JP4204656B2 - 複合体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ICパッケージや多層配線基板等の半導体装置のヒートシンクに好適な、金属或いは合金とセラミックスとからなる複合体(以下、「金属−セラミックス複合体」又は単に「複合体」という)の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体分野において、LSIの集積化や高速化がすすむことに加え、近年GTOやIGBT等のパワーデバイスの用途が拡大するなど、シリコンチップの発熱量は増加の一途をたどっている。それとともにシリコンチップから発熱した熱を逃がす回路基板、更にヒートシンクについても、より一層の高性能化が求められている。
【0003】
具体的には、回路基板については熱伝導性の良いアルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素等のセラミックス回路基板が用いられているし、これに接合して用いられるヒートシンク自体の熱伝導率が高いものが用いられる。更に、両者が組み合わされモジュール化された場合においては、前記回路基板とヒートシンクとの熱膨張率が近いことが望まれる。これは、実使用時に半導体素子から発生する熱等に原因して、発生した熱応力が回路基板を破壊し、回路基板の電気絶縁性や熱伝導性を劣化させ、モジュールとしての信頼性を低下させる原因になってしまうからである。
【0004】
上記の事情により、電気、或いは自動車などの車両用途等の高信頼性が重要とされる分野において、金属−セラミックス複合体(以下、複合体という)のヒートシンクへの適用が熱膨張率がセラミックス回路基板に近いという理由で進められている(特開昭64−83634号公報、特開平9−209058号公報)。
【0005】
前記複合体は、一般に、セラミックス粉、セラミックス繊維などを成形、必要な場合においては焼成して、多孔質セラミックス構造体を作製し、次に溶融金属を含浸し、これを冷却することにより作製される。溶融金属を含浸する方法としては、粉末冶金法に基づく方法、例えばダイキャスト法(特開平5−508350号公報)や溶湯鍛造法(まてりあ、第36巻、第1号、1997、40−46ページ)などの高圧鋳造による方法、自発浸透による方法(特開平2−197368号公報)等の各種の方法が知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の従来公知の方法で得られた金属−セラミックス複合体においては、溶融金属とセラミックスとが濡れにくいこと、セラミックス構造体中の気孔形状が安定しないこと、溶融金属の冷却条件が安定しないこと等が原因してか、得られる金属−セラミックス複合体の微細組織が不安定であり、その結果特性の安定した複合体が容易に得難いという問題がある。
【0007】
本発明者らは、上記問題点を解決し、半導体素子を搭載するセラミックス回路基板に適用した際に、実使用下でセラミックス回路基板が熱衝撃で破損する等の問題を生じず、また十分に熱伝導性に優れ半導体素子が誤動作し難い、高信頼性のヒートシンクを提供するべく検討した結果、本発明に至ったものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、多孔質セラミックス構造体に金属を含浸する複合体の製造方法であって、前記金属の凝固点温度と前記凝固点温度より50℃高い温度との範囲内について、加圧下、1〜20℃/Hrの降温速度で含浸することを特徴とする複合体の製造方法である。また、本発明は、多孔質セラミックス構造体に金属を含浸してなる複合体を、前記金属の凝固点温度と前記凝固点温度より50℃高い温度との範囲内について、加圧下、1〜20℃/Hrの降温速度で処理することを特徴とする複合体の製造方法である。
【0009】
本発明は、多孔質セラミックス構造体が炭化珪素、窒化アルミニウム、窒化珪素、アルミナ又はシリカからなる群より選ばれる1種以上からなることを特徴とする前記の複合体の製造方法であり、好ましくは、金属がアルミニウム、又はマグネシウムのいずれかを主成分とすることを特徴とする前記の複合体の製造方法であり、更に好ましくは、前記多孔質セラミックス構造体が空隙率20〜50%の炭化珪素からなり、前記金属がアルミニウムを主成分とすることを特徴とする前記の複合体の製造方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、低熱膨張率で、しかも高熱伝導率の金属−セラミックス複合体を安定して得るために、その製造条件について検討した結果、多孔質セラミックス構造体中で溶融金属が凝固する時の特定温度範囲での冷却条件が重要であり、該特定温度範囲での冷却速度を十分に遅くすることで、再現性のある微構造が達成でき、その結果として特性の安定した金属−セラミックス複合体が得られるという知見に基づき、本発明を完成したものである。
【0011】
前記特定の温度範囲とは、発明者らの実験的検討結果に基づけば、多孔質セラミックス構造体中に含浸する金属(或いは合金)の凝固点温度を下限とし、上限は該凝固点温度より50℃までの温度範囲である。ここで、凝固点温度とは、液相状態の溶融金属が完全に固相となる温度であり、例えば、純アルミニウムの場合では融点の660℃、アルミニウム−シリコン系の合金の場合では共晶温度の577℃である。尚、凝固点温度より50℃を越える温度から温度制御を開始しても、また凝固点温度以下まで制御を続けてもよいが、更なる特性安定の効果は期待できず、むしろ生産性の低下になるので効果的でない。
【0012】
本発明では、前記特定範囲、即ち金属の凝固点温度と前記凝固点温度より50℃高い温度との範囲内の冷却速度を、1〜20℃/Hrの降温速度とすることを特徴とする。前記温度範囲内を特定の冷却速度で制御するとき、得られる複合体の微構造は安定し、再現性を有し、その結果として、物性値の安定した複合体を再現性良く、高い歩留まりで、従って生産性良く得ることができる。降温速度の制御条件については、20℃/Hrを越える降温速度では、特性安定の効果は得られないことがある。また、冷却速度の下限については、特に制限するものでは無いが、1℃/Hr未満の降温速度では、更なる特性安定の効果はでず、むしろ生産性の低下になるので効果的でない。
【0013】
前記特定温度範囲における圧力条件については、加圧されていれば良く、また本発明の目的を達成する上からは前記圧力に上限を設ける必要はない。しかし、200MPaを越えると、多孔質セラミックス複合体に割れ、ヒビ等が生じる場合があり、好ましくないし、0.5MPa未満でも特性の安定化が十分でない場合があり、0.5MPa〜200MPaが好ましい範囲として選択される。更に実用的には1〜100MPaが最も良好な範囲として選択される。
【0014】
上記特定温度範囲で、加圧下に特定の冷却速度で、多孔質セラミックス構造体中に溶融金属を冷却、凝固させ、低熱膨張率と高熱伝導率を安定的に発現させることは、必ずしも含浸操作に限定されず、一度含浸操作を経て得られた金属−セラミックス複合体について適用することもできる。しかし、本発明の特定の温度範囲内を加圧下で特定の冷却速度とする処理を、含浸操作に引き続いて適用することが生産性の面で好ましい。更に、含浸操作を加圧下で行うダイキャスト法や溶湯鍛造法等の高圧鋳造法の場合には、温度条件を制御するのみで良く、操作性に優れ、好ましい。又、一度含浸操作を経て得られた金属−セラミックス複合体について適用する場合、上記操作を雰囲気加圧装置等を用いて、アルゴン、ヘリウム等の希ガス、或いは窒素等の非反応性ガス相の存在下で上記処理を行うこともできる。
【0015】
本発明の多孔質セラミックス構造体は、金属或は合金を含浸させることが可能な開放気孔を有し、しかも含浸操作において破壊することのない機械的強度を有する構造体であれば、どのようなものでも構わない。しかし、金属−セラミックス複合体を半導体回路基板用ヒートシンクに適用する場合、金属−セラミックス複合体の熱伝導率が高く、また温度上昇に伴って低下し難いこと、また熱膨張係数をアルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素等のセラミック回路基板と同程度に小さいことが必要であるということから、高熱伝導でありかつ低熱膨張率の炭化珪素、窒化アルミニウム、窒化珪素並びにアルミナ等が好適である。
【0016】
又、シリカは、熱伝導率は前記セラミックスよりも小さいものの、熱膨張係数が小さいため、少ない添加量で金属−シリカ複合体の熱膨張係数をセラミック基板の熱膨張係数に近づけることができるという特徴がある。一般に、金属−セラミックス複合体に関して、その熱伝導率の温度依存性については、該複合体中のセラミックス含有量が大きいほど著しく低下するが、前記の特徴から、シリカを用いて得られる複合体は温度上昇時の熱伝導率の低下が少なく、前記セラミックスを使用したときと同様の効果をえることができるので、やはり好ましい。
【0017】
上述したセラミックスのうち、炭化珪素はそれ自体の熱伝導率が、高熱伝導率の金属であるアルミニウムのそれよりも高く、炭化珪素を使用する場合には、金属単味の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する金属−セラミックス複合体を得ることができるので、特に好ましく選択される。
【0018】
本発明に用いる金属については、本発明の目的を達成することができれば、どのようなものであっっても構わないが、高熱伝導性、軽量性を達成する目的から、アルミニウム、マグネシウム等の軽合金又はそれらの合金が好ましい。アルミニウム合金の場合には、鋳造のしやすさ、高熱伝導性の発現の点からSi含有量が4〜10%のAC2A、AC2B、AC4A、AC4B、AC4C、AC8B、AC4D、AC8C、ADC10、ADC12等の合金が特に好ましい。
【0019】
上記のセラミックスと金属の組合せに関して、金属としてアルミニウム或いはアルミニウム系合金、セラミックスとして炭化珪素を用いたアルミニウム−炭化珪素複合体は、軽量、高熱伝導、セラミック基板との熱膨張率の適合性の点で特に優れた組合せである。本発明者らは、このアルミニウム−炭化珪素複合体について、更にいろいろ検討した結果、炭化珪素含有量には本発明の目的を達するのに好適な範囲が存在することを見いだし、本発明に至ったものである。即ち、アルミニウム−炭化珪素複合体中の炭化珪素含有量が50体積%未満では熱膨張係数が高くなることがあり、この場合には、セラミック基板との熱膨張率差に起因する前記問題が生じ易くなる。また、セラミックスが高温で熱伝導率を低下させることに原因して、80体積%を越える炭化珪素含有量の場合では、半導体搭載用回路基板のヒートシンクとして用いた時に、実使用時の半導体素子等からの発熱による温度上昇によって、熱伝導率の低下が著しくなるという問題が顕著になってくる。以上の理由から、アルミニウム−炭化珪素複合体中の炭化珪素含有量は50〜80体積%が好ましく、そして、前記条件を達成するために、多孔質炭化珪素の構造体の気孔率は50〜20体積%が好適である。
【0020】
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明を更に詳細に説明する。
【0021】
【実施例】
[実施例1]
平均粒径50μmの炭化珪素にバインダーとしてシリカゾルを固形分濃度で5wt%混合し、プレス成形した後空気中900℃で2時間焼成し、大きさ35mm×35mm×3mm、気孔率40%の多孔質炭化珪素構造体を作製した。
【0022】
次に、内径50mm、肉厚25mmの金型を用意し、該金型外表面から深さ20mmの孔を設け、該孔中に金型内表面温度測定用熱電対をセットした。この金型をバーナーで加熱し、金型の内面温度の接触温度計による実測値と、その際の金型内表面温度測定用熱電対の測定値に差がないことを確認した。
【0023】
前記の多孔質炭化珪素構造体を800℃で予熱した後、バーナ加熱により内面温度を710℃に保持した前記金型に入れ、900℃で溶融した純アルミニウムを金型に流し込み、押し棒をセットし、100MPaの圧力で加圧した。
【0024】
加圧状態のまま冷却し、金型内表面温度測定用熱電対の測定値を見ながらバーナーの強さを調整し、710℃から660℃までの降温速度を10℃/Hrに制御し、660℃でバーナーを切り100℃まで冷却したところで加圧を終了した。
【0025】
同一の方法でアルミニウム−炭化珪素複合体を3サンプル作製し、得られた複合体の熱伝導率、熱膨張係数及び強度を測定した。この結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
[実施例2]
溶融金属の流し込み時の金型の内面温度が627℃、降温速度を制御した温度範囲が627〜577℃、金属がアルミニウム−6wt%シリコン合金、該合金の溶融温度が800℃であること以外は実施例1と同一の方法でアルミニウム合金−炭化珪素複合体を3サンプル作製し、得られた複合体の熱伝導率、熱膨張係数及び強度を測定し、その結果を表2に示した。
【0028】
【表2】
【0029】
[実施例3]
降温速度が20℃/Hrであること以外は実施例2と同一の方法でアルミニウム合金−炭化珪素複合体を3サンプル作製し、得られた複合体の熱伝導率、熱膨張係数及び強度を測定し、その結果を表3に示した。
【0030】
【表3】
【0031】
[実施例4]
圧力が200MPaであること以外は実施例2と同一の方法でアルミニウム合金−炭化珪素複合体を3サンプル作製し、得られた複合体の熱伝導率、熱膨張係数及び強度を測定し、表4に示す結果を得た。
【0032】
【表4】
【0033】
[実施例5]
圧力が0.5MPaであること以外は実施例2と同一の方法でアルミニウム合金−炭化珪素複合体を3サンプル作製し、得られた複合体の熱伝導率、熱膨張係数及び強度を測定し、表5に示す結果を得た。
【0034】
【表5】
【0035】
[実施例6]
圧力が220MPaであること以外は実施例4と同一の方法でアルミニウム合金−炭化珪素複合体を3サンプル作製し、得られた複合体の熱伝導率、熱膨張係数及び強度を測定し、表6に示す結果を得た。
【0036】
【表6】
【0037】
[比較例1]
650℃〜600℃までの降温速度を10℃/Hr、600℃以下の降温速度を25℃/Hr以上としたこと以外は実施例2と同一の方法でアルミニウム合金−炭化珪素複合体を3サンプル作製し、得られた複合体の熱伝導率、熱膨張係数及び強度を測定し、表7に示す結果を得た。実施例2と比較して、熱伝導率、熱膨張係数及び強度が安定しないことが明かとなった。
【0038】
【表7】
【0039】
[比較例2]
600℃〜550℃までの降温速度を10℃/Hr、550℃以下の降温速度を25℃/Hr以上としたこと以外は実施例2と同一の方法でアルミニウム合金−炭化珪素複合体を3サンプル作製し、得られた複合体の熱伝導率、熱膨張係数及び強度を測定し、表8に示す結果を得た。実施例2と比較して、熱伝導率、熱膨張係数及び強度が安定しないことが明かとなった。
【0040】
【表8】
【0041】
[比較例3]
降温速度が25℃/Hrであること以外は実施例3と同一の方法でアルミニウム合金−炭化珪素複合体を3サンプル作製し、得られた複合体の熱伝導率、熱膨張係数及び強度を測定し、表9に示す結果を得た。実施例3と比較して、熱伝導率、熱膨張係数及び強度が安定しないことが明かとなった。
【0042】
【表9】
【0043】
[比較例4]
圧力が常圧(0.1MPa)であること以外は実施例5と同一の方法でアルミニウム合金−炭化珪素複合体を3サンプル作製し、得られた複合体の熱伝導率、熱膨張係数及び強度を測定し、表10に示す結果を得た。実施例5と比較して、熱伝導率、熱膨張係数及び強度が安定しないことが明かとなった。
【0044】
【表10】
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、熱伝導率、熱膨張係数及び強度等の特性が安定した金属−セラミックス複合体を歩留まり高く製造することができ、信頼性の高い金属−セラミックス複合体を安定して安価に提供できるので、産業上極めて有用である。
【0046】
本発明の方法で製造された金属−セラミックス複合体は、その高熱伝導性、低熱膨張性及び軽量性の点から、特に電子部品の放熱部品として、セラミックス回路基板のヒートシンク材として好適である。
【0047】
本発明の金属−セラミックス複合体は、その軽量性と力学的特性から、ヒートシンク用途以外の、例えば運輸、航空分野での金属代替用材料用途にも有用である。
Claims (5)
- 多孔質セラミックス構造体に金属を含浸する複合体の製造方法であって、前記金属の凝固点温度と前記凝固点温度より50℃高い温度との範囲内を、加圧下、1〜20℃/Hrの降温速度で含浸することを特徴とする複合体の製造方法。
- 多孔質セラミックス構造体に金属を含浸してなる複合体を、前記金属の凝固点温度と前記凝固点温度より50℃高い温度との範囲内を、0.5MPa以上の加圧下、1〜20℃/Hrの降温速度で処理することを特徴とする複合体の製造方法。
- 多孔質セラミックス構造体が炭化珪素、窒化アルミニウム、窒化珪素、アルミナ又はシリカからなる群より選ばれる1種以上からなることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の複合体の製造方法。
- 金属がアルミニウム又はマグネシウムのいずれかを78.7質量%以上含有することを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載の複合体の製造方法。
- 前記多孔質セラミックス構造体が空隙率20〜50%の炭化珪素からなり、前記金属がアルミニウムを78.7質量%以上含有することを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4記載の複合体の製造方法。
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