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JP4253566B2 - ゴルフパター - Google Patents
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JP4253566B2 - ゴルフパター - Google Patents

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本発明は、ゴルフパターに関するものである。
ゴルフパターは、主としてグリーン上でボールを転がしてカップに入れるためのゴルフクラブである。このゴルフパター用のヘッドには、ヘッドのトウ側及びヒール側に重量を集中させることにより打球時のヘッドの回転を抑えてスイートエリアを広くするものがある(例えば、特許文献1参照。)。
特許第2613849号公報
パッティングにおいては、パッティングストロークにおけるヘッドの軌道が重要であり、更には、インパクト時におけるフェース面の向きや打点位置(インパクト時におけるフェース面とボールとの接点)が極めて重要である。パッティングは、複雑な傾斜のあるグリーン上で小さなカップを目指して打球するものであり、僅かでも打球方向や打球速度に誤差が生じるとボールは小さなカップをそれてしまう。これは、ボールがグリーン上を転がる軌跡が、ボールの初速と打出し方向さらにはグリーンの速さや傾斜等によって微妙に変化するからである。よって、パッティングで良好な結果を得るためには、打出し方向及び打出し速度を極めて正確に制御する必要があり、その為にはストローク時のヘッド軌道を安定化させ、更にはインパクト時におけるフェース面の向き及び打点位置を極めて正確に制御することが重要となる。
しかしながら今回、従来のゴルフパターでは上記フェース面の向きやヘッド軌道更には打点位置の正確性が必ずしも十分とはいえず、改善の余地があることが判った。
即ち、本発明では、従来技術では全く考慮されていなかったパターヘッドにおける3種類の慣性モーメントについて考察を行い、更に、パッティングストロークの特性について考察を加えた。即ち、パッティングストロークは、所謂ドライバーショットやアイアンショットなど他のクラブでのショットと比較してヘッド速度(ヘッドスピード)が格段に遅く、また振り幅も小さいなど、他のショットとは異なる点があり、当該ストローク中におけるヘッドの挙動も前記他のクラブと異なってくる。一方、パッティングストロークの中でも、ロングパットとショートパットとではヘッドの挙動が相違する。今回、かかるパッティングストロークの特性、特にロングパットにおけるストロークの特性に基づくヘッド挙動の特徴についても考察を加えた。これらの考察を行った結果、パターヘッドにおける前記3種類の慣性モーメントを適宜規定することにより、上述した各種正確性を更に向上させうるゴルフパターが得られることを見いだした。
即ち、本発明は、パッティングストローク、特にロングパットにおけるヘッド軌道を安定化でき、さらにはインパクト時におけるフェース面の向きや打点位置を安定化しうるゴルフパターを提供することを目的とする。
かかる目的を達成するための本発明は、基準設置状態で水平面上に載置された場合に下記の(1)〜(3)で定義される三つの慣性モーメントM1、M2及びM3が、M2>M1>M3の関係式と、3000(g・cm2)≦M2≦7000(g・cm2)、1000(g・cm2)≦M1≦3500(g・cm2)及び1000(g・cm2)≦M3≦4000(g・cm2)のうちのいずれか1つの関係式(重量範囲)とを満たす重量バランスに設定されているパターヘッドと、このパターヘッドに取り付けられたシャフトと、を備えたことを特徴とする。
(1) M1:前記ヘッドの重心を通り且つフェース面及び前記水平面と平行な第一軸まわりの当該ヘッドの慣性モーメント
(2) M2:前記ヘッドの重心を通る鉛直方向の軸である第二軸まわりの当該ヘッドの慣性モーメント
(3) M3:前記ヘッドの重心を通り前記第一軸に垂直で且つ前記第二軸に垂直な第三軸まわりの当該ヘッドの慣性モーメント
このようにすると、M2がM1及びM3よりも大きいので、第二軸まわりのヘッドの回転が安定し、パッティングのストローク時、特にストロークの初期であるテークバック時におけるヘッドの挙動が安定してストロークの軌道が安定する。パッティングのストロークにおいて、ヘッドは並進運動とともに回転運動を行うこととなる。このヘッドの回転運動、は前記第一軸乃至第三軸の三つの軸のうち第二軸まわりの回転に近似した回転が主となる。前記のように第一乃至第三モーメントの中で第二モーメントを最大とすることにより、この第二モーメントの基準軸である第二軸まわりの回転が安定し、これによりストローク時(特にテークバック時)のヘッドの回転が安定し、ストロークの軌道が安定する。さらに、M2>M1>M3とされており、ロングパットにおいて比較的大きく回転する第三軸まわりのヘッド回転が安定するので、特にロングパットにおいてヘッド軌道が安定する。この作用は実施例により確認され、さらに理論的根拠(テニスラケットの定理)を有することが判明したが、これらの点については後述する。
なお、「基準設置状態」とは、図12に示すように、ゴルフパターを、そのライ角αが水平面に対して71度になるようにセットして当該水平面上に置き、かかるライ角においてヘッドの姿勢が最も安定する状態のことである。ライ角を71度に設定したのは、一般的なパターのライ角が70度〜72度程度であるため、その中間的な値を採用したことによる。
また、ヘッドのフェース面が平面でない場合には、前記M1の定義における「フェース面」は、「リーディングエッジの稜線両端の2点と、ヘッドのトップ面とフェース面とを区分けする稜線を二等分する点の、合計3点を通る平面」に置き換えるものとする。
前記M1と前記M2との比(M1/M2)は、0.6以上で且つ1.0未満であるのが好ましい。この場合、(M1/M2)が0.6以上であるから、M1がM2に対して小さくなりすぎず、M1が比較的大きくなる。よって、前記第一軸まわりのヘッドが過度に回転することが防止されて、打点位置やフェース面の向きがより一層安定する。また、(M1/M2)が1.0未満であるので、M2>M1となる。
また、前記M3と前記M1との比(M3/M1)が0.9以下であるのが好ましい。この場合、M2>M1>M3という条件下においてM1とM3との差が大きくなるため、後述するテニスラケットの定理により、M3に係る前記第三軸まわりのヘッドの回転が安定する。そうすると、特にロングパットにおいて比較的大きく回転する第三軸まわりのヘッド回転が安定するので、特にロングパットにおいてヘッド軌道が安定する。
前記M1〜M3を上記の如く規定することにより、パッティングストローク中特にロングパットにおけるヘッド軌道が安定化するとともに、インパクト時におけるフェース面の向きや打点位置をも安定化しうるゴルフパターを提供することができる。
以下に本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。図12は、本発明の一実施形態に係るゴルフパター1の全体図である。このゴルフパター1は、ボールを打撃するためのフェース面2を備えたヘッド3と、プレーヤーがゴルフパター1を握るための部分であるグリップ10と、略棒状のシャフト11とをそなえている。シャフト11の一端には前記ヘッド3が取り付けられており、シャフト11の他端には前記グリップ10が取り付けられている。シャフト11はそのほとんどが真っ直ぐな棒状とされているが、ヘッド3が取り付けられた一端側の近傍のみ曲がった部分を有する。これは、ゴルフパター1のライ角等を適正に設定するためであるが、この点の詳細については後述する。
図1は、ゴルフパター1に取り付けられた本発明の第一実施形態に係るヘッド3の斜視図であり、図2(a)はトップ面15側から見たヘッド3の平面図であり、図2(b)はヒール側から見たヘッド3の側面図である。また、図4(a)はフェース面2側から見たヘッド3の正面図であり、図4(b)は図2(a)のC−C線における断面図である。更に、図3(a)は図4(a)のA−A線におけるヘッド3の断面図であり、図3(b)は図2(a)のB−B線におけるヘッド3の断面図である。
ヘッド3は、その上面を構成するトップ面15と、その下面を構成するソール面4と、ソール面4とトップ面15との間に延びるサイド面5と、ボールを打撃するための平面であるフェース面2とを有する。トップ面15及びソール面4の輪郭形状は、図2(a)に示すように略半円状とされている。
ヘッド3にはホーゼル部分(ネック部分)は無く、シャフト11とはシャフト穴12において接着されている(図1の破線参照)。即ち、ヘッド3のヒール側部分にはシャフト穴12が設けられており、このシャフト穴12にシャフト11が挿入され且つシャフト穴12の内周面とシャフト11の外面とが互いに接着されている。シャフト穴12の軸線はソール面4と略垂直な向きとされているので、仮にこのシャフト穴12に真っ直ぐなシャフト11を挿入すると、ゴルフパター1のライ角が略90度となってしまいパターとして適当なライ角とはならない。そこで、前述の如くシャフト11の一端側近傍を適宜曲げることにより、ゴルフパター1のライ角をはじめとしてリアルロフト角、フェースプログレッション等を適当な値に設定している。
ヘッド3は、アルミ合金等からなるヘッド本体hと、ヘッド本体hのバック側に部分的に設けられヘッド本体hよりも高比重の部材からなるバック側重量部材Jbとからなる。特に図示しないが、バック側重量部材Jbとヘッド本体hとは嵌合圧入や接着等適宜の方法により接合されている。
また、ヘッド3はその内部に空洞部kを有している。即ち、ヘッド3のうちのヘッド本体hは、バック側重量部材Jb部分を除いてヘッド3トップ面15及びソール面4の大部分を形成しているが、ヘッド3内部においては図3(a),(b)の断面図に示すように、略フェース面2寄りに存在するフェース側部分hfと、このフェース側部分hfよりもバック側に存在するバック側部分hbとに分かれている。更に、このバック側部分hbのバック側に隣接してバック側重量部材Jbが配置されている。そして、トップ面15とソール面4との間であってフェース側部分hf、バック側部分hb及びバック側重量部材Jbが存在しない部分は空洞たる空洞部kとされている。
図3(a)に示すように、フェース側部分hfとバック側部分hbとは、ヘッド3のフェース・バック方向で離間しているため、図2(b)の側面図に示すように、空洞部kの一部はヘッド3にはトウ側からヒール側まで貫通する貫通部分を構成している。また、バック側部分hbは、バック側重量部材Jbに隣接してそのフェース側に設けられているが、空洞部kはバック側部分hbのトウ側及びヒール側にまで及んでいる。
バック側重量部材Jbは、その上面がヘッド3のトップ面15側に露出しており当該トップ面15の一部を構成している。さらにこのバック側重量部材Jbは、その下面がヘッド3のソール面4側に露出しており当該ソール面4の一部を構成している。
また、図3(a)に示すように、ヘッド3の最もバック側の部分(バック側の頂点付近)では、バック側部分hbの輪郭形状がヘッド3(トップ面15やソール面4)の輪郭形状と略一致しているが、当該頂点付近を除いては両輪郭形状は一致しておらず、バック側部分hbの輪郭形状は、ヘッド3の輪郭形状よりもヘッド3の内部側に入り込んでいる。その結果、バック側部分hbのトウ側及びヒール側にも空洞部kが存在している。
さらに、図3(a)に示すように、ヘッド本体hにおけるフェース側部分hfの構造は、そのトウ側部分及びヒール側部分に体積(重量)が集中的に配置される一方、トウ・ヒール方向中央部分は比較的薄い板状の部分が設けられている。したがって、図3(a),(b)に示すように、空洞部kはヘッド3のトウ・ヒール方向中央寄り付近において特に広く分布している。
サイド面5は、トップ面15とソール面4との間に延びる面であってフェース面2を除く部分であるが、このヘッド3では、サイド面5はフェース側部分hfのトウ側及びヒール側面と、バック側重量部材Jbのバック側頂点付近の側面においてのみ存在し、そのほかの部分ではサイド面5が存在しない(図1の斜視図参照。)。上述したように、空洞部kがヘッド内部からヘッド外側にむかって開放して存在しているからである。このように、ヘッド3の内部に空洞部kを設けて、ヘッド本体hの内部をバック側部分hbやフェース側部分hfに分割することにより、ヘッド3の重量配分設計の自由度が極めて高くなり、後述する慣性モーメントM1〜M3の設定の自由度も高くなる。
ここで、ヘッド3について、図1に示すような第一軸A1〜第三軸A3の三軸を定義する。かかる定義にあたっては、前述したような基準設置状態におけるヘッド3を考える。そして、第一軸A1は、ヘッド3の重心Gを通り且つフェース面2及び基準設置状態における水平面と平行な軸である。第二軸A2は、ヘッド3の重心Gを通る鉛直方向の軸である。そして、第三軸A3は、ヘッド3の重心Gを通り第一軸A1に垂直で且つ第二軸A2に垂直な軸である。そして、第一軸A1まわりのヘッド3の慣性モーメントを第一モーメントM1とし、第二軸A2まわりのヘッド3の慣性モーメントを第二モーメントM2とし、第三軸A3まわりのヘッド3の慣性モーメントを第三モーメントM3とする。
そして、本第一実施形態に係るヘッド3では、これらM1〜M3が、 M2>M1>M3の関係式を満たし、且つ、(M1/M2)が0.6以上で且つ1.0未満とされ、さらに、(M1/M2)が0.9以下とされている。
以上のように構成されたヘッド3は、以下の作用効果を奏する。
まず、第二モーメントM2が第三モーメントM3及び第一モーメントM1よりも大きいので、第二軸A2まわりのヘッド3の回転が安定し、パッティングのストローク時、特にテークバック時におけるヘッド3の挙動が安定する。よって、ストローク、特にテークバックの軌道が安定する。パッティングのストロークにおいて、ヘッド3は並進運動とともに回転運動を行うこととなる。このヘッドの回転運動、は第一軸A1乃至第三軸A3の三つの軸のうち第二軸まわりの回転に近似した回転が主となる。前記のように第一モーメントM1乃至第三モーメントM3の中で第二モーメントM2を最大とすることにより、この第二モーメントM2の基準軸である第二軸A2まわりのヘッド3の回転が安定し、つまりはストローク時のヘッド3の回転が安定し、ストロークの軌道が安定する。その理論的根拠は、後述するテニスラケットの定理から導かれる。
さらに、M2>M1>M3とされているので、第二軸まわりのヘッド回転に加えて第三軸まわりのヘッド回転が、第一軸まわりのヘッド回転に比べて比較的安定するため、特にロングパットにおいてヘッド軌道が安定する。
パッティングストロークは、パター以外のゴルフクラブにおける通常のショットよりも振り幅が小さい。また、かかるパッティングストロークの中で、ロングパットは比較的振り幅が大きくなる。なお、ここでロングパットとは、目標(カップ)までの距離が4m程度以上のパッティングのことを意味している。
ショートパットのストローク中におけるヘッドの回転は、前述した第二軸A2まわりの回転に加え、第一軸A1まわりの回転が比較的大きくなるが、第三軸A3まわりの回転は比較的小さい。これに対してロングパットの場合は、ショートパットの場合に比べて第三軸A3まわりの回転が比較的大きくなり、当該第三軸A3まわりのヘッド回転がストロークの軌道に与える影響が大きくなる。
よって、第一モーメントM1〜第三モーメントM3のなかで第二モーメントM2を最大とし第三モーメントM3を最小とすることにより、比較的回転の大きい第二軸A2及び特にロングパットで影響の大きい第三軸A3まわりのヘッド回転を安定させることができる。よって、特にロングパットのストローク中におけるヘッド軌道が安定する。その理論的根拠は、後述するテニスラケットの定理である。
そして、本第一実施形態に係るヘッド3では、これらM1〜M3が、M2>M1>M3の関係式を満たし、且つ、(M1/M2)が0.6以上で且つ1.0未満とされている。この場合、(M1/M2)が0.6以上であるので、M1がM2に対して小さくなりすぎず、M1が比較的大きくなる。よって、M2>M1>M3の関係を維持しつつM1を大きくでき、前記第一軸まわりのヘッドが過度に回転することが防止される。よって、打点位置やフェース面の向きがより一層安定する。
また、前記M3と前記M1との比(M3/M1)が0.9以下としたので、M2>M1>M3という条件下においてM1とM3との差が大きくなるため、後述するテニスラケットの定理により、M3に係る前記第三軸まわりのヘッドの回転が一層安定する。そうすると、特にロングパットにおいて影響の大きい第三軸まわりのヘッド回転が安定するので、特にロングパットにおいてヘッド軌道が安定する。
次に、上述した本発明の理論的根拠について説明する。なお、以下のオイラーの運動方程式(オイラーの定理)に関する説明は、株式会社培風館発行の、「力学・新しい視点にたって」(V.D.バージャー・M.G.オルソン共著、戸田盛和・田上由紀子共訳、昭和50年1月20日初版発行、昭和62年11月30日初版第17刷発行)に記載されている。三つのお互いに異なった主慣性モーメントを持つ剛体のオイラー方程式を用いると、各軸まわりの運動において以下のような結果が得られる。互いに直交する3つの慣性主軸である軸x、軸y、軸zにおいて、それぞれの軸まわりの慣性モーメント(主慣性モーメント)の値をそれぞれI、I、Iとする。且つ、不等式I<I<Iが成立しているものとする。地球表面付近では重力は均一な力になっているから、剛体の重心のまわりの重力のモーメントはない。風圧による力のモーメントを無視すれば、オイラーの運動方程式は次の式(1)のようになる。
Figure 0004253566
ここで、直交軸の定理より、次の式(2)が成り立つ。
=I+I ・・・(2)
この関係式(2)を式(1)に代入し、r=(I−I)/(I+I)とおくと、次の式(3)〜式(5)が得られる。
Figure 0004253566
ここで、I、I、Iのうち最も小さいIがIに比べて非常に小さいとすると、r≒1という近似を用いることができる。以後、この剛体が初め主として3つの主軸のうちの一つのまわりに回転しているものとしたときの定性的な運動の性質を求めることとする。
初めの回転が軸xのまわりのものであれば、式(3)に現われる積ωωは無視することができる。すると、ωが一定になることがわかる。即ち、次の式(6)に示すように、ωは初期値ω(0)で一定となる。
ω=ω(0) ・・・(6)
残る二つの方程式(4)及び(5)を解くには、次の式(7)のような複素変数を導入すればよい。
Figure 0004253566
よって、式(4)及び式(5)はそれぞれ、次の式(8)及び式(9)のようになる。この式(8)と式(9)を組み合わせて、式(7)の複素変数に対する一つの式にすれば、式(10)が成立する。式(10)で表される微分方程式は、次の式(11)のような指数関数の解を持つ。
Figure 0004253566
したがって、対応するω及びωは、時間tの関数として、
ω(t)=a・sin(ωt+α) ・・・(12)
ω(t)=a・cos(ωt+α) ・・・(13)
と表すことができる。初期条件により振幅aは小さいから、式(12)及び式(13)の二つの角速度成分の値は両方とも常に小さいことがわかる。このような近似解では、次の式(14)及び式(15)となる。
Figure 0004253566
したがって、次の式(16)に示す角速度ベクトルωは、主軸xのまわりに小さな円錐を描いて歳差運動を行う。軸xのまわりの回転運動が安定しているのは、このためである。
Figure 0004253566
最初主として軸zのまわりに回転している場合には、オイラー方程式の解はいま扱った場合と似たものになる。r=1のときには、式(3)、式(4)及び式(5)の三つの式の各式の数学的構造はωとωを入れ換えても変わらない。したがって、式(6)、式(12)及び式(13)にならって次の近似解(17)〜(19)が得られる。
ω(t)=ω(0) ・・・(17)
ω(t)=a・cos(ωt+α) ・・・(18)
ω(t)=a・sin(ωt+α) ・・・(19)
この場合にも、軸のまわりの回転運動は安定である。
しかし、初めの回転が慣性主軸yのまわりに行われる場合には状況は異なってくる。この場合、初め(4)の中で積ωωを無視して、
ω(t)=ω(0) ・・・(20)
が得られる。次に式(3)と式(5)から和および差を作れば、それぞれ次の式(21)及び式(22)となる。これらの一次結合の解はそれぞれ式(23)及び式(24)のようになる。これら式(23)及び式(24)を解いてω及びωを求めれば、式(25)及び式(26)が得られる。
Figure 0004253566
この運動では、軸x及び軸zの二つの軸まわりの角速度は共に時間がたつと急速に増大し、剛体である物体はひっくり返るようになる。式(20)、式(25)及び式(26)ではっきり与えられた解の形は、物体を回転させて投げ上げた場合で考えると、投げ上げてから余り時間がたたない間にかぎり、つまり式(4)でωωが無視できる間のみで、正しい。このように、物体は、三つの慣性主軸のうち、各軸まわりの慣性モーメントが最大値または最小値となっているような慣性主軸まわりの回転運動は安定し、それ以外の慣性主軸まわりの回転運動は不安定になる。この結論は、テニスラケットの定理と呼ばれている。
この結論を単純なモデルで説明すると以下のようになる。図13に示すような、長手方向の長さがL、幅W、厚さTの単純な(中実の)平板をモデルとして考える。このモデルでは、三つの慣性主軸まわりの慣性モーメントは、この平板の重心Gを通り平板の上下面及び長辺側の側面に平行なx軸まわりの慣性モーメントIと、重心Gを通り平板の上下面と平行で且つx軸に垂直なy軸まわりの慣性モーメントIと、重心Gを通り上下面に垂直なz軸まわりの慣性モーメントIとなる。この平板は図13に記載のように、長手方向の長さLが幅Wよりも長く、且つ、幅Wは厚さTよりも長い形状とする。そうすると明らかに、三つの慣性主軸まわりの各慣性モーメントの大小関係は、I>I>Iとなる。即ち、Iが最も大きく、次いでIが大きく、Iが最も小さくなる。
前述の結論より、三つの慣性主軸のうち慣性モーメントが最大又は最小の軸まわりに回転させた場合は安定してそのまま回転するのに対して、三つの慣性主軸のうち慣性モーメントが最大でも最小でもない軸まわりに回転させた場合は三つの慣性主軸のすべてのまわりに回転が起こってしまい回転が不安定になることがわかる。このことをこの平板に当てはめると次のようになる。この平板を三つの慣性主軸であるx軸、y軸、z軸のいずれかの軸で回転させて空中に投げた場合を考える。もし、初めの回転が軸xまたは軸zのいずれかのまわりのものであれば、平板は安定した回転を続ける。これに反して、初めの回転が軸yのまわりのものであれば、回転運動はすぐに不規則になり、三つの慣性主軸のすべてのまわりに回転が起こってしまう。
上記文献には、オイラーの定理がゴルフパター用ヘッドに適用できることは記載されていないが、本発明においては、このことがゴルフパター用ヘッドに応用できることを見いだした。ここで前述のごとく、ゴルフパター用ヘッドに関して図1に示すように三つの互いに直交する第一軸A1、第二軸A2、第三軸A3の三つの軸を定義する。第一軸A1は、ヘッドのトウ・ヒール方向と一致した方向の軸である。第二軸A2は、ヘッドの重心を通る鉛直方向の軸であり、ヘッドのトップ・ソール方向と一致した方向の軸である。第三軸A3は、ヘッドの重心を通り第一軸に垂直で且つ第二軸に垂直な軸である。よって、第三軸A3は、ヘッドのフェース・バックフェース方向の軸である。
パッティングのストロークにおいては、ヘッドは並進運動とともに回転運動を行うこととなる。このストローク中、特にテークバックにおいて、ヘッドの回転運動は前記第一軸A1、第二軸A2及び第三軸A3の三つの軸のうち第二軸まわりの回転に近い回転が主となるといえる。その理由は以下の通りである。
パッティングストロークに限らず通常のフルショットなどでも、ヘッドはシャフト軸を中心に回転することが不可避である。つまり、ゴルファーである人がスイングする場合、フェース面の向きを変えずにスイングすることはスイングの構造上不可能であり、ヘッドはシャフト軸を中心に回転することとなる。そうすると、ヘッドは第二軸A2まわりの回転を起こしていることになる。さらに、通常のドライバーショットやアイアンショットなどのショット、特にフルショットに近いショット等、大きな振り幅でスイングする場合には、ヘッドの姿勢は大きく変化し、第一軸A1及び第三軸A3まわりの回転も比較的大きい。これに対してパッティングストロークでは振り幅が小さいので、第一軸A1まわりの回転や第三軸A3まわりの回転は比較的小さく、第二軸A2まわりの回転と比較すると少ない。以上より、パッティングストロークにおけるヘッドの回転は第二軸A2まわりの回転に近似した回転が主となると考えられる。
更に、パッティングストロークの中でもロングパットにおいては、振り幅がショートパットに比べて大きくなる。そのため、ストローク中における第三軸A3まわりのヘッド回転は、ショートパットの場合と比較して大きくなり、第三軸A3まわりの回転がストロークの安定性に大きく影響する。前述したテニスラケットの定理より、M2>M1>M3という大小関係とした場合は慣性モーメントが最大でも最小でも無い第三モーメントM1の基準軸である第一軸A1まわりの回転は比較的不安定となるが、ロングパットにおいてはかかる第一軸A1まわりの回転のストロークに対する影響は比較的小さくなる。したがって、ストロークの安定性に対して比較的影響の大きい第二軸A2及び第三軸A3まわりの回転を優先して安定させることにより、ロングパットストローク中におけるヘッド軌道が安定する。
第二モーメントM2の基準軸である第二軸A2まわりのヘッドの回転が安定すると、フェース面2の向きが安定するので、打点位置及びボールの打ち出し方向が安定する。またストローク時の主回転は第二軸A2まわりの回転に近似した回転であるので、第二軸A2まわりの回転が安定することによりヘッド3のストローク中の挙動(特にストロークの初期であるテークバック時、更にはヘッド静止状態から動作状態へと移行するテークバック初期の挙動)が安定し、ヘッド軌道が安定となる。そして、ロングパットにおいては、前述のように第一軸A1まわりの回転よりも第三軸A3まわりの回転の影響が比較的大きくなる。よって、かかる第一軸A1まわりの回転よりも第二軸A2及び第三軸A3まわりの回転を優先して安定させることにより、ストローク中のヘッド軌道が安定する。
なお、パターヘッドにおける第一軸A1、第二軸A2及び第三軸A3の三つの軸は、パターヘッドの慣性主軸と通常、完全には一致しないが、近似的に前記オイラー方程式からの結論を適用できると考えられる。またそのように考えることによって、後述の実施例による試験結果が説明できることになる。
そして、上述のように、(M1/M2)が0.6以上であると、M1がM2に対して小さくなりすぎず、M1が比較的大きくなるので好ましいが、同じ理由により、(M1/M2)は0.61以上が好ましく、さらには0.68以上が好ましい。また、M2>M1の関係とするためには(M1/M2)は1.0未満となるが、この値が1.0に近すぎるとM1とM2との差が小さくなり、テニスラケットの定理に基づくM2>M1>M3とした効果が少なくなる傾向となる。よって(M1/M2)は、0.9以下がより好ましく、更には0.8以下が好ましい。
また前述のように、(M3/M1)が0.9以下とすると、M1とM3との差が大きくなりM3に係る前記第三軸まわりのヘッドの回転が一層安定するので好ましい。同じ理由で、(M3/M1)は0.86以下がより好ましく、0.74以下が更に好ましい。一方、(M3/M1)が小さすぎると、ヘッドの作製が困難となる場合があるので、(M3/M1)は0.4以上が好ましく、0.5以上がより好ましい。
第二モーメントM2が小さすぎると、第二モーメントM2が第一モーメントM1及び第三モーメントM3よりも大と設定しにくくなる。また、第二モーメントM2が小さいと、第二軸A2まわりのヘッド回転が起こりやすくなり、フェース面の向きの変化が大きく打球方向や打点位置がバラつく傾向となる。よって、第二モーメントM2は3000(g・cm)以上が好ましく、3100(g・cm)以上がより好ましく、4200(g・cm)以上が特に好ましい。
第二モーメントM2が大きすぎると、ヘッドの重量が大きくなりすぎたり、ヘッド形状に違和感が生じたりする場合があるので、7000(g・cm)以下が好ましく、6000(g・cm)以下がより好ましく、5000(g・cm)以下が特に好ましい。
第一モーメントM1が小さくなりすぎると、第一軸A1まわりのヘッド回転が起こりやすくなるので、打点位置がトップ・ソール方向(上下方向)にバラつきやすくなる他、ダフリも生じやすくなる。さらに、M1>M3という大小関係に設定しにくくなる。よって、第一モーメントM1は1000(g・cm)以上が好ましく、1900(g・cm)以上がより好ましく、2900(g・cm)以上が特に好ましい。第一モーメントM1が大きすぎるとヘッド重量が大きくなりすぎたり、ヘッド形状に違和感が生じたり、更にはM2>M1という大小関係に設定しにくくなったりする場合があるので、3500(g・cm)以下が好ましく、3000(g・cm)以下が更に好ましい。
第三モーメントM3が小さすぎると、第三軸A3まわりのヘッド回転が起こりやすくなり、打点位置がトップ・ソール方向(上下方向)及びトウ・ヒール方向(左右方向)にバラつきやすくなり、特にトップ・ソール方向(上下方向)のバラつきが大きくなりやすい。よって、M3は1000(g・cm)以上が好ましく、1600(g・cm)以上が特に好ましい。第三モーメントM3が大きすぎるとヘッド重量が大きくなりすぎたり、ヘッド形状に違和感が生じたりする場合がある。また、M1>M3に設定しにくくなる。よって、4000(g・cm)以下が好ましく、3500(g・cm)以下が更に好ましい。
ヘッドの材質は特に問わず、ゴルフパター用ヘッドとして通常用いられている材質を使用できる。ヘッド本体の材質としては、例えば、真鍮、軟鉄等の鉄系金属、ステンレス、アルミ合金、チタン、チタン合金等を使用可能である。これらの材質を単一で、又は複合して用いることができる。また、前述の実施形態のように重量部材Jやバック側重量部材Jbを用いる場合、この重量部材J等の材質としては、銅、真鍮、タングステン、W−NiやW−Cu等のタングステン合金、等の高比重材料を使用することができる。またこのように重量部材J等を用いる場合、ヘッド本体hとして比重の特に軽いアルミ又はアルミ合金を用いると、重量部材J等との比重の差が大きくなりヘッド3の重量配分の設計自由度が向上する点で好ましい。
(実施例)
本発明の効果を実施例及び比較例により確認した。実施例及び比較例は、それぞれ2種類ずつ作製した。なお、この実施例1、2及び比較例1、2の4種類のヘッドは全て同一形状とし、ヘッド重量は374gで共通とし、ヘッド高さHhは27mm、ヘッド幅Hwは97mm、ヘッド奥行きHdは85.5mmで共通とした。また、重量部材J及びバック側重量部材Jbの材料は銅とし、ヘッド本体hの材料はアルミ合金とした。
実施例1のヘッド3は、前述した第一実施形態と同様、図1〜図4に示す形態とした。フェース面中央部付近の薄肉部の肉厚をTf(図3(a)参照)を5mmとし、空洞部kのトップ側におけるヘッド本体hの肉厚Tc(図3(b)参照)を3mmとし、空洞部kのソール側におけるヘッド本体hの肉厚Tsを3mmとした。また、バック側重量部材Jbの高さHcは23mmとし、バック側重量部材Jbのフェース・バック方向長さDcは22mmとした(図2参照)。
実施例2に係るヘッド3の形態を図5及び図6に示す。図5(a)は、実施例2に係るヘッド3をトップ面側から見た平面図であり、図5(b)はヒール側から見た側面図である。図6(a)は、図5(b)のA−A線における断面図であり、図6(b)は、図5(a)のB−B線における断面図である。
この実施例2では、実施例1におけるバック側重量部材Jbがヘッド本体hのバック側部分hbに置換されており、バック側重量部材Jbが存在しない。そして、バック側部分hbのフェース側面とフェース面2のヘッド内部側面(裏面)との間にフェース・バック方向に延びる中央重量部材Jsを備えている。中央重量部材Jsは、銅からなるとともに、その長手方向がフェース・バック方向に配向する断面矩形の直線棒状部材であって、トップ面15とソール面4との間の空間を埋めるように設けられている(図6(b)参照)。さらに、実施例1と比較して、ヘッド本体hにおけるフェース側部分hfのトウ側部分及びヒール側部分の重量が少なくなっている。フェース面中央部付近の薄肉部の肉厚をTf(図6(a)参照)を5mmとし、中央重量部材Jsのトップ側におけるヘッド本体hの肉厚Tc(図6(b)参照)を3mmとし、中央重量部材Jsのソール側におけるヘッド本体hの肉厚Tsを3mmとした。
比較例1に係るヘッド3の形態を図7及び図8に示す。図7(a)は、比較例1に係るヘッド3をトップ面側から見た平面図であり、図7(b)はヒール側から見た側面図である。図8(a)は、図7(b)のA−A線における断面図であり、図8(b)は、図7(a)のB−B線における断面図である。
この比較例1では、ヘッド本体hのバック側部分hbは実施例2と同一の位置及び大きさで設けられている。また、ヘッド本体hのフェース側部分hfの形状は、実施例1のフェース側部分hfをベースとし、且つそのトウ側及びヒール側に重量部材Jが接合された構造となっている。重量部材J自体は中実の部材であって、ヘッド本体hよりも比重の大きい銅からなる。重量部材Jの上面及び下面は、ヘッド本体hの上面及び下面と滑らかに連続してトップ面15及びソール面4の一部を構成している。また、重量部材Jの側面はサイド面5の一部を構成している。重量部材Jのトウ・ヒール方向幅Wc(図7(a)参照)は12mmとされている。
比較例2に係るヘッド3の形態を図9〜図11に示す。即ち、図9(a)は、比較例2をトップ面側から見た平面図であり、図9(b)はヒール側から見た側面図である。図10(a)は、図9(b)のA−A線における断面図であり、図10(b)は、図9(a)のB−B線における断面図であり、図11は、図9(a)のC−C線における断面図である。
比較例2では、上述の実施例1,2及び比較例1よりも空洞部kが大きくされており、また、ヘッド本体hにおいてバック側部分hbが無く、さらに、バック側重量部材Jbも設けられていない。そして、空洞部kはヘッド3のトウ側及びヒール側のみならず、ヘッド3のバック側にも開放されている。
この比較例2のヘッド3のフェース面2は、当該フェース面2と同一の輪郭形状を有するアルミ合金製で平板状のフェースプレートFpにより構成されており、このフェースプレートFpのバック側には、当該フェースプレートFpと略同一の形状であり且つフェースプレートFpよりも肉厚の厚い厚板状のヘッド前方部hzがフェースプレートFpと平行に設けられている。さらに、このヘッド前方部hzのバック側には、ヘッド後方部hkが設けられている。このヘッド後方部hkは、図11に示すようにそのフェース面側においてヘッド前方部hzの輪郭形状と略同一の形状をもって開口しており、当該開口にヘッド前方部hzの後方側の一部が嵌め込まれることにより、ヘッド前方部hzとヘッド後方部hkとが接合されている。また、ヘッド後方部hkの内部は、そのトップ面15側内面とソール面4側内面との間に立設された1本の立柱20を除き空洞とされ、かかる空洞がヘッド3の空洞部kとされている。この空洞部kは、ヘッド3においてヘッド後方側及びヘッドのトウ側及びヒール側に開放されている。
また、ヘッド前方部hzは、そのヒール寄り部分及びトウ寄り部分が真鍮製であり、そのトウ・ヒール方向中央部分がアルミ合金製である。このトウ寄り部分のトウ・ヒール方向長さFtは42mmとされ、同ヒール寄り部分のトウ・ヒール方向長さFhは17mmとされ、アルミ合金製の中央部分のトウ・ヒール方向長さFcは38mmとされている。なお、フェースプレートFpの肉厚Tnは3mmであり、ヘッド前方部hzの肉厚Tmは16mmであり、ヘッド前方部hzのヘッド後方部hkへの嵌め込み長さTkは3mmである。
この比較例2は、比較例1及び実施例1,2と異なりホーゼル21を有している(図9(b)参照)。このホーゼル21は、その軸方向長さが70mmの真鍮製であるが、いわゆるオーバーホーゼルとされており、パイプ状のシャフト11の内部に当該ホーゼル21を挿入して接着することによりヘッド3にシャフト11が取り付けられる。なお、図9(b)に示すように、ホーゼル21の軸方向中途位置にはシャフト11の肉厚と略同一の段差が設けられており、シャフト11の端面を当該段差に突き当てた状態でシャフト11とヘッド3とが接着される(図9(b)参照)。
以上に記載のように、実施例1,2及び比較例1,2では、空洞部kの位置や大きさ、ヘッド本体hの比重、フェース側部分hfの有無及びその位置や大きさ、バック側部分hbの有無及びその位置や大きさ、トウ側及びヒール側の重量部材Jの有無及びその位置や大きさ、重量部材Jの比重、バック側重量部材Jbの有無及びその位置や大きさ、バック側重量部材Jbの比重、ヘッド前方部hzの有無及びその位置や大きさ、ホーゼル20の有無及びその材質や長さ若しくはその位置、等を適宜調整することにより、ヘッド設計の自由度を高めて、第一モーメントM1〜第三モーメントM3を所望の値に設定している。
試験は、全ての実施例及び比較例においては同一のシャフト及び同一のグリップを使用し、クラブ重量を560gで統一した上で、官能評価と軌道バラつきの2項目について行った。試験は、12名のテスター(全員右利き)による人間実打テストとし、目標(カップ)まで4mのパッティングにてテストを行った。
試験結果を表1に示す。
Figure 0004253566
表1に記載の「開角差のσ」について説明する。
開角差のσは、打球時のフェース面の向き(左右方向向き)の安定性を示す指標であって、その数値が少ないほど当該安定性が高いことを意味する。
開角とは、目標方向に対するフェース向きの左右方向ズレ角度を示すものであり、ストローク中のヘッドを上空から見た平面視において、目標(カップ)に対してフェースの向きが何度ずれているかを示すものである。フェースが目標に対してスクエアとなった状態が開角0度である。開角の測定は、CCDビデオカメラを用いて、60コマ/秒にて画像を撮影して、当該画像から開角を求めた。
開角差とは、ストローク中において、ヘッドがボールに当たる瞬間(インパクトの瞬間)の開角を開角1とし、ボールの20cm手前におけるヘッド(ボールに向かって移動中のヘッド)の開角を開角2としたとき、(開角2−開角1)で与えられる。なお、目標(カップ)に対してフェースが右を向いたときの開角をプラスとし、同左を向いたときの開角をマイナスとする。そして、開角差のσとは、各テスターがそれぞれ20ショットしたときの各テスターにおける開角差の標準偏差をそれぞれ求め、この12名分のデータを平均した値である。
次に、表1に記載の「官能評価」の内容を説明する。
前述の如く12名のテスターが各テストクラブにつき20回ずつ打球(パッティング)を行い、ストロークの安定性(ブレにくさ)について官能評価を行った。各テスターが、各クラブに関し、ストロークが安定していると感じるか、またはストロークが不安定と感じるかのいずれかについて評価した。そして、「ストロークが安定している」と感じたテスターが12人中10人以上の場合を◎、同8人〜9人の場合を○、同6人〜7人の場合を△、「ストロークが不安定である」と感じた人が7名以上の場合を×とした。
実施例と比較例とを比べてみると、実施例1、2は、比較例1,2と比較して、開角差のσが小さくフェースの向きが安定しており、かつ官能評価も優位性のある結果となっている。
なお、第一モーメントM1〜第三モーメントM3の測定は、INEATIA DYNAMICS.INC社製のMODEL NUMBER RK/005−002という慣性モーメント測定器により測定した。測定は、ヘッドの各軸が慣性モーメント測定器の回転軸に一致するようにヘッドを粘土にて固定して行った。測定手順は、先ずヘッドを粘土にて固定した状態で慣性モーメントを測定し、次に、この粘土の形状を変えないようにしてヘッドを取り除き、粘土のみの慣性モーメントを測定した。これらの値からヘッドのみの慣性モーメントを計算した。
なお、従来のゴルフパター用ヘッドとして広く知られているものに、例えば図14に示すような所謂トウヒールバランスタイプのパター用ヘッドがある。このヘッドでは、そのトウ部分30及びヒール部分31に重量を集中させることにより、打撃時のヘッドの回転を抑制しスイートエリアの拡大を図っていた。トウ側からヒール側にかけて重量を略一様に配した場合と比較して、ヘッドのトウ側及びヒール側に重量を集中させた場合は、第二軸A2まわりの第二モーメントM2が大きくなるが、同時に第三軸A3まわりの第三モーメントM3も大きくなる。従来のトウヒールバランスタイプのパターヘッドでは、第二モーメントM2が増大すると同時に第三モーメントM3も増大しており、結果的に第三モーメントM3が第二モーメントM2よりも大きくなっていた。このように、従来のパター用ヘッドでは、第二モーメントM2が第三モーメントM3及び第一モーメントM1よりも大きくなることはなかった。従来は第一モーメントM1〜第三モーメントM3の三つの軸について何ら考慮しなかった為、これらM1〜M3の3者相互の大小関係についても当然に考慮していなかった。本発明はこの大小関係を規定したものである。
なお、第一モーメントM1の大きいヘッドを作製するためには、第一軸A1からできるだけ離れた位置に多くの重量を配分すればよい。小さくするにはその逆である。例えば、第一モーメントM1を小さくする場合は、ヘッド奥行きHdを小さくしたり、バック側重量部材Jbを軽くしたりするなどにより適宜調整をすればよい。
第二モーメントM2の大きいヘッドを作製するためには、第二軸A2からできるだけ離れた位置に多くの重量を配分すればよい。小さくするにはその逆である。例えば、第二モーメントM2を大きくするためには、ヘッド幅Hwを大きくしたり、ヘッド3のトウ側及びヒール側に配置された重量部材Jを重くしたりするなどにより適宜調整をすればよい。
第三モーメントM3の大きいヘッドを作製するためには、第三軸A3からできるだけ離れた位置に多くの重量を配分すればよい。小さくするにはその逆である。例えば、第三モーメントM3を小さくするためには、ヘッド高さHhを小さくしたり、ヘッド幅Hwを小さくしたりするなど適宜調整すればよい。
なお、本発明では、ヘッドの仕様を次のように設定するのが好ましい。なぜなら、パターヘッドの重量バランスを、M2>M1>M3となる重量バランスに設定しやすくなるからである。まず、重心深度は10mm以上、更には15mm以上が好ましく、また25mm以下とするのが好ましい。なお、重心深度はリーディングエッジから測定した値である。そして、重心高さは20mm以下が好ましく、更には15mm以下が好ましく、また5mm以上とするのが好ましい。また、ヘッド幅Hwとヘッド奥行きHdとの比Hw/Hdは、1.1以上が好ましく、上限としては2.8以下が好ましく、2.0以下がより好ましい。更に、ヘッド高さHhは20mm以上が好ましく、また35mm以下が好ましい。また、ヘッド重量は280g以上、さらには320g以上が好ましく、400g以下、更には380g以下が好ましい。
本発明の一実施形態(及び実施例1)におけるゴルフパターに装着されたパターヘッドの斜視図である。 (a)は、図1のパターヘッドをトップ面側から見た平面図である。(b)は、同ヒール側から見た側面図である。 (a)は、図2(b)のA−A線における断面図であり、(b)は、図2(a)のB−B線における断面図である。 (a)は、図1のパターヘッドをフェース面方向から見た正面図であり、(b)は、図2(a)のC−C線における断面図である。 (a)は、実施例2のゴルフパターに装着されたパターヘッドをトップ面側からみた平面図であり、(b)は、そのヒール側からみた側面図である。 (a)は、図5(b)のA−A線における断面図であり、(b)は、図5(a)のB−B線における断面図である。 (a)は、比較例1に係るヘッドをトップ面側から見た平面図であり、(b)はそのヒール側から見た側面図である。 (a)は、図7(b)のA−A線における断面図であり、(b)は、図7(a)のB−B線における断面図である。 (a)は、比較例2に係るヘッドをトップ面側から見た平面図であり、(b)はそのヒール側から見た側面図である。 (a)は、図9(b)のA−A線における断面図であり、(b)は、図9(a)のB−B線における断面図である。 図9(a)のC−C線における断面図である。 本発明の一実施形態であるゴルフパターの全体図である。 テニスラケットの定理について説明するための図である。 従来のパターヘッドの一例を示す斜視図である。
符号の説明
1 ゴルフパター
2 フェース面
3 ヘッド
G 重心
M1 第一モーメントM1
M2 第二モーメントM2
M3 第三モーメントM3
A1 第一軸
A2 第二軸
A3 第三軸

Claims (5)

  1. 基準設置状態で水平面上に載置された場合に下記の(1)〜(3)で定義される三つの慣性モーメントM1、M2及びM3が、M2>M1>M3、及び、3000(g・cm2)≦M2≦7000(g・cm2)の関係式を満たす重量バランスに設定されているパターヘッドと、
    このパターヘッドに取り付けられたシャフトと、を備えたことを特徴とするゴルフパター。
    (1) M1:前記ヘッドの重心を通り且つフェース面及び前記水平面と平行な第一軸まわりの当該ヘッドの慣性モーメント
    (2) M2:前記ヘッドの重心を通る鉛直方向の軸である第二軸まわりの当該ヘッドの慣性モーメント
    (3) M3:前記ヘッドの重心を通り前記第一軸に垂直で且つ前記第二軸に垂直な第三軸まわりの当該ヘッドの慣性モーメント
  2. 基準設置状態で水平面上に載置された場合に下記の(1)〜(3)で定義される三つの慣性モーメントM1、M2及びM3が、M2>M1>M3、及び、1000(g・cm2)≦M1≦3500(g・cm2)の関係式を満たす重量バランスに設定されているパターヘッドと、
    このパターヘッドに取り付けられたシャフトと、を備えたことを特徴とするゴルフパター。
    (1) M1:前記ヘッドの重心を通り且つフェース面及び前記水平面と平行な第一軸まわりの当該ヘッドの慣性モーメント
    (2) M2:前記ヘッドの重心を通る鉛直方向の軸である第二軸まわりの当該ヘッドの慣性モーメント
    (3) M3:前記ヘッドの重心を通り前記第一軸に垂直で且つ前記第二軸に垂直な第三軸まわりの当該ヘッドの慣性モーメント
  3. 基準設置状態で水平面上に載置された場合に下記の(1)〜(3)で定義される三つの慣性モーメントM1、M2及びM3が、M2>M1>M3、及び、1000(g・cm2)≦M3≦4000(g・cm2)の関係式を満たす重量バランスに設定されているパターヘッドと、
    このパターヘッドに取り付けられたシャフトと、を備えたことを特徴とするゴルフパター。
    (1) M1:前記ヘッドの重心を通り且つフェース面及び前記水平面と平行な第一軸まわりの当該ヘッドの慣性モーメント
    (2) M2:前記ヘッドの重心を通る鉛直方向の軸である第二軸まわりの当該ヘッドの慣性モーメント
    (3) M3:前記ヘッドの重心を通り前記第一軸に垂直で且つ前記第二軸に垂直な第三軸まわりの当該ヘッドの慣性モーメント
  4. 前記M1と前記M2との比(M1/M2)が0.6以上で且つ1.0未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴルフパター。
  5. 前記M3と前記M1との比(M3/M1)が0.9以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のゴルフパター。
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