JP4196582B2 - 電気ヒューズ素子及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、過電流保護用素子として用いられる新規な電気ヒューズ材料およびそれを用いた電気ヒューズ素子に関する。詳しくはPTC効果を利用せず、定常時の抵抗が小さく異常時の漏れ電流が小さく、応答速度に優れた、繰り返し使用を可能にした電気ヒューズ材料と電気ヒューズ素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、過電流を防止する保護素子として電気ヒューズが広く用いられている。電気ヒューズは、電気回路に過大な電流が流れると、金属がジュール熱により溶断して回路を保護する。ヒューズの材料としては、鉛、錫などの低融点金属材料と銅、タングステンなどの非低融点金属材料とに大別され、用途により使い分けられる。またヒューズは、溶断する電流と時間により種類が分けられ、形状によって、糸ヒューズ、板ヒューズ、爪付ヒューズ、筒形ヒューズなどがある。しかしながら、電気ヒューズは過電流により溶断して電流を完全に遮断するが、一旦溶断した後は再度使用することができないという問題がある。
【0003】
一方、再利用可能な過電流保護素子としては、正の抵抗温度係数を示し、ある温度で抵抗が急激に増加するという特徴(PTC特性)を有するPTCサーミスタ材料がある。代表的なPTC材料としては、チタン酸バリウム系半導体セラミックス材料や結晶性高分子にカーボンブラックなどの導電性粉末を分散させたポリマー系複合材料が知られている。
【0004】
これらは、過電流発生時にPTC特性で過電流を抑制し、電子機器の破壊を防止するものであるが、過電流を完全に遮断することができず、その漏れ電流のため素子が発熱状態となり回路に熱的ダメージを与えてしまう。また、大電流用保護素子として利用する場合、定常時において抵抗値が低いことが要求されるが、前記PTCサーミスタでは低抵抗化によりPTC特性が劣化してしまい、応答速度が著しく遅れ過電流の抑制が不充分となる。したがってPTCサーミスタ材料では、低抵抗化に限界があり、大電流が流れる用途の保護素子として使用できない。
【0005】
また、PTC特性を有する新しいタイプの過電流保護素子として、本発明者らにより特開平11−111507号公報に開示されているように、ビスマス金属を高抵抗の無機材料に分散させた複合材料が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のビスマス金属を高抵抗の無機材料に分散させたPTC素子は、ビスマス金属粒子が無機材料中で3次元マトリックスを形成し、温度が上昇し、ビスマス金属の融点になるとビスマス金属が溶融しそれに伴い体積が減少し、ビスマス金属粒子間の電気的接続が切れるために抵抗が増大すると考えられている。このタイプのPTC素子は、従来のPTCサーミスタより定常時の抵抗値が低く、高温時の抵抗値が高い改良されたPTC素子として提案されている。しかしながら、定常時の抵抗値はまだ十分ではなく、また、温度により作動するため、応答速度がやや遅いという問題がある。また、ビスマス金属等の融点による温度等の制限がある。
【0007】
本発明は、従来のPTCサーミスタの問題点を解決し、さらに、従来のPTC素子よりさらに定常時の抵抗値が小さく、電流切断時の漏れ電流が少なく、材料の融点などの温度に影響されず、電流により速い応答速度で作動する新しいタイプの電気ヒューズ材料およびそれを用いた自己修復可能な電気ヒューズ素子を提供することを目的とする。
【0008】
さらに詳しくは、定常時の比抵抗値が2.0Ω・cm以下、異常電流制限時の比抵抗値が105Ω・cm以上で、電流量による遮断の応答速度が数十ミリ秒以下である電気ヒューズ材料と、それを用いた漏れ電流が0.1ミリアンペア以下の小型で、正常状態に回復した際に再利用可能な自己修復型電気ヒューズ素子を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、特定の金属または合金からなる導電性物質の粒子を特定の量、電気絶縁性物質に分散させ、かつ該導電性物質の粒子同士が線状の該導電性物質で連結された構造を有する特殊なネットワーク複合組織とすることにより、従来の電気ヒューズとは異なる組織構造で前記導電性物質の融点等の温度に影響されず、過電流に対して敏感に感応して電流を制限し、かつ過電流が除かれた後に自己修復することを見出した。
【0010】
また本発明のヒューズ素子は、スパッタ法などの薄膜形成プロセスや微細加工プロセスなどの高度な半導体技術を必要とせず一般的で簡便な混合法にて作製できるため、特別な設備も必要でなく製造コストを低減することも可能となる。
【0011】
本発明は、ビスマス金属またはビスマス基合金からなる導電性物質の粒子が絶縁性物質に分散した電気ヒューズ材料であり、前記粒子同士が線状の前記導電性物質で連結されており、前記電気ヒューズ材料中の前記導電性物質の含有量が30〜60wt%であり、前記導電性物質の融解現象を利用せず電流を遮断することを特徴とする電気ヒューズ材料に関する。
【0012】
前記電気絶縁性物質は、500℃以下の軟化点を有する低融点ガラスであることが好ましい。
【0013】
また、前記線状の前記導電性物質は、1μm未満の線幅を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、前記電気ヒューズ材料を使用した電気ヒューズ素子に関し、その一実施形態は、前記電気ヒューズ材料で形成された電気ヒューズ層と該電気ヒューズ層の対向する2面の上に形成された一対の電極とを有する電気ヒューズ素子であり、他の一実施形態は、前記電気ヒューズ材料で形成された電気ヒューズ層と、該電気ヒューズ層の対向する2面の上に形成された導電性保護層と、前記導電性保護層のそれぞれの上に形成された1対の電極とを有する電気ヒューズ素子であって、前記導電性保護層は前記電気ヒューズ層中の導電性物質の溶出を抑える金属または金属と前記絶縁性物質との複合体であることを特徴とする電気ヒューズ素子に関する。
【0015】
さらに、本発明は、平均粒子径5〜50μmの前記導電性物質の粒子と前記絶縁性物質の粒子を、前記導電性物質の含有量が30〜60wt%となるように混合し、成形した後、還元性雰囲気下、400〜500℃で焼成することを特徴とする前記の電気ヒューズ材料の製造方法に関する。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の電気ヒューズ材料は、ビスマス金属またはビスマス基合金からなる導電性物質の粒子が絶縁性物質に分散した電気ヒューズ材料であり、前記粒子同士が線状の前記導電性物質で連結されたネットワーク構造を有しており、前記電気ヒューズ材料中の前記導電性物質の含有量が30〜60wt%であり、前記導電性物質の融解現象を利用せず電流を遮断することを特徴としている。本発明の電気ヒューズ材料により、導通状態では低抵抗であり、かつ異常時では非常に高い絶縁抵抗となり、良好な電流遮断特性を有し、導電性物質の融点などの温度に影響されず、電流量で作動する自己修復型電気ヒューズ素子が得られる。
【0017】
本発明の電気ヒューズ材料に使われる導電性物質は、ビスマス金属またはビスマス基合金である。前記ビスマス基合金を例示すると、Bi−Pb、Bi−Sn、Bi−In、Bi−Sn−Pb、Bi−Pb−Sn−Sb、Bi−Sb、Bi−Pb−Sn−In、Bi−Pb−Sn−Cd等である。ビスマス基合金におけるBiの量は合金重量に対して40wt%以上、特に50wt%以上が好ましい。これらの導電性物質は、融解状態で体積収縮を起こす。
【0018】
本発明の電気ヒューズ材料に使われる絶縁性物質は、電気ヒューズ素子が使用される環境で形状と電気絶縁性を保持する無機材料が好ましい。特に、前記絶縁性物質が、500℃以下の軟化点を有する低融点ガラスが好ましい。本発明の電気ヒューズ材料は、通常、前記導電性物質の粒子とガラス等の絶縁性物質の粒子を混合し、焼成することにより得られるが、低軟化点のガラスを使用すると、低温度で焼成することが可能であり、ビスマスなどの導電性物質の焼成中の揮発を押さえ、導電性物質が閉じ込められた緻密な材料が得られる。このようなガラスの組成は特に限定されず、所望の性能、用途等に応じて適宜選択することができるが、例えば、PbO−B2O3、PbO−B2O3−SiO2、PbO−B2O3−ZnO、Bi2O3−B2O3等のB2O3系酸化物、SiO2系酸化物などを挙げることができる。また、ガラス粉末の平均粒子径は特に限定されないが、通常0.1〜100μmであるのが、同様な理由から好ましい。
【0019】
本発明の前記電気ヒューズ材料中の前記導電性物質の含有量は30〜60wt%であり、この範囲内で本発明に適したナノサイズの線状ネットワーク構造が形成される。前記電気ヒューズ材料中の前記導電性物質の含有量が30wt%より少ない場合は、ビスマス金属などの融解現象による温度による抵抗変化が大きくなる。また、含有量が少ないほど定常時の抵抗値が高くなり、発熱するという問題が発生する。前記電気ヒューズ材料中の前記導電性物質の含有量が60wt%より大きい場合、過電流に対する応答性が著しく低下し、更に含有量が多くなると適度なネットワークを形成せず、電流量による遮断特性を示さなくなる。
【0020】
本発明の導電性粒子同士は、線状の前記導電性物質で連結されてネットワークを形成している。前記導電性物質の線状組織の線幅は、連結される導電性物質のの粒子径にくらべ細いことが重要である。良好な過電流遮断特性を示すためには、前記線状の前記導電性物質が、1μm未満の線幅を有することが好ましい。導電性物質の量が多い場合には、線状導電性物質の線幅が大きくなり電流遮断ができない。また、導電性物質の量が少ない場合には、適度な線状導電性物質が形成されず、融解現象によるPTC特性を示し、融点以上で使用することができない。
【0021】
導電性物質の融解現象を利用した過電流保護とは次のような現象をいう。従来のビスマス金属等の導電性粒子を無機材料に分散したPTC素子では、その導電性粒子は適度な割合で接触してネットワーク構造を形成している。この状態では、金属粒子間に伝導パスが形成されているために低抵抗を示す。次に自己発熱で素子が高温になると、分散している導電性粒子が融点で融解し、急激な体積減少を起こし、導電性粒子のネットワークが除々に切断される。これにより電流値をある程度の漏れ電流のレベルまで制限する。この場合の漏れ電流値は、数百ミリアンペア程度である。
【0022】
本発明の電気ヒューズ材料またはヒューズ素子は、上記のPTC素子のような導電性物質の溶解現象を利用するものではなく、温度では電流遮断特性を示さず、過電流でのみ保護機能を発現するものである。これにより、従来材料にくらべ低抵抗で応答速度の速い過電流保護素子を実現できる。また、ビスマス金属またはビスマス基合金の融点以上の温度領域で使用可能であり、保護素子としての用途範囲が格段に広がる。
【0023】
本発明の電気ヒューズ材料および素子の動作原理は、明確ではないが以下のように推察される。
【0024】
本発明の電気ヒューズ材料は、導電性粒子間に、局所的にそれらを連結する線状の導電性物質が存在し、これにより導電性物質のネットワークが形成されている。この導電性物質のネットワークに電流が流れることによって、高抵抗な線状導電物質が選択的に発熱し融点以上で体積収縮を伴って融解するが、これだけでは線状導電物質の切断は起こらず、加えて絶縁性物質の急激な熱膨張による応力によって、線状導電物質のネットワークの電気的導通が破れ、その結果として素子の電気抵抗が瞬時に増大し電気絶縁状態に変化し電流をほぼ完全に遮断する。次いで、過電流が除去されると金属ネットワークの温度が低下し、融解金属ネットワークが凝固する際に体積増加して電気的導通を回復する。また、本発明ヒューズ素子が顕著なPTC特性を示さないことからも、電流遮断特性は前記PTC特性にも依存せず、過電流に対して新しい動作原理で過電流保護素子としての機能を発現することが明らかである。
【0025】
本発明の電気ヒューズ材料は例えば以下のようにして製造できる。まず、ビスマス金属やビスマス基合金などの導電性物質と、ガラスなどの絶縁性物質を、それぞれ、各種ミル等で粉砕し、適度な大きさの粒子とする。導電性物質の粒子の平均径としては5〜50μmが好ましい。この様にして粉砕したビスマス金属やビスマス基合金などの導電性物質の粒子とガラスなどの絶縁性物質の粒子を、導電性物質が混合物全体に対し30〜60wt%になるように計量し、均一に分散するように混合して、混合粉とする。
【0026】
プレス等で成形する場合は、必要に応じてエチルセルロースなどのバインダーを添加し、金型に仕込み、加圧成形する。グリーンシートを作製する場合は、前記の混合粉にトルエン等の溶媒や分散剤、可塑剤等を添加して混合し、ドクターブレード法によりグリーンシートを形成する。
【0027】
上記の成形体やグリーンシートは、窒素や水素またはそれらの混合物の還元性雰囲気下、電気炉にて焼成される。焼成温度は400〜500℃が好ましく、特に430〜470℃での焼成が好適である。本発明の電気ヒューズ材料の線状の導電性物質を含むネットワークの形成には、焼成時の収縮が必要であり、焼成温度が低いと焼成による収縮が十分でなく、十分な電流遮断特性を示さない。また、焼成温度が高すぎると導電性物質である金属が凝集し巨大球状となり線状の構造ができない傾向がある。
【0028】
次に、本発明の電気ヒューズ素子について説明する。
【0029】
本発明の電気ヒューズ素子の一形態は、本発明の電気ヒューズ材料からなる電気ヒューズ層と該電気ヒューズ層の対向する2面の上に形成された一対の電極を有する電気ヒューズ素子である。電極としては、Ni,Agなどが好適に用いられる。
【0030】
本発明の電気ヒューズ素子は、電気ヒューズ材料を上記の方法で焼結した後に、Niメッキまたは、Agペーストの塗布焼きつけにより電極を形成することで製造できる。
【0031】
また、本発明の電気ヒューズ素子の他の形態として、前記電気ヒューズ材料で形成された電気ヒューズ層と該電気ヒューズ層の対向する2面の上に形成された導電性保護層と、前記導電性保護層のそれぞれの上に形成された1対の電極を有する電気ヒューズ素子であって、前記導電性保護層は前記電気ヒューズ層中の導電性物質の溶出を抑える金属または金属と前記絶縁性物質との複合体である電気ヒューズ素子を挙げることが出来る。
【0032】
導電性保護層は、金属または合金からなる膜、あるいは絶縁性物質に金属または合金を含有させた複合体の層である。この導電性保護層は、焼成時の金属または合金の焼結体外部への溶出による組成変動や電極との反応を防止することにより、製造時の素子特性のばらつきを低減し、さらには素子の安全性や信頼性を格段に向上させる効果がある。導電性保護層の形成方法としては、複合体の場合は、加圧成形法やシート成形法、押し出し成形法などの一般的なセラミックス成形法の他、金属膜の場合は、印刷法やスパッタ法、蒸着法などの膜形成法が挙げられる。
【0033】
前記金属膜、合金膜あるいは複合体に使用される金属、合金としては、融点が500℃以上である金属または合金であれば良いが、通常ビスマスまたはビスマス基合金と他の合金または金属間化合物を形成しないものが好ましい。また導電性保護層の導電率については、ビスマスまたはビスマス基合金を絶縁性物質に分散させた電気ヒューズ層よりも高導電率であれば良く、通常、103Ω−1・cm−1以上であるのが好ましい。例えば、Cr、Zr、W、Mo、NiならびにTiSi2、ZrSi2、VSi2、NbSi2、TaSi2、CrSi2、MoSi2、WSi2などの金属ケイ化物、TiB2、ZrB2、HfB2、VB2、NbB2、TaB2、CrB2、MoB2、W2B5などのホウ化物、TiN、ZrN、HfN、VN、NbN、TaN、Cr2N、Mo2N、W2Nなどの窒化物、TiC、ZrC、HfC、V4C3、NbC、TaC、Cr3C2、Mo3C、WCなどの炭化物などが挙げられる。
【0034】
導電性保護層を有する素子を製造する場合は、前記の電気ヒューズ材料の製造方法によって得られた焼結体の上にさらに金属膜をスパッタ等で形成することも出来るが、電気ヒューズ材料を焼成する際に反応しない導電性保護層の材料であれば、焼成前の電気ヒューズ材料に予め導電性保護層を形成して一緒に焼成してもよい。特に、導電性保護層が、金属と絶縁性物質との混合物である場合は、導電性保護層と電気ヒューズ層を同時に成形して焼成により一体化させることができる。
【0035】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
【0036】
実施例1
電気ヒューズ層用材料としてPbO−B2O3−SiO2系ガラス粉末(平均粒子径3μm)及びBi金属粉末(平均粒子径10μm)をそれぞれ65wt%、35wt%含有するように調整・混合した。また導電性保護層用材料として、前記ガラス粉末及びNi金属粉末(平均粒子径5μm)をそれぞれ75wt%、25wt%含有するように調整・混合した。これら混合紛を、Ni金属/ガラス混合紛、Bi金属/ガラス混合紛、Ni金属/ガラス混合紛の順序で金型に仕込み、2.5t/cm2の圧力で直径10mmφ、厚さ1.8mmの円板形状に加圧し、導電性保護層付きBi金属/ガラス複合成形体を得た。次いでこれを水素4vol%含有窒素の還元性雰囲気中、435℃、約10分の条件で焼成した。このようにして得られた焼結体に、Agペーストを焼付けて電極を形成して電気ヒューズ素子を得た。
【0037】
得られた素子の直径は、9.1mmであり、電気ヒューズ層の厚さは1.3mmで、その両側の導電性保護層の厚みはそれぞれ0.2mmであった。この電気ヒューズ層の材料の室温における比抵抗は1.1Ω・cmであり、17アンペアの電流を流し遮断した時の比抵抗は、1.2×105Ω・cmであった。図1に得られた電気ヒューズ素子研磨面の金属ネットワーク構造の光学顕微鏡写真を示す。図1中、白い部分がガラスであり、黒い部分がBi金属である。図1のように、Bi金属粒子が線幅1μm未満の線状組織をした金属ネットワークにより連結されていることがわかる。
【0038】
この素子の定常抵抗は、0.3Ωであり、図2は、17アンペアの電流を素子に印加した場合の電流遮断特性である。図からも明らかなように、本実施例のような小型の素子でありながら、17アンペアの過電流を数十ミリ秒で0.1ミリアンペア以下まで制限した。
【0039】
この素子の比抵抗の温度特性を調べた結果を図3に示す。図3から分かるように、Bi金属の融点271℃における融解現象に起因する抵抗の変化は、わずかに観測されるものの、電流の遮断を決定する程の変化ではないことが分かる。
【0040】
実施例2
電気ヒューズ層用材料としてPbO−B2O3−SiO2系ガラス粉末(平均粒子径3μm)及びBi−Pb−Sn合金粉末(平均粒子径10μm)をそれぞれ68wt%、32wt%含有するように調整・混合した。また導電性保護層用材料として、前記ガラス粉末及びNi金属粉末(平均粒子径5μm)をそれぞれ75wt%、25wt%含有するように調整・混合した。これら混合紛を、Ni金属/ガラス混合紛、Bi−Pb−Sn合金/ガラス混合紛、Ni金属/ガラス混合紛の順序で金型に仕込み、2.5t/cm2の圧力で直径10mmφ、厚さ1.8mmの円板形状に加圧し、導電性保護層付きBi−Pb−Sn合金/ガラス複合成形体を得た。次いでこれを水素4vol%含有窒素の還元性雰囲気中、465℃、約10分の条件で焼成した。このようにして得られた焼結体に、Agペーストを焼付けて電極を形成して電気ヒューズ素子を得た。
【0041】
得られた素子の直径は、9.1mmであり、電気ヒューズ層の厚さは1.3mmで、その両側の導電性保護層の厚みはそれぞれ0.2mmであった。この電気ヒューズ層の材料の室温における比抵抗は0.76Ω・cmであり、16アンペアの電流を流し遮断した時の比抵抗は、4.0×106Ω・cmであった。
【0042】
この素子の定常抵抗は、0.2Ωである。図4は、16アンペアの電流を素子に印加した場合の電流遮断特性である。図4からも明らかなように、本実施例のような小型の素子でありながら、16アンペアの過電流を数ミリ秒で0.1ミリアンペア以下まで制限した。
【0043】
実施例3
電気ヒューズ層用材料としてPbO−B2O3−SiO2系ガラス粉末(平均粒子径3μm)及びBi−Sn合金粉末(平均粒子径10μm)をそれぞれ66wt%、34wt%含有するように調整・混合した。また導電性保護層用材料として、前記ガラス粉末及びNi金属粉末(平均粒子径5μm)をそれぞれ75wt%、25wt%含有するように調整・混合した。これら混合紛を、Ni金属/ガラス混合紛、Bi−Sn合金/ガラス混合紛、Ni金属/ガラス混合紛の順序で金型に仕込み、2.5t/cm2の圧力で直径10mmφ、厚さ1.8mmの円板形状に加圧し、導電性保護層付きBi−Sn合金/ガラス複合成形体を得た。次いでこれを水素4vol%含有窒素の還元性雰囲気中、475℃、約10分の条件で焼成した。このようにして得られた焼結体に、Agペーストを焼付けて電極を形成して電気ヒューズ素子を得た。
【0044】
得られた素子の直径は9.1mmであり、電気ヒューズ層の厚さは1.3mmで、その両側の導電性保護層の厚みはそれぞれ0.2mmであった。この電気ヒューズ層の材料の室温における比抵抗は1.1Ω・cmであり、16アンペアの電流を流し遮断した時の比抵抗は、1.0×105Ω・cmであった。この素子の定常抵抗は、0.3Ωである。図5は、16アンペアの電流を素子に印加した場合の電流遮断特性である。図5からも明らかなように、本実施例のような小型の素子でありながら、16アンペアの過電流を数ミリ秒で0.1ミリアンペア以下まで制限した。
【0045】
実施例4
電気ヒューズ層用材料としてPbO−B2O3−SiO2系ガラス粉末(平均粒子径3μm)及びBi−Pb−Sn合金粉末(平均粒子径10μm)をそれぞれ68wt%、32wt%含有するように調整しシート用原料とした。また導電性保護層用材料として、前記ガラス粉末及びNi金属粉末(平均粒子径5μm)をそれぞれ75wt%、25wt%含有するように調整しシート用原料とした。
【0046】
各原料100gに、トルエン14g、イソプロピルアルコール7g、エチルセルロース3g、分散剤1g、可塑剤2.3gをポリ容器に入れ、回転容器式混合器で5分混合し、各スラリーを得た。これらスラリーからドクターブレード法にて100μm程度の厚みのグリーンシートを作製した。前記2種のグリーンシートの中から、まずBi−Pb−Sn合金/ガラス混合紛からなるグリーンシートを複数枚積層し厚み方向に仮圧着し、次いでその対向する上下面にNi金属/ガラス混合紛からなる導電性保護層用グリーンシートを複数枚積層し本圧着することで、積層厚さが1.5mm程度のシート圧着体を得た。この圧着体を、8mm×8mm角の平面形状を有するように切断機により切断し成形体を得た。この切断後成形体を還元性雰囲気中、465℃、約10分の条件で焼成した。このようにして得られた焼結体に、Agペーストを焼きつけて電極を形成して電気ヒューズ素子を得た。
【0047】
得られた素子の電極面積は、53.3mm2であり、電気ヒューズ層の厚さは0.7mmで、その両側の導電性保護層の厚みはそれぞれ0.3mmであった。この電気ヒューズ層の材料の室温における比抵抗は1.2Ω・cmであり、17アンペアの電流を流し遮断した時の比抵抗は、1×105Ω・cmであった。
【0048】
この素子の定常抵抗は、0.3Ωである。図6は、17アンペアの電流を素子に印加した場合の電流遮断特性である。図6からも明らかなように、本実施例のような小型の素子でありながら、17アンペアの過電流を数ミリ秒で0.1ミリアンペア以下まで制限した。
【0049】
比較例1
電気ヒューズ層用材料としてPbO−B2O3−SiO2系ガラス粉末(平均粒子径3μm)及びBi金属粉末(平均粒子径10μm)をそれぞれ30wt%、70wt%含有するように調整・混合した。この混合紛を金型に仕込み、2.5t/cm2の圧力で直径10mmφ、厚さ1.8mmの円板形状に加圧し、Bi金属/ガラス複合成形体を得た。次いでこれを水素4vol%含有窒素の還元性雰囲気中、435℃、約10分の条件で焼成した。このようにして得られた焼結体に、Agペーストを焼付けて電極を形成して電気ヒューズ素子を得た。
【0050】
得られた素子の直径は、9.1mmであり、素子の厚みは1.2mmであった。この電気ヒューズ材料の室温における比抵抗は0.09Ω・cmであった。図7に得られた電気ヒューズ素子研磨面の金属ネットワーク構造の光学顕微鏡写真を示す。図7中、白い部分がガラスであり、黒い部分がBi金属である。図7のように、Bi金属粒子同士が直接に接合または結合しており、この場合には、線幅が大きくなり1μm未満の線状組織をした金属ネットワークが形成されないことがわかる。
【0051】
この素子の定常抵抗は、0.03Ωであり、図8は、19アンペアの電流を素子に印加した場合の電流遮断特性である。図からも明らかなように、本比較例のようにガラスの絶縁物質中のBi量が多い場合は、導電体物質の粒子間に太い導電パスが形成されるが、電流量による遮断が起こらないことがわかる。
【0052】
比較例2
電気ヒューズ層用材料としてPbO−B2O3−SiO2系ガラス粉末(平均粒子径3μm)及びBi金属粉末(平均粒子径10μm)をそれぞれ75wt%、25wt%含有するように調整・混合した。この混合紛を金型に仕込み、2.5t/cm2の圧力で直径10mmφ、厚さ1.8mmの円板形状に加圧し、Bi金属/ガラス複合成形体を得た。次いでこれを水素4vol%含有窒素の還元性雰囲気中、435℃、約10分の条件で焼成した。このようにして得られた焼結体に、Agペーストを焼付けて電極を形成して電気ヒューズ素子を得た。
【0053】
得られた素子の直径は、9.1mmであり、素子の厚みは1.9mmであった。この電気ヒューズ材料の室温における比抵抗は2.8Ω・cmであった。図9に得られた電気ヒューズ素子研磨面の金属ネットワーク構造の光学顕微鏡写真を示す。図9中、白い部分がガラスであり、黒い部分がBi金属である。図9のように、Bi金属粒子がガラスマトリックス中にほぼ均一に分散しており、この場合には、線幅1μm未満の線状組織をした金属ネットワークが形成されないことがわかる。
【0054】
この素子の比抵抗の温度特性を調べた結果を図10に示す。図10から分かるように、Bi金属の融点271℃における融解現象に起因する急峻な抵抗増加が観測される。
【0055】
本比較例のようにガラス中のBi量が少なく、適切なネットワークを形成しない場合は、Biの融解現象によりBiの融点付近の温度で抵抗の大きな変化が見られる。このようなPTC効果を示す素子では、室温における比抵抗は、小さくなく、また、Biの融点以上で素子を使用することもできず、また、PTC素子の特徴として、電流制限後の漏れ電流は、PTC素子の温度を動作後の温度に保つように働き、熱平衡状態を継続するため、素子温度と抵抗値がバランスするような電流値となり、電気ヒューズのように漏れ電流を低くするには限界がある。
【0056】
【発明の効果】
本発明では、ビスマス金属またはビスマス基合金からなる導電性物質の粒子が絶縁性物質に分散した電気ヒューズ材料であり、前記粒子同士が線状の前記導電性物質で連結されており、前記電気ヒューズ材料中の前記導電性物質の含有量が30〜60wt%である電気ヒューズ材料とすることにより、従来のPTC材料よりさらに定常時の抵抗値が小さく、電流切断時の漏れ電流が少なく、材料の融点などの温度に影響されず、電流により速い応答速度で作動する新しいタイプの電気ヒューズ材料およびそれを用いた自己修復可能な電気ヒューズ素子を提供できる。
【0057】
また、前記電気ヒューズ材料からなる電気ヒューズ層の対向する2面の上に導電性保護層を形成し、さらにその上に電極を形成した電気ヒューズ素子とすることで、素子特性のばらつきを低減し、さらには素子の安全性や信頼性を格段に向上させる。
【0058】
本発明の電気ヒューズ素子は、スパッタ法などの薄膜形成プロセスや微細加工プロセスなどの高度な半導体技術を必要とせず一般的で簡便な混合法にて作製できるため、特別な設備も必要でなく製造コストを低減させることが出来る。
【0059】
そして、本発明の電気ヒューズ素子は、導通状態で1Ω以下の低抵抗、非導通状態で数百万Ωの高抵抗となり、良好な電流遮断特性を示し、かつ異常が取り除かれた後は元の状態に自己復帰し再利用可能である自己修復型電気ヒューズ素子であり、大電流が流れる過電流保護回路等や非線形特性を利用した各種信号処理回路での利用が見込まれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1で得られた電気ヒューズ素子の研磨面の金属ネットワーク構造を示す図面にかわる光学顕微鏡写真図である。
【図2】本発明の実施例1による電気ヒューズ素子の電流遮断特性の例を示す図である。
【図3】本発明の実施例1による電気ヒューズ素子の比抵抗の温度特性を示す図である。
【図4】本発明の実施例2による電気ヒューズ素子の電流遮断特性の例を示す図である。
【図5】本発明の実施例3による電気ヒューズ素子の電流遮断特性の例を示す図である。
【図6】本発明の実施例4による電気ヒューズ素子の電流遮断特性の例を示す図である。
【図7】比較例1で得られたBi−絶縁性物質複合体の研磨面の構造を示す図面にかわる光学顕微鏡写真図である。
【図8】比較例1で得られたBi−絶縁性物質複合体の電流遮断特性の例を示す図である。
【図9】比較例2で得られたBi−絶縁性物質複合体の研磨面の構造を示す図面にかわる光学顕微鏡写真図である。
【図10】比較例2で得られたBi−絶縁性物質複合体の比抵抗の温度特性を示す図である。
Claims (4)
- ビスマス金属またはビスマス基合金からなる導電性物質の粒子が絶縁性物質に分散した電気ヒューズ材料で形成された電気ヒューズ層と、該電気ヒューズ層の対向する2面の上に形成された導電性保護層と、前記導電性保護層のそれぞれの上に形成された1対の電極とを有する電気ヒューズ素子であって、
前記電気ヒューズ材料は、前記粒子同士が線状の前記導電性物質で連結されており、前記電気ヒューズ材料中の前記導電性物質の含有量が30〜60wt%であり、前記導電性物質の融解現象を利用せず電流を遮断することを特徴とし、
前記導電性保護層は、前記電気ヒューズ層中の導電性物質の溶出を抑える金属または金属と前記絶縁性物質との複合体であることを特徴とする電気ヒューズ素子。 - 前記絶縁性物質が、500℃以下の軟化点を有する低融点ガラスである請求項1に記載の電気ヒューズ素子。
- 前記線状の前記導電性物質が、1μm未満の線幅を有することを特徴とする請求項1又は2記載の電気ヒューズ素子。
- 平均粒子径5〜50μmの前記導電性物質の粒子と前記絶縁性物質の粒子とを、前記導電性物質の含有量が30〜60wt%となるように混合し、導電性保護層用材料とともに、成形した後、還元性雰囲気下、400〜500℃で焼成した後にNiメッキまたはAgペーストの塗布焼きつけにより電極を形成する請求項1記載の電気ヒューズ素子の製造方法。
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