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JP4247969B2 - 経穴位置の評価装置 - Google Patents
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JP4247969B2 - 経穴位置の評価装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鍼治療等において、鍼刺激の効果と経穴(ツボ)と呼ばれる刺激点の位置を非侵襲かつ客観的に、しかも高精度に判定できる経穴位置の評価装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
古くから皮膚表面上に周辺より皮膚抵抗が低い部位が小さな領域で存在し、その分布は鍼灸治療における刺激点である経穴(ツボ)の分布と比較的良く一致することが知られている。このような皮膚抵抗が周辺より低い部位(皮膚抵抗減弱点という)は良導絡自律神経調整法や低周波治療器などにおいて治療に利用されており、これらの皮膚抵抗減弱点を探索する装置も市販され、実際に臨床での診断や治療に用いられている。
【0003】
これらの皮膚抵抗減弱点である経穴(ツボ)を探索(判定)する装置としては、経穴(ツボ)周辺の皮膚の電気的特性として、皮膚の直流抵抗を測定し、その違いから経穴(ツボ)を判定する方法が多用されてきたが、これら直流抵抗の測定による経穴(ツボ)の判定では、測定結果の信頼性・再現性に乏しいという問題があり、近年においては、これら測定結果の信頼性・再現性を向上させる手法として、経穴(ツボ)周辺の皮膚の電気的特性として、経穴(ツボ)周辺の皮膚への交流電流の印加により生成する電圧に基づいて皮膚の複素インピーダンス軌跡を測定し、該複素インピーダンス軌跡の違いに基づいて経穴(ツボ)の判定を行うものがある。(例えば、特許文献1参照)
【0004】
【特許文献1】
特開2001 −112843号公報
【0005】
これまで、皮膚の複素インピーダンス軌跡を高い時間分解能で測定可能な方法として提案されているのは、皮膚のステップ応答を利用した方法と疑似インパルスを利用した方法のみである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
皮膚の複素インピーダンス軌跡を得るには、希望する複数の周波数におけるインピーダンスを測定する必要がある。一般に、ロックインアンプやインピーダンスアナライザなどを用いた場合、測定精度は非常に良いが、希望する周波数を掃引しなければならず、時間分解能が制限されてしまうが、信頼性のある測定を行うためには、皮膚インピーダンスに電流(電圧)依存性が認められるか否かを調べ、適切な測定電流(電圧)値を決定する必要があり、高時間分解能での測定が要求されるのに対し、前記した従来の測定方法では、0.1秒程度の時間分解能は得られるが、測定対象によっては十分な時間分解能が実現できない場合がある。さらに、ステップ応答を利用した方法では、ステップ応答に含まれる高周波成分の信号の大きさが低周波領域のものと比べると極端に小さいため、特に500Hz以上の周波数においては測定精度が悪く、インピーダンス軌跡は複素平面上で理想的な円弧にならない場合があった。
【0007】
本発明では、上記状況に鑑みて、高精度で且つ高時間分解能で皮膚の複素インピーダンス軌跡を測定可能とし、該測定した複素インピーダンス軌跡に基づいて、信頼性のある経穴(ツボ)の判定を行う経穴位置の評価装置を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の経穴位置の評価装置は、フーリエ級数状の電圧を発生させるためのD/A変換器と、該D/A変換器から発生させたフーリエ級数状の電圧を所望の電流値に対応する電圧に変化させる減衰器と、該減衰器から出力される電圧を電流に変換する電圧−電流変換器と、該電圧−電流変換器によって変換した電流を皮膚に通電する電極と、該電極からの通電によって皮膚に生じた電圧を入力する差動増幅器と、該差動増幅器よりの出力を増幅するプログラマブル・ゲインアンプと、該プログラマブル・ゲインアンプにて増幅された前記差動増幅器よりの出力をサンプリングするためのA/D変換器と、該A/D変換器にてサンプリングされたサンプリングデータに基づいて、複素インピーダンス軌跡および/または複素インピーダンス軌跡の評価パラメータを生成し、該生成した複素インピーダンス軌跡および/または複素インピーダンス軌跡の評価パラメータを出力する生成出力部と、装置全体の制御を行う電子制御装置と、を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、希望する周波数成分のみの信号を同じ大きさで重ね合わせて電極から皮膚に印加し、該印加により生じた電圧を差動増幅器の入力として測定することから、ステップ応答を利用した従来の測定方法のように高周波領域での測定精度の悪化を防ぐことができるばかりか、時間分解能は測定対象や重ね合わせる周波数の数には依存せず、重ね合わせる最低の周波数の逆数によってのみ決まるため、高い時間分解能での皮膚の複素インピーダンス軌跡の測定が可能となり、これら高精度にて一定時間毎に測定される複素インピーダンス軌跡および/または複素インピーダンス軌跡の評価パラメータが、生成出力部にて生成、出力されることで、信頼性のある経穴(ツボ)の判定を行うことができる。
【0013】
本発明の経穴位置の評価装置は、複数の前記電極を備え、前記電子制御装置は、ほぼ同時に平行して各電極から前記電圧−電流変換器によって変換した電流を皮膚に通電させ、各電極毎の皮膚の複素インピーダンス軌跡および/または複素インピーダンス軌跡の評価パラメータを前記生成出力部に出力させることが好ましい。
このようにすれば、測定における皮膚の複素インピーダンス軌跡の経時変化による影響を排除することができ、より高精度にて経穴位置の判定を行うことができる。
【0014】
本発明の経穴位置の評価装置は、前記生成出力部にて生成出力される各電極毎の複素インピーダンス軌跡の評価パラメータが、Cole−Coleの円弧則に基づく中心緩和時間を示すパラメータτであることが好ましい。
このようにすれば、パラメータτは、個人差や皮膚と電極との接触面積の変化にそれほど依存しないことから、該パラメータτを用いて経穴位置の判定を行うことで、より再現性の高く、汎用性を有する経穴位置の判定を行うことができる。
【0015】
本発明の経穴位置の評価装置は、皮膚に貼着される前記電極が、電解質を含むソリッドゲルを有することが好ましい。
このようにすれば、電極と皮膚との接触状態の経時変化が少なく、安定した接触状態を保つことができ、より精度良く皮膚の複素インピーダンス軌跡の測定を実施できる。
【0016】
本発明の経穴位置の評価装置は、複数の前記電極が、1つの電極を囲むように4つ或いは8つの電極が四方或いは八方に配置された5つ或いは9つの電極にて構成されていることが好ましい。
このようにすれば、経穴位置と思われる位置に1つの電極を配置し、該電極を囲むように4つ或いは8つの電極を四方或いは八方に配置して測定することで、中央の1つの電極と周囲の電極との複素インピーダンス軌跡の違いにより、該中央の電極が正しい経穴位置にあるか否かを迅速かつ簡便に把握することができる。
【0017】
本発明の経穴位置の評価装置は、前記4つ或いは8つの電極に囲まれた電極におけるパラメータτが、周囲の電極のパラメータτよりも低い値となったことを報知する報知手段を備えることが好ましい。
このようにすれば、中央の1つの電極位置が正しい経穴位置にあることを報知により把握できるようになるため、正しい経穴位置の検索操作の作業性を向上できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
まず、本発明の原理について説明すると、本発明の皮膚の複素インピーダンス軌跡の測定方法では、皮膚インピーダンスの周波数特性(皮膚インピーダンス軌跡)の時間変化を測定する。
【0020】
以下、その概要について述べる。皮膚が線形システムであり、皮膚インピーダンスが電流値や電圧値に依存しないと仮定し、皮膚に通電する電流をi(t)、通電によって皮膚に生じた電圧をv(t)とし、両者のフーリエ変換をI(jω)、V(jω)とした場合、皮膚インピーダンスZ(jω)は以下のように表される。
【0021】
【数1】
Figure 0004247969
【0022】
【数2】
Figure 0004247969
【0023】
ただし、R(ω)、XI(ω)はそれぞれI(jω)の実数部と虚数部、Rv(ω)、Xv(ω)はそれぞれV(jω)の実数部と虚数部とする。今、通電電流i(t)が以下のようなフーリエ級数の場合、皮膚が線形システムであれば、通電によって皮膚に生じた電圧は同様に以下のようなフーリエ級数で表すことができる。
【0024】
【数3】
Figure 0004247969
【0025】
【数4】
Figure 0004247969
式におけるi(t)、v(t)のフーリエ変換をI(jω)、V(jω)とすると、
【0026】
【数5】
Figure 0004247969
【0027】
【数6】
Figure 0004247969
であるから、皮膚インピーダンス(jω)は、
【0028】
【数7】
Figure 0004247969
と表すことができる。ただし、
【0029】
【数8】
Figure 0004247969
とする。
【0030】
つまり、i(t)に必要な周波数を複数含ませておけば、i(t)、z(t)をフーリエ変換し、それぞれの実数部と虚数部から皮膚の複素インピーダンス軌跡が求まる。
【0031】
上記式(3)におけるi(t)に含まれる各周波数成分の大きさ|In|を全ての周波数において同一にすれば、高周波領域における測定精度の悪化を防ぐことが可能と考えられる。
【0032】
また、時間分解能の下限はi(t)に含まれる最低周波数によってのみ決まり、これまで提案されている方法のように測定対象によって制限されることはない。時間分解能ΔTは、i(t)に含まれる最低周波数をf=ω1/2πとすれば、ΔT≧1/fなる不等式を満たす。
【0033】
ところで、皮膚の等価回路は図1(a)に示すように表現できる。
【0034】
さらに、図1(b)に示すように、皮膚のインピーダンスにおいてCole−Coleの円弧則が成り立つことから、皮膚インピーダンスは以下のように表される。
【0035】
【数9】
Figure 0004247969
【0036】
必要であれば、インピーダンス軌跡から皮膚インピーダンスを等価回路で表現した時の各パラメータ(インピーダンスパラメータ)Z、τm、βも求めることができ、インピーダンス軌跡の形状を定量化できる。
【0037】
図2は本発明の実施例を示す具体的な皮膚のインピーダンス軌跡を測定して経穴位置を判定するための評価装置の概略図である。
【0038】
この図において、1は被験者の皮膚、2〜4は被験者の皮膚1に接触するように取付けられる電極であり、これらの電極は、それぞれ電流印加電極2a〜2i、−(マイナス)電圧電極3、接地電極4であり、本実施例では、前記電流印加電極を2a〜2iの9つ設け、該電流印加電極2a〜2iを図6示すように、チャンネル5に対応する1つの電流印加電極2eの八方を囲むように、マトリクス状に9つの電流印加電極2a〜2iが配置される。
【0039】
また、11は評価装置の制御や経穴位置の評価処理を行う電子制御装置であるパーソナルコンピュータ(PC)であり、12は該パーソナルコンピュータ(PC)11に接続され、パーソナルコンピュータ(PC)11から出力されるフーリエ級数のデジタルデータに基づいてフーリエ級数状の電圧(入力信号)を生成するD/A変換器、13は該D/A変換器12に接続されて該D/A変換器12から出力されるフーリエ級数状の電圧(入力信号)を所定電流に対応する電圧に減衰する減衰器、14a〜14iは該減衰器から出力されるフーリエ級数状の電圧(入力信号)を電流に変換する電圧−電流変換器であり、本実施例では、電圧−電流変換器を各電流印加電極2a〜2iに1対1に対応するように、14a〜14iの9つの電圧−電流変換器を設けており、各電圧−電流変換器14a〜14iから出力された電流iが各電流印加電極2a〜2iを通じて被験者の皮膚1へ印加される。
【0040】
また、15は減衰器13に接続され、該減衰器13から出力される所定電流に対応する電圧に減衰されたフーリエ級数状の電圧(入力信号)を、デジタル変換してパーソナルコンピュータ(PC)11へ出力するA/D変換器(A/D変換ボード)であり、該A/D変換器15からのデジタルデータにより、減衰器13から出力されるフーリエ級数状の電圧(入力信号)の電圧を、パーソナルコンピュータ(PC)11が随時把握できるようになっている。
【0041】
また、16はパーソナルコンピュータ(PC)11に接続されるデジタルI/O装置であり、このデジタルI/O装置16は減衰器13に接続され、該減衰器13より出力されるフーリエ級数状の電圧(入力信号)の振幅値Aの設定をパーソナルコンピュータ(PC)11からの指示に基づいて行う。
【0042】
また、該デジタルI/O装置16はプログラマブルゲインアンプ(PGA)17a〜17iに接続されており、該プログラマブルゲインアンプ(PGA)17a〜17iにおける増幅率Bの設定を、前記パーソナルコンピュータ(PC)11からの指示に基づいて個々のプログラマブルゲインアンプ(PGA)17a〜17iに個別に実施できるようになっている。
【0043】
さらに、18a〜18iは差動増幅器であり、この差動増幅器18a〜18iは、前記電圧−電流変換器14a〜14iから電流印加電極2a〜2iを通じて被験者の皮膚1に印加された電流により、前記−(マイナス)電圧電極3と電流印加電極2a〜2iとの間の皮膚に発生した電圧を測定してプログラマブルゲインアンプ(PGA)17a〜17iに出力する。
【0044】
また、20a〜20iはプログラマブルゲインアンプ(PGA)17a〜17iに接続され、該プログラマブルゲインアンプ(PGA)17a〜17iにて前記増幅率Bに増幅された電圧を、離散化(サンプリング)してデジタルデータとしてパーソナルコンピュータ(PC)11に出力するA/D変換器である。
【0045】
また、10は、経穴の評価において、評価結果が経穴であるとの良好な評価結果である場合に、該評価結果を所定の報知音の出力にて報知するための音声出力器である。
【0046】
また、本実施例に用いた電流印加電極2a〜2iは、図3並びに図6に示すように、絶縁性に優れた正方形状の四フッ化エチレン(PTFE)ボード31に、直径約5mmの孔を9つ、7mmピッチにてマトリクス状に穿設し、各孔にリード線34が導出された電流印加電極2a〜2iとなる銀電極32を内挿するとともに、該銀電極32のリード線34の導出面と反対面には、皮膚との接触状態の経時変化が少なく、安定した接触状態を保つことができるようにするための電解質を含むソリッドゲル33が、該ソリッドゲル33の表面がPTFEボード31の表面より突出するように装填されていて、該PTFEボード31を脱着することで、9つの電流印加電極2a〜2iを、各電流印加電極2a〜2iの配置状況を保持したまま、移動することができるようになっており、各銀電極32には、それぞれ、チャンネル番号が付与されている。
【0047】
このように、本実施例では電流印加電極2a〜2iとして銀電極32を用いており、このようにすることは、通常生体用電極として広く用いられているAg−AgCl電極が、不分極性電極で低周波領域での電極インピーダンスが小さな電極であるが加工性が悪いのに対し、前記銀電極32は、分極性電極で低周波領域での電極インピーダンスがAg−AgCl電極より大きいが、交流電流の通電による電圧測定ではこれらの分極電圧はほとんど無視できるとともに、低周波領域での電極インピーダンスの大きさは、測定される皮膚インピーダンスに比べ極めて小さく、更にはAg−AgCl電極よりも加工性が良好であることから、これら銀電極32を好適に使用することができるが、本発明はこれに限定されるものではなく、通常生体用電極として広く用いられているAg−AgCl電極やその他の電極材料を使用しても良い。
【0048】
また、本実施例では、PTFEボード31を使用しているが、良好な電気絶縁性と機械的強度が得られるものであれば、その他の樹脂板やゴム板を使用することもでき、更に、穿設される孔の大きさや配置ピッチ等は、測定する部位等により適宜に選択すれば良い。
【0049】
この本実施例の評価装置を用いた測定においては、まず、パーソナルコンピュータ(PC)11に搭載されたD/A変換ボード(D/A変換器)12から発生させた式(3)のようなフーリエ級数状の電圧を減衰器13により所望の電流値に対応する電圧に変化させ、該所望の電流値に対応する電圧を電圧−電流変換器14a〜14iによって電流に変換し、各電流印加電極2a〜2iから皮膚1に通電する。該通電によって皮膚に生じた電圧を差動増幅器18により測定し、必要に応じてプログラマブルゲインアンプ17a〜17iにより増幅する。減衰器13の減衰率(振幅値A)、プログラマブルゲインアンプ17a〜17iの増幅率はパーソナルコンピュータ(PC)11に搭載されたディジタルI/Oボード(デジタルI/O)装置16からの信号により適宜制御される。
【0050】
次いで、減衰器13からの通電電流値に対応するフーリエ級数状の電圧(入力信号)と、前記プログラマブルゲインアンプ17a〜17iにて増幅された電圧(出力信号)を、A/D変換器15並びにA/D変換器20a〜20iにより離散化(サンプリング)し、パーソナルコンピュータ(PC)11へと同時に取り込む。その離散化された入力信号と出力信号に離散フーリエ変換を施し、式(5)〜(8)により各周波数におけるインピーダンスを、各チャンネル毎に決定することで、各電流印加電極2a〜2iが配置された部位の皮膚インピーダンス軌跡が同時測定される。
【0051】
このようにして測定した1つのチャンネルの皮膚のインピーダンス軌跡の平時変化の例を、図7、図8に示す。尚、図8は図7を実部−虚部平面に投影した周波数をパラメータとした特性図である。
【0052】
測定は温度21±1℃、42±3%に保たれた電磁シールドルーム内で行い、測定部位は、図6に示すように、経穴(ツボ)として知られている左前腕のゲキ門の皮膚インピーダンス軌跡を測定した。
【0053】
それによれば、通電電流波形i(t)に含まれる周波数は10,20,30,40,50,60,70,80,90,100,150,200,300,400,500,600,700,800,900,1000Hzとし、各周波数成分は同じ振幅比にて重ね合わせ、振幅値は電流依存性が認められない値を決定し、その振幅値においてインピーダンス軌跡を0.1s毎に測定した。通電電流波形、皮膚に生じた電圧波形を離散化する場合のサンプリング周期は50μsとした。測定時間は10分であり、測定開始から5分程度通過した後にシールドルームのドアを突然開閉させ、大きな音を発生させた。(図7の矢印の付近)
【0054】
図7および図8からどの時刻においてもインピーダンス軌跡はほぼ円弧状に分布していること、インピーダンス軌跡の変動の様子を高周波領域まで明瞭に捉えることが分かることから、高周波領域での測定精度の悪化を防ぐことができていると判断できるとともに、測定の時間分解能は測定対象や重ね合わせる周波数の数には依存せず、重ね合わせる最低の周波数の逆数によってのみ決まるため、高い時間分解能での皮膚の複素インピーダンス軌跡の測定が可能であると言える。
【0055】
また、前記各電流印加電極2a〜2iに印加される通電電流波形i(t)に含まれる周波数を0.5〜95Hzの15個とし、各周波数成分は同じ振幅比にて重ね合わせ、振幅値は電流依存性が認められない値を決定して、各電流印加電極2a〜2iに対応する各チャンネル1〜9の皮膚インピーダンス軌跡を測定した測定結果例を図4に示す。
【0056】
尚、図5は、該測定した各チャンネル1〜9の皮膚インピーダンス軌跡のインピーダンスパラメータτm、β、Zの値を示す図である。
【0057】
これら図5並びに図6から、チャンネル5のインピーダンス軌跡が、該チャンネル5に対応する電流印加電極2eを囲む8つの電流印加電極に対応する各チャンネル1〜4、チャンネル6〜9におけるインピーダンス軌跡と大きくその形状が異なっていることから、これら各チャンネルのインピーダンス軌跡のグラフをパーソナルコンピュータ(PC)11に表示出力させることで、操作者が該チャンネル5の配置位置がゲキ門である経穴(ツボ)に合致していると判断することができる。
【0058】
また、この際の各チャンネルのインピーダンス軌跡のインピーダンスパラメータτm、β、Zの値は、図5に示すようになっており、インピーダンスパラメータβには、チャンネル5の値とその他のチャンネルの値とに大きな差がなく、チャンネル5の位置がゲキ門に合致しているか否かを判定できないが、インピーダンスパラメータτmとZにおいては、チャンネル5の値とその他のチャンネルの値とに大きな差、具体的には、チャンネル5の値が周囲の値よりも小さな値となっていることが判り、これらインピーダンスパラメータτmとZが周囲のチャンネルの値よりも小さな値となったチャンネル5の位置を経穴として判定できることがわかる。
【0059】
ここで、これらインピーダンスパラメータτmとZのいずれを用いた判定がより好ましいかについて、各インピーダンスパラメータτm、β、Zの電極面積依存性を検討した結果を図9に示す。尚、電極面積以外の測定条件は同一とし、被験者6名について測定したインピーダンス軌跡からインピーダンスパラメータτm、β、Zを算出し、電極の直径が8mmのときの各インピーダンスパラメータτm、β、Zの値を1として規格化してある。
【0060】
この図9に示す結果から、前記にてチャンネル5の値とその他のチャンネルの値とに大きな差が得られたインピーダンスパラメータτmとZの内、インピーダンスパラメータZに関しては、電極面積にほぼ反比例しており、電極面積依存性が大きく、電極面積の変化が測定結果に大きく影響する可能性が高く、安定した再現性のある測定が難しくなる可能性があるのに対し、インピーダンスパラメータτmは、被験者の違いにより、そのばらつき方が個々で違いがあるものの、その変動の大きさがインピーダンスパラメータZに対して小さく、比較的電極面積依存性が小さいため、より安定した再現性のある測定を実施できることが判ることから、これら経穴(ツボ)位置の評価(判定)に用いるインピーダンスパラメータとしてはパラメータτmを用いることが好ましく、本実施例では、前記パーソナルコンピュータ(PC)11がインピーダンス軌跡のグラフを表示するとともに、チャンネル5のインピーダンスパラメータτmの値が、他のチャンネルのインピーダンスパラメータτmの値よりも低い値になった場合に、経穴(ツボ)位置にチャンネル5があると判定して前記音声出力器10から、所定の報知音を出力することで、チャンネル5の位置が経穴(ツボ)位置に合致していることが報知される。
【0061】
以上、本実施例の評価装置によれば、経穴(ツボ)位置の評価を、より高精度で且つ高信頼性にて実施できるとともに、複数の電流印加電極2a〜2iのインピーダンス軌跡を同時に平行測定し、各電流印加電極2a〜2iに対応するチャンネル毎のインピーダンスパラメータτmを算出し、該算出したインピーダンスパラメータτm基づいてパーソナルコンピュータ(PC)11がチャンネル5の位置が経穴(ツボ)位置に合致しているかいなかを判定できるようになるため、これら経穴(ツボ)位置の検索や評価を、特別な知識や訓練なしに、簡便かつ迅速に実施することができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態を図面により前記実施例にて説明してきたが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれることは言うまでもない。
【0063】
例えば、前記実施例においては、インピーダンス軌跡より算出されたインピーダンスパラメータτmにより、パーソナルコンピュータ(PC)11が経穴(ツボ)位置の判定(評価)を実施するようにしており、インピーダンスパラメータτmによる判定(評価)も、インピーダンス軌跡に基づくものであることは言うまでもない。
【0064】
また、前記実施例においては、インピーダンスパラメータτmのみによりパーソナルコンピュータ(PC)11が経穴(ツボ)位置の判定(評価)を実施するようにしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これらインピーダンスパラメータτmに加えて、インピーダンスパラメータZの違いも合わせて評価して、経穴(ツボ)位置の判定(評価)を実施するようにしてもよい。
【0065】
また、前記実施例では、各電流印加電極2a〜2i毎に個別の電圧−電流変換器や差動増幅器、プログラマブルゲインアンプ(PGA)、A/D変換器を設けて、全チャンネルの測定を同時に平行してできるようにしており、このようにすることは、測定における皮膚の複素インピーダンス軌跡の経時変化による影響を排除することができ、より高精度にて経穴位置の判定を行うことができることから好ましいが、本発明はこれに限定されるものではなく、これら経時変化による影響が実質的に誤差範囲内とできる時間内に測定をできるように、例えば、電圧−電流変換器や差動増幅器、プログラマブルゲインアンプ(PGA)、A/D変換器を3つ設け、前記9つの電流印加電極2a〜2iを3つずつ、順次切り替えてインピーダンス軌跡の測定を実施するようにしても良い。
【0066】
また、前記実施例では、9つの電流印加電極2a〜2iを、チャンネル5に対応する電流印加電極2eの周囲の八方に配置するようにしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、電流印加電極を5つとして、中央の電流印加電極の周囲四方に電流印加電極を配置するようにしても良いし、更には、中央の電流印加電極の周囲を囲むように、三角形状や5角形状、6角形状に電流印加電極を配置するようにしても良い。
【0067】
尚、前記請求項における生成出力部は、前記実施例におけるパーソナルコンピュータ(PC)11が相当し、複素インピーダンス軌跡および/または複素インピーダンス軌跡の評価パラメータの出力とは、表示出力等の外部出力でななく、パーソナルコンピュータ(PC)11内部での処理におけるデータ出力も含むものである。
【0068】
また、前記実施例では、複素インピーダンス軌跡と複素インピーダンス軌跡の評価パラメータの双方をパーソナルコンピュータ(PC)11が出力するようにしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、複素インピーダンス軌跡と複素インピーダンス軌跡の評価パラメータのいずれか一方のみを出力するようにしても良い。
【0073】
【発明の効果】
本発明は次の効果を奏する。
)請求項の発明によれば、希望する周波数成分のみの信号を同じ大きさで重ね合わせて電極から皮膚に印加し、該印加により生じた電圧を差動増幅器の入力として測定することから、ステップ応答を利用した従来の測定方法のように高周波領域での測定精度の悪化を防ぐことができるばかりか、時間分解能は測定対象や重ね合わせる周波数の数には依存せず、重ね合わせる最低の周波数の逆数によってのみ決まるため、高い時間分解能での皮膚の複素インピーダンス軌跡の測定が可能となり、これら高精度にて一定時間毎に測定される複素インピーダンス軌跡および/または複素インピーダンス軌跡の評価パラメータが、生成出力部にて生成、出力されることで、信頼性のある経穴(ツボ)の判定を行うことができる。
【0074】
)請求項の発明によれば、測定における皮膚の複素インピーダンス軌跡の経時変化による影響を排除することができ、より高精度にて経穴位置の判定を行うことができる。
【0075】
)請求項の発明によれば、パラメータτは、個人差や皮膚と電極との接触面積の変化にそれほど依存しないことから、該パラメータτを用いて経穴位置の判定を行うことで、より再現性の高く、汎用性を有する経穴位置の判定を行うことができる。
【0076】
)請求項の発明によれば、電極と皮膚との接触状態の経時変化が少なく、安定した接触状態を保つことができ、より精度良く皮膚の複素インピーダンス軌跡の測定を実施できる。
【0077】
)請求項の発明によれば、経穴位置と思われる位置に1つの電極を配置し、該電極を囲むように4つ或いは8つの電極を四方或いは八方に配置して測定することで、中央の1つの電極と周囲の電極との複素インピーダンス軌跡の違いにより、該中央の電極が正しい経穴位置にあるか否かを迅速かつ簡便に把握することができる。
【0078】
)請求項の発明によれば、中央の1つの電極位置が正しい経穴位置にあることを報知により把握できるようになるため、正しい経穴位置の検索操作の作業性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示す皮膚の等価回路及びその周波数特性図である。
【図2】本発明の実施例における評価装置の概略図である。
【図3】本発明の実施例に用いた電流印加電極の構成を示す一部破断斜視図である。
【図4】本発明の実施例における評価装置にて測定した各チャンネルの皮膚インピーダンス軌跡を示す図である。
【図5】本発明の実施例における評価装置にて測定した各チャンネルのインピーダンスパラメータを示す図である。
【図6】本発明の実施例に用いた電流印加電極の配置状況を示す図である。
【図7】本発明の実施例を示す皮膚インピーダンス軌跡の経時変化を示す図である。
【図8】図7を実部−虚部平面に投影した周波数をパラメータとした特性図である。
【図9】各インピーダンスパラメータの電極面積依存性を評価した評価結果である。
【符号の説明】
1 被験者の皮膚
2a〜2i 電流印加電極
3 −(マイナス)電圧電極
4 接地電極
11 電子制御装置(PC)
12 D/A変換器(D/A変換ボード)
13 減衰器
14a〜14i 電圧−電流変換器
15,20 A/D変換器(A/D変換ボード)
16 デジタルI/O装置
17a〜17i プログラマブルゲインアンプ(PGA)
18a〜18i 差動増幅器

Claims (6)

  1. フーリエ級数状の電圧を発生させるためのD/A変換器と、該D/A変換器から発生させたフーリエ級数状の電圧を所望の電流値に対応する電圧に変化させる減衰器と、該減衰器から出力される電圧を電流に変換する電圧−電流変換器と、該電圧−電流変換器によって変換した電流を皮膚に通電する電極と、該電極からの通電によって皮膚に生じた電圧を入力する差動増幅器と、該差動増幅器よりの出力を増幅するプログラマブル・ゲインアンプと、該プログラマブル・ゲインアンプにて増幅された前記差動増幅器よりの出力をサンプリングするためのA/D変換器と、該A/D変換器にてサンプリングされたサンプリングデータに基づいて、複素インピーダンス軌跡および/または複素インピーダンス軌跡の評価パラメータを生成し、該生成した複素インピーダンス軌跡および/または複素インピーダンス軌跡の評価パラメータを出力する生成出力部と、装置全体の制御を行う電子制御装置と、を備えることを特徴とする経穴位置の評価装置。
  2. 複数の前記電極を備え、前記電子制御装置は、ほぼ同時に平行して各電極から前記電圧−電流変換器によって変換した電流を皮膚に通電させ、各電極毎の皮膚の複素インピーダンス軌跡および/または複素インピーダンス軌跡の評価パラメータを前記生成出力部に出力させる請求項に記載の経穴位置の評価装置。
  3. 前記生成出力部にて生成出力される各電極毎の複素インピーダンス軌跡の評価パラメータが、Cole−Coleの円弧則に基づく中心緩和時間を示すパラメータτである請求項1または2に記載の経穴位置の評価装置。
  4. 皮膚に貼着される前記電極が、電解質を含むソリッドゲルを有する請求項1〜3のいずれかに記載の経穴位置の評価装置。
  5. 複数の前記電極が、1つの電極を囲むように4つ或いは8つの電極が四方或いは八方に配置された5つ或いは9つの電極にて構成されている請求項1〜4のいずれかに記載の経穴位置の評価装置。
  6. 前記4つ或いは8つの電極に囲まれた電極におけるパラメータτが、周囲の電極のパラメータτよりも低い値となったことを報知する報知手段を備える請求項に記載の経穴位置の評価装置。
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