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JP4244129B2 - 消毒方法 - Google Patents
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JP4244129B2 - 消毒方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、消毒方法に係り、特に、優れた消毒効果を発揮することの出来る消毒液を用いて、医療用具、中でもコンタクトレンズや眼科用コンタクトミラー等を消毒する方法に関するものである。
【0002】
【背景技術】
従来より、コンタクトレンズ(CL)は、非含水性CLと含水性CLとに分類されたり、また、ハードCLとソフトCLとに分類されたりしている。而して、それらの何れのCLにあっても、それが継続して使用される場合において、レンズを眼から外して保存している間に、かかるレンズ表面に付着した細菌等の微生物が増殖する恐れがあり、そしてそれらの微生物によって、眼に対して感染症等の悪影響がもたらされることがあるところから、一般に、CLに対しては、その装用前において消毒を施すことが必要とされているのであり、特に、ソフトCLの場合には、細菌等の感染の危険性が高いために、装用前の消毒が極めて重要となっている。
【0003】
そして、CLを消毒する方法としては、これまで、煮沸消毒器を用いた熱消毒法と、殺菌剤乃至は防腐剤を用いて行なう化学的消毒法が、主として採用されてきているが、前者の熱消毒法においては、長い時間を要する煮沸操作が必要とされるために、近年においては、後者の化学的消毒法が広く用いられるようになっている。
【0004】
ところで、そのような化学的消毒法においては、所定の殺菌/防腐剤を含有せしめてなるCL用の液剤が用いられ、それにCLが浸漬せしめられて、目的とする消毒処理が施されることとなるのであるが、このような液剤に含有される殺菌/防腐剤たる薬品としては、これまでに、各種のものが提案されており、例えば、クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、チメロサール等が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0005】
しかしながら、かかる化学的消毒方法において、充分な消毒効果を得るべく、上記に例示せる如きクロルヘキシジン等の殺菌/防腐剤(薬品)を高濃度において含有する液剤を用いる場合にあっては、そのようなクロルヘキシジン等の殺菌/防腐剤が分子レベルにおいてCLに吸着され易いものであることに起因して、レンズ表面の濡れ性が低下する等、レンズ物性や形状が変化したり、場合によっては、その装用時に、アレルギー反応等の眼障害が惹起される恐れがあり、またその一方で、レンズ物性及び形状の保持や眼に対する安全性を重視して、薬品として作用する殺菌/防腐剤の使用濃度を低く抑えた液剤を使用すると、当然、消毒作用が低下することは免れ得ず、その結果、微生物によるCLの汚染が惹起されるようになる等の理由から、そのような液剤の取扱いに際しては、殺菌/防腐剤の濃度等に細心の注意を払わなければならず、それによって、消毒処理作業が著しく面倒なものとなっているのである。
【0006】
また、化学的消毒法で用いられる殺菌/防腐剤としては、過酸化水素もよく知られているのであるが、所望とする消毒効果を得るためには、通常、3%(3万ppm)程度の濃度が必要であると共に、消毒後においては、CLの表面や内部に残留する過酸化水素を分解して無毒化せしめる中和処理が必要となる。即ち、過酸化水素が残留していると、例え僅かな量でも、眼に重大な障害をもたらす危険性があるために、従来から、生理食塩水で濯いだり、白金黒等の金属触媒や、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ピルビン酸等の還元剤、或いはカタラーゼ、ペルオキシダーゼ等の酵素触媒等を用いることにより、残存する過酸化水素を完全に分解除去する中和処理が実施されているのである。従って、このような過酸化水素を用いる化学消毒法にあっても、消毒後における中和処理によって、消毒処理作業が著しく煩雑なものとなっていたのである。
【0007】
このため、本願出願人にあっては、かかる問題に鑑みて種々検討した結果、単に、過酸化水素のみを含有する消毒液中に、CL等の被消毒物品を浸漬せしめ、そしてその状態下において、消毒液に所定波長の光を照射することによって、過酸化水素濃度による消毒効果が効果的に向上せしめられると共に、残存過酸化水素の中和処理をする必要がなくなることを知見し、別途、出願を行なっている(特願2002−236242号)。しかしながら、本発明者が、そのような消毒手法について更なる検討を加えたところ、先に提案の手法とは異なる新しい消毒方法を見出し、それによって優れた消毒効果が実現され得ることが、明らかとなったのである。
【0008】
【特許文献1】
特開昭52−109953号公報
【特許文献2】
特開昭62−153217号公報
【特許文献3】
特開昭63−59960号公報
【0009】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、簡便で、且つ優れた消毒効果を発揮することが出来る消毒方法を、提供することにある。
【0010】
【解決手段】
そして、本発明は、上述の如き課題を解決するために為されたものであって、その要旨とするところは、水系媒体中に、1000ppm以下の過酸化水素と金属−EDTA錯体とを含有せしめてなる消毒液を用い、該消毒液中に、消毒の施されるべき物品を浸漬せしめた後、該被消毒物品を浸漬した消毒液に対して、更に、光源として発光ダイオードを用いて、可視光を照射することにより、かかる被消毒物品の消毒を行なうことを特徴とする消毒方法にある。
【0011】
要するに、かくの如き本発明に係る消毒手法にあっては、消毒液として、水系媒体中に、1000ppm以下の過酸化水素と金属−EDTA(エチレンジアミン四酢酸)錯体とが組み合わされて、含有せしめられたものが採用され、そして、そのような消毒液中に、消毒の施されるべき物品(被消毒物品)を浸漬するようにしているところから、過酸化水素の濃度が1000ppm以下という低濃度であっても、過酸化水素による殺菌乃至は消毒作用、即ち、過酸化水素の分解時に生成されるヒドロキシラジカル(・OH)の強い酸化力により、細菌等の有害微生物等を殺菌する作用が、金属−EDTA錯体にて顕著に向上せしめられ得て、極めて高い殺菌効果(消毒効果)が、効果的に得られるようになっているのである。
【0012】
しかも、過酸化水素の濃度は、低濃度において含有せしめられているところから、消毒液中の過酸化水素の殆んどが効果的に分解され得て、消毒後における残存過酸化水素の中和処理を省略することも出来るようになる。
【0013】
なお、この本発明に従う消毒方法における一つの望ましい態様によれば、前記過酸化水素の濃度が10〜500ppmである構成が、好適に採用され得るのである。このように、本発明においては、低濃度であっても、優れた殺菌効力が有利に確保され得るようになっているのである。
【0014】
また、本発明にあっては、前記金属−EDTA錯体の濃度としては、10〜1200ppmが好適に採用され、更に、金属−EDTA錯体としては、EDTA Fe・Naが、好適に採用されることとなる。
【0015】
加えて、本発明に従う消毒方法によれば、前記被消毒物品を浸漬せしめた前記消毒液に対して、更に、発光ダイオード(LED)を用いて可視光を照射することが望ましく、かかる可視光の照射によって、光を受けた過酸化水素が短時間で効果的に分解せしめられ、以て、より一層優れた殺菌効力が実現され得ると共に、生体にとって有害な過酸化水素が、強制的に分解せしめられるところから、消毒後において、過酸化水素の中和処理が不要となるといった利点も享受され得るようになる。
【0016】
しかも、照射光として、可視光が採用されているところから、UV光等を照射する場合に比して、光照射装置の軽量化や低電力化を図ることが可能となり、また、消毒操作を実施する際において、光照射装置の誤作動や誤使用による網膜への悪影響を避けることも出来るようになる。
【0017】
さらに、本発明に従う他の好ましい態様の一つによれば、前記可視光の照射に際して、前記消毒液を、3〜10mmの深さとなるように所定の容器に収容する一方、該消毒液中に、消毒の施されるべき物品を浸漬せしめ、そして、少なくとも該消毒液の深さ方向に光照射を行なうようにすることが、望ましい。このように、3〜10mmという比較的に浅い深さとなるように消毒液を収容して、その深さ方向に、所定波長の光を照射するようにすれば、かかる消毒液中に含有、溶解せしめられている過酸化水素に対して、光が万遍なく良好に照射されることとなって、過酸化水素がより一層効果的に分解せしめられることとなるのである。
【0018】
なお、前記照射光としては、可視光の中でも、390〜600nmの波長の光がより一層望ましく、このような波長の光を採用することによって、上述せるように、光照射装置の軽量化や低電力化を図ることが出来ると共に、消毒効果を有効に発揮せしめることが可能となる。
【0019】
また、本発明に従う消毒方法に用いられる前記消毒液にあっては、その浸透圧が、250〜350mOsmであることが望ましく、これによって、コンタクトレンズ等の被消毒物品に悪影響が及ぼされるようなことが有利に防止され得ると共に、眼等の生体への安全性がより一層高度に確保されることとなる。
【0020】
さらに、本発明に従う消毒方法において、前記消毒液には、界面活性剤が、必要に応じて、更に含有せしめられてもよく、かかる界面活性剤にて、消毒液に対して、洗浄効果を付与することが出来る。
【0021】
そして、本発明に従う消毒方法の別の好ましい態様の一つによれば、前記被消毒物品として、医療器具、例えば、コンタクトレンズや眼科用コンタクトミラー等を例示することが出来、その中でも、特に、コンタクトレンズが有利に消毒され得るのである。
【0022】
【発明の実施の形態】
要するに、上述の如き本発明に従う消毒方法は、精製水等の水系媒体中に、1000ppm以下の過酸化水素と金属−EDTA錯体を含有せしめてなる消毒液を用いて、そのような消毒液中に、消毒の施されるべき物品、例えば、コンタクトレンズや眼科用コンタクトミラー等の医療用具を浸漬せしめることによって、該消毒液中において被消毒物品を有利に消毒せしめ得るようにしたものであって、特に、消毒液として、低濃度の過酸化水素と金属−EDTA錯体とが組み合わされたものを採用しているところに、大きな特徴が存している。
【0023】
具体的には、かくの如き本発明に係る消毒液中に含有、溶解せしめられる過酸化水素(H22)は、従来より殺菌剤として用いられているものであり、かかる過酸化水素の分解によって生成するヒドロキシラジカル(・OH)の強い酸化作用によって、有害な微生物等が殺菌せしめられるのである。なお、そのような過酸化水素にて、充分な消毒効果を確保するためには、通常、3%(3万ppm)程度の濃度が必要とされているのであるが、本発明においては、後述する金属−EDTA錯体が組み合わされるところから、かかる過酸化水素の濃度が、1000ppm以下、更に好ましくは、10〜500ppmの低い濃度とされ得るのである。
【0024】
なお、かかる消毒液中における過酸化水素の濃度が、1000ppmを超える場合には、従来と同様に、充分な消毒効果が得られるものの、分解されずに残存する過酸化水素が存在し、消毒の施される物品(被消毒物品)として、CLを採用すると、消毒後において、CLの表面や内部に過酸化水素が残留することとなって、眼に重大な障害が惹起される等といった眼への悪影響が懸念されるところから、残存する過酸化水素を分解して無毒化せしめる中和処理が不可欠となり、消毒処理作業が煩雑となる。
【0025】
一方、上述せる如き過酸化水素と共に消毒液に含有せしめられる金属−EDTA錯体は、過酸化水素の分解を促進せしめて、ヒドロキシラジカルを効果的に生成せしめるために用いられるものであって、そのような作用を有するものであれば、特に限定されるものではないものの、金属−EDTA錯体としては、例えば、過酸化水素の分解反応の一つであるフェントン反応を生じ得る、鉄イオンや、ニッケルイオン、銅イオン等の金属イオンのEDTA錯体、例えば、Fe−EDTA錯体や、Ni−EDTA錯体、Cu−EDTA錯体等が好適に使用され得る。そして、このような金属−EDTA錯体が、過酸化水素が含有せしめられた消毒液中に添加せしめられることによって、過酸化水素の分解が促進されて、消毒液中のヒドロキシラジカル濃度が高められ、過酸化水素の濃度が1000ppm以下であっても、優れた殺菌・消毒作用が発揮され得るようになるのである。
【0026】
このように、過酸化水素と金属−EDTA錯体とを組み合わせることで、過酸化水素による殺菌作用が可及的に高められて、極めて効率の高い消毒効果が得られるようになっているのである。従って、金属−EDTA錯体を添加しない過酸化水素のみを使用する従来手法に比して、生体に悪影響を及ぼす過酸化水素の濃度を低くすることが可能となり、かかる過酸化水素の濃度を、1000ppm以下とせしめても、充分な効果が発揮され得るようになっているのである。そして、そのような濃度範囲の中でも、特に、10〜500ppm程度の低い過酸化水素濃度を採用すれば、消毒液中に含有せしめられる過酸化水素の殆どが分解せしめられ得て、残存する過酸化水素の量が極微量となるところから、従来から過酸化水素を含有する消毒液を使用する際に一般に必要とされていた中和処理が不要となり、経済性及び消毒作業性が良好となるといった利点が享受され得るようになるのである。
【0027】
なお、過酸化水素の分解を促進する金属−EDTA錯体の濃度としては、10〜1200ppm、更に好ましくは、100〜1000ppmが望ましい。なぜならば、金属−EDTA錯体の濃度が10ppmに満たない場合には、金属−EDTA錯体の添加による効果が充分に発揮され得ないからであり、また、1200ppmを超えて添加しても、更なる殺菌効果は得られず、経済性が悪化することとなるからである。
【0028】
また、かくの如く、過酸化水素と金属−EDTA錯体とを適切な量において含有せしめてなる消毒液には、細菌等の殺菌とは別に、被消毒物品の洗浄を目的として、更に界面活性剤が、必要に応じて含有せしめられていてもよい。かかる界面活性剤としては、従来から、CL用液剤等に一般的に用いられている、公知のアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤及びカチオン系界面活性剤の何れもが、有利に採用され得、その添加によって、消毒液には、脂質の除去作用等の洗浄効果が付与されることとなる。
【0029】
加えて、本発明に採用される消毒液には、更に必要に応じて、通常の消毒液の調製において使用されている公知の各種の添加成分、例えば、キレート化剤、緩衝剤、増粘剤、防腐剤、殺菌剤、酸化剤、及び等張化剤等が組み合わされて含有せしめられても、何等差し支えない。なお、それらの各成分は、何れも、生体に対して安全なものであると共に、上述せる如き殺菌効果を阻害しないものであり、また、その効果を損なわない量的範囲において、それぞれ使用されることとなる。
【0030】
なお、そのような消毒液に必要に応じて含有せしめられる成分のうちの一つたるキレート化剤は、一般に、被消毒物品に対するカルシウム等の金属イオンの沈着防止効果を奏するものであって、具体的に、そのような成分としては、エチレンジアミン四酢酸、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、フィチン酸及びそれらの塩(例えば、ナトリウム塩)等を例示することが出来る。また、緩衝剤は、被消毒物品の物性や形状の保護等を目的として、消毒液のpHを適度に調整するために用いられるが、かかる緩衝剤の代表的なものとしては、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、アスコルビン酸、マレイン酸、グルコン酸、リン酸、ホウ酸、グリシンやグルタミン酸等のアミノ酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等の酸や、それらの塩(例えば、ナトリウム塩)等を例示することが出来る。
【0031】
さらに、消毒液の粘度を調整するために用いられる増粘剤としては、ポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド及びその加水分解物、ポリアクリル酸、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、キサンタンガム、アラビアガム、ガールガム等の粘性基剤が挙げられる。更にまた、防腐剤や殺菌剤、酸化剤としては、本発明に採用される過酸化水素の他にも、防腐乃至は殺菌効力を有する従来から公知の各種の化合物が添加され得るのである。例えば、酸化剤としては、オゾン水、過酸化ナトリウム、過酸化マグネシウム、酸化銀等の過酸化物を例示することが出来、そのような酸化剤(過酸化物)が、消毒液に更に含有せしめられることによって、より一層優れた消毒効果が得られるようになるのである。
【0032】
加えて、本発明に採用される消毒液にあっては、かかる消毒液によって処理された被消毒物品の表面に、該消毒液が残留付着したまま使用されるようなことがあっても、生体に対して悪影響が惹起され得ないように、その浸透圧が250〜350mOsmとされていることが望ましい。このため、そのような所望の浸透圧に調整すべく、消毒液には、塩化ナトリウムや塩化カリウム等の、従来から公知の各種の等張化剤が、適当な量において、更に添加、含有せしめられることが望ましい。例えば、等張化剤として塩化ナトリウムが採用される場合には、消毒液の全重量に対して、0.7〜1.2重量%の割合となる量において、好ましくは0.8〜1.1重量%の割合となるようにして、用いられることとなる。これによって、例えば、被消毒物品としてCLを消毒した場合、消毒液の浸透圧が、涙液の浸透圧と略同等とされるところから、表面に消毒液が残留付着したCLがそのまま装用されて、眼内に消毒液が入るようなことがあっても、装用者の眼に対する刺激は、有利に低減され得るのである。
【0033】
また、上述せる如き各種の成分が含有せしめられる水系媒体としては、水道水や精製水、蒸留水等の水そのものの他にも、水を主体とする溶液であれば、例えば、生理食塩水や、CL用保存液や洗浄液等の公知の水系液剤を利用することも可能であることは、言うまでもないところである。
【0034】
そして、本発明にあっては、以上のような各種の成分が適宜に添加、含有せしめられた消毒液を用い、その消毒液中に、CL等の被消毒物品を浸漬せしめることにより、かかる被消毒物品の消毒処理が実施されるのである。
【0035】
すなわち、本発明に採用される消毒液は、過酸化水素と共に、金属−EDTA錯体が含有せしめられているところから、消毒液中の過酸化水素が徐々に分解する従来の消毒液とは異なり、過酸化水素が効果的に分解せしめられることとなり、このため、該消毒液中のヒドロキシラジカル濃度が上昇せしめられることとなって、かかるヒドロキシラジカルの強い酸化力により、該消毒液中に存在する有害微生物等が極めて効果的に殺菌され、かかる消毒液中に浸漬された被消毒物品の消毒処理が、有利に実現され得るのである。
【0036】
このように、本発明にあっては、上述せる如き消毒液中に、被消毒物品を浸漬せしめるだけで、充分な消毒効果が得られるのであるが、被消毒物品を浸漬せしめた消毒液に対して、更に、所定の光を照射すれば、かかる光の照射によって、光を受けた過酸化水素が短時間で効果的に分解せしめられ、更に優れた消毒効果を得ることが出来る。
【0037】
また、所定の光を照射するに際しては、消毒液を、通常、3〜10mmの深さ乃至は厚さとなるように所定の容器に収容すると共に、そのような深さ(厚さ)の消毒液中に、被消毒物品を浸漬せしめ、そして、少なくとも、かかる消毒液の深さ方向乃至は厚さ方向に、光照射を行なうようにすることが、更に望ましい。このように、比較的に浅い深さ(厚さ)となるように消毒液を収容して、その深さ(厚さ)方向に、光照射を行なえば、かかる消毒液中に含有、溶解せしめられている過酸化水素に対して、光が万遍なく充分に照射されることとなって、過酸化水素がより一層効果的に分解せしめられ、更に優れた殺菌効力が発揮され得るようになるのである。なお、かかる消毒液の深さ(厚さ)が、3mmに満たない場合には、消毒液量が少量となるところから、過酸化水素量も少なくなって、充分な消毒効果を得ることが困難となったり、被消毒物品によっては、それを完全に浸漬することが出来ず、消毒され得ない部分が発生する恐れがある。また一方、消毒液の深さ(厚さ)が、10mmを超えるようになると、消毒液中の過酸化水素に、光が充分に照射され得なくなる恐れがある。
【0038】
また、そのような光照射に際して使用される、前記所定の容器としては、特に限定されるものではなく、被消毒物品を収容し得る大きさを有すると共に、且つ消毒液を3〜10mmの深さ乃至は厚さとなるように収容し得、且つ少なくともその深さ方向乃至は厚さ方向において光の通過を許容するものであれば、従来から公知の各種の容器が適宜に選択されて用いられることとなる。より好適には、複数の方向より光照射が実施され得るように、光透過性材料からなる容器が有利に用いられ得るのであり、そのような容器を用いて、深さ方向乃至は厚さ方向及び、それ以外の方向から光照射を施すことによって、光の照射効率を効果的に高めて、消毒効果をより一層有利に発現せしめることが可能となる。
【0039】
ところで、かかる本発明手法において、被消毒物品を浸漬せしめた消毒液に照射する光としては、過酸化水素を分解せしめることが可能な光であれば良いのであるが、本発明においては、可視光、中でも、390〜600nm波長の光を有するものが、好適に採用されることとなるのである。なお、そのような可視光を照射するための光源としては、発光ダイオード(LED)が挙げられ、そのような光源を用いれば、UV光等の他の波長を採用する場合に比して、光照射装置の軽量化や低電力化を図ることが可能となる。
【0040】
た、光の強度にあっても、特に限定されるものではないものの、小さくなり過ぎると、光照射による効果が充分に発揮せしめられなくなり、また、大き過ぎると、消毒液中に浸漬せしめられた被消毒物品に悪影響、例えば、CLの場合には、黄変等のレンズの変色や、紫外線吸収能の低下等の劣化が惹起される恐れがあるところから、使用する光源に応じて、適宜に設定されることが望ましいのである。
【0041】
さらに、目的とする被消毒物品の消毒を行なう時間は、求められる消毒の程度に応じて、被消毒物品の種類等を考慮しつつ、適宜に決定されるものであるが、所期の消毒効果を充分に得るためには、通常、光照射無しの場合に10分以上の浸漬が行なわれ、また光照射有りの場合には5分以上の保持時間乃至は照射時間が必要とされ、更に、消毒時間の上限としては、消毒作業の能率の向上を図る上で、光照射の有無に拘わらず、通常、12時間、好適には6時間程度とされることとなる。
【0042】
このように、本発明手法に従えば、消毒液の取扱いに困難を伴うことなく、被消毒物品を簡便に且つ効果的に消毒することが出来るのである。
【0043】
なお、本発明に従って消毒処理の施された被消毒物品は、通常、消毒液中から取り出されて、使用されることとなるのであるが、その際、消毒液として、過酸化水素の濃度が、特に上述せる如き範囲(10〜500ppm)内に調整されたものを採用したものを用いた場合には、消毒液中に残存する過酸化水素量が極めて少なく、限りなく零に近いところから、過酸化水素の中和処理を実施する必要はなく、そのまま使用しても、或いは生理食塩水等にて濯いだ後に使用するようにしても、何等差支えない。
【0044】
ところで、上述の如き消毒処理の対象となる被消毒物品としては、前述せるように、医療用具、中でもコンタクトレンズや眼科用コンタクトミラー等が例示されるのであるが、本発明においては、これらの中でも、特に、コンタクトレンズが極めて効果的に消毒され得るのである。また、かかるコンタクトレンズにあっては、その種類が何等限定されるものではなく、例えば、低含水、高含水等の全てに分類されるソフトコンタクトレンズ、及びハードコンタクトレンズがその対象となり得るものであって、コンタクトレンズの材質等が、本発明の適用に際して何等問われることはない。
【0045】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を含む幾つかの実験例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実験例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0046】
−消毒液試料の調製−
先ず、過酸化水素(H22)、金属イオン、金属−EDTA錯体を、下記表1に示される濃度となるように、別に用意した塩化ナトリウムを0.9重量%の濃度において含む滅菌済生理食塩水(NaCl水溶液)を用いて調製し、実験例1〜12に係る消毒液試料を、準備した。なお、金属イオンは、塩化鉄(III) を溶解せしめることにより、更に、金属−EDTA錯体は、EDTA Fe・Na錯体を、溶解せしめることにより、消毒液中に、それぞれ導入した。また、得られた消毒液試料の浸透圧を確認したところ、何れも、280〜290mOsm程度であった。
【0047】
−消毒効果試験−
上述の如くして得られた各消毒液試料を用いて、消毒(殺菌)効果試験を行なった。具体的には、先ず、各消毒液試料を、滅菌済の内径9cmのシャーレに、8mm程度の深さとなるように入れた後、それに、供試菌としてのセラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens :ATCC 13880)を、106 cfu/mLとなるように接種した。次いで、実験例3,4,6,9,10,12に係る消毒液試料の入ったシャーレには、下記表1に示されるように、青色ダイオード(波長:470nm)或いは蛍光灯を用いて、可視光を、シャーレ上面から液の深さ方向に、1時間照射せしめる一方、実験例1,2,5,7,8,11に係る消毒液試料の入ったシャーレは、暗所で、1時間保持した。
【0048】
その後、各消毒液試料について、それぞれ、生菌数を測定した。即ち、それぞれの試料の一定量を取り出し、次いでその取出物を滅菌済生理食塩水を用いて希釈することにより、希釈サンプルを調製した後、平板塗抹法により、その得られた希釈サンプル1mL中の生菌数を測定した。そして、上記の測定にて得られた生菌数の値に基づいて、光照射後における各消毒液試料1mL中の生菌数を算出した後、それより、下記の計算式に従って、対数に換算した菌減少量(log reduction )を求め、その結果を、下記表1に示した。
菌減少量=log(供試菌接種直後の試料1mL中の生菌数)
−log(光照射後の試料1mL中の生菌数)
【0049】
【表1】
Figure 0004244129
【0050】
上記表1の結果からも明らかなように、過酸化水素と共に、金属イオン又は金属−EDTA錯体が含有せしめられた実験例1〜6に係る消毒液試料にあっては、その何れにおいても、菌減少量(log reduction )の値が、2.7以上となっており、強い殺菌効力が発現され得ていることが認められ、かかる消毒液に被消毒物品を浸漬せしめれば、高い消毒効果が得られることが、分かる。特に、LEDにて可視領域の光を照射した実験例3にあっては、極めて著しい殺菌効果が得られることが、分かる。
【0051】
これに対して、実験例7〜12に係る消毒液試料にあっては、FeイオンやFe−EDTA錯体、或いは過酸化水素が添加されていないところから、実験例1〜6に比して、菌減少量の値が低くなっていることが認められるのである。
【0052】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明に従うコンタクトレンズの消毒方法にあっては、過酸化水素と金属−EDTA錯体とを組み合わせ、それらを含有せしめてなる消毒液を用いて、それに被消毒物品を浸漬せしめるようにしているところから、過酸化水素による消毒作用が極めて効果的に高められて、優れた消毒効果が有利に発揮され得るのである。
【0053】
また、被消毒物品を浸漬せしめた状態で、可視光を照射すれば、より一層高度な消毒効果が実現され得るのである。
【0054】
更に、過酸化水素が効果的に分解せしめられるところから、従来に比して、過酸化水素の濃度を極めて低くすることが出来ると共に、消毒処理後における過酸化水素の中和処理も必ずしも必要とされ得なくなるといった利点も享受され得ることとなる。

Claims (9)

  1. 水系媒体中に、1000ppm以下の過酸化水素と金属−EDTA錯体とを含有せしめてなる消毒液を用い、該消毒液中に、消毒の施されるべき物品を浸漬せしめた後、該被消毒物品を浸漬した消毒液に対して、更に、光源として発光ダイオードを用いて、可視光を照射することにより、かかる被消毒物品の消毒を行なうことを特徴とする消毒方法。
  2. 前記過酸化水素の濃度が、10〜500ppmである請求項1に記載の消毒方法。
  3. 記金属−EDTA錯体の濃度が、10〜1200ppmである請求項1又は請求項2に記載の消毒方法。
  4. 前記金属−EDTA錯体が、EDTA Fe・Na錯体である請求項1乃至請求項3の何れかに記載の消毒方法。
  5. 前記可視光の照射に際して、前記消毒液を、3〜10mmの深さとなるように所定の容器に収容する一方、該消毒液中に、消毒の施されるべき物品を浸漬せしめ、そして、少なくとも該消毒液の深さ方向に光照射を行なう請求項1乃至4の何れか一つに記載の消毒方法。
  6. 前記照射光が、390〜600nmの波長の光である請求項1乃至5の何れか一つに記載の消毒方法。
  7. 前記消毒液の浸透圧が、250〜350mOsmである請求項1乃至請求項の何れか一つに記載の消毒方法。
  8. 前記消毒液が、界面活性剤を更に含有している請求項1乃至請求項の何れか一つに記載の消毒方法。
  9. 前記被消毒物品が、コンタクトレンズである請求項1乃至請求項の何れか一つに記載の消毒方法。
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