JP4267810B2 - 炭化珪素半導体装置の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭化珪素(以下、SiCと記す)半導体基板(以下、SiC基板と記す)を用いたSiC半導体装置の製造方法に係り、特に、SiC基板に不純物拡散層を形成する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、SiC半導体装置におけるSiC基板への不純物の局所的ドーピング技術としては、例えば特開平8−316164号公報に記載された技術が知られている。
【0003】
上記従来技術は、SiC基板の表面に不純物をドーピングした層を形成した後に、SiC基板を500℃〜1500℃に加熱しながら、基板表面側から水素イオンまたはγ線を照射して不純物を拡散させるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前述の如く、上記従来のSiC基板へ不純物を拡散させる方法においては、SiC基板を所定の高温に加熱しながら、水素イオンまたはγ線を照射することによって不純物を拡散させるようにしていた。
【0005】
したがって、水素イオン照射を行なった場合には、イオン照射によって基板表面にダメージが生じてしまう。また、γ線を照射する場合には、γ線の照射機が必要となるが、このγ線の照射機は広く普及しているものではなく、高価なので、コストが高くなってしまう。
【0006】
本発明の目的は、基板表面にダメージを生じることなく、低コストでSiC基板に不純物拡散領域を形成することのできるSiC半導体装置の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、不純物を導入したSiC基板の格子間シリコン原子の数を増加させることにより、不純物の拡散定数を増大させ、上記課題を解決して、不純物拡散層を形成するものである。
【0008】
すなわち、本発明の請求項1のSiC半導体装置の製造方法は、炭化珪素半導体基板の表面に加熱しながら不純物イオンを加速して注入する工程と、前記注入した不純物を加熱して活性化して不純物ドーピング層を形成する工程と、前記不純物ドーピング層を水蒸気雰囲気中で熱酸化させることで、前記半導体基板の格子間シリコン原子の数を増加させることにより、前記不純物を前記半導体基板の裏面に向かって拡散させて、不純物拡散層を形成する工程とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2では、前記半導体基板が第1導電型であり、前記不純物が第2導電型であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項3では、前記熱酸化は、酸化雰囲気の全圧を1としたときの水蒸気分圧が0.2以上の水蒸気雰囲気中で行なうことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項4では、前記不純物は、窒素またはほう素であることを特徴とする。
【0014】
【発明の効果】
本発明の請求項1のSiC半導体装置の製造方法によれば、SiC基板の格子間シリコン原子の数を増加させることにより、不純物の拡散定数を増大させ、深い不純物拡散層を形成することができる。したがって、従来のように水素イオン照射によるSiC基板表面にダメージを生じることなく、また、γ線照射を行う必要もないため、高価なγ線の照射機が不要なので、低コストでSiC基板に不純物拡散領域を形成することができる。また、熱酸化を水蒸気雰囲気中で行なうことにより、不純物の拡散定数が著しく増大し、SiC基板表面にダメージを生じることなく、低コストで不純物拡散領域を形成することができる。
【0015】
また、本発明の請求項2では、第1導電型のSiC基板表面に第2導電型の不純物拡散層を、SiC基板表面にダメージを生じることなく、低コストで形成することができる。
【0018】
また、本発明の請求項3では、熱酸化は酸化雰囲気の全圧を1としたときの水蒸気分圧が0.2以上の水蒸気雰囲気中で行なうことにより、不純物の拡散定数が著しく増大し、SiC基板表面にダメージを生じることなく、低コストで不純物拡散領域を形成することができる。
【0019】
また、本発明の請求項4では、不純物は、窒素またはほう素を用いることにより、両元素の共有結合半径がSiCの共有結合半径0.97よりも小さいため、不純物の拡散定数を効果的に増大させることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0021】
図1(A)〜(D)は、本発明のSiC半導体装置の製造方法の実施の形態を示す工程断面図である。本実施の形態では、SiC基板の格子間シリコン原子数の増加方法として、熱酸化を利用し、pn接合を形成するプレーナ型pn接合ダイオードの例を用いて説明する。
【0022】
まず、図1(A)に示すように、キャリア濃度1×1018cm−3のp型SiC単結晶基板1上に、キャリア濃度2×1016cm−3のp型SiCエピタキシャル成長膜2を熱CVD法により形成した後、低温CVD法によりシリコン酸化膜(SiO2膜)からなるイオン注入マスク3を形成する。次いで、SiC基板1を800℃に加熱しながら、それぞれ加速電圧30、60、100、150keV、ドーズ量8×1014、1.4×1015、2.8×1015、3.4×1015cm−2、総ドーズ量8.4×1015cm−2の条件で窒素イオン4を、マスク3を通して局所的に注入する。5は注入した窒素イオンである。
【0023】
次に、バッファード弗酸水溶液によりマスク3を除去した後、Ar雰囲気中にて1700℃、1分間の熱処理を行い、注入した窒素5を活性化させ、図1(B)に示すように、不純物ドーピング層6を形成する。
【0024】
その後、水蒸気を含む酸化雰囲気中にて、1100℃、420分間熱酸化を行い、不純物ドーピング層6の窒素を拡散させ、図1(C)に示すように、n型不純物拡散層7を形成する。8はこの熱酸化により形成される熱酸化膜である。なお、このときの雰囲気は、酸化雰囲気の全圧を1としたとき、水蒸気分圧を0.2以上とした。
【0025】
図2にSIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy:2次イオン質量分析法)により分析した窒素原子の深さ方向分布を示す。図1(A)における窒素イオン注入直後、および図1(B)の1700℃、1分間の熱処理後における窒素原子の分布は、図2のAに示すように、該熱処理前後で変化せず、接合深さは約0.5μmである。これに対して、図1(C)における1100℃、420分間の水蒸気雰囲気中での熱酸化後の接合深さは、図2のBに示すように、接合深さは約1.1μmになっている。この拡散長から求めた拡散定数は、約2.0×10−13cm/sであった。この値は、従来報告されているSiC中の窒素の拡散定数より約2桁大きい値である(Sov. Tech. Phys. Lett., Vol.8(1982) pp.120)。
【0026】
次に、熱酸化膜8上にフォトレジスト膜(図示省略)を形成し、該フォトレジスト膜にアノード電極形成用のパターニングを行った後、バッファード弗酸水溶液による熱酸化膜8のウェットエッチングにより、図1(D)に示すように、熱酸化膜8にコンタクト開口部9を形成し、n型不純物拡散層7側にNiからなるアノード電極10、p型SiC基板1側にAlからなるカソード電極11を形成し、Ar雰囲気中にて1000℃、2分間の熱処理を行って、プレーナ型pn接合ダイオードを完成させた。ここで、AlはSiC基板1の表面と反応することで合金層が形成され、オーミックコンタクトが得られる。
【0027】
このように、本実施の形態では、SiC基板1の表面に不純物(窒素イオン4)を導入する工程(図1(A))と、表面に不純物(注入窒素イオン5)を導入したSiC基板1の格子間シリコン原子の数を増加させることにより、不純物ドーピング層6(図1(B))の不純物をSiC基板1の裏面に向かって拡散させて、不純物拡散層7を形成する工程(図1(C))とを備えたものである。
【0028】
上記実施の形態に示したように、本発明によれば、SiC基板に形成した不純物ドーピング層に対し、水蒸気雰囲気中で熱酸化すると、SiC基板の格子間シリコン原子の数が増加する。これにより不純物の拡散定数が増大し、深い不純物拡散層を形成することができる。水蒸気雰囲気中で熱酸化を行った場合に、不純物の拡散定数が増大する理由は、以下に述べるとおりである。
【0029】
図3は、本発明において水蒸気雰囲気中で熱酸化を行った場合に、不純物の拡散定数が増大する理由を説明するための図である。
【0030】
図3において、12はSi原子、13はC原子、14は自己格子間原子、15は空孔、16はドーパント・自己格子間原子対、17はドーパント・空孔対である。
【0031】
結晶中に存在する点欠陥(ここでは、図3の自己格子間原子14、空孔15)は、その周辺に歪み場を形成したり、電子を捕らえてクーロン場を生じることが知られている(ReV. Mod. Phys., Vol.61(1989) pp.289)。
【0032】
このため、点欠陥は、ドーパント(不純物)と対になり、歪み場を緩和したり、クーロン場を遮蔽することにより、系全体のエネルギーを下げようとする。すなわち、図3に示すように、共有結合半径がSiCの共有結合半径より小さいドーパントは、系のエネルギーを低下するために、自己格子間原子14を引き寄せてドーパント・自己格子間原子対16を形成する。一方、共有結合半径がSiCの共有結合半径より大きいドーパントは、機械的な歪みエネルギーを低下するために、空孔15を引き寄せてドーパント・空孔対17を形成する。
【0033】
通常、格子位置に置換されたドーパントは、隣接する原子(SiCの場合、Si原子、もしくはC原子)と、強固に共有結合しているため、他の格子位置に移動することはできない。しかし、ドーパント周辺に点欠陥が存在する場合、点欠陥はドーパント・点欠陥対、つまり、ドーパント・自己格子間原子対16、ドーパント・空孔対17を形成しようとし、その結果、ドーパントと点欠陥が入れ替わり、ドーパントは元の格子位置を外れることになる。すなわち、ドーパントは、結晶中での拡散が可能な状態になる。このため、ドーパントの拡散定数Dは、定性的に次式(1)で与えられる。
【0034】
D/Deq=fi(Ci/Cieq)+(1−fi)(Cv/Cveq)…(1)
前式(1)中のfiは、ドーパントの種類によって決まる定数で、ドーパント・自己格子間原子対16もしくはドーパント・空孔対17を形成し、ドーパントが拡散する割合を示している。すなわち、自己格子間原子14と対を形成するドーパントの場合は、fiの値はほぼ1に近くなり、空孔15と対を形成するドーパントの場合は、fiの値はほぼ零に近くなる。また、Ciは自己格子間原子密度、Cvは空孔密度、Deqは熱平衡状態における拡散定数、Cieqは熱平衡状態における自己格子間原子密度、Cveqは熱平衡状態における空孔密度である。
【0035】
前式(1)から明らかなように、用いるドーパントと自己格子間原子密度Ci、空孔密度Cvが決まれば、一意的に拡散定数Dが決まる。
【0036】
SiCの場合、SiとCの結合が強固であるため、Siの熱拡散に用いられる温度領域においても自己格子間原子密度Ci、空孔密度Cvが小さく、そのため、ドーパントの拡散定数Dが小さい。SiC基板表面に形成した不純物ドーピング層に対し、熱酸化を行うと、SiCが酸化される際の体積膨張に伴って酸化膜/SiC基板界面において格子間Si原子が生じ、SiC基板中へと基板裏面に向かって拡散する。その結果、前式(1)中の自己格子間原子密度Ciが増大し、ドーパントの拡散定数Dが増大する。したがって、酸化によって効率よくドーパントの拡散速度を増大させるためには、酸化時間中の単位時間におけるドーパントの拡散定数Dをいかに増大させるか、すなわち、単位時間当たりに酸化膜/SiC基板界面において発生する格子間Si原子の量をいかに増大するかが重要になる(以上、請求項1、2に関して)。
【0037】
乾燥酸素雰囲気中での通常の熱酸化による酸化方法の場合、SiCの酸化膜成長速度が小さいため、単位時間当たりに酸化膜/SiC基板界面において発生する格子間Si原子の量は少なく、ドーパントの拡散速度を効率よく増大させることは困難である。
【0038】
本発明者は、特に、水蒸気を含む酸化雰囲気の全圧を1としたとき、水蒸気分圧0.2以上の酸化雰囲気中で熱酸化を行うと、酸化反応が著しく促進され、酸化膜/SiC基板界面において多量の格子間Si原子が発生するため、SiC基板中の格子間Si原子の数が急激に増加し、ドーパントの拡散定数Dが上記通常の熱酸化を行った場合と比較して著しく増大し、Siの拡散速度を効率よく増大させることが可能であることを見出した(以上、請求項3、4、5に関して)。
【0039】
また、本発明において、ドーパントとして例えば窒素あるいはほう素を用いた場合、両元素の共有結合半径がSiCの共有結合半径0.97よりも小さいため、前式(1)中における定数fiの値はほぼ1になり、したがって、前式(1)の右辺は第1項のみになる。すなわち、自己格子間原子密度Ciのみがドーパントの拡散定数Dに影響することになり、ドーパントの拡散速度をより効果的に増大させることが可能である(以上、請求項6に関して)。
【0040】
また、本発明によると、SiC基板表面に形成した不純物ドーピング層においては、不純物は酸化を行った箇所のみが拡散するので、不純物ドーピング層形成後、拡散を行いたくない箇所を例えばシリコン窒化膜などによって保護して、酸化を行うことにより、選択的に深い不純物拡散層を形成することが可能である。
【0041】
また、ドーパントの拡散長は酸化時間によって制御することが可能であるため、従来の高い加速電圧によるイオン注入は不要であり、150keV程度の低い加速電圧で1μm前後のpn接合を形成することが可能である。
【0042】
さらに、酸化反応のみを利用して拡散定数Dを増大するので、不純物ドーピング層に対して水素イオン照射やγ線照射を行う必要もないから、SiC基板表面にダメージを生じることなく、また、高価なγ線の照射機が不要なので、低コストでSiC基板に不純物拡散領域を形成することができる。
【0043】
以上本発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。例えば、上記実施の形態では、半導体基板の格子間シリコン原子の数を増加させるのに、熱酸化を利用したが、外部からシリコンを導入し、半導体基板の格子間シリコン原子の数を増加させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)〜(D)は、本発明のSiC半導体装置の製造方法の実施の形態を示す工程断面図である。
【図2】SIMSにより分析した窒素原子の深さ方向分布を示す図である。
【図3】本発明において不純物の拡散定数が増大する理由を説明するためのドーパント・点欠陥対を示す図である。
【符号の説明】
1…p型SiC単結晶基板、2…p型SiCエピタキシャル成長膜、3…イオン注入マスク、4…窒素イオン、5…注入窒素イオン、6…不純物ドーピング層、7…n型不純物拡散層、8…熱酸化膜、9…コンタクト開口部、10…Niアノード電極、11…Alカソード電極、12…Si原子、13…C原子、14…自己格子間原子、15…空孔、16…ドーパント・自己格子間原子対、17…ドーパント・空孔対。
Claims (4)
- 炭化珪素半導体基板の表面に加熱しながら不純物イオンを加速して注入する工程と、
前記注入した不純物を加熱して活性化して不純物ドーピング層を形成する工程と、
前記不純物ドーピング層を水蒸気雰囲気中で熱酸化させることで、前記半導体基板の格子間シリコン原子の数を増加させることにより、前記不純物を前記半導体基板の裏面に向かって拡散させて、不純物拡散層を形成する工程と
を備えたことを特徴とする炭化珪素半導体装置の製造方法。 - 前記半導体基板が第1導電型であり、前記不純物が第2導電型であることを特徴とする請求項1記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
- 前記熱酸化は、酸化雰囲気の全圧を1としたときの水蒸気分圧が0.2以上の水蒸気雰囲気中で行なうことを特徴とする請求項1記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
- 前記不純物は、窒素またはほう素であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
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