JP4247440B2 - バイオセンサとその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、試料中の特定成分について、迅速かつ簡便に高い精度で定量分析が可能なバイオセンサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
試料液中の特定成分について、試料液の希釈や撹拌などを行うことなく簡便に定量しうる方式として、バイオセンサが用いられている。従来のバイオセンサの欠点を改良する技術については、これまで多くの報告例がある。
例えば、特開平3−202764号公報には、反応層に親水性高分子を添加することにより、測定精度を向上させる方法が開示されている。しかし、特開平3−202764号公報に記載のグルコースセンサにおいて、フェリシアン化カリウムが析出するため、得られる反応部の形状は不均一となるため、センサの測定精度は満足できるものではなかった。
また、酵素と電子メディエータを反応層とする系に、微細結晶セルロースを共存させる技術がある(特開2001−311712号公報)。しかし、特開2001−311712号公報に記載の酵素センサでは、反応層膜厚の均一化、センサチップの精度向上やチップ個体間の性能安定化には寄与するが、試料への溶解性が悪いため十分に溶解、混合するのが遅く、結果として測定に時間がかかるという問題があった。その原因の一つとして、ヘキサシアノ鉄(III)カリウムの結晶が大きく成長し、反応層の表面が試料と接する面積が小さいために、分散および溶解しにくいことが考えられる。
また、特開2001−281202号公報には、反応層を昇華法により形成する方法が開示されている。しかし、この方法では、バイオセンサの製造過程で減圧させる必要があるので設備などに費用がかかり、低コストでの製造に向いていない。また、作業が繁雑になるため生産性も低いという問題点がある。
【発明の開示】
本発明の目的は、簡便かつ迅速に高い精度で液体試料中の特定成分の定量分析が可能なバイオセンサ、及びその製造方法を提供することにある。本発明の他の目的は、さらに長期間の保存後においても高い精度で定量分析が可能な、即ち保存安定性に優れたバイオセンサ、及びその製造方法を提供することにある。さらに、本発明の他の目的は、液体試料の保留空間部内の気体を抜く排気口を設けずとも、保留空間部に気泡を残さず、スムーズに液体試料を導入することができる構成簡素なバイオセンサを提供することにある。
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、顔料化技術を応用した析出法を採用し、バイオセンサの反応部の結晶性化合物を微粒子化することにより、センサチップ反応部の試料への分散溶解性を高めて反応時間の短縮を図れることを見出し、さらにこれを発展させて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記に示すバイオセンサ(以下、「第一発明バイオセンサ」とも呼ぶ)及びその製造方法を提供する。
項1. 電気絶縁基板(1)、該基板上に設けられた作用電極(21)と対電極(22)を有する電極部(2)、並びに該電極部(2)の一端に固着されてなる酸化還元酵素、電子受容体及び微細結晶セルロース粉体を含む反応部(4)を備えたバイオセンサの製造方法であって、次の(A1)〜(C1)に記載の各工程を順次行うことを特徴とする製造方法:
(A1)電気絶縁基板(1)上に作用電極(1)と対電極(2)とを平行近接して設ける電極部(2)形成工程、
(B1)予め酸化還元酵素、電子受容体及び微細結晶セルロースの3成分と良溶媒とからなる混合液Aを、貧溶媒に攪拌しながら滴下して分散液Bを調製する反応部用塗布液の調製工程、
(C1)前記(A1)工程で得られた電気絶縁基板(1)上の電極部(2)の一端に、前記(B1)工程で得られた反応部用塗布液を塗布・乾燥して反応部(4)を形成する反応部形成工程。
項2. 電極が、白金、金、パラジウム、及びインジウム−スズ酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1つからなる項1に記載の製造方法。
項3. 項1又は2に記載の製造方法により製造されるバイオセンサ。
項4. 項3に記載のバイオセンサを用いて、試料液中のグルコース成分、アルコール成分、乳酸成分又は尿酸成分を測定する方法。
また、本発明者は、上記のバイオセンサの反応部に、特定の親水性ポリマ成分を共存させることにより、優れた保存安定性を有するバイオセンサが得られることを見出し、さらにこれを発展させて本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、下記に示すバイオセンサ(以下、「第二発明バイオセンサ」とも呼ぶ)及びその製造方法を提供する。
項5. 電気絶縁基板(1)、該基板上に設けられた作用電極(21)と対電極(22)を有する電極部(2)、並びに該電極部(2)の一端に固着されてなる反応部(4)を備えたバイオセンサであって、該反応部(4)が酸化還元酵素、電子受容体、微細結晶セルロース粉体、及び親水性セグメントと疎水性セグメントとから構成されている親水性ポリマを主成分としてなることを特徴とするバイオセンサ。
項6. 前記親水性ポリマが、直鎖オキシアルキレンセグメントとアルキル基分枝オキシアルキレンセグメントとからなる項5に記載のバイオセンサ。
項7. 前記親水性ポリマ中のアルキル基分枝オキシアルキレンセグメントの平均分子量が1500〜4000で、全分子中の直鎖オキシアルキレンセグメントが30〜80重量%である項6に記載のバイオセンサ。
項8. 前記反応部(4)が、酸化還元酵素、電子受容体、微細結晶セルロース、及び親水性セグメントと疎水性セグメントとから構成されている親水性ポリマを含む分散液のコーティングにより形成されてなる項5〜7のいずれか1項に記載のバイオセンサ。
項9. 次の(A2)〜(C2)に記載の各工程を順次行うことを特徴とする項8に記載のバイオセンサの製造方法。
(A2)電気絶縁基板(1)上に、作用電極(21)と対電極(22)とを平行近接して設ける電極部(2)形成工程、
(B2)予め酸化還元酵素、電子受容体及び微細結晶セルロースの3成分と良溶媒とからなる混合液Maを、該3成分に対しては貧溶媒であるが前記親水性ポリマに対しては良溶媒である溶媒に溶解した該親水性ポリマ溶液Pa中に攪拌しながら滴下して分散液を調製する反応部用塗布液の調製工程、
(C2)前記(A2)工程で得られた電気絶縁基板(1)上の電極部(2)の一端に、前記(B2)工程で得られた反応部用塗布液を塗布・乾燥して反応部(4)を形成する反応部形成工程。
さらに、本発明者は、先端部において電気絶縁基板とカバーシートとがスペーサシートにより間隔を隔てて対向配置されたバイオセンサにおいて、液体試料の保留空間部において、前記スペーサの先端縁の片側にセンサ先端側へ突出する突出部を形成することにより、気泡を残さずにスムーズに液体試料を保留空間部に導入できることを見出し、さらにこれを発展させて本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、下記に示すバイオセンサ(以下、「第三発明バイオセンサ」とも呼ぶ)及びその製造方法を提供する。
項10. 先端部において電気絶縁基板(1)とカバーシート(6)とがスペーサシート(5)により間隔を隔てて対向配置され、該基板と該カバーシートと該スペーサシートの先端縁とにより形成された保留空間部(S)に、酸化還元酵素を含む反応部(4)を備え、
液体試料をセンサ先端側から該保留空間部内へ毛細管現象を利用して導入し、該液体試料と該反応部(4)との酵素反応による電気化学変化を、作用電極(21)と対電極(22)とを含む電極部(2)で検出するバイオセンサであって、
前記保留空間部(S)において、前記スペーサシートの先端縁の片側にセンサ先端側へ突出する突出部(51)を形成したことを特徴とするバイオセンサ。
項11. 前記スペーサシートの先端縁に入隅部(52)が形成されてなる項10に記載のバイオセンサ。
以下、本発明を、「第一発明バイオセンサ」、「第二発明バイオセンサ」及び「第三発明バイオセンサ」に分けて詳細に説明する。
I.第一発明バイオセンサ
第一発明バイオセンサ
本発明の第一発明バイオセンサについて、その一実施態様である図1を用いて詳細に説明する。本発明は、電気絶縁基板(1)、該基板上に設けられた作用電極(21)と対電極(22)を有する電極部(2)、並びに該電極部の一端に固着されてなる酸化還元酵素、電子受容体及び微細結晶セルロース粉体を含む反応部(4)を備えたバイオセンサの製造方法に関する。本発明のバイオセンサは、バイオセンサの反応部の形成過程において、顔料化技術を応用した析出法を利用している点に特徴を有し、これにより均一な微細結晶の反応部を構築でき、反応部の試料液に対する高い分散溶解性が達成される。
まず、第一発明バイオセンサのハード部位を構成する信号変換部位の電極部(2)から説明する。
該電極部(2)は、作用電極(21)(測定電極とも呼ぶ。)と対電極(22)(必要に応じて、参照電極も有していてもよい)とが1対となって平行近接して、電気絶縁基板(1)上に設けられている。該基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、脂肪族ユニットと芳香族ユニットとからなる生分解性ポリエステル樹脂等のポリエステル系樹脂フイルム、より耐熱性、耐薬品性、強度等に優れるポリアミドイミドフイルム、ポリイミドフイルム等のプラスチックフイルム、セラミック等の無機系基板が挙げられる。その厚さは、約50〜200μm程度であればよい。
一般には、プラスチックフイルムが用いられるが、製造の容易さ、耐熱性、耐薬品性、強度等の特性を合わせ持つという意味から、ポリエステル系樹脂フイルムとポリイミドフイルムとをラミネートした2層基板とする場合もある。
尚、ポリエステル系樹脂フイルムの場合には、見易さ等の点から、酸化チタン等を練り込み白色基板とするのが好ましい。
作用電極(21)と対電極(22)は、前記基板(1)上に、(直接又は間接的に)例えば白金、金、パラジウム、インジウム−スズ酸化物等の良電導体によって形成される。形成手段は、ホットスタンピングによっても作れるが、真空蒸着又はスパッタリングによる方が微細な電極パターンを精度良く、迅速に形成できるので好ましい。このスパッタリングの場合は、該両極形成外をマスキングすることで一挙に形成できる。
勿論、まず該良導体による全面薄膜形成してから、これをフォトエッチング法によって、相当する電極パターンにすることでも形成できる。
電極の厚さは、前記良電導体の有する固有抵抗により異なるが、必要以上に厚くならないようにする。一般には約30〜150nmで良い。
電極の形状は、基本的にはストライプ状で、作用電極(21)及び対電極(22)を前記基板上に平行近接配置とする。そして反応部(4)が設けられる該電極先端の形状は、一般にはストライプ状そのままであるが、該反応部との接触面積をより大きくするように、例えば曲折形状にしても良い。
尚、該電極のもう一端は、測定装置に内蔵される電位走査部に連結される端子となり、一般に測定装置に着脱自在となっていてもよい。
また、電極部(2)の一端に設けられる反応部(4)は、マスクシート(3)に設けられた反応部用セル(31)内に、後述の3成分混合液を塗布して形成される。反応部(4)は、反応部用セル(31)内において、作用電極(21)と対電極(22)とを共に被覆するように設けられ、該3成分混合液が他部分に漏れることのないように形成される。
参考までに、以上の信号変換部位の構造を概略的に図1でもって図解しておく。図1において、電気絶縁基板(1)上に平行に近接して設けられたストライプ状の作用電極(21)と対電極(22)を有し、該両電極の上面にマスクシート(3)、電気絶縁性のスペーサシート(5)及びカバーシート(6)が順に積層されている。マスクシート(3)には反応部用セル(31)が設けられ、ここに後述する3成分からなる反応部(4)が形成される。該スペーサシート(5)には、センサの先端(Rカーブ)の縁の片側に突出部(51)が設けられ、その根本に入隅部(52)が設けられている。そして、該スペーサシート(5)上に電気絶縁性のカバーシート(6)が被覆されている。これにより反応部(4)に通じる試料吸入部(15)が形成される。
試料の吸入量と吸入のし易さは、試料吸入口の形状、断面積等によって左右される。そして反応部(4)の容積は、マスクシート(3)の厚さと反応部用セル(31)の面積によって決まる。各々、適宜変えて最適条件を決めると良い。
次に反応部(4)について説明する。
該反応部(4)は、前記の通り、酸化還元酵素、電子受容体及び微細結晶セルロースの3成分を主成分として形成される膜(或いは層)からなる。
以下個々の成分から説明する。
まず酸化還元酵素は、液体試料と接しその中のある検査成分と選択的に酸化還元的に反応し、それを認識する中枢成分である。従って少なくともこの酸化還元酵素はなくてはならないものである。ここで該酵素と選択的に酸化還元反応する成分としては、例えば、グルコース成分、アルコール成分、乳酸成分、尿酸成分である。勿論、これ等の成分の全てが一種の酵素によって行われるのではなく、これ等成分と選択的に反応する各種酵素が使用される。
例えば、グルコースは、グルコースオキシターゼと選択的に反応するが、実際の反応は水と酸素の共存のもとで行われ、グルコン酸と過酸化水素が生成する。また、アルコール値を測定する場合には、アルコールオキシターゼ又はアルコールデヒドロゲナーゼを使用する。また、乳酸を測定する場合には、乳酸オキシターゼ又は乳酸デヒドロゲナーゼを使用する。更に尿酸を測定する場合には、ウリカーゼを使用する。
しかしながら、一般には前記酵素のみでは認識応答が遅く測定精度も良くないので、これを補うために電子受容体(電子メディエータとも呼ぶ)を共存させることが行われている。この電子受容体を共存させて用いられる代表例がグルコースセンサであり、例えば血液を検体とする血糖値の測定である。
電子受容体は、一般には酵素の還元酸化を促進させる無機又は有機の微細粉末状化合物である。具体的には、例えば、フェリシアン化アルカリ金属塩(特にカリウム金属塩が好ましい)、フェロセン又はそのアルキル置換体、p−ベンゾキノン、メチレンブルー、β−ナフトキノン4−スルホン酸カリウム、フェナジンメトサルフェート、2、6−ジクロロフェノールインドフェノール等が挙げられる。就中、フェリシアン化アルカリ金属塩、フェロセン系が有効に作用する。これは、電子移動媒体としての働きが安定しており、水、アルコール類、又はこれら混合溶媒等の水性溶媒に良く溶けるからである。
尚、この電子受容体粉末のサイズは、約5〜100μmである。
前記2成分からなる反応部でも実用レベルのセンサは得られるが、両成分の水溶液を前記電極部に塗布して得られるバイオセンサでは、その使用環境等によって測定精度にバラツキが出やすい。つまり、常に一定性能を有するバイオセンサが得がたい。この原因は良く判らないが、塗布後に析出形成される結晶構造に起因するものと考えられる。
第3成分としての微細結晶セルロースは、前記の測定精度のバラツキを改善する成分として添加される。このバラツキの改善の因子は種々考えられる。例えば、電子受容体の電極への直接接触のチャンスが少なくなるとかの要因で電極と電子受容体間での電気化学的反応を抑制されることとか、酵素粒子と電子受容体粒子とをより微細に均一に分散させることとか、また例えば血液を検体とする場合に血漿中に微量の血球が混入されていてもこれを該セルロースが吸着してくれることとか、該セルロースがネットワークを形成することで前記2成分の系外への飛散が防止されるなどの因子が挙げられる。これ等の作用因子が相乗的に働き、その結果測定精度のバラツキが抑制されるものと考えられる。
ここで微細結晶セルロースは、植物繊維中の結晶部分を抽出して得た微細粒で、その大きさは一般に直径約10μm以下、長さ300μm以下である。勿論この微細結晶セルロースが主体になるが、これに同時的に取得できる非晶セルロース微粉末が混入されていても良い。
第一発明バイオセンサの製造方法
第一発明バイオセンサの製造方法は、次の(A1)〜(C1)に記載の各工程を順次行うことを特徴とする:
(A1)電気絶縁基板(1)上に、作用電極(21)と対電極(22)とを平行近接して設ける電極部(2)形成工程、
(B1)予め酸化還元酵素、電子受容体及び微細結晶セルロースの3成分と良溶媒からなる混合液Aを、貧溶媒に攪拌しながら滴下して分散液Bを調製する反応部用塗布液の調製工程、
(C1)前記(A1)工程で得られた電気絶縁基板(1)上の電極部(2)の一端に、前記(B1)工程で得られた反応部用塗布液を塗布・乾燥して反応部(4)を形成する反応部形成工程。
上記の製造方法は、バイオセンサの反応部(4)の形成過程(B1)において、顔料化技術を応用した析出法を利用している点に特徴を有し、これにより均一な微細結晶の反応部を構築でき、反応部の試料液に対する高い分散溶解性が達成される。
まず、(A1)の電極部形成工程について説明する。電気絶縁基板(1)上に、作用電極(21)と対電極(22)とが平行近接して設けられ電極部(2)が形成される。
電気絶縁基板(1)上に電極部(2)を形成する方法は種々の方法を採用することができるが、例えば、該基板(1)上に、ホットスタンピング、直接真空蒸着、スパッタリング等により電極パターンを形成する方法、フォトエッチング法により電極パターンを形成する方法、或いは、導電性材料を有する電極テープを該基板(1)に接着する方法などが挙げられる。
導電性材料を有する電極テープを該基板(1)に接着する方法の具体例を下記に示す。薄くて支持性があり耐熱性に優れるポリイミドや芳香族ポリイミドなどのプラスチック電気絶縁性材料シート上に、白金、金、パラジウム、インジウム−スズ酸化物などの導電性材料を蒸着あるいはスパッタリングし、その該電気絶縁性材料シートの裏面にエチレン酢酸ビニルなどの熱融着材料をコーティングする。この多層シートを細断してテープ状にしたものを電極テープとする。そして、上記絶縁性基板(1)に、この電極テープを熱接着することにより、電極部(2)が形成される。
また、スパッタリング等により電極パターンを形成する方法としては、所望する両電極形状がストライプ状である場合は、まずスパッタリング用のマスキング材として2本のストライプ状の平行穴が打ち抜かれたマスク用板を使い、これをポリイミドフイルムの上面に隙間なく接する状態で固設する。該フイルムにスパッタリングをおこない、ストライプ状の窓穴からスパッタリング白金が投射されて、連続した2本のストライプ状電極がポリイミドフイルム上に密着形成される。電極の形成されたポリイミドフィルムを、接着剤を介してPETフィルムにラミネートすることにより電極部(2)が形成される。
或いは、電気絶縁基板(1)(例えば、PETフィルム)上に、直接、導電性材料をスパッタリングして電極部(2)を形成してもよい。
次に、(B1)の反応部用塗布液の調製工程について説明する。
本発明の反応部用塗布液は、酸化還元酵素、電子受容体及び微細結晶セルロース粉体の3成分を含む反応試薬系からなる。反応試薬系が、微細結晶セルロース粉体を含むので、反応部作成における成膜性に優れている。上記の3成分は前述したものを用いることができる。
本発明の良溶媒とは、酸化還元酵素および電子受容体に対し溶解度の高い溶媒であれば良く、水又は含水溶媒の水性良溶媒が好ましい。含水溶媒は、水と相溶性のあるもの、例えばメタノール、エタノール、ジオキサン、イソプロピルアルコールなどと水の混合溶液である。
本発明の反応試薬系に対する貧溶媒とは、水に溶けて、かつ、酸化還元酵素および電子受容体の溶解度を下げる溶媒であれば良く、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、アルキレングリコール、プロピレンアルコール、ブタノールなどが挙げられ、エチレングルコールモノエチルエーテル(セロソルブ)が好ましい。
上記工程(B1)で生成する分散液B中には、上記3成分の反応試薬系が一部溶けていても良い。具体的には、酸化還元酵素及び電子受容体の2成分は実質的に溶解していてもよく、微細結晶セルロース粉体は分散或いは懸濁状態であればよい。
上記良溶媒と貧溶媒の組合せとして、水−エチレングルコールモノエチルエーテルが好ましい。また、良溶媒と貧溶媒の量の比は、1:0.5〜10程度、好ましくは1:1〜3程度である。
(B1)の電極形成工程の具体例を示す。微細結晶セルロースの水懸濁液をホモジナイザーで撹拌し、これに酸化還元酵素(グルコースオキシダーゼ等)及び電子受容体(フェリシアン化カリウム等)を加え撹拌して混合液Aを得る。本発明の1つの実施態様として、例えば、100%の水100mLに対し、グルコースオキシダーゼ0.1〜10g、フェリシアン化カリウム5〜70g、微細結晶セルロース1〜10gの割合で前記混合液Aが製造される。貧溶媒(エチレングリコールモノエチルエーテル等)を撹拌しながら、これに該混合液Aを滴下することにより分散液Bが調整される。これを反応部用塗布液とする。
上記のいわゆる析出法による分散液Bの調整は、その析出する速度が大きいほど、より微細な結晶が得られる。また、上記反応部(4)における乾燥工程の簡便さを考慮すると、良溶媒及び貧溶媒の沸点がお互いに近いものを選択することが好ましい。
最後に、(C1)の反応部形成工程について説明する。前記(A1)工程で得られた電極形成板の電極部(2)の一端に、反応部用塗布液の所定量を滴下して塗布し、乾燥して膜が形成される。
具体的には、平行に近接して設けられた作用電極(21)と対電極(22)を有する電気絶縁基板(1)上にマスクシート(3)を熱接着する。該マスクシート(3)は、熱融着性シートからなり、センサチップ反応部の電極面積を規制するような反応部用セル(31)が設けられている。つまり、センサの一端に該作用電極(21)と対電極(22)の一部が見える窓ができる様に反応部用セル(31)が設けられている。
前記(B1)工程で得られた3成分からなる反応部用塗布液を塗布する部分は、電気絶縁基板(1)上のマスクシート(3)に設けられた反応部用セル(31)内である。該反応部用セル(31)内の作用電極(21)及び対電極(22)の双方を覆うように、反応部用塗布液が塗布される。該塗布液は、ピペット、ノズル等を用いて塗布され、オーブンなどに一定時間入れて乾燥することにより膜が形成される。この膜は作用電極(1)と対電極(2)にまたがって固着され、反応部(4)として機能する。
さらに、このマスクシート(3)上に、電気絶縁性のスペーサシート(5)及びカバーシート(6)が順に積層されている。該スペーサシート(5)は、センサの先端(Rカーブ)の縁の片側に突出部(51)が設けられ、必要に応じその根本に入隅部(52)が設けられている。この突出部(51)を設けることにより、本発明のセンサが試料液と接した際、毛細管現象を利用して保留空間部に気泡を残さずスムーズに試料液を導入することができる。スペーサシート(5)は、一定の厚みを持つ両面接着シートであればよい。
そして、該スペーサシート(5)上に電気絶縁性のカバーシート(6)が被覆されている。これにより反応部(4)に通じる試料吸入部(15)が形成される。
検体吸入量と吸入のし易さは、試料吸入口の形状、断面積等によって左右される。そして反応部(4)の容積は、マスクシート(3)の厚さと反応部用セル(31)の面積によって決まる。各々、適宜変えて最適条件を決めると良い。
なお、該反応部は、作用電極(21)と対電極(22)とにまたがって固着されているのが良いが、作用電極(21)と対電極(22)とは必ずしも同等の形状や配置に設けられていなくてもよい。
以上の(A1)〜(C1)の工程を経て所望するバイオセンサが得られるが、最後には、バイオセンサチップとしてカット加工して全工程が終了する。
II.第二発明バイオセンサ
第二発明バイオセンサ
本発明の第二発明バイオセンサについて、その一実施態様である図7〜9を用いて詳細に説明する。第二発明バイオセンサは、電気絶縁基板(1)、該基板上に設けられた作用電極(21)と対電極(22)を有する電極、並びに該電極の一端に固着されてなる反応部(4)を備えたバイオセンサであって、該反応部が酸化還元酵素、電子受容体、微細結晶セルロース粉体、及び親水性セグメントと疎水性セグメントとから構成されている親水性ポリマを主成分としてなることを特徴としている。
本発明のハード部位を構成する信号変換部位の電極部(2)については、前記の「I.第一発明バイオセンサ」の「電極部(2)」の記載と同様である。
次に反応部(4)について説明する。
該反応部(4)は、前記の通り、酸化還元酵素と電子受容体と微細結晶セルロースと親水性セグメントと疎水性セグメントとにより構成されている親水性ポリマとの4成分を主成分として形成される膜(或いは層)である。
該反応部(4)を構成する酸化還元酵素、電子受容体及び微細結晶セルロースの3成分については、前記の「I.第一発明バイオセンサ」の「反応部(4)」の記載と同様である。
第一発明バイオセンサでは、上記3成分による反応部を採用しており、バラツキも大きく改善され、高い精度で試料中の成分を測定することができる。しかし、実際に使用する段階に至っては、更なる種々の事前チェックが行われるため、その中で次のような点で更なる改良の余地があった。
それは、製造直後は高い精度で測定が可能であるが、製造してからユーザが実用するまでの期間が長い場合、測定値が低下する傾向がみられ正確な測定に難点があった。つまり反応部の反応性に経時的な劣化が見られるため、長期間の保存安定性についてさらなる改善の余地があった。また、検体中に有する成分量(絶対値)と実測値との差を更に近づけ、測定精度をさらに高める必要性もあった。
このような、第一発明バイオセンサに残された課題を解決するために、第一発明バイオセンサの反応部に第4成分として、前記の「親水性セグメントと疎水性セグメントとをもって構成されている親水性ポリマ」を添加することが有効であることが見出された。従って、該ポリマは、前記3成分と該親水性ポリマの組合せでのみ大きな作用効果をもたらすものであり、該3成分中の例えば微細結晶セルロースが欠けても、他の成分に置換されても、本発明でいう課題は解決されるものではない。
前記3成分の中に、更に該ポリマを混在させることが有効である理由は明確ではないが、次のような作用効果によることが推察される。
つまりこの4成分により、前記3成分による反応部(4)よりも均一な微細な粒子が形成され、しかも該ポリマが3成分を相互に緻密に繋いだ状態の反応部(4)が形成されるからと考えられる。これにより、以後の反応部内部の状態の変化が小さくなり外部環境(特に乾燥環境)に対しての影響もより小さくなるため、本発明のバイオセンサは高い経時的安定性を発揮する。また、反応部(4)の粒子が微細であり成分相互が緻密に繋がれているため、検体成分との反応がより迅速かつ定量的に進行し、高い測定精度が発揮される。
本第二発明バイオセンサは、基本的には第一発明バイオセンサの構造を有しており、反応部(4)において上記の4成分系を採用する点で相違する。
前記親水性ポリマとしては、例えば次の内容のポリマである。まず親水性という意味は、水又は水に溶解する少なくとも水酸基結合の脂肪族アルコール又はこれ等の混合溶媒に対して、溶解又は水和して膨潤する性質をいう。
具体的には、例えば、ポリアクリル酸系のアルカリ金属塩又はポリアクリル酸系のアルカノールアミン塩とか、ポリオキシアルキレン系等が挙げられる。就中ポリオキシアルキレン系が好ましい。このものとしては、例えば高級脂肪族基(疎水性)を一末端に有するポリオキシエチレンアルキル(親水性)エーテル、ポリエチレングリコール(親水性)の高級脂肪酸エステル(疎水性)、直鎖オキシアルキレンセグメント(親水性)とアルキル基分枝オキシアルキレンセグメント(疎水性)とからなるポリマ等が挙げられるが、就中後者の直鎖オキシアルキレンセグメントとアルキル基分枝オキシアルキレンセグメントとからなる親水性ポリマ(以下これを「Aポリマ」と呼ぶ。)がより好ましい。
これらの親水性ポリマを採用することにより、前記の親水性ポリマ混在の作用効果(高い経時的安定性、高い測定精度等)をより一層大きなものとする。また、親水性ポリマがより明確な両性を有することで、例えば項9に記載するバイオセンサの製造中、特に(B2)の反応部用塗布液の調製工程を有効に行うことができるため、前記の作用効果を促進できる。さらに、前記電極基板と反応部用塗布液の間が親和的になるためコーティングもし易く、各シートの密着性も向上する。
従って、親水性ポリマのうち、全くの親水性セグメントだけの場合や、疎水性セグメントだけの場合では、高いレベルでの前記の長期間保存安定性等の効果は得がたい。
前記Aポリマにおいて、親水性を発現する直鎖オキシアルキレンセグメントと疎水性を発現するアルキル基分枝オキシアルキレンセグメントの結合は、例えばランダムか、交互に規則的に結合(ブロック構造)していてもよいが、後者のブロック構造であるのがより好ましい。これは該ユニット間の分子量のコントロールが容易で、それによる親水性と疎水性の程度も明確かつ容易に変更することができるからである。
このAポリマの両性のバランスは、各フラグメントの分子量と含有量とで制御することもでき、本発明では、項7で規定するものが好ましい。つまり、この親水性ポリマ中のアルキル基分枝オキシアルキレンセグメントを平均分子量でいい、直鎖オキシアルキレンセグメントを重量%でいう。具体的には、前者は好ましくは1500〜4000、より好ましくは2000〜3000、後者は好ましくは30〜80重量%、より好ましくは40〜70重量%ある。
かかる親水性ポリマを用いると、形成される反応部(4)の表面がベトツキ感ない状態で形成されると共に、乾燥環境に置かれてもその反応部が異常に乾燥した状態に変化したり、その結果反応部の作用に悪影響をもたらすといった危険性もなくなる。つまりより優れた保存安定性能が付与される。
尚、前記直鎖オキシアルキレンセグメントを形成するモノマ成分は、例えばエチレンオキサイド、1、3−プロピレンオキサイド、1,4−ブチレンオキサイド等の直鎖アルキレンオキサイドの開環重合ポリマユニットであり、そして疎水性を発現するアルキル基分枝オキシアルキレンセグメントを形成するモノマ成分は、メチルエチレンオキサイド、エチルエチレンオキサイド等のアルキル基が分枝(側鎖)しているアルキレンオキサイドの開環重合ポリマユニットである。
基本的には前記4成分を主として組成すれば良いが、その場合、各々の組成割合を次のようにするのがより有効である。酸化還元酵素0.1〜10重量%、好ましくは0.3〜6重量%、電子受容体20〜90重量%、好ましくは35〜86重量%、微細結晶セルロース1〜30重量%、好ましくは3〜20重量%、親水性ポリマ2〜40重量%、好ましくは5〜30重量%である。
第二発明バイオセンサの製造方法
本発明のバイオセンサは、前記4成分を主成分とする反応部(4)を有することを特徴としており、該反応部(4)と他の構成が相乗的に作用しあって初めて前記の大きな改善効果(高い経時的安定性、高い測定精度等)が奏される。これも如何なる製造手段を採っても全く同じレベルで得られるとは限らない。特に、一定以上の高い性能を有する該バイオセンサを効率的に製造できる方法として、項9で提供される製造方法が挙げられる。
具体的には、次の(A2)〜(C2)に記載の各工程を順次行うことを特徴とするバイオセンサの製造方法である。
(A2)電気絶縁基板(1)上に、作用電極(21)と対電極(22)とを平行近接して設ける電極部(2)形成工程、
(B2)予め酸化還元酵素、電子受容体及び微細結晶セルロースの3成分と良溶媒とからなる混合液Maを、該3成分に対しては貧溶媒であるが前記親水性ポリマに対しては良溶媒である水性溶媒に溶解した該親水性ポリマ溶液Pa中に攪拌しながら滴下して分散液を調製する反応部用塗布液の調製工程、
(C2)前記(A2)工程で得られた電気絶縁基板(1)上の電極部の一端に、前記(B2)工程で得られた反応部用塗布液を塗布・乾燥して反応部(4)を形成する反応部形成工程。
上記の製造方法は、各種考えられる方法の中で、特に項8で提供する反応部を形成するためにコーティングする塗布液が、分散液(又は懸濁液)の状態にある点に特徴を有している。
まず、(A2)の電極形成工程は、電気絶縁基板(1)上に作用電極(21)と対電極(22)とを平行近接して設ける工程である。電気絶縁基板(1)上に電極部(2)を形成する方法は種々の方法を採用することができるが、例えば、該基板(1)上に、ホットスタンピング、直接真空蒸着、スパッタリング等により電極パターンを形成する方法、フォトエッチング法により電極パターンを形成する方法、或いは、導電性材料を有する電極テープを該基板(1)に接着する方法などが挙げられる。
導電性材料を有する電極テープを該基板(1)に接着する方法の具体例を下記に示す。薄くて支持性があり耐熱性に優れるポリイミドや芳香族ポリイミドなどのプラスチック電気絶縁性材料シート上に、白金、金、パラジウム、インジウム−スズ酸化物などの導電性材料を蒸着あるいはスパッタリングし、その該電気絶縁性材料シートの裏面にエチレン酢酸ビニルなどの熱融着材料をコーティングする。この多層シートを細断してテープ状にしたものを電極テープとする。そして、上記絶縁性基板(1)に、この電極テープを熱接着することにより、電極部(2)が形成される。
また、基板(1)として2層基板を採用しその上に電極部(2)を設けることも好ましい態様として例示できる。該基板として好ましいのは、前記例示する中で、ポリエステル系樹脂フイルムとポリイミドフイルムをラミネートした2層基板である。この場合について説明することにする。
ポリエステル系樹脂フイルムとしては、例えば、PETフィルムが挙げられ、その厚さとしては一般に70〜150μm程度である。なお、該ポリエステル系樹脂フィルムは、それ自身で基体として使用することもできる。本発明では、ポリエステル系樹脂フイルムに積層するポリイミドフイルムとしては、一般に厚さ20〜50μm程度の(薄い)芳香族ポリイミドフイルム(以下PIフイルム)が用いられる。
この方法によれば、予めPIフイルム上に前記両電極を形成しておき、接着剤を介して該PIフイルムの裏面とPETフイルムをラミネートする。これにより一挙に2層基板と共に、電極の形成も終了する。そして耐熱、耐薬品性、各種物性に卓越した電極板にもなるというものである。
予めPIフイルムに該電極を形成しておき、これをPETフイルムにラミネートする理由は次による。PIフイルムは強靭で高耐熱性があり、より薄いフイルムを大量にロール巻きで使用することができ、且つ形成される電極の密着性にも優れていることにより、スパッタリング法による電極形成に好適に用いられる。つまり、より長尺の該フイルムが、ロール対ロールでより長時間連続供給でき、生産性の高い、高品質の電極板が得られ易いからである。
前記スパッタリング法で使用する良電導体としては、高純度の白金が好ましく使用される。この場合のスパッタリング条件は、アルゴン雰囲気下、真空度1.3〜1.3×10−2Pa程度、投入電力0.2〜3kW程度、スパッタリング速度0.2〜3.0m/分程度である。
マスキングによる電極形成は次のようにして行う。例えば、所望する両電極形状がストライプ状である場合は、まずマスキング材として2本のストライプ状の平行穴が打ち抜かれたマスク用板を使い、これを連続供給されるPIフイルムの上面に隙間なく接する状態で固設しておく。前記の速度で該フイルムの供給と同時的にスパッタリングをスタートする。抜いたストライプ状の窓穴から、スパッタリング白金が投射されて、連続した2本のストライプ状電極が密着形成される。ロール対ロールで供給され巻き取られる。
尚、一回のスパッタリングでは所定厚さの電極が得られない場合は、巻き戻しつつ更にスパッタリングを繰り返せばよい。
前記電極の形成されたPIフイルムは、PETフイルムに接着剤を介してラミネートする。そして、図7で説明する試料吸入部(15)と反応部(4)とが形成されるように、突出部(51)を設けたスペーサシート(5)と外面カバーシート(6)とを順次接着剤を介して接着積層する。勿論、この外面カバーシート(6)は、(C2)工程を経た後に、バイオセンサの他端に設けられた端子部分は残して被覆される。
次に、(B2)工程の反応部用塗布液が調製される。該工程では、まず酸化還元酵素、電子受容体及び微細結晶セルロースの3成分を前記組成比以内で良溶媒中に添加して、混合液Maが調製される。
ここで良溶媒とは、該3成分が溶解或いは分散(懸濁)する水を含む溶媒をいうが、具体的には水又は水と混和する低級1価脂肪族アルコール(せいぜいC3迄のアルコール等)との混合液が例示できる。なお、該3成分のうち、酸化還元酵素及び電子受容体は、該良溶媒に実質的に溶解しているが、微細結晶セルロースは分散状態或いは懸濁状態であればよい。
混合液Maの調製方法は、3成分を該良溶媒に同時に添加し、常温で攪拌すればよい。或いは、まず微細結晶セルロースを水(蒸留水)に懸濁させておき(約4〜7重量%程度の低濃度としホモジナイザーを使って懸濁するのが良い)、この中に残り2成分を添加し撹拌するという逐次的方法も採用できる。
一方、別途親水性ポリマの溶液Paが調製される。溶液Paに使う溶媒は、親水性ポリマ自身に対しては略完全に溶解する溶媒(良溶媒)であるが、前記3成分に対しては難溶ないし実質的に不溶性である溶媒(貧溶媒)である溶媒(以下、「特定溶媒」とも呼ぶ)である。
この「特定溶媒」としては、例えば、C4以上の1価脂肪族アルコール、2〜3価の高級脂肪族多価アルコール又は該多価アルコールの水酸基の少なくとも1個がアルキル基置換された多価アルコールが挙げられる。この中でも、1個の水酸基をアルキル基置換した2価の脂肪族アルコールが好ましく、具体的には例えばエチレングリコールのモノメチル又はモノエチルエーテルである。勿論、溶解性や分散性をコントロールする意味で、これ等有機溶媒の中で2種以上を混合して調整することもできる。
そして前記3成分溶解の水性混合液Maが、前記親水性ポリマ溶液Pa中に攪拌の下で滴下される。この攪拌も余り激しくするのではなく、静かに行い、そして滴下も、一定量を一定時間要してゆっくりと滴下するようにするのが良い。これにより、粒径が均一で微細な結晶粒子の生成が可能となる。このような特別な混合手段は、特に反応部用塗布液を調製するのに有効である。
或いは、水性混合液Maの中に、予め3成分に加え親水性ポリマも混合させておいて、上記の「特定溶媒」のみを滴下混合しても良い。或いは、該水性溶液Maの中に親水性ポリマ溶液Paを滴下混合するという手順を採っても良い。しかしながら、前記(B2)工程の手順の方がより好ましい反応部(4)を形成することができる。
本発明では、4成分からなる反応部用塗布液が分散液である点に特徴を有している。本来前記3成分は結晶性の微粉体であることから、塗布後乾燥して膜を形成した時点では、各々元の結晶粒子になって混合分散している。しかし、各粒子の大きさは大小様々で不均一で混合分散されているため、これが各成分の相互間の繋がりを悪くし、経時的安定性が劣る原因になっている。
しかしながら、4成分からなる反応部用塗布液は、「水性溶媒」を含む親水性ポリマ中で析出させた分散液(懸濁液)の状態である。しかも、この分散(懸濁)状態にある粒子が、同じような粒径で、且つ超微細粒になっている。このような塗布液が塗布・乾燥されて反応部(4)として形成されると、この粒子は親水性ポリマを介して分散状態が維持される。このような状態で形成される該反応部では、検体との反応も迅速で、且つ周囲の環境等にも影響されることなく長期間安定を保ち続ける。
次の(C2)の反応部形成工程では、前記(B2)工程で得られた電極形成板の電極部(2)の一端に、反応部用塗布液の所定量を滴下して塗布し、乾燥して膜が形成される。この膜は作用電極(21)と対電極(22)にまたがって固着され、反応部(4)として機能する。
具体的には、前記「I.第一発明バイオセンサ」の「(C1)の反応部形成工程」と同様にして実施される。
以上の(A2)〜(C2)の工程を経て所望するバイオセンサが得られるが、最後には、バイオセンサチップとしてカット加工して全工程が終了する。
かくして得られる本発明の第一発明バイオセンサ及び第二発明バイオセンサは、各種試料液中の特定成分の定量に用いられる。具体的には、試料液中のグルコース成分、アルコール成分、乳酸成分又は尿酸成分などが、バラツキ無く高精度に測定される。いずれも、公知のバイオセンサの測定方法を用いることができる。特に、試料液中のグルコース成分を測定する場合は、実施例3に記載の方法を用いて好適に測定される。
III.第三発明バイオセンサ
上記において、バイオセンサの反応部(4)に特徴を有する第一発明及び第二発明バイオセンサについて詳述した。次に、図7〜図9を参照しながら、バイオセンサの液体試料吸入部の形状に特徴を有する第三発明バイオセンサについて詳細に説明する。なお、第三発明バイオセンサの反応部(4)は、前記の第一発明バイオセンサ又は第二発明バイオセンサで記載した組成を採用してもよい。
図7及び図8において、本実施形態の電気絶縁基板(1)は、長板形状に形成され、その先端部は略半円形状に形成されている。上記基板(1)上に配設された電極部(2)は、基板(1)の長手方向に沿って略平行に配設された作用電極(21)と対電極(22)とから構成されている。本実施形態では、所定のポリイミドフィルムに白金膜をスパッタリング蒸着した2本の電極フィルムを、0.5mm程度の間隔で基板(1)上に接着剤で貼着して電極部(2)を構成している。
上記電極部(2)を部分的に被覆するために基板(1)上に積層された電気絶縁性のマスクシート(3)である。このマスクシート(3)は、略半円形状を成す先端部側に略長円形状(或いは長方形状)の反応部用セル(窓)(31)を備え、この反応部用セル(31)により電極部(2)の先端側を露出させている。また、マスクシート(3)は、基板(1)の後端側には積層されておらず、電極部(2)の後端側を露出させている。こうして、電極部(2)の先端側の露出部分が次述する反応部(4)と液体試料との酵素反応による電気化学変化を検出するための検出部とされ、また、電極部(2)の後端側の露出部分が測定装置に接続するための接続端子とされている。本実施形態では、先端部が略半円形状を成すホットメルトフィルムを、マスクシート(3)として基板(1)上に熱圧着して積層している。
上記マスクシート(3)の反応部用セル(31)内において電極部(2)の検出部上に配設された反応部(4)は、測定すべき液体試料の特定成分と反応する酵素と、酵素反応時の電子を授与する電子授与体とから構成されている。反応部(4)の構成は前述した通りである。
上記マスクシート(3)の先端の略半円形状部分を除いてマスクシート(3)上に配設された電気絶縁性スペーサシート(5)の先端縁には、その幅方向の片側にセンサ先端側へ突出する突出部(51)が形成されており、突出部(51)の根本部分に入隅部(52)が形成されている。本実施形態では、両面に粘着層を備えたPET系フィルムを、スペーサシート(5)としてマスクシート(3)上に積層している。
上記スペーサシート(5)上に配設された電気絶縁性カバーシート(6)の先端部は、上記基板(1)の先端部よりも若干小さな略半円形状に形成されている。このカバーシート(6)の半円形状部分において、カバーシート(6)と基板(1)とがスペーサシート(5)により所定間隔を隔てて対向配置されている。このことにより、センサ先端側において、基板(1)上のマスクシート(3)及び反応部(4)の上面と、カバーシート(6)の下面と、スペーサシート(5)の先端縁とによって囲んだ保留空間部Sが形成されている。本実施形態では、透明のPET系フィルムを、カバーシート(6)として、スペーサシート(5)の上面に積層している。
以上のように構成されたバイオセンサ(10)を用いて液体試料を測定するときは、まず、バイオセンサ(10)をその後端部で測定装置に取り付けた後、測定すべき液体試料をバイオセンサ(10)の先端の試料吸入部(15)に接触させ、液体試料を毛細管現象を利用して保留空間部(S)内へ導入する。そして、保留空間部(S)内で液体試料の特定成分と反応部(4)とを酵素反応させ、その際の電気化学変化を電極部(2)で検出して液体試料中の特定成分を測定装置で測定する。
このバイオセンサ(10)は、スペーサシート(5)の先端縁の片側に突出部(51)を形成しているので、毛細管現象によりセンサ先端の試料吸入部(15)から流入した液体試料を、最初に突出部(51)に接触させることができる。そして、突出部(51)のぬれ性を利用して突出部(51)で、毛細管現象による液体試料の導入を促進させることができる。したがって、図9に示すように、センサ先端の試料吸入部(15)側から流入した液体試料の前縁Fが突出部(51)に接触した後は、この液体試料を突出部(51)の側面に沿わせて片側から優先的に流入させることができ、保留空間部(S)の気体を突出部(51)の反対側へ排出しながら(図3中の矢印C参照)、液体試料を保留空間部(S)の全体にスムーズに導入することができる。
しかも、気体が突出部(51)の反対側へ排出される際には、この排出気流Cによって、液体試料が突出部(51)以外の部分においてもスペーサシート(5)と接触してしまい気泡を作ってしまうのを防ぐことができ、保留空間部Sに決して気泡を残すことなく液体試料を導入することができるのである。
更にまた、バイオセンサ(10)は、突出部(51)の導入促進作用により突出部(51)に沿わせて片側から液体試料を導入できるので、保留空間部(S)の奥部のスペーサシート(5)に入隅部(52)が形成されていても、この入隅部(52)に気泡を残すことがない。したがって、バイオセンサ(10)によれば、従来のように、気泡残存のため入隅部の形成が制限されることもなく、入隅部の形成により容易に保留空間部Sの容量拡大を図ることができる。
更にまた、バイオセンサ(10)は、センサ先端の試料吸入部(15)側へ突出する突出部(51)によってカバーシート(6)を支えることができるので、基板(1)とカバーシート(6)との設定間隔を安定的に維持することができる。したがって、例えば、温度変化や外力等によりカバーシート(6)等が変形してしまうのを防ぐことができ、液体試料を規定量どおりに保留空間部(S)へ導入することができ、測定誤差の少ない正確な測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
図1は、センサチップ構成の一例を示す図である。
図2は、実施例1及び比較例1の反応部断面の模式図である。
図3は、比較例1における反応部表面状態の電子顕微鏡写真のコピーを示す。
図4は、実施例1における反応部表面状態の電子顕微鏡写真のコピーを示す。
図5は、実施例1および比較例1におけるファラデー電流値の比較を表す図である。
図6は、実施例1および比較例1におけるセンサ出力の比較を表す図である。
図7は、本発明のバイオセンサの実施形態を示す図であり、同図(a)は平面図であり、同図(b)はA−A線断面図である。
図8は、本発明のバイオセンサの分解斜視図である。
図9は、本発明のバイオセンサの保留空間部へ液体試料を導入する際の導入過程を説明する部分平面図である。
図10は、酵素センサの経過日に対する出力変化とCV値とを示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、比較例と共に実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
I.第一発明バイオセンサ
まず、実施例における測定原理を説明する。
実施例における測定系は、使い捨てのセンサチップと測定機本体から構成され、酵素電極法を用いた。
本測定の反応は下記の式で表される。
血液中のグルコースがグルコース酸化酵素(GOD)によって酸化されグルコノラクトンが生成する。このとき受容体であるヘキサシアノ鉄(III)カリウム(フェリシアン化カリウム)は還元され、ヘキサシアノ鉄(II)(フェロシアン化)イオンが生成する。フェロシアン化イオンは通電された白金電極近傍でフェリシアン化イオンに酸化され、電子が発生する。この発生電子を電流値とし、グルコース濃度に換算する。
【実施例1】
(a)センサ構造部材の準備
ポリイミドシート上に白金をスパッタリングした。該ポリイミドシートの裏面に熱融着材料であるエチレン酢酸ビニル(EVA)をコーティングした。該多層シートを細断しテープ状にした。これを白金電極テープとする。ポリエステル系のホットメルト接着剤シートに、センサチップ反応部の電極面積を規制するような空孔(反応部用セル)を打ち抜いてマスクシートとした。絶縁性材料である白色PETシートに白金電極テープ、マスクシートを熱接着した。PET層(厚さ100μm)の両面にアクリル系粘着剤層(厚さ25μm)を持つ両面粘着性シートに試料吸入室を設けるような空孔を打ち抜いてスペーサシートを作った。
(b)反応部用塗布液の調製
セオラスクリーム(旭化成製セオラスクリームFP−03、結晶セルロース10重量%)100gを蒸留水150gに加え、ホモジナイザーで10000rpm、15分間撹拌した。これをセオラスクリーム希釈液とする。
グルコースオキシダーゼ(東洋紡績製、活性165ユニット(u)/mg)2.44g及びフェリシアン化カリウム(ナカライテスク製、特級)40gを上記セオラスクリーム希釈液に加え、マグネッチックスターラにて500rpm、15分間撹拌した。これをA液とする。
エチレングリコールモノエチルエーテル(ナカライテスク製、特級)100mLをマグネッチックスターラで500rpmで撹拌しながら、上記A液100mLを静かに滴下する。A液全量を滴下してから5分間撹拌した。これをB液とする。このようにして得られたB液を反応部用塗布液とする。
(c)反応部用塗布液の塗布乾燥
(a)の電極テープおよびマスクシートを貼りあわせたベースシート上のマスクシート反応部用セルに、ピペットを用いて、(b)で得られた反応部用塗布液を1μL塗布した。
上記ベースシートを10分間オーブンに入れ乾燥させる。乾燥後、反応部が形成された。
(d)センサチップ形成
(c)で得られたベースシート上に、(a)で得られたスペーサシート、カバーシートの順に貼りあわせた。センサチップ形状に打ち抜いて、センサチップを10個形成した。その反応部表面状態の電子顕微鏡写真を図4に示す。また、図4で表される反応部断面の模式図を、図2(b)に示す。
(e)測定
上記(d)で得られたセンサチップを用いて、次のような測定を行った。
センサチップの反応部がサンプル液に溶解したとき流れる誘導電流を測定し、センサチップの溶解性を評価した。つまり、10個のセンサチップについてファラデー電流値を測定し、溶解性を評価したところ、平均160.1だった(表1、図5)。
また、センサ出力を調べたところ、測定時間(20秒)でのグルコース濃度100mg/dLにおける出力感度は154.7だった(表2、図6)。
センサチップ個体間の出力ばらつきについて測定したところ、CV値は3%であった(表2、図6)。ここでいうCV値は、(センサ出力の標準偏差値/センサ出力の平均値)x100の値である。
比較例1
実施例1と同様に溶液Aを作った。この溶液Aを反応部塗布液とすること以外は、実施例1と同様にセンサチップを10個形成した。その反応部表面状態の電子顕微鏡写真を図3に示す。また、図3で表される反応部断面の模式図を、図2(a)に示す。
実施例1と同様に、ファラデー電流値を測定することにより、10個のセンサチップについて溶解性を評価したところ、平均17.6だった(表1、図5)。
測定時間30秒でのグルコース濃度100mg/dLにおける出力感度は、99.2だった(表2、図6)。
センサチップ個体間の出力ばらつきについて測定したところ、CV値は10%であった(表2、図6)。
図5を見て分かるように、実施例1のセンサチップは、比較例1のセンサチップに比べ、反応部の溶解度が非常に大きい。
また、図6を見て分かるように、実施例1におけるセンサチップは、比較例1のものに比べセンサ出力がより大きく、より信頼性の高いセンサチップであることが分かる。また、実施例1におけるセンサチップにおける出力のばらつきは、比較例1のものよりも小さかった。
II.第二発明バイオセンサ
ここでの実施例は、本バイオセンサの製造方法の好ましい形態として提供する、項9の記載に従って具体的に説明することにする。
【実施例2】
まず(A2)の電極形成工程は、次の内容で実施した。
次のような仕様で、図7に示す構造の100個の酵素センサを作製した。
つまり厚さ25μmのポリイミドフイルム上に、厚さ0.06μm、大きさ1×35mm、間隔1mmで、作用電極(21)と対電極(22)とを白金のスパッタリングにより形成し、これを厚さ250μmの白色PETフイルム(1)に接着剤でラミネートして積層した。次に、この両電極形成面に一端は端子(21a、22a)として残し、もう一端は両極にまたがる大きさの長方形の窓(反応部用セル(31))(1.5×5mm)(反応部(4)となる部屋)及びこの窓に通じる検体吸入路用の試料吸入部(15)を設けた、厚さ100μmのPETフイルム(電気絶縁スペーサシート(5))を接着剤を介して積層した。
一方(B2)の反応部用塗布液の調製工程は、次の内容で実施した。
まず使用した4主成分は次のものであった。
●酸化還元酵素・・グルコースオキシターゼ(東洋紡績株式会社製 活性165ユニット(u)/mg)2.44g(以下実験酵素と呼ぶ。)
●電子受容体・・純フェリシアン化カリウム(株式会社ナカライテスク製)40g(以下実験電受体と呼ぶ。)
●微細結晶セルロース懸濁液・・セオラスクリーム(旭化成工業株式会社製 FP−03で結晶セルロース10重量%)100gと150mlの蒸留水との懸濁液(以下実験セルロース液と呼ぶ。)
●親水性ポリマ溶液・・酸化エチレンと酸化プロピレンによるブロックポリマで、オキシプロピレングリコールユニットの平均分子量約2050、全分子中の酸化エチレン含量約50重量%よりなり、外観(20℃)はペースト状。該ポリマの7.5gを100mlのエチレングリコールモノエチルエーテルに均一溶解したもの(以下実験親水性ポリマ溶液Paと呼ぶ。)
そして前記の実験酵素と実験電受体とを、実験セルロース液に添加し3成分の混合液をえた。これを混合液Maと呼ぶ。
次に攪拌状態にある前記実験親水性ポリマ溶液Pa中に、混合液Maを静かに滴下し、全量滴下終了したらそのまま5分間攪拌を続けて停止した。全体は微粒子の析出で懸濁状の水性液に変化した。以下これを反応部用塗布液とする。
最後に(C2)の反応部形成工程に移り、反応部(4)を形成し、所望する100個のバイオセンサに仕上げた。
つまり前記(A2)工程で得た白金電極形成板に設けた長方形の反応部用セル(31)に、上記の反応部用塗布液をピペットで1μLをゆっくりと滴下し、乾燥して反応部膜(該膜面はベトツキはない)を固着した。最後にこの上をPETフイルムで前記端子(21a、22a)を残して、接着剤(反応部と試薬吸入部に相当する部分には使用せず)で外面カバーシート(6)を貼着積層し、チップ状にカットして所望する100個の酵素センサチップを得た。
比較例2
実施例2において、親水性ポリマを使用しない以外は全く同一条件で実施した。つまり、まず比較用の反応部用塗布液(外観上は実施例2と同じ状態の水性液)を調製し、これを白金電極形成板の反応部用セル(31)に塗布して反応部膜となし、100個の比較用の酵素センサチップを得た。
【実施例3】
実施例2、比較例2で得た各酵素センサチップ20個(ランダム抜取り)を用いて、その両端子(21a、22a)を酵素センサ測定器に連結して、次の条件で各走査電位に対する電流を測定した。
まず検体として濃度100mg/dLのグルコース水溶液を使用した。各酵素センサチップは、5日間保存した10個と40日間保存した10個を使用した。そして各10個の該チップの吸入口から該検体5μLを注入し8秒経過したら、直ちに走査速度50mv/sで0v→−0.2v→+0.2vの経緯で電位を連続的に変えながら印加し、その時発生する電流を測定した。各々の場合の印加電位に対する電流に基づく出力感度を求めた。各10個の該感度を平均して求め表3に示した。
尚該出力感度は、印加電位−0.2v→+0.2v間での電流値の積分値(積算電流値)である。この数値は、反応部での検体の反応変位が迅速に確実に電極へ取り込まれる効率を知る指標となり、従って大きい程反応変位の全てが取り込まれたことになる。一般に検体成分と反応部との反応性もさることながら、可能なかぎり反応変位の全てが電極に取り込まれることも、測定精度上から極めて重要になる。
次に残る前記酵素センサチップの中から35個を抜き取り(ランダム)、前記検体を使い、次の条件で測定し、各経過日に対する発生出力を測定し、出力変化を求めてそれを図10のグラフで示した。
まず、35個の該センサチップを乾燥剤入りの常温の保存容器中に、1日〜60日の間放置した。この容器の中から各経過日毎に5個づつ取出して、その各5個に該検体の5μLを注入し、前記実施例1と同じ測定条件で発生出力を測定した。そして、各経過日の該センサチップの発生出力(5個の発生出力値の平均値)を、1日経過した該センサチップの発生出力(5個の出力平均)で除して出力変化とした。
該図で実2が実施例2、比2が比較例2であり、実2では出力の変化が小さいことが分かる。尚、比較例2については、実施例2との間で顕著な差が現れたので36日迄とした。
又、前記各経過日で測定した前記センサチップ5個の出力のバラツキからCV値(%)を求め、各経過日に対するCV値も図8のグラフに示した。該図で実cvが実施例2に、比cvが比較例2に対応している。
尚CV値は、各経過日で測定した5個のセンサチップのバラツキから標準偏差値を求め、これを平均値電流で除した値に100を乗じたものである。
以上の実験結果からも証明されるように実施例2は、比較例2に比べてより製品間バラツキも小さく、長期間の保存安定性に優れていることが判る。
【産業上の利用可能性】
第一発明バイオセンサによれば、析出法により製造される懸濁状の反応用塗布液を用いて反応部が形成されるため、センサチップ反応部の試料への溶解性が格段に大きくなり、該析出法を用いずに作った従来のバイオセンサに比べ、バイオセンサ間のばらつきが無く、測定精度が大幅に向上した。また、試料への溶解性向上により、測定時間を短縮することができる。
第二発明バイオセンサによれば、バイオセンサの保存がより長期間に及んでも、殆ど検体成分との反応性に変化がなく、より高い精度で測定できるようにもなった。これにより、バイオセンサの生産管理、在庫管理もしやすく、またユーザでの取扱も容易になった。また、検体との反応による結果がより確実に、効率良く測定できるので、より精度の高いバイオセンサが製造できるようになった。
また、本発明に係るバイオセンサは、その試料吸入部の構造にも特徴を有し、保留空間部の奥部の片側に形成した突出部によって、毛細管現象による液体試料の導入を保留空間部の片側で促進させることができるので、従来のように、保留空間部内の奥部に気体を抜くための排気口を設ける必要がなく、頗る簡素な構成で保留空間部に気泡を残さずスムーズに液体試料を導入することができる。
Claims (11)
- 電気絶縁基板(1)、該基板上に設けられた作用電極(21)と対電極(22)を有する電極部(2)、並びに該電極部(2)の一端に固着されてなる酸化還元酵素、電子受容体及び微細結晶セルロース粉体を含む反応部(4)を備えたバイオセンサの製造方法であって、次の(A1)〜(C1)に記載の各工程を順次行うことを特徴とする製造方法:
(A1)電気絶縁基板(1)上に作用電極(1)と対電極(2)とを平行近接して設ける電極部(2)形成工程、
(B1)予め酸化還元酵素、電子受容体及び微細結晶セルロースの3成分と良溶媒とからなる混合液Aを、貧溶媒に攪拌しながら滴下して分散液Bを調製する反応部用塗布液の調製工程、
(C1)前記(A1)工程で得られた電気絶縁基板(1)上の電極部(2)の一端に、前記(B1)工程で得られた反応部用塗布液を塗布・乾燥して反応部(4)を形成する反応部形成工程。 - 電極が、白金、金、パラジウム、及びインジウム−スズ酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1つからなる請求の範囲第1に記載の製造方法。
- 請求の範囲第1又は2に記載の製造方法により製造されるバイオセンサ。
- 請求の範囲第3に記載のバイオセンサを用いて、試料液中のグルコース成分、アルコール成分、乳酸成分又は尿酸成分を測定する方法。
- 電気絶縁基板(1)、該基板上に設けられた作用電極(21)と対電極(22)を有する電極部(2)、並びに該電極部(2)の一端に固着されてなる反応部(4)を備えたバイオセンサであって、該反応部(4)が酸化還元酵素、電子受容体、微細結晶セルロース粉体、及び親水性セグメントと疎水性セグメントとから構成されている親水性ポリマを主成分としてなることを特徴とするバイオセンサ。
- 前記親水性ポリマが、直鎖オキシアルキレンセグメントとアルキル基分枝オキシアルキレンセグメントとからなる請求の範囲第5に記載のバイオセンサ。
- 前記親水性ポリマ中のアルキル基分枝オキシアルキレンセグメントの平均分子量が1500〜4000で、全分子中の直鎖オキシアルキレンセグメントが30〜80重量%である請求の範囲第6に記載のバイオセンサ。
- 前記反応部(4)が、酸化還元酵素、電子受容体、微細結晶セルロース、及び親水性セグメントと疎水性セグメントとから構成されている親水性ポリマを含む分散液のコーティングにより形成されてなる請求の範囲第5〜7のいずれか1項に記載のバイオセンサ。
- 次の(A2)〜(C2)に記載の各工程を順次行うことを特徴とする請求の範囲第8に記載のバイオセンサの製造方法。
(A2)電気絶縁基板(1)上に、作用電極(21)と対電極(22)とを平行近接して設ける電極部(2)形成工程、
(B2)予め酸化還元酵素、電子受容体及び微細結晶セルロースの3成分と良溶媒とからなる混合液Maを、該3成分に対しては貧溶媒であるが前記親水性ポリマに対しては良溶媒である溶媒に溶解した該親水性ポリマ溶液Pa中に攪拌しながら滴下して分散液を調製する反応部用塗布液の調製工程、
(C2)前記(A2)工程で得られた電気絶縁基板(1)上の電極部の一端に、前記(B2)工程で得られた反応部用塗布液を塗布・乾燥して反応部(4)を形成する反応部形成工程。 - 先端部において電気絶縁基板(1)とカバーシート(6)とがスペーサシート(5)により間隔を隔てて対向配置され、該基板と該カバーシートと該スペーサシートの先端縁とにより形成された保留空間部(S)に、酸化還元酵素を含む反応部(4)を備え、
液体試料をセンサ先端側から該保留空間部内へ毛細管現象を利用して導入し、該液体試料と該反応部(4)との酵素反応による電気化学変化を、作用電極(21)と対電極(22)とを含む電極部(2)で検出するバイオセンサであって、
前記保留空間部(S)において、前記スペーサシートの先端縁の片側のみにセンサ先端側へ突出する突出部(51)を形成したことを特徴とするバイオセンサ - 前記スペーサシートの先端縁に入隅部(52)が形成されてなる請求の範囲第10に記載のバイオセンサ。
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