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JP4205658B2 - 油圧式動力伝達装置 - Google Patents
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JP4205658B2 - 油圧式動力伝達装置 - Google Patents

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Description

本発明は、四輪駆動車の前輪と後輪の回転差に応じてトルク配分を行う油圧式動力伝達装置に関し、特に急発進時や急制動時に発生する過大トルクをカットする共に4輪駆動から2輪駆動に切り替える機構を備えた油圧式動力伝達装置に関する。
従来の油圧式動力伝達装置を備えたFF方式の4輪駆動車を図11に示す。図11において、エンジン100からの動力はフロントプロペラシャフト101により左右の前輪102L,102Rに伝達され、同時に油圧式動力伝達装置103からリアプロペラシャフト104により左右の後輪105L,105Rに伝達される。
従来の油圧式動力伝達装置103にあっては、フロントプロペラシャフト101を連結したハウジングとリアプロペラシャフト104を連結したロータを備え、ハウジングは内側面に2つ以上のカム山を有するカム面を形成し、ロータはハウジング内に回転自在に配置され、ロータには複数のピストン室がカム面に面して軸方向に形成され、ピストン室のカム面の反対側には吸入及び吐出用の連通路を設けている。
ロータのピストン室の各々には、リターンスプリングの押圧を受けてピストンが往復移動自在に収納され、フロントプロペラシャフト101とリアプロペラシャフト104の間に回転速度差が生じた時にカム面によって駆動される。ロータの各ピストン室に形成した連通路の開口端面側にはピストン室ごとにオリフィスを形成している。
特開平5−044742号公報 特許第2952139号
ところで、このような従来の油圧式動力伝達装置にあっては、車両の急発進時や急制動時に、回転速度差が一時的に大きくなって過大なトルクを発生し、この過大なトルクに見合うように油圧式動力伝達装置はもとより、車両駆動系の強度を高めなければならず、装置の大型化とコストアップを招く問題がある。
そこで従来の油圧式動力伝達装置にあっては、ピストン室から低圧側に至る高圧油路の途中に、チェックボールをスプリングで閉鎖状態に支持したトルクリミッタ弁を設け、スプリング荷重を超える所定の高圧を受けた際にチェックボールにより流路を開いてピストン室からドレーンさせ、過大トルクを抑えるようにしている。
しかしながら、このような従来の油圧式動力伝達装置に対するトルクリミッタ機構としては、例えばロータに設けた複数のピストン室の各々にトルクリミッタ弁を個別に設ける必要があるため、構造が複雑化し、コストアップになるという問題がある。
また従来の油圧式動力伝達装置のトルク特性は、4輪駆動車がアンチスキッドブレーキシステム(以下「ABS」という)を装備していた場合、4輪駆動車は急制動時に全車輪がほぼ同じ回転数となり、正確なABS制御ができなくなる問題がある。
ABSは一定の減速加速度を超える急制動を検知して作動し、各車輪の車輪速の差から擬似車速を発生し、この擬似車速に対し車輪速が例えば90%となるように制動液圧を制御して最大摩擦率を得るようにスリップ率を制御している。
しかし、油圧式動力伝達装置を使用した4輪駆動車の場合には、急制動による減速中に車輪側から動力伝達を受けてフロントドライブシャフトとリアドライブシャフトに回転速度差が生じた場合、回転の低い方にトルクを伝達するように作動し、この結果、ABS制御により例えば前後輪を独立に最大摩擦係数が得られるように車輪速を変化させてスリップ率を制御しようとしても、油圧式動力伝達装置によるトルク伝達でABSによる車輪速の変化を抑制する干渉を起し、正確なABS制御ができない。
このような油圧式動力伝達装置によるABSとの干渉を避けるためには、ABS作動時に4輪駆動から2輪駆動に切り替えることが望ましく、一般的には電気的な制御手段により4輪駆動から2輪駆動への切り替えを実現している。
しかし、電気的な制御手段による4輪駆動から2輪駆動への切り替えとした場合には、油圧式動力伝達装置に電気的なアクチュエータによって4輪駆動から2輪駆動に切り替えるための機構を追加しなければならないため、構造の複雑化を招き、大幅なコストアップを伴うという問題がある。
本発明は、簡単な構造で急発進時や急制動時の過大トルクを抑制すると共にABSとの干渉を回避可能とする油圧式動力伝達装置を提供することを目的としている。
この目的を達成するため本発明は次のように構成する。本発明は、
前輪と後輪を個別に駆動する2軸の内の第1軸に連結され、内側面に2つ以上のカム山を有するカム面を形成したハウジングと、
第2軸に連結されると共に、ハウジング内に回転自在にかつ対向的に収納され、複数のピストン室をカム面に面して軸方向に形成し、ピストン室のカム面の反対側にピストン室に連通する吸入連通路と各吸入連通路を連通する環状の吸入連通溝を設けると共に、流動抵抗発生手段としてのオリフィスを備えたピストン室に連通する吸入吐出連通路と各吸入吐出連通路を連通する環状の吸入吐出連通溝を設けたロータと、
複数のピストン室の各々に、リターンスプリングの押圧を受けて往復移動自在に収納されると共に、第1軸と第2軸間の相対回転時にカム面によって駆動される複数のピストンと、
ロータの吸入連通溝及び吸入吐出連通溝を形成した端面側にハウジングに固定して配置され、吸入吐出連通溝を閉鎖すると共に、吸入連通溝を外部の低圧室に連通する共通吸入口を開口したワッシャ部材と、
を備え、第1軸と第2軸の軸間の回転速度差に応じたトルクを伝達する油圧式動力伝達装置を対象とする。
このような油圧式動力伝達装置につき本発明は、回転速度差の急激な増加に伴って発生する過大トルクを所定値に制限するトルクリミッタ機構として、
ワッシャ部材の外側に同軸に配置されて軸方向に移動自在なリリーフワッシャ部材と、
ピストン室毎に設けられ、各ピストン室をリリーフワッシャ部材が押圧されるロータ端面に連通するドレーン連通路と、
リリーフワッシャ部材をロータ端面に押圧してドレーン連通路を閉鎖し、ドレーン連通路を介してリリーフワッシャ部材に油圧により加わる力が所定のスプリング荷重を超えた際に、リリーフワッシャ部材を後退させてドレーン連通路を開くことによりピストン室を低圧室にドレーンさせるリリーフスプリングと、
ハウジングと一体に回転し、ハウジングの回転停止時又は回転開始時の慣性力によりリリーフワッシャ部材を押し下げてドレーン連通路の開放位置にロックするウェイト部材とを備えたことを特徴とする。
ここで、ウェイト部材は、ロータ外側のハウジング内周面に回転自在に配置された円筒部材であり、円筒部材の端面にテーパ溝を形成し、リリーフワッシャ部材に嵌合して一部を突出したボールをテーパ溝に嵌合し、ハウジングの回転停止時又は回転開始時の慣性力によりテーパ溝及びボールを介してリリーフワッシャ部材を押し下げてドレーン連通路を開放する。
ウェイト部材のテーパ溝は、急発進時にウェイト部材の慣性力によりボールを介してリリーフワッシャ部材を押圧する押圧力を発生する一方のテーパ面の角度と、急制動時にウェイト部材の慣性力によりボールを介してリリーフワッシャ部材を押圧する押圧力を発生する他方のテーパ面の角度を異なる角度としたことを特徴とする。
リリーフスプリングは、リリーフワッシャ部材の円周方向に配置された複数のコイルスプリングである。またリリーフスプリングとしては、リリーフワッシャ部材と同軸に配置されて円周方向に波打ったウェーブスプリングとしても良い。
本発明によれば、トルクリミッタ機構は、ロータのピストン室に連通したドレーン連通路を開口した端面に弁部材として機能するリリーフワッシャ部材をスプリングの支持で移動自在に配置するという簡単な構造により、急発進時や急制動時の回転速度差の急激な上昇で必要以上の高圧が加わった際にリリーフワッシャ部材の後退によりドレーン連通路を開いて高圧油をドレーンし、発生トルクを所定トルクに抑え、過大トルクの伝達を防止できる。
特に本発明のトルクリミッタ機構は、複数のピストン室に対し共通機構として設けられ、ピストン室毎にチェックボール弁を設けた場合に比べ、構造を簡単にし、コスト低減を図ることができる。
またABSが作動する急制動時の車輪ロックに伴うハウジングの停止で発生するウェイト部材の慣性力でリリーフワッシャ部材をドレーン連通路の開放位置に移動することで、4輪駆動から2輪駆動に切替え、ABSとの干渉を抑えることができる。
図1は本発明による油圧式動力伝達装置の実施形態を示した断面図であり、図2に図1の右側から見た端面図を示している。
図1において、本発明の油圧式動力伝達装置10は、左右に開口した円筒状のハウジング12を有し、ハウジング12の内部右側にカム14をストッパリング15により固定している。
カム14は左端面となる内面側に、円周方向に沿って山と谷を交互に形成したカム面16を備えている。この実施形態において、カム面16に形成される山の数は例えば4つとしている。カム14の左側にはロータ18が回転自在に組み込まれている。ロータ18は軸穴20及びこれに続くスプライン穴22を有し、更に左側のハウジング12の軸穴にベアリング24を配置している。
ロータ18の軸穴20及びスプライン穴22、更にベアリング24に対しては、例えばフロントドライブシャフト側を連結する。これに対しハウジング12側には、リアドライブシャフトを連結する。
ロータ18はカム14側に開口したピストン室26を円周方向に複数形成しており、ピストン室26にはピストン28が往復移動自在に組み込まれ、ピストンの背後にはリターンスプリング32が配置され、ピストンの先端にはボール30が配置され、カム面16に当接している。この実施形態にあっては、ロータ18に設けているピストン28の数を7つとしている。
ピストン室26の後部、即ちカム面16と反対側には、内周側よりオリフィス38、吸入連通路34及びドレーン連通路44を設けている。オリフィス38はロータ18の端面に環状に形成した吸入吐出連通溝40に連通し、7箇所のオリフィス38が吸入吐出連通溝40により連通されている。吸入吐出連通溝40と吸入連通路34の間となるロータ18の端面には、環状の吸入連通溝42が形成されている。
ロータ18の左側にはワッシャ部材36が配置される。ワッシャ部材36は、図示しない固定ピンによりハウジング12の端面に固定されており、ロータ18の端面との密着により吸入吐出連通溝40と吸入連通溝42を密閉している。
ワッシャ部材36の外側には同軸にリリーフワッシャ部材48が配置される。リリーフワッシャ部材48は、ハウジング12内に形成されたリング溝46に、軸方向に移動自在に組み込まれている。リリーフワッシャ部材48の後方(左側)にはスプリング収納穴54が形成され、ここにリリーフスプリング55を組み込み、リリーフワッシャ部材48を所定のスプリング荷重でロータ18の端面に押圧している。
リリーフワッシャ部材48が当接するロータ18の端面には、ピストン室26からドレーン連通路44が開口している。このためリリーフワッシャ部材48は、リリーフスプリング55のスプリング力によるロータ18の端面への押圧によりドレーン連通路44を閉鎖している。
リリーフワッシャ部材48の外周側の複数箇所には切欠48aが形成され、ここにボール52を組み込んでいる。ボール52の右側には円筒状のウェイト部材50がハウジング12に対し回転自在に組み込まれている。
ウェイト部材50は、リリーフワッシャ部材48側の端面に形成した後の説明で明らかにするテーパ溝によりボール52を嵌合している。このためウェイト部材50は、ハウジング12に対しリリーフワッシャ部材48、ボール52を介して係合されて一体に回転することになる。
本発明の油圧式動力伝達装置10におけるトルクリミッタ機構は、ドレーン連通路44、リリーフワッシャ部材48、リリーフスプリング55、ボール52及びウェイト部材50で構成されている。
このトルクリミッタ機構は、車両の急発進時または急制動時におけるハウジング12とロータ18の間の回転速度差の急激な上昇に伴うピストン28の高速移動で必要以上の高圧が発生した時に、リリーフ動作を行う。即ち、ピストン室26の油圧はドレーン連通路44を介してリリーフワッシャ部材48に加わり、リリーフワッシャ部材48をリリーフスプリング55を圧縮する方向に押している。
ピストン室26の油圧がリリーフスプリング55のスプリング荷重で決まるドレーン設定圧を超えると、リリーフワッシャ部材48がロータ18の端面から押し下げられ、ドレーン連通路44を開いて低圧室45にピストン室26の高圧油をドレーンする。このピストン室26からの高圧油のドレーンにより、急発進時や急制動時に油圧式動力伝達装置で発生する過大トルクを所定のリミットトルクに制限することができる。
ここでピストン室26の油圧をP、ドレーン連通路44の開口断面積をS、リリーフスプリング55のスプリング荷重をFとすると
(S×P)>F
となる油圧が得られた時に、リリーフワッシャ部材48が作動してドレーン連通路44を開くドレーン動作を行う。
なお、ドレーン連通路44の開口断面積Sは7箇所のピストン室26についての合計断面積であり、またリリーフスプリング55にあっても、図2に示すように4箇所に設けていることから、その合計荷重である。
このような急発進時または急制動時のピストン28の高速往復移動による必要以上の高圧を所定のリリーフ設定圧に抑えて伝達トルクを制限するトルクリミッタ機能に加え、車両が急発進または急制動した際のウェイト部材50に生ずる慣性力(イナーシャ)によりボール52を介してリリーフワッシャ部材48をドレーン連通路44を開放することにより、4輪駆動から2輪駆動に切り替える機能が設けられている。
まず急発進時にあっては、ハウジング12が停止状態から短時間に例えば時速数十キロメートルに加速することとなり、このときウェイト部材50は慣性により取り残される状態となり、テーパ溝のテーパ面でボール52を介してリリーフワッシャ部材48を押し下げて開放する。
また急制動時にあっては、例えば時速100キロメートルから短時間で0キロメートルになることで、高速回転していたハウジング12が急停止し、このためウェイト部材50は回転による慣性力でハウジング12に対し相対移動し、テーパ溝に嵌合しているボール52を介してリリーフワッシャ部材48をドレーン連通路44を開放する。
ここで図1の油圧式動力伝達装置10におけるハウジング12とロータ18の回転速度差によるトルク発生を説明すると次のようになる。ロータ18に設けたピストン28は、カム面16の山から谷に向かう工程で吸入工程となる。またカム面16の谷から山に向かう工程で吐出工程となる。
ピストン28の吸入工程にあっては、ロータ18の下側のピストン28に示すように、リターンスプリング32で押されてピストン28は右側に移動し、吸入吐出連通路40からオリフィス38を介して油を吸入し、更にカム面16の谷の前後位置で吸入連通溝42が吸入連通路34に、後の説明で明らかにするワッシャ部材36に形成している吸入開口65(図2参照)を介して連通し、オリフィス38の吸入だけでは不足する油を補給する。
一方、ロータ18の上側のピストン28に示すような吐出工程にあっては、ピストン28の左方向への移動により吸入された油がオリフィス38を通って吸入吐出連通溝40に吐出され、オリフィス38を流れる際の流動抵抗によりピストン室26に高圧を発生し、この高圧によりハウジング12とロータ18の間でトルク伝達が行われる。
ピストン室26からオリフィス38を介して吐出された油は、吸入吐出連通溝40から同時に吸入工程にある例えば下側のピストン室26に同じくオリフィス38を介して吸入される。
ここで、吐出工程にあるピストン室26の油圧を高圧、吸入工程にあるピストン室26の油圧を低圧とすると、吸入吐出連通溝40の油圧は、その中間の値となる中圧にあり、したがって吸入吐出連通溝40は中圧室として機能する。
更に図1の油圧式動力伝達装置10にあっては、ハウジング12の左上隅にアキュームレータ室56を形成し、ここにアキュームレータピストン58を収納している。アキュームレータ室56はロータ18の外周の低圧室45に連通しており、温度変化に伴う油の体積変化を吸収する。アキュームレータピストン58の左側は大気に開放されており、このため低圧室45は大気圧になっている。更にロータ18の軸部の左右にはシール60,62が組み込まれ、内部の油を密閉状態に封止している。
図2は図1のハウジング12を右から見た端面図であり、内部の端面形状に合わせ、図1におけるワッシャ部材36、リリーフワッシャ部材48、ウェイト部材50、更にピストン28を想像線で示している。
図2において、ハウジング12の内部端面には、45°間隔で内周から外周に向けて連通溝68が形成され、連通溝68によって外周側の低圧室45と内周側の低圧室を連通している。連通溝68の間の45°離れた位置には、ワッシャ部材36に形成した吸入開口65が位置している。
ワッシャ部材36の吸入開口65は、カム面16における谷の位置に配置され、この位置で図1に示したロータ18の端面の吸入連通溝42を吸入連通路34に連通して、ピストン室26に低圧室から油を補給するようにしている。またハウジング12の外周側の4箇所にはアキュームレータ室56が形成され、その一部が内側に開口している。
このようなハウジング12の内部端面の前方には、図1に示したワッシャ部材36とリリーフワッシャ部材48が同軸に配置され、更にリリーフワッシャ部材48の手前にボール52を介してウェイト部材50が配置されることになる。ボール52はウェイト部材50の端面に形成したテーパ溝に嵌合しており、ボール52は円周方向の4箇所のテーパ溝に嵌合することになる。
更にロータ18側に設けている7つのピストン28は、ハウジング12に対しロータ18との回転速度差に伴って相対回転することで位置を変え、カム面16の山から谷に向かう回転範囲で吸入工程となり、谷から山に向かう範囲で吐出工程となる。またピストン28の端面には、内周側から、オリフィス38、吸入連通路34、更にドレーン連通路44が開口している。
図3は図1のリリーフワッシャ部材48、ウェイト部材50の組立部分を取り出して示した説明図である。リリーフワッシャ部材48はウェイト部材50側の端面外周部に矩形の切欠48aを形成しており、ここにボール52を組み込んでいる。リリーフワッシャ部材48の内側にはワッシャ部材36が配置され、ワッシャ部材36には吸入開口65を形成している。
なおワッシャ部材36は、ピン穴82に対する固定ピンの挿入でハウジング12の内部端面に固定され、またリリーフワッシャ部材48は外周の円弧状の切欠48aに対する固定ピンの配置で、ハウジング12に対し回転方向は規制され、軸方向にのみ移動自在としている。
リリーフワッシャ部材48の右側に配置されるウェイト部材50は、ボール52の吐出部分を嵌合するテーパ溝70を備えている。
図4は、図3のリリーフワッシャ部材48側のボール52とウェイト部材50側のテーパ溝70を取り出しており、ウェイト部材50がハウジング12と一体回転している場合には、この位置関係にある。
ウェイト部材50の端面に形成した三角形のテーパ溝70は、ドライブ用テーパ面70aとコースト用テーパ面70bを形成しており、ドライブ用テーパ面70aの角度はθ1と小さく、コースト用テーパ面70bの角度はθ2と大きくなっている。ここで、ドライブ用テーパ面70aの角度θ1は例えば14°であり、またコースト用テーパ面70bの角度θ2は例えば42°としている。
図5はドライブ時とコースト時に発生するウェイト部材の慣性力によるリリーフワッシャ部材の作動状態の説明図である。図5(A)は車両を急発進することでエンジンから動力回転を受けて回転速度差が生ずるドライブ時であり、急発進により、リリーフワッシャ部材48はハウジング12と一体に矢印A方向に急速に回転を始めるが、これに対しウェイト部材50は停止状態にあるため、リリーフワッシャ部材48のA方向の急回転に対し回転遅れを生じ、これに伴う慣性力Faを反対方向に生ずる。
このため、テーパ溝70のドライブ用テーパ面70aに沿ってボール52が移動し、ボール52の移動に伴い、リリーフワッシャ部材48を矢印C方向に押し下げて、ドレーン連通路44を開放する。
このように、急発進に伴うウェイト部材に加わる慣性力Faによりリリーフワッシャ部材48が開放位置に移動された後は、車両を停止するまで開放状態が維持される。ウェイト部材50の急発進時の慣性力Faによるリリーフワッシャ部材48の開放状態は、ピストン室26の圧力がリリーフスプリング55で決まるドレーン設定圧を超えた際のリミットトルクの値に対し、更に低いトルクに抑えることとなり、結果的に4輪駆動状態から2輪駆動状態に切り替えられることになる。
図5(B)は車両を急制動した際のコースト時における動作を示している。急制動に伴うコースト時にあっては、例えば時速100キロメートルの走行状態によるハウジング12の回転から、急制動によるハウジング12が短時間で停止し、これに伴いリリーフワッシャ部材48も停止する。
一方、ハウジング12の停止に対しウェイト部材50は、その慣性力Fbにより更に回転しようとし、このためコースト用テーパ面70bによりボール52を押し下げ、リリーフワッシャ部材48をドレーン連通路44を開放する。このため、急制動時にあってもウェイト部材50の慣性力Fbによるドレーン連通路44の開放で4輪駆動状態から2輪駆動状態に切り替えられ、急制動でABSとの干渉を回避することができる。
図6は本発明の油圧式動力伝達装置10におけるドライブ時とコースト時のロータを固定して見たカム面の相対回転に対する吐出工程と吸入工程を直線展開して示した説明図である。
図6(A)はドライブ時であり、カム面16は右方向に移動しており、カム面16の山76から谷74に向かう右斜面78に当接するピストン28は吸入工程となり、谷74から山76に向かう左斜面80に当接しているピストン28は吐出工程となる。
図6(B)は車両の急制動に伴うコースト時の吸入工程と吐出工程であり、コースト時、カム面16の回転方向はドライブ時とは逆の右方向の移動となる。このためコースト時にあっては、カム面16の山76から谷74に向かう左斜面80に当接しているピストン28がドライブ時とは逆に吸入工程となり、同時にカム面16の山76から谷74に向かう右斜面78に当接するピストン28はドライブ時とは逆に吐出工程となる。
図7は本発明の油圧式動力伝達装置におけるドライブ時とコースト時のハウジングを固定して見たロータ回転に対する吐出工程と吸入工程の説明図である。図7(A)は通常走行となるドライブ時の説明図であり、ロータ18の回転方向を、固定状態にあるハウジングに対し矢印で示す左回転としている。
このドライブ時にあっては、カムの山から谷に向かう45°の範囲でピストン28は吸入工程となり、谷から山に向かう45°の範囲でピストン28は吐出工程となり、吐出工程と吸入工程は45°間隔で交互に生じている。
図7(B)は急制動におけるコースト時の吸入工程と吐出工程であり、コースト時にあっては、ハウジング12を固定した場合のロータ18の回転方向はドライブ時とは逆に右回転となる。このコースト時のロータ18の右回転に対し、カム面16の山から谷に向かう45°の範囲でピストン28は吸入工程となり、谷から山に向かう45°の範囲でピストン28は吐出工程となり、吸入工程と吐出工程は45°間隔で交互に生じている。
またドライブ時と比較すると、ドライブ時の吐出工程はコースト時は吸入工程となり、またドライブ時の吸入工程はコースト時は吐出工程と、位置が切り替わっていることが分かる。
図8は図1における本発明によるトルクリミッタ機構の作動状態の拡大断面図であり、図5(A)(B)に示したように、急発進あるいは急制動でウェイト部材50の慣性力によりボール52を介してリリーフワッシャ部材48をドレーン連通路44の開放位置に押し下げてロックした作動状態を示している。
このウェイト部材50の慣性力によるリリーフワッシャ部材48の開放状態にあっては、ピストン室26はドレーン連通路44を介して低圧室45に連通され、オリフィス38を通る油の流れは生じないことから、ハウジング12とロータ18との間の回転速度差に応じたトルク伝達は発生せず、実質的に2輪駆動状態となっている。
図9は本発明によるトルクリミッタ特性を示したグラフ図である。図9において、ウェイト部材50が慣性力により作動する前の状態にあっては、ピストン室26の油圧がリリーフスプリング55で決まるドレーン設定圧を超えたときにリリーフワッシャ部材48が後退してドレーン連通路44を開放し、この場合のトルクはリミットトルクT1に制限される。
一方、ウェイト部材50の慣性力によりボール52を介してリリーフワッシャ部材48をドレーン連通路44を開放した場合には、リミットトルクT1より低い、実質的には2輪駆動と見なせる程度のリミットトルクT2に制限される。
このような図9のトルク特性から例えば急制動時のトルク特性の時間変化を見ると、例えば図10のようになる。図10は時刻t1で急制動を掛けた場合であり、急制動に伴うハウジングとロータの回転速度差の上昇に伴い、図9のトルク特性に従って時刻t2でリミットトルクT1に達した後、ウェイト部材50の慣性力によるリリーフワッシャ部材48の開放で、トルクT2に時刻t3で低下し、それ以降、2輪駆動状態を維持することになる。
この図10の急制動時のトルク特性の時間変化は、急発進時についても基本的に同じとなる。
ここで図4に示したように、急発進の際の2輪駆動への切替えを行うドライブ用テーパ面の角度θ1が小さく、急制動時の2輪駆動への切替えを行うコースト用テーパ面70bの角度θ2を大きくしている理由を説明すると、次のようになる。まず急発進時にあっては、例えばかなりの急発進であっても0キロメートルから時速数十キロメートルまでの速度変化であるのに対し、急制動時にあっては時速100キロメートルから0キロメートルといった急激な速度変化を生ずる。
このため急発進時及び急制動時につき、図10に示すような同じトルク特性の時間変化を得るためには、慣性力の小さな急発進時のドライブ用テーパ面70aの角度θ1を小さくして、小さい慣性力でリリーフワッシャ部材48を開放位置に押し下げられるようにし、大きな慣性力を生ずる急制動に対応したコースト用テーパ面70bについては角度θ2を大きくすることで、大きな慣性力で急発進時と同等なトルク特性でリリーフワッシャ部材48を開放位置に移動させるようにしている。
もちろん、テーパ溝70におけるそれぞれの角度θ1,θ2は、車両の走行条件や車両性能に応じて必要に応じて適宜に定めることになる。
なお上記の実施形態にあっては、リリーフワッシャ部材48のリリーフスプリング55としてコイルバネを複数箇所に設けた場合を例にとっているが、リリーフスプリングとしては、コイルバネの代わりに円周方向でバネ板材を波打ち形成したウェーブスプリングを使用することもできる。
ウェーブスプリングは1枚の波打ったリング状の板バネであることから、複数本のコイルバネに比べコストが安く、また図1のリング溝46の厚さをウェーブワッシャの振幅幅に合わせて深く形成するだけでよく、スプリング収納穴54を形成する必要がない分だけ、加工及び組立ても簡単にできる。
また本発明は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
本発明の一実施形態を示した断面図 図1のハウジングを右から見た端面図 図1のリリーフワッシャ部材及びウェイト部材の組立部分を取り出して示した説明図 図3のリリーフワッシャ部材側のボールとウェイト部材のテーパ溝の説明図 ドライブ時とコースト時に発生するウェイト部材の慣性力によるリリーフワッシャ部材の作動状態の説明図 ドライブ時とコースト時のロータを固定して見たカム面の相対回転に対する吸入吐出工程を直線展開して示した説明図 ドライブ時とコースト時のハウジングを固定して見たロータ回転に対する吸入吐出工程を示した説明図 図1における本発明によるトルクリミッタ機構の作動状態の拡大断面図 本発明によるトルクリミッタ特性を示したグラフ図 急制動時のトルク特性の時間変化を示した説明図 従来の油圧式動力伝達装置を備えた四輪駆動車の説明図
符号の説明
10:油圧式動力伝達装置
12:ハウジング
14:カム
15:ストッパリング
16:カム面
18:ロータ
20:軸穴
22:スプライン穴
24:ベアリング
25:Oリング
26:ピストン室
28:ピストン
30:ボール
32:リターンスプリング
34:吸入連通路
36:ワッシャ部材
38:オリフィス
40:吸入吐出連通溝
42:吸込連通溝
44:ドレーン連通路
45:低圧室
46:リング溝
48:リリーフワッシャ部材
48a:切欠
50:ウェイト部材
52:ボール
54:スプリング収納穴
55:リリーフスプリング
56:アキュームレータ室
58:アキュームレータピストン
60,62:シール
65:吸入開口
68:連通溝
70:テーパ溝
70a:ドライブ用テーパ面
70b:コースト用テーパ面
74:谷
76:山
78:右斜面
80:左斜面
82:ピン穴

Claims (5)

  1. 前輪と後輪を個別に駆動する2軸の内の第1軸に連結され、内側面に2つ以上のカム山を有するカム面を形成したハウジングと、
    第2軸に連結されると共に、前記ハウジング内に回転自在にかつ対向的に収納され、複数のピストン室を前記カム面に面して軸方向に形成し、前記ピストン室のカム面の反対側に前記ピストン室に連通する吸入連通路と各吸入連通路を連通する環状の吸入連通溝を設けると共に、流動抵抗発生手段としてのオリフィスを備えた前記ピストン室に連通する吸入吐出連通路と各吸入吐出連通路を連通する環状の吸入吐出連通溝を設けたロータと、
    前記複数のピストン室の各々に、リターンスプリングの押圧を受けて往復移動自在に収納されると共に、前記第1軸と第2軸間の相対回転時に前記カム面によって駆動される複数のピストンと、
    前記ロータの前記吸入連通溝及び前記吸入吐出連通溝を形成した端面側に前記ハウジングに固定して配置され、前記吸入吐出連通溝を閉鎖すると共に、前記吸入連通溝を外部の低圧室に連通する共通吸入口を開口したワッシャ部材と、
    を備え、前記第1軸と第2軸の軸間の回転速度差に応じたトルクを伝達する油圧式動力伝達装置に於いて、
    前記回転速度差の急激な増加に伴って発生する過大トルクを所定値に制限するトルクリミッタ機構として、
    前記ワッシャ部材の外側に同軸に配置されて軸方向に移動自在なリリーフワッシャ部材と、
    前記ピストン室毎に設けられ、各ピストン室を前記リリーフワッシャ部材が押圧される前記ロータ端面に連通するドレーン連通路と、
    前記リリーフワッシャ部材を前記ロータ端面に押圧して前記ドレーン連通路を閉鎖し、前記ドレーン連通路を介して前記リリーフワッシャ部材に油圧により加わる力が所定のスプリング荷重を超えた際に、前記リリーフワッシャ部材を後退させて前記ドレーン連通路を開くことにより前記ピストン室を低圧室にドレーンさせるリリーフスプリングと、
    前記ハウジングと一体に回転し、前記ハウジングの回転停止時又は回転開始時の慣性力により前記リリーフワッシャ部材を押し下げて前記ドレーン連通路の開放位置にロックするウェイト部材と、
    を備えたことを特徴とする油圧式動力伝達装置。
  2. 請求項1記載の油圧式動力伝達装置に於いて、前記ウェイト部材は、前記ロータ外側のハウジング内周面に回転自在に配置された円筒部材であり、前記円筒部材の端面にテーパ溝を形成し、前記リリーフワッシャ部材に嵌合して一部を突出したボールを前記テーパ溝に嵌合し、前記ハウジングの回転停止時又は回転開始時の慣性力により前記テーパ溝及びボールを介して前記リリーフワッシャ部材を押し下げて前記ドレーン連通路を開放することを特徴とする油圧式動力伝達装置。
  3. 請求項1記載の油圧式動力伝達装置に於いて、前記ウェイト部材のテーパ溝は、急発進時に前記ウェイト部材の慣性力により前記ボールを介して前記リリーフワッシャ部材を押圧する押圧力を発生する一方のテーパ面の角度と、急制動時に前記ウェイト部材の慣性力により前記ボールを介して前記リリーフワッシャ部材を押圧する押圧力を発生する他方のテーパ面の角度を異なる角度としたことを特徴とすることを特徴とする油圧式動力伝達装置。
  4. 請求項1記載の油圧式動力伝達装置に於いて、前記リリーフスプリングは、前記リリーフワッシャ部材の円周方向に配置された複数のコイルスプリングであることを特徴とする油圧式動力伝達装置。
  5. 請求項1記載の油圧式動力伝達装置に於いて、前記リリーフスプリングは、前記リリーフワッシャ部材と同軸に配置されて円周方向に波打ったウェーブスプリングであることを特徴とする油圧式動力伝達装置。
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