複合材ヒンジ部材13をRTM法により一体成形することで構成される。この複合材ヒンジ一体桁11は、図2に示すように、たとえば航空機の舵面構造の桁として使用される。
【0011】
複合材ヒンジ一体桁11の桁部材12は、たとえば、平織物からなるドライプリフォームを成形治具上にレイアップすることで成形され、図3に示すように、桁ウェブ12aとこの桁ウェブ12aの両側に連なるフランジ12bとを有する断面コ字状をなしている。複合材ヒンジ一体桁11のヒンジ部材13は、図3に示すように、箱型プリフォーム14とこの箱型プリフォーム14の両側にステッチングにより連結された端部プリフォーム15,15とから形成され、2枚のラグ部16を有するヒンジ形状をなしている。
【0012】
複合材ヒンジ一体桁11は、図4(b)に示すように、成形された桁部材12とヒンジ部材13を密閉治具17の下型17aにセットし(説明の便宜のため一方のヒンジ部材13のみを示す)、桁部材12とヒンジ部材13をセットした下型17aの上に図4(a)に示す上型17bを結合し、密閉治具17内に樹脂を注入し、注入した樹脂を桁部材12とヒンジ部材13に含浸し、含浸した樹脂を加熱硬化することで成形される。
【0013】
複合材ヒンジ一体桁11において、ヒンジ部材13をアクチュエータヒンジとして用いる場合、図1の左側で示すように、ラグ部16に2個の貫通孔18を加工する。また、複合材ヒンジ一体桁11において、ヒンジ部材13を一般部ヒンジとして用いる場合、図1の右側で示すように、ラグ部16に1個の貫通孔18を加工する。各ラグ部16の貫通孔18には、たとえばステンレス鋼ブッシュ19が装着される。
【0014】
桁部材12は、樹脂未含浸の平織物からなるドライプリフォームを成形治具上にレイアップして桁ウェブ12aとその両端のフランジ12bを形成する。
【0015】
ヒンジ部材13の箱型プリフォーム14は、図5(a)に示すように、繊維が不連続にならないよう繊維方向が0°/90°の織物材で箱型をなす内層プリフォーム20と、この内層プリフォーム20の外側に任意の配列で任意数積層される繊維方向が±45°の織物材の中間層プリフォーム21および繊維方向が0°/90°の織物材の中間層プリフォーム22と、繊維方向が0°/90°の織物材で箱型をなす外層プリフォーム23とで構成される。この場合、中間層の最上層として繊維方向が±45°の中間層プリフォーム21とする。
【0016】
箱型プリフォーム14の内層プリフォーム20は、繊維が不連続にならないよう0°/90°の織物材で予め箱型に形成され、成形すべき2枚のラグ部16の内側の寸法に合わせて作られた箱型の治具の上に配置される。±45°の中間層プリフォーム21および0°/90°の中間層プリフォーム22は、図5(b)に示すように、既製の平織物のドライプリフォーム24を箱型に合う展開形状にプリカットされ、繊維脱落防止の端末処理を施して形成され、積層時に箱型に折曲げられる。外層プリフォーム23は、繊維が不連続にならないよう0°/90°の織物材で予め箱型に形成される。
【0017】
ヒンジ部材13の箱型プリフォーム14は、上面構成が、図6に示すように、内側から外側に順に、0°/90°のプリフォーム20、±45°のプリフォーム21、±45°のプリフォーム21、0°/90°のプリフォーム22、±45°のプリフォーム21、0°/90°のプリフォーム22、±45°のプリフォーム21、±45°のプリフォーム21、0°/90°のプリフォーム20の9層構造であり、正面構成が、図7に示すように、内側から外側に順に、0°/90°のプリフォーム20、±45°のプリフォーム21、±45°のプリフォーム21、0°/90°のプリフォーム22、±45°のプリフォーム21、0°/90°のプリフォーム22、±45°のプリフォーム21、0°/90°のプリフォーム22、±45°のプリフォーム21、±45°のプリフォーム21、±45°のプリフォーム21、0°/90°のプリフォーム23の14層構造である。
【0018】
ヒンジ部材13の端部積層プリフォーム15は、上面構成が、図6に示すように、内側から外側に順に、0°/90°のプリフォーム25、±45°のプリフォーム26、±45°のプリフォーム26、0°/90°のプリフォーム27、±45°のプリフォーム26、0°/90°のプリフォーム27、±45°のプリフォーム26、±45°のプリフォーム26、0°/90°のプリフォーム28の9層構造であり、正面構成が、図7に示すように、内側から外側に順に、0°/90°のプリフォーム25、±45°のプリフォーム26、±45°のプリフォーム26、0°/90°のプリフォーム27、±45°のプリフォーム26、0°/90°のプリフォーム27、±45°のプリフォーム26、±45°のプリフォーム26、0°/90°のプリフォーム28の9層構造である。
【0019】
内層プリフォーム25は、成形すべき2枚のラグ部16の内側の寸法に合わせて作られた箱型の治具に、繊維が不連続になることがないよう0°/90°の繊物材を箱型の半分に切断したもので形成される。±45°中間層プリフォーム26および0°/90°中間層プリフォーム27は、図5(c)に示すように、既製の平織物のドライプリフォーム29を内層プリフォーム25の形状に合う展開形状でプリカットするとともに、繊維脱落防止の端末処理を施して形成される。0°/90°外層プリフォーム28は、繊維が不連続になることがないよう、0°/90°の織物材で箱型にしたものを2分割して形成される。
【0020】
なお、±45°中間層プリフォーム26は、突合わせ部26aが同一位置にならないよう、図8に示すよう、各毎に突合わせ部26aをずらして配置し、突合わせ部26aが連続する層で同一箇所にならないよう考慮されている。これにより、ヒンジウェブ部に伝わる荷重をスムースに伝達することができる。
【0021】
次に複合材ヒンジ一体桁の製造方法について説明する。
まず、箱型積層プリフォーム14と端部積層プリフォーム15を各別に製作する。
【0022】
箱型積層プリフォーム14は、箱型に製織された内層プリフォーム20の外側に、図6および図7に示す配列および積層数で、±45°中間層プリフォーム21および0°/90°中間層プリフォーム22を積層し、最上層に位置する±45°中間層プリフォーム21の外側に0°/90°外層プリフォーム23を積層して製作される。箱型積層プリフォーム14は、最外層を0°/90°の層とすることで、±45°層のばらけを防止することができる。
【0023】
端部積層プリフォーム15は、箱型積層プリフォーム14の内層プリフォーム20として製織したものを左右に2分割した内層プリフォーム25の外側に、図6および図7に示す配列および積層数で±45°中間層プリフォーム26および0°/90°中間層プリフォーム27を積層し、最上層に位置する±45°中間層プリフォーム26の外側に0°/90°外層プリフォーム28を積層して製作する。端部積層プリフォーム15は、最外層を0°/90°の層とすることで、±45°層のばらけを防止することができる。
【0024】
箱型積層プリフォーム14および端部積層プリフォーム15,15は、図9ないし図11に示すように、箱型積層プリフォーム14の両側に端部積層プリフォーム15を配置し、炭素繊維を用いて結合面のステッチング30を行なうとともに、端部のかがり縫い31を行なうことでヒンジ部材13を完成させる。
【0025】
つぎに、複合材ヒンジ一体桁11の製造方法について図12に示す図により説明する。
まず、ヒンジ部材13を密閉治具17の下型17aにセットし、ヒンジ部材13のフィレットR部32,32に炭素繊維を充填し、その上に桁部材12を積層する。
【0026】
ついで、下型17a上に上型17bをセットして密閉治具17内を密閉し、密閉治具17に、真空引きパイプ33および樹脂含浸ライン34を接続し、密閉治具17内を真空引きしながら樹脂の含浸を行なう。密閉治具17内が樹脂で満たされたら、ステンレスチューブ35を介してN2加圧を行なう。
【0027】
つぎに、桁部材12およびヒンジ部材13に含浸された樹脂を加熱硬化し、桁部材12およびヒンジ部材13を成形することで、複合材ヒンジ一体桁11の一体成形が完了する。
【0028】
一体成形された複合材ヒンジ一体桁11は、密閉治具17から離型36され、ヒンジ部材13のラグ形状への加工37を行なって、完成品となる。
【0029】
ヒンジ部材13のラグ部16は、図1に示すように、アクチュエータ・ヒンジとして用いる場合と、一般部ヒンジとして用いる場合とがあり、アクチュエータ・ヒンジとして用いる場合には、2個の貫通孔18を有する形状に加工され、一般部ヒンジとして用いる場合には、1個の貫通孔18を有する形状に加工され、各貫通孔18には、例えばステンレス鋼製のブッシュ19が装着される。
【0030】
各貫通孔18にブッシュ19を装着するのは、以下の理由による。
すなわち、複合材は面圧強度が低いため、貫通孔18に比較的小径のヒンジピンを直接挿通させると、荷重が直接複合材に負荷されて好ましくない。貫通孔18にブッシュ19を装着すると、ブッシュ19の外径に比例した面圧面積が得られるため、荷重をラグ部16に確実に伝達することができるからである。
【0031】
しかして、一体成形された複合材ヒンジ一体桁11は、桁部材12およびヒンジ部材13をドライプリフォームで形成し、これらを密閉治具17内にセットし、樹脂を注入して一体成形するので、複雑な形状のヒンジ部が一体成形され、コストダウンおよび軽量化を図ることができる。
【0032】
【実施例】
本発明者等は、図13(a),(b)に示すように、本発明の方法によりアクチェエータ・ヒンジ供試体13Aと一般部ヒンジ供試体13Bとを製作し、これら各供試体13A,13Bに荷重面荷冶具38,39を介し荷重Pを負荷し、ヒンジ部分の構造強度試験を行なった。
【0033】
表1に試験結果を示す。
【表1】
【0034】
本発明に係る複合材ヒンジ一体桁11は、想定した設計荷重を充分に満足しており、航空機の機体構造等に充分に適用できることが分かった。
【0035】
また、本発明者等は、本発明に係る複合材ヒンジ一体桁と、複合材桁材にヒンジ金具を結合した従来の桁とによる重量およびコストの比較実験を行なった。
【0036】
その実験結果を図14(a),(b)に示す。
【0037】
図14(a),(b)からも明らかなように、本発明に係る複合材ヒンジ一体桁は、重量については、従来のものに比べて20%のヒンジ重量軽減、桁全体では部品点数減少に伴ない5%の重量軽減が可能であり、またコストについては、従来のものに比べて40%程度の加工コストの削減、全コストでも10%の削減が可能であることが分かった。
【0038】
なお、前記実施の一形態においては、1個の箱型積層プリフォーム14とその両側の端部積層プリフォーム15とでヒンジ部材13を製作する場合について説明したが、箱型積層プリフォーム14を複数並設し、それらの両側に端部積層プリフォーム15を配するようにしてもよい。これにより、3枚以上のラグ部16を得ることができる。
【0039】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、ドライプリフォームで形成したヒンジ部材とドライプリフォームで形成した桁部材を成型治具にセットし、樹脂を成型治具内に注入し、注入した樹脂をヒンジ部材と桁部材に含浸し、含浸した樹脂を加熱硬化することで複合材ヒンジ一体桁を成形するので、ヒンジ部材が複数枚のラグ部を有するような複雑な形状であっても、作業に複雑な手順を必要とせず、コストダウンを図ることができ、かつ部品点数の低減により軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による複合材ヒンジ一体桁の製造方法により作られた複合材ヒンジ一体桁を示す斜視図。
【図2】 図1の複合材ヒンジ一体桁の適用例を示す分解斜視図。
【図3】 図1の複合材ヒンジ一体桁の分解斜視図。
【図4】 複合材ヒンジ一体桁の成形手段を示す図。
【図5】 箱型積層プリフォームおよび端部積層プリフォームの積層構造を示す分解斜視図。
【図6】 箱型積層プリフォームおよび端部積層プリフォームを上方から見た積層構造を示す図。
【図7】 箱型積層プリフォームおよび端部積層プリフォームを正面側から見た積層構造を示す図。
【図8】 端部積層プリフォームにおける各±45°中間層プリフォームの突合わせ部の位置を示す図。
【図9】 箱型積層プリフォームおよび端部積層プリフォームのステッチングおよびかがり縫い処理を示す図。
【図10】 図9のX−X線に沿った断面図。
【図11】 図9のXI−XI線に沿った断面図。
【図12】 本発明による複合材ヒンジ一体桁の製造方法を示す図。
【図13】 (a)はアクチュエータ・ヒンジ供試体の強度試験方法を示す図、(b)は一般ヒンジ部供試体の強度試験方法を示す図。
【図14】 (a)は本発明に係る桁と従来の桁材との重量を比較して示すグラフ、(b)は本発明に係る桁材と従来の桁材とのコストを比較して示すグラフ。
【図15】 航空機の舵面に適用されるヒンジ付き桁材を示す図。
【図16】 従来のヒンジ付き桁材の構成を示す分離斜視図。
【符号の説明】
11 桁材
12 桁部材
12a 桁ウエブ
12b フランジ
13 ヒンジ部材
14 箱型積層プリフォーム
15 端末積層プリフォーム
16 ラグ部
17 密閉治具
17a 下型
17b 上型
18 貫通孔
20 内層プリフォーム
21,22 中間層プリフォーム
23 外層プリフォーム
25 内層プリフォーム2
26,27 中間層プリフォーム
28 外層プリフォーム
30 ステッチング
31 かがり縫い
Claims (5)
- ドライプリフォームからなる箱型ヒンジ要素と、箱型ヒンジ要素を2つ割りした端部ヒンジ要素とを連結してヒンジ部材を形成し、
ヒンジ部材とドライプリフォームで形成した桁部材を成型治具にセットし、
樹脂を成型治具内に注入し、注入した樹脂をヒンジ部材と桁部材に含浸し、含浸した樹脂を加熱硬化することを特徴とする複合材ヒンジ一体桁の製造方法。 - ヒンジ部材に貫通孔を設け、貫通孔にブッシュを装着することを特徴とする請求項1に記載の複合材ヒンジ一体桁の製造方法。
- 箱型ヒンジ要素は、箱を構成する面を織物材ドライプリフォームの積層によって形成し、 その最外層および最内層には、繊維方向が0°/90°の織物材ドライプリフォームを配置し、その中間層には、箱の展開形状にプリカットした繊維方向が±45°の織物材ドライプリフォームと繊維方向が0°/90°の織物材ドライプリフォームとを箱型に折り曲げて配置することを特徴とする請求項1または2に記載の複合材ヒンジ一体桁の製造方法。
- 端部ヒンジ要素は、請求項3に記載の箱型ヒンジ要素を2つ割りして形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の複合材ヒンジ一体桁の製造方法。
- プリカットされる織物材は、繊維脱落防止のための端末処理が施された平織物であることを特徴とする請求項3または4に記載の複合材ヒンジ一体桁の製造方法。
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