JP4253882B2 - クラッチ制御装置及び記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば電磁粉式クラッチ付き無段変速機を備えた車両の発進時のように、非係合状態よりエンジン回転数を上昇させつつクラッチを係合させる係合制御を実施するクラッチ制御装置及び記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えばベルト式無段変速機に電磁粉式クラッチを備えた車両において、そのクラッチの動作を制御するクラッチ制御装置が知られている。この種のクラッチ制御装置では、例えば図1に示す様に、エンジンEからのトルクは、電磁粉式クラッチ2を介して無段変速機(CVT)10に伝わり、クラッチ2の伝えるトルクは、エンジン回転数やスロットル開度等のセンサ信号に基づいて、制御器(コントロールユニット)32からのクラッチ2への駆動信号により調整される。
【0003】
上述したクラッチ制御装置においては、車両の発進時には、制御器により、エンジン回転数や時間等から、予め定めた関係に基づいてクラッチの駆動信号を決定している(特公平5−86489号公報参照)。
しかし、クラッチに製造時の固体差や経時変化等による特性バラツキが存在する場合には、同じように駆動信号を与えても、クラッチの締結力がバラついて、エンジン回転数のオーバーシュート(目標係合エンジン回転数を上回る現象)やアンダーシュート(目標係合エンジン回転数を下回る現象)が発生することがある。そのようなときには、クラッチトルクの変動や車両側の挙動に与える影響が大きく、加速感の不連続感による違和感を起こし易いという問題が生じる。
【0004】
また、クラッチの締結力のバラツキによりエンジン回転数が十分に吹き上がらず、それによる急係合が発生した場合には、車両の共振を誘発し、ハンチングを起こすという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この問題の対策として、例えば、エンジン回転数のオーバーシュート抑制のために、エンジン回転数のオーバーシュートを検出し、予め定めたエンジン回転数とクラッチを制御するクラッチ電流の関係を、上昇側(締結力を増大する側)に補正する技術が提案されている(特開平8−318763号公報参照)。
【0006】
また、オーバーシュート、アンダーシュート抑制のために、目標係合エンジン回転数と実エンジン回転数のフィードバックで構成された係合制御系において、エンジン回転数の変化量に応じて、クラッチ電流を補正する技術が提案されている(特開平9−329161号公報参照)。
【0007】
しかしながら、両技術とも、エンジン回転数のみに基づいて、係合制御が実行されるために、必ずしも車両側で発生するハンチングを防止できないという問題がある。一方、車両側のハンチングを抑える方法としては、車体に生ずる振動に対して逆位相のクラッチ電流を流すという技術がある(実開平4−80934号公報参照)。
【0008】
しかし、この技術では、直接にエンジン回転数の挙動を抑制できないために、エンジン回転数のオーバーシュートやアンダーシュートが発生するという問題がある。
そこで、これらの問題を解決するために、即ち、オーバーシュート、アンダーシュート対策とハンチング対策を共に実行するためには、上述した2種類の技術を組み合わせることが考えられるが、各制御間の調整が大変となり、必ずしも好ましくない。
【0009】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、クラッチの係合時の問題である、車両のハンチングとエンジン回転数のオーバーシュート、アンダーシュートの全てを抑制できるクラッチ制御装置及び記録媒体を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
(1)請求項1の発明は、
車両のエンジンと車輪の間に存在し、係合と切断を行うクラッチに対して、クラッチの非係合状態よりエンジン回転数を上昇させて、クラッチを係合させる係合制御を実施するクラッチ制御装置において、前記エンジンの情報に基づいて、前記クラッチの駆動側と被駆動側の滑り量の目標値を設定する目標滑り量設定手段と、前記クラッチの実際の駆動側回転数と被駆動側回転数から、クラッチの実滑り量を検出する実滑り量検出手段と、前記目標滑り量に前記実滑り量が一致するように制御する滑り量制御手段と、を備えるとともに、前記車両の状態に応じて設定された基準エンジン回転数以下の領域では、前記目標滑り量をエンジン回転数に対して増加関数で設定し、前記基準エンジン回転数を上回る領域では、(目標滑り量をエンジン回転数に対して)減少関数で設定する目標滑り量設定手段を備えたことを特徴とするクラッチ制御装置を要旨とする。
【0011】
本発明では、エンジンの情報(例えば実エンジン回転数)に基づいて、クラッチの駆動側と被駆動側の滑り量の目標値を設定するが、その際には、例えば図3(a)に示す様に、車両の状態(例えば制御開始時の実エンジン回転数)に応じて設定した基準エンジン回転数以下では、目標滑り量をエンジン回転数に対して増加関数で設定し、基準エンジン回転数を上回る領域では減少関数で設定する。
【0012】
つまり、本発明では、基準エンジン回転数以下では、目標滑り量をエンジン回転数に対して増加関数で設定するので、クラッチの締結力のばらつきに起因する問題、即ち係合制御時にエンジン回転数が吹き上がらないこと(上昇不足)によるクラッチの急係合を防止できる。よって、車両のハンチングを防止できる。
【0013】
また、この増加関数の設定により、クラッチの締結力のばらつきに起因する他の問題、即ち係合制御時のエンジン回転数のアンダーシュートを防止することができる。このアンダーシュートは、目標係合エンジン回転数より低いエンジン回転数でクラッチが係合することを示すが、本発明では、そのアンダーシュートの発生を抑制できるので、例えば加速感の不連続感による車両の走行時の違和感を防止できる。
【0014】
一方、基準エンジン回転数を上回る領域では、目標滑り量をエンジン回転数に対して減少関数で設定するので、エンジン回転数のオーバーシュートを防止することができる。このオーバーシュートは、目標係合エンジン回転数より高いエンジン回転数でクラッチが係合することを示すが、本発明では、そのオーバーシュートの発生を抑制できるので、上述したアンダーシュートと同様に、例えば加速感の不連続感による車両の走行時の違和感を防止できる。
【0015】
つまり、本発明により、クラッチの係合時におけるエンジン回転数挙動と被係合側回転数挙動とを同時に設定できるため、エンジン回転数のオーバーシュートとアンダーシュートとの発生を抑制することができ、また、エンジン回転数の吹き上がり不足による急係合を防止して、車両のハンチングの発生を防ぐことができる。
【0016】
(2)請求項2の発明は、
前記基準エンジン回転数を、制御開始時のエンジン回転数に基づいて設定することを特徴とする前記請求項1に記載のクラッチ制御装置を要旨とする。
本発明では、基準エンジン回転数を、制御開始時のエンジン回転数に基づいて設定している。このように設定することにより、アイドル状態からの発進や、減速後の発進であるかを判断し、制御を変更できるので、効果的に、エンジン回転数のオーバーシュート及びアンダーシュートの発生を防止でき、また、急係合による車両のハンチングの発生を防ぐことができる。
【0017】
(3)請求項3の発明は、
前記増加関数は、増加の途中でその増加の程度が変化する関数であることを特徴とする前記請求項1又は2に記載のクラッチ制御装置を要旨とする。
本発明は、増加関数を例示したものである。本発明では、増加の程度がその途中で変化するので、エンジンの特性等に合わせて、より効果的に、エンジン回転数のオーバーシュート及びアンダーシュートの発生を防止でき、また、急係合による車両のハンチングの発生を防ぐことができる。
【0018】
(4)請求項4の発明は、
前記減少関数は、減少の途中でその減少の程度が変化する関数であることを特徴とする前記請求項1〜3のいずれかに記載のクラッチ制御装置を要旨とする。
本発明は、減少関数を例示したものである。本発明では、減少の程度がその途中で変化するので、エンジンの特性等に合わせて、より効果的に、エンジン回転数のオーバーシュート及びアンダーシュートの発生を防止でき、また、急係合による車両のハンチングの発生を防ぐことができる。
【0019】
(5)請求項5の発明は、
前記増加関数及び/又は減少関数は、前記基準エンジン回転数の近傍で、その変化の程度が減少する関数であることを特徴とする前記請求項1〜4のいずれかに記載のクラッチ制御装置を要旨とする。
【0020】
本発明では、増加関数や減少関数を例示したものである。本発明では、基準エンジン回転数の近傍で、その変化の程度が減少する関数を用いるので、増加関数から減少関数への変化(又はその逆の変化)を、スムーズに行うことができる。よって、急激な係合制御を抑制できるので、係合制御におけるクラッチトルク変動を低減することができ、速やかで且つ滑らかな係合を実現できる。
【0021】
(6)請求項6の発明は、
前記滑り量制御手段は、クラッチの被係合側の位相を進める制御を行うことを特徴とする前記請求項1〜5のいずれかに記載のクラッチ制御装置を要旨とする。
【0022】
本発明では、滑り量制御手段は、クラッチの被係合側(例えばプライマリ回転数)の位相を進める制御を行うので、ハインチングが発生した場合でも、被係合側の位相を進めることにより、ハンチングを抑制することができる。
例えば図6に示す様に、プライマリ回転数の変動に応じて実滑り量が変動すると、目標滑り量と実滑り量との差である滑り量偏差も変動し、滑らかな係合ができないので、本発明では、例えば図5に示す様に、例えば微分制御器を用いて制御信号の位相を早める。例えば電磁粉式クラッチにおいて、その締結力を調節するクラッチ電流の大きさを変化させる場合には、そのクラッチ電流を増減する制御のタイミングを速める制御(即ちクラッチの被係合側の例えばプライマリ回転数の位相を進める制御)を行うことにより、ハンチングを抑制できる。
【0023】
(7)請求項7の発明は、
前記クラッチの係合制御を実施する時期が、車両の発進時であることを特徴とする前記請求項1〜6のいずれかに記載のクラッチ制御装置を要旨とする。
本発明は、クラッチの係合制御を実施する時期を例示している。ここでは、車両の発進時に、上述した係合制御を実施する。
【0024】
つまり、車両の発進時において、クラッチを係合させる場合には、上述したエンジン回転数のオーバーシュートやアンダーシュート、更には急係合によるハンチングが発生し易いので、この様なタイミングで前記係合制御を実施することは、スムーズな車両の発進に極めて有効である。
【0025】
(8)請求項8の発明は、
前記クラッチは、電磁粉式クラッチであることを特徴とする前記請求項1〜7のいずれかに記載のクラッチ制御装置を要旨とする。
本発明は、クラッチの種類を例示したものである。ここでは、電磁粉式クラッチを用いるので、このクラッチに通電する電流又は電圧を制御することにより、上述した係合制御を好適に実施することができる。
【0026】
従って、前記滑り量制御手段としては、実滑り量が目標滑り量に一致するように、例えば電磁粉式クラッチのコイルに通電する電流値(又は電圧)を調節して、クラッチの実滑り量を制御する手段が挙げられる。
(9)請求項9の発明は、
前記クラッチの被係合側に、無段変速機が存在することを特徴とする前記請求項1〜8のいずれかに記載のクラッチ制御装置を要旨とする。
【0027】
本発明は、車両の構造を例示したものである。ここでは、クラッチの係合側に無段変速機が存在するので、上述した係合制御を実施することにより、クラッチの係合をスムーズに行なって、その駆動力を好適に無段変速機に伝達し、それにより、滑らかな車両の発進等を実現できる。
【0028】
(10)請求項10の発明は、
前記請求項1〜9のいずれかに記載のクラッチ制御装置による制御を実行させる手段を記憶していることを特徴とする記録媒体を要旨とする。
例えば記録媒体としては、マイクロコンピュータとして構成される電子制御装置、マイクロチップ、フロッピィディスク、ハードディスク、光ディスク等の各種の記録媒体が挙げられる。
【0029】
つまり、上述したクラッチ制御装置の制御を実行させることができる例えばプログラム等の手段を記憶したものであれば、特に限定はない。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のクラッチ制御装置の好適な実施の形態を、例(実施例)を挙げて図面に基づいて詳細に説明する。
(実施例1)
a)まず、本実施例のクラッチ制御装置を、図1の無段変速機ユニットの概略構成図に基づいて説明する。
【0031】
図1に示す様に、本実施例のクラッチ制御装置を備えた車両は、エンジンEを動力源とし、この駆動力を、電磁粉式クラッチ(以下単にクラッチとも記す)2と、前後進切り替え機構(図示しない)と、プライマリプーリ4、金属ベルト6、セカンダリプーリ8を有する無段変速機(CVT)10等を介して、駆動輪に伝達している。
【0032】
詳しくは、無段変速機10は、可動円錐盤12と固定円錐盤14とからなる駆動側のプライマリプーリ4(駆動プーリ)、可動円錐盤16と固定円錐盤18とからなる従動側のセカンダリプーリ8(従動プーリ)、駆動側のプライマリプーリシリンダ20、従動側のセカンダリプーリシリンダ22、およびプライマリプーリ4とセカンダリプーリ8との間に掛け渡された金属ベルト6、エンジンEにより駆動されるオイルポンプ24、プライマリ油圧制御アクチュエータ26、セカンダリ油圧制御アクチュエータ28、エンジンEからのトルクの伝達を調整するトルクコンバータ等を備えている。
【0033】
制御装置30は、クラッチ2や無段変速機10等の各種の制御を行なうものであり、電子制御回路から成るコントロールユニット32を備えている。このコントロールユニット32は、プライマリプーリ4の回転数(プライマリ回転数NP)を検出するプライマリ回転センサ34、セカンダリプーリ8の回転数(セカンダリ回転数NS)を検出するセカンダリ回転センサ36、スロットル開度を検出するスロットル開度センサ38、エンジンEの実エンジン回転数NEを検出するエンジン回転センサ40等と接続されている。
【0034】
前記コントロールユニット32は、CPUを中心とする周知のマイクロコンピュータとして構成され、前記プライマリ回転センサ34、セカンダリ回転センサ36、スロットル開度センサ38、およびエンジン回転センサ40の検出データ等に基づいて目標変速比を設定し、この目標変速比となるように、プライマリ油圧制御アクチュエータ26を調整して、オイルポンプ24にて発生しプライマリプーリシリンダ20に供給される油圧を制御している。
【0035】
また、コントロールユニット32は、金属ベルト6がスリップを生じないように、セカンダリ油圧制御アクチュエータ28を調整して、オイルポンプ24にて発生しセカンダリプーリシリンダ20に供給される油圧を制御している。
更に、コントロールユニット32は、例えば車両の発進時に、車両をスムーズに発進させるために、クラッチ2の係合制御を行うクラッチ制御装置として機能する。具体的には、各センサ信号に基づいて、クラッチ2の締結、切断を判断するとともに、クラッチ2を制御する電流(クラッチ電流)の量を調節して、クラッチの締結力を制御する。
【0036】
つまり、コントロールユニット32は、各種センサ信号をもとに、目標変速比を演算し、金属ベルト6がスリップすることなく、実変速比が目標変速比に一致するように、セカンダリ油圧制御アクチュエータ28及びプライマリ油圧制御アクチュエータ26を駆動し、変速制御を行うとともに、本実施例の要部であるクラッチ2の係合制御を行う。
【0037】
b)次に、コントロールユニット32により実行される制御のうち、クラッチ2の係合制御について、図2〜図4に基づいて説明する。
尚、図2は本制御の制御ブロック図、図3は目標滑り量設定のマップ、図5は本制御による変化を示している。
【0038】
このクラッチ2の係合制御とは、例えば車両の発進時に、クラッチ2の非係合状態よりエンジン回転数NEを上昇させて、クラッチ2をスムーズに係合させるための制御である。
まず、図2に示す様に、目標滑り量設定部42では、エンジン回転センサ40の信号に基づいて検出したエンジン回転数(実エンジン回転数)NEに基づいて、図3(a)に示す様なマップから、クラッチ2の最適な滑り量(駆動側と被駆動側との回転数の差)である目標滑り量MSを求める。
【0039】
このマップとは、クラッチ2が係合する際の最適なエンジン回転数NEである目標係合エンジン回転数(目標ミート回転数MNE)以上では、目標滑り量MSが0と設定されているものであり、基準エンジン回転数KNE以下では、目標滑り量MSが増加関数で設定され、基準エンジン回転数KNE以上では、目標滑り量MSが減少関数で設定されている。ここでは、基準エンジン回転数KNEは、制御開始時のエンジン回転数(例えば1400rpm)に設定されている。尚、増加関数は、ある折れ点P1にて増加の程度が大→小に変化する折れ線で示され、減少関数は、2箇所P2,P3にて減少の程度が小→大→中に変化する折れ線で示されるものである。
【0040】
一方、プライマリ回転センサ34の信号に基づいて検出した実プライマリ回転数NPと前記実エンジン回転数NEとの偏差、即ち実滑り量RSを求める。
そして、この実滑り量RSと上述したマップから求めた目標滑り量MSとの偏差、即ち滑り量偏差△Sを求め、フィードバック制御部(FB制御部)44に送る。
【0041】
FB制御部44では、この滑り量偏差△Sが小さく(例えば0)なる様に、クラッチ電流を制御して、実滑り量RSのフィードバック制御を行う。例えば滑り量偏差△Sが目標滑り量MSに対して過大である場合には、クラッチ2の締結力が小さくなる様に、クラッチ電流を小さくし、逆に、滑り量偏差△Sが過小である場合には、クラッチ2の締結力が大きくなる様に、クラッチ電流を大きくして、実滑り量RSを目標滑り量MSに一致させる制御を行う。
【0042】
c)本実施例では、上述した制御により、下記の作用効果を奏する。
▲1▼本実施例では、図3(a)に示す様に、実エンジン回転数NEが、エンジン側とプライマリプーリ側を係合させる目標ミート回転数MNE以上では、目標滑り量MSを0以下に設定し、目標ミート回転数MNEを下回る場合には目標滑り量MSを0を上回る値に設定している。
【0043】
これにより、目標ミート回転数MNEに至らない状態で実滑り量RSが0となって係合してしまうエンジン回転数のアンダーシュートや、目標ミート回転数MNE以上で実滑り量RSが0より大きく、いわゆるすべり状態になることにより発生するエンジン回転数のオーバーシュートを防止できる。
【0044】
上述した制御を行うことで、本実施例では、図4(a)に例示する様に、目標ミート回転数MNEにて、実エンジン回転数NEとプライマリ回転数NPとが一致して、実滑り量RSが0となり、非常に好適な係合が実現できる。尚、図4のGは車両前後加速度である。
【0045】
▲2▼また、本実施例では、図3(a)に示す様に、基準エンジン回転数KNEまでは、目標滑り量MSを実エンジン回転数NEに対して増加関数で設定し、基準エンジン回転数KNE以上では、目標滑り量MSを減少関数で設定している。
例えば図3(b)に示す様に、目標滑り量MSを減少関数で設定すると、図4(b)に例示する様に、実エンジン回転数NEが吹き上がらず、クラッチ2の急係合の状態を引き起こして、車両のハンチングが発生することがあるが、本実施例の様に、目標滑り量MSを増加関数及び減少関数で設定することにより、図4(a)に例示する様に、実エンジン回転数NEの吹き上がり不足による急係合を避けることができ、よって、急係合による車両のハンチングを防止することができる。
【0046】
つまり、単に減少関数で目標滑り量MSを設定すると、十分に実エンジン回転数NEが上昇する前にクラッチ2の締結力を高めてしまい、それにより急係合が発生することがあるが、本実施例では、十分に実エンジン回転数NEが上昇するまでは、クラッチ2の締結力を高めず(即ち目標滑り量MSを高め)、十分に実エンジン回転数NEが上昇してから、クラッチ2の締結力を高める(即ち目標滑り量MSを低減する)ように制御するので、クラッチ2の急係合を防止することができる。
(実施例2)
次に、実施例2について説明するが、前記実施例1と同様な箇所の説明は、省略又は簡略化する。
【0047】
本実施例は、クラッチ2の被係合側の位相を進めることにより、一層効果的にハンチングを防止するものである。
図5に示す様に、目標滑り量設定部52では、エンジン回転センサ40の信号に基づいて検出した実エンジン回転数NEに基づいて、前記図4(a)に示す様なマップから、目標滑り量MSを求める。
【0048】
一方、プライマリ回転センサ34の信号に基づいて検出した実プライマリ回転数NPと前記実エンジン回転数NEとの偏差、即ち実滑り量RSを求める。
そして、前記目標滑り量MSと実滑り量RSとの偏差、即ち滑り量偏差△Sを求め、フィードバック制御部(FB制御部)54に送る。
【0049】
FB制御部54では、この滑り量偏差△Sが小さく(例えば0)なる様に、前記実施例1と同様に、クラッチ電流を制御して、実滑り量RSのフィードバック制御を行う。
特に、本実施例は、このFB制御部54では、微分制御器56により、滑り量偏差△Sの微分を含む構成とすることにより、滑り量偏差△Sの位相を進めること、従ってクラッチ2の被係合側であるプライマリ回転数NPの位相を進めることができる。尚、図5において、K1,K2はフィードバックゲインである。
【0050】
つまり、実際に車両にハンチングが生じた場合には、図6に示す様に、プライマリ回転数NPの位相と滑り量偏差△Sの位相は同位相になるので、図5に示す本実施例の構成により、クラッチ電流を制御することにより、プライマリ回転数NPの位相を例えば90゜進めることができる。
【0051】
これにより、係合側(エンジンE側)の実エンジン回転数NEの回転変動と、被係合側(プライマリプーリ4側)のプライマリ回転数NPの回転変動が打ち消し合うので、一層好適に車両のハンチングが抑制される。
尚、本発明は上記実施例に何ら限定されることなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない限り、種々の態様で実施できることはいうまでもない。
【0052】
(1)例えば実施例2において、実滑り量RSを、実エンジン回転数NEと位相進み処理を加えたプライマリ回転数NPで演算するようにフィードバック制御系を構成することで、プライマリ回転数の位相を進めるようにしてもよい。
つまり、前記実施例2では、実滑り量RSを、実エンジン回転数NEとプライマリ回転数NPの偏差としたが、このプライマリ回転数NPに代えて、位相進み処理を加えたプライマリ回転数NPを用いるのである。
【0053】
この場合には、前記図5におけるFB演算部56から微分制御器56を除き、プライマリ回転数NPにプライマリ回転数NPの微分を加える様に制御系を構成することができる。
(2)また、前記実施例1,2では、クラッチ制御装置について述べたが、この装置による制御を実行させる手段を記憶している記録媒体も、本発明の範囲である。
【0054】
例えば記録媒体としては、マイクロコンピュータとして構成される電子制御装置、マイクロチップ、フロッピィディスク、ハードディスク、光ディスク等の各種の記録媒体が挙げられる。
つまり、上述した無段変速機の変速比制御装置の制御を実行させることができる例えばプログラム等の手段を記憶したものであれば、特に限定はない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1のクラッチ制御装置の装置構成を示すブロック図である。
【図2】 実施例1のクラッチ制御装置の制御系を示すブロック図である。
【図3】 実エンジン回転数と目標滑り量との関係を示し、(a)は実施例のグラフ、(b)は比較例のグラフである。
【図4】 各回転数及びGの変化を示し、(a)は実施例のグラフ、(b)は比較例のグラフである。
【図5】 実施例2のクラッチ制御装置の制御系を示すブロック図である。
【図6】 プライマリ回転数等の変動を示すグラフである。
【符号の説明】
E…エンジン
2…電磁粉式クラッチ(クラッチ)
4…プライマリプーリ
6…金属ベルト
8…セカンダリプーリ
10…無段変速機
30…制御装置
32…コントロールユニット
34…プライマリ回転センサ
36…セカンダリ回転センサ
38…スロットル開度センサ
40…エンジン回転センサ
Claims (10)
- 車両のエンジンと車輪の間に存在し、係合と切断を行うクラッチに対して、クラッチの非係合状態よりエンジン回転数を上昇させて、クラッチを係合させる係合制御を実施するクラッチ制御装置において、
前記エンジンの情報に基づいて、前記クラッチの駆動側と被駆動側の滑り量の目標値を設定する目標滑り量設定手段と、
前記クラッチの実際の駆動側回転数と被駆動側回転数から、クラッチの実滑り量を検出する実滑り量検出手段と、
前記目標滑り量に前記実滑り量が一致するように制御する滑り量制御手段と、
を備えるとともに、
前記車両の状態に応じて設定された基準エンジン回転数以下の領域では、前記目標滑り量をエンジン回転数に対して増加関数で設定し、前記基準エンジン回転数を上回る領域では、減少関数で設定する目標滑り量設定手段を備えたことを特徴とするクラッチ制御装置。 - 前記基準エンジン回転数を、制御開始時のエンジン回転数に基づいて設定することを特徴とする前記請求項1に記載のクラッチ制御装置。
- 前記増加関数は、増加の途中でその増加の程度が変化する関数であることを特徴とする前記請求項1又は2に記載のクラッチ制御装置。
- 前記減少関数は、減少の途中でその減少の程度が変化する関数であることを特徴とする前記請求項1〜3のいずれかに記載のクラッチ制御装置。
- 前記増加関数及び/又は減少関数は、前記基準エンジン回転数の近傍で、その変化の程度が減少する関数であることを特徴とする前記請求項1〜4のいずれかに記載のクラッチ制御装置。
- 前記滑り量制御手段は、クラッチの被係合側の位相を進める制御を行うことを特徴とする前記請求項1〜5のいずれかに記載のクラッチ制御装置。
- 前記クラッチの係合制御を実施する時期が、車両の発進時であることを特徴とする前記請求項1〜6のいずれかに記載のクラッチ制御装置。
- 前記クラッチは、電磁粉式クラッチであることを特徴とする前記請求項1〜7のいずれかに記載のクラッチ制御装置。
- 前記クラッチの被係合側に、無段変速機が存在することを特徴とする前記請求項1〜8のいずれかに記載のクラッチ制御装置。
- 前記請求項1〜9のいずれかに記載のクラッチ制御装置による制御を実行させる手段を記憶していることを特徴とする記録媒体。
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