JP4263158B2 - Hla−eキメラ分子 - Google Patents
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そこで、異種移植に特有な拒絶反応の克服を目的として、非ヒト哺乳類にヒト補体制御因子を発現させる方法(例えば、特許文献1)、霊長類やヒトには存在しないが非ヒト哺乳類に存在する糖鎖非還元末端のGalα1,3Gal配列(以下、α-Gal抗原)を減少させる方法(例えば、特許文献2)、α-Gal抗原の生成に係わっているα-1,3ガラクトシル転移酵素の遺伝子をノックアウトする方法(例えば、非特許文献1〜2)などが開発されている。
ヒト細胞はHLAクラスI分子(HLA-A、-B、-C、-E、-F、-G)を発現しているから、ヒト細胞はヒトNK細胞による細胞傷害を受けない。一方、非ヒト哺乳類細胞はヒトHLAクラスI分子を発現していないから、ヒトNK細胞による細胞傷害を受ける。そこで、非ヒト哺乳類細胞をヒトHLA-A、HLA-B、HLA-C又はHLA-Gの遺伝子で形質転換し、ヒトNK細胞による細胞傷害を回避する方法が開発された(特許文献3)。しかしHLA-A、HLA-B とHLA-Cは多型であり、それぞれ175種類、344種類と90種類の対立遺伝子が存在するから、それぞれのHLAに対応可能な非ヒト哺乳類細胞を調製することは実際的でなかった。
そこで、HLA-EとHLA-Gが多型でないことに着目して、HLA-EとHLA-Gの利用が試みられた。その結果、非ヒト哺乳類細胞の表面にHLA-Gを発現させることは比較的容易であるが、ヒトNK細胞による細胞傷害抑制活性は低いこと、逆に非ヒト哺乳類細胞の表面にHLA-Eを発現させることは容易でないがヒトNK細胞による細胞抑制活性は高いこと、が分かった(非特許文献4)。
また非ヒト哺乳類細胞表面のHLA-E発現量を向上させる目的で、HLA-E、β2ミクログロブリン及びHLA-A2のリーダーペプチド(Val-Met-Ala-Pro-Arg-Thr-Leu-Val-Leu)をコードする塩基配列、又はHLA-Gのリーダーペプチド(Val-Met-Ala-Pro-Arg-Thr-Leu-Phe-Leu)をコードする塩基配列を用いる試みもなされた。しかし、これら形質転換体のHLA-Eの発現量やNK細胞の細胞傷害抑制活性は十分でなかった(非特許文献5)。
(1)HLA-E分子のα2ドメインの全部又は一部を、HLA-G1分子のα2ドメインの全部又は一部に置換したHLA-Eキメラ分子、
(2)前記(1)と共に、HLA-E分子のシグナルペプチド(SP)を、HLA-G1分子のSPの一部を改変した改変型SPに置換したHLA-Eキメラ分子、又は
(3)前記(2)と共に、HLA-E分子のα1ドメイン及びα2ドメインのアミノ酸配列の一部を、それぞれHLA-G1分子のα1ドメイン及びα2ドメインのアミノ酸配列の一部に置換したHLA-Eキメラ分子、
のそれぞれをコードする塩基配列を作成し、それらを用いて非ヒト哺乳類細胞を形質転換したところ、HLA-Eキメラ分子の発現量が増加すると共に、ヒトNK細胞による細胞傷害活性に対する抵抗性を増加することを見出して本発明を完成させた。
即ち、本発明は、非ヒト哺乳類細胞にヒトNK細胞による細胞傷害活性に対する抵抗性を賦与するHLA-Eキメラ分子、及びそれらをコードする塩基配列、並びに当該塩基配列で形質転換された非ヒト哺乳類細胞及び非ヒト哺乳動物を提供する。
なお、改変型SPとは、SPのアミノ酸配列の1又は2以上のアミノ酸が置換若しくは欠失され、又は1又は2以上のアミノ酸が付加された配列をいい、例えば、HLA-G1分子のSP(配列番号11)を改変したSP(Met Ala Val Met Ala Pro Arg Thr Leu Val Leu Leu Leu Ser Gly Ala Leu Thr Leu Thr Glu Thr Trp Ala:配列番号21、以下、改変型SPという)が例示される。
また、HLA-E分子のシグナルペプチド(SP)、α1ドメイン、α2ドメイン、α3ドメイン及び膜貫通(TM)ドメインのアミノ酸配列をそれぞれ配列番号1〜5に示し、またそれらの塩基配列をそれぞれ配列番号6〜10に示す。
またHLA-G1分子のSP、α1ドメイン、α2ドメイン、α3ドメイン及びTMドメインのアミノ酸配列をそれぞれ配列番号11〜15に示し、またそれらの塩基配列をそれぞれ配列番号16〜20に示す。
(1)改変型SPを有すると共に、HLA−E分子のα2ドメインのアミノ酸番号91−182(α1ドメインのN末端からの番号である。以下同様)がHLA-G1分子のα2ドメインのアミノ酸番号91−182に置換された以外はHLA−E分子であるHLA−Eキメラ分子とそれをコードする塩基配列。当該キメラ分子において、SP、α1ドメイン、α2ドメイン、α3ドメイン及びTMドメインのアミノ酸配列をそれぞれ配列番号21〜25に示し、またそれらの塩基配列をそれぞれ配列番号26〜30に示す;
(2) 改変型SPを有すると共に、HLA−E分子のα2ドメインの後半部分のアミノ酸番号137-182がHLA-G1分子のα2ドメインの後半部分のアミノ酸番号137-182に置換された以外はHLA−E分子であるHLA−Eキメラ分子とそれをコードする塩基配列。当該キメラ分子において、SP、α1ドメイン、α2ドメイン、α3ドメイン及びTMドメインのアミノ酸配列をそれぞれ配列番号31〜35に示し、またそれらの塩基配列をそれぞれ配列番号36〜40に示す;
(3) 改変型SPを有すると共に、HLA-E分子のα2ドメインの後半部分のうちのその前半部分のアミノ酸番号137-150をHLA-G1分子のα2ドメインの後半部分のうちその前半部分のアミノ酸番号137-150に置換された以外はHLA−E分子であるHLA−Eキメラ分子とそれをコードする塩基配列。当該キメラ分子において、SP、α1ドメイン、α2ドメイン、α3ドメイン及びTMドメインのアミノ酸配列をそれぞれ配列番号41〜45に示し、またそれらの塩基配列をそれぞれ配列番号46〜50に示す;
(4) HLA-E分子のSP又は改変型SPを有し、HLA-E分子のα2ドメインのアミノ酸番号147がシステインに置換された以外はHLA−E分子であるHLA−Eキメラ分子とそれをコードする塩基配列。当該キメラ分子において、HLA-E分子のSP を有するキメラ分子のSP、α1ドメイン、α2ドメイン、α3ドメイン及びTMドメインのアミノ酸配列をそれぞれ配列番号51〜55に示し、またそれらの塩基配列をそれぞれ配列番号56〜60に示し、また改変型SPを有するキメラ分子のSP、α1ドメイン、α2ドメイン、α3ドメイン及びTMドメインのアミノ酸配列をそれぞれ配列番号61〜65に示し、またそれらの塩基配列をそれぞれ配列番号66〜70に示す;
(5) HLA-E分子のSP又は改変型SPを有し、HLA-E分子のα1ドメインのアミノ酸番号11がアラニンに置換されていると共に、α2ドメインのアミノ酸番号147がシステインに置換されている以外はHLA−E分子であるHLA−Eキメラ分子とそれをコードする塩基配列。当該キメラ分子において、HLA-E分子のSP を有するキメラ分子のSP、α1ドメイン、α2ドメイン、α3ドメイン及びTMドメインのアミノ酸配列をそれぞれ配列番号71〜75に示し、またそれらの塩基配列をそれぞれ配列番号76〜80に示し、また改変型SPを有するキメラ分子のSP、α1ドメイン、α2ドメイン、α3ドメイン及びTMドメインのアミノ酸配列をそれぞれ配列番号81〜85に示し、またそれらの塩基配列をそれぞれ配列番号86〜90に示す;及び
(6)前記(1)から(5)の何れかのHLA-Eキメラ分子をコードする塩基配列の一つで形質転換され作製された、ヒトNK細胞による細胞傷害活性に対する抵抗性を賦与された非ヒト哺乳類細胞又は非ヒト哺乳動物。
また、ヒトHLAクラスI分子は、立体構造的に、α1ドメインとα2ドメインで形成される溝に、シグナルペプチド(SP)に由来するオリゴペプチドを挟み込んで抗原提示する。
前述のように、非ヒト哺乳類細胞をHLA-Gの遺伝子を用いて形質転換させることは比較的容易であるが、ヒトNK細胞傷害活性抑制能は低い。逆に、非ヒト哺乳類細胞をHLA-Eの遺伝子を用いて形質転換させれば、より高いヒトNK細胞傷害活性抑制能を得られるが、形質転換させること自体が容易でない。そこで、ヒトNK細胞の細胞傷害活性に対する抵抗性を非ヒト哺乳類細胞に賦与することを目的として、HLA-G1分子とHLA-E分子の分子内ドメインを入れ換えたHLA-Eキメラ分子をコードする塩基配列を作製し、非ヒト哺乳類の細胞株を形質転換し、抗HLA抗体(B9.12.1、コスモバイオ)を使用して発現強度の増減をFACS解析し、鋭意検討した。そして後記の実施例が示すように、次に掲げるHLA-Eキメラ分子をコードする塩基配列で形質転換された非ヒト哺乳類細胞のHLA-E発現量は増加し、ヒトNK細胞の細胞傷害活性に対する抵抗性が増加することを見出した。
(2)HLA−E分子のSPを上記改変SPと置換すると共に、HLA−E分子のα2ドメインの後半部分(アミノ酸番号137-182)をHLA-G1分子のα2ドメインの後半部分(アミノ酸番号137-182)に置換したHLA−Eキメラ分子(配列番号31〜40参照)、
(3) HLA−E分子のSPを上記改変SPと置換すると共に、HLA-E分子のα2ドメインの後半部分のうちのその前半部分(アミノ酸番号137-150)をHLA-G1分子のα2ドメインの後半部分のうちその前半部分(アミノ酸番号137-150)に置換したHLA−Eキメラ分子(配列番号41〜50参照)、
(4)HLA-E分子のSPを上記改変SPと置換する又は置換しないで、HLA-E分子のα2ドメインのアミノ酸番号147のセリンをHLA-G1分子のα2ドメインのアミノ酸番号147のシステインに置換したHLA−Eキメラ分子(配列番号51〜60及び配列番号61〜70参照)、及び
(5) HLA-E分子のSPを上記改変SPと置換する又は置換しないで、HLA-E分子のα1ドメインのアミノ酸番号11のセリン及び同α2ドメインのアミノ酸番号147のセリンのそれぞれをHLA-G1分子のα1のアミノ酸番号11のアラニン及び同α2のアミノ酸番号147のシステインに置換したHLA−Eキメラ分子(配列番号71〜80及び配列番号81〜90参照)。
また当該導入遺伝子をマイクロインジェクション法により非ヒト哺乳類の受精卵に注入すれば、ヒトNK細胞の細胞傷害活性に対する抵抗性を有する細胞、組織、臓器から成る非ヒトトランスジェニック哺乳動物を調製することができる。本発明における非ヒトトランスジェニック哺乳動物は、ヒト以外の哺乳動物であれば特に限定されず、例えば、ブタ、マウス、ラット、ハムスター、ウシ、ウマ、ヒツジ、ウサギ、イヌ、ネコなどが例示され、異種移植を考慮すると、ドナーとして好適なブタが好ましい。
さらに、ヒトNK細胞の細胞傷害活性に対する抵抗性を有する非ヒト哺乳類細胞をドナー細胞として核移植法を適用すれば、ヒトNK細胞の細胞傷害活性に対する抵抗性を有する細胞、組織、臓器から成る非ヒトクローン哺乳動物を調製することができる。これらの非ヒトトランスジェニック哺乳動物又は非ヒトクローン哺乳動物の作製方法としては、公知の方法及び至適条件を適宜選択すればよい。
実施例1
各種HLA-Eキメラ分子の非ヒト哺乳類細胞での発現(1)
表1に記載の構成から成るアミノ酸配列をコードする塩基配列を発現ベクターであるpCXN(チキンのβアクチンプロモーター、CMVのエンハンサーを有する)に導入した。次に各導入遺伝子をCHO細胞に導入し、抗HLA抗体(Pan-Class I抗体、B9.12.1、コスモバイオ)を用いてFACS解析し、発現量の相対値を求めた。その結果を表1に示す。なお、発現ベクターの作製、形質転換などの操作は、遺伝子組換技術の常法に準じて行った(以下同様)。
各種HLA-Eキメラ分子の非ヒト哺乳類細胞での発現(2)
表2に記載の構成から成るアミノ酸配列をコードする塩基配列を発現ベクターであるpCXNに導入した。次に各導入遺伝子をCHO細胞に導入し、抗HLA抗体を用いてFACS解析した。その結果を表2に示す。
HLA-Eキメラ分子を発現する非ヒト哺乳類細胞のヒトNK細胞の細胞傷害活性に対する抵抗性
表3に記載の構成から成るアミノ酸配列をコードする塩基配列を発現ベクターであるpCXNに導入した。次に各導入遺伝子をブタ血管内皮細胞(SEC)に導入し、各安定細胞株を作製した。各形質転換SEC細胞にヒトNK様細胞(YT)を5:1の割合で作用させ(37℃、4時間)、SECから遊離される乳酸脱水素酵素(LDH)を指標としてヒトNK細胞の細胞傷害活性を測定し、細胞傷害率の相対値を求めた。その結果を表3に示す。
Claims (3)
- 下記のアミノ酸配列を有するHLA-Eキメラ分子。
(1)HLA-E分子の配列番号1に係るアミノ酸配列を、配列番号21に係るアミノ酸配列に置換すると共に、HLA-E分子のα2ドメインのアミノ酸配列(配列番号3)のアミノ酸番号(α1ドメインのN末端からの番号、以下同様)147のセリンを、システインに置換したアミノ酸配列;又は
(2)HLA-E分子の配列番号1に係るアミノ酸配列を、配列番号21に係るアミノ酸配列に置換すると共に、HLA-E分子のα1ドメインのアミノ酸配列(配列番号2)のアミノ酸番号11のセリンをアラニンに置換し、HLA-E分子のα2ドメインのアミノ酸配列(配列番号3)のアミノ酸番号147のセリンをシステインに置換したアミノ酸配列。 - 請求項1に記載される各HLA-Eキメラ分子をコードする遺伝子。
- 請求項2に記載される遺伝子により形質転換された非ヒト哺乳動物細胞又は非ヒト哺乳動物。
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