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JP4242602B2 - 位相差フィルム - Google Patents
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JP4242602B2 - 位相差フィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は液晶表示装置用光学フィルムとして、プロピオン酸を置換基とするセルロースエステルを用いた位相差フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
代表的に反射型TFT液晶表示装置に見られるように、近年位相差フィルムは液晶表示装置に広く使用されている。位相差フィルムとしては一般に、ポリカーボネートフィルムが使用されている。
【0003】
位相差フィルムの用途はさらに広がっており、それにつれてより高度な機能が要求されてきている。それら要求のうち特に重要なものとして、可視光領域の任意の波長に対し1/4の位相差を有するものが要求されている。
【0004】
レターデーションが波長の1/4である1/4波長板として使用される位相差フィルムは、可視光の各波長に対してすべて1/4波長に相当する位相差(レターデーション)を有することが望ましい。すなわち、例示すれば、441.6nmの波長に対しては110.4nmの位相差、514.5nmの波長に対しては128.6nmの位相差、632.8nmの波長に対しては158.2nmの位相差を持つ1/4波長板が理想的であり、位相差フィルムを通過する直線偏光は波長に依らず、全て円偏光となり、通過する円偏光は全て直線偏光になる。しかし、現在一般に広く用いられているポリカーボネート位相差フィルムでは、短波長ほど位相差が大きく、このような位相差の波長依存性を示す位相差フィルムを使った反射型TFT液晶表示装置で黒表示をする場合、バックライトからの光を完全に遮光することができないため、コントラストや階調表示の低下を招いてしまう。
【0005】
これに対して、例えば特開平5−27118号公報、特開平5−27119号公報、特開平5−100114号公報、および特開平10−68816号公報では、2枚の位相差フィルムを所定の角度で貼合することにより、ポリカーボネートフィルムでも長波長ほど高い位相差を示す位相差フィルムができるとしている。
【0006】
しかしながら、これらの方法はフィルムの貼合工程が必要である上に、ポリカーボネート位相差フィルムに適用した場合には次のような問題点がある。すなわち、ビスフェノール成分がビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンである通常のポリカーボネート製フィルムは、その光弾性係数が70×10-122/Nと大きいため、位相差フィルムを製造する際の延伸工程において、張力の僅かな振れにより、位相差のバラツキが生じやすい。さらに、このような位相差フィルムを貼合する際の張力により所望する位相差がずれてしまうばかりでなく、貼合後の偏光板の収縮等により、位相差値が変化してしまう。
【0007】
そのため、比較的光弾性係数が小さい環状ポリオレフィン系高分子を用いた位相差フィルムの検討が種々なされ、特開2001−124925号公報や特開2001−126311号公報、特開平8−075921号公報、特開平2−042441号公報、特開平4−245202号公報などに位相差のバラツキが抑制された位相差フィルムが開示されている。しかし、これらの位相差フィルムは、粘着剤を用いて偏光フィルムやガラスと貼合する際、粘着剤との親和性が不十分で長期耐久性試験下で剥離や微小発泡が生じやすいといった問題点がある。また、位相差フィルムには高度のフィルム厚み精度が必要であり、一般にはソルベントキャスト法によりフィルム化されるが、該オレフィン系高分子は使用できる溶剤が限られており、特にトルエンやキシレンなどの溶剤を用いた場合、溶剤の沸点が高いために生産性に劣るなど、ポリカーボネートとは別の種々の問題を有している。
【0008】
これらを解決するため、特開2000−137116号広報では、セルロースアセテートを用い、単一のフィルムによって長波長ほど高い位相差を有する位相差フィルムが提案されている。しかし、セルロースアセテートは溶剤への溶解性が低いためソルベントキャスト法を用いる場合は選択できる溶剤が限られる。また、セルロースアセテートはソルベントキャスト法において一般に用いられる塩化メチレン単独では溶解しにくいため、塩化メチレンとメタノール等の混合溶剤を用いたり、単独の溶剤の場合には低濃度溶液を用いる必要がある。しかしながら、ソルベントキャスト法でフィルムを製造する場合、混合溶剤を用いると溶剤の回収が困難となり、また、低濃度溶液では乾燥に必要なエネルギーが多大となり、生産コストの増大を招きかねないという問題がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、単独の溶剤を用いたキャスト法により得られる単一のフィルムに主眼を置き、可視光領域において長波長ほど高い位相差を有し、かつ低光弾性係数である位相差フィルムの提供を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明者等は、鋭意検討した結果、特定の置換基を有するセルロースエステルが所期の目的を達成できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、セルロースアセテートプロピオネートのアセチルおよびプロピオニル置換物により形成された位相差フィルムであって、該セルロースアセテートプロピオネートのアセチル置換度(DSac)およびプロピオニル置換度(DSpr)が次の(I)式および( II )式を満足する位相差フィルムである。
2.5≦DSac+DSpr≦3.0(I)
2.5≦DSpr≦3.0( II
【0011】
また、本発明は、単独の溶剤にセルロースアセテートプロピオネートを溶解して調製した溶液をキャストして得られる位相差フィルムであって、該セルロースアセテートプロピオネートのアセチル置換度(DSac)およびプロピオニル置換度(DSpr)が次の(I)式および(II)式を満足する位相差フィルムである。
2.5≦DSac+DSpr≦3.0(I)
2.5≦DSpr≦3.0(II)
別の側面によれば、位相差フィルムの441.6nmの単色光に対するレターデーション(Re(441.6))と514.5nmの単色光に対するレターデーション(Re(514.5))および、632.8nmの単色光に対するレターデーション(Re(632.8))がRe(441.6)<Re(514.5)<Re(632.8)であることを満足することを、本発明の位相差フィルムは特徴とする。これにより、単一のフィルムでも広帯域において所望の位相差を得ることができ、好コントラストの表示が可能となる。
【0012】
さらにまた、別の側面よれば、514.5nmの単色光に対するレターデーション(Re(514.5))が5から1000nmであり、かつ光弾性係数が20×10-122/N以下であることを、本発明の位相差フィルムは特徴とする。これにより、偏光版との貼合等による張力に対する位相差変化の小さい位相差フィルムを得ることができる。
【0013】
なお、前記単独の溶剤としては、沸点が低く乾燥が容易で、火災等に対する安全性の高い塩化メチレンが好ましい。
【0014】
また、本発明の位相差フィルムは、少なくとも一軸方向に延伸することにより、所望する位相差を容易に付与できるものである。
【0015】
なお、本発明における置換度とは、以下の方法により測定した置換度である。
【0016】
<置換度の測定方法>
セルロースアセテートプロピオネートアセチル化度DSacおよびプロピオニル置換度DSprは、A. Blumstein, J. Asrar, R. B. Blumstein Liq. Cryst. Ordered Fluids 4. 311(1984)に記載の1H−NMRによるセルロースアセテートの置換度の測定方法を応用し、以下のように求めることができる。
【0017】
セルロース骨格中のプロトンを下式(1)
【0018】
【化1】
Figure 0004242602
【0019】
に示すように定義したとき、テトラメチルシラン(TMS)基準で下線aを付したH(以下Ha)は0.8から1.4ppm(領域A)、下線bを付したH(以下Hb)及び下線cを付したH(以下Hc)は2から2.5ppm(領域B)、1位〜6位の炭素に結合しているそれぞれのH(以下それぞれH1〜H2)は3から5.4ppm(領域C)にそれぞれ帰属される。領域A、領域B、領域Cのピーク群の面積をそれぞれA、B、Cとしたとき、
A=Ha
B=2Hb+3Hc
C=H1+H2+H3+H4+H5+2H6
が成立する。−OCOCH2CH3/OCOCH3/OH=x/y/zとすると、
上式は
3x=A
2x+3y=B
x+y+z=3C/7
と置き換えられ、x/y/zからDSac、DSprを求めることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
光学フィルムの代表的な成形方法として、樹脂を溶融してTダイなどから押し出してフィルム化する溶融押出法と、有機溶剤に樹脂を溶解して支持体上にキャストし加熱により溶剤を乾燥しフィルム化するソルベントキャスト法が挙げられるが、本発明の位相差フィルムは、厚み精度の良い光学フィルムが比較的容易に製造できるとの理由からソルベントキャスト法により得られる位相差フィルムである。厚み精度が悪いと、厚み変動に由来する凹凸がレンズのように働き、液晶表示装置に組み込んだ際の画像の歪み(所謂レンズ効果)の発生が懸念され、また、レターデーション(位相差)は複屈折と厚みの積で表されるため、レターデーション値の面内バラツキにも繋がるおそれがある。
【0021】
ソルベントキャスト法を採用する場合には、乾燥工程で蒸発する有機溶剤を回収しリサイクル使用することが好ましいが、混合有機溶剤を用いた場合には、回収設備の他に蒸留設備が必要となるため単独の溶剤の使用が望まれる。ここで言う、単独の溶剤とは、工業的に単独品として入手される溶剤のことを指し、混入している不純物が全くないことを指すものではない。
【0022】
本発明の位相差フィルムを得るために使用する単独の溶剤に特に制限はないが、乾燥効率の観点からは沸点が低い溶剤ほど好ましく、具体的には100℃以下の低沸点溶剤が好ましい。例えば、アセトン(沸点57℃)、メチルエチルケトン(沸点80℃)等のケトン類、酢酸エチル(沸点77℃)やプロピオン酸エチル(99℃)などのエステル系溶剤が使用可能である。また、塩化メチレン(沸点40℃)などのハロゲン化炭化水素系溶剤は樹脂材料を溶解しやすく沸点も低いため、好適な溶剤のひとつである。また、塩化メチレンは乾燥中の火災等に対する安全性も高いので、本発明の位相差フィルムを製造する際に用いる単独の溶剤として特に好ましい。
【0023】
本発明の位相差フィルムは、単独の溶剤にセルロースアセテートプロピオネートを溶解して調製した溶液をキャストして得られるフィルムであるが、該セルロースアセテートプロピオネートのアセチル置換度(DSac)およびプロピオニル置換度(DSpr)が次の(I)式および(II)式を満足することを特徴とする。
2.0≦DSac+DSpr≦3.0 (I)
1.0≦DSpr≦3.0 (II)
(I)式が意味するところは、次の通りである。
DSac+DSprはセルロース分子中に3個存在する水酸基が平均してどれだけエステル化されているかを表し、3の時は全ての水酸基がエステル化されていることを示す。全ての水酸基がアセチル基またはプロピオニル基のいずれかでエステル化された、DSac+DSprが3のセルロースアセテートプロピオネートからなるフィルムを一軸延伸すると、延伸方向と直交する方向が遅相軸の方向である負の光学異方性の位相差フィルムとなる。この位相差フィルムの位相差(レターデーション)の波長依存性は、短波長ほど位相差(絶対値)が大きい傾向を示す。DSac+DSprを3より小さくしていくと、延伸による位相差の発現のしやすさは低下し、約2.8〜2.9で延伸しても位相差が殆ど出ないフィルムとなり、さらにDSac+DSprを小さくすると、延伸方向が遅相軸の方向となり、正の光学異方性の位相差フィルムとなる。これに伴い、位相差フィルムの位相差の波長依存性は、長波長ほど位相差(絶対値)が大きい傾向を示し、DSac+DSprをさらに小さくすると、この傾向は失われていき、波長に依らずに一定の位相差を示すようになる。このような波長に依らずに一定の位相差を示すDSac+DSprは、DSacとDSprの比によって異なるが、概ね2.0〜2.3の範囲にある。そして、更にDSac+DSprを小さくすると、ポリカーボネート製の位相差フィルムと同様の、短波長ほど位相差(絶対値)の大さい位相差フィルムとなる。
【0024】
以上の理由により、DSac+DSprは3を越えることはなく、また、短波長ほど位相差が大きい傾向を示すと液晶表示装置の表示品位が低下するので2以上が適当である。DSac+DSprのより好ましい数値範囲は2.3以上2.9以下であり、更に好ましくは2.6以上2.8以下である。
【0025】
次に(II)式が意味するところを説明する。
上述した、波長依存性の観点から言えば、特開2000−137116号公報に開示されているように、セルロースの水酸基は、アセチル基で置換してもプロピオニル基で置換しても目的を達成できる。
【0026】
しかしながら、ソルベントキャスト法で厚み精度の良いフィルムを製膜するためには、高濃度溶液の調製が可能であることが望まれ、更には、単独の溶剤に高濃度で溶解することが望まれる。このような観点から、アセチル置換度(DSac)の高いセルロースアセテートプロピオネートよりも、プロピオニル置換度(DSpr)の高いセルロースアセテートプロピオネートの方が遙かに有機溶剤に対する溶解性が高く、特に塩化メチレンを用いる場合においては顕著な差が認められる。従って、プロピオニル置換度(DSpr)は高い方が好ましく、1.0以上3.0以下が適当であり、より好ましくは2.0以上2.9以下、更に好ましくは2.5以上2.8以下である。
【0027】
本発明に用いられるセルロースアセテートプロピオネートは、それ自体既知の方法で製造することができる。例えばセルロースを強苛性ソーダ溶液で処理してアルカリセルロースとし、これを無水酢酸とプロピオン酸無水物との混合物によりアシル化する。得られたセルロースエステルは置換度DSac+DSprがほぼ3であるが、アシル基を部分的に加水分解することにより、目的の置換度を有するセルロースアセテートプロピオネートを製造することができる。また、アシル化の際に無水酢酸とプロピオン酸無水物の比率を変えることにより、目的のプロピオニル置換度を得ることができる。
【0028】
更に、本発明に用いるセルロースアセテートプロピオネートはアセチル基およびプロピオニル基以外のその他の置換基を有していてもかまわない。このような置換基の例としてはブチレートなどその他のエステル基、アルキルエーテル基、アラアルキレンエーテル基などのエーテル基が挙げられる。
【0029】
本発明に用いられるセルロースアセテートプロピオネートの好ましい数平均分子量は5千から10万であり、より好ましくは1万から7万である。不必要に高い分子量は溶剤に対する溶解度を低下させる他、得られた溶液の粘度が大きすぎソルベントキャスト法に適さない他、熱成型を困難にするなどの問題を生じる。一方、あまりに低い分子量は得られたフィルムの機械的強度を低下させるので好ましくない。
【0030】
本発明の位相差フィルムを構成するセルロースアセテートプロピオネートは、一種類であってもかまわないが、必要に応じ別の高分子との2種類以上のブレンド体であってもかまわない。このような別の高分子としては、セルロースブチレートなど、その他のセルロースエステルや、メチルセルロース、エチルセルロースなどのセルロースエーテルなどを好適に用いることができる。
【0031】
分子中のエステル基の存在は、高分子の親水性を増大させるため、フィルム化時に水分が存在したままだと、得られるフィルム強度に好ましくない影響を及ぼすおそれがあるため、フィルム化に用いる樹脂やペレット、溶剤などを事前に乾燥しておくことが好ましい。
【0032】
また、フィルム化の際に、必要に応じて少量の可塑剤や熱安定剤、紫外線安定剤等の添加剤を加えてもよい。特に得られたフィルムが脆い場合、延伸などの加工特性を改善する目的で可塑剤を加えることは有効である。
【0033】
ソルベントキャスト法によりフィルム化する際、本発明のセルロースエステルを前記溶剤に溶解したのち、支持体にキャストし、乾燥してフィルムとする。溶液の好ましい粘度は10ポイズ以上50ポイズ以下、さらに好ましくは15ポイズ以上40ポイズ以下である。好ましい支持体としてはステンレス鋼のエンドレスベルトや、ポリイミドフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム等のようなフィルムを用いることができる。
【0034】
キャスト後の乾燥は、支持体に担持されたまま行うことも可能であるが、必要に応じて、自己支持性を有するまで予備乾燥したフィルムを支持体から剥離し、さらに乾燥することもできる。フィルムの乾燥は、一般にはフロート法や、テンターあるいはロール搬送法が利用できる。フロート法の場合、フィルム自体が複雑な応力を受け、光学的特性の不均一が生じやすい。また、テンター法の場合、フィルム両端を支えているピンあるいはクリップの距離により、溶剤乾燥に伴うフィルムの幅収縮と自重を支えるための張力を均衡させる必要があり、複雑な幅の拡縮制御を行う必要がある。一方、ロール搬送法の場合、安定なフィルム搬送のためのテンションは原則的にフィルムの流れ方向(MD方向)にかかるため、応力の方向を一定にしやすい特徴を有する。従って、フィルムの乾燥は、ロール搬送法によることが最も好ましい。また、溶剤の乾燥時にフィルムが水分を吸収しないよう、湿度を低く保った雰囲気中で乾燥することは、機械的強度と透明度の高い本発明フィルムを得るには有効な方法である。
【0035】
本発明の位相差フィルムの厚みは、10μmから500μmが好ましく、より好ましくは30μmから300μmである。フィルムの光線透過率は85%以上が好ましく、より好ましくは、90%以上である。また、フィルムのヘーズは2%以下が好ましく、より好ましくは1%以下である。
【0036】
位相差フィルムを得るためには、上記で得られたフィルムを公知の延伸方法により、少なくとも一軸方向に延伸して配向処理を行う。延伸方法としては一軸や二軸の熱延伸法を採用することができる。本発明のフィルムは延伸時に位相差が発現しにくく、従来のポリカーボネートと異なり、大きな延伸倍率を取る必要があるため、縦一軸延伸が好ましい。また、得られた位相差フィルムの光学的な一軸性が重要となる場合は、自由端一軸延伸が特に好ましい延伸方法である。また特開平5−157911号公報に示されるような特殊な二軸延伸を施し、フィルムの三次元での屈折率を制御することも可能である。位相差を付与するに際しても、配向による位相差が発現しにくい為、フィルム面内での位相差バラツキが小さいフィルムを得ることができるという特徴を有する。
【0037】
位相差フィルムの位相差値は5nmを超え1000nmまでの間で、目的に応じて選択することができる。位相差値はフィルム厚み、延伸温度や延伸倍率を制御することにより所望の値にすることができる。一般には延伸倍率は1.05倍から4倍であり、延伸温度はガラス転移温度Tgに対して、(Tg−30)℃から(Tg+30)℃までの範囲で選択される。特に好ましい延伸温度は(Tg−20)℃から(Tg+20)℃までの範囲である。この温度範囲とすることにより、延伸時のフィルム白化を防止でき、また、得られた位相差フィルムの位相差のバラツキを小さくすることができる。
【0038】
また、光弾性係数すなわち、応力負荷を受けたときの複屈折の変化率応力による位相差値の変化は、公知のポリカーボネートが70×10-122/Nであるのに対し、該セルロースエステルフィルムでは20×10-122/N以下である。そのため、液晶層や偏光板とともに貼り合わせた時の貼りムラ、バックライトや外部環境からの熱を受けることによる構成材料間の熱膨張差、偏光フィルムの収縮等によって生じる応力の影響に起因する位相差変化が小さく、特に大画面液晶表示装置用に好適である。
【0039】
位相差の波長依存性は、Re(514.5)/Re(441.6)で表される。ここで、Re(441.6)は、波長441.6nmの単色光で測定したフィルムの位相差を表し、Re(514.5)は波長514.5nmの単色光で測定したフィルムの位相差を表す。ビスフェノール成分としてビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを用いたポリカーボネートでこの値は1.06となり、長波長ほど低い位相差を示すのに対し、本発明位相差フィルムは、エステル置換基の置換度にも依存するが、0.8以上0.99以下、より好ましくは0.84以上0.90以下である。そして、Re(441.6)<Re(514.5)<Re(632.8)を満足する。本発明に関わるこのような位相差フィルムは、公知のポリカーボネートからなる位相差フィルムと比較し、位相差の波長依存性が好ましく、反射型TFT液晶表示装置用などに好適に用いることができる。
【0040】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
アセチル基の置換度が0.1、プロピオニル基の置換度が2.6、数平均分子量75000であるセルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカルCAP482-20)を塩化メチレンを溶剤として固形分濃度が15%になるように溶解し、ガラス上に流延し、乾燥して厚みが130μmである均一なフィルムを得た。得られたフィルムを152℃で95%延伸し、位相差フィルムを得た。この位相差フィルムの441.6nm、514.5nm、632.8nmにおける位相差を顕微偏光分光光度計(オーク製作所製 TFM−120AFT)を用い、回転検光法により測定し、位相差の波長依存性を求めた。また、光弾性係数は顕微偏光分光光度計(オーク製作所製 TFM−120AFT)により、514.5nmの測定波長を用いて測定した。光軸方向に幅1cmの短冊に切断したフィルムの一方を固定し、他方に500gの加重をかけ、単位応力による複屈折の変化量を算出することにより求めた。測定結果を表1にまとめた。
【0042】
参考例)アセチル基の置換度が0.1、プロピオニル基の置換度が2.4、数平均分子量25000であるセルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカルCAP482-0.5)を塩化メチレンを溶剤として固形分濃度が15%になるように溶解後、ガラス上に流延し、乾燥して厚みが99μmである均一なフィルムを得た。得られたフィルムを150℃で95%延伸し、位相差フィルムを得た。得られたフィルムに関して実施例1と同様に位相差および、光弾性係数を測定した。測定結果を表1にまとめた。
【0043】
(比較例1)
ビスフェノール成分としてビスフェノールAからなるポリカーボネート(帝人化成 C-1400)を、塩化メチレンを溶剤として固形分濃度が15%になるように溶解後、ガラス上に流延し、乾燥して厚みが65μmであるフィルムを得た。得られたフィルムを160℃で10%延伸し、位相差フィルムを得た。実施例1および2と同様に位相差および光弾性係数を測定した。測定結果を表1にまとめた。該フィルムはRe(441.6)<Re(514.5)<Re(632.8)を満たさず、また光弾性係数も大きいため、理想的な波長依存性のλ/4位相差フィルムとすることは、このフィルム単独では不可能である。
【0044】
(比較例2)
アセチル基の置換度が2.4であるセルロースアセテート(ダイセル化学工業L−30)を塩化メチレンを溶剤として固形分濃度が15%になるように溶解したところ、一部の固体が未溶解のまま残存した。攪拌開始から10時間後も、未溶解部分が残存し、塩化メチレンのみを溶剤とした場合、均一なフィルムを得ることはできなかった。
【0045】
(比較例3)
アセチル基の置換度が0.03、プロピオニル基の置換度が1.9、数平均分子量15000であるセルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル社製CAP504-0.2)を塩化メチレンを溶剤として固形分濃度が15%になるように溶解後、ガラス上に流延し、乾燥して厚みが70μmである均一なフィルムを得た。得られたフィルムを160℃で95%延伸し、位相差フィルムを得た。得られたフィルムに関して実施例1と同様に位相差および、光弾性係数を測定した。測定結果を表1にまとめた。該フィルムはRe(441.6)<Re(514.5)<Re(632.8)を満たさず、また光弾性係数も大きいため、理想的な波長依存性のλ/4位相差フィルムとすることは、このフィルム単独では不可能である。
【0046】
【表1】
Figure 0004242602
【0047】
【発明の効果】
本発明により、セルロースアセテート系の単一のフィルムで長波長ほど位相差が大きく、かつ低光弾性である位相差フィルムを得ることができる。また、該フィルムは塩化メチレンによるソルベントキャスト法を用いることができ、低コストで製造することができる

Claims (6)

  1. セルロース組成物のアセチルおよびプロピオニル置換物であるセルロースアセテートプロピオネートを用いた位相差フィルムであって、該セルロースアセテートプロピオネートのアセチル置換度(DSac)およびプロピオニル置換度(DSpr)が次の(I)式および( II )式を満足する位相差フィルム。
    2.5≦DSac+DSpr≦3.0(I)
    2.5≦DSpr≦3.0( II
  2. 単独の溶剤にセルロースアセテートプロピオネートを溶解して調製した溶液をキャストして得られる位相差フィルムであって、該セルロースアセテートプロピオネートのアセチル置換度(DSac)およびプロピオニル置換度(DSpr)が次の(I)式および( II )式を満足する位相差フィルム。
    2.5≦DSac+DSpr≦3.0(I)
    2.5≦DSpr≦3.0( II
  3. 441.6nmの単色光に対するレターデーション(Re(441.6))と514.5nmの単色光に対するレターデーション(Re(514.5))および、632.8nmの単色光に対するレターデーション(Re(632.8))がRe(441.6)<Re(514.5)<Re(632.8)を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の位相差フィルム。
  4. フィルムが少なくとも一軸方向に延伸されている請求項1から3のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
  5. 514.5nmの単色光に対するレターデーション(Re(514.5))が5から1000nmであり、かつ光弾性係数が20×10 -12 2 /N以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
  6. 前記単独の溶剤が塩化メチレンである請求項1から5のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
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