JP4270466B2 - NADase、SNIおよびSLO遺伝子を含むオペロンから発現するタンパク質の製造方法、それにより得られるタンパク質およびその使用 - Google Patents
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Description
例えば、非特許文献2および3には、溶血性連鎖球菌の培養上清からNADaseをその活性を保持した状態で精製したことが記載されている。しかしながら、大腸菌等の異種宿主細胞でのNADaseの発現は未だ成功していない。これは、NADaseが異種宿主細胞に対して極めて強い毒性を示すためである。
例えば、特許文献1には、溶血性連鎖球菌の培養上清から完全長SLOを製造(精製)する方法が記載されている。しかしながら、溶血性連鎖球菌のSLO産生量は低く、また、自身が産生するプロテアーゼによる分解のために、溶血性連鎖球菌の培養上清からの完全長SLOの精製収率が低いという問題がある。
非特許文献5には、SLO遺伝子を高コピー数プラスミドにサブクローニングしたところ、宿主である大腸菌は溶菌しやすく、また増殖も遅く、さらにはSLO遺伝子自体が不安定であり脱落が生じたこと、ならびに、SLO遺伝子を低コピー数プラスミドに移したところ、SLO遺伝子は安定化したがSLOの産生量はわずかであったことが記載されている。
非特許文献6には、特定のN末端欠失型SLO(シグナルペプチド配列を含むN末端側の75アミノ酸残基を除いた496アミノ酸残基に相当するSLO)をマルトース結合タンパク質(MBP,42kDa)との融合タンパク質とすることで、SLOの大腸菌での大量発現に成功したことが記載されている。これは、完全長ではないが、大腸菌で初めてSLOの大量発現に成功した例である。
非特許文献7には、大腸菌における特定のN末端欠失型SLO(シグナルペプチド配列を含むN末端側の103アミノ酸残基を除いた468アミノ酸残基に相当する領域をコードするSLO)の大量発現に成功したことが記載されている。
しかしながら、大腸菌での完全長SLOの大量発現は未だ成功していない。これは、SLOのN末端近傍の32−75アミノ酸残基付近の領域が大腸菌に対して何らかの毒性を示すと考えられるためである(非特許文献5−7)。
SLOのようなコレステロール依存性の細胞障害毒素(cholesterol-dependent cytolysin)は、分子構造と機能が類似した大きなグループを形成しており、化膿レンサ球菌である Streptococcus属だけでなく、Bacillus、Clostridium、Listeria属などの細菌も産生すること、およびそれらのアミノ酸配列は高い相同性を示すことが知られている。しかしながら、SLOはこれらグループの中で最も分子量が大きく、また、そのN末端領域は他のグループには存在せず、溶血性連鎖球菌に特徴的である。このようなことから、完全長SLOおよびそのN末端断片は溶血性連鎖球菌感染症のための臨床検査薬(抗体作製用の抗原としても)だけでなく、病原機構を分子レベルで明らかにするための研究ツールとしても有用であると考えられる。従って、完全長SLOまたは上記領域を含むSLO断片の製造方法が開発できれば、純度の高い抗原が大量に得られ、また、交差反応性を実質的に有しないASLOの作製も可能になると考えられることから、それらを高純度で大量かつ安価に製造する方法の開発が求められている。
〔1〕配列番号2のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有し且つNADase阻害活性を有するポリペプチド、又は、配列番号2のアミノ酸配列に、1又は2個のアミノ酸の欠失、置換、付加、及び挿入からなる群より選ばれる1以上の修飾が施され且つNADase阻害活性を有するポリペプチド。
〔2〕NADaseが溶血性連鎖球菌由来NADaseである、上記1に記載のポリペプチド。
〔3〕NADaseが配列番号4で表されるアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するポリペプチドであるか、又は、配列番号4のアミノ酸配列に、1又は2個のアミノ酸の欠失、置換、付加、及び挿入からなる群より選ばれる1以上の修飾が施されたポリペプチドである、上記〔1〕又は〔2〕に記載のポリペプチド。
〔4〕溶血性連鎖球菌由来である、上記〔1〕〜〔3〕のいずれか1つに記載のポリペプチド。
〔5〕15分間の60℃での加熱処理後にも80%以上の活性、又は、15分間の100℃での加熱処理後にも70%以上の活性を保持し得ることを特徴とする、上記〔1〕〜〔4〕のいずれか1つに記載のポリペプチド。
〔6〕配列番号1で表されるポリヌクレオチドと95%以上の相同性を有するポリヌクレオチドであり且つ請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又は、配列番号1で表わされるポリヌクレオチドの相補配列とハイストリンジェント条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドであり且つ上記〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
〔7〕溶血性連鎖球菌由来である、上記〔6〕に記載のポリヌクレオチド。
〔8〕上記〔6〕又は〔7〕に記載のポリヌクレオチドを有する発現ベクター。
〔9〕上記〔8〕に記載の発現ベクターを含む、形質転換体。
〔10〕形質転換体が大腸菌である、上記〔9〕に記載の形質転換体。
〔11〕以下の(a)又は(b)のいずれか1つを含む、NADase阻害剤。
(a)請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリペプチド
(b)請求項8に記載の発現ベクター
〔12〕上記〔11〕に記載のNADase阻害剤を含む、医薬。
〔13〕上記〔11〕に記載のNADase阻害剤を含む、試薬。
〔14〕溶血性連鎖球菌感染症の治療薬である、上記12に記載の医薬。
〔15〕上記〔1〕〜〔5〕のいずれか1つに記載のポリペプチドに対する抗体。
〔16〕上記〔1〕〜〔5〕のいずれか1つに記載のポリペプチドと、NADaseとを含む、複合体。
〔17〕NADaseが溶血性連鎖球菌由来NADaseである、上記〔16〕に記載の複合体。
〔18〕NADaseが配列番号4で表されるアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するポリペプチドであるか、又は、配列番号4のアミノ酸配列に、1又は2個のアミノ酸の欠失、置換、付加、及び挿入からなる群より選ばれる1以上の修飾が施されたポリペプチドである、上記〔16〕又は〔17〕に記載の複合体。
〔19〕上記〔1〕〜〔5〕のいずれか1つに記載のポリペプチドと、NADaseとを接触させることを含む、上記〔16〕〜〔18〕のいずれか1つに記載の複合体の製造方法。
〔20〕以下(a)〜(d)の工程を含む、NADaseの製造方法:
(a)上記〔6〕又は〔7〕に記載のポリヌクレオチドを第1ユニット、NADaseをコードするポリヌクレオチドを第2ユニットとする、第1及び第2のユニットを有する共発現ベクターを作成する工程;
(b)上記共発現ベクターを導入した形質転換体を作成する工程;
(c)上記形質転換体に、上記〔1〕〜〔5〕のいずれか1つに記載のポリペプチドを、NADaseと共発現させて、上記〔16〕に記載の複合体を得る工程;
(d)上記工程で得られた複合体から、上記〔1〕〜〔5〕のいずれか1つに記載のポリペプチドを解離させて、インタクトNADaseを得る工程:
〔21〕NADaseが溶血性連鎖球菌由来NADaseである、上記〔20〕に記載の製造方法。
〔22〕NADaseが配列番号4で表されるアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するポリペプチドであるか、又は、配列番号4のアミノ酸配列に、1又は2個のアミノ酸の欠失、置換、付加、及び挿入からなる群より選ばれる1以上の修飾が施されたポリペプチドである、上記〔20〕又は〔21〕に記載の製造方法。
〔23〕形質転換体が大腸菌である、上記〔20〕に記載の製造方法。
〔24〕大腸菌がTOP10株である、上記〔23〕に記載の製造方法。
〔25]請求項20〜24のいずれか1項に記載の製造方法によりNADaseを製造する工程を含む、抗NADase抗体の製造方法。
〔26〕以下の工程(a)、(b)を含む、溶血性連鎖球菌による感染症の治療薬のスクリーニング方法:
(a)被験物質が、上記〔1〕〜〔5〕のいずれか1つに記載のポリペプチドと、NADaseとを含む複合体の形成を抑制し得るか否かを評価する工程;
(b)該複合体の形成を抑制し得る被験物質を選択する工程。
〔27〕以下の工程(a)、(b)を含む、溶血性連鎖球菌による感染症の治療薬のスクリーニング方法:
(a)被験物質が、上記〔1〕〜〔5〕のいずれか1つに記載のポリペプチドによる、NADase活性の阻害を解除し得るか否かを評価する工程;
(b)該阻害を解除し得る被験物質を選択する工程。
〔28〕NADaseが溶血性連鎖球菌由来NADaseである、上記〔26〕又は〔27〕に記載のスクリーニング方法。
〔29〕NADaseが配列番号4で表されるアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するポリペプチドであるか、又は、配列番号4のアミノ酸配列に、1又は2個のアミノ酸の欠失、置換、付加、及び挿入からなる群より選ばれる1以上の修飾が施されたポリペプチドである、上記〔26〕〜〔28〕のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
本発明の発現ベクターは、例えば、医薬または試薬、あるいは目的ポリペプチドの大量発現に有用である。詳細には、本発明のSNIおよびNADase発現ベクターは、上記の通り医薬および/または試薬として使用できるのみならず、宿主細胞でのSNIおよびNADaseの大量発現、ならびに自身が精製用タグとして機能し得る融合タンパク質の作製などにも有用である。本発明のSLO発現ベクターは、完全長SLOまたはその毒性領域を含む部分ペプチドの大量発現などに有用である。従って、このような発現ベクターを含む形質転換体および当該形質転換体を用いる目的ポリペプチドの製造方法もまた有用である。
本発明の抗体は、例えば、SNI、NADaseまたはSLOの検出・定量、あるいはそれらの機能阻害による医薬または試薬などとして有用である。詳細には、本発明のSLO抗体は、SLOに対する特異性が高く交差反応しないため、試薬として特に有用である。
本発明の複合体およびその製造方法は、例えば、NADaseの製造、NADaseまたはSNIあるいはそれらの部分ペプチドを有するタンパク質の精製、ならびに本発明のスクリーニング方法に有用である。
本発明のスクリーニング方法は、例えば、連鎖球菌感染症の治療薬の開発に有用である。
本発明は、連鎖球菌NADaseインヒビター(streptococcal NADase inhibitor:SNI)またはその部分ペプチドを提供する。本発明者らは、SNIの発現に初めて成功し、また、その機能の実証にも併せて成功した。NADaseに対する細菌性インヒビターの存在は、Bacillus subtilis、Proteus vulgaris、Proteus rettgeriおよびMycobacterium butyricumでは知られていたが、連鎖球菌では初めてである。しかも、熱安定性に関して、従来のNADaseインヒビターは、60℃で15分間加熱することにより完全に不活化される(Acta Path. Microbiol. Scandinav. 69: 277-286 (1967))のに対し、SNIはそのような条件でも活性を保持し得る。本発明のSNIは、NADase阻害活性を有する連鎖球菌由来ポリペプチドである限り特に限定されないが、例えば、配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列からなるポリペプチドであり得る。
本発明は、本発明のSNIをコードするポリヌクレオチドあるいはその部分ヌクレオチドを提供する。本発明のSNIポリヌクレオチドは、配列番号1で表されるヌクレオチド配列と同一または実質的に同一のヌクレオチド配列であり得る。本発明のSNIポリヌクレオチドあるいはその部分ヌクレオチドは、例えば、本発明のSNIまたはその部分ペプチドの作製に有用であり得る。
本発明は、NADase、SNIおよびSLO遺伝子を含むオペロンから発現するタンパク質の調製に有用な発現ベクターを提供する。なお、本発明の発現ベクターは、下記を参照することで、自体公知の分子生物学的手法により作製できる。例えば、分子生物学的手法については、Molecular Cloning, 2nd edition, J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press (1989)を参照のこと。
本発明は、SNIまたはその部分ペプチドの発現ベクター(以下、必要に応じてSNI発現ベクターと省略する)を提供する。
本発明は、NADaseまたはその部分ペプチドの発現ベクター(以下、必要に応じてNADase発現ベクターと省略する)を提供する。
本発明は、溶血性連鎖球菌に由来する完全長SLOまたは大腸菌に毒性を示し得る領域を含むその部分ペプチドの発現ベクター(以下、必要に応じてSLO発現ベクターと省略する)を提供する。SLO発現ベクターは、溶血性連鎖球菌に由来する完全長SLOまたは大腸菌に毒性を示し得る領域を含むその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチド、および該ポリヌクレオチドに機能的に連結された誘導プロモーターを含む。
本発明は、NADase、SNIおよびSLO遺伝子を含むオペロンから発現するタンパク質の調製に有用な形質転換体、またはこのようなタンパク質の解析を可能とする形質転換体を提供する。
本発明は、SNIまたはその部分ペプチドを発現し得る形質転換体(以下、必要に応じてSNI形質転換体と省略する)を提供する。
本発明は、NADaseまたはその部分ペプチドを発現し得る形質転換体(以下、必要に応じてNADase形質転換体と省略する)を提供する。NADaseは全般的に宿主細胞に毒性を示すため宿主細胞でのNADaseの発現は困難であり、特に連鎖球菌由来NADaseは大腸菌等の宿主細胞に対する強い毒性を示すため連鎖球菌由来NADaseの組換えタンパク質の調製には未だ成功していない。しかし、本発明者らは、宿主細胞でのNADaseまたは宿主細胞に対する毒性作用を有するその部分ペプチドの製造を可能にするためには、SNIまたは該毒性作用に対する中和作用を有するその部分ペプチドを共発現する形質転換体を作製すればよいことを見出した。
本発明は、溶血性連鎖球菌に由来する完全長SLOまたは大腸菌に毒性を示し得る領域を含むその部分ペプチドを大量に発現し得る形質転換体(以下、必要に応じてSLO形質転換体と省略する)を提供する。
本発明は、本発明の形質転換体を用いるポリペプチドまたはその部分ペプチドの製造方法を提供する。例えば、本発明の製造方法は、本発明の形質転換体を培養し、目的のポリペプチドまたはその部分ペプチドを産生させ、次いで回収することを含む。本発明の製造方法はまた、本発明の形質転換体が誘導プロモーターを有する発現ベクターを含む場合、誘導プロモーターに対する誘導剤を培地に添加し、培養することを含み得る。
本発明は、SNIまたはその部分ペプチドに対する抗体(以下、必要に応じてSNI抗体と省略する)を提供する。
本発明は、NADaseまたはその部分ペプチドに対する抗体(以下、必要に応じてNADase抗体と省略する)を提供する。本発明者らの研究成果により、宿主細胞を用いた連鎖球菌由来天然型NADaseの組換えタンパク質の調製のみならず、宿主細胞を用いた非天然型NADase(変異型NADaseまたは遺伝子改変NADase)の組換えタンパク質の調製が初めて可能となる。また、このように組換え技術を利用することで、NADaseの部分ペプチドの調製も容易になる。従って、従来よりも、NADase抗体の作製が容易になり得る。
本発明は、SLOまたはその部分ペプチドに対する抗体(以下、必要に応じてSLO抗体と省略する)を提供する。
本発明は、SNIポリヌクレオチドまたはその部分ヌクレオチドに相補的な核酸(アンチセンス核酸)、RNAi誘導核酸(siRNA)、リボザイム、増幅用プライマー対などを提供する。これらは、例えば、本発明のSNIの解析、変異型連鎖球菌の作製などに有用であり得る。
本発明はまた、SNI、NADase阻害活性を有するその部分ペプチドまたはそれらの発現ベクターを含む医薬または試薬を提供する。本発明者らは、未知遺伝子SNIの機能の一端を解明することに初めて成功した。より詳細には、本発明者らは、SNIがNADaseを阻害し得ることを見出した。従って、本発明者らは、SNI、NADase阻害活性を有するその部分ペプチドまたはそれらの発現ベクターを、医薬または試薬として用いることを初めて可能とした。
本発明はまた、SNIまたはNADaseとの結合能を有するその部分ペプチドと、NADase(例、連鎖球菌由来NADase)またはSNIとの結合能を有するその部分ペプチドとを含む複合体を提供する。本発明者らは、SNIがNADaseと結合して複合体を形成し、NADase活性を抑制することを見出した。
(a)SNIまたはNADaseとの結合能を有するその部分ペプチド(未標識)と、NADaseまたはSNIとの結合能を有するその部分ペプチド(未標識)との組合せ;
(b)SNIまたはNADaseとの結合能を有するその部分ペプチド(標識)と、NADaseまたはSNIとの結合能を有するその部分ペプチド(未標識)との組合せ;
(c)SNIまたはNADaseとの結合能を有するその部分ペプチド(未標識)と、NADaseまたはSNIとの結合能を有するその部分ペプチド(標識)との組合せ;
(d)SNIまたはNADaseとの結合能を有するその部分ペプチド(標識)と、NADaseまたはSNIとの結合能を有するその部分ペプチド(標識)との組合せ。
また、双方が標識される場合、標識の種類は同じであっても異なっていてもよいが、好ましくは異なり得る。従って、この場合、異なる精製用タグによる標識、異なる放射性同位体による標識、精製用タグと放射性同位体による標識が利用され得る。
本発明は、連鎖球菌感染症の治療薬または本発明の複合体の解離剤の開発を可能とするスクリーニング方法、ならびに当該スクリーニング方法による得られる物質、および当該物質を含む剤を提供する。
(a)被験物質が本発明の複合体の形成を抑制し得るか否かを評価する工程;
(b)本発明の複合体の形成を抑制し得る被験物質を選択する工程。
以下、本スクリーニング方法を、必要に応じてスクリーニング方法Iと省略する。
(a1)被験物質、SNIまたはNADaseとの結合能を有するその部分ペプチド、およびNADaseまたはSNIとの結合能を有するその部分ペプチドを接触させる工程;
(a2)上記(a1)により形成された本発明の複合体量を測定し、該複合体量を被験物質の不在下で形成された本発明の複合体量と比較する工程。
(a)被験物質が、SNIまたはNADase阻害活性を有するその部分ペプチドによる、NADaseまたはNADase活性を有するその部分ペプチドのNADase活性の抑制を解除し得るか否かを評価する工程;
(b)該抑制を解除し得る被験物質を選択する工程。
以下、本スクリーニング方法を、必要に応じてスクリーニング方法IIと省略する。
(a1)被験物質、基質、SNIまたはNADase阻害活性を有するその部分ペプチド、およびNADaseまたはNADase活性を有するその部分ペプチドを接触させる工程;
(a2)被験物質およびSNIまたはNADase阻害活性を有するその部分ペプチドの存在下でNADaseまたはNADase活性を有するその部分ペプチドのNADase活性を測定し、該活性を被験物質の不在下およびSNIまたはNADase阻害活性を有するその部分ペプチドの存在下での該NADase活性と比較する工程。
(1)材料
ムタノリシン(Mutanolysin)およびリゾチームは、Sigma Chemical Co. (St. Louis, MO. USA) から購入した。アンピシリンナトリウムおよびL(+)-アラビノースは、Wako Pure Chemical Industries, Ltd. (Osaka, Japan) から入手した。DNA修飾および制限酵素は、Takara Shuzo Co., Ltd. (Kyoto, Japan)、Toyobo Co., Ltd. (Osaka, Japan)、またはNippon gene (Toyama, Japan) から得た。タンパク質分子標品は、Bio-Rad (California, USA) およびAmersham Biosciences Corp. (NJ, USA) から購入した。酵母抽出物およびトリプトンは、Difco Laboratories (Detroit, Mich. USA) から購入した。西洋ワサビペルオキシダーゼ・コンジュゲート・Ni-NTAは、Qiagen (Hilden, Germany) から入手した。他の全ての化学物質は、試薬グレードまたは分子生物学グレードであった。
Streptococcus dysgalactiae subsp. equisimilis H46A (Christensen, L.R. (1945) J Gen Physiol 28, 363-383) は、1% 酵母抽出物 (yeast extract) を補充したTodd Hewitt broth (Becton Dickinson, Cockeysville, Md. USA) (THY培地) 中で37℃にて増殖させた。Escherichia coli TOP10 (Invitrogen, Frederick, USA) およびE.coli BL21 (Novagen, Madison, Wisconsin) を、組換えプラスミドのクローニング用宿主として用いた。これらの株は、Luria-Bertani Broth (LB) 中で37℃にて培養した。Escherichia coli TOP10は、L-アラビノースの輸送能を有するが、その代謝能は有しない。エレクトロポレーションを、プラスミドDNAのE.coli TOP10およびBL21への導入のために用いた (J Biochem (Tokyo) 122: 237-242 (1997))。形質転換体を、100μg/mlのアンピシリンを含有するLBプレート上で選択した。
Expand High Fidelity PLUS PCR Systemは、Roche Diagnostics (Penzberg, Germany) からの製品である。酵素およびバッファーを製造業者の推奨に従って用いた。PCR混合液の総量は約50μlであった。通常通り、初期変性 (94℃で90秒)、鎖の変性 (94℃で30秒)、アニーリング (55℃で30秒)、および伸長 (72℃で1kbあたり60秒) の条件下で40サイクルの増幅が行われた。
E.coli TOP10のプラスミドDNAを、QIA prep Spin Miniprep Kit (Qiagen, Hilden, Germany) を用いて抽出した。PCR用のstreptococciゲノムDNAを既報 (Biochim Biophys Acta 1681: 134-149 (2005)) に従い調製した。
プラスミドpBAD/Hisシリーズは、Invitrogen (Groningen, The Netherlands) から購入した。nga-orf1-sloオペロンのnga-orf1領域を、以下のオリゴヌクレオチドプライマーを用いてPCRにより、S. dysgalactiae subsp. equisimilis H46Aの染色体DNAから増幅した。
5’-CGGGATCCGTTAGTGGCAAAGAAGGTAAAAAAAGCG-3’(下線部はBamHI部位:配列番号7)
5’-GGGGTACCCTAAAATGTTTCTATTGTTCTTTCGAC-3’(下線部はKpnI部位:配列番号8)
次いで、このPCR産物をBamHIおよびKpnIで消化し、BglIIおよびKpnIで前処理したpBAD/HisBに連結し、プラスミドpBAD/HisIを作製した(図2A)。
同様に、nga-orf1-sloオペロンのnga領域を、以下のオリゴヌクレオチドプライマーを用いてPCRにより増幅した。
5’-CGGGATCCGTTAGTGGCAAAGAAGGTAAAAAAAGCG-3’(下線部はBamHI部位:配列番号9)
5’-GGGGTACCTTACTTCCTATCTTGCATTTTCTTAATTTTG-3’(下線部はKpnI部位:配列番号10)
次いで、このPCR産物をpBAD/HisBに連結し、プラスミドpBAD/HisIIを作製した(図2A)。
プラスミドpQE30は、Qiagen (Hilden, Germany) から購入した。nga-orf1-sloオペロンのorf1領域を、以下のオリゴヌクレオチドプライマーを用いてPCRにより、S. dysgalactiae subsp. equisimilis H46Aの染色体DNAから増幅した。
5’-CGGGATCCTATAAGGTGCCAAAGGGTTTAGAAC-3’(下線部はBamHI部位:配列番号11)
5’-GGGGTACCCTAAAATGTTTCTATTGTTCTTTCGAC-3’(下線部はKpnI部位:配列番号12)
次いで、このPCR産物をBamHIおよびKpnIで消化し、BamHIおよびKpnIで前処理したpQE30に連結し、6個の連続するヒスチジンタグに融合したOrf1を作製した。
ヌクレオチド配列は、適切なプライマーおよびABI PARISMTM 3100 genetic analyzer (PE Applied Biosystems, California, USA) を用いてジデオキシ法により決定した。ヌクレオチド配列データを、GENETYXコンピュータソフトウェア (Software development Co. Ltd., Tokyo, Japan) を用いて解析した。染色体DNA配列データベースを、BLASTN検索アルゴリズム(http://www.ncbi.nlm.hih.gov/BLAST/) を用いて検索した。
(7)ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)
酵素のSDS-PAGEを、Laemmliの方法 (Nature 227, 680-685 (1970)) により還元条件下で行った。タンパク質バンドを、Coomassie Brilliant Blue (CBB) R-250で染色した。E.coliの全細胞溶解物 (whole cell lysate) を調製するため、0.5 mlの培養物を遠心分離 (16,000×g, 3分, 4℃) し、得られた細菌ペレットを0.1 mlの1×サンプルバッファー (組成:1% SDS, 1% 2-メルカプトエタノール, 20% グリセロール, 50 mM Tris-HCl, pH 6.8) で溶解し、この溶解物を100℃で3分間インキュベートした。残存した細菌粒子および非溶解細胞を、遠心分離 (16,000×g, 5分, 室温) により除去した。同様に、5 mlのS. dysgalactiae subsp. equisimilis H46A培養物を遠心分離 (4,000×g, 15分, 4℃) し、得られた細菌ペレットを、溶解バッファー (組成: 100 U/mlムタノリシン, 10 mg/mlリゾチーム, 50 mMグルコース, 10 mM EDTA,25 mM Tris-HCl, pH 8.0) 中で37℃にて30分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を遠心分離 (4,000×g, 5分, 4℃) により回収し、ペレットを0.1 mlの超純粋中に懸濁させた。次いで、0.1 mlの2×サンプルバッファーを加え、懸濁液を100℃で3分間インキュベートした。残存した細菌粒子および非溶解細胞を遠心分離 (16,000×g, 5分, 室温) により除去した。
E.Coli BL21中で過剰発現させたインタクトOrf1 (成熟型, Hisタグなし) およびS. dysgalactiae subsp. equisimilis H46Aから高度に精製されたインタクトOrf1を12.5%および15% SDS-PAGEに供し、PVDF膜に転写した。PVDF膜をCBB R-250により染色し、19kDaのタンパク質バンドを膜から切り出した。2つのバンドのタンパク質シークエンシングを、PE Applied Biosystems model 491 Procise protein sequencing system (PE Applied Biosystems, California, USA) を用いた自動化エドマン分解により行った。
プラスミドpBAD/HisB (ベクターのみ)、pBAD/HisI (Hisタグ融合NADaseおよびインタクトOrf1) またはpBAD/HisII (Hisタグ融合NADase単独) を担持するE.coli TOP10の一晩培養物を、新鮮培地中に1:20で希釈し、OD660が0.5に達するまで増殖させた。次いで、培養物を0.002%または0.02% L-アラビノースで4時間誘導した。細胞を遠心分離 (5,000×g, 10分, 4℃) により採取し、リン酸緩衝化生理食塩水で洗浄し、BugBusterTMタンパク質抽出試薬 (Novagen, Madison, Wisconsin) 中に室温にて再懸濁した。BugBuster試薬を製造業者の推奨に従い用いた。タンパク質抽出後、不溶性細胞片を遠心分離 (12,000×g, 30分間) により除去し、上清をタンパク質源として用いた。同様に、組換えプラスミドpQE30 (Hisタグ融合Orf1) を担持するE.coli BL21の一晩培養物を、新鮮培地中に1:20で希釈し、OD660が0.5に達するまで増殖させた。次いで、培養物を1 mM IPTGで3時間誘導し、Hisタグ融合Orf1をBugBuster試薬を用いて抽出した。
0.01% アジ化ナトリウムを含有する50 mMリン酸ナトリウムバッファー (pH 7.4) (バッファーA) で予め洗浄したTSKgel BioAssistキレートカラム (Tosoh Co., Tokyo, Japan) に、4 mlの0.1 M Ni2SO4溶液をロードし、次いで500 mMイミダゾールを含有する10 mlのバッファーAで洗浄し、PEEK型PPCMポンプを備えたTosoh HPLCシステム (Tosoh Co., Tokyo, Japan) を用いて、流速1 ml/分により、20 mMイミダゾールを含有するバッファーAで室温にて平衡化した。
組換えプラスミドpBAD/HisI (Hisタグ融合NADaseおよびインタクトOrf1をコード) を担持するE.coli TOP10のBugBuster抽出物を、2LのバッファーAに対し4℃にて一晩透析した。遠心分離 (10,000×g, 20分) による変性物の除去後、抽出液3.5 mlを、20 mMイミダゾールを含有するバッファーAで平衡化したTSKgel BioAssist Ni2+キレートカラムに繰り返しロードした。カラムの非特異的吸着物を洗浄するために、3 M NaClおよび0.01%アジ化ナトリウムを含有する4 mlの0.1 Mリン酸ナトリウムバッファー (pH 7.8) を通過させた。溶出は、流速1.0 ml/分で20℃で行った。タンパク質溶出プロフィールは、UV8000 (Tosoh Co., Tokyo, Japan) を用いて280 nmでの吸光度をモニターすることにより得た。Hisタグ融合NADase/Orf1複合体は、30分間にわたる、バッファーAにおける20-250 mMのイミダゾールの線形勾配により回収した。複合体画分をプールし、バッファーAに対して透析した。
組換えプラスミドpBAD/HisI (Hisタグ融合NADaseおよびインタクトOrf1をコード) を担持するE.coli TOP10のBugBuster抽出物を、2LのバッファーAに対し4℃にて一晩透析した。遠心分離 (10,000×g, 20分) による変性物の除去後、透析した抽出液を、20 mMイミダゾールを含有するバッファーAで平衡化したTSKgel BioAssist Ni2+キレートカラムにアプライした。カラムの非特異的吸着物を洗浄するために、3 M NaClおよび0.01% アジ化ナトリウムを含有する4 mlの0.1 Mリン酸ナトリウムバッファー (pH 7.8) を通過させた。Orf1を、3 Mチオシアン酸ナトリウム (NaSCN) および0.01% アジ化ナトリウムを含有する3 mlの0.1 Mリン酸ナトリウムバッファー (pH 7.8) での溶出により回収した。精製したOrf1を等量の水で希釈し、バッファーAに対して透析した。次いで、カラムに吸着したHisタグ融合NADaseを、バッファーAにおける20-250 mMのイミダゾールの線形勾配により回収した。精製酵素をプールし、バッファーAに対して透析した。
E.coli細胞のBugBuster抽出物を、2LのバッファーAに対し4℃にて一晩透析した。遠心分離 (10,000×g, 20分) による変性物の除去後、透析した抽出液を、20 mMイミダゾールを含有するバッファーAで平衡化したTSKgel BioAssist Ni2+キレートカラムにアプライした。カラムの非特異的吸着物を洗浄するために、3 M NaSCNおよび0.01% アジ化ナトリウムを含有する4 mlの0.1 Mリン酸ナトリウムバッファー (pH 7.8) を通過させた。Hisタグ融合Orf1を、30分間にわたる、バッファーAにおける20-250 mMのイミダゾールの線形勾配により回収した。精製したHisタグ融合Orf1をプールし、バッファーAに対して透析した。
株H46Aの培養上清に、硫酸アンモニウムを80%飽和となるように加え、得られた沈殿を遠心分離(10,000×g, 20分, 4℃)により回収した。ペレットを0.01%アジ化ナトリウムを含有する0.1 Mリン酸ナトリウムバッファー (pH 7.4) 中に溶解し、同バッファーに対して4℃で一晩透析した。遠心分離 (10,000×g, 20分) により得られた、透析した清澄な上清を、ToyoScreen 5ml column (Tosoh Co., Tokyo, Japan) に充填したヒドロキシアパタイトBio-gel HT gel (Bio-Rad Laboratories, CA) に、流速1.0 ml/分で室温にてアプライした。NADaseを、30分間にわたる、0.01% アジ化ナトリウムを含有する0.1 Mから0.5 Mのリン酸ナトリウムバッファー (pH 7.4) の線形勾配により回収した。活性画分をプールし、バッファーAに対して透析した。透析し、部分精製したNADaseをTSKgel BioAssist Ni2+キレート-Hisタグ融合Orf1アフィニティーカラムにアプライした。このカラムには、1 mgの精製Hisタグ融合Orf1が予めロードされ、20 mMイミダゾールを含有するバッファーAで平衡化されていた。カラムの非特異的吸着物を洗浄するために、3 M NaClおよび0.01% アジ化ナトリウムを含有する4 mlの0.1 Mリン酸ナトリウムバッファー (pH 7.8) を通過させた。インタクトNADaseを、3 M NaSCNおよび0.01% アジ化ナトリウムを含有する3 mlの0.1 Mリン酸ナトリウムバッファー (pH 7.8) を流速0.5 ml/分でロードすることにより回収した。各画分 (0.5 ml) を0.5 mlの水を含有するチューブ中に回収し、高濃度のNaSCNによるタンパク質の変性を防いだ。NADase活性画分をプールし、バッファーAに対して可能な限り透析した。
TSKgel BioAssist G3SWXLカラム (Tosoh Co., Tokyo, Japan) を用いて、インタクトNADase (成熟型, Hisタグなし) Orf1およびNADase/Orf1複合体のゲル透過クロマトグラフィーを行った。カラムを、0.15 M リン酸ナトリウムバッファー (pH 6.6) により流速0.5 ml/分で室温にて展開した。タンパク質溶出プロフィールを、280 nm の吸光度をモニターすることにより得た。
溶解溶液 (組成:100 U/ml ムタノリシン, 10 mg/ml リゾチーム, 50mM グルコース, 10 mM EDTA, 25mM Tris-HCl, pH 8.0) 中での消化およびソニケーションにより得た細胞抽出液を、抗Orf1抗体コンジュゲートHiTrap NHS活性化HPカラム (Amersham Biosciences Corp., NJ, USA) にアプライした。カラムの非特異的吸着物を洗浄するために、3 M NaClおよび0.01% アジ化ナトリウムを含有する4 mlの0.1 Mリン酸ナトリウムバッファー (pH 7.8) をアプライし、次いでOrf1を、3 M NaSCNおよび0.01% アジ化ナトリウムを含有する4 mlの0.1 Mリン酸ナトリウムバッファー (pH 7.8) をロードすることにより回収した。Orf1画分をプールし、水に対して透析した。透析物をSpeedvac Concentrator (Sarvant Instrument Inc., NY, USA) を用いて濃縮し、SDS-PAGEに供した。ゲル中のタンパク質をPVDF膜に転写し、CBB R-250で染色した。タンパク質バンドを切り出し、PE Applied Biosystems model 491 Procise protein sequencing systems (PE Applied Biosystems, California, USA) により解析した。
Hisタグ融合Orf1をウサギ抗Orf1抗体の惹起に用いた。簡潔には、完全フロインドアジュバントと混合した約2 mgのHisタグ融合Orf1をウサギに皮下注射した。1 mgのタンパク質および不完全フロインドアジュバントからなるブースター注射を2週間の間隔で3回与えた。イムノグロブリンG画分を、プロテインA-セファロース (Amersham Biosciences Corp., NJ, USA) を用いたアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。
ウサギポリクローナル抗SLO IgG (抗NADase抗体含有) は、American Research Product Inc. (Belmont, MA. USA) から購入した。
SDS-PAGE後、タンパク質を、電気ブロッティングによりSequi-Blot PVDF膜 (Bio-Rad, California, USA) 上に転写した。膜を、0.05% Tween 20を含有するリン酸緩衝化生理食塩水 (PBST) において5% スキムミルクおよび1% ウシ血清アルブミン (BSA) で1時間ブロッキングした。膜をPBSTで洗浄し、次いで一次抗体 (PBST中で1:3,000に希釈) を加え、ブロットを1時間インキュベートした。次に、ヤギaffini-pure IgG ペルオキシダーゼ・コンジュゲート・抗ウサギIgG (Wako Pure Chemical Industries, Ltd) をPBST中で1:3,000希釈したものを加え、1時間インキュベートし、抗体抗原複合体を、製造業者により記載(J Immunol Methods 95, 71-77 (1986)) されるようにPOD免疫染色セット (Wako Pure Chemical Industries, Ltd) により可視化した。Ni-NTA HRPコンジュゲート (Qiagen, Hilden, Germany) (西洋ワサビペルオキシダーゼとカップリングしたニッケル-ニトリロトリ酢酸 (Ni-NTA)) を、Hisタグを有する組換えタンパク質の直接的な検出のために使用し、製造業者の推奨に従い使用した。
S. dysgalactiae subsp. equisimilis H46Aの培養上清および培地単独を、SDS-PAGE (10% アクリルアミド) 上で泳動し、PVDF膜に転写し、精製Hisタグ融合Orf1 (PBST中10μg/ml) の存在下または不在下で室温にて1時間インキュベートした。精製Hisタグ融合Orf1のNADaseへの結合は、「イムノブロット解析」に記載されるような抗Orf1抗体を用いるウエスタンブロット解析によりアッセイした。簡潔には、膜をPBSTで洗浄し、次いでウサギ抗Orf1抗血清を加え、ブロットを1時間インキュベートした。次いで、ヤギaffii-pureIgGペルオキシダーゼ・コンジュゲート・抗ウサギIgGを加え、1時間インキュベートし、抗体抗原複合体をPOD免疫染色により可視化した。培養上清中のNADaseおよび培地単独(コントロール)を、抗NADase抗体を含有する抗SLOポリクローナル抗体によるウエスタンブロット解析によりアッセイした。
NADaseアッセイを、Gerlach et al. (FEMS Microbiol Lett 136, 71-78 (1996)) の方法により行った。1単位の酵素は、37℃では0.010μM NADを7.5分で切断する。
・全細胞抽出物の調製:
対数増殖期の中期培養物 (10 ml) の細胞を、溶解溶液 (組成:100 U/ml ムタノリシン, 5 mg/ml リゾチーム, 0.01% アジ化ナトリウム, 150 mM リン酸ナトリウム, pH 6.6) 中で、37℃にて30分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞ソニケートし、溶解物を低温で遠心分離し、上清をNADaseアッセイに用いた。
・温度安定性:
インタクトOrf1 (成熟型, Hisタグなし) の温度安定性を、0.15 M リン酸ナトリウムバッファー (pH 7.4) において38μg/ml (2.0μM) のタンパク質濃度で決定した。Orf1溶液をEppendorfチューブ中に密閉し、20-100℃で15分間インキュベートした。インキュベーションを、溶液を氷水中で冷却することにより停止し、0.5μlの各溶液を、50 mM リン酸カリウムバッファー (pH 7.5) 中に70μg/ml (1μM) のBSAを含有する10μlの5μg/ml (0.1μM) インタクトNADase (成熟型, Hisタグなし) 溶液に加えた。次いで、混合液を室温で10分間インキュベートし (Orf1とNADaseの最終モル比は1:2)、残存したヒドロラーゼ活性をNADで測定した。コントロールとして、インキュベートしたOrf1溶液の代わりに、BSAのみを含有する50mMリン酸カリウムバッファー (pH 7.5) を用いた。
連鎖球菌NADグリコヒドロラーゼ (NADase) - ストレプトリシンO (SLO) オペロンの調節に関する以前の研究では、ベクターとしてpHY300PLKを使用することにより、E.coliでの遺伝子クラスターのサブクローニングが試みられた。活性SLOの過剰発現はE.coliで達成されたが (Biosci Bisotechnol Biochem 65, 2682-2689 (2001))、NADase遺伝子インサートを有するコロニーは全く得られなかった (Biochim Biophys Acta 1681: 134-149 (2005))。この酵素の潜在的宿主毒性を考慮して、E.coliでの遺伝子発現を厳格に制御するaraBADプロモーター (pBAD) を有する発現ベクターpBADに、NADase遺伝子ngaをサブクローニングした(図2A)。しかし、NADase遺伝子インサートのみを有するE.coli TOP10 (pBAD/HisII) では、L-アラビノース処理による誘導の際に、この酵素タンパク質の産生は生じなかった(図2B)。この組換え株の増殖は誘導剤の不在下でさえも遅く、細胞の一部は凝集した(データ示さず)。一方、ngaからorf1の3’端にわたるより長いインサートを有するpBAD/HisIを担持するE.coli組換え株は、有意な量のNADaseを産生した(図2B)。データベース検索をすると、A群連鎖球菌 (GAS) 株ではOrf1が同様に保存されていたが、他の細菌株では欠失していた(データ示さず)。全長のNADase-SLOオペロンをpBAD制御下に配置し、かつE.coliで発現させた場合、NADaseおよびOrf1に加え、活性SLOが産生された(データ示さず)。
これらの結果は、細胞内連鎖球菌NADaseがE.coliのみではなく、連鎖球菌自体にもおそらく毒性を示すこと、ならびに共発現されたOrf1がその保有菌をNAD枯渇から保護し得ることを示唆する。この可能性を検証するため、NADase-SLOオペロンの未知遺伝子産物Orf1の遺伝的および生化学的性質をその後の実験で調べた。
E.coliにおいてPBAD制御下で共発現させた場合、SDS-PAGEプロフィールにより判定すると、Orf1の量はNADaseのそれよりも多かった(図3A)。Orf1バンドをゲルから切り出し、N末端アミノ酸シークエンシングに直接供した。得られた配列MYKVPKGLEHYQKM(配列番号15)は、NADase-SLOオペロン中のorf1遺伝子のヌクレオチドアライメントより推定したものと同一であった(図3B)。この遺伝子は483塩基対からなり、推定161アミノ酸をコードしていた。ヌクレオチド配列から、このOrf1タンパク質の分子量は18,800であると推定された。
S. dysgalactiae subsp. equisimilis H46A中のorf1の発現を実証するため、組換えE.coli細胞で産生されたHisタグ融合Orf1を用いてウサギを免疫することにより、抗Orf1抗体を調製した(図4A)。この抗体を用いたウエスタンブロット解析は、Orf1タンパク質が産生され、H46A球菌内に専ら局在したことを示した(図4B)。Orf1の分子量は、E.coli中でNADaseと共発現したタンパク質の分子量と一致した(図4B)。SLOおよびNADaseとは異なり、Orf1は連鎖球菌培養上清中に検出されなかった(図4B)。
Orf1タンパク質をS. dysgalactiae subsp. equisimilis H46Aから抽出し、抗Orf1抗体固定化カラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーにより精製した(図5)。この溶出画分をSDS-PAGEに供し、PVDF膜上にブロットした。CBB R-250染色により、細胞内Orf1複合体形態におそらく由来する5つのバンドを検出した(図5)。アミノ末端シークエンシングは、19kDaのバンドがOrf1であることを示した:その配列MYKVPKGLEHYQKM(配列番号15)ならびに分子サイズは、ヌクレオチド配列から推定したもの、および組換えE.coli細胞中で発現したOrf1タンパク質のものと同じであった。計算値50 kDaの2個のバンドは、NADaseの前駆体かもしれなかったが、それらのアミノ酸シークエンシングは、おそらくアミノ末端ブロッキングのため、成功しなかった。翻訳後、約2 kDaの領域がNADaseのC末端からタンパク質分解により除去されることが最近見出されている (Biochim Biophys Acta 1681: 134-149 (2005))。約50 kDaのバンドがNADaseである場合、C末端の除去が球菌細胞で生じているに違いない。計算値34 kDaの濃いバンドは、N末端の187個のアミノ酸が欠失したNADaseタンパク質 (ΔN187) であった。この欠失が、異常な転写または球菌抽出物の調製の際のタンパク質分解によって生じるかは不明である。しかしながら、この短縮型分子が抗Orf1抗体固定化カラムに吸着したという事実は、NADaseのN末端領域がOrf1との相互作用に必須ではないことを示す。16 kDaのバンドは連鎖球菌細胞の溶解に使用された卵白リゾチームであった。非生理学的ではあるが、この溶解酵素はインビトロでOrf1、NADaseまたはOrf1-NADase複合体のいずれかと相互作用するようであった。SDS-PAGEプロフィール(図5)から推測されるように、NADase前駆体に対するOrf1の比率は、E.coliでの比率に対し、連鎖球菌ではそれほど高くなかった(図3A)。
NADase-SLOオペロンのメンバーOrf1は、組換えE.coliおよび連鎖球菌株H46Aにおいて同じ開始コドンから翻訳された。E.coliでの連鎖球菌NADaseの産生がOrf1の共発現を必要とするという事実は、潜在的な毒性を示すNADase活性の抑制におけるこのタンパク質の自己保護的な役割を示唆する。従って、NADaseおよびOrf1のインビトロでの物理的および機能的相互作用を解析するために、以下の実験を行った。
NADaseとの相互作用の解析のため、Hisタグ融合タンパク質としてE.coliで産生されたOrf1を、ニッケル−キレートカラムクロマトグラフィーにより精製した(図4A)。S. dysgalactiae subsp. equisimilis H46Aの培養前後のTHY培地をSDS-PAGEに供し、PVDF膜上にブロットし、2部に分割した。膜の一方を抗SLOポリクローナルIgGを用いるウエスタンブロッティングに直接供し、他の膜は精製Orf1で処理し、次いで抗Orf1抗血清を用いたウエスタンブロッティングに供した(図6)。図4Bに示される通り、連鎖球菌H46A培養物からの消費培地はOrf1およびその交差反応性物質を含有しなかった。NADaseの検出のため、この酵素タンパク質と交差反応する市販の抗SLOポリクローナルIgGを用いた (Cell 104: 143-152 (2001); Biochim Biophys Acta 1681: 134-149 (2005))。
ファーウエスタンブロッティングにより、Orf1は、Orf1処理したPBDF膜で、NADaseバンドに対応するまさにその位置に検出された。この結果はNADase・Orf1間の物理的相互作用を示しているので、NADase活性に対する後者のタンパク質の効果を続いて調べた。
Orf1は細胞内タンパク質であり、その細胞含量はそれ程高くない(図5)。このタンパク質を過剰産生させるため、NADaseとの共発現を、pBAD/HisIを担持するE.coliで試みた。図4Bおよび図5に示されるように、E.coli由来のOrf1の電気泳動プロフィールおよびN末端配列は、H46A由来のものと同じであった。同時に、E.coliでOrf1と共発現したHisタグ融合NADaseを、ニッケル-キレートカラムクロマトグラフィーにより精製した。共発現したOrf1分子は、予期された通り、NADaseとの複合体として存在し、相互の分離は、3M NaCl処理でさえも達成できなかった(図7A)。3M NaSCNを用いてこの複合体を解離させ(図7B)、ゲル透過クロマトグラフィーによりOrf1をさらに精製した。組換えE.coli抽出物中のNADaseは、Orf1との酵素学的に不活性な複合体として存在した。N末端シークエンシングおよび分子サイズの決定は、このNADaseタンパク質が前駆体形態であることを示す。Orf1から解離した場合、NADase前駆体は分泌成熟形態の酵素の比活性とほぼ同じ比活性を示した(データ示さず)。NADase前駆体は少量であり、かつ分泌成熟酵素もまたOrf1と不活性複合体を形成したので、細胞外形態を以下の実験で用いた。従って、NADaseは、Hisタグ融合タンパク質としてE.coliで過剰産生されたOrf1が固定されたカラムを用いたアフィニティーカラムクロマトグラフィーにより、S. dysgalactiae subsp. equisimilis H46Aの培養上清から精製した(図7C)。精製したNADaseをOrf1と混合し、室温で10分間インキュベートした場合、この酵素活性は当価なモル比においてほぼ完全にブロックされた(図7D)。この阻害反応は非常に迅速であり、また、0℃でさえも生じた(データ示さず)。
連鎖球菌内のNADase前駆体がOrf1に結合した不活性複合体として存在する可能性を検証するため、H46A溶解物を等容量の6M NaSCNと混合した。解離処理後、Orf1を抗Orf1抗血清で中和した。表1に示されるように、活性NADaseは連鎖球菌溶解物中に検出できなかったが、NaSCN、次いで抗Orf1抗血清で処理したサンプル1 g (湿重量) あたり、約104ユニットの活性が認められた。活性化抽出物を水で希釈した場合、NADase活性は再度マスクされた(データ示さず)。このことは、NADaseがOrf1と再会合したことを示唆する。これらの結果は、初期のNADaseが、組換えE.coliにおける場合と同様に、連鎖球菌内でOrf1と不活性複合体を形成することを示す。
b 全細胞抽出物は、材料および方法における「NADaseアッセイ」に記載の通り調製し、10μlの抽出物を、10μlの0.1 M Na2HPO4(pH 7.4) および80μlの超純粋と混合した。
c 10μlの全細胞抽出物を、10μlの6 M NaSCN, 0.1M Na2HPO4 (pH 7.4) と室温にて混合し、5秒間のボルテックス後、80μlの超純粋を即座に加えた。
d 10μlの全細胞抽出物を、10μlの0.1 M Na2HPO4 (pH 7.4)、1μlの抗Orf1抗血清、および79μlの超純粋と混合した。
e 1μlの抗Orf1抗血清を、10μlの0.1 M Na2HPO4 (pH 7.4) および89μlの超純粋と混合した。
f 10μlの全細胞抽出物を、10μlの6 M NaSCN, 0.1M Na2HPO4 (pH 7.4) と室温にて十分に混合し、5秒間のボルテックス後、1μlの抗Orf1抗血清および79μlの超純粋を即座に加えた。
NADase・Orf1複合体の分子サイズを決定するため、TSKgel BioAssist G3SWXLカラム (Tosho Co., Tokyo, Japan) を用いて、ゲル透過クロマトグラフィーを行った。図8Aに示されるように、NADase、Orf1およびNADase・Orf1複合体の各々を、明瞭な単一ピークとしてそれぞれ検出した。各保持時間から見積もった分子量は、24 kDa (Orf1)、54 kDa (NADase)および69 kDa (NADase・Orf1複合体) であった。これらの値(図8B)は幾らか高いが、各ヌクレオチド配列から推定した値に近似していた。これらの結果は、NADaseおよびOrf1がモノマータンパク質として存在し、混合した場合に、ヘテロダイマーとしての複合体を形成することを示す。
これまでに記載した細菌NADaesは、細胞内酵素であり、それらの阻害タンパク質は熱に不安定である(Methods Enzymol 66; 137-144 (1980); Science 123: 50-53 (1956))。興味深いことに、Orf1は熱に安定であり、15分間の熱処理後に残存する相対阻害活性は、60℃では計算値で82%、100℃では計算値で72%であった(図9)。精製したOrf1はトリプシンに感受性であり、リシルエンドペプチダーゼにより不活化された(データ示さず)。
NADase-ストレプトリシンOオペロンは、AおよびC群の連鎖球菌で高度に保存されている (Cell 104: 143-152 (2001); Biochim Biophys Acta 1681: 134-149 (2005); Infect Immun 70: 2730-2733 (2002))。Ngaおよびsloに加えて、このオペロンは、未知遺伝子orf1を含んでいた。上記データは、この遺伝子が連鎖球菌NADaseインヒビター (streptococcal NADase inhibitor:SNI) として機能する18.8 kDaタンパク質をコードすることを示す。従って、この遺伝子をsniと標記することは適切であると考えられる。E.coliでの単一ngaのサブクローニングの失敗 (Biochim Biophys Acta 1681: 134-149 (2005)) とは対照的に、この遺伝子のorf1 (sni) との共発現は、nga-orf1インサートを有する組換えプラスミドを担持する異種宿主において安定的に生じた。菌体内での活性NADaseの産生は、酸化還元に必須のNADの分解による毒性効果を引き起こし得る。この潜在的に有害な酵素に対する細菌性インヒビターの存在は、Bacillus subtilis、Proteus vulgaris、Proteus rettgeriおよびMycobacterium butyricumで知られている。これらの細菌のNADaseは、熱不安定性のインヒビターと複合体化した細胞内熱安定タンパク質である (Methods Enzymol 66: 137-144 (1980); Science 123: 50-53 (1956))。これらのインヒビターの遺伝的および機能的調査はこれまでに行なわれていない。一方、溶血性連鎖球菌は、培養培地中に熱不安定性NADaseを分泌する (J Exp Med 104: 577-587 (1956); J Exp Med 106: 15-26 (1957); FEMS Microbiol Lett 136: 71-78 (1996))。細胞外NADaseを産生する連鎖球菌細胞は、この酵素に対するインヒビタータンパク質を含む (Acta Path. Microbiol. Scandinav. 69: 277-286 (1967))。細胞内局在、分子量およびトリプシン感受性は、SNIのそれらに準じる。しかし、熱安定性に関しては、HolmおよびKaijser (Acta Path. Microbiol. Scandinav. 69: 277-286 (1967)) により報告されるインヒビターは、SNIとは異なる。それらの調製は、60℃で15分間加熱することにより完全に不活化されるのに対し、SNIはむしろ熱安定性であった(図9)。
本発明者らによるSLO遺伝子のプロモーター解析 (Biochim Biophys Acta 1681: 134-149 (2005)) からの知見より、SLO遺伝子は自身のプロモーターを持たず、基本的に上流に位置しているNADase遺伝子 (nga) のプロモーターからのreadthroughにより転写が行われるオペロンの一部であることが判明している。そこで、本発明者らは、SLO遺伝子が自身のプロモーターを持っていないこと、およびSLOの細胞毒性を考慮して、遺伝子の発現を大腸菌で厳密に制御できるaraBAD プロモーター (PBAD) を利用した発現ベクターにより、Hisタグを融合させた完全長SLOの大量発現を試みた。Hisタグ法で付加されるアミノ酸配列は短く、多くの場合除去する必要がない。また、特異抗体や精製担体も複数の市販品が入手可能でありコストが安いなどの利点がある。さらに、尿素や塩酸グアニジンのようなタンパク質の変性剤の存在下でも精製が可能で、カラムに結合させたままの状態でリフォールディングできるなどの大きな利点がある (Protein Expr Purif 41: 98-105 (2005))。
次に、本発明者らは、大腸菌をTOP10株から、lonおよびompTの両プロテアーゼ欠損株であるBL21株に変更してSLOを大量発現させた。精製には市販のTSKgel BioAssist Ni2+-chelate column (Tosoh Co., Tokyo, Japan) を用い、このアフィニティーカラムクロマトグラフィーにより一段階で高純度のSLOを精製した(図13)。Hisタグ融合完全長SLOの発現量は、タンパク質量として、LB培地1リットルあたり約6 mg(活性タンパク質量では約3mg)の収量であり、その比活性は748,000 HU/mgタンパク質でGerlach らがStreptococcus dysgalactiae subsp. equisimilis H46Aの培養上清から精製したSLOの750,000 HU/mgとほぼ一致した (Infect Immun 61: 2727-2731 (1993))。なお、本実験で得られたタンパク質量は上記の通りであったが、培養条件の適切な変更(例、培地の至適化による菌密度の向上、および誘導物質による誘導時間の延長)により少なくとも約10-30 mgのタンパク質量を得ることが可能と考えられる。
現在市販されている抗ストレプトリシンO (ASLO) 抗体は溶血性連鎖球菌の培養上清から部分精製したSLOを抗原として用いているため、同じく培養上清中に分泌されるNADグリコヒドロラーゼ (NADase) と交差反応することが知られている (Biochim Biophys Acta 1681: 134-149 (2005); Cell 104: 143-152 (2001))。そこで、本発明者らは、精製したSLOをウサギに免疫することによりASLOを作製し、GAS Sa株および GCS H46A株の培養上清をイムノブロット解析することによりASLOの抗原特異性を評価した(図14)。
その結果、本発明者らが作製したASLOにより、GCS H46A株の培養上清中のSLOが明確なバンドとして高感度で検出された。メジャーバンドの下に見える2本の弱いバンドは、低分子化したSLO分子と思われる。一方、GAS Sa株ではSLOを検出できなかった。これは、GASのSLO産生量は一般に少なく、また自身が産生するプロテアーゼにより速やかに低分子化するためと考えられる。実際、本発明者らは、GAS Sa株におけるSLOの検出や精製は困難であることを報告している (Kimoto et al., Biosci Biotechnol Biochem 67: 2203-2209(2003); Kimoto et al., Biochim Biophys Acta 1681: 134-149 (2005))。なお、このASLOは、大腸菌から精製したHisタグ融合完全長SLO、および溶血性連鎖球菌の産生したSLOの溶血活性を、いずれも中和した (データ示さず)。
次にASLOのNADaseとの交差反応を調べるために、GAS Sa 株および GCS H46A株の培養上清を用いて、抗NADase抗血清によるイムノブロット解析を行った。
その結果、GAS Sa株および GCS H46A株の両培養上清中にNADaseを確認した。両者間でNADaseの分子量がやや異なるのは、GCS H46A株が産生するNADaseは翻訳後にC末端領域が分解されるためである (Kimoto et al., Biochim Biophys Acta 1681: 134-149 (2005))。いずれにしても、SLOとNADaseは予想された分子量でバンドが検出され、両者間の大きさは明らかに異なっていた。また、免疫していないコントロール血清では、いずれのバンドも検出されなかった。
以上より、今回作製したASLOは、これまでの市販品とは異なり、SLOを特異的かつ高感度に検出し得ることが示された。
Claims (29)
- 配列番号2のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有し且つNADase阻害活性を有するポリペプチド、又は、配列番号2のアミノ酸配列に、1又は2個のアミノ酸の欠失、置換、付加、及び挿入からなる群より選ばれる1以上の修飾が施され且つNADase阻害活性を有するポリペプチド。
- NADaseが溶血性連鎖球菌由来NADaseである、請求項1に記載のポリペプチド。
- NADaseが配列番号4で表されるアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するポリペプチドであるか、又は、配列番号4のアミノ酸配列に、1又は2個のアミノ酸の欠失、置換、付加、及び挿入からなる群より選ばれる1以上の修飾が施されたポリペプチドである、請求項1又は2に記載のポリペプチド。
- 溶血性連鎖球菌由来である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチド。
- 15分間の60℃での加熱処理後にも80%以上の活性、又は、15分間の100℃での加熱処理後にも70%以上の活性を保持し得ることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチド。
- 配列番号1で表されるポリヌクレオチドと95%以上の相同性を有するポリヌクレオチドであり且つ請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又は、配列番号1で表わされるポリヌクレオチドの相補配列とハイストリンジェント条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドであり且つ請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
- 溶血性連鎖球菌由来である、請求項6に記載のポリヌクレオチド。
- 請求項6又は7に記載のポリヌクレオチドを有する発現ベクター。
- 請求項8に記載の発現ベクターを含む、形質転換体。
- 形質転換体が大腸菌である、請求項9に記載の形質転換体。
- 以下の(a)又は(b)のいずれか1つを含む、NADase阻害剤。
(a)請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリペプチド
(b)請求項8に記載の発現ベクター - 請求項11に記載のNADase阻害剤を含む、医薬。
- 請求項11に記載のNADase阻害剤を含む、試薬。
- 溶血性連鎖球菌感染症の治療薬である、請求項12に記載の医薬。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリペプチドに対する抗体。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリペプチドと、NADaseとを含む、複合体。
- NADaseが溶血性連鎖球菌由来NADaseである、請求項16に記載の複合体。
- NADaseが配列番号4で表されるアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するポリペプチドであるか、又は、配列番号4のアミノ酸配列に、1又は2個のアミノ酸の欠失、置換、付加、及び挿入からなる群より選ばれる1以上の修飾が施されたポリペプチドである、請求項16又は17に記載の複合体。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリペプチドと、NADaseとを接触させることを含む、請求項16〜18のいずれか1項に記載の複合体の製造方法。
- 以下(a)〜(d)の工程を含む、NADaseの製造方法:
(a)請求項6又は7に記載のポリヌクレオチドを第1ユニット、NADaseをコードするポリヌクレオチドを第2ユニットとする、第1及び第2のユニットを有する共発現ベクターを作成する工程;
(b)上記共発現ベクターを導入した形質転換体を作成する工程;
(c)上記形質転換体に、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリペプチドを、NADaseと共発現させて、請求項16に記載の複合体を得る工程;
(d)上記工程で得られた複合体から、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリペプチドを解離させて、インタクトNADaseを得る工程: - NADaseが溶血性連鎖球菌由来NADaseである、請求項20に記載の製造方法。
- NADaseが配列番号4で表されるアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するポリペプチドであるか、又は、配列番号4のアミノ酸配列に、1又は2個のアミノ酸の欠失、置換、付加、及び挿入からなる群より選ばれる1以上の修飾が施されたポリペプチドである、請求項20又は21に記載の製造方法。
- 形質転換体が大腸菌である、請求項20に記載の製造方法。
- 大腸菌がTOP10株である、請求項23に記載の製造方法。
- 請求項20〜24のいずれか1項に記載の製造方法によりNADaseを製造する工程を含む、抗NADase抗体の製造方法。
- 以下の工程(a)、(b)を含む、溶血性連鎖球菌による感染症の治療薬のスクリーニング方法:
(a)被験物質が、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリペプチドと、NADaseとを含む複合体の形成を抑制し得るか否かを評価する工程;
(b)該複合体の形成を抑制し得る被験物質を選択する工程。 - 以下の工程(a)、(b)を含む、溶血性連鎖球菌による感染症の治療薬のスクリーニング方法:
(a)被験物質が、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリペプチドによる、NADase活性の阻害を解除し得るか否かを評価する工程;
(b)該阻害を解除し得る被験物質を選択する工程。 - NADaseが溶血性連鎖球菌由来NADaseである、請求項26又は27に記載のスクリーニング方法。
- NADaseが配列番号4で表されるアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するポリペプチドであるか、又は、配列番号4のアミノ酸配列に、1又は2個のアミノ酸の欠失、置換、付加、及び挿入からなる群より選ばれる1以上の修飾が施されたポリペプチドである、請求項26〜28のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
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