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JP4253737B2 - 光学部品およびその製造方法 - Google Patents
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学部品、その製造方法および前記部品を備えた装置に係る。
【0002】
【従来の技術】
近年、SPring-8 (Super Photon ring 8 GeV)をはじめとする第3世代の大型放射光施設が、稼働し始めた。第3世代の放射光施設とは、一般に、挿入光源として主にアンジュレータを用いた光源を使用し、専用の加速器に挿入光源を多数設置できるように設計された施設のことをいう。
【0003】
このような第3世代の放射光施設の有する性能を極限まで有効利用するためには、挿入光源から発生する超高輝度で低エミッタンスの硬X線 (即ち、光源が小さく、強度が強く且つ平行に近い硬X線)を、ビームサイズがサブミクロン以下となるまで集光する技術の開発が、極めて重要である。このような技術が開発できれば、例えば、硬X線領域の走査型X線顕微鏡、イメージング型X線顕微鏡などを実用化することができる。この様な顕微鏡を実用化することにより、厚みの厚い生体について、サブミクロン領域の微細構造を観察することなどが可能となるので、医学、生命科学などの分野において新しい応用が期待される。また、微小領域における分光や回折技術が発展し、例えば、X線マイクロビームを照射することによって試料表面および内部から放出される蛍光X線を解析することにより元素分析を行う方法;試料の微小領域について、化学状態(構成原子の原子価、化学結合状態など)の二次元および三次元分布図(微小領域の断層写真)を得る方法などが開発されることが予想され、材料科学分野などの広い分野への応用も期待される。
【0004】
硬X線のマイクロビーム化は、第2世代の放射光施設を利用した場合には、既にビームサイズがサブミクロンとなるレベルまで到達している。第2世代の放射光施設とは、一般に、偏光磁石からの放射光を主に利用する施設のことを意味する。
【0005】
しかしながら、第2世代の放射光施設を利用して得られた硬X線のマイクロビームは、強度が極めて微弱であり、実際には普及していない。上述したような様々な分野への応用を実現化するためには、やはりSPring-8をはじめとする第3世代の放射光施設を利用して、十分な強度を有するサブミクロン以下のマイクロビームを開発することが必要である。そのためには、例えば、SPring-8における超高輝度X線の照射に耐えうる高性能な集光素子の開発が必須である。
【0006】
一般的なX線集光素子として、フレネルゾーンプレート(以下「FZP」ということがある)が利用されている。FZPは、X線を透過する層とX線を遮蔽する層とを交互に配した同心円輪群を有するプレートである。
【0007】
現在、電子ビーム・リソグラフィー法で製造されたFZPが実用化されており、軟X線を用いた顕微鏡、分光顕微鏡などに利用されている。このFZPを備えた顕微鏡を用いると、30nm程度の分解能が得らる。
【0008】
しかしながら、電子ビーム・リソグラフィー法で製造されたFZPは、厚みが薄すぎるために、透過能が大きな硬X線を利用する装置には、利用できない。
【0009】
そこで、より厚みの厚いFZPを得るために、スパッタリングなどの蒸着技術を利用した積層型フレネルゾーンプレート(sputtered-sliced FZP, 以下「s-FZP」ということがある)が開発された。
【0010】
s-FZPは、例えば、以下のような方法で製造される(図1参照)。まず、回転する細線状基板に、X線を透過する層(例えばCu)とX線を遮蔽する層(例えばAl)とを交互に蒸着することにより、50〜100層程度の薄膜層を同心円状に積層させる。蒸着後の基板をハンダなどに埋め込み、固定してから、厚さ1mm程度の薄片にスライスする。得られた薄片は、グラファイト板などの支持台に有機系接着剤を用いて固定され、厚さが10〜40μm程度になるまで更に研磨される。例えば、特許文献1、非特許文献1、非特許文献2などに積層型フレネルゾーンプレート用多層膜の製造方法が、開示されている。
【0011】
FZPは、一般に、厚みが厚いほど高エネルギーのX線を集光することができる。例えば、厚みが40μm程度のs-FZPを用いた場合に、83keV程度までのX線を集光できることが確認されている。
【0012】
しかしながら、s-FZPであっても、非常に強度の強いX線、例えば、SPring-8において発生できる最も強度の強いX線(エネルギー:14.4keV、リング電流:100mA)を集光する素子として用いた場合には、20分も経たないうちに有機系接着剤が放射線照射により劣化し、照射部分に気泡ができる。そのため、厚さ40μm以下の薄いハンダ中に固定されているFZPは、歪んだり、FZP自身が破壊されたりすることがある。
【0013】
このような問題点を解決する方法として、放射線に対する耐久性の高い接着剤を探す方法が考えられる。
【0014】
しかしながら、現在のところ、放射線に対する耐久性が高く、且つX線の波面を乱さないような接着剤は、見つかっていない。
【0015】
【特許文献1】
特開2002-196122号公報
【0016】
【非特許文献1】
田村繁治他、高輝度硬X線領域用多層膜ゾーンプレートの開発―8〜83keV高輝度X線の集光―、第5回X線結像光学シンポジウム予稿集、X線結像光学研究会、1999年、p114〜115。
【0017】
【非特許文献2】
安本正人他、スリットを利用したスパッタ法による多層膜フレネルゾーンプレートの作製、2000年秋季第61回応用物理学会学術講演会講演予稿集、社団法人応用物理学会発行、2000年9月3日、第2分冊、p580
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術の問題点を鑑み成されたものであって、超高輝度の硬X線を照射しても、長時間使用できる光学部品、その製造方法および前記光学部品を備えた装置を提供することを主な目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意研究の結果、一定の厚み以上のフレネルゾーンプレートが埋め込まれたハンダ層を支持台に接着した後に、フレネルゾーンプレート部分にX線を照射することにより上記目的を達成できる光学部品を得られることを見出し、本発明に到達した。
【0020】
即ち、本発明は、下記の光学部品、その製造方法および前記光学部品を備えた装置に係るものである。
1.フレネルゾーンプレートが埋め込まれたハンダ層と支持台とを備えた光学部品であって、ハンダ層と支持台との間に接着剤層が設けられ、フレネルゾーンプレートと支持台との間に接着剤層が設けられていない光学部品。
2.フレネルゾーンプレートの厚みが、20〜50μmである上記1に記載の光学部品。
3.支持台が、グラファイトまたはベリリウムである上記1または2に記載の光学部品。
4.接着剤層が、エポキシ系樹脂,ポリエステル系樹脂,ポリウレタン系樹脂,ポリアミド系樹脂,ポリサルファイド系樹脂,アクリル系樹脂,ポリエーテル系樹脂,ポリイミド系樹脂およびシリコーン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む層である上記1〜3のいずれかに記載の光学部品。
5.フレネルゾーンプレートが埋め込まれたハンダ層と支持台とを備えた光学部品の製造方法であって、厚さ100μm以上のフレネルゾーンプレートが埋め込まれたハンダ層を支持台に接着剤を用いて接着した後に、ハンダ層のフレネルゾーンプレート部分にX線を照射して、フレネルゾーンプレートと支持台との間に設けられた接着剤層を劣化させ、その後研磨することを特徴とする製造方法。
6.照射するX線のエネルギーが、10〜100keVである上記1に記載の製造方法。
7.照射するX線のリング電流が、70〜100mAである上記1または2に記載の製造方法。
8.X線の照射時間が、2時間以上である上記1〜3のいずれかに記載の製造方法。
9.上記1〜5のいずれかに記載の光学部品をX線集光部品として設けたX線マイクロビーム光学システム。
10.上記1〜5のいずれかに記載の光学部品をX線集光部品として備えたX線分光顕微鏡。
11.上記1〜5のいずれかに記載の光学部品をX線集光部品として備えたマイクロ蛍光X線分析装置。
12.上記1〜5のいずれかに記載の光学部品をX線集光部品として備えたマイクロX線トモグラフィー装置。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明は、フレネルゾーンプレートが埋め込まれたハンダ層と支持台とを備えた光学部品であって、ハンダ層と支持台との間に接着剤層が設けられ、フレネルゾーンプレートと支持台との間に接着剤層が設けられていない光学部品に係る。
【0022】
本発明の光学部品に含まれるフレネルゾーンプレートの厚みは、用途、用いるX線のエネルギーなどに応じて適宜選択することができるが、通常10〜100μm程度であり、好ましくは20〜50μm程度である。
【0023】
支持台の材質は、耐熱および耐X線を有する材質である限り特に制限されない。例えば、グラファイト、ベリリウムなどを例示することができる。
【0024】
接着剤層は、X線照射により劣化する接着剤を含む層であれば特に制限されない。接着剤としては、例えば、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリサルファイド系樹脂、アクリル系樹脂(例えばエチルシアノアクリレート、アルコキシエチルシアノアクリレートなど)、ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂などの樹脂を用いることができる。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。例えば、ロックタイト420(登録商標、LOCTITE 420)、アラルダイト(登録商標、ARALDAITE)などの市販品を用いることができる。
【0025】
本発明の光学部品に含まれるフレネルゾーンプレートは、通常、光軸に対して回転対称であり、また光軸に対して垂直な二つの平面を有する。フレネルゾーンプレートの光軸に対して垂直な二つの平面は、それぞれハンダ層の表面または裏面のいずれかと同一平面内に配置されている。従って、フレネルゾーンプレートとハンダ層とは、通常、同じ厚みを有している。
【0026】
また、本発明の光学部品に含まれるフレネルゾーンプレートは、円形状基材にX線遮断層とX線透過層とが交互に同心円上に積層された輪帯部分を有する。
【0027】
X線遮断層とX線透過層の膜厚は、用途などに応じて適宜設定することができる。例えば、X線マイクロビーム光学システムとして時に用いるX線の波長、所望の焦点距離などに応じて適宜設定できる。なお、X線遮断層とX線透過層の理論膜厚は、以下のようにして算出できることが知られている。フレネルゾーンプレートの中心に半径r0(mm)の芯線(細線状基板)がある場合、入射するX線の波長をλ(mm)、焦点距離をf(mm)とすると、中心からn番目の境界の中心からの距離rnは、次式で表される。
【0028】
【式1】
rn 2 = r0 2 + n・λ・f (n = 1, 2, 3, …, N) (1)
ゾーン数、即ち輪帯部分の層の数をN、最小線幅(最外層幅、最外輪帯幅ともいう)をδrNとしたとき、空間分解能Δおよび焦点面におけるビーム径2rh(FWHM)は、以下の式で与えられる。
【0029】
【式2】
Δ = 1.22・δrN
2 rn = 1.03・δrN
従って、空間分解能:Δおよび焦点面におけるビーム径:2rhは、用いるX線の波長とは、無関係である。これらの式から、高い分解能を有するFZPを得るためには、輪帯部分の層の数を増やして、最小線幅を狭くしなければならないことが判る。即ち、より薄い層を多数積層することによって、より高い分解能を有するフレネルゾーンプレートを製造することができる。
【0030】
本発明の光学部品に含まれるFZP部分の最外層輪帯幅は、用途などに応じて適宜設定することができるが、通常0.05〜0.5μm程度であり、好ましくは0.05〜0.3μm程度である。
【0031】
本発明の光学部品に含まれるFZP部分の直径は、用途などに応じて適宜設定することができるが、通常60〜100μm程度であり、好ましくは70〜100μm程度である。FZPの輪帯部分の幅は、特に制限されないが、通常15〜50μm程度であり、好ましくは15〜40μm程度である。
【0032】
X線遮断層とX線透過層の材質は、用途などに応じて適宜設定することができるが、X線遮断層の吸光係数が、使用するX線の波長において、X線透過層の吸光係数に対して、通常100倍以上程度となり、好ましくは100〜150倍程度である。
【0033】
X線遮断層として、例えば、銅、銀、モリブデン、金、ニッケル、ニッケル−クロム合金などの吸光係数の大きい重元素を含む層を例示できる。X線透過層として、例えば、アルミニウム、炭素、ケイ素、二酸化ケイ素(SiO2)、ベリリウム、炭化珪素などの吸光係数の小さい軽元素を含む層を例示できる。
【0034】
X線遮断層とX線透過層の組合せとして、例えば、銅層−アルミニウム層、銅層−ケイ素層、銅層−炭素層、銅層−炭化珪素層、銀層−ケイ素層、銀層−炭素層などの組合せを例示することができる。
【0035】
FZPは、X線遮断層とX線透過層とを交互に有しているが、両者を合わせた層の数は、用途などに応じて適宜選択することができ、通常30層以上程度、好ましくは40〜200層程度である。
【0036】
製造方法
本発明の光学部品は、例えば、厚さ100μm以上のフレネルゾーンプレートが埋め込まれたハンダ層を支持台に接着剤を用いて接着した後に、フレネルゾーンプレート部分にX線を照射し、フレネルゾーンプレートと支持台との間に設けられた接着剤層を劣化させ、その後、所望の厚さまで研磨する方法などにより得ることができる。
【0037】
照射するX線のエネルギーは、接着剤を劣化させることができる限り特に制限されず、例えば、用いる接着剤の種類などに応じて適宜設定することができるが、通常10〜100keV程度であり、好ましくは10〜20keV程度である。
【0038】
X線のリング電流は、接着剤を劣化させることができる限り特に制限されず、例えば、用いる接着剤の種類などに応じて適宜設定することができるが、通常50〜100mA程度であり、好ましくは50〜150mA程度である。
【0039】
X線の照射時間は、フレネルゾーンプレートと支持台との間の接着剤層が劣化される限り特に制限されず、例えば、用いる接着剤の種類、X線のエネルギーなどに応じて適宜設定することができるが、通常2時間以上程度であり、好ましくは2〜24時間程度、より好ましくは8〜24時間程度である。
【0040】
X線を照射する時のフレネルゾーンプレートの厚みは、接着剤を劣化させるためのX線照射に耐えられる限り特に制限さず、通常100μm以上程度であり、好ましくは100〜400μm程度である。
【0041】
フレネルゾーンプレートの製造方法は、得られるFZPが、接着剤層を劣化させるためのX線照射に耐えられる限り特に制限されないが、通常、スパッタリングなどの蒸着法を用いて製造される。蒸着法を用いたフレネルゾーンプレートの製造方法について、その一例を以下に例示する。
【0042】
まず、細線状基板を回転させながら、前記基板上に、X線透過層とX線遮断層とを交互に蒸着し、同心円状の多層膜を得る。通常、2以上の蒸着源を用いて蒸着を行う。
【0043】
蒸着方法は、限定されるものではなく、公知の蒸着方法を用いることができ、例えば、スパッタリング蒸着法、電子ビーム蒸着法、イオンビームスパッタリング法、イオンプレーティング法などの蒸着法を例示することができる。これらのなかでは、スパッタリング蒸着法が好ましい。蒸着圧力、蒸着雰囲気、成膜速度などの蒸着条件は、特に制限されず、蒸着方法、蒸着させる薄膜の材質などに応じて公知の条件を適宜設定することができる。蒸着雰囲気としては、例えば、真空下、不活性ガス雰囲気下(例えばAr, Heなどの希ガス)、酸化雰囲気下(例えばO2, 空気など)を例示することができる。より具体的には、酸化物の膜を含む多層膜を製造する場合には、酸化雰囲気下において蒸着することができる。成膜速度は、通常0.05〜2nm/s程度、好ましくは0.1〜1nm/s程度である。細線状基板を回転させる速さは、特に制限されないが、通常毎分10〜100回転程度、好ましくは毎分10〜50回転程度である。
【0044】
細線状基板の材質は、真円度の高い細線が容易に形成できる材質であれば特に制限されず、例えば、金、シリコン含有金(シリコン含有度:通常1〜3重量%程度)、ステンレス鋼などを用いることができる。細線状基板としては、金、シリコン含有金(シリコン含有度:通常1〜3重量%程度)が好ましい。細線状基板の直径は、特に制限されないが、通常20〜100μm程度、好ましくは40〜60μm程度である。細線状基材は、後の工程で、細線状基材の長さ方向に対して垂直に切断される。従って、細線状基材は、本発明の光学部品に含まれるFZPにおいて、円形状基材に対応する。
【0045】
X線遮断層とX線透過層とを交互に蒸着する際には、蒸着源と細線状基板との間にスリットを設けた蒸着装置を用いるのが好ましい。スリットを設けた装置の一例を図4に示す。このようなスリットを設けることにより、多層膜の膜界面における乱れが少ない多層膜を製造することがでる。多層膜界面における乱れが少ないフレネルゾーンプレートは、空間分解能、集光効率などにおいて優れている。
【0046】
スリットを設ける構造体の形状は、特に制限されず、円筒状(図4参照)、角柱状などの筒状;平板などの板状などを例示することができる。これらの中では、筒状が好ましく、特に円筒状が好ましい。スリットを筒状にすることによって、斜入射蒸着成分だけでなく、回り込み蒸着成分をもより高い精度で制御することができる。
【0047】
スリットは、使用中の蒸着源と細線状基板とを結ぶ直線上に位置できるように設置する。スリットの中心線が、蒸着源の中心と細線状基板の中心線とを含む平面に含まれるようにスリットを設置するのが好ましい。
【0048】
スリットは、使用中の蒸着源に向けて開口できるように設置する。例えば、二つの蒸着源AおよびBを交互に用いて多層膜を製造する場合には、蒸着源Aを用いる際には、スリットを蒸着源Aに向け、蒸着源Bを用いる際には、スリットを蒸着源Bに向ける。例えば、スリットが、筒状の構造体に設けられている場合には、この構造体を回転できる手段を設けて、使用する蒸着源にスリットを向けるよう制御するのが好ましい。
【0049】
更に、必要に応じて、蒸着源と細線状基板との間(例えば、蒸着源とスリットとの間)にシャッターを設けた蒸着装置を使用し、使用しない蒸発源について、シャッターを閉じておくことが好ましい。シャッターの数は特に制限されず、例えば、それぞれの蒸着源に対して一つずつシャッターを設けることができる。
【0050】
X線遮断層とX線透過層の各膜厚を制御する方法として、例えば、成膜速度を一定にしたまま、各々の層を蒸着する時間を次第に短くする方法、膜厚センサーを蒸着装置内に設置して蒸着量をモニタリングし、必要に応じてスリット、シャッターなどを制御しながら蒸着を行う方法などを例示することができる。
【0051】
次に、多層膜が蒸着された細線状基板を、ハンダに埋め込み固定してからハンダごと細線状基板の長さ方向に対して垂直に切断することによって、フレネルゾーンプレートが埋め込まれたハンダ層を得る。得られたハンダ層を接着剤を用いて支持台に固定する。ハンダ層は、切断によって所望の厚みとしても良く、または、100μm以上程度(例えば500μm以上)に切断し、支持台に固定後、研磨するなどの方法によって、所望の厚みとしてもよい。ハンダの融点は、特に制限されないが、通常170〜185℃程度である。
【0052】
次に、ハンダ層のFZP部分にX線を照射して、フレネルゾーンプレートと支持台との間に設けられた接着剤層を劣化させる。
【0053】
X線照射後、FZPが埋め込まれたハンダ層を研磨することなどにより所望の厚みとすればよい。フレネルゾーンプレートの研磨面は、できるだけ平滑になっていることが好ましく、例えば鏡面仕上げを行うのが好ましい。鏡面仕上げ方法としては、例えばSiC細粒研磨紙、アルミナ粉末などの研磨剤などを用いて、バフ研磨を行う方法などを例示することができる。
【0054】
本発明の光学部品は、非常に高いエネルギーを有するX線、例えば20〜100keV程度の硬X線を集光する部品として好適に使用することができる。例えば、図3に示すようなX線マイクロビーム光学システムを構築することができる。X線マイクロビーム光学システムは、例えば、本発明の光学部品、X線放射施設、単色光分光器、X線検出器、スリット、ピンホールなどを備えている。スリット、ピンホール、検出器などは、定盤などを用いて固定することができる。スリット、ピンホールなどの位置は、電気系制御装置などを用いて制御することができる。
【0055】
X線放射施設は、特に限定されるものではなく、例えば、挿入光源として主にアンジュレータを用いた光源を使用し、専用の加速器に挿入光源を多数設置できるように設計された施設(所謂、第3世代の放射光施設);偏光磁石からの放射光を主に利用する施設(所謂、第2世代の放射光施設)などを例示できる。本発明の光学部品は、超高輝度のX線を放射できる第3世代の放射光施設から発せられるX線であっても、集光部品として十分に機能する。
【0056】
本発明の光学部品は、例えば、走査型、イメージング型などのX線分光顕微鏡;マイクロ蛍光X線分析装置;マイクロX線トモグラフィー(CT: Computer Tomography)装置などの装置において、光源であるX線の集光部品として好適に用いることができる。
【0057】
【発明の効果】
本発明の光学部品は、X線照射に対する耐久性に優れている。従って、硬X線のマイクロビーム化に好適に使用できる。
【0058】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と共に挙げ、本発明をより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に制限されるものではない。
【0059】
実施例1
細線状基板(材質:金、直径:50μm、長さ:4cm)を回転させながら、スパッタリング蒸着法を用いて、前記基板上に銅とアルミニウムを交互に50層積層させた。蒸着条件は、アルゴン雰囲気下(圧力:0.20Pa)、蒸着源の大きさ:直径75mm、細線状基板と蒸着源との距離:50mmおよび成膜速度:0.2nm/sであった。基板は、加熱しなかったが、輻射熱により基板温度は90〜100℃程度まで上昇した。蒸着源への印加電力は、銅に対しては500V、0.6Aであり、アルミニウムに対しては480V、0.8Aであった。スリットとして、直径:40mm、容器の長さ:60mm、スリット幅:7mmの円筒型スリット容器を用いた。このスリット容器を図4に示すように、容器の中心に細線状基板が位置するよう設置した。細線状基板の回転速度は、1分当たり15回転に保った。
【0060】
まず、一方の蒸着源を用いて蒸着を行った。蒸着源からの蒸発状態が安定となったら、一方の蒸着源の中心と細線状基板の中心線とがなす平面上に、スリットの中心線が位置するようにスリットを蒸着源へ向け、同時にシャッターを開けて、蒸着を開始した。膜厚モニターによって蒸着量および蒸着速度を監視し、膜厚が所望の値に達する時期を予め予測してシャッターを閉じた。この操作を各蒸着源に対して、交互に行った。膜厚モニターによって、蒸着量をモニタリングしながら、シャッターの開閉を行うことにより、蒸着速度を一定に保ったまま、銅またはアルミニウムを蒸発させる時間を徐々に短くすることによって、細線状基板から遠い層ほど、膜厚が薄くなるよう膜厚を制御しながら蒸着した。
【0061】
X線透過層およびX線遮断層を蒸着させた細線状基板をハンダ(錫鉛合金、錫:鉛[重量比]=60:40,融点180℃)に埋め込んで固定し、基板の長さ方向(回転軸)に対して垂直にハンダごと切断し、厚さ1mm程度のFZPが埋め込まれたハンダ層を得た。得られたFZP部分の直径は、80μmであり、輪帯部分の幅は、約20μmであった。同様の方法で、最外層輪帯幅が、0.25μm、0.16μm、0.15μm、0.1μmまたは0.08μであるFZP部分を有するハンダ層を作成した。ロックタイト420を用いて、得られたハンダ層を、それぞれ厚さ1mm以下程度のグラファイト板に接着した。接着後、ハンダ層の厚みが150μmとなるまでハンダ層ごとFZPを研磨した。
【0062】
次に、ハンダ層のフレネルゾーンプレート部分にX線(エネルギー:14.4keV、リング電流:70mA)を8時間照射し、接着剤層を劣化させた。X線照射部分に気泡は発生せず、またFZPが歪んだり、破壊されることもなかった。
【0063】
次に、厚みが40μmになるまで、SiC研磨紙を用いてハンダごとFZPを研磨した。研磨面は、#4000〜#8000の細かい研磨紙を用いて鏡面仕上げにした。
得られた光学部品のFZP部分に対して、X線(エネルギー:14.4keV、リング電流:70mA)を照射した。二日以上連続して照射しても、FZPが歪んだり、破壊されることはなかった。このX線照射条件における銅の吸光係数は、アルミニウムの吸光係数に対して約100倍であった。
【0064】
最外層輪帯幅が0.25μmであるFZP部分を有する光学部品について、断面の走査型電子顕微鏡像を図2に示す。
【0065】
比較例1
実施例1と同様の方法で、細線状基板に銅とアルミニウムとを交互に50層積層させた。X線透過層およびX線遮断層を蒸着させた細線状基板をハンダ(錫鉛合金、錫:鉛[重量比]=60:40,融点180℃)に埋め込んで固定し、基板の長さ方向(回転軸)に対して垂直にハンダごと切断し、FZPが埋め込まれたハンダ層を得た。得られたハンダ層をロックタイト420を用いて、厚さ1mmのグラファイト板に接着した。次に、厚みが40μmとなるまでSiC研磨紙を用いてハンダ層ごとFZPを研磨した。研磨面は、#4000〜#8000の細かい研磨紙または粒子の大きさが2μmであるアルミナ研磨剤を用いて鏡面仕上げにした。
【0066】
得られた光学部品のFZP部分に対して、X線(エネルギー:14.4keV、リング電流:70mA)を照射した。20分程度照射すると、X線照射部に気泡が発生し、ハンダ中の固定されているFZPが歪んだ。更に、X線を照射し続けると、FZPが破壊された。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、積層型フレネルゾーンプレートを製造する工程の一部について、その一例を模式的に示す図である。
【図2】図2は、実施例1において用いた積層型フレネルゾーンプレートの断面の走査型電子顕微鏡像である。このフレネルゾーンプレートは、銅とアルミニウムの薄層を両者を合わせて50層有する。最外層輪帯の幅は、0.25μmである。
【図3】本発明の方法により得られたフレネルゾーンプレートを設けた硬X線マイクロビーム光学システムを模式的に示す図である。分光器としてSi結晶のSi(111)面を用いた二結晶単色光分光器を用いた。
【図4】スリットを設けた蒸着装置の一例を模式的に示した図である。
【図5】本発明の光学部品の一態様を模式的に示した図である。

Claims (7)

  1. フレネルゾーンプレートが埋め込まれたハンダ層と支持台とを備えた光学部品の製造方法であって、
    厚さ100μm以上のフレネルゾーンプレートが埋め込まれたハンダ層を支持台に接着剤を用いて接着した後に、ハンダ層のフレネルゾーンプレート部分にX線を照射して、フレネルゾーンプレートと支持台との間に設けられた接着剤層を劣化させ、その後フレネルゾーンプレートが埋め込まれたハンダ層を研磨することを特徴とする製造方法。
  2. 照射するX線のエネルギーが、10〜100keVである請求項に記載の製造方法。
  3. 照射するX線のリング電流が、70〜100mAである請求項またはに記載の製造方法。
  4. X線の照射時間が、2時間以上である請求項のいずれかに記載の製造方法。
  5. 研磨後のフレネルゾーンプレートの厚みが、20〜50μmである請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 支持台が、グラファイトまたはベリリウムである請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
  7. 接着剤層が、エポキシ系樹脂,ポリエステル系樹脂,ポリウレタン系樹脂,ポリアミド系樹脂,ポリサルファイド系樹脂,アクリル系樹脂,ポリエーテル系樹脂,ポリイミド系樹脂およびシリコーン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む層である請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
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