JP4195832B2 - 塗布方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗布方法に関するものであり、特に平版印刷版(PS版)の製造における金属ウェブに対する塗布液の塗布方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
前記PS版の製造においては、主としてアルミニウムを支持体とし、この上に塗布層を形成して、印刷版としての基本特性を発現させたり、汚れ防止性能や耐刷性能等の刷版性能を向上させている。この塗布層は、上記のような多機能性を満足するために複層とされることが多い。上記PS版としては、例えば、ポジ型、ネガ型、フォトポリマー型、サーマルポジ型、サーマルネガ型、現像不要平版印刷版現版などがある。このように、PS版としては多種のものが製造されており、材料やサイズが異なる各種長尺物(以下、ウェブと称する。)、及び粘度や組成等の性状が異なる各種塗布液、さらに一度の塗布により形成される塗布層数等が異なる各種塗布方式がある。
【0003】
塗布方法のひとつであるビード塗布は、スライド型やエキストルージョン型の塗布ヘッドを用いて、塗布液をその外部に流出あるいは吐出させ、バックアップローラ等に支持されながら搬送されるウェブ上に塗布させる方法である。この塗布方式では、塗布ヘッドからウェブにかけて、塗布液ビード(以下、単にビードと称する。)が形成され、このビードの形状安定度が、形成される塗膜の良否を左右する。ビードの形成及びその安定化を図るために、通常は、ビードの背部に減圧室を設置し、ビード背面を減圧する。ビードを形成する塗布方法に用いる塗布装置としては、異物等がウェブを支持するバックアップローラに付着した時等に自動的に塗布を中断することができる塗布装置や塗布方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、ビード塗布においては、塗布対象物であるウェブ等の両側端部における塗り残しや、両側端部への厚塗り等が懸念されることがあり、その対処法のひとつとして、ウェブ幅よりもビードの幅を大きくして、余幅分のビードを形成した塗布液を減圧室の内部に吸引してこれを回収するという場合がある。両側端部への塗り残しに対しては、例えばスライドコータにおいてスライド面を流れる塗布液の両側端部について、塗布液を重層構成とすることにより改善を図る方法も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
前記減圧室内部の減圧値は、実際の塗布においては、空気を吸引する減圧ファンによりその一定化を図るべく調整される。この減圧値は、ウェブの厚みや幅、塗布層の厚み、塗布液の粘度等に応じて経験的に所定の値として求められるものであり、この所定の値を一定に保つためのファン回転数を適宜設定するものとなっている。ウェブの幅よりもビードを幅大きくして高粘度の塗布液を塗布する場合におけるウェブの折れやシワを抑制する塗布方法として、減圧度を調整しながら塗布し、その際にウェブに塗布されなかったビードの塗布液を減圧室に吸引させる方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−233804号公報(第3−7頁、第2図)
【特許文献2】
特開平10−165872号公報(第2−6頁、第1図)
【特許文献3】
特開平5−261334号公報(第2−3頁、第1図)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ウェブの幅や塗布する塗布液性状等、多種の塗布系においては、それぞれに適した減圧条件とするためのファン回転数をそれぞれ求める必要がある。特に、ウェブに関しては、目的製品に応じる多種のサイズがあり、適したファン回転数を求めるために、長い時間と多くの労力を要するという問題がある。また、複数の塗膜をウェブ上に形成する必要が有る場合で、第2層以降の塗布をビード塗布とする場合には、第2層の塗布を連続して実施している間にウェブを支持するバックアップローラの温度が上昇してしまい、膨張等の体積変化をするので、塗布ヘッドや減圧室と、バックアップローラとの隙間が変動する。これは減圧度の変化を招き、ビードにおける液切れや部分的厚塗り等を引き起こし、安定した塗布が不可能になるという問題が発生する。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み塗布方法に関するものであり、特に、ビードが形成される塗布において、塗布に最適な減圧度条件を迅速に求め、さらに、その減圧度を維持することにより、塗布を安定的に実施することができる塗布方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明では、ウェブを支持体により支持しながら搬送し、前記ウェブに近接させた塗布ヘッドから前記ウェブにかけてビードを形成し、圧力制御手段にて内部圧力を制御される減圧チャンバで前記ビード近傍を減圧してウェブに塗布液を塗布する方法において、前記減圧チャンバ及び前記支持体と前記塗布ヘッドとの隙間の総面積Sと、前記圧力制御手段である減圧ファンの最適塗布条件となる回転数NRとを厚みと幅との少なくともいずれか一方が互いに異なる複数のウェブについてそれぞれ求めて、前記総面積Sと前記回転数NRとの関係を予め求める塗布前工程と、塗布すべき前記ウェブについて厚みと幅とから前記隙間の総面積Sを算出し、前記塗布前工程で求めた前記関係に基づき、算出された前記総面積Sから塗布すべき時の前記減圧ファンの回転数NRを設定して、塗布する塗布工程とを有することを特徴として構成されている。
【0010】
前記関係は、前記複数のデータの線形補間により求められることが好ましく、あるいは、比例式で表されることが好ましい。前記所定運転条件は、予め、ウェブの幅または厚み、ウェブと前記塗布ヘッドとの隙間の間隔の少なくともいずれかひとつに応じて設定されることが好ましい。減圧チャンバは、前記支持体としてのローラの両側部に対向して減圧空間を仕切る1対のサイドプレートと、ウェブの搬送路の下流側で減圧空間を仕切るバックプレートと有し、前記複数の各ウェブに塗布したときに形成される各ビードの幅をW1、前記複数のウェブの各幅をW2、各厚みをT、前記塗布ヘッドと前記支持体との距離をG1、前記バックプレートと前記支持体との距離をG2、前記サイドプレートと前記支持体との距離をG3、前記ローラの半径をr、前記支持体の前記バックプレートに対向する位置から前記塗布ヘッドと対向する位置までの回転中心における角度をθとするときに、前記隙間の総面積Sは、S=W1(G1+G2)−2T・W2−πθ{(G3) 2 +2r・G3}/180の式で求めることが好ましい。
【0011】
前記ビードについては、ウェブよりも幅を大きくし、ビードのうち未塗布となった部分を前記減圧チャンバを介して回収することが好ましく、前記支持体の温度変化を抑制する温度制御手段により、前記支持体の体積変化を抑制することがより好ましい。そして、支持体と塗布ヘッドとの隙間の変動が初期設定値±10%以内となるように支持体の体積変化を抑制することが好ましく、温度制御手段は、ウェブの温度を制御することにより支持体の温度変化を抑制することがさらに好ましい。
【0012】
また、ウェブ上に複層を形成し、その第2層以降の任意の層を前記ビードを形成する塗布による層とすることが好ましく、前記温度制御手段は、ウェブに冷却風を送風する送風部、または、冷却しながら搬送する冷却ローラを有することが好ましい。
【0013】
さらに、前記温度制御手段は、支持体の温度を検出する温度検出部と、この温度検出部の検出結果に基づき、前記送風部の送風温度または前記冷却ローラの温度を制御するコントローラ部とを有することが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の詳細について図1及び図2を参照しながら説明する。図1は本発明を実施した塗布装置10の斜視図であり、塗布ヘッド及びその周辺を示している。また、図2は、近接している減圧チャンバとバックアップローラとを示す断面図である。塗布ヘッドとしてのスライドコータ11は、バックアップローラ12に支持されて連続走行するアルミニウムウェブ(以下、アルミウェブと称する。)15に対して塗布液をビードにして塗布することにより、アルミウェブ上に塗膜を形成する。スライドコータ11は、バックアップローラ12と対向して設置されており、シフト装置(図示なし)により、バックアップローラ12及びアルミウェブ15との距離を調整される。本実施形態においては、バックアップローラ12の外周半径は符号rとして示されている。また、バックアップローラ12の回転中心における、減圧チャンバ16のバックプレート16aに対向する位置からスライドコータ11の先端と対向する位置までの角度をθとする。
【0015】
スライドコータ11には、その上部がスライド面11aとされており、このスライド面上に内部から塗布液が流出されて、塗布液が流れる。ビードの幅、つまり塗布幅を設定するために、スライド面11aの両側端部には幅規制部材11bが設けられている。この幅規制部材11bは、スライドコータ11の幅方向(以下、単に幅方向と称することもある。)に移動可能となっており、所定の幅のビードを形成することができるようになっている。
【0016】
また、スライドコータ11からバックアップローラ12にかけての下方には、減圧チャンバ16を設けている。減圧チャンバ16は、スライドコータ11のアルミウェブ15側先端からアルミウェブ15にかけて形成されるビードの下部に対して十分な減圧調整を行えるよう、アルミウェブ15の進行方向側とは反対側、つまりビードの背部に、接触しないように設置される。減圧チャンバ16は、その作動効率を保持するためのバックプレート16aとサイドプレート16bとを備えており、バックプレート16aとアルミウェブ15との間、サイドプレート16bとアルミウェブ15との間にはそれぞれ隙間が存在する。
【0017】
減圧チャンバ16を金属配管21あるいはフレキシブルホース等によりファン22に接続して、減圧チャンバ16の内部の空気を連続的に吸引することにより減圧が行われる。ここで、ファン22の回転数を制御することで減圧度は調整されるが、減圧チャンバ16とファン22との間にさらにバルブ23等を設置して調整することも好ましい。減圧チャンバ16とファン22との間にはバッファ25を設けて圧力変動の影響を低減してもよい。なお、減圧調整に際しては、圧力センサ27を用いて減圧チャンバ16の内部圧力を検知するものとなっている。ただし、本発明の効果は、減圧チャンバ16等の減圧手段の形態には左右されない。
【0018】
ビードの幅W1は、塗布幅であるアルミウェブ15の幅よりも大きく、かつ、バックアップローラ12の幅よりも小さくなっている。これにより、アルミウェブ15の側端部における厚塗りを防止することができる。その幅の差分を構成する塗布液は、減圧チャンバ16内に吸引され、その下部に溜まり、回収口31より適宜抜かれて液受け32に回収される。回収された塗布液は、後に使用される塗布液と混合されて塗布に使用される。
【0019】
本実施形態においては、図2に示すように、スライドコータ11の先端とバックアップローラ12との隙間をG1とし、バックプレート16aとバックアップローラ12との隙間をG2とし、サイドプレート16bとバックアップローラとの隙間をG3とする。各隙間G1〜G3は、いずれも長さを表している。また、アルミウェブ15の厚みをTとする。
【0020】
バックプレート16aは、図2のように減圧チャンバ16本体と一体のものであってもよいし、図示は省略するが、適宜隙間G2を変えられるように減圧チャンバ16にネジ等で留められている構造でもよい。いかなる構造でも、バックプレート16aとバックアップローラ12との間にあいている部分を隙間G2と定義する。つまり、減圧チャンバ16を図2のようにアルミウェブ15及びスライドコータ11の下方に設置した場合、バックプレート16aの最上端からバックアップローラ12までの隙間を示す。
【0021】
また、サイドプレート16bに関しては、バックアップローラ12と対向する側端部形状は、ほぼバックアップローラの外周曲面に沿ったものとなるように設計されている。サイドプレート16bについても、減圧チャンバ16本体と一体のものであってもよいし、あるいは減圧チャンバ16本体へネジ留めされ、バックアップローラ12との隙間G3が調節可能なものであってもよい。
【0022】
本発明では、スライドコータ11及び減圧チャンバ16とバックアップローラとの隙間に関して、形成された隙間の総面積とファンの回転数との関係式を、塗布テストによる実測値に基づいて求め、その関係式をもとに実際の塗布条件をアルミウェブ15の幅に応じて決定するものである。以下、具体的にこれを説明する。
【0023】
まず、塗布テストにおける第1のデータ採取として隙間の総面積Sを求める。これは、本実施形態のような形状の減圧チャンバ16を用いる場合には、スライドコータ11の先端とバックアップローラ12との間に形成される隙間の面積と、バックプレート16aとバックアップローラ12との間に形成される隙間の面積と、サイドプレート16bとバックアップローラ12との間に形成される隙間の面積との総和で求める。つまり、隙間の総面積Sは下記式(1)により求められる。このとき、最適塗布条件となる減圧度とするためのファン22の回転数を実測により求める。この隙間の総面積とファン22の回転数をもって第1データとする。
S=W1(G1+G2)−2T・W2
−πθ{(G3)2 +2r・G3}/180・・・(1)
【0024】
アルミウェブ15を、他のアルミウェブに代えて、同様に隙間の総面積Sと、最適減圧度とするためのファン22の回転数を実測により求め、これを第2データとする。このとき、また、アルミウェブ15は、第1データ採取時のものと幅W2や厚みTが異なってもよい。以上のようなデータ採取を合計で好ましくは5回以上実施し、これを塗布テストとする。最も好ましくは、実際の生産における塗布系としてのすべてのサイズのアルミウェブに関して、各1回ずつのデータを採取し、n(nは自然数)種類のサイズのアルミウェブがあるときには第1〜第nデータまでを採取する。以上のように、ファン22の回転数は、予め、アルミウェブ15の幅または厚み、アルミウェブ15とスライドコータ11やバックアップローラ12との隙間の間隔の少なくともいずれかひとつに応じて設定されることが好ましい。
【0025】
そして、これら採取データをグラフ化するなどして、隙間の総面積Sとファン22の回転数との関係式を求める。ここで、ファン22の回転数をNRとし、例えば、ファン22の回転数NRが隙間の総面積Sの一次式、つまり、NR=aS+b(aは比例定数、bは定数)として表される関係式が導き出された場合には、いかなるサイズのアルミウェブに対しても実際の塗布において、隙間の総面積Sが求まれば、最適減圧度とするためのファン22の回転数NRがこの一次式により求められる。なお、関係式を導かない場合でも本発明は適用することができる。つまり、採取されたデータをもとにファン22の回転数と総面積SをそれぞれX軸、Y軸とするグラフを作成し、そのグラフから、塗布を実施する際の隙間の総面積Sに対応するファン22の回転数NRを読み取ることも、その一例としてあげることができる。
【0026】
この方法によると、最適減圧度とするためのファン22の回転数NRの変動因子は隙間の総面積Sであり、したがって、アルミウェブ15の幅W2や厚みTが異なる塗布を実施する毎に、最適減圧度とするためのファン22の回転数NRの設定するための検討を実装置にて行う必要がなくなる。このように、本発明により、幅W2や厚みT等のサイズが多種あるアルミウェブ15の塗布において、各塗布系に最適な減圧度とするためのファン22の回転数NRをそれぞれ容易に、かつ迅速に求めることができ、実際の塗布においてこの求められた回転数NRをファン22の運転条件として設定することにより、塗布条件の最適化及び生産の効率化を図ることができる。
【0027】
ファンの回転数NRと、隙間の総面積Sの関係式は上記のような一次式に限定されず、例えば減圧チャンバの形状や、内部容積等により二次式等で表される場合があるが、本発明においては、その関係式は限定されるものではなく、ファン22の回転数NRが総面積Sの関数となっていればよい。したがって、本発明は、減圧チャンバ16及びスライドコータ11と、バックアップロー12ラとの隙間の総面積Sの求め方や、総面積Sとファン22の回転数NRとの関係式について、本実施形態に限定されるものではない。
【0028】
ところで、アルミウェブ上に複層を逐次形成する場合には、第1層の形成条件により、第2層の形成条件が左右される場合が多い。例えば、第1層、第2層をともに塗布層とし、その塗膜を乾燥する場合には、温風や加熱搬送ローラ等を用いて、塗膜を加熱する方法が多く行われる。このときウェブ自体も同時に加熱されることとなる。乾燥されて第1層を形成されたウェブが、第2層の塗布工程に搬送されても、ウェブは高温となっていることが多く、このウェブの熱が第2層の塗布装置のバックアップローラに伝わって、バックアップローラが昇温する。バックアップローラは、昇温により熱膨張または熱収縮する。したがって、第2層目の塗布に、上述のような減圧下におけるビード塗布を適用する際には、バックアップローラ12の体積変化による、バックアップローラ12と、スライドコータ11、バックプレート16a、サイドプレート16bとの各隙間G1,G2,G3が変わるので、その総面積Sは変動するものとなる。
【0029】
そこで、本発明における隙間の総面積Sの変動を抑制する方法を、以下に説明する。図3は、本発明の一実施形態としての塗布方法を示す工程概略図である。本実施形態は、第1層を形成する第1塗布工程と、第2層を形成する第2塗布工程とを含んでおり、上記のビード形成塗布を第2塗布工程にて実施している。なお、本実施形態においては、アルミウェブ15の搬送路において適宜搬送ローラ41を用いているが、図の煩雑さを避けるために図3にはその一部のみを示している。また、本発明は、この実施様態に限定されるものではない。
【0030】
第1塗布工程には、塗布ヘッド42と、乾燥部45と、温度制御手段としての冷却機46及び複数の冷却ローラ47とを含んで構成されている。乾燥部45には、温度調整される風を発生する送風装置(図示せず)及び排気口(図示せず))が設けられている。冷却機46は、冷却風を発生する送風装置51を有しており、また冷却ローラ47は、2重構造とされたジャケット式ローラとされている。冷却ローラ47は内部に冷媒を通されることにより、その表面温度を低下させてその温度を保持する機構を有している。
【0031】
第2塗布工程は、図1及び図2に示したように、スライドコータ11と、バックアップローラ12と、減圧チャンバ16とからなる塗布装置10(図1参照)と、乾燥部52とを有している。乾燥部52は第1塗布工程における乾燥部45と基本的には同じ機構とされている。第2塗布工程の下流は、複数の搬送ローラ41と巻き取り機53とで構成されている。さらに、バックアップローラ12の表面温度を検知する温度検出器55と、この検出結果に基づき冷却機46と各冷却ローラ47との温度を個々に設定し制御するコントローラ56とが設けられている。
【0032】
第1塗布工程において、アルミウェブ15は、第1層を形成するための塗布液を塗布ヘッド42から塗布される。塗膜を乾燥するために、乾燥部45では、高温風が塗膜に吹き付けられ、揮発した塗膜の溶媒分は乾燥部の外部へと排気口から適宜排出される。ここでの乾燥条件は、搬送速度や、乾燥部45における搬送路の長さ等に依存する搬送時間と、塗布液の溶媒の種類、塗膜の構成成分と溶媒との親和性、塗膜の厚み等に基づき、乾燥風の温度や吹きつけ風速等を制御することにより設定されるものである。ただし、本発明は、この乾燥部45の構成及び乾燥条件に依存するものではない。
【0033】
乾燥部45にて高温乾燥され、第1層を形成されたアルミウェブ15は、冷却機46に搬送されて、送風装置51からの送風により冷却される。風速は大きいほど冷却効果が高いが、アルミウェブ15のばたつきによる塗膜の傷つき等を考慮して設定することが好ましい。この冷却温度は、第1層の厚みや、第1層の塗膜成分とアルミウェブ15との各体積変化率の熱依存性や、刷版性能等を考慮して設定される。例えば、乾燥部45と冷却機46との温度条件における体積変化の差において、アルミウェブ15と第1層の塗膜成分とが大きく異なる場合には、アルミウェブ15からの第1層の浮きや、剥がれが生じることもある。したがって、送風装置51からの送風温度は、冷却機46内の上流から下流へと徐々に低下させたものとすることが好ましい。
【0034】
送風装置51は、スリットノズル(図示せず)から風を吹き出し、アルミウェブ15に風を送るが、送風の方向は、アルミウェブ15に対して垂直であってもよいし、あるいは、アルミウェブの走行方向に関して同方向でも逆方向であってもよい。垂直方向のスリットノズルからの風速は3m/秒以上30m/秒以下とすることが好ましく、アルミウェブ15の走行方向に平行な送風の場合の風速は1m/秒以上15m/秒以下とし、また、露点は−5℃以上25℃以下とすることが好ましいが、これらは塗膜の厚みや搬送速度等に応じて設定されるものであって、露点に関しては考慮する必要がない場合もある。いずれの場合においても、送風温度は10℃以上40℃が特に好ましい場合が多い。
【0035】
さらに、本実施形態では、複数の冷却ローラ47によるアルミウェブ15の接触搬送により冷却効果を向上させている。これは、両者の接触による熱伝導を利用したものである。冷却設定温度及び冷却ローラ47の設置本数は、適宜設定すればよく、図3に示した様態に限定されるものではない。冷却ローラ47における冷却は、第2塗布工程における第2層の塗布条件に最も適した所定の温度となるように温度を設定することが好ましい。多くの場合には、バックアップローラ12と接触するときのアルミウェブ15の温度が50℃以下となるように冷却することが好ましい。また、冷却ローラ47による搬送が、塗膜に傷損傷等の影響を与える懸念があるときには、塗膜面側には無接触搬送装置等を設置して、これにより搬送する等して、冷却ローラ47が反塗膜面側のみとすることが好ましい。冷却ローラ47の冷媒としては、水等の各種液体の他、各種気体を用いることができる。冷媒の種類は、アルミウェブ15を所定の温度に冷却することができ、塗布継続中における温度制御で相変化をおこさないものが好ましく、取り扱いが簡便で、冷却ローラ47を耐食しないものが好ましい。
【0036】
本実施形態では、冷却手段として、冷却機46と冷却ローラ47との両方を用いているが、いずれか一方でもよく、適宜選択することができる。
【0037】
冷却されたアルミウェブ15は、第2塗布工程で第2層を形成するための塗布液を塗布される。このとき、バックアップローラ12の温度は、適宜、温度検出器55により検出される。搬送されてきたアルミウェブ15によりバックアップローラ12が加熱され昇温した場合には、バックアップローラ12の温度を低下させるようにアルミウェブ15の温度を調整するために、温度検出器55の検出結果に基づきコントローラ56は、冷却機46や冷却ローラ47の温度条件を設定し制御する。なお、温度検出器55は、本実施形態においては、バックアップローラ12の外部に設置されて接続されたものとしているが、バックアップローラ12に組み込まれた一体型のものとしてもよく、本発明は温度検出器の設置機構に依存するものではない。また、コントローラ56についても、本実施形態のように、温度検出器55と接続されたものとしてもよいし、温度検出器と一体、または冷却機46、または冷却ローラ47と一体とされたものとしてもよい。ただし、冷却機46、または各冷却ローラを独立して温度制御できるものとすることが好ましい。
【0038】
このように、冷却機46と冷却ローラ47の、コントローラ56による温度制御により、アルミウェブ15は温度を制御される。したがって、アルミウェブ15に接触するバックアップローラ12は、温度が調整されることとなり、温度変化による体積変化が抑制される。これにより、バックアップローラ12と、スライドコータ11、またはバックプレート16a、またはサイドプレート16bとの隙間は安定し、隙間の総面積Sの変動を抑制することができるので、所定の減圧度を安定的に維持することができる。その結果、作業効率が向上し、塗布工程は安定するので、製品故障の発生を抑制することができる。
【0039】
本実施形態においては、第2塗布工程における塗布条件に対応させるために、アルミウェブ15を冷却しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第2塗布工程の最適塗布温度に応じて、バックアップローラ12の表面温度を調整するために、冷却機46または冷却ローラ47の少なくともいずれか一方を用いて、所定の温度に制御することによりアルミウェブ15の温度を所定の温度に調整することができる。いずれの温度に設定する場合であっても、スライドコータ11とバックアップローラとの隙間G1の変動は、塗布開始時における隙間G1、つまり初期設定値に対して±10%以内とすることが好ましい。また、本実施形態においては第1層を形成されたアルミウェブ15を温度制御の対象としているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本実施形態のように第2層の形成にビード塗布を実施するのではなく、第3層以降の任意の塗布工程にビード塗布を実施する際には、そのビード塗布に供するアルミウェブを温度制御の対象とすることが好ましい。
【0040】
このように、本実施形態においては、アルミウェブ15の温度制御をすることにより、バックアップローラ12の温度を、間接的に制御しているが、本発明は、これに限定されるものではない。つまりバックアップローラ12に対する温度制御が可能なコントローラを別途設置して、直接的に温度制御を行い、バックアップローラの体積変化を抑制してもよい。さらに、この直接的温度制御方法と本実施形態のような間接的温度制御方法とを組み合わせてもよい。
【0041】
また、本発明においては、減圧度の調整をより好ましく行うために、バックアップローラ12の偏芯が少ないことが好ましく、これにより、バックアップローラ12の回転による周期的な隙間の変動、つまり減圧度の周期的な変動をより効果的に抑制することができる。好ましくは、偏芯による隙間の総面積の変動が、隙間の総面積Sの平均値に対して極力小さいことが好ましい。さらに、本発明は、ビードが形成されるいずれの塗布方法にも適用可能であり、スライドコータを用いた塗布の他に、スロットダイ等を用いるエクストルージョン方式の塗布等にも好ましく用いることができる。
【0042】
【実施例】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0043】
〔実施例1〕
スライドコータ15から形成されるビードの幅を1.6mとし、5回の塗布データ採取による塗布テストを行った。用いたバックアップローラ12の外周半径rは175cmであって、減圧チャンバ16及びスライドコータ11と対面するバックアップローラの中心角θは80°である。各データ採取D1〜D5における、スライドコータ11、バックプレート16a、サイドプレート16bとバックアップローラ12との各隙間G1,G2,G3(cm)を、アルミウェブ15の幅W2と厚みTとともに表1に記す。また、表1には、隙間の総面積S(単位;cm2 )と、その各データ採取D1〜D5における最適減圧度を達成するためのファン22の回転数NR(単位;rpm)とを示している。なお、用いた塗布液はいずれも水系の酸素遮断層用塗布液であって、アルミウェブ15の搬送速度は60m/分とし、最適減圧度は−320Pa(対大気圧値)である。
【0044】
【表1】
【0045】
表1の各採取データD1〜D5をグラフ化したものを図4に示す。このグラフから、ファン22の回転数NR(単位;rpm)は隙間の総面積S(単位;cm2 )の一次式で表されることがわかった。その一次式は、NR=134.86S−12630であった。この一次式を用いて、最適ファン回転数NRを求め、4種類のアルミウェブ15で塗布を実施した。塗布に供したアルミウェブ15のサイズは、それぞれ、幅W2が140cmで厚みTが0.020cm、幅W2が140cmで厚みTが0.030cm、幅W2が75cmで厚みTが0.026cm、幅W2が100cmで厚みTが0.400cmである。
【0046】
本実施例1の結果、すべてのアルミウェブ15において、迅速に良好な塗布を開始することができ、得られた塗膜は非常に良好であった。
【0047】
〔実施例2−1〕
アルミウェブ15の上に、2層を形成するための塗布を行った。搬送速度は70m/分とした。第1層はバーコータによる塗布であって、溶媒にメチルエチルケトンとメチルアルコールの混合物を用いた感光性塗布液を25ml/m2 で塗布して形成した。このとき、乾燥部45の出口におけるアルミウェブ15の表面温度は120℃であった。乾燥部45からのアルミウェブを冷却機46においてアルミウェブ15の進行方向と同方向に送風して冷却した。送風温度は20℃である。冷却されたアルミウェブ15に対し、スライドコータ11で第2層形成のための塗布を行った。ここで用いたバックアップローラ12は、直径が350mmでって、その材質の線膨張係数αは14.7×10-6(単位;K-1)である。用いた塗布液は有機溶媒系のポリマー含有塗布液である。この第2層の塗布工程における雰囲気温度は25℃であって、塗布開始時におけるバックアップローラ12の表面温度は25℃であった。
【0048】
第2層の塗布工程に搬送されてきたアルミウェブ15の表面温度は50℃であった。塗布開始後20分経過時におけるバックアップローラ12は、その表面温度は25℃上昇して体積膨張し、バックアップローラ12、バックプレート16a、サイドプレート16bとスライドコータ11との各隙間G1,G2,G3はそれぞれ70μm減少した。この結果、減圧度が小さくなって塗布液の液切れが発生し、塗布が不可能となった。
【0049】
〔実施例2−2〕
乾燥部45から搬送されてきたアルミウェブ15を、冷却機46において冷却する際に、アルミウェブ15に対し20℃のスリット風を送風して冷却した他は実施例2−1と同様に実施した。第2層の塗布工程におけるバックアップローラ12と接触するアルミウェブ15の表面温度は40℃であり、バックアップローラ12は、表面温度が塗布開始時から20分経過後には15℃上昇した。バックアップローラ12は体積が大きくなり、バックアップローラ12、バックプレート16a、サイドプレート16bとスライドコータ11との各隙間G1,G2,G3はそれぞれ50μm減少した。この結果、塗布開始時には厚塗りが発生し、減圧度が小さくなって、塗膜の全面にわたる表面にスジが多数発生した。
【0050】
〔実施例2−3〕
乾燥部45から搬送されてきたアルミウェブ15を、冷却機46の送風装置51による送風に代えて、冷却ローラ47により搬送冷却とした。冷却ローラ47の冷媒は20℃の水とした。この他の条件は実施例2−1と同様に実施した。第2層の塗布工程におけるバックアップローラ12と接触するアルミウェブ15の表面温度は30℃であり、バックアップローラ12は、表面温度が塗布開始時から20分経過後には5℃上昇した。本実施例では、バックアップローラ12は体積が少し大きくなり、バックアップローラ12、バックプレート16a、サイドプレート16bとスライドコータ11との各隙間G1,G2,G3はそれぞれ20μm減少したが、塗布が良好に開始及び継続されて、製品故障もなく、良好であった。
【0051】
〔実施例2−4〕
実施例2−1におけるアルミウェブ15の冷却工程のあとに、冷却ローラ47による搬送冷却工程を加え、その他は実施例2−1と同様に実施した。第2層の塗布工程におけるバックアップローラ12と接触するアルミウェブ15の表面温度は25℃であり、バックアップローラ12は、表面温度が塗布開始時から20分経過後にも上昇はしなかった。本実施例では、バックアップローラ12は体積変化が全くなく、したがってバックアップローラ12、バックプレート16a、サイドプレート16bとスライドコータ11との各隙間G1,G2,G3は変化がなかった。この結果、塗布が非常に良好に開始及び継続されて、製品故障も
【0052】
実施例1及び2−1〜4の結果、減圧度の安定化にはバックアップローラ、バックプレート、サイドプレートとスライドコータとの各隙間の総面積の変化を抑制することが重要であり、隙間の総面積とファンの回転数との関係式を導き出すことにより、アルミウェブのサイズ変更が伴っても、先の関係式に基づきファンの回転数を求めることで、所定の減圧度を迅速に達成することができ、塗布を開始することが可能となる。したがって、作業効率が向上し、塗布の安定化を図ることができることがわかる。また、ビードが形成される塗布を第2層以降の塗布工程で実施する際に、その隙間の総面積の安定化を図るためには、バックアップローラの体積変化を抑制することが重要であり、そのためには、その塗布に供するアルミウェブの温度を調整することにより、バックアップローラへの熱伝達を抑制することが好ましいことがわかる。アルミウェブの温度調整としては、温度制御された風の吹き付けや、温度制御されたローラによる搬送が効果的であり、その両方を用いることが最も好ましいことがわかる。
【0053】
【発明の効果】
以上のように、本発明の塗布方法により、ビード塗布において、アルミウェブのサイズが変更されても、所定の減圧度を達成するためのファンの運転条件を迅速に求めることができ、作業効率が大幅に向上する。また、バックアップローラ、バックプレート、サイドプレートとスライドコータとの各隙間を安定させることができるため、減圧度の変化を抑制し、安定的な塗布を継続して、良好な塗膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施した塗布装置の斜視図である。
【図2】スライドコータ及び減圧チャンバとバックアップローラとの隙間を示す説明図である。
【図3】本発明の塗布方法を示す概略工程図である。
【図4】本発明の実施形態における、総面積Sとファン回転数NRとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
10 塗布装置
11 スライドコータ
12 バックアップローラ
15 アルミウェブ
16 減圧チャンバ
16a バックプレート
16b サイドプレート
22 ファン
27 圧力センサ
46 冷却機
47 冷却ローラ
51 送風装置
55 温度検出器
56 コントローラ
Claims (12)
- ウェブを支持体により支持しながら搬送し、前記ウェブに近接させた塗布ヘッドから前記ウェブにかけてビードを形成し、圧力制御手段にて内部圧力を制御される減圧チャンバで前記ビード近傍を減圧して前記ウェブに塗布液を塗布する方法において、
前記減圧チャンバ及び前記支持体と前記塗布ヘッドとの隙間の総面積Sと、前記圧力制御手段である減圧ファンの最適塗布条件となる回転数NRとを厚みと幅との少なくともいずれか一方が互いに異なる複数のウェブについてそれぞれ求めて、前記総面積Sと前記回転数NRとの関係を求める塗布前工程と、
塗布すべき前記ウェブについて厚みと幅とから前記隙間の総面積Sを算出し、前記塗布前工程で求めた前記関係に基づき、算出された前記総面積Sから塗布すべき時の前記減圧ファンの回転数NRを設定して、塗布する塗布工程とを有することを特徴とする塗布方法。 - 前記関係は、前記複数のデータの線形補間により求められることを特徴とする請求項1記載の塗布方法。
- 前記関係は、比例式で表されることを特徴とする請求項1記載の塗布方法。
- 前記減圧チャンバは、前記支持体としてのローラの両側部に対向して減圧空間を仕切る1対のサイドプレートと、前記ウェブの搬送路の下流側で減圧空間を仕切るバックプレートと有し、
前記複数の各ウェブに塗布したときに形成される各ビードの幅をW1、前記複数のウェブの各幅をW2、各厚みをT、前記塗布ヘッドと前記支持体との距離をG1、前記バックプレートと前記支持体との距離をG2、前記サイドプレートと前記支持体との距離をG3、前記ローラの半径をr、前記支持体の前記バックプレートに対向する位置から前記塗布ヘッドと対向する位置までの回転中心における角度をθとするときに、
前記隙間の総面積Sは、
S=W1(G1+G2)−2T・W2−πθ{(G3) 2 +2r・G3}/180
の式で求めることを特徴とする請求項1ないし3いずれかひとつ記載の塗布方法。 - 前記ビードを前記ウェブよりも幅を大きくし、
前記ビードのうち未塗布となった部分を前記減圧チャンバを介して回収することを特徴とする請求項1ないし4いずれかひとつ記載の塗布方法。 - 前記支持体の温度変化を抑制する温度制御手段により、前記支持体の体積変化を抑制することを特徴とする請求項1ないし5いずれかひとつ記載の塗布方法。
- 前記支持体と前記塗布ヘッドとの隙間の変動が初期設定値±10%以内となるように前記支持体の体積変化を抑制することを特徴とする請求項6記載の塗布方法。
- 前記温度制御手段は、前記ウェブの温度を制御することにより前記支持体の温度変化を抑制することを特徴とする請求項6または7記載の塗布方法。
- 前記ウェブ上に複層を形成し、その第2層以降の任意の層を前記ビードを形成する塗布による層とすることを特徴とする請求項1ないし8いずれかひとつ記載の塗布方法。
- 前記温度制御手段は、前記ウェブに冷却風を送風する送風部を有することを特徴とする請求項6ないし9いずれかひとつ記載の塗布方法。
- 前記温度制御手段は、前記ウェブを冷却しながら搬送する冷却ローラを有することを特徴とする請求項6ないし10いずれかひとつ記載の塗布方法。
- 前記温度制御手段は、
前記支持体の温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部の検出結果に基づき、前記送風部の送風温度または前記冷却ローラの温度を制御するコントローラ部と、
を有することを特徴とする請求項11いずれかひとつ記載の塗布方法。
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