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JP4246035B2 - 炭素工具鋼又は炭素鋼と黄銅からなる複合体及びその接合方法 - Google Patents
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JP4246035B2 - 炭素工具鋼又は炭素鋼と黄銅からなる複合体及びその接合方法 - Google Patents

炭素工具鋼又は炭素鋼と黄銅からなる複合体及びその接合方法 Download PDF

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Description

本発明は、例えば機械構造物のメタルパッキン等に使用されている炭素工具鋼又は炭素鋼と黄銅からなる複合体及びその接合方法に関する。
一般に、前記如く複合異種材料の接合方法として、熱間等方加圧焼結(HIP)により接合することが古くから知られている。例えば、特開平1−273681号公報(特許文献1)には、主としてAl、Mg等の金属中にセラミックス等の繊維を強化材として分散させてなる金属基複合材料同士の接合において、インサート材として銅を金属基複合材料の間に配設し、その後、前記HIP(熱間等方加圧焼結)処理を施して両者を接合してなるものが開示されている。
特開平1−273681号公報
しかしながら、前記特許文献1に開示されている技術では、以下の課題を有しており、本発明が対象とする炭素工具鋼又は炭素鋼と黄銅からなる複合体を製造することが難しい。即ち、前記特許文献には、インサート材として銅の開示はあるが、接合にあたって重要な因子であるその厚みの開示がなく、また同様に、重要な因子であるHIPの処理温度及び圧力が低く母材の接合において、母材とインサート材との拡散接合が確実にできないという問題がある。
また、銅メッキについては、一切の開示がなく、また母材の材質も本発明とは異なる。従って、前記特許文献に開示されている内容では、本発明が接合を対象としている炭素工具鋼又は炭素鋼と黄銅からなる複合体を確実に接合することはできない。
以上の従来技術の課題に鑑み本発明の目的は、炭素工具鋼又は炭素鋼と黄銅からなる複合体を確実に接合させ工業的に活用可能な複合材、及びその接合方法を提供することである。
本発明は、上記の課題を解決するためのものであり、その発明の要旨とするところは、(1)一方の母材が炭素工具鋼又は炭素鋼、他方の母材が黄銅からなり、前記両母材を銅箔からなるインサート材を使用して、温度:620〜850℃、圧力:70〜200MPa、時間:1〜6時間とする熱間等方加圧焼結(HIP)により接合してなることを特徴とする炭素工具鋼又は炭素鋼と黄銅からなる複合体。
(2)前記熱間等方加圧焼結(HIP)処理前の銅箔の厚みt1 が30≦t1 ≦1000μmであることを特徴とする(1)記載の炭素工具鋼又は炭素鋼と黄銅からなる複合体。
(3)一方の母材が炭素工具鋼又は炭素鋼、他方の母材が黄銅からなり、前記両母材の少なくともいづれか一方の接合面に銅メッキが形成され、温度:620〜850℃、圧力:70〜200MPa、時間:1〜6時間とする熱間等方加圧焼結(HIP)により接合してなることを特徴とする炭素工具鋼又は炭素鋼と黄銅からなる複合体。
(4)前記熱間等方加圧焼結(HIP)処理前の銅メッキの厚みt2 が30≦t2 ≦1000μmであることを特徴とする(3)記載の炭素工具鋼又は炭素鋼と黄銅からなる複合体。
(5)一方の母材が炭素工具鋼又は炭素鋼、他方の母材が黄銅からなり、前記両母材の少なくともいづれか一方の接合面に銅メッキが形成され、かつ、前記両母材を銅箔からなるインサート材を使用して、温度:620〜850℃、圧力:70〜200MPa、時間:1〜6時間とする熱間等方加圧焼結(HIP)により接合してなることを特徴とする炭素工具鋼又は炭素鋼と黄銅からなる複合体。
(6)前記熱間等方加圧焼結(HIP)処理前の銅メッキの厚みt2 と前記熱間等方加圧焼結(HIP)処理前の銅箔の厚みt1 とが30≦t2 +t1 ≦1000μmであることを特徴とする(5)記載の炭素工具鋼又は炭素鋼と黄銅からなる複合体。
(7)一方の母材が炭素工具鋼又は炭素鋼、他方の母材が黄銅からなり、前記両母材の間に銅箔からなるインサート材を配置後および/または、前記両母材の少なくともいづれか一方の接合面に銅メッキを施した後、金属製カプセルにてカプセリングし、その後真空脱気後、温度:620〜850℃、圧力:70〜200MPa、時間:1〜6時間とする熱間等方加圧焼結(HIP)を施して接合することを特徴とする炭素工具鋼又は炭素鋼と黄銅からなる複合体の接合方法にある
以上述べたように、本発明により、機械構造物のメタルパッキン等に使用されている炭素工具鋼又は炭素鋼と黄銅からなる複合体を確実に接合・製造することが可能であって、工業的に活用可能な複合材、及びその接合方法を提供でき、その工業化の意義は極めて大きい。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、新規な接合母材である炭素工具鋼又は炭素鋼と黄銅からなる複合体を公知のHIP処理方法により、確実に接合・製造するにあたって、適切なるインサート材質及びその層厚、メッキ材質及びその層厚、適切なるHIP処理条件等を以下に述べる種々の試験により確立し、健全なる複合体及びその接合方法を完成したものである。以下、本発明の内容を添付の表に基づいて説明する。
表1は、ラボテストによって、適正なるインサート材質、インサート材質としての銅箔厚み試験および適切なHIP処理条件を確認するために、No.1〜40を実施した。この試験に使用した接合前の一方の母材としては炭素工具鋼と炭素鋼の2種を、他方の母材としては黄銅を使用した。前記両母材のサイズとしては、いづれも各々直径50mm、厚みが50mmのものを使用した。
先ず、No.1〜8において、前記2種類の炭素工具鋼又は炭素鋼と、黄銅とのHIP処理による接合によって、インサート材として適切なる材質を確認するための試験を実施した。以下にその詳細を説明する。
試験の要領は、上記のサイズからなる母材として各々炭素工具鋼と黄銅、炭素鋼と黄銅との間に、インサート材として、サイズが直径50mm、厚みが約500μmの概略線膨張率が類似するNi−Cr鋼、銅、SUS、Agの4種類を選定・配置し、その後、金属製のカプセリングを実施、その後真空脱気後、表1に示す同一条件のHIP処理(温度780℃、圧力150MPa、時間2時間)を各々実施した。
試験後の接合部の評価方法として、UTによる接合部の欠陥調査、および接合材を機械加工により接合部を含んだ引張り試験片を作成し、接合強度の測定を実施した。その結果を表1のNo.1〜8に示す。この表1から明らかなようにインサート材としてNo.3〜4に示す銅は、UTおよび引張り試験の結果、いづれも接合部に未接合部はなく、かつ接合強度も高く健全であることが判る。一方、他のインサート材であるNo.1〜2のNi−Cr鋼、No.5〜6のSUS、No.7〜8のAgにおいては、いずれも接合部の一部又は全周にUTで検出された未接合部があり、かつ、接合強度も極めて低く接合不良を呈していた。以上の試験結果により、本発明に係る炭素工具鋼又は炭素鋼と黄銅とをHIP処理で接合する場合のインサート材として適切なる材質としては、銅が適切であることが判明した。
次に、適切な銅箔の層厚について、No.9〜30で実施した。上記No.1〜8の試験結果により、本発明のインサート材として適切なる材料が銅であると判明したため、次に、炭素工具鋼又は炭素鋼と黄銅とのHIP処理による接合において、インサート材として銅を使用し、該銅箔の厚みを種々変え、適切なる銅の厚みを確認する試験を実施した。その試験の概要は、前記No.1〜8と同じサイズの2種類の炭素工具鋼又は炭素鋼と黄銅の間に、銅箔の厚みが種々異なるインサート材を設け、その後、金属製のカプセリングを実施、その後真空脱気後、表1に示す同一条件のHIP処理(温度790℃、圧力155MPa、時間2時間)を各々実施した。試験後の接合部の評価方法として、前記No.1〜8試験と同様に接合部をUTにより未接合部の有無の確認および引張り試験片での接合強度の測定を実施した。
その結果を表1のNo.9〜30、および図1に示す。図1は、上記No.9〜30のインサート材である銅箔の厚みt1 と接合強度のデータを図示したものである。表1および図1から明らかなように、母材が炭素工具鋼および炭素鋼のいづれにおいても、インサート材として配置した銅箔の厚みが30μm未満(No.9、10、No.20、21)では、UTの結果に示す如く、未接合部が発生しており、かつ、接合強度も低くなっている。一方、銅箔の厚みが1000μmを超えると(No.18、19、No.29、30)、図1に示す如く接合強度の増加は少くなっている。従って、銅箔のコスト面より、その上限は1000μm以下が好ましい。また、黄銅には快削性を与えるために少量の鉛を含有したものがあるが、30μm以上のインサート銅を設置することで鉛の拡散による黄銅と炭素鋼あるいは炭素工具鋼の接合界面への析出を抑制できるため、黄銅の成分によらず高い強度を確保できる。
さらに、表1のNo.31〜40試験において、最適なHIP処理条件の確認試験を行った。上記No.1〜8試験及びNo.9〜30の試験結果により、本発明のインサート材として適切なる材料は銅であり、且つその適切厚みが50以上、1000μm以下であると判明したため、次に、本発明の炭素工具鋼又は炭素鋼と黄銅とのHIP処理による接合において、接合状態が最適となるHIP処理条件のための確認試験を実施した。尚、前記HIP処理条件である温度、圧力、処理時間において、前記のNo.1〜8試験およびNo.9〜30の試験結果により、該処理条件のうち、接合状態に著しく影響を与える要件としては、HIP温度であることが判明したため、No.31〜40の試験においては、以下に示す如く、HIP処理温度を種々変化させて試験を実施した。
また、HIP圧力については、該圧力が下限の70MPa未満になると接合のための圧力が低く接合不良が生ずる。一方、上限の200MPaを超えても接合部の安定性は変わることがなく、エネルギーコストがその分上昇する。従って、本発明における適切なるHIP圧力としては、70MPa以上、200MPa以下が好ましい。
更に、HIP処理時間については、下限の1時間未満になると接合するまでの拡散が進まず接合不良が生ずる。一方、上限の6時間を超えても接合部の安定性は変わることがなく、エネルギーコストがその分上昇する。従って、本発明における適切なるHIP処理時間としては、1時間以上、6時間以下とすることが好ましい。
No.31〜40の試験における概要は、前記と同じサイズの2種類の炭素工具鋼又は炭素鋼と黄銅の間に、各々同じ銅箔の厚みが110μmのインサート材を設け、その後、金属製のカプセリングを実施、その後真空脱気後、各々、表1に示す同一のHIP処理(圧力160MPa、時間2時間)で温度を種々変えて該処理を実施した。試験後の接合部の評価方法として、前記No.1〜30の試験と同様にUTにより未接合部の有無の確認および引張り試験片による接合強度の測定を実施した。その結果を表1のNo.31〜40に示す。
表1のNo.31〜40試験から、明らかなように母材が炭素工具鋼、炭素鋼のいづれにおいても、HIP処理時の温度が620℃未満、850℃を超えた場合、接合部に未接合部が発生している。即ち、前記温度が620℃未満(No.31、36)では、接合部に拡散層が生成されないため、一方、該温度が850℃を超えると(No.35、40)一方の母材である黄銅が溶解するため、いづれの場合においても接合部に未接合部が発生する。
以上、No.1〜40による試験の結果、本発明の前記炭素工具鋼又は炭素鋼と黄銅とをインサート材として銅箔を使用してHIP処理により接合する場合、その適切なる銅箔の厚みは30μm以上、1000μm以下であり、また、適切なるHIP処理条件は、温度を620以上〜850℃以下、圧力を70MPa以上、200MPa以下、時間を1以上、6時間以下とすることにより、接合が健全に実施できることが判明した。
Figure 0004246035
以上の試験の結果により、前記の如く、本発明の新規な母材である炭素工具鋼又は炭素工具鋼と黄銅との接合に銅箔のインサート材を使用し、HIPで接合して複合体を製造する場合の適正なる種々の条件が判明したため、一例として、各々サイズが直径500mm、厚みが50mmの実際の実機サイズの炭素工具鋼又は炭素工具鋼と黄銅とをインサート材として銅箔を使用してHIPにて接合した。表2にその結果を示す。表2に示す如くNo.1〜6の実施例共に、接合部における未溶着部は皆無、かつ接合強度も高く、両者の接合部は健全に接合しており本発明の作用・効果を充分に確認することができた。
Figure 0004246035
次に、メッキ層について試験を行った。前記、表1のNo.1〜40の銅箔試験で、確定した銅箔以外の適用範囲を確認するために、インサート材として、前記の銅箔の替わりに、銅メッキを施して、以下に述べる種々の試験を実施した。尚、試験用の母材としては前記同様、即ち、母材として各々炭素工具鋼と黄銅、炭素鋼と黄銅とを使用し、該母材のサイズとしては、いづれも各々直径50mm、厚みが50mmのものを使用した.
先ず、銅メッキ厚についての試験を表3のNo.1〜22にて行った。この試験の概要は、前記サイズの2種類の炭素工具鋼又は炭素鋼と黄銅において、この母材の一方に、表3に示す種々厚みのメッキ層を電気メッキ法によって、形成し、その後、金属製のカプセリングを実施、その後真空脱気後、表3に示す同一条件のHIP処理(温度790℃、圧力155MPa、時間2時間)を各々実施した。試験後の接合部の評価方法として、前記銅箔試験(表1のNo.1〜40)と同様に接合部をUTにより未接合部の有無の確認および引張り試験片による接合強さの測定を実施した。
その結果を表3のNo.1〜22および図2に示す。図2は、上記No.1〜22の銅メッキの厚みt2 と接合強度のデータを図示したものである。表3および図2から明らかなように、母材が炭素工具鋼及び炭素鋼のいずれかにおいても、そのメッキ層の厚みが30μm未満(No.1、2,No.12、13)では、UTの結果に示す如く、未接着部が発生しており、かつ、接合強度も低くなっている。一方、メッキ層の厚みが1000μmを超えると(No.10、11,No.21、22)図2に示す如く接合強度の増加は少なくなっている。従って、メッキ層形成のためのコスト面、および生産性の面より、その上限は1000μm以下が好ましい。以上により接着材としてメッキ層を施工してHIP処理により接合する場合、その適切なるメッキ層の厚みは30μm以上、1000μmであることが判明した。
次に、適切なるHIP処理条件としての試験を表3のNo.23〜32にて行った。すなわち、上記試験No.1〜22の結果により、本発明の銅メッキでの接合時の適切厚としては、30μm以上、1000μm以下であると判明したため、次に、本発明の炭素工具鋼又は炭素鋼と黄銅とのHIP処理による接合において、接合状態が最適となるHIP処理条件のための確認試験を実施した。
尚、前記HIP処理条件である温度、圧力、処理時間において、以上の種々の試験結果により、該処理条件のうち、接合状態に著しく影響を与える要件としては、HIP温度であることが判明したため、No.23〜32の試験においては、以下に示す如く、その温度を種々変化させて試験を実施した。
また、HIP圧力については、前記銅箔と同様に、該圧力が下限の70MPa未満になると接合のための圧力が低く接合不良が生ずる。一方、上限の200MPaを超えても接合部の安定性は替わることがなく、エネルギーコストがその分上昇する。従って、本発明における適切なるHIP圧力としては、70MPa以上、200MPa以下が好ましい。更に、HIP処理時間については、前記銅箔と同様に、下限の1時間未満になると接合するまでの拡散が進まず接合不良が生ずる。一方、上限の4時間を超えても接合部の安定性は変わることがなく、エネルギーコストがその分上昇する.従って、本発明における適切なるHIP処理時間としては、1時間以上、6時間以下とすることが好ましい。
表3のNo.23〜32における概要は、前記と同じサイズの2種類の炭素工具鋼又は炭素鋼と黄銅の母材の少なくともいづれか一方に、メッキ厚みが500μmのメッキ層を形成し、その後、金属製のカプセリングを実施、その後真空脱気後、各々、表1に示す同一HIP処理(圧力160MPa、時間2時間)で温度を種々変えて該処理を実施した。試験後の接合部の評価方法として、前記表1のNo.1〜22の試験と同様に接合部をUTにより未接合部の有無の確認および引張り試験片による接合強度の測定を実施した。その結果を表3のNo.13〜22に示す。
表3から、明らかなように母材が炭素工具鋼、炭素鋼のいづれにおいても、HIP処理時の温度が600℃未満(No.23、28)、850℃を超えた場合(No.27、32)、接合部に未接合部が発生している。
即ち、前記温度が600℃未満では、接合部に拡散層が生成されないため、一方、該温度が850℃を超えると一方の母材である黄銅が溶解するため、いづれの場合においても接合部に未接合部が発生する。
以上の試験No.1〜32による結果、本発明の前記炭素工具鋼又は炭素鋼と黄銅との接合において、母材の一方に、メッキ層を中間材としてHIP処理により接合する場合、その適切なる銅の厚みは30μm以上、1000μm以下であり、また適切なるHIP処理条件は、温度を620以上〜850℃以下、圧力を70以上、200MPa以下、時間を1以上、6時間以下とすることにより、接合が健全に実施できることが判明した。
尚、母材の接合部に形成させるメッキ層は、両母材の形状、サイズ等から下記の要領にて、そのメッキを施す面を設定するとよい。すなわち、両母材のうち、形状が簡素な方、またはサイズが小さい方の母材の接合面にメッキを施すとコストの面より好ましい。ただし、このメッキは、必ずしも一方に限られるものではなく、例えば、両母材の形状、サイズ等に大差が無い場合には、生産効率の点からその両面にメッキを施すことが好ましい。
Figure 0004246035
以上の試験の結果により、前記の如く、本発明の新規な母材である炭素工具鋼又は炭素鋼と黄銅との接合に銅メッキを中間材に使用し、HIPで接合して複合体を製造する場合の適正なる種々の条件が判明したため、一例として、各々サイズが直径500mm、厚みが50mmの実際の実機サイズの炭素工具鋼又は炭素鋼と黄銅とをインサート材として銅を使用してHIPにて接合した.表4にその結果を示す。表4に示す如くNo.1〜4の実施例共に、接合部における未溶着部は皆無、かつ、接合強度も高く、両者の接合部は健全に接合しており本発明の作用・効果を充分に確認することができた。
Figure 0004246035
以上、種々の試験の結果、本発明が対象としている炭素工具鋼と黄銅、炭素鋼と黄銅との間に、インサート材として適切厚みの銅箔、または、鋼メッキを施して、適切なるHIP処理により、両者を健全に接合することが可能となった。続いて、前記両者を実施、すなわち、インサート材としての銅箔およびメッキ処理をした場合について、以下の試験を実施し、その有効性を確認した。以下に詳述する。
表5は、ラボテストによって、適切なる銅箔およびメッキ層との合計厚み、およびHIP処理条件を確認するために、No.1〜40の試験を実施した。この試験に使した接合前の一方の母材として炭素工具鋼と炭素鋼の2種を、他方の母材としては黄銅を使用した。前記両母材のサイズとしては、いずれも各々直径50mm、厚みが50mmのものを使用した。先ず、No.1〜30に示す如く、前記2種類の炭素工具鋼または炭素鋼と、黄銅とのHIP処理による接合によって、インサート材としての銅箔と銅メッキとの適切なる厚みの試験の結果について、その詳細を説明する。
試験の要領は、上記のサイズからなる母材として各々炭素工具鋼と黄銅、炭素鋼と黄銅において、この母材の一方に、表5に示す種々の厚みのメッキ層を電気メッキ法によって形成し、その後、両母材の間に、表5に示す種々の厚みの銅箔を配置し、その後、金属製のカプセリングを実施、その後真空脱気後、表1に示す同一条件のHIP処理(温度790℃、圧力155MPa、時間2時間)を各々実施した。試験後の接合部の評価方法として、これまでと同様にUTによる接合部の未溶着部の有無調査および試験片による接合強度の測定を実施した。
その結果を表5のNo.1〜30に示す。この表5から明らかなように、母材が炭素工具鋼および炭素鋼のいずれにおいても、インサート材として配置した銅箔と銅メッキをした合計層厚が30μm未満(No.1,2、またNo.16,17)ではUTの結果に示す如く、未接合部が発生しており、かつ、接合強度も極めて低く、一方、合計層厚が1000μm以上(No.13、14、15またはNo.28、29、30)では、接合強度の増加が少ない。従って、コスト面で好ましくない。要するに、両者の合計層厚が、30μm未満であると、接合効果が得られず、また、該厚みが1000μmを超えると銅箔および銅メッキのコストが上昇するため好ましくない。
以上、No.1〜30の試験結果より、本発明の前記炭素工具鋼または炭素鋼と黄銅とをHIP処理により接合する場合、その適切なる銅箔と銅メッキとの合計の層厚は、30μm以上、1000μm以下であることが判明した。
続いて、表5のNo.31〜40の試験において、最適なHIP処理条件の確認試験を行った。上記、銅箔、銅メッキでの種々の試験結果により前記HIP処理条件である温度、圧力、処理時間において、該処理条件のうち、接合状態に著しく影響を与える要件としては、HIP温度であることが判明したため、No.31〜40の試験においては、以下に示す如く、HIP処理温度を種々変化させて試験を実施した。
また、HIP圧力については、該圧力が下限の70MPa未満になると接合のための圧力が低く接合不良が生ずる。一方、上限の200MPaを超えても接合部の安定性は変わることなく、エネルギーコストがその分上昇する。従って、本発明における適切なるHIP圧力としては、70MPa以上、200MPa以下が好ましい。さらに、HIP処理時間については、下限の1時間未満になると接合するまでの拡散が進まず接合不良が生ずる。一方、上限の6時間を超えても接合部の安定性は変わることなく、エネルギーコストがその分上昇する。従って、本発明における適切なるHIP処理時間としては、1時間以上、6時間以下とすることが好ましい。
No.21〜30の試験における概要は、前記と同じサイズの2種類の炭素工具鋼または炭素鋼と黄銅の間に、前記と同様に試験の要領は、上記のサイズからなる母材として各々炭素工具鋼と黄銅、炭素鋼と黄銅において、その母材の一方に、250μmの厚みのメッキ層を電気メッキ法によって形成し、その後、両母材の間に、250μmの厚みの銅箔を配置し、その後、金属製のカプセリングを実施、その後真空脱気後、表1に示す種々のHIP温度と、同一条件のHIP処理(圧力150MPa、時間2時間)を各々実施した。試験後の接合部の評価方法として、前記No.1〜30の試験と同様に接合部をUTにより未接合部の有無および試験片による接合強度の測定を実施した。
表5のNo.31〜40の試験結果から、明らかなように、母材が炭素工具鋼、炭素鋼のいずれかにおいても、HIP処理時の温度が620℃未満、850℃を超えた場合、接合部に未接合部が発生していた。すなわち、前記温度が620℃未満(No.31、36)では、接合部に拡散層が生成されないため、一方、該温度が850℃を超えると(No.35、40)、一方の母材である黄銅が溶解するため、いずれの場合においても接合部に未溶着部が発生する。
Figure 0004246035
以上、No.1〜40による試験による結果、本発明の前記炭素工具鋼または炭素鋼と黄銅とを銅メッキおよび銅箔を使用してHIP処理により接合する場合、その適切なる銅の厚みは30μm以上、1000μm以下であり、また、適切なHIP処理条件は、温度を620〜850℃、圧力を70〜200MPa、時間を1〜6時間とすることにより、接合が健全に実施できることが判明した。
以上の試験の結果により、前記の如く、本発明の新規な母材である炭素工具鋼または炭素工具鋼と黄銅との接合に、銅メッキおよび銅箔を使用し、HIPで接合して複合体を製造する場合の適正なる種々の条件が判明したため、一例として、各々サイズが直径500mm、厚みが50mmの実験の実機サイズの炭素工具鋼または炭素工具鋼と黄銅とをインサート材として銅を使用してHIPにて接合した。表2にその結果を示す。表6に示す如く、No.1〜6の実施例共に、接合図における未溶着部は皆無、かつ接合強度は高く、両者の接合部は健全に接合しており、本発明の作用、効果を充分に確認することができた。また、黄銅には快削性を与えるために少量の鉛を含有したものであるが、30μm以上のインサート銅を設置することで鉛の拡散による黄銅と炭素鋼あるいは炭素工具鋼の接合界面への析出を抑制できるため、黄銅の成分によるらず高い強度を確保できる。
Figure 0004246035
インサート材である銅箔の厚みと接合強度との関係を示す図である。 インサート材である銅メッキの厚みと接合強度との関係を示す図である。

Claims (7)

  1. 一方の母材が炭素工具鋼又は炭素鋼、他方の母材が黄銅からなり、前記両母材を銅箔からなるインサート材を使用して、温度:620〜850℃、圧力:70〜200MPa、時間:1〜6時間とする熱間等方加圧焼結(HIP)により接合してなることを特徴とする炭素工具鋼又は炭素鋼と黄銅からなる複合体。
  2. 前記熱間等方加圧焼結(HIP)処理前の銅箔の厚みt1 が30≦t1 ≦1000μmであることを特徴とする請求項1記載の炭素工具鋼又は炭素鋼と黄銅からなる複合体。
  3. 一方の母材が炭素工具鋼又は炭素鋼、他方の母材が黄銅からなり、前記両母材の少なくともいづれか一方の接合面に銅メッキが形成され、温度:620〜850℃、圧力:70〜200MPa、時間:1〜6時間とする熱間等方加圧焼結(HIP)により接合してなることを特徴とする炭素工具鋼又は炭素鋼と黄銅からなる複合体。
  4. 前記熱間等方加圧焼結(HIP)処理前の銅メッキの厚みt2 が30≦t2 ≦1000μmであることを特徴とする請求項3記載の炭素工具鋼又は炭素鋼と黄銅からなる複合体。
  5. 一方の母材が炭素工具鋼又は炭素鋼、他方の母材が黄銅からなり、前記両母材の少なくともいづれか一方の接合面に銅メッキが形成され、かつ、前記両母材を銅箔からなるインサート材を使用して、温度:620〜850℃、圧力:70〜200MPa、時間:1〜6時間とする熱間等方加圧焼結(HIP)により接合してなることを特徴とする炭素工具鋼又は炭素鋼と黄銅からなる複合体。
  6. 前記熱間等方加圧焼結(HIP)処理前の銅メッキの厚みt2 と前記熱間等方加圧焼結(HIP)処理前の銅箔の厚みt1 とが30≦t2 +t1 ≦1000μmであることを特徴とする請求項5記載の炭素工具鋼又は炭素鋼と黄銅からなる複合体。
  7. 一方の母材が炭素工具鋼又は炭素鋼、他方の母材が黄銅からなり、前記両母材の間に銅箔からなるインサート材を配置後および/または、前記両母材の少なくともいづれか一方の接合面に銅メッキを施した後、金属製カプセルにてカプセリングし、その後真空脱気後、温度:620〜850℃、圧力:70〜200MPa、時間:1〜6時間とする熱間等方加圧焼結(HIP)を施して接合することを特徴とする炭素工具鋼又は炭素鋼と黄銅からなる複合体の接合方法。
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