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JP4199904B2 - ホットプレス用アルミニウム合金スペーサ材およびその製造方法 - Google Patents
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ホットプレス用アルミニウム合金スペーサ材およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ガラスエポキシ樹脂基板で代表されるプリント基板のホットプレス時に用いられるスペーサ材に関するものであり、特にアルミニウム合金を用いたスペーサ材として、プレス基板を構成する銅箔の表面平坦性を維持しながらホットプレス工程の効率化に有効なスペーサ材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
周知のように樹脂系プリント基板は、エポキシ樹脂等の樹脂をガラスクロスなどに含浸させて半硬化させてシート状のプリプレグを得、そのシート状のプリプレグと銅箔とを積層して、ホットプレスにより接合して製造するのが通常である。このようなホットプレス工程では、接合すべきプリプレグと銅箔との積層板を1組として、複数組の積層板を重ね合せて一対の加熱・加圧基盤間で加熱・加圧するのが通常であり、その場合プリプレグ同士が接着したり、加熱・加圧基盤にプリプレグが接着したりしないように、各組の積層板の相互間や積層板と加熱・加圧基盤との間に金属製のスペーサ材を挟むのが一般的である。またフレキシブル基板や、アルミニウム合金などの金属基板に絶縁層として樹脂を接合するタイプのプリント基板の製造においても、ホットプレスによる接合を行なうことが多く、この場合もホットプレス工程では前記同様にスペーサ材を用いることが多い。
【0003】
ところで従来この種のホットプレス用のスペーサ材としては、ステンレス鋼からなる鏡面板を用いるのが通常であり、そのほか純アルミニウム箔、アルミニウム薄板を用いたり、さらにはステンレス鏡面板とアルミニウム箔、アルミニウム薄板とを組合せて用いたりすることもある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前述のようなホットプレスに使用されるスペーサ材のうち、ステンレス鏡面板は、高温強度に優れた材料であるところから、ホットプレス時に基板構成材料の平坦性を保つとともに、ガラス繊維の押込みによって銅箔が変形したりすることを防止する効果が得られる。しかしながらステンレス鏡面板は表面を平滑な鏡面に仕上げるために研磨処理を行なって製造されるものであるところから、板厚がある程度厚くならざるを得ず、スペーサ材としても板厚が1mm程度以上の厚いものを使用するのが通常であった。そのため多数枚のスペーサ材を介在させてホットプレスを行なうにあたっては、全体の厚みに対して複数枚のスペーサ材の合計厚みが占める割合が大きくならざるを得ず、そのため1回のホットプレス時に処理できるプリント基板の枚数が少なくなって、生産性が低くならざるを得ないのが実情である。
【0005】
一方アルミニウム箔、アルミニウム薄板からなるスペーサ材としては、表面光沢を有する平滑でかつステンレス鏡面板よりも格段に薄肉のものを容易に得ることができ、そのため薄いものを用いることによって、多数枚のスペーサ材を介在させてホットプレスを行なうにあたっても、ホットプレス時の全体の厚みに占めるスペーサ材の合計厚みの割合もさほど大きくならず、そのため1回のホットプレス時に処理できるプリント基板の枚数を多くし、生産性を向上させることが可能である。しかしながらアルミニウム箔やアルミニウム薄板は、基板の表面平滑性を得るには効果があるが、ホットプレス時にガラス繊維の突出部による押込み等によって容易に変形し、またそれに伴なって銅箔等の基板構成要素が変形し、正常にプリント基板製造を行ない得なくなるおそれが強い問題がある。そこで一般にはアルミニウム箔やアルミニウム薄板をスペーサ材として用いる場合、アルミニウム箔、薄板の単用ではなく、ステンレス鏡面板を組合せて用いることが多いが、その場合でも前述のような変形の問題を完全に解消することは困難であり、またステンレス鏡面板を併用するところから、前述のようなステンレス鏡面板の厚みによる生産性低下の問題を充分に解消することは困難であった。
【0006】
特に最近では、プリント基板のベース樹脂として耐熱性の高いものを使用する傾向が強まっており、その場合には従来よりも高温でのホットプレスが必要となり、そのためアルミニウム箔、薄板をスペーサ材に用いる場合のスペーサ材の変形の問題も顕著となっている。
【0007】
この発明は以上の事情を背景としてなされてもので、スペーサ材料として薄肉化が可能なアルミニウム基材料を用いながらも、150〜230℃程度の高温でのホットプレス時においても、ガラス繊維の突出部による押込みなどに起因して変形が生じないようにして、銅箔を含むプリント基板構成材料の平坦性を保ち得るようにし、ひいては高温でのホットプレスにおいてアルミニウム基材料からなるスペーサ材の使用を実質的に可能として、ステンレス鏡面板を使用しなくても済むかあるいはその使用枚数を減少させ、ホットプレスの生産性を向上させることを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前述のような課題を解決するべく、本発明者等が鋭意実験・検討を重ねた結果、スペーサ材として用いるアルミニウム基材料を析出硬化型のAl−Cu−Mg系合金とし、かつその諸特性を適切に規定することによって、前記の課題を解決し得ることを見出し、この発明をなすに至った。
【0009】
具体的には、請求項1の発明のホットプレス用アルミニウム合金スペーサ材は、200℃で15分保持したときの高温硬さがHv65以上である析出硬化型Al−Cu−Mg系合金の箔もしくは薄板からなり、基準長さ300mmに対する反りが0.6mm未満であることを特徴とするものである。
【0010】
ここで、前記析出硬化型Al−Cu−Mg系合金としては、請求項2において規定しているように、Cu2.8〜3.8%、Mg0.6〜2.0%を含有し、かつMn0.05〜0.5%、Cr0.05〜0.5%、Ni0.05〜0.5%、V0.05〜0.5%、Zr0.05〜0.5%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるものを用いることが望ましい。
【0011】
また請求項3の発明のホットプレス用アルミニウム合金スペーサ材の製造方法は、析出硬化型Al−Cu−Mg系合金の鋳塊に熱間圧延および冷間圧延を施して中間板厚とした後、コイル連続熱処理装置によって460〜560℃の範囲内の温度に加熱して5℃/sec以上の冷却速度で冷却する溶体化処理を施し、さらに12〜60%の圧延率で最終冷間圧延を行ない、その後110〜200℃の範囲内の温度で3〜20時間加熱する人工時効処理を施し、これによって200℃で15分保持したときの高温硬さがHv65以上でかつ300mmの基準長さに対する反りが0.6mm未満の箔もしくは薄板を得ることを特徴とするものである。
【0012】
なおこのような製造方法においても、析出硬化型Al−Cu−Mg系合金としては、請求項4で規定しているように、Cu2.8〜3.8%、Mg0.6〜2.0%を含有し、かつMn0.05〜0.5%、Cr0.05〜0.5%、Ni0.05〜0.5%、V0.05〜0.5%、Zr0.05〜0.5%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるものを用いることが望ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
この発明においては、スペーサ材としては、基本的には析出硬化型のAl−Cu−Mg系合金からなるアルミニウム合金箔もしくは薄板を用いる。
【0014】
ここで、析出硬化型Al−Cu−Mg系合金は、後述する製造方法において改めて説明するように、溶体化処理を行なって人工時効処理を施すことによって、析出硬化による常温硬さ、高温硬さの向上を期待でき、さらには溶体化処理後に冷間圧延を行なうことにより加工硬化をも期待でき、したがってこれらが相俟って、硬さ、特に高温硬さの向上を図って、ホットプレス時における変形を有効に防止することが可能となる。
【0015】
析出硬化型Al−Cu−Mg系合金としては、請求項2、請求項4で規定しているように、Cu2.8〜3.8%、Mg0.6〜2.0%を含有し、かつMn0.05〜0.5%、Cr0.05〜0.5%、Ni0.05〜0.5%、V0.05〜0.5%、Zr0.05〜0.5%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなる成分組成のものを用いることが望ましい。このような望ましい成分組成の限定理由についてさらにその理由を説明する。
【0016】
Cu:
Cuは析出硬化および固溶強化に寄与して、常温硬さおよび高温硬さを向上させるに有効な元素である。Cu量が2.8%未満では充分な高温硬さが得られず、一方3.8%を越えれば箔もしくは薄板に圧延加工する際の材料の硬さが高くなり、生産性が悪くなるとともに反りが発生しやすくなる問題が生じる。そこでCu量は2.8〜3.8%の範囲内とした。なおCu量が3.8%を越える高CuのAl−Cu−Mg系合金では、溶体化処理における焼入れ方法として冷却速度が高い方法、例えば冷却速度が500℃/secを越える水焼入れ等を用いる方法を用いなければ、溶体化が不充分となって最終的に充分な硬さが得られなくなるばかりか、不均一組織となって耐食性等に問題が生じる。すなわち、量産ラインに適した一般的な強制空冷によるコイル連続熱処理装置(いわゆる連続焼鈍ラインと同じもの;以下“CAL”と記す)は、3.8%を越える高CuのAl−Cu−Mg系合金の溶体化処理には適していない。しかしながら、3.8%以下(2.8%以上)の中間的なCu量のAl−Cu−Mg系合金であれば、水焼入れを必要とせず、冷却速度が5℃/sec以上、好ましくは10℃/sec以上の一般的なコイル連続熱処理装置で充分に溶体化が可能となり、そのため溶体化処理後の連続圧延も効率的に行なうことが可能となり、高強度で寸法精度も良好な箔もしくは薄板を、量産ラインで容易に製造することが可能となる。
【0017】
Mg:
MgもCuとともに常温硬さ、高温硬さの向上に有効な元素である。Mg量が0.6%未満では硬さ向上の効果が充分に得られず、一方2.0%を越えれば圧延加工する際の材料が硬くなって生産性が低下し、また反りが生じやすくなる問題がある。そこでMg量は0.6〜2.0%の範囲内とした。
【0018】
Mn、Cr、Ni、V、Zr:
これらの元素はいずれも結晶粒の粗大化抑制および高温硬さの向上に有効な元素であり、いずれか1種または2種以上をそれぞれ0.05〜0.5%の範囲内で添加する。いずれの元素も0.05%未満では上述の効果が得られず、一方0.5%を越えれば粗大な晶出物粒子が生成されて、スペーサ材表面にその晶出物粗大粒子による著しく硬い部位が形成され、その部位で銅箔表面が押込まれてしまうおそれがあるから、0.5%以上含有させることは好ましくない。なおこれらの元素の合計の添加量は0.1〜0.6%の範囲内が望ましい。
【0019】
以上の各元素のほかは、基本的にはAlおよび不可避的不純物とすれば良いが、一般にアルミニウム合金の鋳造の際には鋳塊組織の微細化のためにTi系あるいはTi−B系の微細化剤を添加することが多く、この発明のスペーサ材の場合もこれらの微細化剤に由来する微量のTi、あるいはTiおよびBを含有することは許容される。但しTiは0.1%以下、Bは0.03%以下とすることが望ましい。
【0020】
以上のような析出硬化型Al−Cu−Mg系合金からなるこの発明のスペーサ材は、その特性値として、200℃で15分保持したときの高温硬さがHv65以上であることが必要である。ここで、高温硬さの試験温度の200℃は、銅張り積層板に対する一般的なホットプレス温度として高めの温度を選んで規定したものであり、200℃で所要の硬さを有することによって、ホットプレス時の外力による変形を抑えることが可能となる。またホットプレス時におけるスペーサ材の変形が生じる場合、その変形が加熱・加圧開始の初期の15分以内に生じていることが本発明者等の実験によって確認されており、そこで200℃での高温硬さは、15分保持したときの硬さとして規定した。このように200℃で15分保持したときの高温硬さは、ホットプレス時におけるスペーサ材の変形の生じやすさの指標となる。ここで、200℃で15分保持したときの高温硬さがHv65未満では、ホットプレス時にスペーサ材が変形し、ひいてはプリント基板の銅箔の平坦性に問題が生じることが確認されており、そこでこの発明では200℃×15分保持時における高温硬さをHv65以上と規定した。なおこの範囲内でも特にHv75以上が好ましい。なおまた、このような高温硬さの試験は、加熱装置等が付属されたマイクロビッカース硬さ試験機を用い、JIS Z 2552に準拠して行なうことが望ましい。
【0021】
またこの発明ではスペーサ材の常温硬さについては特に限定しないが、スペーサ材のハンドリング時等において表面に傷や凹み等が生じることを防止するためには、Hv125以上とすることが望ましい。
【0022】
さらにこの発明のスペーサ材においては、基準長さ300mmに対する反りを0.6mm未満とする。300mmの基準長さに対して反りが0.6mm以上であれば、プリント基材素材との接触部においてプリント基板の平坦性に問題が生じるから、プリント基板の良好な平坦性を維持するためには、基準長さ300mmにおけるスペーサ材の反りが0.6mm未満である必要がある。
【0023】
なおこの発明のホットプレス用スペーサ材の厚みは特に限定しないが、0.15〜0.6mmの範囲内とすることが好ましい。すなわち、プリント基板素材と接触する部位におけるスペーサ材の厚みが0.15mm未満では、ホットプレス時にスペーサ材の変形が生じやすく、その結果プリント基板の銅箔の平坦性に問題が生じ、また0.6mmを越えればプリント基板の銅箔を保護する機能が飽和する一方、1回のホットプレスで処理できるプリント基板枚数が減ってホットプレスの生産性が低下するため好ましくない。なお一般に板厚0.2mm以下の場合を箔と称し、0.2mmを越える場合を薄板と称するのが通例である。なおまた、スペーサ材としては厚みの偏りが小さいことが望ましく、偏厚を±0.01mm以内に抑えることが好ましい。
【0024】
次にこの発明のスペーサ材として用いる析出硬化型Al−Cu−Mg系合金からなる箔もしくは薄板の製造方法について説明する。
【0025】
前述のような成分組成のアルミニウム合金溶湯を常法に従ってDC鋳造法などの公知の鋳造法により鋳造し、必要に応じて均質化処理を行なった後、熱間圧延を行ない、さらに冷間圧延を行なって所要の中間板厚のコイルとする。次いで、いわゆる連続焼鈍装置と同様なコイル連続熱処理装置(CAL)を用いて溶体化処理を施す。このようなCALを用いての溶体化処理は、コイルに対してそのまま連続的に溶体化処理を行なうことができるため、その後に0.15〜0.6mm程度まで圧延する冷間圧延を連続的に行なうに好都合となる。この溶体化処理は、460〜540℃の範囲内の温度に加熱し、5℃/sec以上、好ましくは10℃/sec以上の冷却速度で冷却する必要がある。なお溶体化処理のための加熱時においては、460〜540℃の範囲内の温度に到達後直ちに冷却しても、あるいは60秒までの保持を行なってから冷却しても良い。ここで、溶体化処理のための加熱温度が460℃未満では溶体化が不充分となって最終的な人工時効処理後の硬さが充分に得られなくなるおそれがあり、一方540℃を越えれば材料の局部的な溶融が生じて連続熱処理中に材料が破断してしまうおそれがある。さらに溶体化処理温度からの冷却速度が5℃/sec未満では、溶体化が不充分となって人工時効処理後に充分な硬さが得られなくなるおそれがある。
【0026】
溶体化処理の冷却後には、圧延率12〜60%の最終冷間圧延を施す。この最終冷間圧延は、最終的に必要な厚さに仕上げるとともに、加工硬化により硬さを向上させるばかりでなく、その最終板厚で反りのない状態を実現するためにも必要な工程である。すなわち、溶体化処理においては、加熱後の冷却によって歪みが生じ、板の反りが大きくなる傾向を示し、そのため溶体化処理のままでは良好な平坦度を必要とするスペーサ材には不適当となるが、溶体化処理の後に改めて12〜60%の最終冷間圧延を行なうことによって反りを解消することが可能となる。ここで、最終冷間圧延率が12%未満では、反りの低減および加工硬化による硬さの向上が不充分となり、一方60%を越えれば圧延加工中における加工硬化が著しくなって、圧延加工の能率が悪くなり、また平坦性に逆に悪影響を及ぼすおそれがある。したがって最終冷間圧延は圧延率12〜60%の範囲内で行なう必要がある。
【0027】
最終冷間圧延の後には、110〜200℃の範囲内の温度で3〜20時間加熱する人工時効処理を施す。この人工時効処理は、溶体化処理によって固溶させたCuやMgによる析出物によって時効硬化を図り、安定して高い硬さ、特に高い高温硬さを得るために必要な工程である。ここで人工時効処理の処理温度が110℃未満では充分な高温硬さの向上を図ることが困難となり、一方200℃を越えれば材料の回復が生じて逆に軟化してしまうおそれがある。また人工時効処理時間が3時間未満でも充分な時効硬化を図ることができず、一方20時間を越える長時間の加熱を行なっても時効硬化の効果は飽和し、生産性の低下を招くだけである。なお人工時効処理は、最終冷間圧延後の材料を切断加工して、切り板の状態で加熱しても、あるいはコイルのままで加熱しても良い。また切り板状態で平坦に重ね合せて、重しを載置して人工時効処理を行なっても良い。なおコイルのまま人工時効処理を行なった場合には、人工時効処理後に反りの低減のためにレベリング等の矯正加工を行なうことが望ましく、その場合は矯正加工後に最終的なスペーサ材寸法に切断すれば良い。また切り板で人工時効処理を行なった場合も、その後にさらにスペーサ材寸法に切断しても良い。
【0028】
以上のようにして得られたスペーサ材は、これをそのままプリント基板等のホットプレスに使用しても良いが、引張矯正等によって反りをさらに矯正し、その後にホットプレスに使用しても良い。またホットプレスに適用する前に、予めスペーサ材の表面にプリント基板の樹脂の付着を防止するため、フッ素樹脂あるいはシリコン樹脂等の低付着性塗装を施しても良い。
【0029】
【実施例】
表1に示す合金符号A〜Gの各合金について、表2の工程番号1〜10に示す各種の工程でスペーサ材に仕上げた。なお表2中において、溶体化処理の前までの工程、すなわちDC鋳造、均質化処理、熱間圧延、および溶体化処理前の冷間圧延の各工程は、常法に従って実施した。また表2中の溶体化処理のうち、工程番号1〜8における“CAL溶体化”はコイル連続熱処理装置を用いて昇温速度15〜25℃/secにて表2中に示す温度に加熱し、保持なし(0sec)もしくは5secの保持の後、強制空冷により15〜25℃/secの冷却速度で室温まで冷却した。また工程番号10における“CAL焼鈍”も実質的に同様な昇温速度、冷却速度で実施した。さらに工程番号9における“バッチ溶体化”は、バッチ式の加熱炉を用いて冷却コイルを30〜50℃/secの昇温速度で表2中に示す温度(510℃)に加熱し、その温度で1時間保持後、水焼入れにより1000℃/sec以上の冷却速度で室温まで冷却した。
【0030】
以上のような各合金A〜Gを各工程番号1〜10によって処理して得られたスペーサ材について、常温硬さ、高温硬さを調べたので、その結果を表3中に示す。ここで、高温硬さは、加熱装置等が付属されたマイクロビッカース硬さ試験機を用い、昇温速度20℃/minで200℃まで昇温し、15分保持時の硬さを25gfもしくは50gfの測定荷重で測定し、10点平均で示した。また常温硬さは通常のマイクロビッカース硬さ試験機により常温にて測定し、10点平均で示した。さらに反りは、基準長さ300mmにおける反りの最大値を調べた。
【0031】
さらに前述のようにして得られた各スペーサ材を用いてホットプレスを行なった。すなわち、ガラスクロスにBMI系ポリイミド樹脂を含浸させた500mm角のプリプレグと、同サイズで接着剤付きの0.018mm厚の銅箔とを、全厚み0.5mmの両面銅張りプリント基板となるように積層し、これをスペーサ材と交互に積み重ね、200℃にて60kg/cm2 の加圧力で40分間加熱・加圧保持して、ホットプレスを行なった。保持終了後、直ちに冷却・除圧し、スペーサ材の変形を調べるとともに、プリント基板用両面銅張り積層板表面の外観・寸法を調べた。この際、試験数としてスペーサ材50枚を対象とした。その結果を表3中に示す。なおホットプレス後のスペーサ材の変形については、スペーサ材の反りと偏厚を調べ、300mmの基準長さにおける反りが0.6mm未満でかつ偏厚が0.01mm以下の場合を実質的に変形がない良好な状態と評価して○印を付し、反りが0.6mm以上の場合もしくは偏厚が0.01mmを越える場合に変形があった不良状態と評価して×印を付した。またホットプレス後のプリント基板用両面銅張り積層板の外観・寸法についても、前記同様な反り、偏厚を調べ、良好な場合に○印を、不良の場合に×印を付した。なおホットプレス後のプリント基板用両面銅張り積層板の偏厚は、主としてガラスクロスの押し込みによって生じる押し痕に起因するものであり、偏厚が少ないことは押し痕が少ないことを意味する。
【0032】
【表1】
Figure 0004199904
【0033】
【表2】
Figure 0004199904
【0034】
【表3】
Figure 0004199904
【0035】
表3において、実施例No.1〜No.9の例は、いずれも請求項2もしくは請求項4で規定する成分組成範囲内のAl−Cu−Mg系合金(合金符号A〜D)を用い、請求項3で規定するプロセス(工程番号1〜5)によってスペーサ材を製造した例であり、スペーサ材の反りおよび高温硬さ(200℃×15分保持時の硬さ)が、いずれも請求項1で規定する特性値を満たしたものである。これらの実施例1〜9の場合は、ホットプレス後のスペーサ材の変形が実質的に生じず、また両面銅張り積層板表面外観・寸法にも顕著な異常は生じなかった。
【0036】
一方、比較例1は、Cu量およびMg量が請求項2、請求項4で規定する量よりも少ないAl−Cu−Mg系合金を用いた例であり、製造プロセス自体は請求項3で規定する条件を満たしたが、析出硬化が充分ではないため高温硬さが低くなり、そのためホットプレスによってスペーサ材に変形が生じ、また両面銅張り積層板の形状も不良となった。
【0037】
また比較例2はCu量が請求項2、請求項4で規定する量よりも多いAl−Cu−Mg系合金、すなわち2024相当の合金を用い、かつ溶体化処理としてバッチ方式を適用した例であり、この場合はスペーサ材の反りが大きいため、ホットプレス後の両面銅張り積層板の形状も不良となってしまった。
【0038】
さらに比較例3はCu量が著しく少ない非熱処理型の3004相当合金を用いた例であり、非熱処理型合金であるところから製造工程としても人工時効処理を施さなかったが、この場合は高温硬さが著しく低く、ホットプレス後にスペーサ材の変形が生じるとともに、ホットプレス後の両面銅張り積層板の表面形状も不良となった。
【0039】
そしてまた比較例4は、合金としては請求項2、請求項4で規定する成分組成範囲内のものを用いたが、溶体化処理温度が低過ぎたため、充分な析出硬化を図ることができず、そのため充分な高温硬さを得ることができず、ホットプレス時にスペーサ材の変形が生じ、また両面銅張り積層板の表面形状も不良となった。
【0040】
さらに比較例5は、合金としては請求項2、請求項4で規定する成分組成範囲内のものを用いたが、CAL溶体化処理を565℃の高温で行なったため、局部的な溶融により板切れが生じ、健全な板材を得ることができなかった。
【0041】
また比較例6は、合金としては請求項2、請求項4で規定する成分組成範囲内のものを用いたが、製造プロセスとして、CAL溶体化処理後に最終冷間圧延を施さなかった例であり、この場合スペーサ材の反りが大きく、また高温硬さも充分ではなく、そのためホットプレス後の両面銅張り積層板の表面形状不良が生じてしまった。
【0042】
最後に比較例7は、合金としては請求項2、請求項4で規定する成分組成範囲内のものを用いたが、溶体化処理をバッチ方式によって行ない、単板圧延を行なった例であり、この場合はスペーサ材の反りが大きく、ホットプレス後の両面銅張り積層板の表面形状も不良となってしまった。
【0043】
【発明の効果】
この発明のホットプレス用スペーサ材は、その材料としてアルミニウム基材料を用いながらも、ホットプレス時におけるガラス繊維の押し込み等に起因して変形が生じるおそれが少なく、そのため銅箔を含むプリント基板構成材料の平坦性を保つことができ、特に150〜230℃程度の高温でのホットプレスにおいてもスペーサ材の変形を防止してプリント基板構成材料の平坦性を保つことができ、ホットプレスによってプリント基板の外観、寸法上の欠陥が生じることを有効に防止できる。またこの発明によれば、従来のステンレス鏡面板に代えて薄質なアルミニウム基材料をスペーサ材として用いることが実際的に可能となるため、1回のホットプレスによって処理するプリント基板の数を多くして、生産性の向上を図ることが実際的に可能となる。

Claims (4)

  1. 200℃で15分保持したときの高温硬さがHv65以上である析出硬化型Al−Cu−Mg系合金の箔もしくは薄板からなり、基準長さ300mmに対する反りが0.6mm未満であることを特徴とする、高温での耐押込み性に優れたホットプレス用アルミニウム合金スペーサ材。
  2. 請求項1に記載のホットプレス用アルミニウム合金スペーサ材において、
    前記析出硬化型Al−Cu−Mg系合金が、Cu2.8〜3.8%(mass%、以下同じ)、Mg0.6〜2.0%を含有し、かつMn0.05〜0.5%、Cr0.05〜0.5%、Ni0.05〜0.5%、V0.05〜0.5%、Zr0.05〜0.5%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるものであることを特徴とする、高温での耐押込み性に優れたホットプレス用アルミニウム合金スペーサ材。
  3. 析出硬化型Al−Cu−Mg系合金の鋳塊に熱間圧延および冷間圧延を施して中間板厚とした後、コイル連続熱処理装置によって460〜560℃の範囲内の温度に加熱して5℃/sec以上の冷却速度で冷却する溶体化処理を施し、さらに12〜60%の圧延率で最終冷間圧延を行ない、その後110〜200℃の範囲内の温度で3〜20時間加熱する人工時効処理を施し、これによって200℃で15分保持したときの高温硬さがHv65以上でかつ300mmの基準長さに対する反りが0.6mm未満の箔もしくは薄板を得ることを特徴とする、高温での耐押込み性に優れたホットプレス用アルミニウム合金スペーサ材の製造方法。
  4. 請求項3に記載のホットプレス用アルミニウム合金スペーサ材の製造方法において、
    前記析出硬化型Al−Cu−Mg系合金として、Cu2.8〜3.8%、Mg0.6〜2.0%を含有し、かつMn0.05〜0.5%、Cr0.05〜0.5%、Ni0.05〜0.5%、V0.05〜0.5%、Zr0.05〜0.5%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるものを用いることを特徴とする、高温での耐押込み性に優れたホットプレス用アルミニウム合金スペーサ材の製造方法。
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