JP4214745B2 - 分割型鉄心 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、分割型鉄心、特に回転子に永久磁石を用いた電動機あるいは発電機などの回転機の固定子として適合する、高効率の分割型鉄心に関する。
【0002】
【従来の技術】
省エネルギーに対する社会的な要請から、回転機の高効率化の要求が強く、種々の構成の回転機や、そこに用いる鉄心用材料が提案されている。
例えば、近年の永久磁石の進歩は著しく、回転子に永久磁石を利用した同期モータは高い効率が得られることから、その利用頻度は益々高まっている。
【0003】
一方、固定子の鉄心を分割型とした分割鉄心構造は、巻線が容易であるとともに高い巻線充填率が実現可能なため、回転機の高効率化に有利に作用する。さらに、分割鉄心構造の場合、鉄心材料の磁気的な異方性を考慮した構造とできる上、複数の異種材料から鉄心を構成することが可能であるという利点もあり、回転機の高効率化をさらに推し進めるのに有利な構造といえる。
【0004】
ところで、回転機のエネルギー効率は、入力に対する出力の比で数値化されるが、入力と出力との差分である損失には、回転機の鉄心で発生する鉄損、巻線で発生する銅損、軸受けなどで発生する機械損、その他種々の要因を含む漂遊損がある。これらのなかで鉄損は、比較的大きな比率を占めており、鉄心材料の低鉄損化は回転機の高効率化のために、とりわけ重要である。
【0005】
特に、回転子に永久磁石を用いた回転機では、詳しくは後述するように、永久磁石を用いた回転子と対向する固定子部分に磁束成分が生じて、これが鉄損の増大をまねいていた。
【0006】
ここに、分割鉄心用材料に適した電磁鋼板について、例えば特許文献1には、圧延方向(以下、L方向と示す)と圧延方向に対して直角の方向(以下、C方向と示す)との磁気特性のバランスを考慮することによって、電動機の効率を向上させる技術について開示されている。この技術では、ゴス方位への過度の集積を防止することによって、C方向の磁気特性を改善することを、主な内容としている。
【0007】
しかしながら、この技術はゴス方位からの二次再結晶粒方位のずれが大きい電磁鋼板を得るに過ぎず、表面の酸化物層を制限して打抜き性を改善した他は、従来の低級方向性電磁鋼板と大きく変わるところがない。さらに、近年注目されている、回転子に永久磁石を用いた回転機に特有の、上記した鉄損増加を、解消することについては何ら触れられていない。
【0008】
また、特許文献2にも、C方向の磁気特性が比較的良好な、回転機用鉄心材料が提案されており、C方向の鉄損W15/50のL方向の鉄損W15/50に対する比が低い材料が得られている。しかしながら、この技術も単にL方向およびC方向の鉄損のバランスに着目しているに過ぎず、特に回転子に永久磁石を用いた回転機に特有の、上記した問題に対する解決策は呈示されていない。
【0009】
【特許文献1】
特開2000-87139号公報
【特許文献2】
特開平7-18334号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、回転機の効率改善に対する努力が、機器構造および鉄心素材の両面から推進されてきたのにも係わらず、鉄心の鉄損低減は必ずしも十分とは言えないものであった。この原因として、回転機の局部的領域の鉄損の増加に考慮した材料設計が行われていなかったことが挙げられる。
【0011】
そこで、この発明は、回転子に永久磁石を使用したモータの固定子側で生じる鉄損の増加を有利に回避することによって、回転機の高効率化を達成し得る、分割型鉄心について提案することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、主に回転子に永久磁石を用いた回転機における、固定子の歯先端部で生じる鉄損増加要因を抑制することを所期して、鋭意検討を行った結果、この発明を導くに到った。
【0013】
すなわち、この発明は、回転子に永久磁石を用いる回転機の固定子を構成する分割型鉄心であって、該鉄心を構成する電磁鋼板が、Si:2.0〜8.0mass%および Mn : 0.005 〜 3.0mass %を含有し、磁化力200A/mにおける圧延方向および圧延方向と直角の方向の磁束密度をそれぞれBL2およびBC2とするとき、BL2が1.60T以上かつBC2/BL2が0.80以下であり、さらに最大磁化力200A/mおよび周波数50Hzにおける圧延方向および圧延方向と直角の方向の鉄損をそれぞれWL200/50およびWC200/50とするとき、WC200/50/WL200/50が1.4以下であり、該電磁鋼板の磁束密度が最も高い方向が前記分割型鉄心の歯の方向となることを特徴とする分割型鉄心である。
【0014】
【発明の実施の形態】
この発明は、特に回転子に永久磁石を用いた回転機における、固定子を構成する分割型鉄心を提供しようとするものである。そこで、かような回転機である、表面磁石型のブラシレスDCモータを例に、この発明について詳述する。
【0015】
すなわち、図1は、表面磁石型のブラシレスDCモータにおける、固定子鉄心内部の磁束の流れを模式的に示したものである。この図において、符号1は、永久磁石を用いた回転子および2は固定子であり、この固定子2の歯2aにおける磁束の流れを符号3または4の矢印にて示している。
【0016】
さて、図1に示すように、回転子1に永久磁石を用いた回転機における、固定子2の歯2a内部では、回転子1内の磁極の極性が変わる点が歯2aと対向する際に、歯2a内部においてN極からS極に向かって閉じた磁気回路をなす磁束成分3が発生する。このような磁束成分3は、トルクに寄与しないにも拘わらず、余分な磁束密度上昇により鉄損の増大を招く。
【0017】
ここで、上記の磁束成分3の発生は、回転子1に永久磁石を用いた方式のモータにおいて特に顕著であり、この中でも回転子1表面の磁力が強く、かつ歯2aの先端幅より狭い範囲に異なる磁極が存在する構造の回転機で特に増加しやすい。
【0018】
発明者らは、上記のような磁束成分による鉄損増加を抑制するための手段として、以下の方策が有効であるとの結論に至った。
(i)歯の材料として磁気異方性の強い材料を用い、磁化容易方向を歯の方向(径方向)とする。これにより、歯先端で周方向の磁束成分の発生が抑制され、歯先端部での鉄損の局所的増加を抑制する。
(ii)磁化容易方向に比べて磁化困難方向の鉄損を低減する。これにより、歯の先端部で周方向の磁束成分が生成した場合でも、鉄損の増加を避けることが可能となる。
【0019】
ここに、上記の(i)を実現するためには、例えば通常の一方向性電磁鋼板の圧延方向を歯の方向として用いる方法がある。このような構造の回転機は、従来、種々提案されているものの、鉄心の鉄損はエプスタイン試験で予測された電磁鋼板の磁気的特性から予測される値よりも大きくなる傾向にあった。この原因として、前記のような歯先端部で閉回路を形成する磁束成分の影響が考えられる。一方向性電磁鋼板は、強い磁気異方性を有しC方向の透磁率が小さいため、歯先端での周方向の磁束成分3の発生はある程度抑制されるものの、C方向の鉄損はL方向に比べて大きいことから、C方向の磁束成分の増加に従い急激に鉄損が増加する。従って、上記の(i)の条件に併せて上記(ii)の条件を満足する材料を用いることが重要になる。これら2つの条件を両立させることによって、上記した鉄損増加を積極的に防止し、回転機全体の損失を低減することが可能となる。
【0020】
すなわち、この発明は、従来考慮されていなかった、固定子の歯先端で閉回路を形成する磁束成分による鉄損増加を防止するものであり、特に永久磁石を回転子に有する回転機の固定子に使用すると、その優位性の発揮はより顕著となる。
【0021】
次に、上記の条件(i)および(ii)をより具体的に規定するために、以下の検討を行った。
すなわち、C:0.005mass%、Si:3.0mass%、Mn:0.08mass%、Sb:0.03mass%を含み、かつAlを30ppmおよびNを25ppmに低減した、成分組成になる鋼スラブを、連続鋳造にて製造した。次いで、鋼スラブを1100℃で20分加熱後、熱間圧延により2.5mm厚の熱延板としたのち、1000℃、60秒間の熱延板焼鈍を行った後、常温の冷間圧延にて0.35mmの最終板厚に仕上げた。その後、水素:80vol%および窒素:20vol%の雰囲気中にて、925℃および30秒の再結晶焼鈍を行ったのち、焼鈍分離剤を塗布することなく、コイル(A)は150MPa、コイル(B)および(C)は100Mpa、そしてコイル(D)は60MPaの張力にて巻き取った。
【0022】
次いで、露点-30℃で、コイル(B)はAr50vol%および水素50vol%の混合雰囲気中、またコイル(A)、(C)、(D)はAr30vol%および水素70vol%の混合雰囲気中、にて、それぞれ常温から850℃までを50℃/hで昇温し、850℃で20時間保持する最終仕上げ焼鈍を行った。この際、700℃以上をコイル(A)(B)はH2:50 vol%およびN2:50 vol%、コイル(C)はH2:80 vol%およびN2:20 vol%の雰囲気にて焼鈍した。その後、重クロム酸アルミニウム、エマルジョン樹脂およびエチレングリコールを混合したコーティング液を塗布し、300℃で焼き付けて電磁鋼板を製造した。また、上記の(A)〜(D)の電磁鋼板の他、比較のために、(E):無方向性電磁鋼板を別途準備した。
【0023】
上記の各電磁鋼板から、図2に点線で示す、鉄心分割要素に打ち抜き、それらをかしめによって一体化した後、巻線(磁極集中巻:図示せず)を施して固定子2とし、図2に示すように、表面磁石型の回転子1を取り付けて電動機とした。この電動機について、回転数1500rpmおよびトルク3Nmの条件にて、効率を測定した。それぞれの材料の磁気特性と電動機効率とを表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
表1の結果から、BL21.60T以上かつBC2/BL2が0.80以下であり、さらにWC200/50/WL200/50が1.4以下の鋼板(C)および(D)から固定子を作製した場合に、特に高い効率が得られることが分かる。さらに、WC200/50/WL200/50が1.2以下の場合に、より高い効率が得られることもわかる。
以上の実験結果から、この発明の電磁鋼板は次の条件にて規制することした。
・磁化力200A/mにおける圧延方向および圧延方向と直角の方向の磁束密度をそれぞれBL2およびBC2とするとき、BL2が1.60T以上
・ かつBC2/BL2が0.80以下
・ 最大磁化力200A/mおよび周波数50Hzにおける圧延方向および圧延方向と直角の方向の鉄損をそれぞれWL200/50およびWC200/50とするとき、WC200/50/WL200/50が1.4以下
【0026】
以下、上記の各限定理由について説明する。
・BL2:1.60T以上
従来は、回転機用材料の磁気特性のうち、特定方向の磁化のしやすさを測る量として、B50すなわち磁化力5000A/mでの磁束密度が用いられていた。しかしながら、このB50は材料の平均的な結晶方位のずれを大まかに見定めるのに適した指標であるものの、回転機で実際に生じる磁化力とは異なるものである。実際の回転機で材料を磁化させている磁化力は5000A/mに比べて低い。さらに、高透磁率材料を使用する場合は、通常の無方向性電磁鋼板を使用する場合よりもさらに低い磁化力にて、必要とする磁束密度を得ることができる。ゴス方位に近い結晶方位を有する電磁鋼板では、磁化力200A/m付近で通常必要とされる磁束密度を得ることができるため、磁化力200A/mでの磁束密度によって、各方向(L方向およびC方向)で生じる磁束密度を評価することとした。
【0027】
そして、磁化力200A/mでの磁束密度が1.60Tに満たない場合は、分割鉄心により固定子の歯の方向を材料の透磁率の高い方向としたとしても、巻線に大きな電流を流す必要があり、効率が改善されないことから、BL2を1.60T以上に限定した。より好ましくは、1.70T以上である。
【0028】
・BC2/BL2:0.80以下
200A/m の磁化力が材料のL方向またはC方向に印加された場合に、L方向が優先的に磁化されてC方向の磁化を抑制することによって、固定子の歯先端部での回転機周方向における磁束成分の発生を抑えることが可能である。表1に示したように、BC2/BL2が0.80を越えると、このような作用を期待することができなくなり、鉄心鉄損の増加を招くことから、この範囲に限定する。より好ましくは、0.70以下である。
【0029】
・WC200/50/WL200/50:1.4以下
BL2が1.6T以上の透磁率の高い電磁鋼板を、分割鉄心により回転機に使用する場合は、上記のように磁化力200A/m程度での磁気特性を評価するのがよい。従来、電磁鋼板の鉄損の評価は、例えば最大磁束密度1.5Tのような、所定の磁束密度での鉄損により行われていた。ところが、回転機の固定子を局部的に見ると,必ずしも所定の磁束密度に達しているとは言えず、とくにC方向へ磁束が流れる場合、圧延方向と同じ磁束密度に達しているとは限らない。従って、この発明で着目した固定子の歯先端部における、磁束成分3の鉄損への寄与については、磁束密度を基準にした鉄損評価よりも磁化力を基準にした鉄損評価の方が適している。そこで、上記で述べた磁化力200A/mを最大値として磁化したときの鉄損を評価指標とし、L方向、C方向の鉄損の比による限定を行った。
【0030】
ここで、測定の周波数は、歯先端での磁束成分3による鉄損の上昇が、主にヒステリシス損に起因し、若干渦電流損の寄与もあることから、50Hzでの測定値とするのが適当である。また、磁化力200A/mでの鉄損測定は、測定値の標準化のためには、磁束密度を正弦波に制御した条件で行うことが好ましい。
【0031】
以上に従って定めた、鉄損の比WC200/50/WL200/50が1.4を越えると、上述した理由から固定子の歯先端部において鉄損増加が起こるため、比WC200/50/WL200/50を1.4以下に限定する。また、表1に示した結果から、鉄損の比WC200/50/WL200/50は1.2以下とすることがより望ましい。
【0032】
以上の3つの要件が同時に実現されることによって、図1に示した磁束成分3による、鉄損増加を防止することが可能となる。というのは、BC2/BL2のみを規制する場合は、固定子の歯先端でのC方向の磁束成分を小さくすることができるものの、C方向の鉄損値の水準が高い場合には鉄損の増加を避けられないからであり、一方WC200/50/WL200/50のみを規制する場合は、鉄損の水準が小さくてもC方向の磁束量が大きいと,この部分の鉄損値の増加が避けられないからである。
【0033】
さらに、BL2:1.60T以上とするのは、透磁率の高い方向を分割鉄心の歯の方向とすることによって、励磁電流を低減し、低銅損・高トルクを実現するために必要であり、この条件の下に上記2つの要件が実現される必要がある。
【0034】
なお、この発明に従う電磁鋼板を使用するに当たって、歯の方向(回転機の径方向)を磁束密度B2が最も高い方向とする。すなわち、B2が最も高い方向と歯の方向との間でずれが生じる場合は、このずれ角を15°以下とする必要がある。これは、ずれ角が大きいと歯方向の磁束密度が低下してトルクの低下を招くからである。ちなみに、ゴス方位に近い結晶方位を有する電磁鋼板では、B2が最も高い方向は圧延方向となる。
【0035】
この発明の要件を満たす電磁鋼板の一例として、上記の実験で鋼板(C)および(D)で示される電磁鋼板を示したが、その製造方法等は上記の方法に限定されるものではない。以下に、上記実験における鋼板(C)および(D)で所望の磁気特性が得られた理由について述べる。
すなわち、電磁鋼板(C)および(D)では、二次再結晶現象を利用した、ゴス方位近傍方位の二次再結晶粒の成長により、圧延方向の高い磁束密度(BL2=1.65T)、そしてC方向とL方向との磁束密度の比BC2/BL2≦0.80を同時に実現している。また、製品の表面に微細粒を残存させるとともに表面の平滑化を行い、さらに無張力のコーティングを塗布することにて、従来の方向性電磁鋼板と比べて表面張力を大幅に低減している。これらの効果により、C方向とL方向の鉄損の比WC200/50/WL200/50を1.4以下とすることが可能である。上記電磁鋼板内部の微細粒はC方向に磁化された場合の磁区構造細分化の核となり、表面の平滑化と無張力はC方向への磁化の進行を円滑に進行する作用を有する。従って、これらの効果によりC方向の鉄損が低下する。
【0036】
なお、上記の電磁鋼板は、以下に示す適正条件の下に、製造することが有利である。
まず、出発材について、Siは電気抵抗率増加により渦電流損を低減するとともに、鉄のBCC組織を安定させて高温での焼鈍を可能にするのに有用な元素である。Siが2mass%を下回ると、このような効果が得られず、一方8mass%を越えると加工性が劣化するため、2〜8mass%とするのがよい。
【0037】
次に、C量がスラブ段階で0.08mass%を越えると、脱炭焼鈍後に十分に除去することが不可能になることから、0.08mass%以下とするのがよい。
【0038】
Mnは、熱間加工性改善に有用な元素である。0.005mass%に満たないと効果が乏しく、3.0mass%を越えると磁束密度低下を招くため、0.005〜3.0mass%とするのがよい。
【0039】
スラブ中のAlが100ppmを越えたり、Nが50ppmを越えたりすると、二次再結晶の際に良好な方位の成長を妨げるため、Alは100ppm以下およびNは50ppm以下とするのがよい。
さらに、粒成長を阻害するS、Se、Ti、Nb、B、TaおよびVについても、それぞれ50ppm以下とするのがよい。
【0040】
次いで、製造方法について述べる。
上記の成分組成になるスラブは熱間圧延に供されるが、その際の熱延板焼鈍は、結晶進行のために800℃以上とするのが有利であり、良好方位のゴス方位近傍粒を得るには、1050℃以上とするのが望ましい。
【0041】
さらに、冷間圧延の後、800℃以上、望ましくは1050℃以上で中間焼鈍を施すことが望ましい。ここで、熱延板焼鈍と中間焼鈍のいずれかを1050℃以上とすることによって、ゴス方に近い結晶粒が得られやすくなるとともに、表層付近の適正量の微細粒が発生しやすくなる。最終の冷間圧延にあっては、圧延温度を100〜260℃とし、冷間圧延途中で100〜250℃の範囲の時効処理を行うことが、良好なゴス組織を発達させる点で有利である。
【0042】
最終冷延後の再結晶焼鈍では、最終焼鈍後の粒径を30〜80μmの範囲とする。これは、粒径30μm以下の場合、二次再結晶粒の方位集積度が低下し、一方80μmを越えると二次再結晶が起こらず、圧延方向の磁束密度が低下するからである。
【0043】
その後、焼鈍分離剤を塗布することなく、50〜130Mpaおよび水素量60〜100vol%の雰囲気にて最終仕上げ焼鈍を行う。ここでの条件がこの発明の範囲の電磁鋼板を得るための最も重要な条件である。
すなわち、焼鈍分離剤を塗布しないとともに、巻き取り張力を適正に調節することでコイルの層間に適正な空間を設け、さらに最終仕上げ焼鈍時の水素量を60〜100 vol%とすることにより、最終仕上げ焼鈍中のコイルの層間に水素を到達しやすくして、この水素の効果で表面の微細粒の生成を促進する。すなわち、水素が最終仕上げ焼鈍の一次粒成長過程で鋼板表面に十分な濃度で存在する場合、窒素等が鋼中に進入してインヒビター(析出物)を形成するのを防止し、あるいは一旦形成されたインヒビターを分解することにより、表層部分の結晶粒の成長を促進するからである。
【0044】
ここで、上記の焼鈍分離剤を塗布しないことおよび、巻き取り張力を130MPa以下とすることは、コイルの層間に適正な空隙を確保するために必要である。一方、巻き取り張力が50MPaを下回ると、最終仕上げ焼鈍中のコイル強度が低下して形状の劣化を招く。巻き取り張力を50〜130MPaの範囲とするのは、コイルの全長の90%以上とするのが望ましい。これは、最終仕上げ焼鈍後のコイル形状改善のために、コイルの一部で130MPa以上の張力とすることも可能であるが、このような部分が10%以上となると、この発明の範囲外となる部分が増加して歩留りの低下を招くからである。
【0045】
また、最終仕上げ焼鈍中の水素量が60vol%を下回ると、最終仕上げ焼鈍中に表層の結晶粒の成長が阻害されて微細粒が残存しにくくなるため、60vol%以上とするのがよい。
ここで、最終仕上げ焼鈍の一次再結晶粒成長過程においては、表層粒の粗大化を促進した方が、二次再結晶粒の発生後に二次再結晶粒に蚕食されずに、適正量の微細粒を残存させることが可能になり有利である。なお、水素量を60vol%以上とするのは、表層粒の成長が起こり始める700℃以上とするのがよい。700℃未満の雰囲気については、特に限定されない。
【0046】
また、最終仕上げ焼鈍の到達温度としては、二次再結晶を生成させるためには800℃以上とする必要があり、微細粒の消失を防ぐためには900℃以下とする必要がある。そして、800℃〜900℃の滞留時間は、二次再結晶を完了させるとともに、適正な微細粒を残存させる観点から、10〜100時間の範囲とするのがよい。
【0047】
さらに、絶縁性確保の観点から塗布される絶縁コーティングは、打抜き性確保の観点から、有機系のコーティングが望ましいが、溶接性を重視する場合には、無機系のコーティングを適用するのがよい。
【0048】
上記の製造方法による電磁鋼板では、二次再結晶現象を利用することでゴス方位近傍方位の二次再結晶粒の成長により、高いL方向磁束密度およびL方向を磁化容易方向とする強い磁気異方性と、低いC方向鉄損とを同時に実現することが可能である。また、最終仕上げ焼鈍前の結晶粒径と、最終仕上げ焼鈍の温度および時間との条件により、製品板に適当量の微細粒を残存させるとともに、焼鈍分離剤を塗布することなく長時間の最終仕上げ焼鈍を行うことにより、表面を平滑化し、さらに無張力のコーティングを塗布することにより、従来の方向性電磁鋼板と比べて表面張力を大幅に低減している。これらの効果により、C方向とL方向における鉄損の比WC200/50/WL200/50を1.4以下(望ましくは1.2以下)とすることが可能である。上記電磁鋼板内部の微細粒は、C方向に磁化された場合の磁区構造の細分化の核となり、表面の平滑化と無張力はC方向への磁化の進行を円滑に進行する作用を有すると推定される。従って、これらの効果により圧延直角方向の鉄損が低下すると考えられる。
【0049】
【実施例】
実施例1
C:0.005mass%、Si:3.0mass%、Mn:0.08mass%およびSb:0.03mass%を含み、かつAl:30ppmおよびN:25ppmに低減した、鋼スラブを連続鋳造にて製造し、次いで1100℃で20分加熱後、熱間圧延により2.5mm厚の熱延板とした。この熱延板に、1000℃、60秒間の熱延板焼鈍を施した後、常温で冷間圧延を行って0.35mmの最終板厚としたのち、水素80vol%、窒素20vol%および露点35℃の雰囲気にて、925℃で30秒の再結晶焼鈍を行い、焼鈍分離剤を塗布せずに、コイル(a)は150MPa、コイル(b)および(c)は100MPa、そしてコイル(d)は60MPaの張力にて巻き取った。
【0050】
次いで、露点-30℃で、コイル(b)はAr50vol%および水素50vol%の混合雰囲気中、またコイル(a)、(c)、(d)はAr30vol%および水素70vol%の混合雰囲気中、にて、それぞれ常温から850℃までを50℃/hで昇温し、850℃で20時間保持する最終仕上げ焼鈍を行った。最終仕上げ焼鈍終了後、重クロム酸アルミニウム、エマルジョン樹脂およびエチレングリコールを混合したコーティング液を塗布し、300℃で焼き付けて製品とした。
また、比較材として同じ厚さの無方向性電磁鋼板を鋼板(e)として用意した。
【0051】
これらの製品板(a)〜(e)から圧延方向および圧延直角方向のエプスタイン試験片を採取し、各方向の磁気特性を測定した。その結果を表2に示す。
また、これらの材料から、図2に示す3相4極の磁極集中巻のブラシレスDCモータの固定子2を作製した。回転子1は表面磁石型とした。これらの電動機を回転数1500rpm、トルク3Nmで定常回転試験を行い、効率を求めた。表2に効率の測定結果を併記した。
【0052】
【表2】
【0053】
表2に示すように、この発明の電磁鋼板から上記の電動機に固定子2を製造した場合、従来の一方向性電磁鋼板から作製したモータに比べて高い効率が得られている。
【0054】
実施例2
上記実施例1と同じ素材から、図3に示す3相4極の埋込磁石型シンクロナスモータを作製した。これらの電動機を回転数2500rpm、トルク2Nmで定常回転試験を行い、効率を求めた。その結果を、表3に併記する。
【0055】
【表3】
【0056】
表3に示すように、この発明の電磁鋼板から上記の電動機に固定子を製造した場合、従来の一方向性電磁鋼板から作製したモータに比べて高い効率が得られている。
【0057】
【発明の効果】
この発明の分割型鉄心によれば、永久磁石を回転子に用いた回転機の固定子において、鉄損低減が可能であり、従来にも増して高効率の回転機の提供が可能となる。従って、この分割型鉄心を回転機へ適用すれば、エネルギー損失の低減に大きく寄与することになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 永久磁石を固定子に用いた回転機の固定子内部での磁束の流れを模式的に示した図である。
【図2】 表面磁石型のブラシレスDCモータ(分割鉄心型)の模式図である。
【図3】 磁石埋込型のシンクロナスモータ(分割鉄心型)の模式図である。
【符号の説明】
1 回転子
2 固定子
3 磁束の流れ
4 磁束の流れ
Claims (1)
- 回転子に永久磁石を用いる回転機の固定子を構成する分割型鉄心であって、該鉄心を構成する電磁鋼板が、Si:2.0〜8.0mass%および Mn : 0.005 〜 3.0mass %を含有し、磁化力200A/mにおける圧延方向および圧延方向と直角の方向の磁束密度をそれぞれBL2およびBC2とするとき、BL2が1.60T以上かつBC2/BL2が0.80以下であり、さらに最大磁化力200A/mおよび周波数50Hzにおける圧延方向および圧延方向と直角の方向の鉄損をそれぞれWL200/50およびWC200/50とするとき、WC200/50/WL200/50が1.4以下であり、該電磁鋼板の磁束密度が最も高い方向が前記分割型鉄心の歯の方向となることを特徴とする分割型鉄心。
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