以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
図1〜図17は本発明の乗員保護装置の第1実施形態を示し、図1は便宜上ドアを取り外して示す車両の側面図、図2は乗員保護装置を構成する右側席の斜視図、図3は下方移動手段を(a)の上部と(b)の下部とで示す斜視図、図4は下方移動手段を(a)の上部と(b)の下部とで示す断面図、図5は下方移動手段の機能を示す斜視図、図6は後方移動手段を示す透視斜視図、図7は後方移動手段の機能を示す斜視図、図8は横方向転覆時の乗員の挙動イメージを順を追って示す説明図、図9は横方向転覆時のショルダーベルトの作動を(a)の作動前と(b)の作動完了後で示す斜視図、図10は横方向転覆時のショルダーベルトの上方支持点の下方移動量と車体回転角との関係を(a)に乗員着座位置が横方向転覆方向と一致した場合と(b)に乗員着座位置が横方向転覆方向とは反対側である場合とで示すグラフ、図11は前方転覆時の乗員の挙動イメージを順を追って示す説明図、図12は前方転覆時のショルダーベルトの作動を(a)の作動前と(b)の作動途中と(c)の作動完了後とで示す斜視図、図13は前方転覆時のショルダーベルトの上方支持点の動きを(a)の後方移動量と車体回転角との関係と(b)の下方移動量と車体回転角との関係とで示すグラフ、図14は後方転覆時の乗員の挙動イメージを順を追って示す説明図、図15は後方転覆時のショルダーベルトの作動を(a)の作動前と(b)の作動途中と(c)の作動完了後とで示す斜視図、図16は後方転覆時のショルダーベルトの上方支持点の動きを(a)の下方移動量と車体回転角との関係と(b)の後方移動量と車体回転角との関係とで示すグラフ、図17は乗員保護装置の制御手順をアルゴリズムで示す説明図である。
この第1実施形態の乗員保護装置1は、図1に示すように、ショルダーベルト3S部分とラップベルト3L部分とからなるシートベルト3を備えており、ショルダーベルト3Sによって、座席2に着座した乗員Mの上体を腰部Mw片側から斜めに肩部Ms他側に拘束するとともに、ラップベルト3Lによって乗員Mの腰部Mwを拘束するようになっている。
ショルダーベルト3Sは、その上方支持点Pを、車体下方に移動する下方移動手段10および車体後方に移動する後方移動手段20を介して車体Bに支持してある。
また、前記乗員保護装置1は、車体Bの横方向転覆(以下、横転と称する。)または前・後方向転覆(以下、前転,後転と称する。)を検出する車体転覆検出手段としての車体傾斜センサー30と、車体Bの横転または前転,後転時の回転状態を検出する車体回転角検出手段としての前記車体傾斜センサー30および傾斜方向センサー31と、乗員Mが着座している左・右座席位置を検出する着座位置検出手段としての重量センサー32と、を設けてあり、前記車体傾斜センサー30および前記傾斜方向センサー31は車体B前部のエンジンルームE内に配置してあり、また、重量センサー32はシートクッション2Aに設けてある。
前記各センサー30,31,32の検出信号は、信号ケーブルCを介してコントローラ33に出力し、このコントローラ33によって前記下方移動手段10と前記後方移動手段20の移動量を求めて、それぞれに駆動信号を出力するようになっている。
つまり、コントローラ33は、車体傾斜センサー30および傾斜方向センサー31からの信号により、車体Bが転覆により回転している時の乗員Mの挙動を推定するとともに、重量センサー32からの信号により着座位置を判断して、前記下方移動手段10および/または前記後方移動手段20を移動制御してショルダーベルト3Sを緊張し、乗員Mをこれに作用する遠心力とは反対方向に拘束するようになっている。
下方移動手段10および後方移動手段20は、後述する第1,第2回転電動アクチュエータ18,25を備えて、それぞれの回転により駆動するようにしてある。
車体転覆検出手段としての前記車体傾斜センサー30は、車体Bの傾斜角を推定し、この車体傾斜センサー30で検知した傾斜角が予め設定したしきい値を越えたときに車体Bが転覆状態にあると判断するようになっている。
車体回転角検出手段は前記車体傾斜センサー30および前記傾斜方向センサー31によって構成し、車体傾斜センサー30によって車体Bの傾斜角を推定し、傾斜方向センサー31によって車体Bの回転方向を推定し、これら車体傾斜センサー30と傾斜方向センサー31のそれぞれの検知信号から車体回転角を判断するようになっている。
着座位置検出手段としての重量センサー32は、シートクッションに設けられて、乗員Mの重量を感知して着座有無を判断するようになっている。
前記ショルダーベルト3Sは、図2に示すように、その上端部3aを車室外側に設けた上方支持点Pに挿通した後、その先端部3a′を車体下方へと案内してシートベルトリトラクタ4に巻き取り・繰出し自在に巻回する一方、ショルダーベルト3Sの下端部3bをシートクッション2Aの車室中央側でバックル6に係着するタング5に挿通した後、その先端部3b′をシートクッション2Aの車室外側に案内してラップベルト3Lとし、先端部3b′をサイドシルBsに固定してある。
前記タング5はシートクッション2Aの車室中央側のフレームに固定した前記バックル6に係脱自在に装着してある。
前記下方移動手段10は、図2に示すように、前記ショルダーベルト3Sの上部を挿通してその先端部を下方に案内するとともに、ショルダーベルト3Sの挿通案内部を上方支持点Pとするショルダーベルトアンカー11を有し、このショルダーベルトアンカー11をセンターピラーBpの車室内側面に沿って配置した断面矩形状のアンカーレール12に上下移動自在に取り付けてある。
アンカーレール12は、図3(a),図4(a)に示すように、その上端部中央に形成したシャフト穴12aにラックシャフト14を出没自在に挿入してあり、このラックシャフト14はスプリング13によってショルダーベルトアンカー11方向に押圧付勢されることにより、その先端部がショルダーベルトアンカー11に形成したシャフト穴11aに嵌合して、ショルダーベルトアンカー11の移動をロックするようになっている。
前記アンカーレール12にはシャフト穴12aの上側に臨んでロック解除モータ15によって回転駆動される主ピニオン16を配置してあるとともに、ショルダーベルトアンカー11にはシャフト穴11aの上側に臨んで配置した副ピニオン17を回転自在にピン17a結合してある。
主ピニオン16はラックシャフト14に常時噛合し、ロック解除モータ15の駆動によって、スプリング13の付勢力でショルダーベルトアンカー11に嵌合しているラックシャフト14をシャフト穴11aから引き抜き、ロック解除するようになっている。
前記アンカーレール12のショルダーベルトアンカー11を配置した内側壁には、上下方向に2条のガイド溝12bを形成してあり、一方、ショルダーベルトアンカー11にはそれらガイド溝12bにそれぞれ摺動自在に係合し、かつ、抜け止めされる1対のガイド突起11bを形成し、これらガイド溝12bとガイド突起11bとを互いに嵌合した状態でショルダーベルトアンカー11は上下方向に移動可能となっている。
前記アンカーレール12の下端部には、図3(b),図4(b)に示すように、前記シートベルトリトラクタ4を格納する収納凹部12cを形成して、この収納凹部12c内にシートベルトリトラクタ4を取り付けてある。
シートベルトリトラクタ4は、第1回転電動アクチュエータ18によってショルダーベルト3Sを少なくとも巻き取る方向に駆動するようになっており、ショルダーベルトアンカー11をロック解除した状態で第1回転電動アクチュエータ18がショルダーベルト3Sを巻き取ると、このときの巻き取り力によりショルダーベルトアンカー11は、図5に示すように車体下方に移動し、これに伴ってショルダーベルト3Sの上方支持点Pが下方移動される。
前記後方移動手段20は、図2に示すように、前記アンカーレール12の上端部を回動中心として、このアンカーレール12を車体後方に回動させる回動機構21を備える。
回動機構21は、図6に示すように、ルーフサイドレールBr(図2参照)に固定されるケーシング21aを有し、このケーシング21aの内部に螺旋状のギアを形成したウオームシャフト22を車体前後方向に配置し、このウオームシャフト22を、互いに噛合するギア23,24を介して第2回転電動アクチュエータ25で回転駆動するようになっている。
また、前記ケーシング21a内には、前記アンカーレール12の上方部分に位置して前記ウオームシャフト22に噛合するウオームホイール26を設け、このウオームホイール26と一体に回転する回転軸26aを車幅方向に配置して、前記ケーシング21aに回転自在に支持してある。
そして、前記アンカーレール12の上端から前記ウオームホイール26の両側に位置して1対の連結シャフト27を突設し、これら連結シャフト27をケーシング21aの底部に形成した開口21bから挿入して、前記ウオームホイール26の回転軸26aに結合してある。
従って、第2回転電動アクチュエータ25を駆動することによりウオームシャフト22が回転して、このウオームシャフト22の回転をウオームホイール26によって取り出して回転軸26aを回転することにより、図7に示すように、この回転軸26aを中心としてアンカーレール12を車体後方に回動させて、ショルダーベルト3Sの上方支持点Pを車体後方に移動させるようになっている。
そして、このように構成した乗員保護装置1は、車体Bが横転する場合に、図8(a)〜(i)に示すように乗員Mも車体Bと共に横方向に回転し、このとき、乗員Mの着座位置が車体Bの横転方向と同方向側の席である場合、図9(b)に示すように、下方移動手段10を作動して上方支持点Pを車体下方に移動し、車体Bの側方回転角が90度に達した時(図8(c)参照)に、上方支持点Pの下方移動量hを予め設定した最大下方移動位置に設定する(図10(a)参照)。尚、図8中、Cfは乗員Mに働く遠心力を示し、以下同様とする。
一方、乗員Mの着座位置が車体Bの横転方向とは反対方向側の席である場合、前記同様に下方移動手段10を作動して上方支持点Pを車体下方に移動するのであるが、車体Bの側方回転角が180度に達したと判断した時(図8(e)参照)に、上方支持点Pの下方移動量hを予め設定した最大下方移動位置に設定する(図10(b)参照)。
次に、車体Bが前転する場合に、図11(a)〜(i)に示すように乗員Mも車体Bと共に前方に回転し、図12(b)に示すように、後方移動手段20を作動して上方支持点Pを車体後方に移動し、車体Bの前方回転角が90度に達した時(図11(c)参照)に、上方支持点Pの後方移動量lを予め設定した最大後方移動位置に設定する(図13(a)参照)とともに、この時点で下方移動手段10を作動して、図12(c)に示すように、上方支持点Pを車体下方に移動し、車体Bの前方回転角が180度に達した時(図11(e)参照)に、上方支持点Pの下方移動量を予め設定した最大下方移動位置に設定する(図13(b)参照)。尚、図11中、Gは乗員Mに作用する重心を示し、以下同様とする。
また、車体Bが後転する場合に、図14(a)〜(i)に示すように乗員Mも車体Bと共に後方に回転し、車体Bの後方回転角が90度に達した時(図14(c)参照)に、図15(b)に示すように、下方移動手段10を作動して上方支持点Pを車体下方に移動し、更に、車体Bの後方回転角が180度に達した時(図14(e)参照)に、上方支持点Pの下方移動量を予め設定した最大下方移動位置に設定する(図16(a)参照)とともに、図15(c)に示すように、後方移動手段20を作動して上方支持点Pを車体後方に移動し、車体Bの後方回転角が270度に達した時(図14(g)参照)に、上方支持点Pの後方移動量を予め設定した最大後方移動位置に設定する(図16(b)参照)。
前記構成からなるこの第1実施形態の乗員保護装置1は、図17に示すアルゴリズムをもってショルダーベルト3Sの上方支持点Pを移動制御するようになっており、このアルゴリズムでは、システムが起動すると、まず、ステップS1で車両転覆検出手段(車体傾斜センサー30)の信号により車体Bの転覆状態を判断し、転覆していないと判断した場合(NO)にはシステムを終了する一方、転覆したと判断した場合(YES)は、ステップS2で車体回転角検出手段(車体傾斜センサー30,傾斜方向センサー31)の信号により車体Bの回転方向を判断する。そして、ステップS2で車体Bが左側からの横転(Rsl)であると判断し、かつ、ステップS3で着座位置検出手段(重量センサー32)からの信号により乗員Mの着座位置が左側席(Sl)であると判断した場合、もしくは、ステップS2によって車体Bが右側からの横転(Rsr)であると判断し、かつ、ステップS4で着座位置検出手段(重量センサー32)からの信号により乗員Mの着座位置が右側席(Sr)であると判断した場合は、ステップS5でロック解除モータ15への駆動電圧を発生するとともに、下方移動手段10(シートベルトリトラクタ4)の第1回転電動アクチュエータ18への駆動電圧を発生してショルダーベルト3Sを巻き取ることにより、ショルダーベルトアンカー11(上方支持点P)を車体下方に移動する(図5参照)。
次に、ステップS6で車体回転角検出手段(車体傾斜センサー30,傾斜方向センサー31)の信号により車体Bの側方回転角を判断し、この側方回転角が90度に達したと判断した場合、ステップS7で前記下方移動手段10の第1回転電動アクチュエータ18を駆動し続けて、ショルダーベルトアンカー11(上方支持点P)を予め設定した下限位置まで移動する(図9(b)参照)。
このとき、ステップS6で側方回転角が90度に達していない(回転角<90度)と判断した場合は、ステップS1の車体転覆の判断までリターンされる。
一方、ステップS2で車体Bが右側からの横転(Rsr)であると判断し、かつ、ステップS4で乗員Mの着座位置が左側席(Sl)であると判断した場合、もしくは、ステップS2によって車体Bが左側からの横転(Rsl)であると判断し、かつ、ステップS3で乗員Mの着座位置が右側席(Sr)であると判断した場合は、ステップS8でロック解除モータ15への駆動電圧を発生するとともに、下方移動手段10の第1回転電動アクチュエータ18への駆動電圧を発生してショルダーベルト3Sを巻き取ることにより、ショルダーベルトアンカー11(上方支持点P)を車体下方に移動する(図5参照)。
次に、ステップS9で車体回転角検出手段(車体傾斜センサー30,傾斜方向センサー31)の信号により車体Bの側方回転角が180度に達したと判断した場合、ステップS10で前記下方移動手段10の第1回転電動アクチュエータ18を駆動し続けて、ショルダーベルトアンカー11(上方支持点P)を予め設定した下限位置まで移動する(図9(b)参照)。
このとき、ステップS9で側方回転角が180度に達していない(回転角<180度)と判断した場合は、ステップS1の車体転覆の判断までリターンされる。
また、ステップS2で車体Bが前転(Rf)であると判断した場合、ステップS11で後方移動手段20の第2回転電動アクチュエータ25への駆動電圧を発生して、アンカーレール12を後方回動することによりショルダーベルトアンカー11(上方支持点P)を車体後方に移動する(図7参照)。
次に、ステップS12で車体回転角検出手段(車体傾斜センサー30,傾斜方向センサー31)の信号により、車体Bの前方回転角が90度に達したと判断した場合、ステップS13で後方移動手段20の第2回転電動アクチュエータ25を駆動し続けて、ショルダーベルトアンカー11(上方支持点P)を予め設定した後限位置まで移動する(図12(b)参照)。
そして、このようにショルダーベルトアンカー11が後限位置まで移動すると、ステップS14でロック解除モータ15への駆動電圧を発生するとともに、シートベルトリトラクタ4の第1回転電動アクチュエータ18への駆動電圧を発生して、ショルダーベルトアンカー11(上方支持点P)を車体下方に移動する。
このとき、ステップS12で前方回転角が90度に達していない(回転角<90度)と判断した場合は、ステップS1の車体転覆の判断までリターンされる。
次に、ステップS15で車体回転角検出手段(車体傾斜センサー30,傾斜方向センサー31)の信号により、車体Bの前方回転角が180度に達したと判断した場合、ステップS16で下方移動手段20の第1回転電動アクチュエータ18を駆動し続けて、ショルダーベルトアンカー11(上方支持点P)を予め設定した下限位置まで移動する(図12(c)参照)。
このとき、ステップS15で前方回転角が180度に達していない(回転角<180度)と判断した場合は、ステップS1の車体転覆の判断までリターンされる。
また、ステップS2で車体Bが後転(Rr)であると判断した場合、ステップS17で車体回転角検出手段(車体傾斜センサー30,傾斜方向センサー31)の信号により、車体Bの後方回転角が90度に達したと判断した場合、ステップS18でロック解除モータ15への駆動電圧を発生するとともに、シートベルトリトラクタ4の第1回転電動アクチュエータ18への駆動電圧を発生して、ショルダーベルトアンカー11(上方支持点P)を車体下方に移動する。
このとき、ステップS17で後方回転角が90度に達していない(回転角<90度)と判断した場合は、ステップS1の車体転覆の判断までリターンされる。
次に、ステップS19で車体回転角検出手段(車体傾斜センサー30,傾斜方向センサー31)の信号により、車体Bの後方回転角が180度に達したと判断した場合、ステップS20で下方移動手段10の第1回転電動アクチュエータ18を駆動し続けて、ショルダーベルトアンカー11(上方支持点P)を予め設定した下限位置まで移動する(図15(b)参照)。
そして、このようにショルダーベルトアンカー11が下限位置まで移動すると、ステップS21で後方移動手段20の第2回転電動アクチュエータ25への駆動電圧を発生して、アンカーレール12を後方回動することによりショルダーベルトアンカー11(上方支持点P)を車体後方に移動する。
次に、ステップS22で車体回転角検出手段(車体傾斜センサー30,傾斜方向センサー31)の信号により、車体Bの後方回転角が270度に達したと判断した場合、ステップS23で後方移動手段20の第2回転電動アクチュエータ25を駆動し続けて、ショルダーベルトアンカー11(上方支持点P)を予め設定した後限位置まで移動する(図15(c)参照)。
このとき、ステップS22で後方回転角が270度に達していない(回転角<270度)と判断した場合は、ステップS1の車体転覆の判断までリターンされる。
以上の構成によりこの第1実施形態の乗員保護装置1によれば、車体傾斜センサー30および傾斜方向センサー31により車体Bの転覆方向および転覆時の回転角を検出することができ、これにより乗員Mの挙動を推定できる。
従って、その乗員Mの挙動に応じて下方移動手段10と後方移動手段20の少なくとも一方によってショルダーベルトアンカー11、つまりショルダーベルト3Sの上方支持点Pを下方や後方に移動制御することにより、ショルダーベルト3Sによる乗員Mの拘束方向を、回転方向に応じて乗員Mに作用する遠心力とは反対方向として、乗員Mの移動を効果的に拘束できるようになる。
また、シートクッション2Aに設けた重量センサー32により乗員が着座している左・右座席2の位置を検出することにより、乗員Mの着座位置に応じて適正に乗員を拘束することができる。
従って、車体Bが横方向もしくは前後方向に転覆した場合に、乗員Mの着座位置にかかわらず乗員の左右方向と前方と上方の移動を確実に拘束して、乗員Mが車室内構成部材に干渉するのを防止もしくは抑制して、乗員の保護機能を確保することができる。尚、乗員Mの後方および下方の移動は座席2によって拘束されている。
また、この第1実施形態では前記作用効果に加えて、車体Bが横転する場合に、乗員Mの着座位置が車体の横転方向と同方向側の席である場合、下方移動手段10を作動して上方支持点Pを車体下方に移動し、車体Bの側方回転角が90度に達した時に、上方支持点Pの下方移動量hを予め設定した最大下方移動位置に設定し、一方、乗員Mの着座位置が車体Bの横転方向とは反対方向側の席である場合、下方移動手段10を作動して上方支持点Pを車体下方に移動し、車体の側方回転角が180度に達したと判断した時に、上方支持点Pの下方移動量hを予め設定した最大下方移動位置に設定したので、車体Bの横転時にショルダーベルト3Sによる乗員Mの拘束効果をより高めることができる。
更に、車体Bが前転する場合に、後方移動手段20を作動して上方支持点Pを車体後方に移動し、車体Bの前方回転角が90度に達した時に、上方支持点Pの後方移動量lを予め設定した最大後方移動位置に設定するとともに、この時点で下方移動手段10を作動して上方支持点Pを車体下方に移動し、車体の前方回転角が180度に達した時に、上方支持点Pの下方移動量hを予め設定した最大下方移動位置に設定したので、車体Bの前転時にショルダーベルト3Sによる乗員Mの拘束効果をより高めることができる。
更にまた、車体Bが後転する場合に、車体Bの後方回転角が90度に達した時に、下方移動手段10を作動して上方支持点Pを車体下方に移動し、更に、車体の後方回転角が180度に達した時に、上方支持点Pの下方移動量hを予め設定した最大下方移動位置に設定するとともに、後方移動手段20を作動して上方支持点Pを車体後方に移動し、車体Bの後方回転角が270度に達した時に、上方支持点Pの後方移動量lを予め設定した最大後方移動位置に設定したので、車体Bの後転時にショルダーベルト3Sによる乗員Mの拘束効果をより高めることができる。
また、下方移動手段10および後方移動手段20は、第1,第2回転電動アクチュエータ18,25を備えて、それぞれの回転により駆動するようにしたので、ショルダーベルト3Sの引き込み量や引き込み力を任意に制御できるとともに、車体Bの回転角度や回転方向に応じて乗員Mの着座位置毎に任意に乗員の移動を拘束することができる。
更に、車体転覆検出手段として車体傾斜センサー30を用い、この車体傾斜センサー30で車体Bの傾斜角を推定し、この車体傾斜センサー30で検知した傾斜角が予め設定したしきい値を越えたときに車体Bが転覆状態にあると判断するようにしたので、車体Bの転覆状態を確実に判断できるようになり、これによって転覆時には乗員Mを確実に拘束して、乗員保護機能を更に高めることができる。更にまた、車体回転角検出手段を前記車体傾斜センサー30および前記傾斜方向センサー31によって構成し、車体傾斜センサー30によって車体Bの傾斜角を推定し、傾斜方向センサー31によって車体Bの回転方向を推定し、これら車体傾斜センサー30と傾斜方向センサー31のそれぞれの検知信号から車体回転角を判断したので、車体Bの横および前・後いずれの方向の回転(転覆)であっても、そのときの車体Bの回転中の状態を的確に把握することができ、ひいては、転覆時の乗員Mの拘束を確実に行うことができる。
また、着座位置検出手段として重量センサー32を用いてシートクッション2Aに設け、このシートクッション2Aに着座した乗員Mの重量を感知して着座有無を判断するようにしたので、乗員Mが着座した座席2の位置を確実に検知することができるとともに、この重量センサー32を搭載した既存車両が有る場合はその乗員検知装置を利用して乗員位置を簡単かつ安価に検出することができる。
図18〜図36は本発明の第2実施形態を示し、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図18は便宜上ドアを取り外して示す車両の側面図、図19は乗員保護装置を構成する右側席の斜視図、図20は下方移動手段を(a)の上部と(b)の下部とで示す斜視図、図21は下方移動手段の上部を示す作動状態の斜視図、図22は下方移動手段を(a)の上部と(b)の下部とで示す断面図、図23は下方移動手段のロック状態を示す断面図、図24は下方移動手段のロック状態を示す要部斜視図、図25は下方移動手段のロック解除状態を示す要部正面図、図26は下方移動手段の機能を示す斜視図、図27は横方向転覆時の乗員の挙動イメージを順を追って示す説明図、図28は横方向転覆時のショルダーベルトの作動を(a)の作動前と(b)の作動完了後で示す斜視図、図29は横方向転覆時のショルダーベルトの上方支持点の下方移動量と車体回転角との関係を(a)に乗員着座位置が横方向転覆方向と一致した場合と(b)に乗員着座位置が横方向転覆方向とは反対側である場合とで示すグラフ、図30は前方転覆時の乗員の挙動イメージを順を追って示す説明図、図31は前方転覆時のショルダーベルトの作動を(a)の作動前と(b)の作動途中と(c)の作動完了後とで示す斜視図、図32は前方転覆時のショルダーベルトの上方支持点の動きを(a)の後方移動量と車体回転角との関係と(b)の下方移動量と車体回転角との関係とで示すグラフ、図33は後方転覆時の乗員の挙動イメージを順を追って示す説明図、図34は後方転覆時のショルダーベルトの作動を(a)の作動前と(b)の作動途中と(c)の作動完了後とで示す斜視図、図35は後方転覆時のショルダーベルトの上方支持点の動きを(a)の下方移動量と車体回転角との関係と(b)の後方移動量と車体回転角との関係とで示すグラフ、図36は乗員保護装置の制御手順をアルゴリズムで示す説明図である。
この第2実施形態の乗員保護装置1aは、その機能は概ね第1実施形態と同様であるが、下方移動手段10aの具体的構造を異にしている。
即ち、この第2実施形態の乗員保護装置1aが適用される車両Bは、図18に示すように、第1実施形態と同様に座席2に着座した乗員Mの上体を斜めに拘束するショルダーベルト3Sを備えており、このショルダーベルト3Sの上方支持点Pを、車体下方に移動する下方移動手段10aおよび車体後方に移動する後方移動手段20と、を設けてある。
また、前記乗員保護装置1aは、第1実施形態と同様に車体Bの横転または前転,後転を車体転覆検出手段としての車体傾斜センサー30で検出し、車体Bの横転または前転,後転時の回転状態を車体回転角検出手段としての前記車体傾斜センサー30および傾斜方向センサー31で検出し、乗員Mが着座している左・右座席位置を着座位置検出手段としての重量センサー32で検出するようになっており、これら各センサー30,31,32の信号をコントローラ33で処理して、前記下方移動手段10aと前記後方移動手段20に駆動信号を出力する。
ここで、この第2実施形態の下方移動手段10aは、図20に示すように、ショルダーベルトアンカー11を覆ってアンカーカバー40を設け、このアンカーカバー40をアンカーレール12に沿って下方移動させることにより、ショルダーベルト3Sの上方支持点Pを下方に移動させるようになっている。
即ち、前記アンカーカバー40は、図20(a),図22(a)に示すように、断面矩形状に形成し、その閉断面内にショルダーベルトアンカー11を収容するようにして、車幅方向の外側面40aをアンカーレール12の前後両側面に形成したガイド溝12dに相対移動自在に挿通してある。このため、本実施形態のアンカーレール12には、第1実施形態に示した内側壁のガイド溝12b(図3参照)は廃止してある。
アンカーレール12の下部内側には、図20(b),図22(b),図23(b)に示すように、シートベルトリトラクタ4を格納する収納凹部12cの上方に棚部12eを形成し、この棚部12eの上面に下方移動手段10aの駆動源となる第3回転電動アクチュエータ41を固定してある。
第3回転電動アクチュエータ41の出力軸には一体に回転するプーリ42を取り付けてあり、このプーリ42に巻回したワイヤー43を上方に配索して、図23(a)に示す開閉フック44に連結してある。
開閉フック44は、図22(a),図23(a)に示すように、上方に向かって開閉する1対のフック片44a,44bの開閉支点44cを、前記アンカーカバー40の外側面40aに枢着するとともに、前記ワイヤー43の上端部を分岐点43aから二股状に分岐して、それぞれの分岐先端部43b,43cをフック片44a,44bの互いに最も離隔する中間部に連結してある。
また、前記フック片44a,44b間には引張りスプリング45を取り付けて、フック片44a,44bに常時閉止方向の付勢力を付与してある。
このとき、図22(a),図23(a)に示すように、前記アンカーレール12の外側壁内面には、アンカーカバー40が初期位置、つまり開閉フック44の最上方位置にあって、前記1対のフック片44a,44b間に対応する位置に固定棚46を一体に突設してある。
従って、アンカーカバー40が初期位置にあって開閉フック44の自然状態では、図24に示すように、引張りスプリング45の付勢力によりフック片44a,44bは閉じて固定棚46を掴持し、この掴持状態でフック片44a,44bが固定棚46に係合してロック状態となる。
そして、アンカーカバー40が初期位置(最上方位置)にロックされた状態で、前記第3回転電動アクチュエータ41を駆動すると、ワイヤー43がプーリ42に巻き取られて下方に引っ張られ、これによって1対のフック片44a,44bは、図25に示すように、引張りスプリング45の付勢力に抗して開閉支点44cを中心として開動する。
すると、開閉フック44と固定棚46との係合が外れてロック解除され、その後、第3回転電動アクチュエータ41を継続して駆動してプーリ42にワイヤー43を巻き取ることにより、開閉フック44と共にアンカーカバー40がアンカーレール12に沿って下方に移動する。
すると、アンカーカバー40は、図21に示すように、その下縁部からショルダーベルト3Sの上部を内方に取り込むため、ショルダーベルト3Sの上方支持点Pはアンカーカバー40の下縁部となり、この下縁部が第3回転電動アクチュエータ41の駆動により下降するため、上方支持点Pを車体下方に移動させることができる。
従って、この第2実施形態ではアンカーカバー40の下降によりショルダーベルト3Sの上方支持点Pを下方移動させる構成であり、この上方支持点Pのロックは開閉フック44で行うため、第1実施形態に示したショルダーベルトアンカー11をアンカーレール12に対して移動させる必要が無く、また、ラックシャフト14やロック解除モータ15(図3参照)を廃止することができる。
また、この第2実施形態のシートベルトリトラクタ4は、単にベルトの巻き取りおよび繰出しを行う従来の機能を備えておれば良く、第1実施形態に示したベルト巻き取り用の第1回転電動アクチュエータ18を廃止してある。
尚、後方移動手段20は第1実施形態と同様に、アンカーレール12の上端部を回動中心として、このアンカーレール12を車体後方に回動させるが、この第2実施形態では第1実施形態と同一符号を付すことによりその説明を省略するものとする。
そして、このように構成したこの第2実施形態の乗員保護装置1aは、第1実施形態と同様に車体Bが横転する場合に、図27(a)〜(i)に示すように乗員Mも車体Bと共に横方向に回転し、このとき、乗員Mの着座位置が車体Bの横転方向と同方向側の席である場合、図28(b)に示すように、アンカーカバー40を下降して上方支持点Pを車体下方に移動し、車体Bの側方回転角が90度に達した時(図27(c)参照)に、上方支持点Pの下方移動量hを予め設定した最大下方移動位置に設定する(図29(a)参照)。
また、乗員Mの着座位置が車体Bの横転方向とは反対方向側の席である場合、前記同様にアンカーカバー40を下降して上方支持点Pを車体下方に移動するのであるが、車体Bの側方回転角が180度に達したと判断した時(図27(e)参照)に、上方支持点Pの下方移動量hを予め設定した最大下方移動位置に設定する(図29(b)参照)。
次に、車体Bが前転する場合に、図30(a)〜(i)に示すように乗員Mも車体Bと共に前方に回転し、図31(b)に示すように、アンカーレール12を後方に回動して上方支持点Pを車体後方に移動し、車体Bの前方回転角が90度に達した時(図30(c)参照)に、上方支持点Pの後方移動量lを予め設定した最大後方移動位置に設定する(図32(a)参照)とともに、この時点でアンカーカバー40を下降して、図31(c)に示すように、上方支持点Pを車体下方に移動し、車体Bの前方回転角が180度に達した時(図30(e)参照)に、上方支持点Pの下方移動量を予め設定した最大下方移動位置に設定する(図32(b)参照)。
また、車体Bが後転する場合に、図33(a)〜(i)に示すように乗員Mも車体Bと共に後方に回転し、車体Bの後方回転角が90度に達した時(図33(c)参照)に、図34(b)に示すように、アンカーカバー40を下降して上方支持点Pを車体下方に移動し、更に、車体Bの後方回転角が180度に達した時(図33(e)参照)に、上方支持点Pの下方移動量を予め設定した最大下方移動位置に設定する(図35(a)参照)とともに、図34(c)に示すように、アンカーレール12を後方に回動して上方支持点Pを車体後方に移動し、車体Bの後方回転角が270度に達した時(図33(g)参照)に、上方支持点Pの後方移動量を予め設定した最大後方移動位置に設定する(図35(b)参照)。
前記構成からなるこの第2実施形態の乗員保護装置1は、図36に示すアルゴリズムをもってショルダーベルト3Sの上方支持点Pを移動制御するようになっており、このアルゴリズムは図18に示した第1実施形態のアルゴリズムと略同様の制御となり、第1実施形態と同一処理部分には同一ステップ番号を付してその重複する説明を省略するとともに、類似する処理部分には第1実施形態のステップ番号にダッシュ(′)を付して説明するものとする。
即ち、この第2実施形態のアルゴリズムの処理で、第1実施形態と類似するが具体的な処理内容が異なる部分は、ステップS5′、ステップS7′、ステップS8′、ステップS10′、ステップS14′、ステップS16′、ステップS18′、ステップS20′であり、ステップS5′とステップS8′とステップS14′では、下方移動手段10aを作動するために第3回転電動アクチュエータ41に駆動電圧を発生して、アンカーカバー40を下方に移動する処理を実行する。
また、ステップS7′とステップS10′とステップS16′とステップS20′では、下方移動手段10の第3回転電動アクチュエータ41を駆動し続けて、アンカーカバー40(上方支持点P)を予め設定した下限位置まで移動する処理を実行する。
以上の構成によりこの第2実施形態の乗員保護装置1aによれば、第1実施形態と同様に車体傾斜センサー30および傾斜方向センサー31により車体Bの転覆方向および転覆時の回転角を検出することができ、これにより乗員Mの挙動を推定できる。
そして、その乗員Mの挙動に応じて下方移動手段10aと後方移動手段20の少なくとも一方によって、アンカーカバー40を下降してショルダーベルト3Sの上方支持点Pを下方に移動制御するとともに、アンカーレール12を後方に回動して上方支持点Pを車体後方に移動制御することにより、ショルダーベルト3Sによる乗員Mの拘束方向を、回転方向に応じて乗員Mに作用する遠心力とは反対方向として、乗員Mの移動を効果的に拘束できる。
また、シートクッション2Aに設けた重量センサー32により乗員が着座している左・右座席2の位置を検出することにより、乗員Mの着座位置に応じて適正に乗員を拘束することができ、車体Bが横方向もしくは前後方向に転覆した場合に、乗員Mの着座位置にかかわらず乗員の左右方向と前方と上方の移動を確実に拘束して、乗員Mが車室内構成部材に干渉するのを防止もしくは抑制して、乗員の保護機能を確保することができる。
図37〜図53は本発明の第3実施形態を示し、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図37は便宜上ドアを取り外して示す車両の側面図、図38は乗員保護装置を構成する右側席の斜視図、図39は後方移動手段を(a)の上部と(b)の下部とで示す斜視図、図40は後方移動手段の下部を下方から見た斜視図、図41は後方移動手段の作動状態を示す斜視図、図42は下方移動手段を(a)の上部と(b)の下部とで示す斜視図、図43は下方移動手段を(a)の上部と(b)の下部とで示す断面図、図44は下方移動手段の作動状態を示す斜視図、図45は横方向転覆時の乗員の挙動イメージを順を追って示す説明図、図46は横方向転覆時のショルダーベルトの作動を(a)の作動前と(b)の作動完了後で示す斜視図、図47は横方向転覆時のショルダーベルトの上方支持点の下方移動量と車体回転角との関係を(a)に乗員着座位置が横方向転覆方向と一致した場合と(b)に乗員着座位置が横方向転覆方向とは反対側である場合とで示すグラフ、図48は前方転覆時の乗員の挙動イメージを順を追って示す説明図、図49は前方転覆時のショルダーベルトの作動を(a)の作動前と(b)の作動途中と(c)の作動完了後とで示す斜視図、図50は前方転覆時のショルダーベルトの上方支持点の動きを(a)の後方移動量と車体回転角との関係と(b)の下方移動量と車体回転角との関係とで示すグラフ、図51は後方転覆時の乗員の挙動イメージを順を追って示す説明図、図52は後方転覆時のショルダーベルトの作動を(a)の作動前と(b)の作動途中と(c)の作動完了後とで示す斜視図、図53は後方転覆時のショルダーベルトの上方支持点の動きを(a)の下方移動量と車体回転角との関係と(b)の後方移動量と車体回転角との関係とで示すグラフである。
この第3実施形態の乗員保護装置1bは、その機能は概ね第1実施形態と同様であるが、後方移動手段20aの具体的構造を異にしている。
即ち、この第3実施形態の乗員保護装置1bが適用される車両Bは、図37に示すように、第1実施形態と同様に座席2に着座した乗員Mの上体を斜めに拘束するショルダーベルト3Sを備えており、このショルダーベルト3Sの上方支持点Pを、車体下方に移動する下方移動手段10および車体後方に移動する後方移動手段20aと、を設けてある。
また、前記乗員保護装置1bは、第1実施形態と同様に車体Bの横転または前転,後転を車体転覆検出手段としての車体傾斜センサー30で検出し、車体Bの横転または前転,後転時の回転状態を車体回転角検出手段としての前記車体傾斜センサー30および傾斜方向センサー31で検出し、乗員Mが着座している左・右座席位置を着座位置検出手段としての重量センサー32で検出するようになっており、これら各センサー30,31,32の信号をコントローラ33で処理して、前記下方移動手段10と前記後方移動手段20aに駆動信号を出力する。
ここで、この第3実施形態の後方移動手段20aは、図37,図38に示すように、ルーフサイドレールBrに沿って車体前後方向に取り付けたアッパーレール50と、サイドシルBsに沿って車体前後方向に沿って車体前後方向に取り付けたロアレール51と、を設け、これらアッパレール50とロアレール51との間に車体前後移動可能に断面矩形状のアンカーレール52を取り付け、このアンカーレール52に設けたショルダーベルト3Sの上方支持点Pを車体後方に移動できるようになっている。
そして、前記アンカーレール52は、アッパレール50内に設けた駆動機構53によって車体後方に移動されるようになっているが、この駆動機構53は第1実施形態に示した回動機構21と略同様の構成部材をもって構成され、第1実施形態ではアンカーレール12を後方回動するのに対して、この第3実施形態では図41に示すように、アンカーレール52を後方に平行移動するようになっており、本実施形態では第1実施形態の回動機構21と同一構成部分に同一符号を付して説明するものとする。
即ち、この第3実施形態の駆動機構53は、図39(a)に示すように、アッパレール50の内部に螺旋状のギアを形成したウオームシャフト22を車体前後方向に配置し、このウオームシャフト22を、互いに噛合するギア23,24を介して第2回転電動アクチュエータ25で回転駆動するようになっている。
そして、アンカーレール52の上端から突設した逆U字状の2本のシャフト54,54aを、アッパレール50の下面に形成した2条の平行溝50aからアッパレール50内に配置し、これらシャフト54,54aの中央部の水平部分にそれぞれウオームホイール55,55aを回転自在に設けて、これらウオームホイール55,55aを前記ウオームシャフト22の上側に懸垂状態で噛合させてある。
一方、アンカーレール52の下端部は、図39(b),図40に示すように、ロアレール51の上面を転動する4個のコロ56を設けてあるとともに、アンカーレール52の底面中央部にガイドシャフト57を突設し、このガイドシャフト57をロアレール51の上面中央部に車体前後方向に形成したガイド溝51aに相対移動自在に嵌合してある。
この第3実施形態の後方移動手段20aは、第2回転電動アクチュエータ25を駆動することにより、この第2回転電動アクチュエータ25の回転はギア23,24を介してウオームシャフト22に伝達され、このウオームシャフト22が回転することによって2個のウオームホイール55,55aが回転し、これらウオームホイール55,55aは車体後方に転動する。
従って、前記ウオームホイール55,55aの転動によりアンカーレール52は車体後方に移動することになり、ひいては、図41に示すように、このアンカーレール52に設けた前記上方支持点P(図41ではショルダーベルトアンカー11を示す)を後方移動できるようになっている。
このとき、アンカーレール52は下端部に設けたコロ56によってロアレール51上を円滑に移動し、このアンカーレール52の垂直性を保ちつつ後方移動できるとともに、ガイドシャフト57がガイド溝51aに案内されてアンカーレール52の車幅方向の揺動を阻止することができる。
一方、前記下方移動手段10を図42,図43に示すが、この下方移動手段10は第1実施形態に示したと同様の構成となり、この第3実施形態では第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとする。
下方移動手段10は、図42(a),図43(a)に示すように、ラックシャフト14を出没自在に挿入するシャフト穴52aをアンカーレール52の上端部中央に形成し、このラックシャフト14の先端部をショルダーベルトアンカー11のシャフト穴11aに嵌合することにより、ショルダーベルトアンカー11の移動をロックするようになっている。
また、第1実施形態と同様に前記ラックシャフト14は、ロック解除モータ15の駆動によってショルダーベルトアンカー11のシャフト穴11aから抜脱してロック解除され、ショルダーベルトアンカー11は、これのガイド突起11bがアンカーレール52のガイド溝52bに案内されつつ下方移動が可能となっている。
更に、アンカーレール52の下端部に形成した収納凹部52cに格納したシートベルトリトラクタ4は、第1実施形態と同様に第1回転電動アクチュエータ18によってショルダーベルト3Sを少なくとも巻き取る方向に駆動するようになっており、ショルダーベルトアンカー11をロック解除した状態で第1回転電動アクチュエータ18がショルダーベルト3Sを巻き取ると、このときの巻き取り力によりショルダーベルトアンカー11は、図44に示すように車体下方に移動し、これに伴ってショルダーベルト3Sの上方支持点Pが下方移動される。
そして、このように構成したこの第3実施形態の乗員保護装置1bにあっても、第1実施形態と同様に車体Bが横転する場合に、図45(a)〜(i)に示すように乗員Mも車体Bと共に横方向に回転し、このとき、乗員Mの着座位置が車体Bの横転方向と同方向側の席である場合、図46(b)に示すように、ショルダーベルトアンカー11を下降して上方支持点Pを車体下方に移動し、車体Bの側方回転角が90度に達した時(図45(c)参照)に、上方支持点Pの下方移動量hを予め設定した最大下方移動位置に設定する(図47(a)参照)。
また、乗員Mの着座位置が車体Bの横転方向とは反対方向側の席である場合、前記同様にショルダーベルトアンカー11を下降して上方支持点Pを車体下方に移動するのであるが、車体Bの側方回転角が180度に達したと判断した時(図45(e)参照)に、上方支持点Pの下方移動量hを予め設定した最大下方移動位置に設定する(図47(b)参照)。
次に、車体Bが前転する場合に、図48(a)〜(i)に示すように乗員Mも車体Bと共に前方に回転し、図49(b)に示すように、アンカーレール52を車体後方に平行移動して上方支持点Pを車体後方に移動し、車体Bの前方回転角が90度に達した時(図48(c)参照)に、上方支持点Pの後方移動量lを予め設定した最大後方移動位置に設定する(図50(a)参照)とともに、この時点でショルダーベルトアンカー11を下降して、図49(c)に示すように、上方支持点Pを車体下方に移動し、車体Bの前方回転角が180度に達した時(図48(e)参照)に、上方支持点Pの下方移動量を予め設定した最大下方移動位置に設定する(図50(b)参照)。
また、車体Bが後転する場合に、図51(a)〜(i)に示すように乗員Mも車体Bと共に後方に回転し、車体Bの後方回転角が90度に達した時(図51(c)参照)に、図52(b)に示すように、ショルダーベルトアンカー11を下降して上方支持点Pを車体下方に移動し、更に、車体Bの後方回転角が180度に達した時(図51(e)参照)に、上方支持点Pの下方移動量を予め設定した最大下方移動位置に設定する(図53(a)参照)とともに、図52(c)に示すように、アンカーレール52を車体後方に平行移動して上方支持点Pを車体後方に移動し、車体Bの後方回転角が270度に達した時(図51(g)参照)に、上方支持点Pの後方移動量を予め設定した最大後方移動位置に設定する(図53(b)参照)。
ところで、この第3実施形態の乗員保護装置1bにあっても、所定のアルゴリズムをもってショルダーベルト3Sの上方支持点Pを移動制御するが、このアルゴリズムは図18に示した第1実施形態のアルゴリズムと同様の制御となるため、本実施形態ではこの第1実施形態のアルゴリズムを用いるものとして省略する。
以上の構成によりこの第3実施形態の乗員保護装置1bによれば、第1実施形態と同様に、車体傾斜センサー30および傾斜方向センサー31により、車体Bの転覆方向および転覆時の回転角を検出して乗員Mの挙動を推定でき、その乗員Mの挙動に応じて下方移動手段10aと後方移動手段20の少なくとも一方によってショルダーベルトアンカー11を下方移動してショルダーベルト3Sの上方支持点Pを下方に移動制御するとともに、アンカーレール52を後方に平行移動して上方支持点Pを車体後方に移動制御することにより、ショルダーベルト3Sによる乗員Mの拘束方向を、回転方向に応じて乗員Mに作用する遠心力とは反対方向として、乗員Mの移動を効果的に拘束できる。
また、シートクッション2Aに設けた重量センサー32により乗員が着座している左・右座席2の位置を検出することにより、乗員Mの着座位置に応じて適正に乗員を拘束することができ、車体Bが横方向もしくは前後方向に転覆した場合に、乗員Mの着座位置にかかわらず乗員の左右方向と前方と上方の移動を確実に拘束して、乗員Mが車室内構成部材に干渉するのを防止もしくは抑制して、乗員の保護機能を確保することができる。
図54〜図71は本発明の第4実施形態を示し、前記第1〜第3実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図54は便宜上ドアを取り外して示す車両の側面図、図55は乗員保護装置を構成する右側席の斜視図、図56は下方移動手段を(a)の上部と(b)の下部とで示す斜視図、図57は下方移動手段の上部を示す作動状態の斜視図、図58は下方移動手段を(a)の上部と(b)の下部とで示す断面図、図59は下方移動手段のロック状態を示す断面図、図60は下方移動手段のロック状態を示す要部斜視図、図61は下方移動手段のロック解除状態を示す要部正面図、図62は下方移動手段の機能を示す斜視図、図63は横方向転覆時の乗員の挙動イメージを順を追って示す説明図、図64は横方向転覆時のショルダーベルトの作動を(a)の作動前と(b)の作動完了後で示す斜視図、図65は横方向転覆時のショルダーベルトの上方支持点の下方移動量と車体回転角との関係を(a)に乗員着座位置が横方向転覆方向と一致した場合と(b)に乗員着座位置が横方向転覆方向とは反対側である場合とで示すグラフ、図66は前方転覆時の乗員の挙動イメージを順を追って示す説明図、図67は前方転覆時のショルダーベルトの作動を(a)の作動前と(b)の作動途中と(c)の作動完了後とで示す斜視図、図68は前方転覆時のショルダーベルトの上方支持点の動きを(a)の後方移動量と車体回転角との関係と(b)の下方移動量と車体回転角との関係とで示すグラフ、図69は後方転覆時の乗員の挙動イメージを順を追って示す説明図、図70は後方転覆時のショルダーベルトの作動を(a)の作動前と(b)の作動途中と(c)の作動完了後とで示す斜視図、図71は後方転覆時のショルダーベルトの上方支持点の動きを(a)の下方移動量と車体回転角との関係と(b)の後方移動量と車体回転角との関係とで示すグラフである。
この第4実施形態の乗員保護装置1cは、その機能は概ね前記第1実施形態と同様であり、下方移動手段10aは第2実施形態と同様の構成となり、また、後方移動手段20aは第3実施形態と同様の構成となっている。
この第4実施形態の乗員保護装置1cが適用される車両Bは、図54に示すように、第1実施形態と同様に座席2に着座した乗員Mの上体を斜めに拘束するショルダーベルト3Sを備えており、このショルダーベルト3Sの上方支持点Pを、下方移動手段10aによって車体下方に移動するとともに、後方移動手段20aによって車体後方に移動するようになっている。
また、前記乗員保護装置1cは、第1実施形態と同様に車体Bの横転または前転,後転を車体転覆検出手段としての車体傾斜センサー30で検出し、車体Bの横転または前転,後転時の回転状態を車体回転角検出手段としての前記車体傾斜センサー30および傾斜方向センサー31で検出し、乗員Mが着座している左・右座席位置を着座位置検出手段としての重量センサー32で検出するようになっており、これら各センサー30,31,32の信号をコントローラ33で処理して、前記下方移動手段10aと前記後方移動手段20aに駆動信号を出力する。
ここで、この第4実施形態の下方移動手段10aは、図54〜図62に示すように第2実施形態と同様の構成となり、アンカーカバー40を下方移動させることにより、ショルダーベルト3Sの上方支持点Pを下方に移動させるようになっており、その駆動源として第3回転電動アクチュエータ41が用いられる。
また、後方移動手段20aは、図54,図55に示すように第3実施形態と同様の構成となり、アッパレール50とロアレール51とを設けて、アンカーレール52を後方に平行移動することにより、ショルダーベルト3Sの上方支持点Pを車体後方に移動させるようになっており、その駆動源として第2回転電動アクチュエータ25(図39参照)が用いられる。
尚、前記下方移動手段10aおよび前記後方移動手段20aの具体的構造は第2実施形態および第3実施形態と同様であり、それぞれと同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略する。
そして、このように構成したこの第4実施形態の乗員保護装置1cにあっても、第1実施形態と同様に車体Bが横転する場合に、図63(a)〜(i)に示すように乗員Mも車体Bと共に横方向に回転し、このとき、乗員Mの着座位置が車体Bの横転方向と同方向側の席である場合、図64(b)に示すように、アンカーカバー40を下降して上方支持点Pを車体下方に移動し、車体Bの側方回転角が90度に達した時(図63(c)参照)に、上方支持点Pの下方移動量hを予め設定した最大下方移動位置に設定する(図65(a)参照)。
また、乗員Mの着座位置が車体Bの横転方向とは反対方向側の席である場合、前記同様にアンカーカバー40を下降して上方支持点Pを車体下方に移動するのであるが、車体Bの側方回転角が180度に達したと判断した時(図63(e)参照)に、上方支持点Pの下方移動量hを予め設定した最大下方移動位置に設定する(図65(b)参照)。
次に、車体Bが前転する場合に、図66(a)〜(i)に示すように乗員Mも車体Bと共に前方に回転し、図67(b)に示すように、アンカーレール52を車体後方に平行移動して上方支持点Pを車体後方に移動し、車体Bの前方回転角が90度に達した時(図66(c)参照)に、上方支持点Pの後方移動量lを予め設定した最大後方移動位置に設定する(図68(a)参照)とともに、この時点でアンカーカバー40を下降して、図67(c)に示すように、上方支持点Pを車体下方に移動し、車体Bの前方回転角が180度に達した時(図66(e)参照)に、上方支持点Pの下方移動量を予め設定した最大下方移動位置に設定する(図68(b)参照)。
また、車体Bが後転する場合に、図69(a)〜(i)に示すように乗員Mも車体Bと共に後方に回転し、車体Bの後方回転角が90度に達した時(図69(c)参照)に、図70(b)に示すように、アンカーカバー40を下降して上方支持点Pを車体下方に移動し、更に、車体Bの後方回転角が180度に達した時(図69(e)参照)に、上方支持点Pの下方移動量を予め設定した最大下方移動位置に設定する(図71(a)参照)とともに、図70(c)に示すように、アンカーレール52を車体後方に平行移動して上方支持点Pを車体後方に移動し、車体Bの後方回転角が270度に達した時(図69(g)参照)に、上方支持点Pの後方移動量を予め設定した最大後方移動位置に設定する(図71(b)参照)。
ところで、この第4実施形態の乗員保護装置1cにあっても、所定のアルゴリズムをもってショルダーベルト3Sの上方支持点Pを移動制御するが、このアルゴリズムは図36に示した第2実施形態のアルゴリズムと同様の制御となるため、本実施形態ではこの第2実施形態のアルゴリズムを用いるものとして省略する。
以上の構成によりこの第4実施形態の乗員保護装置1cによれば、第1実施形態と同様に、車体傾斜センサー30および傾斜方向センサー31により、車体Bの転覆方向および転覆時の回転角を検出して乗員Mの挙動を推定でき、その乗員Mの挙動に応じて下方移動手段10aと後方移動手段20aの少なくとも一方によってアンカーカバー40を下方移動してショルダーベルト3Sの上方支持点Pを下方に移動制御するとともに、アンカーレール52を後方に平行移動して上方支持点Pを車体後方に移動制御することにより、ショルダーベルト3Sによる乗員Mの拘束方向を、回転方向に応じて乗員Mに作用する遠心力とは反対方向として、乗員Mの移動を効果的に拘束できる。
また、シートクッション2Aに設けた重量センサー32により乗員が着座している左・右座席2の位置を検出することにより、乗員Mの着座位置に応じて適正に乗員を拘束することができ、車体Bが横方向もしくは前後方向に転覆した場合に、乗員Mの着座位置にかかわらず乗員の左右方向と前方と上方の移動を確実に拘束して、乗員Mが車室内構成部材に干渉するのを防止もしくは抑制して、乗員の保護機能を確保することができる。
ところで、本発明の第1〜第4実施形態に示した乗員保護装置1,1a,1b,1cは、それぞれの下方移動手段10,10aおよび後方移動手段20,20aの駆動源として回転電動アクチュエータを用いてあるが、これに限ることなく、図示省略したが爆発により駆動力を与える火薬式アクチュエータと、回転電動アクチュエータと、を併用することにより、回転電動アクチュエータによりショルダーベルト3Sの引き込み量や引き込み力を車体Bの回転角度や回転方向に応じて任意にかつ連続的に制御でき、更に火薬式アクチュエータにより瞬時に乗員の移動を拘束することができるため、乗員保護機能の更なる向上を図ることができる。
また、本発明の乗員保護装置は前記第1〜第4実施形態に例をとって説明したが、これに限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができる。