JP4251866B2 - アルコール性肝障害の発症抑制作用及び治癒作用を有する組成物及び該組成物の製造方法 - Google Patents
アルコール性肝障害の発症抑制作用及び治癒作用を有する組成物及び該組成物の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は大麦を原料とする焼酎製造において副生する大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得、該液体分を合成吸着剤を使用する吸着分離処理に付して合成吸着剤非吸着画分を得、該合成吸着剤非吸着画分をイオン交換樹脂を使用するイオン交換処理に付してイオン交換樹脂非吸着画分を得、該イオン交換樹脂非吸着画分を限外濾過膜を使用する限外濾過処理に付して濃縮液を得、該濃縮液に有機溶媒を添加することにより分取した、有機溶媒不溶性画分からなるアルコール性肝障害に対する発症抑制作用及び治癒作用を有する組成物及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年におけるアルコール飲料の消費量の増加に伴って,アルコール性肝障害者の数は増加傾向にあり、生活習慣病の一つとして認識されるようになってきた。こうしたアルコール性肝障害の具体的症状としては、アルコール性脂肪肝、アルコール性肝炎、アルコール性肝線維症、アルコール性肝硬変、或いはアルコール性脂肪肝によって誘発するアルコール性高脂血症等を挙げることができる。そして、アルコール性脂肪肝が慢性に経過すると肝細胞の周りに線維ができるアルコール性肝線維症に移行することが知られており、該アルコール性肝線維症において肝細胞に入る血液量が減少して肝臓のタンパク質合成能や有毒物質分解能が低下すると、肝臓が徐々に硬く変性しアルコール性肝硬変に至ることが知られている。
【0003】
ところで、大麦焼酎を製造する際に副成する大麦焼酎蒸留残液の肝障害予防作用については、以下のことが知られている。即ち、該大麦焼酎蒸留残液がオロチン酸投与によるラットの肝臓への脂質の蓄積を抑制することが報告されている[日本栄養・食糧学会総会講演要旨集、Vol.53, 53(1999)参照](以下、当該文献を非特許文献1と呼称することとし、後述の【0005】に別途記載することとする)。さらに該大麦焼酎蒸留残液が有する上記の脂肪肝抑制作用は、ワイン粕やビール粕に比べて強く、該作用はいも焼酎蒸留残液には全く認められず、米焼酎蒸留残液では極めて小さいことから、大麦焼酎蒸留残液のみに特有のものであることが報告されている[日本醸造協会誌、Vol.94, No.9, 768(1999)参照](以下、当該文献を非特許文献2と呼称することとし、後述の【0005】に別途記載することとする)。また、前記大麦焼酎蒸留残液がウイルス性肝障害と同様の症状を呈することが知られているD-ガラクトサミン誘発性肝障害に対する発症抑制作用を有し、該発症抑制作用は該大麦焼酎蒸留残液を遠心分離に付すことにより得られる液体分に認められることが報告されている[日本醸造協会誌、Vol.95, No.9, 706(2000)参照](以下、当該文献を非特許文献3と呼称することとし、後述の【0005】に別途記載することとする)。
特開2001-145472号公報には、大麦を原料とする焼酎製造において副成する大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得、該液体分にアルカリを添加してアルカリ可溶性画分を分取し、該アルカリ可溶性画分を酸で中和して中性可溶性画分を得、該中性可溶性画分にエタノールを添加することにより分取した、有機酸、タンパク質、及びヘミセルロースを含有するエタノール不溶性画分からなる組成物が、ラットを使用した実験において、オロチン酸誘発性肝障害に対する発症抑制作用を有することが記載されている(以下、当該公報を特許文献1と呼称することとし、後述の【0005】に別途記載することとする)。
【0004】
特許第3191956号には、トウモロコシフスマより得られたヘミセルロースの部分分解物を主成分とするアルコール性脂肪肝抑制剤が、エタノール溶液投与によるラットの脂肪肝形成に対し、脂肪肝を抑制する作用を有することが記載されている(以下、当該公報を特許文献2と呼称することとし、後述の【0005】に別途記載することとする)。また、特許文献2には、前記トウモロコシフスマから得られたヘミセルロースの部分分解物が「セルエース」の商品名で市販されていることが記載されている。[平成3年3月(社)菓子総合技術センター発行「農林水産省食品流通局委託事業 No.8 飲食料品用機能性素材有効利用技術シリーズ水溶性コーンファイバー(アラビノキシラン)」3頁]には、「セルエース」の商品名で市販されているトウモロコシフスマから得られたヘミセルロースの部分分解物はアラビノース及びキシロースからなるアラビノキシランを主成分とし、キシロース40.32%、アラビノース27.76%、ウロン酸11.86%、ガラクトース5.91%、及びグルコース2.30%の組成を有するものであることが記載されている(以下、当該文献を非特許文献4と呼称することとし、後述の【0005】に別途記載することとする)。更に、[New Food Industry Vol.42 No.9, 6(2000)]には、「セルエース」の商品名で市販されているトウモロコシフスマから得られたヘミセルロースの部分分解物が、急性アルコール性脂肪肝に対する抑制作用を有することが記載されている(以下、当該文献を非特許文献5と呼称することとし、後述の【0005】に別途記載することとする)。
【0005】
【特許文献1】
特開2001-145472号公報
【特許文献2】
特許第3191956号
【非特許文献1】
日本栄養・食糧学会総会講演要旨集、Vol.53, 53(1999)
【非特許文献2】
日本醸造協会誌、Vol.94, No.9, 768(1999)
【非特許文献3】
日本醸造協会誌、Vol.95, No.9, 706(2000)
【非特許文献4】
平成3年3月(社)菓子総合技術センター発行 「農林水産省食品流通局委託事業 No.8 飲食料品用機能性素材有効利用技術シリーズ 水溶性コーンファイバー(アラビノキシラン)」 3頁
【非特許文献5】
New Food Industry Vol.42 No.9, 6(2000)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
大麦焼酎蒸留残液が有する肝障害予防作用については、上述したように、非特許文献1乃至非特許文献3には、大麦焼酎蒸留残液又は大麦焼酎蒸留残液を固液分離することにより得られる液体分(以下、これらを大麦焼酎蒸留残液の液体分と呼称することとする。)がオロチン酸誘発性肝障害及びD-ガラクトサミン誘発性肝障害に対する発症抑制作用を有することが記載されているが、アルコール性肝障害に対する発症抑制作用及び治癒作用を有するか否かについては示唆するところすらない。また、特許文献1にはエタノール不溶性画分がオロチン酸誘発性肝障害に対する発症抑制作用を有することが記載されているが、該エタノール不溶性画分が前記アルコール性肝障害に対する発症抑制作用及び治癒作用を有するか否かについては示唆するところすらない。即ち、該大麦焼酎蒸留残液からアルコール性肝障害に対する発症抑制作用及び治癒作用を有する画分を分取した例はこれまでに全く知られていない。
【0007】
ところで、オロチン酸誘発性肝障害は、オロチン酸により肝臓での脂肪合成が促進され、さらに肝臓から血中への脂肪の移行が抑制され、それにより脂肪肝を誘発する肝障害であることが知られている。また,D-ガラクトサミン誘発性肝障害は、D-ガラクトサミンにより肝細胞の壊死が促進され、それにより肝炎を誘発する肝障害であることが知られている。
【0008】
一方、本発明においていうアルコール性肝障害は、アルコールの過剰摂取によって誘発されるアルコール性肝炎、アルコール性脂肪肝、及びアルコール性高脂血症を包含して意味する。前記アルコール性脂肪肝は、エタノールにより脂肪組織から肝臓への脂肪酸の移行が促進され、肝臓における脂肪酸や中性脂肪の合成が促進され、更に、肝臓における脂肪酸の分解が抑制されること等によって、肝臓内に中性脂肪が蓄積されることにより誘発される脂肪肝であることが知られている。前記アルコール性肝炎は、エタノールの代謝産物であるアセトアルデヒドや酢酸或いはこれらが産生される際に発生する活性酸素が、肝細胞に対して障害性を示すことにより誘発される肝炎であることが知られている。また、前記アルコール性高脂血症は、上述したように肝臓内に蓄積した過剰の中性脂肪が分泌型の超低比重リポタンパク(VLDL)として大量に血中に放出されることにより発症するものであることが知られている。そして、こうしたアルコール性肝障害においては、風船様腫大や肝細胞壊死等の肝炎の病変、或いは大滴性脂肪滴を含有する肝細胞からなる脂肪肝の所見が肝小葉の終末肝静脈周辺領域を中心として進展していくことが知られている。なお、肝臓は主に肝細胞からなり、小葉間結合組織で区切られた肝小葉を一単位として機能しており、この直径1mmほどの肝小葉が多数集合して肝臓ができている。従って、こうしたそれぞれの肝障害の因果関係からすると、アルコール性肝障害は、オロチン酸誘発性肝障害及びD-ガラクトサミン誘発性肝障害とは客観的に区別されるものであり、ある種の成分がオロチン酸誘発性肝障害又はD-ガラクトサミン誘発性肝障害に対して発症抑制作用或いは治癒作用を有することが判っていても、該成分がアルコール性肝障害に対しても同様の発症抑制作用或いは治癒作用を有するか否かは、容易に予測できるものでは到底ない。
【0009】
このような従来技術に鑑みて、本発明は大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得、該液体分を合成吸着剤を使用する吸着分離処理に付して合成吸着剤非吸着画分を得、該合成吸着剤非吸着画分をイオン交換樹脂を使用するイオン交換処理に付してイオン交換樹脂非吸着画分を得、該イオン交換樹脂非吸着画分を限外濾過膜を使用する限外濾過処理に付して濃縮液を得、該濃縮液に有機溶媒を添加することにより分取した、アルコール性肝障害に対する強力な発症抑制作用及び治癒作用を有する有機溶媒不溶性画分からなる組成物を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、文献1乃至文献3には大麦焼酎蒸留残液の液体分がD-ガラクトサミン誘発性肝障害及びオロチン酸誘発性肝障害に対する発症抑制作用を有することが記載されていることに鑑み、該大麦焼酎蒸留残液の液体分が、アルコール性肝障害に対して発症抑制作用を示すか否かを明らかにすることを目的として、実験を介して鋭意検討を行った。その結果、前記大麦焼酎蒸留残液の液体分は、前記アルコール性肝障害に対する発症抑制作用を僅かに有するものの、アルコール性肝障害の発症を積極的に抑制する目的での薬剤としての実使用を示唆する程のものではないことが判明した。
【0011】
ところで、本発明者らの内の三者は他の二者と共同で、大麦焼酎蒸留残液の液体分を合成吸着剤を用いる吸着分離処理に付すことにより得られる吸着画分は、オロチン酸誘発性脂肪肝及びD-ガラクトサミン誘発性肝障害に対する発症抑制作用を有するが、大麦焼酎蒸留残液の液体分を合成吸着剤を用いる吸着分離処理に付すことにより副成する合成吸着剤非吸着画分は、オロチン酸誘発性脂肪肝及びD-ガラクトサミン誘発性肝障害に対する発症抑制作用を有しないことを見出した(特願2002-56929号として出願済)。こうしたことから、前記合成吸着剤非吸着画分は薬理作用を有しないことから無用なものとみなして廃棄していた。ところが、本発明者らは、このように無用なものとして廃棄していた前記合成吸着剤非吸着画分を用いて、そのアルコール性肝障害に対する発症抑制作用及び治癒作用の有無を実験を介して検討したところ、該合成吸着剤非吸着画分がアルコール性肝障害に対する優れた発症抑制作用を有し且つアルコール性肝障害に対する優れた治癒作用を有することを見出した(特願2002-250991号として出願済)。当該発見に引き続いて、該合成吸着剤非吸着画分に含まれる有効成分、即ち、アルコール性肝障害に対する強力な発症抑制作用及び治癒作用を有する成分、を分画精製すべく、鋭意、研究を重ねたところ、該合成吸着剤非吸着画分をイオン交換樹脂を使用するイオン交換処理に付してイオン交換樹脂非吸着画分を得、該イオン交換樹脂非吸着画分を限外濾過膜を使用する限外濾過処理に付して濃縮液を得、該濃縮液に有機溶媒を添加することにより分取した有機溶媒不溶性画分が、アルコール性肝障害に対して際立った発症抑制作用及び治癒作用を有することを見出した。
【0012】
本発明は、このような発見に基づいて完成に至ったものである。本発明の目的は、大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得、該液体分を合成吸着剤を使用する吸着分離処理に付して合成吸着剤非吸着画分を得、該合成吸着剤非吸着画分をイオン交換樹脂を使用するイオン交換処理に付してイオン交換樹脂非吸着画分を得、該イオン交換樹脂非吸着画分を限外濾過膜を使用する限外濾過処理に付して濃縮液を得、該濃縮液に有機溶媒を添加することにより得られる有機溶媒不溶性画分からなる、アルコール性肝障害に対して際立った発症抑制作用及び治癒作用を有する医薬用組成物を提供することにある。本発明の他の目的は、こうした薬理作用を有する組成物の製造方法を提供することにある。
【0013】
以下に本発明を完成するにあたり、本発明者らが行った実験について詳述する。本発明はこれらの実験において得られた知見に基づいて完成したものである。本発明者らは、上述したように、非特許文献1乃至非特許文献3には大麦焼酎蒸留残液の液体分がD-ガラクトサミン誘発性肝障害及びオロチン酸誘発性脂肪肝に対する発症抑制作用を有することが記載されていることに鑑みて、該大麦焼酎蒸留残液の液体分がアルコール性肝障害に対しても発症抑制作用を示すか否かを明らかにするために、該大麦焼酎蒸留残液の液体分(A)を用いて以下の実験を行い、鋭意検討した。
即ち、3週齢Wistar系雄性ラット(日本SLC)24匹にエタノール含有率を徐々に上げながら(3%→4%→5%)エタノール含有液体飼料を6日間与えた後、1群12匹として、対照群及び試験群からなる2群に分けた。その際、前記各群におけるラットの平均体重に係る分散に統計学的有意差が生じないように前記24匹のラットを振り分けた。対照群のラットに対しては5%エタノール含有液体飼料、試験群のラットに対しては該5%エタノール含有液体飼料に大麦焼酎蒸留残液の液体分(A)の凍結乾燥物粉末(A’)1%を添加した液体飼料をそれぞれ4週間与えて飼育した。対照群及び試験群とは別に前記3週齢Wistar系雄性ラット12匹からなる無処置群を設け、該無処置群のラットに対しては他の2群と摂取カロリーを同一にするために5%エタノールの代わりにマルトース-デキストリン等量混合物を添加したエタノール非含有液体飼料を4週間与えて飼育した。但し、上記3群とも、各液体飼料の1日あたりの給餌量(摂取カロリー)を70ml(70kcal)に制限した。実験最終日(試験開始後4週間目)に、飼育したラットのそれぞれの腹部大動脈から採血を行い、肝臓を摘出した。採取した血液は血清分離後、血清総コレステロール、血清HDL-コレステロール、血清LDL-コレステロール、血清トリグリセリド、血清リン脂質、血清遊離脂肪酸、及び血清ALT(GPT)を測定した。また、摘出した肝臓については、肝臓重量、肝臓総コレステロール、肝臓トリグリセリド、及び肝臓リン脂質を測定した。得られた結果は平均値±標準誤差(SEM)で表し、統計処理は以下の手順で行った。即ち、無処置群と対照群の比較はStudent's test法を用いて解析し、次いで対照群と試験群の比較はTukey-Kramer法を用いて解析し、それぞれの解析において危険率0.05%以下を有意として判定した。更に、摘出した前記肝臓から採取した肝細胞をHE染色に付した後、オリンパス光学工業(株)製の生物顕微鏡BX51を用いて200倍の倍率で該肝細胞の形態観察を行った。
【0014】
その結果、対照群は、無処置群と比較して、血清総コレステロール濃度、血清HDL-コレステロール濃度、血清LDL-コレステロール濃度、血清トリグリセリド濃度及び血清リン脂質濃度が有意に増加して、アルコール性高脂血症が誘発されていることが判明した。また、対照群は、無処置群と比較して、肝臓トリグリセリド濃度及び肝臓リン脂質濃度が有意に増加して、アルコール性脂肪肝が誘発されていることが判明した。更に、対照群は、無処置群と比較して、血中ALT(GPT)濃度が有意に増加し、肝細胞の生物顕微鏡観察においては肝小葉の終末肝静脈周辺領域における肝細胞壊死と風船様腫大が顕著に認められ、アルコール性肝炎が誘発されていることが判明した。一方、試験群は、対照群と比較して、血清LDL-コレステロール濃度、血清トリグリセリド濃度及び肝臓トリグリセリド濃度の上昇が抑制される傾向を示し、肝細胞の生物顕微鏡観察においても肝小葉の終末肝静脈周辺領域における肝細胞壊死と風船様腫大が僅かに減少する傾向を示した。
以上の結果から、前記大麦焼酎蒸留残液の液体分(A)の凍結乾燥物粉末(A’)は、アルコール性肝障害の発症を積極的に抑制する目的での薬剤としての実使用を示唆する程のものではないことが判明した。
【0015】
次に、本発明者らは、次に述べる実験を介して、大麦焼酎蒸留残液の液体分から得られるどのような画分がアルコール性肝障害に対する発症抑制作用に寄与しているかを明らかにするために、大麦焼酎蒸留残液の液体分を合成吸着剤を用いる吸着分離処理に付すことにより得られる吸着画分をアルカリを用いて溶出することにより得られる脱着画分(B)を用いて以下の実験を行い、鋭意検討した。
即ち、3週齢Wistar系雄性ラット(日本SLC)24匹にエタノール含有率を徐々に上げながら(3%→4%→5%)エタノール含有液体飼料を6日間与えた後、1群12匹として、対照群及び試験群からなる2群に分けた。その際、前記各群におけるラットの平均体重に係る分散に統計学的有意差が生じないように前記24匹のラットを振り分けた。対照群のラットに対しては5%エタノール含有液体飼料、試験群のラットに対しては該5%エタノール含有液体飼料に上記脱着画分(B)の凍結乾燥物粉末(B’)1%を添加した液体飼料をそれぞれ4週間与えて飼育した。対照群及び試験群とは別に前記3週齢Wistar系雄性ラット12匹からなる無処置群を設け、該無処置群のラットに対しては他の2群と摂取カロリーを同一にするために5%エタノールの代わりにマルトース-デキストリン等量混合物を添加したエタノール非含有液体飼料を4週間与えて飼育した。但し、上記3群とも、各液体飼料の1日あたりの給餌量(摂取カロリー)を70ml(70kcal)に制限した。実験最終日(試験開始後4週間目)に、飼育したラットのそれぞれの腹部大動脈から採血を行い、肝臓を摘出した。採取した血液は血清分離後、血清総コレステロール、血清HDL-コレステロール、血清LDL-コレステロール、血清トリグリセリド、血清リン脂質、血清遊離脂肪酸、及び血清ALT(GPT)を測定した。また、摘出した肝臓については、肝臓重量、肝臓総コレステロール、肝臓トリグリセリド、及び肝臓リン脂質を測定した。得られた結果は平均値±標準誤差(SEM)で表し、統計処理は以下の手順で行った。即ち、無処置群と対照群の比較はStudent's test法を用いて解析し、次いで対照群と試験群の比較はTukey-Kramer法を用いて解析し、それぞれの解析において危険率0.05%以下を有意として判定した。更に、摘出した前記肝臓から採取した肝細胞をHE染色に付した後、オリンパス光学工業(株)製の生物顕微鏡BX51を用いて200倍の倍率で該肝細胞の形態観察を行った。
【0016】
その結果、対照群は、無処置群と比較して、血清総コレステロール濃度、血清HDL-コレステロール濃度、血清LDL-コレステロール濃度、血清トリグリセリド濃度及び血清リン脂質濃度が有意に増加して、アルコール性高脂血症が誘発されていることが判明した。また、対照群は、無処置群と比較して、肝臓トリグリセリド濃度及び肝臓リン脂質濃度が有意に増加して、アルコール性脂肪肝が誘発されていることが判明した。更に、対照群は、無処置群と比較して、血中ALT(GPT)濃度が有意に増加し、肝細胞の生物顕微鏡観察においては肝小葉の終末肝静脈周辺領域における肝細胞壊死と風船様腫大が顕著に認められ、アルコール性肝炎が誘発されていることが判明した。一方、試験群は、対照群と比較して、該ラットの血清トリグリセリド濃度の上昇が抑制される傾向を示したが、肝臓トリグリセリド濃度の上昇を全く抑制せず、肝細胞の生物顕微鏡観察においても肝小葉の終末肝静脈周辺領域における肝細胞壊死と風船様腫大が顕著に認められた。即ち、上記脱着画分(B)の凍結乾燥物粉末(B’)は、アルコール性高脂血症の誘発を抑制する傾向を僅かに示したが、アルコール性脂肪肝及びアルコール性肝炎の誘発を抑制する傾向は全く示さなかった。
以上の結果から、上記脱着画分(B)の凍結乾燥物粉末(B’)は、アルコール性肝障害に対する発症抑制作用を実質的に有さないことが判明した。
【0017】
そこで、本発明者らは、大麦焼酎蒸留残液の液体分を合成吸着剤を用いる吸着分離処理に付すことにより得られる合成吸着剤非吸着画分が、アルコール性肝障害に対して効果的な発症抑制作用を示すのではないかと推測して、大麦焼酎蒸留残液の液体分を合成吸着剤を用いる吸着分離処理に付すことにより得られる合成吸着剤非吸着画分(C)を用いて以下の実験を行い、鋭意検討した。
即ち、3週齢Wistar系雄性ラット(日本SLC)24匹にエタノール含有率を徐々に上げながら(3%→4%→5%)エタノール含有液体飼料を6日間与えた後、1群12匹として、対照群及び試験群からなる2群に分けた。その際、前記各群におけるラットの平均体重に係る分散に統計学的有意差が生じないように前記24匹のラットを振り分けた。対照群のラットに対しては5%エタノール含有液体飼料、試験群のラットに対しては該5%エタノール含有液体飼料に上記合成吸着剤非吸着画分(C)の凍結乾燥物粉末(C’)1%を添加した液体飼料をそれぞれ4週間与えて飼育した。対照群及び試験群とは別に前記3週齢Wistar系雄性ラット12匹からなる無処置群を設け、該無処置群のラットに対しては他の2群と摂取カロリーを同一にするために5%エタノールの代わりにマルトース-デキストリン等量混合物を添加したエタノール非含有液体飼料を4週間与えて飼育した。但し、上記3群とも、各液体飼料の1日あたりの給餌量(摂取カロリー)を70ml(70kcal)に制限した。実験最終日(試験開始後4週間目)に、飼育したラットのそれぞれの腹部大動脈から採血を行い、肝臓を摘出した。採取した血液は血清分離後、血清総コレステロール、血清HDL-コレステロール、血清LDL-コレステロール、血清トリグリセリド、血清リン脂質、血清遊離脂肪酸、及び血清ALT(GPT)を測定した。また、摘出した肝臓については、肝臓重量、肝臓総コレステロール、肝臓トリグリセリド、及び肝臓リン脂質を測定した。得られた結果は平均値±標準誤差(SEM)で表し、統計処理は以下の手順で行った。即ち、無処置群と対照群の比較はStudent's test法を用いて解析し、次いで対照群と試験群の比較はTukey-Kramer法を用いて解析し、それぞれの解析において危険率0.05%以下を有意として判定した。更に、摘出した前記肝臓から採取した肝細胞をHE染色に付した後、オリンパス光学工業(株)製の生物顕微鏡BX51を用いて200倍の倍率で該肝細胞の形態観察を行った。
【0018】
その結果、対照群は、無処置群と比較して、血清総コレステロール濃度、血清HDL-コレステロール濃度、血清LDL-コレステロール濃度、血清トリグリセリド濃度及び血清リン脂質濃度が有意に増加して、アルコール性高脂血症が誘発されていることが判明した。また、対照群は、無処置群と比較して、肝臓トリグリセリド濃度及び肝臓リン脂質濃度が有意に増加して、アルコール性脂肪肝が誘発されていることが判明した。更に、対照群は、無処置群と比較して、血中ALT(GPT)濃度が有意に増加し、肝細胞の生物顕微鏡観察においては肝小葉の終末肝静脈周辺領域における肝細胞壊死と風船様腫大が顕著に認められ、アルコール性肝炎が誘発されていることが判明した。一方、試験群は、対照群と比較して、該ラットの血清LDL-コレステロール濃度と血清トリグリセリド濃度、及び肝臓トリグリセリド濃度の上昇を有意に抑制し、肝細胞の生物顕微鏡観察においても肝小葉の終末肝静脈周辺領域における肝細胞壊死と風船様腫大がほとんど認められなかった。以上の実験結果から、上記合成吸着剤非吸着画分(C)の凍結乾燥物粉末(C’)は、アルコール性肝障害に対する顕著な発症抑制作用を有することが判った。
【0019】
こうしたことから、大麦焼酎蒸留残液が有するアルコール性肝障害の発症抑制作用に寄与する成分は、大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得、該液体分を合成吸着剤を使用する吸着分離処理に付すことにより得られる合成吸着剤非吸着画分に分画された状態で存在することが判明した。
【0020】
そこで、本発明者らは、前記合成吸着剤非吸着画分に含まれるアルコール性肝障害に対する強力な発症抑制作用を有する成分を明らかにすることを目的として、鋭意検討を行った。即ち、本発明者らは、大麦を原料とする焼酎製造において副生する大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得、該液体分を合成吸着剤を使用する吸着分離処理に付すことにより得られる合成吸着剤非吸着画分が、成分の1つとして多糖類を含有していることに鑑み、該合成吸着剤非吸着画分に含まれる多糖類がアルコール性肝障害に対する発症抑制作用に関与しているか否かを明らかにするために鋭意検討を行った。即ち、前記有機溶媒不溶性画分に含まれる多糖類以外の成分である、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、有機酸、或いは大麦由来のポリフェノール等を除去することを目的として以下の実験を行った。具体的には、大麦焼酎蒸留残液の液体分に含まれる大麦由来のポリフェノール等を除去することを目的として、大麦焼酎蒸留残液を固液分離することにより得た液体分を合成吸着剤を使用した吸着分離処理に付して合成吸着剤非吸着画分を得、次に、該合成吸着剤非吸着画分に含まれるアミノ酸、ペプチド、タンパク質及び有機酸を除去することを目的として、該合成吸着剤非吸着画分を種々のイオン交換樹脂を使用したイオン交換処理に付すことによって異なる種類のイオン交換樹脂非吸着画分を得、得られたそれぞれのイオン交換樹脂非吸着画分に別々に有機溶媒を添加することにより分取したそれぞれの有機溶媒不溶性画分が、アルコール性肝障害に対してどのような発症抑制作用を有するか否かを明らかにするために以下の実験を行った。
即ち、大麦焼酎蒸留残液を固液分離することにより得た液体分を合成吸着剤を使用する吸着分離処理に付すことにより合成吸着剤非吸着画分を得、得られた合成吸着剤非吸着画分を、各種のイオン交換樹脂、具体的には、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂及び両者の混床型イオン交換樹脂を用いたイオン交換処理に付してイオン交換樹脂非吸着画分を得、それぞれのイオン交換樹脂非吸着画分にエタノールを添加することにより有機溶媒不溶性画分を得た。得られたそれぞれの有機溶媒不溶性画分について、遊離糖類、多糖類、有機酸類、及び粗タンパクを測定した。また、それぞれの有機溶媒不溶性画分がアルコール性肝障害に対して発症抑制作用を示すか否かを明らかにするために、以下の実験を行った。
【0021】
以下の実験1乃至実験7に供する目的で大麦焼酎の製造を行った。原料としては、大麦(70%精白)を用いた。
【麹の製造】
大麦を40重量%吸水させ、40分間蒸した後、40℃まで放冷し、大麦トンあたり1kgの種麹(白麹菌)を接種し、38℃、RH95%で24時間、32℃、RH92%で20時間保持することにより、大麦麹を製造した。
【蒸麦の製造】
大麦を40重量%吸水させ、40分間蒸した後、40℃まで放冷することにより、蒸麦を製造した。
【0022】
【大麦焼酎及び大麦焼酎蒸留残液の製造】
1次仕込みでは前述の方法で製造した大麦麹(大麦として3トン)に、水3.6キロリットル及び酵母として焼酎酵母の培養菌体1kg(湿重量)を加えて1次もろみを得、得られた1次もろみを5日間の発酵(1段目の発酵)に付した。次いで、2次仕込みでは、上記1段目の発酵を終えた1次もろみに、水11.4キロリットル、前述の方法で製造した蒸麦(大麦として7トン)を加えて11日間の発酵(2段目の発酵)に付した。発酵温度は1次仕込み、2次仕込みとも25℃とした。上記2段目の発酵を終えた2次もろみを常法により単式蒸留に付し、大麦焼酎10キロリットルと大麦焼酎蒸留残液15キロリットルを得た。得られた大麦焼酎蒸留残液を以下の実験1乃至実験7に用いた。
【0023】
【実験1】
前記【0022】において得た大麦焼酎蒸留残液から以下に示す方法により有機溶媒不溶性画分を分画した。即ち、前記大麦焼酎蒸留残液を8000rpm、10minの条件で遠心分離して大麦焼酎蒸留残液の液体分を得、得られた液体分をオルガノ(株)製の合成吸着剤アンバーライトXAD-16を充填したカラムに通して吸着分離処理に付すことにより、該カラムの合成吸着剤に対して非吸着性を示す素通り液からなる合成吸着剤非吸着画分を分取した。得られた合成吸着剤非吸着画分1Lを凍結乾燥に付すことにより該合成吸着剤非吸着画分の凍結乾燥物57.2gを得た。
【0024】
【実験2】
前記【0022】において得た大麦焼酎蒸留残液から以下に示す方法により有機溶媒不溶性画分を分画した。即ち、前記大麦焼酎蒸留残液を8000rpm、10minの条件で遠心分離して大麦焼酎蒸留残液の液体分を得、得られた液体分をオルガノ(株)製の合成吸着剤アンバーライトXAD-16を充填したカラムに通して吸着分離処理に付すことにより、該カラムの合成吸着剤に対して非吸着性を示す素通り液からなる合成吸着剤非吸着画分を分取した。得られた合成吸着剤非吸着画分をBrix10に調整し、Brix10に調整した該合成吸着剤非吸着画分10Lを、5L容量のオルガノ(株)製アンバーライトIRC76(弱酸性陽イオン交換樹脂)を充填したカラムに通して、イオン交換樹脂非吸着画分を得、得られたイオン交換樹脂非吸着画分をBrix60に調整後、終濃度75容量%になるようにエタノールを加え、8000rpm、10minの条件で遠心分離して有機溶媒不溶性画分を分取し、該有機溶媒不溶性画分を凍結乾燥に付すことにより有機溶媒不溶性画分の凍結乾燥物53gを得た。
【0025】
【実験3】
前記【0022】において得た大麦焼酎蒸留残液から以下に示す方法により有機溶媒不溶性画分を分画した。即ち、前記大麦焼酎蒸留残液を8000rpm、10minの条件で遠心分離して大麦焼酎蒸留残液の液体分を得、得られた液体分をオルガノ(株)製の合成吸着剤アンバーライトXAD-16を充填したカラムに通して吸着分離処理に付すことにより、該カラムの合成吸着剤に対して非吸着性を示す素通り液からなる合成吸着剤非吸着画分を分取した。得られた合成吸着剤非吸着画分をBrix10に調整し、Brix10に調整した該合成吸着剤非吸着画分10Lを、5L容量のオルガノ(株)製アンバーライトIRA67(弱酸性陰イオン交換樹脂)を充填したカラムに通して、イオン交換樹脂非吸着画分を得、得られたイオン交換樹脂非吸着画分をBrix60に調整後、終濃度75容量%になるようにエタノールを加え、8000rpm、10minの条件で遠心分離して有機溶媒不溶性画分を分取し、該有機溶媒不溶性画分を凍結乾燥に付すことにより有機溶媒不溶性画分の凍結乾燥物59gを得た。
【0026】
【実験4】
前記【0022】において得た大麦焼酎蒸留残液から以下に示す方法により有機溶媒不溶性画分を分画した。即ち、前記大麦焼酎蒸留残液を8000rpm、10minの条件で遠心分離して大麦焼酎蒸留残液の液体分を得、得られた液体分をオルガノ(株)製の合成吸着剤アンバーライトXAD-16を充填したカラムに通して吸着分離処理に付すことにより、該カラムの合成吸着剤に対して非吸着性を示す素通り液からなる合成吸着剤非吸着画分を分取した。得られた合成吸着剤非吸着画分をBrix10に調整し、Brix10に調整した該合成吸着剤非吸着画分10Lを、5L容量のオルガノ(株)製アンバーライトIR120B(強酸性陽イオン交換樹脂)を充填したカラムに通して、イオン交換樹脂非吸着画分を得、得られたイオン交換樹脂非吸着画分をBrix60に調整後、終濃度75容量%になるようにエタノールを加え、8000rpm、10minの条件で遠心分離して有機溶媒不溶性画分を分取し、該有機溶媒不溶性画分を凍結乾燥に付すことにより有機溶媒不溶性画分の凍結乾燥物56gを得た。
【0027】
【実験5】
前記【0022】において得た大麦焼酎蒸留残液から以下に示す方法により有機溶媒不溶性画分を分画した。即ち、前記大麦焼酎蒸留残液を8000rpm、10minの条件で遠心分離して大麦焼酎蒸留残液の液体分を得、得られた液体分をオルガノ(株)製の合成吸着剤アンバーライトXAD-16を充填したカラムに通して吸着分離処理に付すことにより、該カラムの合成吸着剤に対して非吸着性を示す素通り液からなる合成吸着剤非吸着画分を分取した。得られた合成吸着剤非吸着画分をBrix10に調整し、Brix10に調整した該合成吸着剤非吸着画分10Lを、5L容量のオルガノ(株)製アンバーライト200CT(強酸性陽イオン交換樹脂)を充填したカラムに通して、イオン交換樹脂非吸着画分を得、得られたイオン交換樹脂非吸着画分をBrix60に調整後、終濃度75容量%になるようにエタノールを加え、8000rpm、10minの条件で遠心分離して有機溶媒不溶性画分を分取し、該有機溶媒不溶性画分を凍結乾燥に付すことにより有機溶媒不溶性画分の凍結乾燥物41gを得た。
【0028】
【実験6】
前記【0022】において得た大麦焼酎蒸留残液から以下に示す方法により有機溶媒不溶性画分を分画した。即ち、前記大麦焼酎蒸留残液を8000rpm、10minの条件で遠心分離して大麦焼酎蒸留残液の液体分を得、得られた液体分をオルガノ(株)製の合成吸着剤アンバーライトXAD-16を充填したカラムに通して吸着分離処理に付すことにより、該カラムの合成吸着剤に対して非吸着性を示す素通り液からなる合成吸着剤非吸着画分を分取した。得られた合成吸着剤非吸着画分をBrix10に調整し、Brix10に調整した該合成吸着剤非吸着画分10Lを、5L容量のオルガノ(株)製アンバーライトIRA402BL(最強塩基性陰イオン交換樹脂)を充填したカラムに通して、イオン交換樹脂非吸着画分を得、得られたイオン交換樹脂非吸着画分をBrix60に調整後、終濃度75容量%になるようにエタノールを加え、8000rpm、10minの条件で遠心分離して有機溶媒不溶性画分を分取し、該有機溶媒不溶性画分を凍結乾燥に付すことにより有機溶媒不溶性画分の凍結乾燥物23gを得た。
【0029】
【実験7】
前記【0022】において得た大麦焼酎蒸留残液から以下に示す方法により有機溶媒不溶性画分を分画した。即ち、前記大麦焼酎蒸留残液を8000rpm、10minの条件で遠心分離して大麦焼酎蒸留残液の液体分を得、得られた液体分をオルガノ(株)製の合成吸着剤アンバーライトXAD-16を充填したカラムに通して吸着分離処理に付すことにより、該カラムの合成吸着剤に対して非吸着性を示す素通り液からなる合成吸着剤非吸着画分を分取した。得られた合成吸着剤非吸着画分をBrix10に調整し、Brix10に調整した該合成吸着剤非吸着画分10Lを、3.5L容量のオルガノ(株)製アンバーライトIRC76(弱酸性陽イオン交換樹脂)と1.5L容量のオルガノ(株)製アンバーライトIRA67(弱塩基性陰イオン交換樹脂)を混合することにより得た混床イオン交換樹脂を充填したカラムに通して、混床イオン交換樹脂非吸着画分を得、得られた混床イオン交換樹脂非吸着画分をBrix60に調整後、終濃度75容量%になるようにエタノールを加え、8000rpm、10minの条件で遠心分離して有機溶媒不溶性画分を分取し、該有機溶媒不溶性画分を凍結乾燥に付すことにより有機溶媒不溶性画分の凍結乾燥物19gを得た。
【0030】
上記実験1乃至実験7で得たそれぞれの凍結乾燥物について、以下の方法によりアルコール性肝障害に対する発症抑制作用を評価した。
即ち、7週齢Wistar系雄性ラット(日本チャールスリバー)80匹にエタノール含有率を徐々に上げながら(3%→4%→5%)エタノール含有液体飼料を6日間与えて飼育した後、引き続き5%エタノール含有液体飼料で4週間飼育を行い、該4週間目にそれらのラットのそれぞれについて採血を行い、血漿を分離して血清脂質を測定し、1群10匹として、対照群、試験群1乃至試験群7からなる8群に分けた。その際、前記各群におけるラットの平均体重に係る分散に統計学的有意差が生じないように前記80匹のラットを振り分けた。該対照群のラットに対しては前記エタノール含有液体飼料投与群と摂取カロリーを同一にするために前記5%エタノールの代わりにマルトース-デキストリン等量混合物を添加したエタノール非含有液体飼料を2週間与えて飼育した。試験群1乃至試験群7に対しては該エタノール非含有液体飼料に前記実験1乃至実験7で得たそれぞれの凍結乾燥物粉末1%を添加した液体飼料を2週間与えて飼育した。更に対照群、試験群1乃至試験群7とは別に前記7週齢Wistar系雄性ラット10匹からなる無処置群を設け、該無処置群のラットに対しては該エタノール非含有液体飼料を6週間与えて飼育した。但し、上記9群とも、各液体飼料の1日あたりの給餌量(摂取カロリー)を70ml(70kcal)に制限した。上記9群の全てについて、実験最終日(実験開始後6週間目)に、飼育したラットのそれぞれの腹部大動脈から採血を行い、肝臓を摘出した。採取した血液は血清分離後、血清総コレステロール、血清LDL-コレステロール、血清トリグリセリド、血清リン脂質、血清ALT(GPT)、及び血清AST(GOT)を測定した。また、摘出した肝臓については、肝臓重量、肝臓総コレステロール、肝臓トリグリセリド、及び肝臓リン脂質を測定した。得られた結果は平均値±標準誤差(SEM)で表し、統計処理は以下の手順で行った。即ち、無処置群と対照群の比較はStudent's test法を用いて解析し、次いで対照群に対する試験群1乃至試験群7の比較はTukey-Kramer法を用いて解析し、それぞれの解析において危険率0.05%以下を有意として判定した。更に、摘出した前記肝臓から採取した肝細胞をHE染色に付した後、オリンパス光学工業(株)製の生物顕微鏡BX51を用いて200倍の倍率で該肝細胞の形態観察を行った。
【0031】
実験1乃至実験7で得たそれぞれの凍結乾燥物について、多糖類含量、多糖類由来のアラビノース及びキシロースの合計含量、及びアルコール性肝障害に対する発症抑制作用の実験結果から以下の事実が判明した。即ち、前記対照群と比較して、前記実験1乃至実験7で得た凍結乾燥物の全てにおいてアルコール性肝障害に対する発症抑制作用が認められた。この中で、前記実験5で得た凍結乾燥物を添加した液体飼料で飼育した試験群5において、極めて顕著なアルコール性肝障害に対する発症抑制効果が認められた。一方、前記実験1で得た凍結乾燥物を添加した液体飼料で飼育した試験群1においては、アルコール性肝障害に対する発症抑制効果の程度が最も低かった。
【0032】
【多糖類含量の測定】
(多糖類由来のアラビノース及びキシロースの合計含量の測定)
そこで、上記実験1乃至実験7で得たそれぞれの凍結乾燥物について、多糖類含量、及び多糖類由来のアラビノース及びキシロースの合計含量を測定した。
即ち、前記実験1乃至実験7で得たそれぞれの凍結乾燥物0.05gにイオン交換水1mlを加えて溶解し、これに濃塩酸200μlを加えて、95℃、4時間の条件で加水分解を行い、0.80μmのメンブランフィルターでろ過してろ液を得、該ろ液を高速液体クロマトグラフに注入して、前記実験1乃至実験7で得たそれぞれの凍結乾燥物に含まれる多糖類の含量、及び多糖類由来のアラビノース及びキシロースの合計含量を求めた。高速液体クロマトグラフ分析は、Waters製Waters600を用い、検出器に昭和電工株式会社製示差屈折計RI-71を使用し、カラムはBioRad社製Aminex HPX-87H(300mm×7.8mm)を使用した。カラム温度は60℃とし、移動相には5mM硫酸を用い、流量は0.5ml/min、試料注入量は20μlとした。
【0033】
実験1乃至実験7で得たそれぞれの凍結乾燥物の多糖類含量の測定結果、並びに、該多糖類由来のアラビノース及びキシロースの合計含量の測定結果から以下の事実が判明した。即ち、前記実験5で得た凍結乾燥物の多糖類含量、並びに、該多糖類由来のアラビノース及びキシロースの合計含量が、それぞれ最も高い値を示した。一方、前記実験1で得た凍結乾燥物の多糖類含量、並びに、該多糖類由来のアラビノース及びキシロースの合計含量が、それぞれ最も低い値を示した。更に、前記実験1乃至実験7で得た凍結乾燥物のそれぞれが有するアルコール性肝障害に対する発症抑制作用の強さは、該凍結乾燥物に含まれる多糖類由来のアラビノース及びキシロースの合計含量に比例して高まる傾向が認められることが明らかになった。
【0034】
以上の結果から、前記実験1乃至実験7で得たそれぞれの凍結乾燥物が有するアルコール性肝障害に対する発症抑制作用は、該凍結乾燥物に含まれる、アラビノース及びキシロースを主たる構成要素とする多糖類に由来している可能性が極めて高いことが明らかになった。
【0035】
【分子量分布の測定】
そこで、上記実験1乃至実験7で得たそれぞれの凍結乾燥物に含まれる、アラビノース及びキシロースを主たる構成要素とする多糖類の分子量を明らかにするために、それぞれの有機溶媒不溶性画分が有する分子量分布を測定した。
即ち、昭和電工株式会社製のShodex standard P-82(分子量1300乃至1660000)、及びマルトトリオース(分子量504)から成る分子量標準品をそれぞれ別々に0.1mol /L硝酸ナトリウム溶液に溶解して0.05W/V%濃度の標準液を得、該標準液を高速液体クロマトグラフに注入して検量線を作成した。次に、前記実験1乃至実験7で得たそれぞれの凍結乾燥物0.02gを用意し、これに0.1mol/L硝酸ナトリウム溶液10ml を加え、室温で一晩放置した後、孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過してろ液を得、該ろ液を高速液体クロマトグラフに注入して、システムインスツルメンツ株式会社製480データステーションGPCプログラムを用いて分子量分布を求めた。高速液体クロマトグラフ分析は、昭和電工株式会社製Shodex GPC SYSTEM-21 を用い、検出器に昭和電工株式会社製示差屈折計RI-71Sを使用し、カラムは東ソー株式会社製TSKgel GMPWXL(φ7.8mm×300mm)を2本連結して使用した。カラム温度は40℃とし、移動相には0.1mol/L硝酸ナトリウム溶液を用い、流量は1.0ml/min、試料注入量は100μlとした。
【0036】
上記方法により実験1乃至実験7で得たそれぞれの凍結乾燥物についてそれぞれの分子量分布を測定した結果、該凍結乾燥物に含まれる多糖類由来のアラビノース及びキシロースの合計含量が高いほど、分子量10,000乃至100,000からなる画分の割合が高まることが判明した。
【0037】
このようなことから、本発明者らは、前記凍結乾燥物に含まれる、アラビノース及びキシロースを主たる構成要素とする多糖類は、主として10,000乃至100,000の分子量を有しているのではないかと推測し、限外濾過を用いて、有機溶媒不溶性画分の分画精製を検討した。
[限外濾過による有機溶媒不溶性画分の分画精製]
実験1乃至実験7で得たそれぞれの凍結乾燥物について、上記方法により分子量分布を測定した結果、実験5で得た凍結乾燥物が、分子量10,000乃至100,000からなる画分の割合が最も高く、しかも多糖類由来のアラビノース及びキシロースの合計含量も最も高いことが判明した。そこで、以下に示す手順により、限外濾過処理を介した前記凍結乾燥物の分画精製を行った。
即ち、【0022】で得た大麦焼酎蒸留残液を、8000rpm、10minの条件で遠心分離して大麦焼酎蒸留残液の液体分を得、得られた液体分をオルガノ(株)製の合成吸着剤アンバーライトXAD-16を充填したカラムに通して吸着分離処理に付すことにより、該カラムの合成吸着剤に対して非吸着性を示す素通り液からなる合成吸着剤非吸着画分を分取した。得られた合成吸着剤非吸着画分をBrix10に調整し、Brix10に調整した該合成吸着剤非吸着画分1Lを、500ml容量のオルガノ(株)製アンバーライト200CT(強酸性陽イオン交換樹脂)を充填したカラムに通して、イオン交換樹脂非吸着画分を得、得られたイオン交換樹脂非吸着画分をA/G テクノロジー社製の限外濾過膜UFP-30-E-4MA(分画分子量30,000)による処理に付して濃縮液を得、得られた濃縮液をBrix20に調整後、終濃度75容量%になるようにエタノールを加え、8000rpm、10minの条件で遠心分離して有機溶媒不溶性画分を分取し、該有機溶媒不溶性画分を凍結乾燥に付すことにより有機溶媒不溶性画分の凍結乾燥物1.3gを得た。
【0038】
得られた凍結乾燥物について、【0032】に記載の方法により、多糖類由来のアラビノース及びキシロースの合計含量を測定した。その結果、多糖類由来のアラビノース及びキシロースの合計含量は、78.5重量%にまで高まっていることが判明した。また、得られた凍結乾燥物について、【0035】に記載の方法により分子量分布の測定を行った。その結果、該凍結乾燥物の分子量分布は100,000以上が11%、30,000乃至100,000が29%、10,000乃至30,000が24%、3,000乃至10,000が21%、1,000乃至3,000が6%、500乃至1,000が2%、500以下が7%であることが判明した。そして、得られたクロマトグラムの結果から、該凍結乾燥物のクロマトグラムは、分子量30,000乃至100,000の範囲に最も高いピークを有することが明らかになった。そこで、【0030】に記載の方法により、【0037】で得た凍結乾燥物のアルコール性肝障害に対する発症抑制作用を評価した。その結果、該凍結乾燥物が有するアルコール性肝障害に対する発症抑制作用は際立ったものであることが判明した。
【0039】
以上の実験結果から、大麦焼酎蒸留残液の液体分から得られる前記有機溶媒不溶性画分からなる凍結乾燥物が有するアルコール性肝障害に対する前記発症抑制作用は、該有機溶媒不溶性画分からなる凍結乾燥物に含まれる、アラビノース及びキシロースを主たる構成要素とする多糖類に由来し、こうしたアラビノース及びキシロースを主たる構成要素とする多糖類を著量含有する組成物は、大麦を原料とする焼酎製造において副生する大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得、該液体分を合成吸着剤を使用する吸着分離処理に付して合成吸着剤非吸着画分を得、該合成吸着剤非吸着画分をイオン交換樹脂を使用するイオン交換処理に付してイオン交換樹脂非吸着画分を得、得られたイオン交換樹脂非吸着画分を限外濾過膜を使用する限外濾過処理に付して濃縮液を得、該濃縮液に有機溶媒を添加することにより有機溶媒不溶性画分として分取できることが判明した。そして、該有機溶媒不溶性画分からなる凍結乾燥物は、成分分析の結果、多糖類78.5重量%、粗タンパク3.3重量%、有機酸0.2重量%、遊離糖類1.5重量%を含有し、該画分は多糖類を主たる成分として含有することが判った。
【0040】
そこで、本発明者らは、アルコール性肝障害に対して発症抑制作用を有することが判明した前記合成吸着剤非吸着画分の凍結乾燥物粉末、及びアルコール性肝障害に対して際立った発症抑制作用を有することが判明した前記有機溶媒不溶性画分の凍結乾燥物粉末が、既に発症したアルコール性肝障害に対して治癒作用を有するか否かを明らかにするために、以下の実験を行った。
即ち、7週齢Wistar系雄性ラット(日本チャールスリバー)30匹にエタノール含有率を徐々に上げながら(3%→4%→5%)エタノール含有液体飼料を6日間与えて飼育した後、引き続き5%エタノール含有液体飼料で4週間飼育を行い、該4週間目にそれらのラットのそれぞれについて採血を行い、血漿を分離して血清脂質を測定し、1群10匹として、対照群、試験群1、及び試験群2からなる3群に分けた。その際、前記各群におけるラットの平均体重に係る分散に統計学的有意差が生じないように前記30匹のラットを振り分けた。該対照群のラットに対しては前記エタノール含有液体飼料投与群と摂取カロリーを同一にするために前記5%エタノールの代わりにマルトース-デキストリン等量混合物を添加したエタノール非含有液体飼料を2週間与えて飼育した。該試験群1に対しては該エタノール非含有液体飼料に前記合成吸着剤非吸着画分の凍結乾燥物粉末1%を添加した液体飼料を2週間与えて飼育した。該試験群2に対しては該エタノール非含有液体飼料に前記有機溶媒不溶性画分の凍結乾燥物粉末1%を添加した液体飼料を2週間与えて飼育した。更に対照群、試験群1及び試験群2とは別に前記7週齢Wistar系雄性ラット10匹からなる無処置群を設け、該無処置群のラットに対しては該エタノール非含有液体飼料を6週間与えて飼育した。但し、上記4群とも、各液体飼料の1日あたりの給餌量(摂取カロリー)を70ml(70kcal)に制限した。上記4群の全てについて、実験最終日(実験開始後6週間目)に、飼育したラットのそれぞれの腹部大動脈から採血を行い、肝臓を摘出した。採取した血液は血清分離後、血清総コレステロール、血清LDL-コレステロール、血清トリグリセリド、血清リン脂質、血清ALT(GPT)、及び血清AST(GOT)を測定した。また、摘出した肝臓については、肝臓重量、肝臓総コレステロール、肝臓トリグリセリド、及び肝臓リン脂質を測定した。得られた結果は平均値±標準誤差(SEM)で表し、統計処理は以下の手順で行った。即ち、無処置群と対照群の比較はStudent's test法を用いて解析し、次いで対照群に対するA群及びB群の比較はTukey-Kramer法を用いて解析し、それぞれの解析において危険率0.05%以下を有意として判定した。更に、摘出した前記肝臓から採取した肝細胞をHE染色に付した後、オリンパス光学工業(株)製の生物顕微鏡BX51を用いて200倍の倍率で該肝細胞の形態観察を行った。
【0041】
その結果、対照群は、エタノール含有液体飼料を与えて飼育することにより上昇した血清総コレステロール濃度、血清LDL-コレステロール濃度、及び肝臓トリグリセリド濃度が僅かに低下するのみで、それぞれの正常値に近似する程度が極めて小なるものであった。一方、試験群1及び試験群2の血清総コレステロール濃度、血清LDL-コレステロール濃度、血清トリグリセリド濃度、血清リン脂質濃度、血清ALT(GPT)濃度、血清AST(GOT)濃度、及び肝臓総コレステロール濃度のそれぞれの値は、対照群のそれぞれの値と比較して有意に低い値、即ち、それぞれの正常値と実質的に同等の値を示し、特に、試験群2のほうが試験群1よりも更に正常値に近似した値を示した。また、試験群1及び試験群2においては、肝細胞の生物顕微鏡観察においても肝小葉の終末肝静脈周辺領域における肝細胞壊死と風船様腫大がほとんど認められなかった。
即ち、前記有機溶媒不溶性画分の凍結乾燥物粉末が有するアルコール性肝障害に対する治癒作用は、前記合成吸着剤非吸着画分の凍結乾燥物粉末が有する同作用を凌駕するものであることが明らかになった。
【0042】
以上の実験結果から、大麦を原料とする焼酎の製造において副成する大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得、該液体分を合成吸着剤を使用する吸着分離処理に付して合成吸着剤非吸着画分を得、該合成吸着剤非吸着画分をイオン交換樹脂を使用するイオン交換処理に付してイオン交換樹脂非吸着画分を得、該イオン交換樹脂非吸着画分を限外濾過膜を使用する限外濾過処理に付して濃縮液を得、該濃縮液に有機溶媒を添加することにより得られる有機溶媒不溶性画分が、アルコール性肝障害に対する極めて強力な発症抑制作用及び治癒作用を有することが判明した。当該事実から、大麦を原料とする焼酎の製造において副成する大麦焼酎蒸留残液を固液分離することにより得られる液体分は、アルコール性肝障害の発症抑制及び治癒に寄与する成分を含有し、該成分は、前記液体分を合成吸着剤を使用する吸着分離処理に付して合成吸着剤非吸着画分を得、該合成吸着剤非吸着画分をイオン交換樹脂を使用するイオン交換処理に付してイオン交換樹脂非吸着画分を得、該イオン交換樹脂非吸着画分を限外濾過膜を使用する限外濾過処理に付して濃縮液を得、該濃縮液に有機溶媒を添加することにより得られる有機溶媒不溶性画分の中に分画されて含有されることが判明した。
【0043】
上述したように本発明者らは、大麦を原料とする焼酎製造において副成する大麦焼酎蒸留残液を固液分離することにより得られる液体分は、アルコール性肝障害の発症抑制及び治癒に寄与する成分を含有し、該成分は、前記液体分を合成吸着剤を使用する吸着分離処理に付して合成吸着剤非吸着画分を得、該合成吸着剤非吸着画分をイオン交換樹脂を使用するイオン交換処理に付してイオン交換樹脂非吸着画分を得、該イオン交換樹脂非吸着画分を限外濾過膜を使用する限外濾過処理に付して濃縮液を得、該濃縮液に有機溶媒を添加することにより得られる有機溶媒不溶性画分からなる組成物が、アルコール性肝障害に対して際立った発症抑制作用及び治癒作用を有することを見出した。大麦焼酎蒸留残液から得られる有機溶媒不溶性画分についてのこの発見は、今までに全く例のない新事実である。このように、本発明は、該有機溶媒不溶性画分を治療目的で医薬として使用できるという該有機溶媒不溶性画分の有用な用途を創出するものである。
【0044】
本発明者らは、上記課題を達成すべく、実験を介して鋭意研究を重ねた結果、大麦を原料とする焼酎製造において副成する大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得、該液体分を合成吸着剤を使用する吸着分離処理に付して合成吸着剤非吸着画分を得、該合成吸着剤非吸着画分をイオン交換樹脂を使用するイオン交換処理に付してイオン交換樹脂非吸着画分を得、該イオン交換樹脂非吸着画分を限外濾過膜を使用する限外濾過処理に付して濃縮液を得、該濃縮液に有機溶媒を添加することにより有機溶媒不溶性画分を分取し、該有機溶媒不溶性画分を成分分析に付した結果、多糖類78.5重量%、粗タンパク3.3重量%、有機酸0.2重量%、遊離糖類1.5重量%を含有し、該画分は多糖類を主たる成分として含有することが判った。
更に該有機溶媒不溶性画分を凍結乾燥に付した場合、白色の性状を有することが判明した。そして、こうした特徴を有する該有機溶媒不溶性画分は、アルコール誘発性肝障害に対して際立った発症抑制作用及び治癒作用を有することが判明した。本発明はこれらの判明した事実に基づくものである。
【0045】
なお、特許文献1に記載の脂肪肝抑制作用を有する組成物は、本発明の組成物と同様に大麦焼酎蒸留残液から分取されるものである。しかし特許文献1に記載の該組成物が有する主たる成分は分子量3000以下のものであり、該組成物に含まれるヘミセルロースはキシロースを主たる構成要素とすることから、本発明の組成物とは明確に区別される別異のものである。
【0046】
上述したように、特許文献2に記載のアルコール性脂肪肝抑制剤は、トウモロコシフスマから澱粉質及び蛋白質を除去した残部をアルカリ抽出することにより得られるヘミセルロースをキシラナーゼで処理することにより得られる部分分解物を有効成分とするものである。また、非特許文献4には、前記特許文献2に記載のトウモロコシフスマから得られたヘミセルロースの部分分解物(商品名セルエース)が、【0004】に記載したとおり、キシロース、アラビノース、ウロン酸、ガラクトース、及びグルコースを含有するものであることが記載されている。よって、特許文献2と非特許文献4は、同じ「トウモロコシフスマから得られたヘミセルロースの部分分解物(商品名セルエース)」に係るものである。一方、本発明の組成物は、前記トウモロコシフスマとは全く異なる大麦焼酎蒸留残液から得られるものである。即ち、本発明の組成物は、特許文献2に記載のヘミセルロースの部分分解物の製造工程とは全く異なる製造工程を介して得られるものである。そして、本発明の組成物は、アラビノース、キシロース及びグルコースのみを含有し、特許文献2に記載のヘミセルロースの部分分解物が有するウロン酸を実質的に含有していない。よって、本発明の組成物は、特許文献2に記載の「トウモロコシフスマより得られたヘミセルロースの部分分解物」を有効成分とするアルコール性脂肪肝抑制剤から明確に区別される別異のものであることは明白である。
【0047】
尚、非特許文献4には、「トウモロコシフスマより得られたヘミセルロースの部分分解物(商品名セルエース)」の分子量が約20万であることが記載されているが、当該分子量を決定づけるに至った実験データは全く記載されていない。そこで、本発明者らは、特許文献2において、ヘミセルロースの部分分解物が商品名「セルエース」(日本食品化工株式会社製)として市販されていることが記載されていることから、「セルエース」を入手し、前記【0035】に記載の方法により該セルエースの分子量分布を測定した。その結果、該セルエースの分子量分布は、100万以上が1%、30万乃至100万が9%、100,000乃至30万が30%、30,000乃至100,000が30%、10,000乃至30,000が11%、3000乃至10,000が4%、1000乃至3000が2%、1000以下が13%であり、そのクロマトグラムは分子量100,000乃至30万の範囲にピークトップを有する単一のピークのみからなり、その重量平均分子量(Mw)は150,000であることが判明した。
一方、上述したように本発明の組成物の分子量分布は、100,000以上がわずか11%に過ぎず、分子量3,000乃至100,000からなる成分が全体の74%を占めている。しかも、本発明の組成物が示すクロマトグラムは、分子量30,000乃至100,000の範囲に最も高いピークを有している。
従って、本発明の組成物が有する分子量分布は、「セルエース」、即ち、トウモロコシフスマから得られたヘミセルロースの部分分解物からなる組成物が有する分子量分布とは全く異なる。また上述したように、本発明の組成物は、トウモロコシフスマから得られたヘミセルロースの部分分解物が含有するウロン酸を実質的に含有していない。この点からしても、本発明の組成物が、特許文献2に記載の「ヘミセルロースの部分分解物」からなるアルコール性脂肪肝抑制剤とは明らかに区別される別異のものであることは明白である。
【0048】
【実施態様例】
本発明は上記目的を達成するものであり、アルコール性肝障害に対して強力な発症抑制作用及び治癒作用を有する組成物及びその製造方法を提供する。即ち、大麦を原料とする焼酎の製造において副成する大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得、該液体分を合成吸着剤を使用する吸着分離処理に付して合成吸着剤非吸着画分を得、該合成吸着剤非吸着画分をイオン交換樹脂を使用するイオン交換処理に付してイオン交換樹脂非吸着画分を得、該イオン交換樹脂非吸着画分を限外濾過膜を使用する限外濾過処理に付して濃縮液を得、該濃縮液に有機溶媒を添加することにより得られる有機溶媒不溶性画分からなる、アルコール性肝障害に対して際立った発症抑制作用及び治癒作用を有する組成物及びその製造方法を提供する。また、本発明は、該組成物からなる医薬を提供する。
【0049】
以下に、本発明の好ましい態様について述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の組成物は以下のようにして製造される。即ち該組成物の製造方法は、大麦を使用する蒸留酒の製造において副成する大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得る第1の工程、該液体分を合成吸着剤を使用する吸着分離処理に付して合成吸着剤非吸着画分を得る第2の工程、該合成吸着剤非吸着画分をイオン交換樹脂を使用するイオン交換処理に付してイオン交換樹脂非吸着画分を得る第3の工程、該イオン交換樹脂非吸着画分を限外濾過膜を使用する限外濾過処理に付して濃縮液を得る第4の工程、及び該濃縮液に有機溶媒を添加することにより有機溶媒不溶性画分を分取する第5の工程からなる。
以下に、本発明の該製造方法を実施する際に使用する、大麦を原料とする焼酎の製造において副成する大麦焼酎蒸留残液、及び各工程について詳述する。
【0050】
本発明において使用する大麦焼酎蒸留残液は、代表的には、大麦又は精白大麦を原料として大麦麹及び蒸麦を製造し、得られた大麦麹及び蒸麦中に含まれるでんぷんを該大麦麹の麹により糖化し、それらを酵母によるアルコール発酵に付して焼酎熟成もろみを得、得られた焼酎熟成もろみを減圧蒸留または常圧蒸留等の単式蒸留装置を用いて蒸留する際に蒸留残渣として副生するもの、即ち、大麦焼酎の蒸留残液を意味する。
【0051】
本発明において、大麦焼酎蒸留残液を得るに際して、大麦焼酎の製造に用いる大麦麹は、通常の大麦焼酎製造において行われている製麹条件で製造すればよく、用いる麹菌株としては、一般的に大麦焼酎製造で使用する白麹菌(Aspergillus kawachii)が好ましい。或いは泡盛製造で使用する黒麹菌(Aspergillus awamori)及び清酒製造等で使用する黄麹(Aspergillus oryzae)などのAspergillus属の菌株を用いることもできる。また大麦焼酎の製造に用いる酵母は、一般的に焼酎製造の際に使用する各種の焼酎醸造用酵母を使用することができる。
【0052】
本発明において、大麦焼酎の製造における蒸留工程で得られた大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得る第1の工程は、大麦焼酎蒸留残液から原料大麦、あるいは大麦麹由来の水不溶性の発酵残渣等のSS分を除去することを目的として行うものである。この第1の工程における当該固液分離は、スクリュープレス方式やローラープレス方式の固液分離方法によるか、或いはろ過圧搾式の固液分離機を用いて予備分離を行い、次いで遠心分離機、ケイソウ土ろ過装置、セラミックろ過装置、或いはろ過圧搾機等を用いて本発明により実施できる本固液分離処理を行う。
【0053】
第1の工程で得られた大麦焼酎蒸留残液の液体分を合成吸着剤を使用した吸着分離処理に付すことにより合成吸着剤非吸着画分を得る第2の工程は、大麦焼酎蒸留残液の液体分に含まれているポリフェノール等の成分を除去することを目的として行うものである。この第2の工程で使用する合成吸着剤としては、芳香族系、芳香族系修飾型、或いはメタクリル系の合成吸着剤を用いることができる。第2の工程で使用する合成吸着剤の好適な具体例としては、オルガノ(株)製のアンバーライトXAD-4、アンバーライトXAD-16、アンバーライトXAD-1180及びアンバーライトXAD-2000、三菱化学(株)製のセパビーズSP850及びダイヤイオンHP20等の芳香族系(又はスチレン系とも言う)合成吸着剤、オルガノ(株)製のアンバーライトXAD-7及び三菱化学(株)製のダイヤイオンHP2MG等のメタクリル系(又はアクリル系とも言う)合成吸着剤を挙げることができる。これらの他、場合によっては三菱化学(株)製のセパピーズSP207等の芳香族系修飾型合成吸着剤を用いることができる。
【0054】
第2の工程で得られた合成吸着剤非吸着画分をイオン交換樹脂を使用するイオン交換処理に付してイオン交換樹脂非吸着画分を得る第3の工程においては、該合成吸着剤非吸着画分に含まれるアミノ酸、ペプチド、タンパク質、及び有機酸を、イオン交換樹脂を用いて除去することを目的として行うものである。第3の工程で使用するイオン交換樹脂としては、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂、或いは両者を混合した混床イオン交換樹脂を使用することができる。陽イオン交換樹脂の場合、強酸性陽イオン交換樹脂及び弱酸性陽イオン交換樹脂のいずれであっても使用することができ、陰イオン交換樹脂の場合、強塩基性陰イオン交換樹脂及び弱塩基性陰イオン交換樹脂のいずれであっても使用することができる。また混床イオン交換樹脂の場合には、上述した陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂を自由に組み合わせて所定の割合で混合して使用することができる。こうしたイオン交換樹脂の好適な具体例としては、オルガノ(株)製のアンバーライト200CT及びアンバーライトIR120B等の強酸性陽イオン交換樹脂、アンバーライトIRC76等の弱酸性陽イオン交換樹脂、アンバーライトIRA402BL等の最強塩基性陰イオン交換樹脂、アンバーライトIRA67等の弱塩基性陰イオン交換樹脂、或いは、前記弱酸性陽イオン交換樹脂と前記弱塩基性陰イオン交換樹脂の両者を所定の割合で混合することにより得られる混床型イオン交換樹脂等を用いることができる。これらのうち、大麦焼酎蒸留残留液に含まれているアミノ酸やペプチド等を除去する観点においては、前記弱酸性陽イオン交換樹脂アンバーライトIRC76と前記弱塩基性陰イオン交換樹脂アンバーライトIRA67の両者を所定の割合で混合することにより得られる混床型イオン交換樹脂、或いは、強酸性陽イオン交換樹脂アンバーライト200CTを使用することが特に好ましい。
【0055】
第3の工程で得られた該イオン交換樹脂非吸着画分を限外濾過膜を使用する限外濾過処理に付して濃縮液を得る第4の工程においては、NK細胞賦活化作用に関与する成分である、アラビノース及びキシロースを主たる構成要素とする多糖類を限外濾過膜を用いて濃縮することを目的として行うものである。第4の工程で使用する限外濾過膜としては、いかなる膜材質及び膜モジュール型式のものであっても使用することができ、分画分子量は、好ましくは3000以上、特に好ましくは10,000乃至50,000のものを使用することができる。
【0056】
第4の工程で得られた濃縮液に有機溶媒を添加することにより有機溶媒不溶性画分を分取する第5の工程においては、適宜の有機溶媒を所定の終濃度になるまで添加する。この場合、有機溶媒はエタノールが至適であるが、これに限定されるものではない。有機溶媒の終濃度は成分の生産効率に影響し、該有機溶媒の最適終濃度は、好ましくは5容量%以上、より好ましくは、30乃75容量%である。
【0057】
このようにして得られる本発明の組成物である上記有機溶媒不溶性画分はそのままの状態で、或いはこれを凍結乾燥等に付すことにより乾燥物粉末にして、アルコール性肝障害に対する強力な発症抑制作用及び治癒作用を有する医薬として使用することができる。
【0058】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0059】
【実施例1】
前記【0022】において得た大麦焼酎蒸留残液を、8000rpm、10minの条件で遠心分離して大麦焼酎蒸留残液の液体分を得、得られた液体分をオルガノ(株)製の合成吸着剤アンバーライトXAD-16を充填したカラムに通して吸着分離処理に付すことにより、該カラムの合成吸着剤に対して非吸着性を示す素通り液からなる合成吸着剤非吸着画分を分取した。得られた合成吸着剤非吸着画分をBrix10に調整後、Brix10に調整した該合成吸着剤非吸着画分1Lを、500ml容量のオルガノ(株)製アンバーライト200CT(強酸性陽イオン交換樹脂)を充填したカラムに通して、イオン交換樹脂非吸着画分を得、得られたイオン交換樹脂非吸着画分をA/G テクノロジー社製の限外濾過膜UFP-30-E-4MA(分画分子量30,000)による処理に付して濃縮液を得、得られた濃縮液をBrix20に調整後、終濃度75容量%になるようにエタノールを加え、8000rpm、10minの条件で遠心分離して有機溶媒不溶性画分を分取し、該有機溶媒不溶性画分を凍結乾燥に付すことにより有機溶媒不溶性画分の凍結乾燥物1.3gを得た。該凍結乾燥物を粉砕し灰白色で無味無臭の組成物を得た。
【0060】
【比較例1】
前記【0022】において得た大麦焼酎蒸留残液を8000rpm、10minの条件で遠心分離して大麦焼酎蒸留残液の液体分を得、得られた液体分をオルガノ(株)製の合成吸着剤アンバーライトXAD-16を充填したカラムに通して吸着分離処理に付すことにより、該カラムの合成吸着剤に対して非吸着性を示す素通り液からなる合成吸着剤非吸着画分を分取した。得られた合成吸着剤非吸着画分1Lを凍結乾燥に付すことにより該合成吸着剤非吸着画分の凍結乾燥物57.2gを得た。該凍結乾燥物を粉砕し灰白色で無味無臭の組成物を得た。
【0061】
実施例1で得た凍結乾燥物粉末(組成物)、及び比較例1で得た凍結乾燥物粉末のそれぞれを以下の試験例1に供し、アルコール性肝障害に対する発症抑制作用を評価した。
【0062】
【試験例1】
本発明の組成物が有するアルコール性肝障害の発症に対する顕著な抑制作用を明らかにするために以下の試験例1を行った。
即ち、3週齢Wistar系雄性ラット(日本SLC)36匹にエタノール含有率を徐々に上げながら(3%→4%→5%)エタノール含有液体飼料を6日間与えた後、1群12匹として、対照群、試験群1、及び試験群2からなる3群に分けた。その際、前記各群におけるラットの平均体重に係る分散に統計学的有意差が生じないように前記36匹のラットを振り分けた。対照群のラットに対しては5%エタノール含有液体飼料を4週間与えて飼育した。試験群1のラットに対しては5%エタノール含有液体飼料に実施例1で得た凍結乾燥物粉末1%を添加した液体飼料を4週間与えて飼育した。試験群2のラットに対しては5%エタノール含有液体飼料に比較例1で得た凍結乾燥物粉末1%を添加した液体飼料を4週間与えて飼育した。対照群、試験群1、及び試験群2とは別に前記3週齢Wistar系雄性ラット12匹からなる無処置群を設け、該無処置群のラットに対しては他の3群と摂取カロリーを同一にするために5%エタノールの代わりにマルトース-デキストリン等量混合物を添加したエタノール非含有液体飼料を4週間与えて飼育した。但し、上記4群とも、各液体飼料の1日あたりの給餌量(摂取カロリー)を70ml(70kcal)に制限した。実験最終日(試験開始後4週間目)に、飼育したラットのそれぞれの腹部大動脈から採血を行い、肝臓を摘出した。採取した血液は血清分離後、血清総コレステロール、血清HDL-コレステロール、血清LDL-コレステロール、血清トリグリセリド、血清リン脂質、血清遊離脂肪酸、及び血清ALTを測定した。また、摘出した肝臓については、肝臓重量、肝臓総コレステロール、肝臓トリグリセリド、及び肝臓リン脂質を測定した。得られた結果は平均値±標準誤差(SEM)で表し、統計処理は以下の手順で行った。即ち、無処置群と対照群の比較はStudent's test法を用いて解析し、次いで対照群に対する試験群1及び試験群2の比較はTukey-Kramer法を用いて解析し、それぞれの解析において危険率0.05%以下を有意として判定した。更に、摘出した前記肝臓から採取した肝細胞をHE染色に付した後、オリンパス光学工業(株)製の生物顕微鏡BX51を用いて200倍の倍率で該肝細胞の形態観察を行った。
【0063】
【評価1】
上記で得られた血清総コレステロール、血清HDL-コレステロール、血清LDL-コレステロール、血清トリグリセリド、血清リン脂質、血清遊離脂肪酸、及び血清ALTの測定結果を表1に示し、肝臓重量、肝臓総コレステロール、肝臓トリグリセリド、及び肝臓リン脂質の測定結果から以下の事実が判明した。
即ち、対照群は、無処置群と比較して、血清総コレステロール濃度、血清HDL-コレステロール濃度、血清LDL-コレステロール濃度、血清トリグリセリド濃度及び血清リン脂質濃度が有意に増加して、アルコール性高脂血症が誘発されていることが判明した。また、対照群は、無処置群と比較して、肝臓トリグリセリド濃度及び肝臓リン脂質濃度が有意に増加して、アルコール性脂肪肝が誘発されていることが判明した。更に、対照群は、無処置群と比較して、血中ALT(GPT)濃度が有意に増加し、肝細胞の生物顕微鏡観察においては肝小葉の終末肝静脈周辺領域における肝細胞壊死と風船様腫大が顕著に認められ、アルコール性肝炎が誘発されていることが判明した。一方、試験群1及び試験群2は、血清LDL-コレステロール濃度、血清トリグリセリド濃度、及び肝臓トリグリセリド濃度の上昇が有意に抑制され、特に、試験群1のほうが試験群2よりも更に正常値に近似した値を示した。また、試験群1及び試験群2には、肝細胞の生物顕微鏡観察においてもアルコール性肝障害に特異的に認められる肝小葉の終末肝静脈周辺領域における肝細胞壊死と風船様腫大がほとんど認められなかった。
【0064】
以上の結果から、実施例1で得た本発明の凍結乾燥物粉末は、比較例1で得た凍結乾燥物粉末よりも、アルコール性肝障害の誘発を更に著しく抑制し、アルコール性肝障害に対して卓越した発症抑制作用を示すことが判明した。
即ち、本発明の組成物は、アルコール性肝障害に対して際立った発症抑制作用を有することが明らかとなった。
【0065】
実施例1で得た凍結乾燥物粉末(組成物)及び比較例1で得た凍結乾燥物粉末のそれぞれを以下の試験例2に供し、アルコール性肝障害に対する治癒作用を評価した。
【0066】
【試験例2】
本試験例では、エタノール含有液体飼料で4週間飼育することによりアルコール性肝障害を発症したラットについて、実施例1で得た凍結乾燥物粉末(本発明の組成物)及び比較例1で得た凍結乾燥物粉末のそれぞれを用いて飼育することにより、アルコール性肝障害に対する治癒作用を評価した。
即ち、7週齢Wistar系雄性ラット(日本チャールスリバー)30匹にエタノール含有率を徐々に上げながら(3%→4%→5%)エタノール含有液体飼料を6日間与えて飼育した後、引き続き5%エタノール含有液体飼料で4週間飼育を行い、該4週間目にそれらのラットのそれぞれについて採血を行い、血漿を分離して血清脂質を測定した。その後該30匹のラットを1群10匹として、対照群、試験群1及び試験群2の3群に振り分けた。その際、前記各群におけるラットの平均体重に係る分散に統計学的有意差が生じないように該30匹のラットを振り分けた。対照群のラットに対しては前記エタノール含有液体飼料投与群と摂取カロリーを同一にするために5%エタノールの代わりにマルトース-デキストリン等量混合物を添加したエタノール非含有液体飼料を2週間与えて飼育した。試験群1のラットに対してはエタノール非含有液体飼料に実施例1で得た凍結乾燥物粉末1%を添加した液体飼料を2週間与えて飼育した。試験群2のラットに対してはエタノール非含有液体飼料に比較例1で得た凍結乾燥物粉末1%を添加した液体飼料を2週間与えて飼育した。更に対照群、試験群1及び試験群2とは別に前記7週齢Wistar系雄性ラット10匹からなる無処置群を設け、無処置群のラットに対してはエタノール非含有液体飼料を6週間与えて飼育した。但し、上記4群とも、各液体飼料の1日あたりの給餌量(摂取カロリー)を70ml(70kcal)に制限した。上記4群の全てについて、実験最終日(実験開始後6週間目)に、飼育したラットのそれぞれの腹部大動脈から採血を行い、肝臓を摘出した。採取した血液は血清分離後、血清総コレステロール、血清LDL-コレステロール、血清トリグリセリド、血清リン脂質、血清ALT(GPT)、及び血清AST(GOT)を測定した。また、摘出した肝臓については、肝臓重量、肝臓総コレステロール、肝臓トリグリセリド、及び肝臓リン脂質を測定した。得られた結果は平均値±標準誤差(SEM)で表し、統計処理は以下の手順で行った。即ち、無処置群と対照群の比較はStudent's test法を用いて解析し、次いで対照群に対する試験群1及び試験群2の比較はTukey-Kramer法を用いて解析し、それぞれの解析において危険率0.05%以下を有意として判定した。更に、摘出した前記肝臓から採取した肝細胞をHE染色に付した後、オリンパス光学工業(株)製の生物顕微鏡BX51を用いて200倍の倍率で該肝細胞の形態観察を行った。
【0067】
【評価2】
上記で得られた血清総コレステロール、血清LDL-コレステロール、血清トリグリセリド、血清リン脂質、血清ALT、及び血清ASTの測定結果、並びに、肝臓重量、肝臓総コレステロール、肝臓トリグリセリド、及び肝臓リン脂質の測定結果から以下の事実が判明した。
即ち、対照群は、血清総コレステロール及び血清LDL-コレステロールが無処置群よりも有意に高い値を示し、血清トリグリセリド及び血清リン脂質も無処置群よりも高まる傾向が認められ、肝細胞の生物顕微鏡観察においてはアルコール性肝障害に特異的に認められる肝小葉の終末肝静脈周辺領域における肝細胞壊死と風船様腫大が顕著に観察された。一方、試験群1及び試験群2は、血清総コレステロール濃度、血清LDL-コレステロール濃度、血清トリグリセリド濃度、血清リン脂質濃度、血清ALT濃度、血清AST濃度、肝臓総コレステロール濃度、及び肝臓トリグリセリド濃度が、対照群と比較して有意に低い値を示し、特に、試験群1のほうが試験群2よりも更に正常値に近似した値を示した。また、試験群1及び試験群2は、肝細胞の生物顕微鏡観察においてはアルコール性肝障害に特異的に認められる肝小葉の終末肝静脈周辺領域における肝細胞壊死と風船様腫大が対照群と比較して著しく減少しているのが観察された。
以上の結果から、実施例1で得た本発明の凍結乾燥物粉末は、比較例1で得た凍結乾燥物粉末を凌駕し、アルコール性肝障害を更に著しく治癒し、アルコール性肝障害に対して際立った治癒作用を示すことが判明した。
即ち、本発明の組成物は、アルコール性肝障害に対して卓越した治癒作用を有するものであることが判明した。
【0068】
実施例1で得た凍結乾燥物粉末(組成物)及び比較例1で得た凍結乾燥物粉末のそれぞれを以下の試験例3に供し、アルコール性肝障害に対する治癒作用を試験例2とは異なる方法で評価した。
【試験例3】
7週齢Wistar系雄性ラット(日本チャールスリバー)30匹にエタノール含有率を徐々に上げながら(3%→4%→5%)エタノール含有液体飼料を6日間与えて飼育した後、引き続き5%エタノール含有液体飼料で4週間飼育を行い、該4週間目にそれらのラットのそれぞれについて採血を行い、血漿を分離して血清脂質を測定した。その後、該30匹のラットを1群10匹として、対照群、試験群1及び試験群2の3群に振り分けた。その際、前記各群におけるラットの平均体重に係る分散に統計学的有意差が生じないように該30匹のラットを振り分けた。対照群のラットに対しては5%エタノール含有液体飼料を2週間与えて飼育した。試験群1のラットに対しては5%エタノール含有液体飼料に実施例1で得た凍結乾燥物粉末1%を添加した液体飼料を2週間与えて飼育した。試験群2のラットに対しては5%エタノール含有液体飼料に比較例1で得た凍結乾燥物粉末1%を添加した液体飼料を2週間与えて飼育した。更に対照群、試験群1及び試験群2とは別に7週齢Wistar系雄性ラット10匹からなる無処置群を設け、該無処置群のラットに対しては、前記5%エタノール含有液体飼料と摂取カロリーを同一にするために5%エタノールの代わりにマルトース-デキストリン等量混合物を添加したエタノール非含有液体飼料を6週間与えて飼育した。但し、上記4群とも、各液体飼料の1日あたりの給餌量(摂取カロリー)を70ml(70kcal)に制限した。上記4群の全てについて、実験最終日(実験開始後6週間目)に、飼育したラットのそれぞれの腹部大動脈から採血を行い、肝臓を摘出した。採取した血液は血清分離後、血清総コレステロール、血清LDL-コレステロール、血清トリグリセリド、血清リン脂質、血清ALT、及び血清ASTを測定した。また、摘出した肝臓については、肝臓重量、肝臓総コレステロール、肝臓トリグリセリド、及び肝臓リン脂質を測定した。得られた結果は平均値±標準誤差(SEM)で表し、統計処理は以下の手順で行った。即ち、無処置群と対照群の比較はStudent's test法を用いて解析し、次いで対照群に対する試験群1及び試験群2の比較はTukey-Kramer法を用いて解析し、それぞれの解析において危険率0.05%以下を有意として判定した。更に、摘出した前記肝臓から採取した肝細胞をHE染色に付した後、オリンパス光学工業(株)製の生物顕微鏡BX51を用いて200倍の倍率で該肝細胞の形態観察を行った。
【0069】
【評価3】
上記で得られた血清総コレステロール、血清LDL-コレステロール、血清トリグリセリド、血清リン脂質、血清ALT、及び血清ASTの測定結果、並びに、肝臓重量、肝臓総コレステロール、肝臓トリグリセリド、及び肝臓リン脂質の測定結果から以下の事実が判明した。
即ち、対照群は、無処置群と比較して、血清総コレステロール濃度、血清LDL-コレステロール濃度、血清トリグリセリド濃度、血清リン脂質濃度、血清ALT濃度、肝臓重量、肝臓総コレステロール濃度、及び肝臓トリグリセリド濃度が有意に高い値を示し、肝細胞の生物顕微鏡観察においてはアルコール性肝障害に特異的に認められる肝小葉の終末肝静脈周辺領域における肝細胞壊死と風船様腫大が顕著に認められた。一方、試験群1及び試験群2は、血清トリグリセリド濃度、血清総コレステロール濃度、血清リン脂質濃度、血清LDL-コレステロール濃度、及び肝臓総コレステロール濃度及び肝臓トリグリセリド濃度が、対照群と比較して有意に低い値を示し、特に、試験群1のほうが試験群2よりも更に正常値に近似した値を示した。また、試験群1及び試験群2は、肝細胞の生物顕微鏡観察においてはアルコール性肝障害に特異的に認められる肝小葉の終末肝静脈周辺領域における肝細胞壊死と風船様腫大が対照群と比較して著しく減少しているのが観察された。
以上の結果から、実施例1で得た本発明の凍結乾燥物粉末は、比較例1で得た凍結乾燥物粉末を凌駕し、アルコール性肝障害を更に著しく治癒し、アルコール性肝障害に対して際立った治癒作用を示すことが判明した。
即ち、本発明の組成物は、アルコール性肝障害に対して卓越した治癒作用を有するものであることが判明した。
【0070】
以上、試験例1に述べた結果から明らかなように、本発明の組成物は大麦焼酎蒸留残液の液体分を合成吸着剤を使用する吸着分離処理に付すことにより得られる合成吸着剤非吸着画分を卓越した強力なアルコール性肝障害の発症抑制作用を有し、エタノール投与によるアルコール性肝障害の発症を強力に抑制することが判明した。さらに試験例2及び試験例3に述べた結果から明らかなように、本発明の組成物は、既に発症したアルコール性肝障害を顕著に治癒することが判明した。
【0071】
【使用例1】
実施例1で得た凍結乾燥物粉末を用い、以下に記す材料配合割合で他の担体材料と混合し、打錠機を用いて医薬用錠剤を作製した。
材料配合割合:実施例1で得た凍結乾燥物粉末35重量%、シュガーエステル5重量%、オリゴ糖30重量%、乳糖30重量%
【0072】
【発明の効果】
以上、詳述したように本発明の大麦を原料とする焼酎製造において副成する大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得、該液体分を合成吸着剤を使用する吸着分離処理に付して合成吸着剤非吸着画分を得、該合成吸着剤非吸着画分をイオン交換樹脂を使用するイオン交換処理に付してイオン交換樹脂非吸着画分を得、該イオン交換樹脂非吸着画分を限外濾過膜を使用する限外濾過処理に付して濃縮液を得、該濃縮液に有機溶媒を添加することにより得られる有機溶媒不溶性画分からなる組成物は、アルコール性肝障害の発症に対しての著しい抑制作用及び治癒作用を有す。
Claims (7)
- 大麦を原料とする焼酎製造において副生する大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得、該液体分を芳香族系合成吸着剤又はメタクリル系合成吸着剤を使用する吸着分離処理に付して合成吸着剤非吸着画分を得、該合成吸着剤非吸着画分を、弱酸性陽イオン交換樹脂、強酸性陽イオン交換樹脂、弱塩基性陰イオン交換樹脂、強塩基性陰イオン交換樹脂、最強塩基性陰イオン交換樹脂、およびこれらの陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂との混床型イオン交換樹脂から選ばれたイオン交換樹脂を使用するイオン交換処理に付してイオン交換樹脂非吸着画分を得、該イオン交換樹脂非吸着画分を限外濾過膜を使用する限外濾過処理に付して濃縮液を得、該濃縮液に有機溶媒を添加することにより分取した、ウロン酸を実質的に含有せずに、キシロース、アラビノース及びグルコースからなり、キシロース/アラビノース比>2.0である多糖類を含有し、且つ下記の分子量分布を有する有機溶媒不溶性画分からなるアルコール性肝障害の発症抑制及び治療剤。
分子量分布:
100,000以上 11%
30,000乃至100,000 29%
10,000乃至 30,000 24%
3,000乃至 10,000 21%
1,000乃至 3,000 6%
500乃至 1,000 2%
500以下 7% - 前記有機溶媒不溶性画分は、凍結乾燥粉末形態のものである請求項1に記載のアルコール性肝障害の発症抑制及び治療剤。
- 医薬品として使用する請求項1に記載のアルコール性肝障害の発症抑制及び治療剤。
- 大麦を原料とする焼酎製造において副生する大麦焼酎蒸留残液を固液分離して液体分を得る工程、該液体分を芳香族系合成吸着剤又はメタクリル系合成吸着剤を使用する吸着分離処理に付して合成吸着剤非吸着画分を得る工程、該合成吸着剤非吸着画分を、弱酸性陽イオン交換樹脂、強酸性陽イオン交換樹脂、弱塩基性陰イオン交換樹脂、強塩基性陰イオン交換樹脂、最強塩基性陰イオン交換樹脂、およびこれらの陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂との混床型イオン交換樹脂から選ばれたイオン交換樹脂を使用するイオン交換処理に付してイオン交換樹脂非吸着画分を得る工程、該イオン交換樹脂非吸着画分を限外濾過膜を使用する限外濾過処理に付して濃縮液を得る工程、該濃縮液に有機溶媒を添加することにより、ウロン酸を実質的に含有せずに、キシロース、アラビノース及びグルコースからなり、キシロース/アラビノース比>2.0である多糖類を含有し、且つ下記の分子量分布を有する有機溶媒不溶性画分を分取する工程を含むことを特徴とするアルコール性肝障害の発症抑制及び治療剤の製造方法。
分子量分布:
100,000以上 11%
30,000乃至100,000 29%
10,000乃至 30,000 24%
3,000乃至 10,000 21%
1,000乃至 3,000 6%
500乃至 1,000 2%
500以下 7% - 前記有機溶媒不溶性画分を凍結乾燥する工程を更に有するものである請求項4に記載の製造方法。
- 玄麦大麦又は精白大麦を原料にして製造した大麦麹と焼酎用酵母とを発酵に付して熟成もろみを作製し、該熟成もろみを蒸留に付して大麦焼酎を製造する工程(A)、及び工程(A)において前記大麦焼酎を製造する際に蒸留残渣として副成する大麦焼酎蒸留残液を処理する工程(B)からなり、前記工程(B)においては、前記大麦焼酎蒸留残液固液分離して液体分を得る工程、前記液体分を芳香族系合成吸着剤又はメタクリル系合成吸着剤を使用する吸着分離処理に付して合成吸着剤非吸着画分を得る工程、前記合成吸着剤非吸着画分を、弱酸性陽イオン交換樹脂、強酸性陽イオン交換樹脂、弱塩基性陰イオン交換樹脂、強塩基性陰イオン交換樹脂、最強塩基性陰イオン交換樹脂、およびこれらの陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂との混床型イオン交換樹脂から選ばれたイオン交換樹脂を使用するイオン交換処理に付してイオン交換樹脂非吸着画分を得る工程、前記イオン交換樹脂非吸着画分を限外濾過膜を使用する限外濾過処理に付して濃縮液を得る工程、及び前記濃縮液に有機溶媒を添加することにより、ウロン酸を実質的に含有せずに、キシロース、アラビノース及びグルコースからなり、キシロース/アラビノース比>2.0である多糖類を含有し、且つ下記の分子量分布を有する有機溶媒不溶性画分を分取する工程を順次行い、前記工程(A)及び前記工程(B)を連続して行うことを特徴とする前記大麦焼酎及び前記有機溶媒不溶性画分からなるアルコール性肝障害の発症抑制及び治療剤を連続して製造する方法。
分子量分布:
100,000以上 11%
30,000乃至100,000 29%
10,000乃至 30,000 24%
3,000乃至 10,000 21%
1,000乃至 3,000 6%
500乃至 1,000 2%
500以下 7%
500以下 7% - 前記工程(A)において、前記熟成もろみを得る際に、別に用意した玄麦大麦又は精白大麦を前記大麦麹及び前記焼酎用酵母と共に発酵に付すことを特徴とする請求項6に記載の方法。
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