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JP4244776B2 - 塗膜付き樹脂成形品からの熱可塑性樹脂の回収方法、熱可塑性樹脂組成物及び熱可塑性樹脂成形品 - Google Patents
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JP4244776B2 - 塗膜付き樹脂成形品からの熱可塑性樹脂の回収方法、熱可塑性樹脂組成物及び熱可塑性樹脂成形品 - Google Patents

塗膜付き樹脂成形品からの熱可塑性樹脂の回収方法、熱可塑性樹脂組成物及び熱可塑性樹脂成形品 Download PDF

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Description

本発明は、塗膜付き樹脂成形品から、物性や外観性の低下を抑えて高品質の熱可塑性樹脂を回収する方法と、この方法で回収された回収熱可塑性樹脂を利用した、耐衝撃性及び外観性に優れた熱可塑性樹脂組成物及び熱可塑性樹脂成形品に関する。
自動車外装部品などの高度な耐久性と外観性が要求される樹脂製品は、PP、ABS、変性PPE、PA等の熱可塑性樹脂の成形品よりなる基材に、ウレタン系などの熱硬化性樹脂を主成分とする塗料が塗装され、大規模な大量生産が行われている。
このような熱可塑性樹脂基材に熱硬化性樹脂塗膜を形成した製品は、塗装工程で発生する不良品或いは使用済み製品から熱可塑性樹脂を回収して再利用しようとした場合、塗膜が熱可塑性ではないために、塗膜の熱硬化性樹脂が再生原料中に異物として分散、残留する。そして、この熱硬化性樹脂塗膜の混入が、応力集中点として働き、再利用されたものではない新規の熱可塑性樹脂(以下「バージン材」と称す。)に比べて、衝撃強度や引っ張り強度などの物性を低下させたり、外観不良の原因となったりする。また、たとえ素地の状態で外観不良が見られなくても、更に成形品に塗装を施した場合には、異物が表面に浮き出て平滑性を阻害することで外観不良を引き起こすことがある。
従って、塗膜付き樹脂成形品を再利用する場合には、塗料成分を熱可塑性樹脂に変更するか、塗膜を剥離、分別する方法が考えられる。しかし、前者においては塗装性能に制約を受けるため現実的ではない。そこで、従来においては、塗膜付き樹脂成形品から塗膜を効果的に剥離、分別する技術や、逆に回収樹脂中に微細分散させる技術が研究されてきた。
従来、塗膜付き樹脂成形品から塗膜を除去することなく再利用する方法として、特開2002−86491号公報には、再生材料をコア層とし、バージン材をスキン層とするサンドイッチ成形を行うことが提案されているが、この方法では、塗膜付き樹脂成形品の破砕材よりなる再生材料中に混入する塗膜片粒子が大きいために、成形機のノズルを詰まらせたり、成形品の外観不良を生じさせたりする。また、塗膜付き樹脂成形品を微粉砕して用いても、物性の低下は避けられず、成形品の強度や信頼性に問題を生じる可能性が有る。
一方、塗膜付き樹脂成形品から塗膜を剥離除去して再利用する技術として、特開2001−353721号公報、特開2000−27193号公報、特開平8−258044号公報に、塗膜を摩擦力によって機械的に剥離する方法が提案されている。しかし、この方法では、塗膜剥離時の剪断力が低いと塗膜が十分に剥離せず、剪断力を高くすると塗膜と基材が微粉砕された状態で混合され、更に静電気を帯びて互いに付着するため分別が困難となる。
特開平8−290427号公報には、塗膜と基材の樹脂との混合微粉末を界面活性剤を添加した水槽中で攪拌して、帯電の除去及び脱泡を行い、比重差により分別する方法が提案されている。この方法では、基材樹脂がPPのように比重が小さいものであれば、分別可能であるが、ABS等のように塗膜樹脂成分と比重が近いものの場合には、分別は困難である。また、特開平6−91652号公報には、サンドブラストによる塗膜除去が提案されているが、この場合には基材樹脂中にブラスト研磨剤が埋め込まれる可能性が有り、新たな異物混入の問題が発生する。
更に、破砕品を溶剤浸漬により剥離し易くする方法として、特開平11−349726号公報には破砕品を低沸点アルコールに浸漬し、乾燥後微粉砕し、次いで風力によって塗膜を分別する方法が提案されている。しかし、この方法では、溶剤が低沸点アルコールなので、取扱いに危険を伴う他、風力分別では微粉砕品の帯電によって樹脂と塗膜とが十分に分別できないという欠点が有る。
その他の方法として、特開平11−228730号公報には、分別溶剤を用いて可溶性樹脂と不溶性樹脂とに分別する方法が提案されているが、この方法では、樹脂の溶解に多くの時間と専用の設備を必要とし、更に溶剤を蒸留除去するためにも大掛かりな設備とエネルギーを必要とし、リサイクルの本来の趣旨に合致しない。
特開2002−86491号公報 特開2001−40268号公報 特開2001−226639号公報 実用新案登録第3070129号公報 特開2001−353721号公報 特開2000−27193号公報 特開平8−258044号公報 特開平8−290427号公報 特開平6−91652号公報 特開平11−349726号公報 特開平11−228730号公報
このように、従来においては、塗膜付き樹脂成形品から、熱硬化性樹脂の塗膜を容易かつ効率的に除去して、基材の熱可塑性樹脂を高品質な状態で回収する方法は提案されておらず、いずれの方法においても、回収率、処理効率、経済性、作業性、或いは回収された熱可塑性樹脂の物性面や外観性などに欠点を有していた。
従って、本発明は、熱可塑性樹脂より成形された基材に、熱硬化性樹脂を主成分とする塗料が塗装された塗膜付き樹脂成形品から、物性や外観性の低下を抑えて高品質の熱可塑性樹脂を容易かつ効率的に回収する方法と、この方法で回収された回収熱可塑性樹脂を利用した、耐衝撃性及び外観性に優れた熱可塑性樹脂組成物及び熱可塑性樹脂成形品を提供することを目的とする。
本発明の塗膜付き樹脂成形品からの熱可塑性樹脂の回収方法は、熱可塑性樹脂より成形された基材に、熱硬化性樹脂を主成分とする塗料が塗装された成形品(以下、「塗膜付き樹脂成形品」と記す)から、基材の熱可塑性樹脂を回収する方法において、該塗膜付き樹脂成形品を、剥離溶剤に接触させて該塗膜を膨潤ないし基材から剥離させる膨潤・剥離工程と、該膨潤・剥離処理品を水洗して該塗膜を前記基材から分離する水洗・分離工程とを備え、該膨潤・剥離工程において、該剥離溶剤に接触させる塗膜付き樹脂成形品を、2〜100mmの大きさに破砕し、該塗膜付き樹脂成形品と剥離溶剤とを10〜80℃の温度で接触させ、該剥離工程において、該膨潤・剥離処理品を、槽下部に水の導入口と散気手段とを有し、槽上部に水の排出口を有する円筒状の水槽である浮上分離槽に投入し、該膨潤・剥離処理品を水洗すると共に、前記基材から剥離させた塗膜片を気泡に乗せた状態で水面に浮上させ、水面に遊離している塗膜片を、さらに界面活性剤により水面上に発生した泡と同伴させて浮上分離槽の外に排出する塗膜付き樹脂成形品からの熱可塑性樹脂の回収方法であって、該浮上分離槽の底面の直径Rと高さhとの比R/hが0.5〜20であることを特徴とする。
即ち、本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、剥離溶剤を用いて塗膜を膨潤ないし基材から剥離させ、その後水洗を行うことにより、基材から塗膜を容易かつ効率的に分離できること、特に、この水洗時に気泡を利用して塗膜の見掛け比重を小さくすることにより、塗膜を選択的に浮上させて基材から容易に分離することができ、これにより、塗膜成分を含まず、従って、バージン材に対して物性や外観性の低下を引き起こすことなく基材の熱可塑性樹脂を回収することができることを見出し、本発明を完成させた。
本発明において、回収する熱可塑性樹脂としては、好ましくはスチレン系樹脂及び/又はオレフィン系樹脂が挙げられる。また、剥離溶剤としては、沸点が100℃以上の高級アルコール、エステル、エーテル類を主成分とするものが好ましく、例えば、塗膜付き樹脂成形品を剥離溶剤と共に撹拌槽に投入して10〜80℃の温度で撹拌することにより、塗膜を効果的に膨潤・剥離処理することができる。
本発明においては、槽下部に水の導入口と散気手段とを有し、槽上部に水の排出口を有する浮上分離槽に膨潤・剥離処理品を投入して、該膨潤・剥離処理品を水洗すると共に、該塗膜を浮上させることにより、剥離した塗膜と基材とを効率的に分別することができる。即ち、このような浮上分離槽を用いることにより、基材から剥離した塗膜に散気手段からの微細気泡を付着させて、その浮力により、塗膜のみを選択的に浮上させて基材と分離することができる。この浮上分離槽は撹拌手段を備えることが好ましく、この場合には、撹拌による動力と槽内に投入した膨潤・剥離処理品同士の衝突ないし摩擦によって塗膜を効率的に剥離させて浮上させることができる。
このようにして回収された熱可塑性樹脂は、真空ベント付押出し機に供給してペレット化することが好ましく、ペレット化することにより、再利用が容易となる。しかも、真空ベント付押出し機であれば、押し出し工程において、回収熱可塑性樹脂に含まれる溶剤成分や水分を脱気することができるため、高品質の回収熱可塑性樹脂ペレットを得ることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、このような本発明の塗膜付き樹脂成形品からの熱可塑性樹脂の回収方法により回収された回収熱可塑性樹脂を含むものであり、回収熱可塑性樹脂のみからなるものであっても良く、他の樹脂成分や、その他の添加剤を含むものであっても良い。本発明の回収熱可塑性樹脂組成物に含まれる他の樹脂成分としては、特に、ゴム強化スチレン系樹脂が好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂成形品は、このような本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなるものであり、表面外観及び耐衝撃性等の物性に優れた高性能かつ高品質の熱可塑性樹脂成形品である。
本発明の塗膜付き樹脂成形品からの熱可塑性樹脂の回収方法によれば、成形品の抜き取り検査や廃棄物から発生した塗膜付き熱可塑性樹脂から、基材である熱可塑性樹脂の物性を低下させることなく、塗膜を容易かつ効率的に除去して、そのまま再利用可能な物性及び外観性を維持した回収熱可塑性樹脂を得ることができる。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物及び熱可塑性樹脂成形品によれば、このようにして回収した回収熱可塑性樹脂を用いて、表面外観及び耐衝撃性等の物性に優れた熱可塑性樹脂成形品を提供することができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
まず、本発明の塗膜付き樹脂成形品からの熱可塑性樹脂の回収方法について説明する。
本発明で処理される塗膜付き樹脂成形品は、表面にウレタン等の熱硬化性樹脂を主成分とする塗料が塗装された熱可塑性樹脂の成形品であり、自動車部品、電化製品、住宅建材部品など様々な製品が挙げられ、例えば、自動車部品の関連としては、ラジエターグリル、フェンダー、ドアパネル、バンパー、スポイラー、マッドガード、サイドモール、ホイールキャップ、インストルメントパネル、ドアミラー、フロントおよびテールランプ等のランプハウジング、バイクカウリング等が挙げられる。また、電化製品の関連では、テレビ、ゲーム機、パソコン、携帯電話などが挙げられ、住宅建材部品の関連では、屋外部材として、外壁部材、ケーブル用カバーなどが挙げられ、また、屋内部材として、テーブル、衣装ケース、パイプなどが挙げられる。
これらの塗膜付き樹脂成形品の基材を構成する熱可塑性樹脂組成物に特に制限はなく、熱可塑性樹脂としては、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂などのスチレン系樹脂や、PP(ポリプロピレン)などのポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ナイロン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、メタクリル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂などが挙げられ、これらの単一材料であってもアロイ材料であっても良く、また、改質された樹脂組成物、更には、種々の充填材が配合されたものであっても良い。これらのうち、特に、スチレン系樹脂及び/又はオレフィン系樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物の成形品よりなる基材が剥離、水洗、乾燥などの工程による樹脂劣化が少なく安定である点において好適である。
熱可塑性樹脂としては、水に浮くような低比重の樹脂や発泡樹脂でも問題は無いが、後述の水洗・分離工程で泡に浮いてしまうほど軽すぎると、例えば浮上分離槽から塗膜と共に排出されてしまう恐れがあり、回収率が低下するので、本発明に適用される熱可塑性樹脂の比重としては0.90以上のものが好ましく、より好ましくは0.93〜1.40、特に好ましくは1.00〜1.20の範囲である。
一方、塗膜付き樹脂成形品の塗膜の素材としては、特に制限はないが、一般に広く用いられる塗料、例えば、アクリル系塗料、エポキシ系塗料、ウレタン系塗料、アルキド系塗料、メラミン系塗料、UV塗料等を挙げることができる。これらの中で好ましいのはアクリル系塗料およびウレタン系塗料などの熱硬化性樹脂を主成分とするものである。
アクリル系塗料については、アクリルラッカー、アクリルメラミン、アクリルウレタン、アクリルエポキシなどに分類でき、溶剤を蒸発させ塗膜を形成するタイプ、架橋して硬化塗膜を形成するタイプが挙げられる。
ウレタン系塗料については、2液ポリオール硬化ポリウレタン型が主流で、その他に、ウレタンラッカーやウレタンポリオールをアクリルポリオール又はポリエステルポリオールにブレンドしてメラミン硬化させるタイプなどが挙げられる。
このような熱硬化性樹脂よりなる塗膜の厚さについても特に制限はないが、通常1〜200μm、好ましくは5〜150μmの厚さであることが、剥離効率の面からは好ましい。
なお、塗料については、技術進歩により、基材となる熱可塑性樹脂との密着性が改良されているが、本発明の方法は、基材表面に形成されている塗膜を膨潤ないし基材から剥離させる剥離溶剤を用いることによって、塗膜を基材から剥離させて分離する方法であるため、塗料及び塗膜の種類や厚さについては何ら限定されるものではなく、上記以外のものにも適用可能である。
このような塗膜付き樹脂成形品においては、生産時の不良品や抜き取り品質検査などによって製品にならない塗膜付き樹脂成形品が発生する。また、出荷後返品される不良品や市場で役目を終えて廃材となるものもある。本発明は、特にこのような不良品ないし廃材の塗膜付き樹脂成形品から、基材である熱可塑性樹脂を回収して再利用する場合に有効である。
本発明においては、膨潤・剥離工程において、塗膜付き樹脂成形品を剥離溶剤と接触させて塗膜を膨潤・剥離処理するが、それに先立ち、塗膜の膨潤・剥離を容易かつ効率的に行うために、塗膜付き樹脂成形品を予め適当な大きさに破砕する。この破砕の程度は、2〜100mmの大きさとし、特に2〜50mm、とりわけ5〜20mmとすることが好ましく、このような大きさに破砕することにより、塗膜の剥離、基材との分離、回収が容易かつ効率的となる。この破砕の程度が2mmより小さい場合には、後述の浮上分離法による塗膜の分離の際に、塗膜と基材との分離がうまくいかず、塗膜側に混入する基材量が多くなり、熱可塑性樹脂の回収率が低くなるため好ましくない。また、この破砕の程度が100mmを超えると、剥離溶剤が塗膜と基材との間に浸透し難くなるため、剥離効率が低下したり、後工程での加工で支障をきたしたりするので好ましくない。
なお、本発明において、塗膜付き樹脂成形品の破砕片の大きさは、破砕片が通過し得る網目の大きさに相当し、例えば2mm×2mmの網目を通過するが、それよりも小さい網目は通過し得ないものを2mmサイズと称す。
塗膜付き樹脂成形品の破砕は、通常の噛み合い歯方式の破砕機を使用して行うことができ、破砕片の大きさをある程度揃えるために、篩に掛けて大きさを揃えることは、均一処理を行う上で有効である。
本発明で使用する剥離溶剤としては、沸点が100℃以上の高級アルコール類、エステル類、エーテル類(以下、「高沸点有機溶剤」と称す。)を主成分とするものが、基材への過剰な浸透を防止する点から好ましく、また、繰り返し使用する際に蒸発による損失が少なく、取り扱いの危険を少なくする点からも好ましい。沸点が100℃以上の高級アルコール、エステル、エーテル類としては、n−ブタノール、イソペンチルアルコール、1−デカノール等のアルコール、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル等のエステル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アルキレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のエーテルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
剥離溶剤の組成は、塗膜の種類に応じて適宜調整することが好ましいが、市販品を用いることもでき、例えば、日本マルセル(株)製「HA−80」はプロピレングリコールモノメチルエーテルを主成分とし、本発明で用いる剥離溶剤として有効である。
剥離溶剤は、基材及び塗膜と剥離溶剤との親和性(濡れ性)を高めるために、更に界面活性剤を含むものであっても良い。界面活性剤としては、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、α−オレフィンスルフォン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルグリコシドなどの1種又は2種以上を用いることができる。剥離溶剤は更に、泡調整剤や消泡剤などを含むものであっても良い。
このような剥離溶剤中に、塗膜付き樹脂成形品、好ましくはその破砕片を単に浸漬することにより、塗膜を膨潤・剥離処理することもできるが、撹拌や超音波、バブリング等の動力を付与して塗膜の膨潤ないし基材から剥離、更には剥離を促進させるようにすることもできる。
塗膜付き樹脂成形品、好ましくは破砕片を剥離溶剤に接触させる際の温度条件としては、10〜80℃の範囲が好ましく、より好ましくは10〜60℃、特に好ましくは20〜50℃の範囲である。この温度が低すぎる場合、剥離溶剤の効力が十分に発揮されず、塗膜の膨潤ないし基材から剥離に時間がかかるため好ましくない。逆に、温度が高すぎる場合、剥離溶剤の効力が発揮されるものの、塗膜付き樹脂成形品の破砕片が変形したり、破砕片同士が剥離した塗膜や剥離溶剤を巻き込んで溶融接着し、得られる回収熱可塑性樹脂の純度が低下したりするため、好ましくない。
塗膜付き樹脂成形品と剥離溶剤との接触は、特に、前述の好適な大きさに破砕した塗膜付き樹脂成形品の破砕片を、撹拌羽を有する撹拌槽内に投入し、上記最適温度条件下に剥離溶剤中で撹拌することにより行うことが、塗膜の膨潤・剥離効率の面で好ましい。
膨潤・剥離工程の接触時間は、処理温度、撹拌等の補助動力の有無、塗膜の材質、厚さ、用いた剥離溶剤の種類によっても異なるが、通常0.5〜2時間程度である。
なお、塗膜の膨潤・剥離処理に使用した剥離溶剤は、塗膜付き樹脂成形品(ないしその剥離片)に付着して系外に持ち出されることにより減少するものの、組成が変化することはなく、塗膜の膨潤・剥離処理に繰り返し使用することができる。
このようにして塗膜の膨潤・剥離処理を行った後は、次いで水洗・分離工程で、膨潤・剥離処理品の水洗と塗膜の分離を行う。
本発明においては、この水洗・分離工程を、図1に示すような浮上分離槽を用いて行い、水洗と同時に塗膜の剥離、剥離した塗膜の基材との分離を効率的に行うことが好ましい。
図1は本発明の実施に好適な浮上分離槽1の構成を示す模式的な断面図であり、2は洗浄水の導入口、3は空気の導入口である。これらの導入口2,3は浮上分離槽1の下部側壁部に設けられているが、底部に設けられていても良い。浮上分離槽1内の洗浄水の導入口2と空気の導入口3との中間の高さ位置には、多孔板4が設けられており、導入口3から浮上分離槽1内に導入された空気は、この多孔板4で微細な気泡となって浮上分離槽1内を上昇する。浮上分離槽の上部側壁には、排水の排出口5が設けられており、この排出口5の浮上分離槽1内への開口部には、浮上した塗膜片12の流出防止のためのメッシュのような異物流出防止板6が設けられている。7は撹拌機であり、撹拌羽7Aを有する。
このような浮上分離槽1であれば、導入口2から洗浄水を導入すると共に導入口3から圧縮空気を導入し、撹拌下、槽内の水中に膨潤・剥離処理品の破砕片10を投入すると、撹拌の動力により、また破砕片10,10同士が衝突ないし摩擦することにより、破砕片10に付着残留している塗膜11の剥離が促進される。そして、破砕片10から剥離した塗膜片12に、空気の微細気泡13が付着することにより塗膜片12の見掛け比重が小さくなり、水中を浮上する。
このように、剥離された塗膜片12を気泡13に乗せた状態で水面に浮上させ、水面に遊離している塗膜片を、さらに界面活性剤により水面上に発生した泡と同伴させて浮上分離槽の外に排出することにより回収し、容易に塗膜と基材とを分離することができる(本発明において、このようにして、気泡により塗膜片を浮上させて分離する方法を「浮上分離法」と称す。)。
塗膜の効率的な分離、回収のために、浮上分離槽1の水槽については適度な高さが必要であり、円筒状の水槽の底面の直径と高さの比(底面の直径R/高さh)を0.5〜20とし、特に0.5〜10、とりわけ0.5〜5の範囲であることが好ましい
なお、このような浮上分離法により塗膜を分離する際、浮上分離槽に溢流口を設け、気泡が付着した塗膜を洗浄排水と共に槽外に流出させるようにしても良い。
膨潤・剥離工程で用いた剥離溶剤中に界面活性剤が含まれている場合、浮上分離槽内ではその界面活性剤による発泡性で気泡が発生し易くなるが、必要に応じて、この浮上分離槽にも前述の界面活性剤を添加して気泡の発生を促進させるようにする
なお、膨潤・剥離工程と水洗・分離工程との間に、塗膜の剥離工程を独立させて行っても良い。この場合、工程毎に水槽を分けることにより、小規模なプラントでも効率的な連続処理が可能となる。
例えば、剥離溶剤を入れた撹拌槽(第1の処理槽)に塗膜付き樹脂成形品の破砕片を投入して所定の温度で所定の時間撹拌することにより塗膜を膨潤ないし基材から剥離させ、次いで水を入れた撹拌槽(第2の処理槽)に投入することにより塗膜を剥離させ、その後、剥離した塗膜と基材とを図1に示すような浮上分離槽(第3の処理槽)に投入して塗膜を浮上分離しても良く、また、剥離溶剤を入れた撹拌槽(第1の処理槽)に塗膜付き樹脂成形品の破砕片を投入して所定の温度で所定の時間撹拌することにより塗膜を膨潤ないし基材から剥離させ、次いで図1に示すような浮上分離槽(第2の処理槽)に投入して塗膜を剥離させると共に浮上分離しても良い。
このようにして塗膜が分離された基材の熱可塑性樹脂は、必要に応じて更に水洗及び/又は脱水、乾燥後、押出し機等に供給し、ペレット化(リペレット)する。この際、真空ベント付押出し機を用いることにより、押し出し中に残留溶剤成分や水分を脱気することが可能である。リペレットとすることで、そのまま成形材料として使用することができ、また、通常の加工に使用される発泡剤や着色剤などのマスターペレットをドライブレンドする際にも好都合であり、好ましい。さらに、他の樹脂や添加剤などと複合する際にも原材料として使いやすくなるため、回収樹脂はリペレットとすることが好ましい。
このようにして塗膜付き樹脂成形品から回収された回収熱可塑性樹脂は、そのまま再利用して成形加工することもできるし、同種の材料又は他の熱可塑性樹脂、更に必要に応じて各種添加剤等をブレンドして再利用することもできる。
次に、本発明の塗膜付き樹脂成形品からの熱可塑性樹脂の回収方法により回収された熱可塑性樹脂を含む本発明の熱可塑性樹脂組成物について説明する。
塗膜付き樹脂成形品から回収された熱可塑性樹脂は、その塗膜付き樹脂成形品の基材と同種の樹脂や他の樹脂とブレンドすることができる。他の熱可塑性樹脂とブレンドする場合、その樹脂としては、ABS樹脂、ASA樹脂、AES樹脂、HIPS樹脂などのゴム強化スチレン系樹脂、その他に、AS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ナイロン樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンエーテルなどが挙げられる。また、MBS樹脂などの補強剤をブレンドすることもできる。さらに、ブレンドの際に相溶性を付与する目的で、相溶化剤や官能基などにより変性された上記樹脂を配合しても良い。
これらの樹脂は1種を単独で或いは2種以上を併用して回収熱可塑性樹脂にブレンドすることができるが、中でも特に、ゴム強化スチレン系樹脂をブレンドすることが好ましい。
以下に、このゴム強化スチレン系樹脂について説明する。
本発明の回収熱可塑性樹脂にブレンドするゴム強化スチレン系樹脂は、ゴム状重合体の存在下に、芳香族ビニル系単量体及びシアン化ビニル系単量体から選ばれた1種以上のビニル系単量体をグラフト重合してなるゴム含有グラフト(共)重合体5〜100重量%と、芳香族ビニル系単量体及びシアン化ビニル系単量体から選ばれた1種以上の単量体を重合してなる硬質(共)重合体95〜0重量%とを含むゴム強化スチレン系樹脂であることが好ましい。
ゴム強化スチレン系樹脂を構成するゴム含有グラフト(共)重合体中のゴム質重合体としては、ボリブタジエン、ブタジエンと共重合可能なビニル系単量体との共重合体のような共役ジエン系重合体、アクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体との共重合体のようなアクリルエステル系重合体、エチレン−プロピレン又はブテン、好ましくはプロピレン−非共役ジエン共重合体、ポリオルガノシロキサン系重合体等が挙げられる。ここで、アクリル酸エステル重合体のアクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−メチルペンチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレートなどが挙げられ、また、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体に含有されるジエンとしては、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,4−ヘプタジエン、1,5−シクロオクタジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、11−エチル−1,11−トリデカジエン、5−メチレン−2−ノルボルネンなどが挙げられる。ゴム質重合体としては、これらのうちの1種を単独で、或いは2種以上の複合ゴムとして用いることができる。
このようなゴム質重合体にグラフト重合するビニル系単量体としては、芳香族ビニル系単量体と、シアン化ビニル系単量体と、更に必要に応じて用いられる(メタ)アクリル酸エステル、マレイミド化合物、不飽和カルボン酸等のグラフト重合可能な他の単量体が挙げられる。
芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ブロムスチレン等が挙げられ、特にスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。また、シアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリルニトリル等が挙げられ、特にアクリロニトリルが好ましい。他の単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルが挙げられ、マレイミド化合物としては、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられ、不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸等が挙げられる。これらは、それぞれ1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
ゴム含有グラフト(共)重合体において、これらの単量体成分の割合は、重量比で、芳香族ビニル系単量体:シアン化ビニル系単量体:他の単量体=95〜60:5〜40:0〜50とするのが好ましい。
このようなゴム含有グラフト(共)重合体中の好ましいゴム質重合体の含有量は5〜80重量%である。この含有量が5重量%未満では得られる成形品の耐衝撃性が劣るものとなり、80重量%を超えてもグラフト率が低下することから耐衝撃性に劣るものとなる。
さらに、本発明に係るゴム強化スチレン系樹脂は、ゴム含有グラフト(共)重合体と別途重合した硬質(共)重合体(例えば、AS樹脂など)とで構成されていても良い。
硬質(共)重合体は、芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体と、更に必要に応じて用いられる共重合可能な他の不飽和単量体からなり、ゴム含有グラフト(共)重合体にグラフトさせる単量体として例示したものと同様な単量体が使用される。
硬質(共)重合体において、これらの単量体成分の割合は、重量比で芳香族ビニル単量体:シアン化ビニル単量体:他の単量体=80〜60:20〜40:0〜60とするのが好ましい。
また、硬質(共)重合体の重量平均分子量は、80,000〜200,000が好ましく、この分子量が80,000未満では耐衝撃性に劣り、200,000を超えると成形加工性が悪化する。
ゴム強化スチレン系樹脂において、ゴム含有グラフト(共)重合体と硬質(共)重合体の割合はゴム含有グラフト(共)重合体5〜100重量%と硬質(共)重合体95〜0重量%とで合計で100重量%であることが好ましい。この範囲から外れて硬質(共)重合体が多く、ゴム含有グラフト(共)重合体が少ないと、得られる成形品の耐衝撃性が劣るものとなる。
ゴム強化スチレン系樹脂と回収熱可塑性樹脂との混合割合には特に制限はなく、ゴム強化スチレン系樹脂0〜99重量%、回収熱可塑性樹脂100〜1重量%の幅広い範囲を採用可能であるが、ゴム強化スチレン系樹脂をブレンドすることによる他の用途に適した特性にするため、例えば、衝撃強度や機械特性などの改質等の効果を確実に得る上で、回収熱可塑性樹脂5〜60重量%に対して、ゴム強化スチレン系樹脂95〜40重量%とすることが好ましい。
本発明の回収熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物には、更に公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤(顔料、染料など)、炭素繊維やガラス繊維、タルクやウォラストナイト、炭酸カルシウム、シリカなどの充填剤、難燃剤(ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、アンチモン化合物など)、ドリップ防止剤、抗菌剤、防カビ剤、シリコ−ンオイル、カップリング剤などの各種の添加剤を1種以上配合しても良い。
これらの配合成分を混合して、本発明の回収熱可塑性樹脂組成物を再利用する際のペレット化方法としては特に制限はないが、例えば、押出機、バンバリーミキサー等を用いた溶融混練法が好ましい。
このようにして得られる本発明の熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、シート押出、真空成形、圧空成形、異形押出成形、発泡成形、ブロー成形などによって、各種成形品に成形することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる本発明の熱可塑性樹脂成形品は、車両用部品や一般機材の用途をはじめ、例えば、難燃剤や無機充填剤等を配合することにより電気電子機器及び電子機器部品のハウジング等、特に、コンピュータ、プリンタ、コピー機等のOA機器、更にモバイルコンピュータをはじめとする携帯情報機器のハウジング等にも好適に使用することができる。
以下に、実施例、比較例、合成例及び参考例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら制限されるものではない。
[塗膜付き樹脂成形品からの熱可塑性樹脂の回収]
以下の2種類の剥離溶剤を使用して塗膜付き樹脂成形品からの熱可塑性樹脂の回収を行った。
剥離溶剤A;HA−80(日本マルセル(株)製)
剥離溶剤B;プロピレングリコールモノメチルエーテルを主成分とし、アルキルエー
テル硫酸エステルナトリウム、脂肪酸アルカノールアミドを各0.2重
量%含む剥離溶剤
実施例1
撹拌機を備えた50リットルのステンレス製容器に、剥離溶剤A20リットルと、塗膜付き樹脂成形品(ABS製基材の表面にウレタン系塗膜が形成されたラジエターグリル)を約20mm角に破砕した破砕片10kgとを仕込み、バンドヒーターと撹拌機を取り付け、40℃に加熱調整すると共に、40rpmで60分間撹拌した。この操作により、塗膜を膨潤又は基材から剥離させた。次に、剥離溶剤を回収するため、容器内溶液を80メッシュのステンレス製網を使用して、濾過した。
濾取した基材と塗膜との混合品を図1に示した浮上分離槽(底面の直径R/高さhの比が0.5の円筒形の水槽,水20リットルを保有)に仕込み、1リットル/分の洗浄水を導入・排出して洗浄し、洗浄と同時に剥離した塗膜を分別するため、圧縮空気(4kg/cm)を吹き込み、気泡を発生させ、気泡と共に水面に浮上した塗膜を槽外へ排出する操作を30分間行った。次に、水槽の水を抜いて基材を取り出し、遠心脱水機を使用して基材を回収した。
実施例2〜8および比較例1〜11
表1に示す塗膜付き樹脂成形品を回収対象とし、各工程における条件を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様な操作を行った。
ただし、比較例5〜7では水洗・分離工程において、圧縮空気の吹き込みを行わなかった。また、比較例8,9では水洗・分離工程において、水槽形状が本発明の好適範囲外であり、また、洗浄水の導入・排出を行わなかった。また、比較例10では、洗浄水及び圧縮空気の導入を行わずに自然沈降のみを行った。比較例11は、膨潤・剥離工程や水洗・分離工程を行わず、破砕のみを行った。
Figure 0004244776
[回収熱可塑性樹脂の評価]
実施例1〜8及び比較例1〜11において、得られた回収熱可塑性樹脂の表面の水分を乾燥して回収率を算出した。また、塗膜の剥離及び分離、分別状況について、目視で観察し、塗膜の剥離と分離が十分であるものを○、塗膜の剥離が不十分ないし塗膜の分離が不十分で塗膜が混入しているものを×とし、これらの結果を表2に示した。
なお、表2中の揮発分とは予備乾燥した回収熱可塑性樹脂について約50gを耐熱ガラス容器に入れ、ミニ乾燥機で130℃/2時間乾燥した後、乾燥の前後による重量変化を算出したときの値であり、これが多いことは剥離溶剤含有量が多いことを示す。
Figure 0004244776
表2から明らかなように、実施例1〜8は、回収率も、塗膜の剥離、分離状況にも優れている。
これに対して、塗膜付き樹脂成形品を細かく破砕しすぎた比較例1は、分離工程で塗膜と共に基材が排出されるために回収率が低下し、また、塗膜の分離も不十分であった。また、比較例4は、剥離工程の温度が高かったため剥離溶剤を多く含む。その他の比較例も、回収率や塗膜の剥離ないし分離が不十分であった。なお、比較例6、7は水洗・分離工程において、洗浄水の供給・排水のバランスが不適切で、洗浄水のオーバーフローと共に塗膜や樹脂もオーバーフローして収率が大幅に低下した。
次に、実施例1〜8、比較例1〜11で得られた回収熱可塑性樹脂を真空ベント機構付きの同方向二軸押出し機を使用して、リペレット(回収熱可塑性樹脂;100%)を作成し、得られたリペレットの特性について、諸特性を下記の方法で評価し、結果を表3に示した。
ただし、比較例2は、リペレット化する際に、原料供給口のポッパー部でブリッジングを起こし、リペレットが得られず、評価を行えなかった。
なお、評価用テストピースとしては、2オンス射出成形機(東芝(株)製)により、220〜260℃で成形したものを用いた。
〔メルトボリュームレート;MVR(cm/10min)〕 ISO 1133(測定温度と荷重については、ABS系は220℃/98N、PC/ABS系は230℃/98N、PP系は230℃/21.2N)
〔シャルピー衝撃強さ;IMP(KJ/m)〕 ISO 179(常温)
〔熱変形温度;HDT(℃)〕 ISO 75(測定荷重については、ABS系とPC/ABS系は18.2MPa、PP系は0.46MPa)
〔表面外観〕 目視により成形品表面を観察し、外観が良好なものは○、小さな外観不良の場合は△、異物などがあり明らかに表面外観が悪いものは×とした。
表3には、各用途に使用されている熱可塑性樹脂の未使用品(バージン材)について同様に評価を行った結果を参考例1〜3として併記した。なお、それぞれの比重はABSが1.07、PC/ABSが1.12、PPが0.92であった。
Figure 0004244776
表3から明らかなように、実施例1〜8の回収熱可塑性樹脂は、各基材のバージン材に係る参考例1〜3と同等であるか、若干劣るものの流動性と衝撃強さとのバランスに優れ、表面外観も優れている。これに対して、比較例1〜11では、耐衝撃性や表面外観が劣り、特に塗膜の混在により、表面外観が大きく劣っていた。なお、比較例4は、溶剤を多く含有していることにより、成形品にシルバーが発生し表面外観を悪化させた例であった。
[回収熱可塑性樹脂を用いた熱可塑性樹脂成形品の製造]
実施例9〜16、比較例12〜21
前述の実施例及び比較例で回収、リペレット化された回収熱可塑性樹脂のリペレットと、参考例1〜3のバージン材とを、表4に示す組み合せで回収熱可塑性樹脂:30重量%、バージン材:70重量%の割合で混合して、前述のリペレットの製造と同様にしてペレットを作成し、前述の評価方法と同様に諸特性の評価を行った。また、塗装性についても評価するためにそれぞれの成形品にウレタン塗装を行い、目視により観察し、塗装表面が平滑で塗装性が良好なものを○、大部分は平滑であるが塗装表面に少しブツ状が見られるなどで塗装性が若干劣るものを△、塗装表面の大部分が平滑でなくブツ状が多く見られるなどで塗装性が悪いものを×とした。これらの結果を表4に示した。
Figure 0004244776
表4より明らかなように、実施例1〜8の回収熱可塑性樹脂を用いたものは、物性、外観及び塗装性についても優れているが、比較例の回収熱可塑性樹脂を用いたものは、シルバーや塗膜による表面外観が劣っている。特に、塗装後に塗膜と思われる異物が浮き出てしまい、外観を著しく悪化させている。
[ゴム強化スチレン系樹脂と回収熱可塑性樹脂とを含む熱可塑性樹脂成形品の製造]
まず、以下の合成例に従ってブレンドするゴム強化スチレン系樹脂を合成した。なお、以下において、「部」は「重量部」を示す。
合成例1:ゴム含有グラフト共重合体(a−1)の製造
以下の配合にて、乳化重合法によりABS共重合体を合成した。
〔配合〕
スチレン(ST) 35部
クリロニトリル(AN) 15部
ポリブタジエン・ラテックス 50部(固形分として)
不均化ロジン酸カリウム 1部
水酸化カリウム 0.03部
ターシャリードデシルメルカプタン(t−DM) 0.1部
クメンハイドロパーオキサイド 0.3部
硫酸第一鉄 0.007部
ピロリン酸ナトリウム 0.1部
結晶ブドウ糖 0.3部
蒸留水 190部
オートクレーブに蒸留水、不均化ロジン酸カリウム、水酸化カリウム及びポリブタジエン・ラテックスを仕込み、60℃に加熱後、硫酸第一鉄、ピロリン酸ナトリウム、結晶ブドウ糖を添加し、60℃に保持したままST、AN、t−DM及びクメンハイドロパーオキサイドを2時間かけて連続添加し、その後70℃に昇温して1時間保って反応を完結した。かかる反応によって得たABSラテックスに酸化防止剤を添加し、その後硫酸により凝固させ、十分水洗後、乾燥してABSグラフト共重合体(a−1)を得た。
合成例2:ゴム含有グラフト共重合体(a−2)の製造
エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体ゴムラテックス(エチレン:プロピレン:非共役ジエン(5−エチレン−2−ノルボルネン) 60部(固形分として)の存在下、AN12部、ST28部を反応させたこと以外は、合成例1と同様にしてAESグラフト共重合体(a−2)を得た。
合成例3:ゴム含有グラフト共重合体(a−3)の製造
ポリブチルアクリレート 40部(固形分として)の存在下、AN18部、ST42部を反応させたこと以外は、合成例1と同様にしてASAグラフト共重合体(a−3)を得た。
合成例4:硬質共重合体(b−1)の製造
窒素置換した反応器に水120部、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ0.002部、ポリビニルアルコール0.5部、アゾイソブチルニトリル0.3部、t−DM0.5部と、AN35部、ST65部からなるモノマー混合物を使用し、STの一部を逐次添加しながら開始温度60℃から5時間昇温加熱後、120℃に到達させた。更に、120℃で4時間反応した後、重合物を取り出し、硬質共重合体(b−1)(重量平均分子量115,000)を得た。
その他のブレンド樹脂及び添加剤としては以下のものを用いた。
ポリカーボネート樹脂(c−1):三菱エンジニアリングプラスチック(株)製ポリカ
ーボネート樹脂「S−3000」(粘度平均分子量 (Mv):21,000)
難燃剤(d−1):旭電化工業社製「FP−500」(リン酸エステル系難燃剤)
無機充填剤(e−1):日本タルク(株)製「MICRO ACE ミクロエースP−
3」(タルク:平均粒子径(測定方法;遠心沈降法)1.8μm)
実施例17〜21、比較例22〜25
前述の実施例及び比較例で回収、リペレット化された回収熱可塑性樹脂のリペレットを用い、表5に示す配合割合で、さらに滑剤、酸化防止剤の添加剤と共に混合した後、220〜260℃で2軸押出機(日本製鋼所製「TEX30α」)にて溶融混合し、ペレット化した。この樹脂ペレットを2オンス射出成形機(東芝(株)製)にて220〜260℃にて成形し、必要なテストピースを作成し、各物性は表4で示した場合と同様な特性を測定し、更に下記の曲げ弾性率と燃焼性の特性も加えて試験結果を表5に示した。
〔曲げ弾性率;MOD(MPa)〕 ISO 178
〔燃焼性〕 2mm厚みの試験片に対してUL94に準じた燃焼試験を行った。
Figure 0004244776
表5より明らかなように、実施例17〜21では、比較例22〜25に比べて、衝撃強度などが優れ、特に表面外観に優れている。更に、難燃剤や充填剤を添加することにより、難燃性や剛性といった特性を付与することが可能となり、その他の用途へも好適に使用できる熱可塑性樹脂成形品が得られる。
以上の結果から、本発明により回収された熱可塑性樹脂は、耐衝撃強度、外観性に優れており、参考例との対比からも明らかなように特性低下が少なく、そのままでも十分使用できる特性を有し、更に、他の樹脂をブレンドすることにより幅広い用途に、十分に使用できることが明らかである。
本発明によれば、塗膜付き樹脂成形品の不良品や廃棄物から、熱可塑性樹脂を容易かつ効率的に回収して、これを有効に再利用することが可能となり、廃棄物の減量及び環境の維持、資源の有効利用等の面において、本発明の工業的有用性は極めて高い。
本発明の実施に好適な浮上分離槽の構成を示す模式的な断面図である。
符号の説明
1 浮上分離槽
4 多孔板
7 撹拌機
10 破砕片
11 塗膜
12 塗膜片
13 気泡

Claims (13)

  1. 熱可塑性樹脂より成形された基材に、熱硬化性樹脂を主成分とする塗料が塗装された成形品(以下、「塗膜付き樹脂成形品」と記す)から、基材の熱可塑性樹脂を回収する方法において、
    該塗膜付き樹脂成形品を、剥離溶剤に接触させて該塗膜を膨潤ないし基材から剥離させる膨潤・剥離工程と、
    該膨潤・剥離処理品を水洗して該塗膜を前記基材から分離する水洗・分離工程とを備え、
    該膨潤・剥離工程において、該剥離溶剤に接触させる塗膜付き樹脂成形品を、2〜100mmの大きさに破砕し、
    該塗膜付き樹脂成形品と剥離溶剤とを10〜80℃の温度で接触させ、
    該剥離工程において、該膨潤・剥離処理品を、
    槽下部に水の導入口と散気手段とを有し、槽上部に水の排出口を有する円筒状の水槽である浮上分離槽に投入し、
    該膨潤・剥離処理品を水洗すると共に、前記基材から剥離させた塗膜片を気泡に乗せた状態で水面に浮上させ、水面に遊離している塗膜片を、さらに界面活性剤により水面上に発生した泡と同伴させて浮上分離槽の外に排出する塗膜付き樹脂成形品からの熱可塑性樹脂の回収方法であって、
    該浮上分離槽の底面の直径Rと高さhとの比R/hが0.5〜20であることを特徴とする塗膜付き樹脂成形品からの熱可塑性樹脂の回収方法。
  2. 該熱可塑性樹脂が、比重0.9以上であるスチレン系樹脂及び/又はオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の塗膜付き樹脂成形品からの熱可塑性樹脂の回収方法。
  3. 該剥離溶剤は、沸点が100℃以上の、高級アルコール、エステル及びエーテルよりなる群から選ばれる1種又は2種以上を主成分とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗膜付き樹脂成形品からの熱可塑性樹脂の回収方法。
  4. 前記塗膜付き樹脂成形品と剥離溶剤とを接触させる温度が、10〜60℃であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の塗膜付き樹脂成形品からの熱可塑性樹脂の回収方法。
  5. 該浮上分離槽が撹拌手段を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の塗膜付き樹脂成形品からの熱可塑性樹脂の回収方法。
  6. 該剥離溶剤が界面活性剤を含むものであることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の塗膜付き樹脂成形品からの熱可塑性樹脂の回収方法。
  7. 該塗膜付き樹脂成形品を剥離溶剤と共に撹拌槽に投入して撹拌することにより、該塗膜付き樹脂成形品と剥離溶剤とを接触させることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の塗膜付き樹脂成形品からの熱可塑性樹脂の回収方法。
  8. 該回収された熱可塑性樹脂を真空ベント付押出し機に供給してペレット化することを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の塗膜付き樹脂成形品からの熱可塑性樹脂の回収方法。
  9. 請求項1ないしのいずれか1項に記載の方法により回収された熱可塑性樹脂(以下、「回収熱可塑性樹脂」という)を含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  10. 回収熱可塑性樹脂からなることを特徴とする請求項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  11. 回収熱可塑性樹脂と他の樹脂成分及び/又は添加剤とを含むことを特徴とする請求項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  12. 該回収熱可塑性樹脂組成物とゴム強化スチレン系樹脂とを含むことを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  13. 請求項ないし1のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする熱可塑性樹脂成形品。
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