JP4273293B2 - Grf作用の阻害による新規抗自己免疫疾患剤、及びそのスクリーニング方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、抗自己免疫疾患剤、すなわち自己免疫疾患の予防剤または治療剤に関する。さらに本発明は、抗自己免疫疾患剤の新規有効成分を探索し取得するための方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
慢性関節リウマチ、多発性硬化症、及び全身性エリテマトーデスなどは一見異なった病態を示すが、いずれも病変部位に炎症が認められる疾患である。これらの疾患は、本来自己以外の外来異物を認識するはずの抗体が、自己の組織や細胞の抗原、すなわち自己抗原と反応して生じる自己免疫現象が病因となって生じる自己免疫疾患であると考えられている。
【0003】
自己抗原に対する抗体や自己反応性T細胞は通常健常人にも見られることが知られており、これらが存在するだけでは自己免疫疾患に至らない。これは、通常自己抗原に対する免疫反応には免疫学的寛容(トレランス)の状態が成立しているからである。これに対して、自己免疫疾患患者では、自己抗原に対する上記トレランスが何らかの原因で破綻していると考えられている。その要因としては抗原に関与するもの、抗原提示に関与するもの、及びトレランスの制御に関与するものなどが考えられているが、不明な点が多く、未だそのメカニズムは解明されていない。
【0004】
ところで成長ホルモン放出因子(growth hormone-releasing factor;GRF)(成長ホルモン放出ホルモン(growth hormone-releasing hormone, GHRH)とも呼ばれる)(以下、単に「GRF」ともいう。)は、視床下部より分泌される44個のアミノ酸よりなるペプチドホルモンである。当該GRFは、その受容体(growth hormone-releasing factor receptor;GRFR、以下「GRF受容体」ともいう)に結合し、Gタンパクの活性化を介して細胞内サイクリックAMP(以下、単に「cAMP」ともいう)濃度を上昇させ、結果として下垂体から成長ホルモン(GH)の放出を促進する作用を有している。またGRFは、前記のような経路の他に、副経路として、細胞内cAMP濃度を上昇させることによりProtein Kinase A(PKA)を活性化し、細胞内へのカルシウム流入を増加させることにより成長ホルモンの放出を促進する作用も有している。
【0005】
以上のようにGRFは、成長ホルモンの放出(分泌)との関連性がよく知られているホルモンであり、従来より、成長ホルモンの分泌能を検査し、下垂体性小人症や原発性甲状腺機能低下症を診断するための検査薬として使用されている。しかしながら、当該GRFと自己免疫疾患との関連は、全く知られていなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、新規な作用機序に基づく抗自己免疫疾患剤を提供することである。さらに本発明は、かかる抗自己免疫疾患剤の有効成分となる候補物質を探索し取得するために有用なスクリーニング方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、自己免疫疾患の一つである多発性硬化症の動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(以下、単に「EAE」ともいう。)の発症に対する成長ホルモン放出因子(GRF)の影響について検討していたところ、GRFの作用を阻害することによってEAEの発症が有意に抑制できるという新たな知見を見いだした。
具体的には、GRF受容体(GRFR)遺伝子を人為的に欠損させたホモ欠損マウス(C57BL/6J-Ghrhrlit/lit)(GRFRホモ欠損マウス)及びヘテロ欠損マウス(C57BL/6J-Ghrhrlit/+)(GRFRヘテロ欠損マウス)に対して実験的にEAE発症を誘導したところ、GRFRホモ欠損マウスは全観察期間を通して全くEAEを発症せず、またGRFRヘテロ欠損マウスについても野生型マウスと比較してEAEの発症が有意に抑制されるという結果が得られた。また、GRF受容体に対する公知のGRFアンタゴニストをEAEマウス(EAE発症誘導マウス)に投与したところ、EAE発症を実験的に誘導してもEAEを発症せず、GRF受容体を介したGRFの作用を阻害することによりEAEの発症が有意に抑制できることを確認した。
【0008】
本発明者は、上記の知見、すなわちGRFが自己免疫疾患の発症と関連していること、そして当該GRFの作用を阻害することによって自己免疫疾患の発症が抑制できるという知見から、GRF阻害作用を有する物質が自己免疫疾患の予防剤または治療剤として有効に利用できるとの確信を得た。本発明はかかる知見に基づき完成するに至ったものである。
【0009】
すなわち本発明は、下記に掲げるものである:
項1. 成長ホルモン放出因子阻害作用を有する物質を有効成分とする抗自己免疫疾患剤。
項2. 成長ホルモン放出因子阻害作用が、成長ホルモン放出因子受容体(GRF受容体)を介した成長ホルモン放出因子(GRF)の作用を阻害する作用である、請求項1記載の抗自己免疫疾患剤。
項3. 成長ホルモン放出因子阻害作用が、GRFとGRF受容体との結合を阻害する作用である、項2記載の抗自己免疫疾患剤。
項4. 成長ホルモン放出因子阻害作用を有する物質がGRFのペプチドアナログである、項3記載の抗自己免疫疾患剤。
項5. 成長ホルモン放出因子阻害作用が、GRFの発現又は分泌を阻害する作用であるか、あるいはGRF受容体の発現を阻害する作用である、項1に記載の抗自己免疫疾患剤。
項6. 自己免疫疾患が多発性硬化症または慢性関節リウマチ症である、項1乃至5のいずれかに記載の抗自己免疫疾患剤。
項7. 被験物質の中から成長ホルモン放出因子阻害作用を有する物質を探索する工程を有する、抗自己免疫疾患剤の有効成分のスクリーニング方法。
項8. 成長ホルモン放出因子阻害作用を有する物質を、GRF受容体を介したGRFの作用の阻害を指標として探索することを特徴とする項7に記載のスクリーニング方法。
項9. 成長ホルモン放出因子阻害作用を有する物質を、GRFとGRF受容体との結合阻害を指標として探索することを特徴とする項8に記載のスクリーニング方法。
項10. 下記の工程(i)、(ii)及び(iii)を含む項9に記載の抗自己免疫疾患剤の有効成分のスクリーニング方法:
(i) 被験物質の存在下で、GRF受容体若しくはそのホモログ(以下、「GRF受容体等」という)とGRF若しくはそのホモログ(以下、「GRF等」という)とを接触させる工程、
(ii) 上記GRF受容体等に対するGRF等の結合量を測定し、当該結合量を、被験物質非存在下でGRF受容体等とGRF等とを接触させることによって得られるGRF受容体等に対するGRF等の結合量(対照結合量)と比較する工程、及び
(iii) 上記(ii)の結果に基づいて、対照結合量に比して結合量を低下させる被験物質を選択する工程。
項11. 項10に記載の工程(i)、(ii)及び(iii)に更に:
(iv) 上記(iii)で選択された被験物質の中から、更にGRFと同様の作用を生じない被験物質を選択する工程
を含む、項10に記載の抗自己免疫疾患剤の有効成分のスクリーニング方法。
項12. 成長ホルモン放出因子阻害作用を有する物質を、GRF受容体の発現阻害を指標として探索することを特徴とする項7に記載のスクリーニング方法。
項13. 下記の工程(i)、(ii)及び(iii)を含む項12に記載の抗自己免疫疾患剤の有効成分のスクリーニング方法:
(i)被験物質をGRF受容体を発現可能な細胞と接触させる工程、
(ii)被験物質を接触させた細胞のGRF受容体の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない上記に対応するGRF受容体を発現可能な細胞(対照細胞)のGRF受容体の発現量(対照発現量)と比較する工程、
(iii) 上記(ii)の比較結果に基づいて、対照発現量に比してGRF受容体の発現量を低下させる被験物質を選択する工程。
項14. 成長ホルモン放出因子阻害作用を有する物質を、GRFの発現又は分泌の阻害を指標として探索することを特徴とする項7に記載のスクリーニング方法。
項15. 下記の工程(i)、(ii)及び(iii)を含む項14に記載の抗自己免疫疾患剤の有効成分のスクリーニング方法:
(i)被験物質をGRFを発現可能な細胞と接触させる工程、
(ii)被験物質を接触させた上記細胞のGRFの発現量または分泌量を測定し、該発現量または分泌量を、被験物質を接触させない上記に対応する対照細胞のGRFの発現量(対照発現量)又は分泌量(対照分泌量)と比較する工程、
(iii) 上記(ii)の比較結果に基づいて、対照発現量または対照分泌量に比してGRFの発現量または分泌量を低下させる被験物質を選択する工程。
項16. 抗自己免疫疾患剤が多発性硬化症または慢性関節リウマチの予防または治療薬である、項7乃至15のいずれかに記載のスクリーニング方法。
項17. 項7乃至16いずれか記載のスクリーニング方法により得られる成長ホルモン放出因子阻害作用を有する物質を有効成分とする抗自己免疫疾患剤。
項18. 有効量の成長ホルモン放出因子阻害作用を有する物質と薬学的に許容される担体を含有する抗自己免疫疾患剤。
項19. 成長ホルモン放出因子阻害作用を有する物質と薬学的に許容される担体を含有する抗自己免疫疾患剤を有効量、自己免疫疾患に罹患した被験者に投与することからなる、自己免疫疾患の予防または治療方法。
項20. 自己免疫疾患が多発性硬化症または慢性関節リウマチである、項19に記載の自己免疫疾患の予防または治療方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
本明細書において、アミノ酸、(ポリ)ペプチド、(ポリ)ヌクレオチドなどの略号による表示は、IUPAC−IUBの規定〔IUPAC-IUB Communication on Biological Nomenclature, Eur. J. Biochem., 138: 9 (1984)〕、「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書等の作成のためのガイドライン」(日本国特許庁編)、および当該分野における慣用記号に従う。
【0011】
本明細書において「遺伝子」または「DNA」とは、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖といった各1本鎖DNAを包含する趣旨で用いられる。またその長さによって特に制限されるものではない。従って、本明細書においてDNAとは、特に言及しない限り、ヒトゲノムDNAを含む2本鎖DNAおよびcDNAを含む1本鎖DNA(正鎖)並びに該正鎖と相補的な配列を有する1本鎖DNA(相補鎖)、およびこれらの断片のいずれもが含まれる。また、遺伝子またはDNAは、機能領域の別を問うものではなく、例えば発現制御領域、コード領域、エキソン、またはイントロンを含むことができる。
【0012】
本明細書において「ポリヌクレオチド」とは、RNAおよびDNAのいずれをも包含する趣旨で用いられる。なお、上記DNAには、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAのいずれもが含まれる。また上記RNAには、total RNA、mRNA、rRNA、及び合成のRNAのいずれもが含まれる。
【0013】
本明細書でいう「抗体」には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、またはFabフラグメントやFab発現ライブラリーによって生成されるフラグメントなどのように抗原結合性を有する上記抗体の一部が包含される。
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
I.抗自己免疫疾患剤
前述するように、本発明者は成長ホルモン放出因子(GRF)の作用を阻害することによって自己免疫疾患の発症を抑制乃至は遅延することができることを見いだした。このことから、成長ホルモン放出因子(GRF)の作用を阻害する物質は、自己免疫疾患の予防または治療に有効に利用できると考えられる。本発明の抗自己免疫疾患剤は、かかる知見に基づいて開発されたものであり、GRF阻害作用を有する物質を有効成分とすることを特徴とする。
【0016】
一般に「自己免疫疾患」は、自己の組織を構成する成分に反応する抗体あるいはリンパ球が、体内で持続的に産生されることによって組織障害をきたす疾患であり、大別すると下記に掲げる臓器特異的自己免疫疾患と臓器非特異的自己免疫疾患の2つに分類することができる。
【0017】
(1) 臓器特異的自己免疫疾患:橋本甲状腺炎、原発性粘液水腫、甲状腺中毒症、悪性貧血、Good-pasture症候群、急性進行性糸球体腎炎、重傷筋無力症、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、インスリン抵抗性糖尿病、若年性糖尿病、アジソン病、萎縮性胃炎、男性不妊症、早発性更年期、水晶体原性ぶどう膜炎、交換性脈炎、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、原発性胆汁性肝硬変、慢性活動性肝炎、自己免疫性溶血性貧血、発作性血色素尿症、突発性血小板減少性紫斑病、シェーグレン症候群。
【0018】
(2)臓器非特異的自己免疫疾患:慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、円板状エリテマトーデス、多発性筋炎、強皮症、混合結合組織病。
【0019】
本発明はこれらの「自己免疫疾患」を任意に対象とするものである。好ましくは「実験的自己免疫性脳脊髄炎」と同一若しくは類似のメカニズムによって発症する自己免疫疾患を対象とすることができる。かかる自己免疫疾患として、多発性硬化症、慢性関節リウマチ、及び全身性エリテマトーデスを例示することができる。より好ましくは多発性硬化症及び慢性関節リウマチであり、特に好ましくは多発性硬化症である。
【0020】
また本発明の「抗自己免疫疾患剤」とは、上記各種の自己免疫疾患に対して、その発症を阻害若しくは抑制する作用、その発症を遅延させる作用、発症後その症状を軽減若しくは改善する作用、または疾患を治癒する作用のいずれか少なくとも1つの作用を有するものである。その意味で、本発明の「抗自己免疫疾患剤」は、自己免疫疾患予防剤、自己免疫疾患症状緩和剤、自己免疫疾患改善剤、または自己免疫疾患治療剤と言い換えることもできる。中でも本発明の「抗自己免疫疾患剤」は、自己免疫疾患の発症を阻害若しくは抑制する作用、または発症を遅延させる作用に優れており、自己免疫疾患予防剤として特に有効に使用することができる。
【0021】
ここで本発明が対象とする「成長ホルモン放出因子(growth hormone-releasing factor:GRF)」とは、「従来の技術」の欄に記載されるようにGRF受容体に結合することによって下垂体からの成長ホルモン(GH)放出を促進する作用を有する視床下部ホルモンの一つである。その意味で成長ホルモン放出ホルモン(growth hormone-releasing hormone、GHRH)とも呼ばれる。
【0022】
その塩基配列及びアミノ酸配列は公知であり、例えばGenBank アクセッション番号:NM 021081(塩基配列:配列番号1), NP 066567(アミノ酸配列:配列番号2),NM 031577, NM 010285, AF 242855, U 10156, M 73486, M 31658, 及びM 31654などに記載されている。
【0023】
本発明において「GRF阻害作用」とは、その作用機序の別を問うことなく、上記GRFの機能発現を阻害する作用を広く意味するものである。なお、ここで「GRFの機能発現を阻害する作用」には、GRFの蛋白質合成(GRFの遺伝子発現を含む)や分泌を阻害する作用、及び発現したGRFのGRF受容体を介した作用(シグナル伝達)を阻害する作用が包含される。本明細書では、このようなGRFの機能発現の阻害を単にGRF作用阻害またはGRFの阻害ということもある。
【0024】
これらのGRF阻害作用は、具体的には 1) GRF受容体を介したGRFの作用(シグナル伝達)を阻害する作用、2) GRF受容体の発現を阻害する作用、及び3) GRFの発現又は分泌を阻害する作用に大別することができる。
【0025】
なお、本発明の「GRF阻害作用を有する物質」は、上記に掲げる阻害作用のいずれか少なくとも1つの作用を有する物質であればよく、その形態や性状の別を何ら問うものではない。また、本発明の「GRF阻害作用を有する物質」は、少なくともヒトGRFに対して阻害作用を有するものであればよく、ヒト以外の哺乳類やその他の生物種に由来するGRFに対する阻害作用の有無は、特に制限されない。
【0026】
以下、GRF阻害作用を有する物質について、具体的に説明する。
【0027】
1)GRF受容体を介したGRFの作用を阻害する物質
後述の実施例に示すように、GRF受容体を欠損させることによって自己免疫疾患の発症が抑制されること、及びGRF受容体に対してGRFとGRFアンタゴニストを競合させることによって自己免疫疾患の発症が抑制されることが判明した。この知見は、GRF受容体を介したGRFの作用を阻害する物質、言い換えればGRFのGRF受容体を介したシグナル伝達を阻害する物質は自己免疫疾患に対して抑制的に働き、抗自己免疫疾患剤の有効成分となりえることを裏付けるものである。
【0028】
ここでGRF受容体を介したGRFの作用を阻害する物質は、その作用部位に応じて下記の(1) GRFとGRF受容体との結合を阻害する物質、及び(2) GRF受容体の下流のシグナル伝達系に作用してGRFの細胞内シグナル伝達を阻害する物質、に分類することができる。
【0029】
(1) GRFとGRF受容体との結合を阻害する物質
GRFとGRF受容体との結合を阻害することにより、GRF受容体に対するGRFの作用(シグナル伝達)を阻害することができる。かかる結合阻害作用を有する物質としては具体的には、▲1▼ GRF受容体に結合することにより、GRFのGRF受容体への結合を阻害する物質、または、▲2▼ GRFに結合することにより、GRFのGRF受容体への結合を阻害する物質を挙げることができる。なお、▲1▼の物質は、いわゆるGRF受容体に対してGRFのアンタゴニストとしての作用を有するものであり、自らGRF受容体に結合してもそれ自体がGRFと質的且つ量的に同じ作用(シグナル伝達)を発揮しないことが必要である。ここで、「GRFと同じ作用を発揮しない」とは、GRFと質的に同じ作用を発揮しない場合(GRF機能の喪失)だけでなく、仮にGRFと質的に同じ作用を発揮する場合であっても量的にGRFの作用よりも低減された作用を発揮する場合も含まれる。
【0030】
▲1▼ GRF受容体に結合して、GRFのGRF受容体への結合を阻害する物質かかる物質としては、具体的にはGRF受容体に結合する結合ドメイン(Science, Vol.218, 585(1982)、Biochem. Biophys. Res. Commun., Vol. 123, 854(1984))を有しGRFの機能を欠損したGRF改変体や、抗GRF受容体抗体等を例示することができる。なお、当該GRF受容体に結合する物質は、少なくともヒトGRF受容体に対して結合性を有するものであればよく、ヒト以外の哺乳類やその他の生物種に由来するGRF受容体に対する結合性の有無は、特に制限されない。
【0031】
ここで、上記GRF改変体としては、GRF受容体への結合ドメインだけを有するGRFの改変蛋白質〔または改変オリゴ(ポリ)ペプチド〕、またはGRF受容体への結合ドメイン以外の領域のアミノ酸配列を人為的に任意の数、欠失させるか、他のアミノ酸で置換または挿入(付加)することによって、GRFの機能を喪失してなるGRFの改変蛋白質〔または改変オリゴ(ポリ)ペプチド〕を例示することができる。また、GRF改変体は、前述するように少なくともヒトGRF受容体と結合して該受容体へのヒトGRFの結合を阻害するものであって、且つそれ自体がGRFと同じ作用を発揮しないものであれば、その由来は特に制限されるものではない。
【0032】
なお、例えばGRF受容体に対するヒトGRFの結合ドメインのアミノ酸配列及びそれをコードする塩基配列は、上記文献に示されるように公知である。よって、ヒトGRFの結合ドメインからなるGRF改変体は、これらの情報並びに下記の改変方法から当業者であれば容易に取得することができる。
【0033】
また、GRFのGRF受容体への結合ドメイン以外のアミノ酸領域を人為的に改変する方法も、当業者に公知の手法であり、例えば Molecular Cloning 2nd Edt., Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)等の基本書を参考にして行うことができる。具体的には、サイトスペシフィック・ミュータゲネシス〔Methods in Enzymology, 154, 350, 367-382 (1987) ;同 100, 468 (1983);Nucleic Acids Res., 12, 9441 (1984);続生化学実験講座1「遺伝子研究法II」,日本製化学会編, p.105 (1986)〕などの遺伝子工学的手法、リン酸トリエステル法やリン酸アミダイト法などの化学合成手段〔J. Am. Chem. Soc., 89, 4801 (1967);同 91, 3350 (1969);Science, 150, 178 (1968);Tetrahedron Lett., 22, 1859 (1981);同 24, 245 (1983) 〕、及びこれらの手法を任意に組み合わせることによって実施することができる。
【0034】
なお、改変したGRF蛋白質〔オリゴ(ポリ)ペプチド〕(GRF改変体)が、GRFと同じ作用を発揮しないか否かは、該GRF改変体を動物に投与してGH分泌能を測定することによって評価することができる。
【0035】
また、▲1▼の物質として例示される抗GRF受容体抗体としては、具体的にはGRF受容体の細胞外ドメイン(Nature,Vol.360,p765-768(1992))に対する抗体を例示することができる。なお、当該抗GRF受容体抗体は、少なくともヒトGRF受容体の細胞外ドメインを認識して結合するものであればよく、ヒト以外の哺乳類やその他の生物種に由来するGRF受容体の細胞外ドメインへの認識能や結合能の有無は、特に制限されない。
【0036】
当該抗GRF受容体抗体は、ヒトGRF受容体の細胞外ドメインを有する蛋白質を免疫抗原として常法に従って調製することができ、モノクローナル抗体であってもまたポリクローナル抗体であってもよい。具体的には、これらの抗体は、例えば“Antibodies; A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)”や“Current Protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley and Sons. Section 11. 12-11.13”等の基本書を参考にして容易に作製することができる。ここでヒトGRF受容体の細胞外ドメインを有する蛋白質の取得は、上記文献(Nature)に記載される当該蛋白質のアミノ酸配列及びそれをコードする塩基配列の情報から当業者であれば容易に取得することができる。
【0037】
さらに▲1▼の物質には、その他の蛋白質やペプチド、又は低分子化合物なども含まれる。
【0038】
このうちペプチドとしては、具体的には、ヒトGRF受容体に結合して当該受容体に対するヒトGRFの結合を阻害する作用を有する、GRFのペプチドアナログを例示することができる。当該GRFのペプチドアナログは、それ自身はGRFと同じ作用を持たず、ヒトGRF受容体と結合してヒトGRFに対する拮抗作用を有する、いわゆるGRFのアンタゴニストである。なお、かかるGRFのペプチドアナログは、少なくともヒトGRF受容体に対して結合能を有するものであればよく、ヒト以外の哺乳類やその他の生物種に由来するGRF受容体への結合能の有無、ならびにペプチドの由来の別は、特に制限されない。
【0039】
かかるGRFのペプチドアナログとしては、具体的にはMZ-4-71 ([Ibu0,D-Arg2,Phe(4-Cl)6,Abu15,Nle27]hGHRH-(1-28)Agm)、MZ-4-169 ([Nac0,D-Arg2,Phe(4-Cl)6,Abu15,Nle27]hGHRH-(1-29)NH2)、あるいはMZ-4-181 ([Nac0-His1,D-Arg2,Phe(4-Cl)6,Abu15,Nle27]hGHRH-(1-29)NH2)(以上、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.91, p.12298-12302(1994))、MZ-5-156 ([PhAc0,D-Arg2,Phe(4-Cl)6,Abu15,Nle27]hGH-RH(1-28)Agm)(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.96, p.226-231(1999))、またはJV-1-36 ([PhAc0,D-Arg2,Phe(4-Cl)6,Arg9,Abu15,Nle27,D-Arg28,Har29]hGH-RH(1-29)NH2)、JV-1-38([PhAc0,D-Arg2,Phe(4-Cl)6,Har9,Tyr(Me)10,Abu15,Nle27,D-Arg28,Har29]hGH-RH(1-29)NH2)、JV-1-42 ([PhAc0-His1,D-Arg2,Phe(4-Cl)6,Arg9,Abu15,Nle27,D-Arg28,Har29]hGH-RH(1-29)NH2)(以上、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.97, p.1218-1223(2000))などが例示される。また、国際公開公報 WO95/16707(特に請求項1〜20)、あるいはWO91/16923(特に請求項16)に記載のペプチドアナログを挙げることもできる。
【0040】
また、GRF受容体に結合してGRFのGRF受容体への結合を阻害する作用を有する低分子化合物は、公知の低分子化合物ライブラリー(例えば、ChemBridge Research Laboratories社の低分子化合物ライブラリー等に対して後述する本発明のスクリーニング方法を実施することによって、取得することができる。
【0041】
▲2▼ GRFに結合して、GRFのGRF受容体への結合を阻害する物質
当該物質として抗GRF抗体を例示することができる。ここで抗GRF抗体は、具体的にはGRFのGRF受容体結合ドメイン(Science, Vol.218, 585 (1982)、Biochem. Biophys. Res. Commun., Vol.123, 854 (1984))に対する抗体が挙げられる。なお、かかる抗GRF抗体は、少なくともヒトGRFの受容体結合ドメインを認識し結合するものであればよく、ヒト以外の哺乳類やその他の生物種に由来するGRFへの結合能の有無、ならびに製造原料として用いる抗原(蛋白質、ポリペプチド)の由来の別は、特に制限されない。
【0042】
当該抗GRF抗体は、ヒトGRFの受容体結合ドメインを有するポリペプチド又は蛋白質を免疫抗原として常法に従って調製することができ、モノクローナル抗体であってもまたポリクローナル抗体であってもよい。具体的には、これらの抗体は、前述する各種の基本書を参考にして容易に作製することができる。
【0043】
ここでヒトGRFの受容体結合ドメインを有する蛋白質の取得は、上記文献(Science, BBRC)に記載される当該受容体結合ドメインのアミノ酸配列及びそれをコードする塩基配列の情報から当業者であれば容易に取得することができる。さらに▲2▼の物質には、蛋白質やペプチド、又は低分子化合物などが含まれる。
【0044】
GERに直接結合して、GRFのGRF受容体への結合を阻害する作用を有する例えば低分子化合物は、公知の低分子化合物ライブラリー(例えば、ChemBridge Research Laboratories社の低分子化合物ライブラリー)等に対して後述する本発明のスクリーニング方法を実施することによって、取得することができる。
【0045】
(2)GRFの細胞内シグナル伝達を阻害する物質
「従来の技術」の欄に記述するように、GRFはその受容体(GRF受容体)に結合すると、Gタンパクの活性化を引き起こし、該活性化を介してcAMP濃度を上昇させ、結果として下垂体からの成長ホルモン(GH)の放出を促進する作用を有している。またGRFは、前記の経路の他に、細胞内cAMP濃度を上昇させることによりProtein Kinase Aを活性化し、細胞内へのカルシウム流入を増加させて成長ホルモンの放出を促進する作用も有している。
【0046】
従って、これらのGRFの受容体結合後の細胞内におけるシグナル伝達(GRF受容体の下流でのシグナル伝達)を阻害することによって結果としてGRFの作用を阻害することのできる物質も、本発明のGRF阻害作用を有する物質に含まれる。
【0047】
当該物質としては、GRFの細胞内シグナル伝達に係わる各種因子の発現や作用を誘導(亢進)又は抑制することにより、結果的に上記GRFの作用を実質上阻害して、終局的に成長ホルモン放出促進作用を阻害することのできる物質を例示することができる。
【0048】
具体的には、例えばGRF受容体に共役するGタンパクの発現や作用(活性化)を抑制するようなタンパク質やペプチド、低分子化合物などを挙げることができる。
【0049】
2)GRF受容体の発現を阻害する物質
後述の実施例に示すように、GRF受容体を欠損させることによって自己免疫疾患の発症が抑制されることが判明した。この知見は、GRF受容体の発現を阻害する物質は、自己免疫疾患に対して抑制的に働き、抗自己免疫疾患剤の有効成分となりえることを裏付けるものである。
【0050】
GRF受容体の発現を阻害する物質としては、作用機序の別を問わず、結果としてGRF受容体としての機能を有する蛋白質の産生を阻害する作用を有するものであればよい。例えば、GRF受容体遺伝子の複製、転写または翻訳等の任意の過程を阻害することによって核酸レベルでのGRF受容体(蛋白質)の合成を阻止する作用を有するアンチセンス分子を挙げることができる。
【0051】
なお、ここで対象とする阻害物質は、少なくともヒトGRF受容体の発現を阻害する作用を有するものであればよく、ヒト以外の哺乳類やその他の生物種に由来するGRF受容体に対する発現阻害作用の有無は、特に制限されない。
【0052】
具体的には、GRF受容体遺伝子(GenBank アクセッション番号:NM 000823[配列番号3], AY 008835, AY 008834, AF 184896, AB 022597, AB 022596, L 07380, L 07379などを参照)に相補的なアンチセンスポリヌクレオチドを挙げることができる。
【0053】
なお、上記アンチセンス分子は、上記GRF受容体遺伝子の塩基配列に対して100%相補的な配列を有するポリヌクレオチドである必要はなく、ストリンジェントな条件で、ヒトGRF受容体遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするポリヌクレオチドまたはその改変物〔例えば、修飾ポリ(オリゴ)ヌクレオチドやペプチド核酸等、公知の手法によって設計されるアンチセンス分子を含む〕であってもよい。かかるものとしては、具体的には上記GRF受容体遺伝子の塩基配列の相補配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の相同性を有するものを挙げることができる。
【0054】
またGRF受容体の発現を阻害する物質には、蛋白質、ペプチド、及び低分子化合物等も含まれる。ヒトGER受容体の発現を阻害する作用を有する、例えば低分子化合物は、公知の低分子化合物ライブラリー(例えば、ChemBridge Research Laboratories社の低分子化合物ライブラリー)等に対して後述する本発明のスクリーニング方法を実施することによって、取得することができる。
【0055】
3)GRFの発現又は分泌を阻害する物質
後述の実施例に示すように、GRF受容体を欠損させることによって自己免疫疾患の発症が抑制されること、及びGRF受容体に対してGRFとGRFアンタゴニストとを競合させることによって自己免疫疾患の発症が抑制されることが判明した。この知見は、GRFの生成を阻害する物質、すなわちGRFの発現または分泌を阻害する物質は、自己免疫疾患に対して抑制的に働き、抗自己免疫疾患剤の有効成分となりえることを裏付けるものである。
【0056】
GRFの発現を阻害する物質としては、作用機序の別を問わず、結果としてGRFとしての機能を有する蛋白質の産生を阻害する作用を有するものであればよい。例えば、GRF遺伝子の複製、転写または翻訳等の任意の過程を阻害することによって核酸レベルでのGRF(蛋白質)の合成を阻止する作用を有するアンチセンス分子を挙げることができる。
【0057】
なお、ここで対象とするGRF発現阻害物質は、少なくともヒトGRFの発現を阻害する作用を有するものであればよく、ヒト以外の哺乳類やその他の生物種に由来するGRFに対する発現阻害作用の有無は、特に制限されない。
【0058】
具体的には、GRF遺伝子(GenBank アクセッション番号:NM 021081[配列番号1],NM 031577, NM 010285, AF 242855, U 10156, M 73486, M 31658, 及びM 31654などを参照)に相補的なアンチセンスポリヌクレオチドを挙げることができる。
【0059】
なお、上記アンチセンス分子は、上記GRF遺伝子の塩基配列に対して100%相補的な配列を有するポリヌクレオチドである必要はなく、ストリンジェントな条件で、ヒトGRF遺伝子の塩基配列とハイブリダイズするポリヌクレオチドまたはその改変物であってもよい。かかるものとしては、具体的には上記GRF遺伝子の塩基配列の相補配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の相同性を有するものを挙げることができる。
【0060】
またGRFの発現または分泌を阻害する物質には、蛋白質、ペプチド、及び低分子化合物等も含まれる。GERの発現または分泌を阻害する作用を有する例えば低分子化合物は、低分子化合物ライブラリー(例えば、ChemBridge Research Laboratories社の低分子化合物ライブラリー)等に対して後述する本発明のスクリーニング方法を実施することによって、取得することができる。
【0061】
以上説明するGRF阻害作用を有する物質は、抗自己免疫疾患剤の有効成分として有用である。また抗自己免疫疾患剤の有効成分は、上記に具体的に掲げる物質に特に限定されることなく、下記に記載する本発明のスクリーング方法によって取得することも可能である。
【0062】
従って、本発明が対象とする抗自己免疫疾患剤には、上記のGRF阻害作用を有する物質を有効量含有する製剤、並びに下記に記載するスクリーング方法によって取得されるGRF阻害作用を有する物質を有効量含有する製剤がいずれも包含される。なお、ここでGRF阻害作用を有する物質の有効量は、それを含有する抗自己免疫疾患剤が結果としてGRF阻害効果を発揮するようなGRF阻害作用物質の配合量であればよく、特に制限されるものではない。また抗自己免疫疾患剤は、GRF阻害作用物質以外に薬学的に許容される担体や各種の添加剤を含有していてもよい。
【0063】
かかる担体や添加剤の種類、抗自己免疫疾患剤の形態、並びに抗自己免疫疾患剤の用法(投与形態、投与方法、投与量)については、後述の(III)の欄で詳細に説明する。
【0064】
II .抗自己免疫疾患剤の有効成分のスクリーニング方法
本発明者は、後述する実施例に示すように、GRFの機能発現を阻害することによって自己免疫疾患の発症を抑制することができるという新たな知見を取得した。このことから、GRF阻害作用を有する物質は抗自己免疫疾患剤の有効成分として有用と考えられる。本発明のスクリーニング方法は、かかる知見に基づいて開発されたものであり、被験物質の中からGRF阻害作用を有する物質を探索することによって、抗自己免疫疾患剤の有効成分を取得しようとするものである。
【0065】
本発明のスクリーニング方法が対象とする「GRF阻害作用を有する物質」は、結果としてGRFの機能発現(機能発揮、作用)を阻害し得る物質であればよく、その作用機序を特に限定するものではない。GRF阻害作用として、具体的には、1)GRF受容体を介したGRFの作用(シグナル伝達)を阻害する作用、2)GRF受容体の発現を阻害する作用、及び3)GRFの発現又は分泌を阻害する作用を挙げることができる。また上記1)の阻害作用には、(1)GRFとGRF受容体との結合を阻害する作用、及び(2)GRFの細胞内シグナル伝達を阻害する作用が含まれる。GRF阻害作用を有する物質は、かかるGRF阻害作用の少なくとも1つを有するものであればよい。
【0066】
抗自己免疫疾患剤の有効成分となり得る候補物質としては、核酸、ペプチド、蛋白質、有機化合物(低分子化合物を含む)、無機化合物などを挙げることができる。本発明のスクリーニング方法は、これらの候補物質となりえる物質または該物質を含む試料(これらを総称して「被験物質」という)を対象として実施することができる。なお、候補物質を含む試料(被験物質)には、細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物、微生物培養上清、及び菌体成分が含まれる。
【0067】
本発明のスクリーニング方法は、かかる被験物質の中から上記に掲げるGRF阻害作用を指標として上記GRF阻害作用の少なくとも1つを有する物質を探索することによって実施される。斯くして選別取得される被験物質は、抗自己免疫疾患剤の有効成分として有用である。
【0068】
以下、本発明のスクリーニング方法を、指標とするGRF阻害作用毎に具体的に説明する。
【0069】
1)GRF受容体を介したGRFの作用を阻害する作用を指標としたスクリーニング方法
当該スクリーニング方法は、被験物質の中からGRF阻害作用を有する物質を、GRF受容体を介したGRFの作用(シグナル伝達)に対する阻害を指標として探索し、抗自己免疫疾患剤の有効成分として取得する方法である。
【0070】
ここで探索の指標とする「GRF受容体を介したGRFの作用に対する阻害」としては、(1)GRFとGRF受容体との結合阻害、(2)GRFの細胞内シグナル伝達の阻害を挙げることができる。
【0071】
(1)GRFとGRF受容体との結合阻害を指標としたスクリーニング方法
当該スクリーニング方法は、被験物質の中からGRF阻害作用を有する物質を、GRFとGRF受容体との結合阻害を指標として探索し、抗自己免疫疾患剤の有効成分として取得する方法である。
【0072】
当該スクリーニング方法は、特に制限されず当業者の技術常識に基づいて適宜設計することが可能であるが、一例として、GRF受容体にGRFを接触させた場合と、GRF受容体にGRF及び被験物質を接触させた場合とで、GRF受容体に対するGRFの結合性を比較し評価することを含むスクリーニング方法を挙げることができる。当該スクリーニング方法は、具体的には下記の工程(i)、(ii)及び(iii)を行うことによって実施することができる。
被験物質の存在下で、GRF受容体若しくはGRF受容体ホモログ(これらを纏めて「GRF受容体等」ともいう)とGRF若しくはGRFホモログ(これらを纏めて「GRF等」ともいう)とを接触させる工程、
上記GRF受容体等に対するGRF等の結合量を測定し、当該結合量を、被験物質非存在下でGRF受容体等とGRF等とを接触させることによって得られるGRF受容体等に対するGRF等の結合量(対照結合量)と比較する工程、及び
上記(ii)の結果に基づいて、対照結合量に比して結合量を低下させる被験物質を選択する工程。
【0073】
この場合、GRF受容体若しくはGRF受容体ホモログ(GRF受容体等)とGRF若しくはGRFホモログ(GRF等)との結合阻害は、▲1▼GRF受容体等に結合することによって、GRF等のGRF受容体等への結合を阻害する態様のものであってもよいし、▲2▼GRF等に結合することによって、GRF等のGRF受容体等への結合を阻害する態様のものであってもよく、その別を特に問うものではない。但し、この場合、とりわけ▲1▼の態様の場合は、GRF受容体等に結合してもGRFと同じ作用を発揮しない被験物質を選択することが必要である。このため、上記のスクリーニング方法で選別された被験物質は更に、下記:
(iv)上記(iii)で選択された被験物質の中から、更にGRFと同じ作用を発揮しない被験物質を選択する工程に供することが好ましい。
【0074】
なお、ここで、「GRFと同じ作用を発揮しない」とは、GRFと質的に同じ作用を発揮しない場合(GRF機能の喪失)だけでなく、仮にGRFと質的に同じ作用を発揮する場合であっても量的にGRFの作用よりも低減された作用を発揮する場合も含まれる。
【0075】
上記の選択方法は、特に制限されないが、具体的な方法としては、例えばProc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.91, p12298-12302 (1994) に記載される in vitro系 あるいは in vivo系の方法を挙げることができる。
【0076】
上記本発明のスクリーニング方法で用いられるGRF受容体は、天然物であっても、合成品であってもまた組換え体であっても良い。また当該GRF受容体はヒト由来のものであることが好ましいが、マウスなどヒト以外の哺乳類やその他の生物種に由来するGRF受容体も同様に使用できる。
【0077】
また、上記スクリーニング方法において、GRF受容体に代えてGRFとの結合能を保有する蛋白質またはポリ(オリゴ)ペプチド(例えば、GRFとの結合能を有するGRF受容体の変異体や誘導体)を用いることもできる。なお、本発明において、これらを「GRF受容体ホモログ」と称する。例えばかかるGRF受容体の変異体としては、上記公知のGRF受容体(GenBankアクセッション番号:NM 000823[塩基配列:配列番号3], NP 000814[アミノ酸配列:配列番号4], AY 008835, AY 008834, AF 184896, AB 022597, AB 022596, L 07380, L 07379)に関して天然に存在するアレル変異体、天然に存在しない変異体及び人為的にGRF受容体のアミノ酸配列の一部が欠失、置換、付加または挿入されることによって改変されたアミノ酸配列を有する変異体が包含される。
【0078】
また本発明のスクリーニング方法に使用されるGRF受容体は、必ずしもその全アミノ酸配列を保持する必要はなく、少なくともGRFとの結合部位、例えばGRF受容体の細胞外ドメイン(Nature, vol. 360, p.765-768, (1992))を有していれば良い。すなわち、本発明のスクリーニング方法では、前記のGRF受容体に代えて、少なくともGRFとの結合領域(例えばGRF受容体の細胞外ドメイン)を有する蛋白質またはポリ(オリゴ)ペプチドを用いることもできる。本発明でいう「GRF受容体ホモログ」には、このような蛋白質または(ポリ)ペプチドもまた包含される。更に、上記GRF受容体の細胞外ドメインは、GRFとの結合能が維持されている限り、そのアミノ酸配列の一部が欠失するか、他のアミノ酸残基によって置換、付加または挿入等されていてもよく、かかる改変されたGRF受容体の細胞外ドメインを有する蛋白質または(ポリ)ペプチドも本発明でいう「GRF受容体ホモログ」に包含される。
【0079】
GRF受容体の取得方法としては、以下の方法を例示することができる。
まず、ヒトまたは各種生物種に由来するGRF受容体のアミノ酸配列情報及びそれをコードする塩基配列情報(GenBankアクセッション番号:NM 000823[塩基配列:配列番号3], NP 000814[アミノ酸配列:配列番号4], AY 008835, AY 008834, AF 184896, AB 022597, AB 022596, L 07380, L 07379)をもとに、常法に従ってプローブ又はPCR用のプライマーを作成し、ヒト又は各種生物の脳下垂体前葉細胞由来のcDNAライブラリー等をクローニングすることによってGRF受容体をコードするcDNAを取得する。これらのクローニングは、例えば Molecular Cloning 2nd Edt., Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)などの基本書に従い、当業者ならば容易に行うことができる。
【0080】
次いで調製したGRF受容体のcDNAを、pCAGGS(Gene 108,193-199(1991))、またはpcDNA1.1、pcDNA3.1誘導体(いずれもインビトロジェン社)などの公知の発現ベクターに挿入する。その後、得られた組換えベクターを適当な宿主に導入し培養することにより、導入したGRF受容体のcDNAによってコードされるGRF受容体蛋白質を細胞表面に発現させた形質転換細胞を作製することができる。
【0081】
なお、ここで宿主としては、一般的に宿主細胞として広く普及している哺乳動物細胞株であるL細胞、CHO細胞、C127細胞、BHK21細胞、BALB/c3T3細胞(ジヒドロ葉酸レダクターゼやチミジンキナーゼなどを欠損した変異株を含む)や、COS細胞などが好ましいが、これに限定されることなく、昆虫細胞、酵母細胞、細菌細胞などを用いることも可能である。また、前記GRF受容体発現ベクターの宿主細胞への導入方法としては、公知の導入方法であればどのような方法でもよく、例えばリン酸カルシウム法(J.Virol.,52, 456-467 (1973))、LT-1(Panvera社製)を用いる方法、遺伝子導入用リピッド(Lipofectamine、Lipofectin; Gibco-BRL社製)を用いる方法などが挙げられる。次いで得られた形質転換細胞からGRF受容体を常法に従って単離する。具体的には、例えば R. G. Shorrら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79, 2778-2782 (1982)、J. Biol. Chem. 257, 12341-12350(1982))の方法に従って、上記形質転換細胞を適当な可溶化剤(β-D-オクチルグルコシドなど)で可溶化することによりGRF受容体を含む粗抽出液を調製することができる。さらに該粗抽出液からGRF受容体を精製するには、例えばJ. L. Benovicら (Biochem., 23, 4510-4518 (1984))の方法などの当該技術分野における常法(例えば、抗GRF受容体抗体を付けたアフィニティーカラムの使用など)を用いることができる。
【0082】
またGRF受容体の変異体(GRF受容体の改変されたアミノ酸配列を有する変異体)(GRF受容体ホモログ)は、GRF受容体のアミノ酸配列やそれをコードする塩基配列の情報に基づいて、サイトスペシフィック・ミュータゲネシス〔Methods in Enzymology, 154, 350, 367-382 (1987) ;同 100, 468 (1983);Nucleic Acids Res., 12, 9441 (1984);続生化学実験講座1「遺伝子研究法II」,日本製化学会編, p.105 (1986)〕などの遺伝子工学的手法、リン酸トリエステル法やリン酸アミダイト法などの化学合成手段〔J. Am. Chem. Soc., 89, 4801 (1967);同 91, 3350 (1969);Science, 150, 178 (1968);Tetrahedron Lett., 22, 1859 (1981);同 24, 245 (1983) 〕、及びこれらの手法を任意に組み合わせることによって調製することができる。
【0083】
さらにGRF受容体の細胞外ドメインのみを有するGRF受容体ホモログは、前述するGRF受容体の調製方法において、GRF受容体のcDNAに代えてGRF受容体の細胞外ドメインをコードするcDNAを用いて上記と同様にして形質転換細胞を作製することによって調製することができる。この場合は、形質転換細胞の培養上清中に当該GRF受容体ホモログを分泌させることができる。この場合、例えば、抗GRF受容体抗体またはGRF受容体の細胞外ドメインに対する抗体を付けたアフィニティーカラムを使用することによって、培養上清から当該GRF受容体ホモログを単離精製することができる。また、ペプチドタグを付加した状態で細胞外ドメインが発現生成されるように発現系を構築することによって、該タグに親和性のある物質を付けたカラムを用いて、形質転換細胞の培養上清から当該GRF受容体ホモログを単離精製することができる。
【0084】
なお、ここでGRF受容体の「細胞外ドメイン」をコードするcDNAの塩基配列は 前述するようにNature,Vol.360,765-768(1992) に記載されており、その取得も当業者であれば容易に行うことができる。さらに、当該「細胞外ドメイン」のアミノ酸配列の改変も前述する当業界における公知の方法に従って容易に行うことができる。また、このようにして改変されたGRF受容体(GRF受容体ホモログ)について、GRFとの結合能の有無は、標識したGRFと前記改変されたGRF受容体との結合量を、標識したGRFと天然型GRF受容体との結合量と比較することによって評価することができる。
【0085】
なお、本発明のスクリーニング方法で用いられるGRF受容体またはGRF受容体ホモログ(GRF受容体等)は、単離もしくは更に精製されたGRF受容体等であってもよいが、それらに限定されない。例えば、単離されたGRF受容体等に代えて、GRF受容体等を発現した細胞を用いても良いし、またGRF受容体等を有する細胞膜を用いてもよい。
【0086】
GRF受容体等を発現した細胞としては、前述するGRF受容体等のcDNAを有するベクターを適当な宿主に導入し、培養することによって調製される形質転換細胞を挙げることができる。当該培養形質転換細胞はGRF受容体等を細胞表面に発現しているため、そのまま本発明のスクリーニング方法に用いることができる。
【0087】
またGRF受容体等を有する細胞膜は、上記の形質転換細胞から調製することができる。調製方法の一例として下記の方法を挙げることができる。まず、上記の培養形質転換細胞に低張ホモジネートバッファー(10mM トリス−塩酸緩衝液、1mM EDTA、0.5mM PMSF(phenylmethanesulfonyl fluoride)若しくは1mM AEBSF、5μg/ml アプロチニン、5μg/ml ロイペプチン;pH7.4)を添加し、4℃で30分間程度静置して細胞を低張破壊した後、ピペッティングでホモジナイズし、4℃で50,000×g、30分間遠心分離することにより、細胞膜画分の沈殿物を得る。そして、この沈殿物をトリス−塩酸緩衝生理食塩水(トリス−塩酸緩衝液、154mMの塩化ナトリウム;pH7.4)に懸濁することにより、細胞膜画分を得ることができる。
【0088】
その他、例えば F. Pietri-Rouxelらの方法(Eur. J. Biochem., 247, 1174-1179(1997))などにより、培養形質転換細胞から細胞膜画分を得ることもできる。
【0089】
本発明のスクリーニング方法で用いられるGRFは、天然物、合成品及び組換え体の別を問わない。また当該GRFはヒト由来のものであることが好ましいが、マウスなどのヒト以外の哺乳類や他の生物種由来のGRFも同様に使用できる。また、GRFに代えてGRF受容体との結合能を保有する蛋白質またはポリ(オリゴ)ペプチド(例えば、GRF受容体との結合能を有するGRFの変異体や誘導体)を用いることもできる。なお、本発明においてこれらを「GRFホモログ」と称する。例えばかかるGRFの変異体としては、GRFの天然に存在するアレル変異体や天然に存在しない変異体、及び人為的にGRFのアミノ酸配列の一部が欠失、置換、付加または挿入されることによって改変されたアミノ酸配列を有する変異体が包含される。
【0090】
また本発明のスクリーニング方法に使用されるGRFは、必ずしもその全アミノ酸配列を保持する必要はなく、少なくともGRFのGRF受容体に対する結合部位を有していれば良い。すなわち、本発明のスクリーニング方法では、GRFに代えて、少なくともGRFのGRF受容体結合ドメイン(Science,Vol.218, 585 (1982); Biochem. Biophys. Res. Commun., Vol.123, 854 (1984))を有する蛋白質またはポリ(オリゴ)ペプチドを用いることもできる。本発明でいう「GRFホモログ」には、このような蛋白質またはポリ(オリゴ)ペプチドも包含される。また、上記GRFのGRF受容体結合ドメインは、GRF受容体との結合能が維持されている限り、そのアミノ酸配列の一部が欠失するか、他のアミノ酸によって置換、付加または挿入等されていてもよく、かかる改変されたGRFのGRF受容体結合ドメインを有する蛋白質またはポリ(オリゴ)ペプチドも本発明でいう「GRFホモログ」に包含される。
【0091】
GRFは、基本的に44アミノ酸からなる蛋白質である。よって、ヒトまたは各種生物に由来するGRFのアミノ酸配列情報(GenBankアクセッション番号:NP 066567[配列番号2], NM 031577, NM 010285, AF 242855, U 10156, M 73486, M 31658, M 31654)に基づいて、通常のペプチド合成法に準じて合成することができる。例えば、ペプチドの合成は文献〔ペプタイド・シンセシス(Peptide Synthesis),Interscience,New York,1966;ザ・プロテインズ(The Proteins),Vol 2,Academic Press Inc.,New York,1976;ペプチド合成,丸善(株),1975;ペプチド合成の基礎と実験、丸善(株),1985;医薬品の開発 続 第14巻・ペプチド合成,広川書店,1991〕などに記載されている方法を参考にして実施することができる。また、ペプチド合成法によれば前述するGRFホモログも容易に調製することができる。
【0092】
また、GRFまたはGRFホモログは、GRFの遺伝子情報(GenBankアクセッション番号:NM 021081[配列番号1], NM 031577, NM 010285, AF 242855, U 10156, M 73486, M 31658, M 31654)に基づいて、前述するGRF受容体またはGRF受容体ホモログの調製方法に準じて、遺伝子工学的に作製することもできる。なおこの場合、GRFのcDNAのクローニングは、ヒト又はヒト以外の哺乳類のGRF産生腫瘍細胞由来のcDNAライブラリーを対象として実施することができる。
【0093】
さらにGRFは商業的に入手できるものを利用してもよい。GRFは例えば住友製薬株式会社(日本)から入手することができる。
【0094】
GFRまたはGRFホモログは、そのままで用いてもよいし、任意の標識物質で標識されたものを用いることもできる。ここで標識物質としては、放射性同位体(例えば、125I等)、蛍光物質、化学発光物質、ビオチン、マーカータンパク質、またはペプチドタグなどを例示することができる。マーカータンパク質としては、例えばアルカリフォスファターゼ(Cell 63,185-194 (1990))、抗体のFc領域(Genbank accession number M87789)、またはHRP(Horse radish peroxidase)などの従来公知のマーカータンパク質を挙げることができる。またペプチドタグとしては、例えばMycタグ(Glu-Gln-Lys-Lue-Ile-Ser-Glu-Glu-Asp-Ile:配列番号5)、Hisタグ(His-His-His-His-His-His:配列番号6)、FLAGタグ(Asp-Tyr-Lys-Asp-Asp-Asp-Asp:配列番号7)などの従来公知のペプチドタグを挙げることができる。
【0095】
上記本発明のスクリーニング方法(1)の工程(i)において、被験物質の存在下でGRF受容体等とGRF等とを接触させる条件は、被験物質の非存在下でGRF受容体等とGRF等とが結合する条件であれば特に制限されない。また、単離されたGRF受容体等に代えて、GRF受容体等を発現した細胞またはGRF受容体等を有する細胞膜を用いる場合も、当該細胞または細胞膜上に存在するGRF受容体等がGRF等と接触して両者が結合する条件であればよい。具体的には、細胞の場合は、通常の生存可能な培養条件下、または細胞膜の場合はトリス-塩酸緩衝生理食塩水などの生理的条件下を例示することができる。
【0096】
抗自己免疫疾患剤の有効成分の候補物質の選別は、例えば上記条件でGRF受容体等(GRF受容体等を発現した細胞またはその細胞膜の上に存在するGRF受容体等を含む)とGRF等とを接触させて両者の結合を阻害する物質を探索することによって実施できる。具体的には、被験物質の存在下でGRF受容体等とGRF等とを接触させた場合のGRF受容体等に対するGRF等の結合量が、被験物質の非存在下で上記と同様に接触させた場合に得られるGRF受容体等に対するGRF等の結合量(対照結合量)よりも低下することを指標として、当該被験物質を候補物質として選別することができる。なお、ここでいう低下には、対照結合量と対比するまでもなく、GRF等のGRF受容体等に対する結合が完全に阻害されて両者が結合しない場合、すなわちGRF受容体等に対するGRF等の結合量が実質的にゼロの場合も包含される。
【0097】
GRF受容体等に対するGRF等の結合量は、例えばGRF等に対する抗体を用いたウエスタンブロット法などの公知の方法により定量することができる。また、GRF等として前述の標識GRF等を用いる場合は、使用した標識物質に応じた測定方法(例えば、放射線測定法、蛍光検出法など)により、GRF受容体等に結合したGRF等の量を定量することもできる。
【0098】
(2) GRFの細胞内シグナル伝達の阻害を指標としたスクリーニング方法
当該スクリーニング方法は、被験物質の中からGRF阻害作用を有する物質を、GRFの細胞内シグナル伝達の阻害を指標として探索し、抗自己免疫疾患剤の有効成分として取得する方法である。
【0099】
当該方法は、具体的には下記の工程(i)、(ii)及び(iii)を行うことによって実施することができる:
(i) 被験物質の存在下で、GRF受容体またはそのホモログ(GRF受容体等)を発現した細胞とGRFまたはそのホモログ(GRF等と)を接触させる工程、
(ii) 上記細胞のGRFに起因する細胞内シグナル伝達物質の発現量または活性を測定し、当該発現量または活性を、被験物質非存在下でGRF受容体等を発現した細胞とGRF等とを接触させることによって得られる上記に対応する発現量または活性(対照発現量または対照活性)と比較する工程、及び
(iii) 上記(ii)の結果に基づいて、対照発現量または対照活性に比して発現量または活性を変動させる被験物質を選択する工程。
【0100】
2)GRF受容体の発現を阻害する作用を指標としたスクリーニング方法
当該スクリーニング方法は、被験物質の中からGRF阻害作用を有する物質を、GRF受容体の発現に対する阻害を指標として探索し、抗自己免疫疾患剤の有効成分として取得する方法である。
【0101】
当該スクリーニング方法は、特に制限されず当業者の技術常識に基づいて適宜設計することが可能であるが、一例として、GRF受容体を発現可能な細胞に被験物質を接触させた場合と被験物質を接触させない場合とで、当該細胞のGRF受容体の発現量を比較し評価することを含むスクリーニング方法を挙げることができる。当該スクリーニング方法は、具体的には下記の工程(i)、(ii)及び(iii)を行うことによって実施することができる。
(i) 被験物質をGRF受容体を発現可能な細胞と接触させる工程、
(ii) 被験物質を接触させた細胞のGRF受容体の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない上記に対応する対照細胞のGRF受容体の発現量(対照発現量)と比較する工程、及び
(iii) 上記(ii)の比較結果に基づいて、対照発現量に比してGRF受容体の発現量を低下させる被験物質を選択する工程。
【0102】
かかるスクリーニングに用いられる細胞としては、天然または組換え体の別を問わず、GRF受容体を発現し得る細胞であればよい。またGRF受容体の由来も特に制限されず、ヒト由来のものであっても、またヒト以外のマウスなどの哺乳類や他の生物種に由来するものであってもよい。かかる細胞として、具体的にはGRF受容体をコードする遺伝子(DNA)を有する脳下垂体前葉細胞(ヒト及びその他の生物種由来のものを含む)、単離調製された初代脳下垂体前葉培養細胞を挙げることができる。また、前述する方法等によりGRF受容体のcDNAを有する発現ベクターを導入して調製される形質転換細胞を用いることもできる。また、スクリーニングに用いられる細胞の範疇には、細胞の集合体である組織も含まれる。
【0103】
上記本発明のスクリーニング方法2)の工程(i)において、被験物質とGRF受容体発現可能細胞とを接触させる条件は、特に制限されないが、該細胞が死滅せず且つGRF受容体の遺伝子が発現し得る培養条件(温度、pH、培地組成など)を選択するのが好ましい。
【0104】
抗自己免疫疾患剤の有効成分の候補物質の選別は、例えば上記条件で被験物質とGRF受容体発現可能細胞とを接触させて、GRF受容体の発現量を抑制する物質を探索することによって実施できる。具体的には、被験物質存在下でGRF受容体発現可能細胞を培養した場合のGRF受容体の発現量が、被験物質非存在下で上記に対応するGRF受容体発現可能細胞を培養した場合に得られるGRF受容体の発現量(対照発現量)よりも低下することを指標として、当該被験物質を候補物質として選別することができる。なお、ここでいう低下には、対照発現量と対比するまでもなく、GRF受容体が全く発現しない場合(GRF受容体遺伝子(mRNA)が全く発現しない場合、GRF受容体タンパクが全く生成しない場合)、すなわちGRF受容体の発現量が実質的にゼロの場合も包含される。
【0105】
上記のスクリーニング方法2)の工程(ii)において、GRF受容体の発現量は、GRF受容体遺伝子(mRNA)の発現量を測定するか、またはGRF受容体タンパクの生成量を測定することによって評価することができる。また、GRF受容体の発現量を測定する方法は、直接これらの遺伝子(mRNA)発現量や蛋白質生成量を測定する方法でなくても、これらを反映する方法であればよい。すなわち、工程(ii)においてGRF受容体の発現量を測定するとは、直接的または間接的な方法の別を問わず、GRF受容体遺伝子の発現量やGRF受容体蛋白質の生成量が評価できる方法の実施を広く包含するものである。
【0106】
具体的には、GRF受容体の発現量の測定(検出および定量)は、GRF受容体発現可能細胞のGRF受容体mRNAの発現量を当該GRF受容体mRNAの塩基配列と相補的な配列を有するオリゴヌクレオチド等を利用してノーザンブロット法、RT-PCR法などの公知の方法やDNAアレイを利用して測定したり、またGRF受容体発現可能細胞の細胞表面に発現したGRF受容体のタンパク量を抗GRF受容体抗体を利用してウエスタンブロット法等の公知の方法を行うことによって実施することができる。また、GRF受容体の発現量の測定(検出及び定量)は、GRF受容体遺伝子制御領域〔例えば、GRF受容体のプロモーター(Genbank Accession number:AF267729, AF121969, AF127135など)の下流領域〕に、例えばルシフェラーゼ遺伝子、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ遺伝子、βグルクロニダーゼ遺伝子、βガラクトシダーゼ遺伝子、エクオリン遺伝子などのレポーター遺伝子等のマーカー遺伝子をつないだ融合遺伝子を導入した細胞株を用いて、当該マーカー遺伝子由来の蛋白質の活性を測定することによっても実施することができる。本発明のGRF受容体の発現量を指標とした抗自己免疫疾患剤の有効成分(標的物質)のスクリーニング方法には、かかるマーカー遺伝子の発現量を指標として標的物質を探索する方法も包含される。なお、融合遺伝子の作成及びマーカー遺伝子由来の活性測定は、公知の方法で行うことができる。
【0107】
3)GRFの発現又は分泌を阻害する作用を指標としたスクリーニング方法
当該スクリーニング方法は、被験物質の中からGRF阻害作用を有する物質を、GRFの発現または分泌に対する阻害作用を指標として探索し、抗自己免疫疾患剤の有効成分として取得する方法である。
【0108】
当該スクリーニング方法は、特に制限されず当業者の技術常識に基づいて適宜設計することが可能であるが、一例として、GRFを発現可能な細胞に被験物質を接触させた場合と被験物質を接触させない場合とで、当該細胞のGRFの発現量または分泌量を比較し評価することを含むスクリーニング方法を挙げることができる。当該スクリーニング方法は、具体的には下記の工程(i)、(ii)及び(iii)を行うことによって実施することができる。
(i) 被験物質をGRFを発現可能な細胞を接触させる工程、
(ii) 被験物質を接触させたGRF発現可能細胞のGRFの発現量または分泌量を測定し、該発現量または分泌量を被験物質を接触させない上記に対応するGRF発現可能細胞(対照細胞)のGRFの発現量または分泌量(対照発現量または対照分泌量)と比較する工程、及び
(iii) 上記(ii)の比較結果に基づいて、対照発現量または対照分泌量に比してGRFの発現量または分泌量を低下させる被験物質を選択する工程。
【0109】
かかるスクリーニングに用いられる細胞としては、天然または組換え体の別を問わず、GRFを発現し得る細胞であればよい。またGRFの由来も特に制限されず、ヒト由来のものであっても、マウスなどヒト以外の哺乳類や他の生物種に由来するものであってもよい。かかる細胞として、具体的にはGRFをコードする遺伝子を有する腫瘍細胞(ヒト及びその他の生物種由来のものを含む)、単離調製された初代腫瘍培養細胞を挙げることができる。また、前述する方法等によりGRFのcDNAを有する発現ベクターを導入して調製される形質転換細胞を用いることもできる。また、スクリーニングに用いられる細胞の範疇には、細胞の集合体である組織も含まれる。
【0110】
上記本発明のスクリーニング方法3)の工程(i)において、被験物質とGRF発現可能細胞とを接触させる条件は、特に制限されないが、該細胞が死滅せず且つGRF遺伝子(mRNA)が発現し得培養条件(温度、pH、培地組成など)、または生成したGRFタンパクが分泌し得る培養条件(温度、pH、培地組成など)を選択するのが好ましい。
【0111】
抗自己免疫疾患剤の有効成分の候補物質の選別は、例えば上記条件で被験物質とGRF発現可能細胞とを接触させて、GRFの発現量または分泌量を抑制する物質を探索することによって実施できる。具体的には、被験物質存在下でGRF発現可能細胞を培養した場合のGRFの発現量または分泌量が、被験物質非存在下で上記に対応するGRF発現可能細胞を培養した場合に得られるGRFの発現量または分泌量(対照発現量または対照分泌量)よりも低下することを指標として、当該被験物質を候補物質として選別することができる。なお、ここでいう低下には、対照発現量または対照分泌量と対比するまでもなく、GRFが全く発現しない場合(GRF遺伝子(mRNA)が全く発現しない場合、GRFタンパクが全く生成しない場合)やGRFタンパクが全く分泌されない場合、すなわちGRFの発現量または分泌量が実質的にゼロの場合も包含される。
【0112】
上記のスクリーニング方法3)の工程(ii)において、GRFの発現量は、GRF遺伝子(mRNA)の発現量を測定するか、またはGRF蛋白質の生成量を測定することによって評価することができる。またGRFの分泌量は、GRF発現可能細胞を培養して得られる培養液(培養上清)中に含まれるGRF蛋白質量を測定することによって評価することができる。また、GRFの発現量またはGRFの分泌量を測定する方法は、直接これらの遺伝子(mRNA)発現量や蛋白質生成量を測定したり、また培養上清中のGRF蛋白質量を測定する方法でなくても、これらを反映する方法であればよい。すなわち、工程(ii)においてGRFの発現量または分泌量を測定するとは、直接的または間接的な方法の別を問わず、GRF遺伝子の発現量やGRF蛋白質の生成量または培養上清中に放出されるGRF蛋白質量が評価できる方法の実施を広く包含するものである。
【0113】
GRFの発現量の測定(検出および定量)は、GRF発現可能細胞のGRFmRNAの発現量を、当該GRFmRNAの塩基配列と相補的な配列を有するオリゴヌクレオチド等を利用してノーザンブロット法、RT-PCR法などの公知の方法やDNAアレイを利用して測定したり、またGRF発現可能細胞の細胞表面に発現したGRF生成量を抗GRF抗体を利用してウエスタンブロット法等の公知の方法で測定することによって実施することができる。また、GRFの発現量の測定(検出及び定量)は、GRF遺伝子制御領域〔例えば、GRFのプロモーター(Genbank Accession number:U10153など)の下流領域〕に、例えば前述する各種レポーター遺伝子等のマーカー遺伝子をつないだ融合遺伝子を導入した細胞株を用いて、マーカー遺伝子由来の蛋白質の活性を測定することによっても実施することができる。本発明のGRFの発現量を指標とした抗自己免疫疾患剤の有効成分(標的物質)のスクリーニング方法には、かかるマーカー遺伝子の発現量を指標として標的物質を探索する方法も包含される。なお、融合遺伝子の作成及びマーカー遺伝子由来の活性測定は、公知の方法で行うことができる。
【0114】
またGRFの分泌量の測定(検出および定量)は、GRF発現可能細胞を培養し、得られる培養上清中に含まれるGRF蛋白質量を、例えば抗GRF抗体を利用してウエスタンブロット法等の公知の方法で測定することによって実施することができる。
【0115】
以上説明した、1)の(1)及び(2)、2)並びに3)のスクリーニング方法によって被験物質の中から選別された候補物質は、更に、例えばヒトの各種の自己免疫疾患を模倣した病態モデル動物を用いた薬効試験や安全性試験に供することにより、より一層実用的な抗自己免疫疾患剤の有効成分として取得することができる。
【0116】
より具体的には、得られた候補物質について、多発性硬化症の病態モデル動物(例えばEAE発症誘導マウス)を用いた薬効試験を行うことにより、当該候補物質について多発性硬化症に対する抑制効果(予防効果、治療効果)を評価することができる。また、得られた候補物質について、慢性関節リウマチの病態モデル動物(例えばコラーゲン誘導性関節炎 [Trentham DE,Townes AS,Kang AH:Autoimunity to typeII collagens:An experimental model of arthritis J Exp Med 146:857-868,1977]、抗原誘導性関節炎、またはアジュバント誘導性関節炎[Pearson CM:Development of arthritis,periarthritis and periotitis in rats given adjuvant.Proc Soc Expe Biolo Med 91:95-101,1956]のいずれかのマウス)を用いた薬効試験を行うことにより、当該候補物質について慢性関節リウマチに対する抑制効果(予防効果、治療効果)を評価することができる。このようにして選別、取得された物質は、さらにその構造解析結果に基づいて、化学的合成、生物学的合成(発酵)または遺伝子学的操作によって、工業的に製造することができる。
【0117】
以上のような本発明のスクリーニング方法を用いて選択されるGRF阻害作用を有する物質は、前述の如き抗自己免疫疾患剤の有効成分として有用である。ここで自己免疫疾患としては、具体的には本明細書の第I章に記載する各種の疾病を任意に挙げることができるが、特に本発明が対象とするGRF阻害作用物質は、多発性硬化症、慢性関節リウマチ、及び全身性エリテマトーデス、好ましくは多発性硬化症、及び慢性関節リウマチに対して有効に使用することができる。
【0118】
本発明の「抗自己免疫疾患剤」は、各種の自己免疫疾患に対して、その発症を阻害若しくは抑制する作用、その発症を遅延させる作用、発症後その症状を軽減若しくは改善する作用、または疾患を治癒する作用のいずれか少なくとも1つの作用を有するものである。その意味で、上記の「抗自己免疫疾患剤」は、自己免疫疾患予防剤、自己免疫疾患症状緩和剤、自己免疫疾患改善剤、または自己免疫疾患治療剤と言うこともでき、よって本発明のスクリーニング方法は、これらの有効成分の探索方法でありえる。
【0119】
本発明は、上記のスクリーニング方法により得られるGRF阻害作用を有する物質を有効成分とする抗自己免疫疾患剤を提供するものである。
【0120】
III .抗自己免疫疾患剤の用法について
以下、本発明のGRF阻害作用を有する物質を有効成分とする抗自己免疫疾患剤の投与形態、投与方法及び投与量等につき説明する。
【0121】
1) GRF阻害作用を有する物質が低分子化合物、ペプチド又は蛋白質の形態である場合
GRF阻害作用を有する物質が低分子化合物、ペプチドまたは抗体などの蛋白質である場合は、これらの物質について通常用いられる一般的な医薬組成物(医薬製剤)の形態に調製することができ、その形態に応じて経口または非経口的に投与することができる。一般的には以下のような投与形態、及び投与方法が挙げられる。
【0122】
投与形態としては、その代表的なものとして錠剤、丸剤、散剤、粉末剤、顆粒剤及びカプセル剤等の固形製剤や、溶液、懸濁液、乳液、シロップ及びエリキシルなどの液剤などの形態を挙げることができる。これらの各種形態は、投与経路に応じて経口投与剤の他、経鼻剤、経皮剤、直腸投与剤(坐剤)、舌下剤、経膣剤、注射剤(経静脈、経動脈、経筋肉、皮下、皮内)や点滴剤等の非経口投与剤に分類することができる。例えば、経口投与剤としては、例えば錠剤、丸剤、散剤、粉末剤、顆粒剤、カプセル剤、溶液、懸濁液、乳液、及びシロップ等が、又は直腸投与剤や経膣剤としては、例えば錠剤、丸剤、カプセル剤などの形態を採ることができる。経皮剤としては、例えばローション等の液剤の他、クリームや軟膏等の半固形剤の形態を採ることもできる。
【0123】
注射剤としては、例えば溶液、懸濁液または乳剤等の形態を採ることができ、具体的には無菌処理した水、水−プロピレングリコール溶液、緩衝化液、0.4重量%濃度の生理食塩水等を例示することができる。さらに注射剤は、液剤に調製した後、凍結処理又は凍結乾燥処理されていてもよく、これにより保存することができる。後者の凍結乾燥処理で調製される凍結乾燥製剤は、用時に注射用蒸留水などを加え、再溶解して使用される。
【0124】
上記の医薬組成物(医薬製剤)の形態には、当該分野で行われている通常の手法により、GRF阻害作用を有する物質と薬学的に許容される担体を配合することによって調製される。薬学的に許容される担体としては、賦形剤、希釈剤、充填剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、湿潤剤、滑沢剤及び分散剤などを例示することができる。また、さらに当該分野において通常用いられる添加剤を配合することもできる。かかる添加剤は、調製する医薬組成物の形態に応じて、例えば安定化剤、殺菌剤、緩衝剤、増粘剤、pH調整剤、乳化剤、懸濁化剤、防腐剤、香料、着色料、張度調節剤、キレート剤、界面活性剤などの中から適宜選択して用いることができる。
【0125】
このような形態を有する医薬組成物は、目的とする疾患、標的臓器等に応じた適当な投与経路により投与され得る。例えば、静脈、動脈、皮下、皮内または筋肉内に投与するか、又は病変の認められる組織そのものに直接局所投与してもよいし、また経口投与や直腸投与も可能である。
【0126】
これらの医薬組成物の投与量や投与回数は、投与形態、患者の疾患やその症状、患者の年齢や体重等によって異なり、一概に規定することができないが、通常は成人に対し1日あたり有効成分の量として約0.0001〜約500mgの範囲、好ましくは約0.001〜約100mgの範囲を1回または数回に分けて投与することができる。
【0127】
2 ) GRF阻害作用を有する物質がポリヌクレオチドの形態である場合
GRF阻害作用を有する物質が、GRF遺伝子やGRF受容体遺伝子の塩基配列と相補的な塩基配列を有するアンチセンスポリヌクレオチド等のようにポリヌクレオチドの形態を有するものである場合は、遺伝子治療剤または予防剤の形態を採ることができる。近年、種々の遺伝子を用いた遺伝子治療の報告がなされており、遺伝子治療は技術的にも確立された技術となっている。
【0128】
遺伝子治療剤は、ベクターに目的のポリヌクレオチドを導入して調製したり、また当該ベクターで適当な細胞を形質転換することによっても調製できる。ここで、患者への投与形態は、上記目的のポリヌクレオチドを導入するベクターとして(1)非ウイルスベクターを用いた場合と、(2)ウイルスベクターを用いた場合の二つに大別される。ベクターとしてウイルスベクターを用いる場合と非ウイルスベクターを用いる場合について、遺伝子治療剤の調製法及び投与法は実験手引書に詳しく解説されている(例えば、「別冊実験医学、遺伝子治療の基礎技術」, 羊土社,1996、別冊実験医学:「遺伝子導入&発現解析実験法」, 羊土社, 1997、「日本遺伝子治療学会編 遺伝子治療開発研究ハンドブック」、エヌ・ティー・エス、1999など)。以下、用いるベクター毎に遺伝子治療剤の調製法及び投与法を具体的に説明する。
【0129】
(1)ベクターとして非ウイルスベクターを用いる場合
非ウイルスベクターとしては、生体内、好ましくはヒト生体内で目的のポリペプチドや蛋白質をコードする遺伝子(ポリヌクレオチド)を発現させることのできる任意の発現ベクターを用いることができる。特に制限されないが、例えばpCAGGS(Gene 108,193-200(1991))や、pBK−CMV、pcDNA3、pZeoSV(以上、インビトロゲン社、ストラタジーン社)などが挙げられる。
【0130】
患者へのポリヌクレオチドの導入は、これらの非ウイルスベクター(発現ベクター)に常法に従って目的とするポリヌクレオチドを導入し、得られた組換え発現ベクターを投与することによって行うことができる。これにより、目的とするポリヌクレオチドを被験者の細胞や組織に導入することができる。
【0131】
より具体的には、細胞へのポリヌクレオチド導入法としては、リン酸−カルシウム共沈法や、微小ガラス管を用いたDNA(ポリヌクレオチド)の直接注入法などが挙げられる。
【0132】
また、組織へのポリヌクレオチド導入法としては、内包型リポソーム(internal type liposome)または静電気型リポソーム(electrostatic type liposome)によるポリヌクレオチド導入法、HVJ−リポソーム法、改良型HVJ−リポソーム法(HVJ-AVEリポソーム法)、レセプター介在性ポリヌクレオチド導入法、パーティクル銃で担体(金属粒子)とともにポリヌクレオチドを細胞に移入する方法、naked−DNAの直接導入法、正電荷ポリマーによる導入法等の方法を例示することができる。
【0133】
(2)ベクターとしてウイルスベクターを用いる場合
ウイルスベクターとしては、組換えアデノウイルスやレトロウイルスに由来するベクター等が挙げられる。より具体的には、例えば、無毒化したレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイルス、センダイウイルス、SV40、免疫不全症ウイルス(HIV)等のDNAウイルス又はRNAウイルスのベクターを挙げることができる。中でもアデノウイルスベクターは、他のウイルスベクターよりも感染効率がはるかに高いことが知られており、この観点からは、アデノウイルスベクターを用いることが好ましい。
【0134】
患者へのポリヌクレオチドの導入は、これらのウイルスベクターに常法に従って目的とするポリヌクレオチドを導入し、得られた組換えウイルスを所望の細胞に感染させることによって行うことができる。これにより、細胞内に目的とするポリヌクレオチドを導入することが可能である。
【0135】
このようにして調製される遺伝子治療剤の患者への投与方法としては、遺伝子治療剤を直接体内に導入するin vivo法、及び、ヒトからある種の細胞を取り出して体外で遺伝子治療剤を該細胞に導入し、その細胞をヒト体内に戻すex vivo法がある(「日経サイエンス」,1994年4月号,20-45頁;「月刊薬事」,36(1),23-48,1994;「実験医学増刊」,12(15),1994;「日本遺伝子治療学会編 遺伝子治療開発研究ハンドブック」,エヌ・ティー・エス,1999)。本発明が対象とする自己免疫疾患のうち、全身性自己免疫疾患の予防または治療のために用いる場合は、in vivo法により体内に導入することが好ましい。
【0136】
In vivo法による投与は、目的の疾患、標的臓器等に応じた適当な投与経路により投与され得る。例えば、静脈、動脈、皮下、皮内、筋肉内などに投与するか、又は病変の認められる組織そのものに直接局所投与することができる。
【0137】
遺伝子治療剤の形態としては、上記の各投与形態に応じて種々の製剤形態を採用することができる。例えば注射剤の形態を有する場合、当該注射剤は常法により調製することができ、例えばPBS等の緩衝液、生理食塩水、滅菌水等の溶剤に有効成分となるポリヌクレオチドを溶解した後、必要に応じてフィルター等で濾過滅菌し、次いで無菌的な容器に充填することにより調製することができる。当該注射剤には必要に応じて慣用の担体等を加えても良い。また、HVJ−リポソーム等のリポソームにおいては、懸濁剤、凍結剤及び遠心分離濃縮凍結剤などの各種のリポソーム製剤の形態とすることができる。
【0138】
また、疾患部位の周囲に遺伝子を存在し易くするために、徐放性の製剤(ミニペレット製剤等)を調製し患部近くに埋め込むことも可能であり、あるいはオスモチックポンプなどを用いて患部に連続的に徐々に投与することも可能である。
【0139】
遺伝子治療剤中のポリヌクオチドの含量は、治療対象とする疾患、患者の年齢、体重等により適宜調節することができるが、通常、各々のポリヌクレオチドとして約0.0001〜約100mg、好ましくは約0.001〜約10mgであり、これを数日ないし数ヶ月に1回投与するのが好ましい。
【0140】
また、前述する本発明は抗自己免疫疾患剤を用いる自己免疫疾患の予防方法または治療方法である。当該方法は、自己免疫疾患に罹患した被験者(自己免疫疾患患者)に本発明の抗自己免疫疾患剤を有効量投与することによって実施することができる。ここで自己免疫疾患としては、第I章に記載する各種の自己免疫疾患を挙げることができる。好ましくは多発性硬化症、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデスであり、より好ましくは多発性硬化症、慢性関節リウマチである。
【0141】
また、自己免疫疾患に罹患した被験者には、自己免疫疾患の具体的な病態を発症している被験者だけでなく、発症していない場合であっても潜在的に自己免疫疾患の発症の可能性を有している被験者も含まれる。従って、本発明でいう自己免疫疾患の予防には、自己免疫疾患に罹患した被験者について自己免疫疾患の発症を予防すること、発症程度を抑制することが包含される。また、本発明でいう自己免疫疾患の治療には、自己免疫疾患に罹患した被験者について発症した自己免疫疾患の病態(症状)を緩和ないしは改善することが包含される。
【0142】
抗自己免疫疾患剤の投与形態、投与方法、及び投与量については、前述の通りである。
【0143】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
【0144】
実施例1 成長ホルモン放出因子受容体(GRFR)遺伝子の欠損が実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の発症に与える影響の検討
自己免疫疾患の発症に対する成長ホルモン放出因子(GRF)の関与を調べるため、GRF受容体遺伝子を欠損したマウスについて、ヒトの多発性硬化症のモデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の発症の有無を検討した。実験方法と結果を以下に示す。
【0145】
<実験方法>
実験には、GRFR遺伝子ホモ欠損マウス(C57BL/6J-Ghrhrlit/lit)、GRFR遺伝子ヘテロ欠損マウス(C57BL/6J-Ghrhrlit/+)および対照として野生型マウス(C57BL/6J)(全てメス、いずれもThe Jackson Laboratoryより購入)を用いた。マウスはいずれも5週齢のものを購入し、毎日午前8時から午後8時まで照明を点灯し、水および固形飼料(CE-2;日本クレア)を自由に摂取できるようにして飼育した。
【0146】
これらのマウス(各群5匹づつ、合計15匹)に人為的に実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の発症を誘導させた。具体的には、これらの各マウスに、生理食塩水(大塚製薬(株)製)に溶解した2mg/mlのミエリンオリゴデンドロサイトグリコプロテイン(MOG)35-55合成ペプチド(アミノ酸配列:Met-Glu-Val-Gly-Trp-Tyr-Arg-Ser-Pro-Phe-Ser-Arg-Val-Val-His-Leu-Tyr-Arg-Asn-Gly-Lys:配列番号8)(アコード社製)の溶液と完全フロイントアジュバント(CFA)(ディフコ社製)を1:1に混合したエマルジョンを、100μlずつ大腿部皮下に感作し、感作直後および2日後に生理食塩水(大塚製薬(株)製)に溶解した200ngの百日咳毒素(リスト・バイオロジカル・ラボラトリーズ社製)を腹腔内投与して、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を惹起させた。なお、すべてのマウスは上記実験期間中も含めて全飼育期間を通じて飼料と水を自由に摂取出来るようにした。
【0147】
27日間にわたり、毎日体重を測定し、EAE症状を観察して、以下の基準に基づいてEAE症状のスコアを記録した。
【0148】
[EAE症状のスコア]
0:無症状、1:尾の麻痺、2:弱い後ろ足の麻痺、3:中程度から強度の後ろ足の麻痺あるいは弱い前足の麻痺、またはその両方、4:完全な後ろ足の麻痺あるいは中程度から強度の前足の麻痺、またはその両方、5:四肢の麻痺あるいは死戦期にある、6:死亡。
【0149】
<結果>
得られたEAE症状のスコアの平均値の推移を図1(A)示す。その結果、GRFRホモ欠損マウスでは、全観察期間(27日間)を通じて実験的自己免疫性脳脊髄炎の発症(スコア1)が認められなかった。またGRFRヘテロ欠損マウスについても、野生型マウスに比較してEAEスコアの有意な低下が認められた。
【0150】
またEAEの発症率の推移を図1(B)に示す。その結果、GRFRホモ欠損マウスの発症率は全観察期間(27日間)を通じて0であった。またGRFRヘテロ欠損マウスも野生型マウスに比較して発症率が低く抑えられた。これらの結果から、GRFR遺伝子の欠損によりEAEの発症が強く抑制されることが明らかとなった。
【0151】
実施例2 成長ホルモン放出因子(GRF)アンタゴニストの投与が実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の発症に与える影響の検討
GRFアンタゴニストの投与が自己免疫疾患の発症に与える影響を調べるため、ヒトの多発性硬化症の動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を用いて検討を行った。実験方法と結果を以下に示す。
【0152】
<実験方法>
実験には野生型マウス(PLSJLF1/J)(雌、The Jackson Laboratoryより購入)を用いた。マウスは5週齢で購入し、毎日午前8時から午後8時まで照明を点灯し、水および固形飼料(CE-2;日本クレア)を自由に摂取できるようにして飼育した。まずこれらのマウス(合計10匹)に、生理食塩水(大塚製薬(株)製)に溶解した2mg/mlのウサギミエリン塩基性タンパク質(MBP)(シグマ社製)と完全フロイントアジュバント(CFA)(ディフコ社)を1:1に混合したエマルジョンを、100μlずつ大腿部皮下に感作し、感作の直後および2日後に生理食塩水に溶解した200ngの百日咳毒素(リスト・バイオロジカル・ラボラトリーズ社製)を腹腔内投与して、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を惹起させた。次いで、GRFアンタゴニストの投与は以下の手順に従って行った。MBP感作と百日咳毒素の投与を行ったマウス(計10匹)を2群に分け、1群(5匹)には、マウス1匹あたり30μgのGRFアンタゴニスト(MZ-4-71:米国カルビオケムノバビオケム社製)をMBP感作後8日目から15日目まで毎日1回、頚背部皮下部に投与した(GRFアンタゴニスト(MZ-4-71)投与群)。もう1群(5匹)には、対照として同量の生理食塩水を同様にMBP感作後8日目から15日目まで毎日1回、頚背部皮下部に投与した(生理食塩水投与群)。なお、すべてのマウスは上記実験時間を含む全飼育期間を通じて飼料と水を自由に摂取出来るようにした。毎日体重を測定し、EAE症状を観察して、下記の基準に基づいてEAE症状のスコアを記録した。
【0153】
<EAE症状のスコア>
0:無症状、1:尾の麻痺、2:弱い後ろ足の麻痺、3:中程度から強度の後ろ足の麻痺あるいは弱い前足の麻痺、またはその両方、4:完全な後ろ足の麻痺あるいは中程度から強度の前足の麻痺、またはその両方、5:四肢の麻痺あるいは死戦期にある、6:死亡。
【0154】
<結果>
結果を図2に示す。図2(A)にはEAEスコアの平均値の推移を示す。GRFアンタゴニスト(MZ-4-71)投与群では、生理食塩水投与群と比較してEAEスコアの低下が認められた。 図2(B)にはEAEの発症率の推移を示した。GRFアンタゴニスト(MZ-4-71)投与群は、生理食塩水投与群に比較してEAE発症の開始に遅延が認められた。これらの結果から、GRFアンタゴニストの投与によりEAEの発症が抑制されることが明らかとなった。
【0155】
実施例3 GRF受容体(GRFR)発現細胞を用いた抗自己免疫疾患剤の有効成分のスクリーニング
GRF受容体のcDNAを含有する発現ベクターを用いて、常法によりCHO細胞やCOS細胞を形質転換し、GRF受容体を細胞表面に安定に発現する形質転換細胞を取得する。または常法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.91, p12298-12302 (1994)を参照)によりラット脳下垂体前葉細胞を単離・調製する。他方、GRF(住友製薬(株)製)を常法によりビオチンまたはラジオアイソトープ(125I)などで標識する。
【0156】
次に、前記GRF受容体発現細胞(形質転換細胞、またはラット脳下垂体前葉細胞)に対して、(i)標識GRF、又は(ii)標識GRF及び被験物質を添加し、所定時間後、これら(i)の反応系及び(ii)の反応系における標識GRFのGRF受容体発現細胞への結合性を測定し、両者を比較する。(ii)の反応系において、結合性が認められないか、または(i)の反応系における結合性と比較して結合性が低くなる被験物質を、抗自己免疫疾患剤の有効成分の候補物質として選択する。
【0157】
また得られた候補物質は、さらにGRF阻害作用を検出する別のスクリーニング系、およびEAEモデル動物に対する投与実験などに供される。これにより、前記候補物質について抗自己免疫疾患剤の有効成分となり得ることを確認することができる。
【0158】
実施例4 GRF発現可能細胞を用いた抗自己免疫疾患剤の有効成分のスクリーニング
GRF産生腫瘍細胞に対し(i)被験物質を添加しない群と、(ii)被験物質を添加した群を準備する。各群について一定期間培養し、次いで細胞を回収して常法により溶解し、ノーザンブロット解析によりGRFのmRNAの発現量を比較する。あるいは、細胞培養上清を回収し、ウエスタンブロット解析により、培養液中に分泌されたGRFのタンパク量を比較する。これらのスクリーニングにより、(ii)の群についてGRF発現またはGRF分泌が認められない場合、または(ii)の群のGRF発現量またはGRF分泌量が、(i)の群で得られる結果よりも少ない場合、(ii)に用いた被験物質を抗自己免疫疾患剤の有効成分の候補物質として選択する。
【0159】
また得られた候補物質は、さらにGRF阻害作用を検出する別のスクリーニング系、およびEAEモデル動物に対する投与実験などに供される。これにより、前記候補物質について抗自己免疫疾患剤の有効成分となり得ることを確認することができる。
【0160】
【発明の効果】
本発明により、GRF阻害作用という新たな作用メカニズムに基づく新規な抗自己免疫疾患剤を提供することができる。さらに本発明により、GRF阻害作用という新たな作用メカニズムに基づいて効果を発揮する抗自己免疫疾患剤の有効成分を取得するためのスクリーニング方法が提供される。本発明のGRF阻害作用を指標としたスクリーニング方法によれば、新たな作用メカニズムに基づいて自己免疫疾患の発症を予防したり治療することのできる有効成分を取得することが可能である。よって、本発明のスクリーニング方法は、自己免疫疾患の予防または治療に有効な新規薬剤の開発に好適に利用することができる。
【0161】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1における実験結果を示す図である。具体的には、EAE発症に対するGRFの関与について検討するため、GRFR遺伝子ホモ欠損マウス(―□―)、GRFRヘテロ欠損マウス(―△―)、および対照として用いた野生型マウス(―●―)のそれぞれについて、人為的に誘導したEAE発症の有無を示したグラフである。
図中(A)にはEAEスコアの平均値の推移を示す。野生型マウスでは感作後16日目からEAEの発症(スコア1)が見られ始め、感作後25日目にはスコアが1.2に達した。一方GRFRホモ欠損マウスにおいては全観察期間(27日間)を通じて全く発症が認められなかった。またGRFRヘテロ欠損マウスではEAEは発症したものの、その平均スコア値は野生型マウスの平均スコア値に比較して著しく低かった。図中(B)にはEAE発症率の推移を示す。GRFRホモ欠損マウスは全観察期間を通じて発症率が0であった。またGRFRヘテロ欠損マウスは野生型マウスと比較してEAEの発症率は著しく低かった。
【図2】 図2は、PLSJLF1マウスにMBPの感作と百日咳毒素の投与によりEAE発症を誘導し、GRFアンタゴニストであるMZ-4-71投与のEAE発症に対する影響を検討した結果を示したグラフである。
図中(A)にはEAEスコアの平均の推移を示した。図中、黒い太線で示した期間はMZ-4-71または対照として生理食塩水を投与した期間を示す。生理食塩水投与群では感作後12日目から発症が見られ、感作後16日目にはスコアの平均値は4.2に達した。一方、MZ-4-71投与群では感作後11日目から発症が認められたが、感作後13日目に平均スコアが0.3に達した後に一旦寛解が導入され、感作後17日目にはすべてのマウスが寛解となり、平均スコアは0になった。感作後20日目から再発が見られたが、その後の観察期間中を通じて平均スコアの最大値は2.2(感作後23日目)にとどまった。これらの結果から、GRFアンタゴニストの投与によってEAE発症が抑制されることが示された。図中(B)には発症率の推移を示した。図中、黒い太線で示した期間はMZ-4-71または対照として生理食塩水を投与した期間を示す。生理食塩水投与群では、感作後12日目から13日目に急速な発症が見られ、感作後13日目には発症率が80%に達した。一方、MZ-4-71投与群では発症は緩慢に開始し、感作後26日目の時点でも発症率は60%にとどまった。これらの結果から、発症率の点からもGRFアンタゴニストの投与によってEAE発症が抑制されることが示された。
Claims (9)
- 被験物質の中から、成長ホルモン放出因子阻害作用を有する物質を、成長ホルモン放出因子受容体を介した成長ホルモン放出因子の作用の阻害を指標として探索することを特徴とする、抗自己免疫疾患剤の有効成分の候補物質をスクリーニングする方法。
- 成長ホルモン放出因子阻害作用を有する物質を、成長ホルモン放出因子と成長ホルモン放出因子受容体との結合阻害を指標として探索することを特徴とする請求項1に記載のスクリーニング方法。
- 下記の工程(i)、(ii)及び(iii)を含む請求項2に記載の抗自己免疫疾患剤の有効成分の候補物質をスクリーニングする方法:
(i) 被験物質の存在下で、成長ホルモン放出因子受容体若しくはそのホモログと成長ホルモン放出因子若しくはそのホモログとを接触させる工程、
(ii) 上記成長ホルモン放出因子受容体若しくはそのホモログに対する成長ホルモン放出因子若しくはそのホモログの結合量を測定し、当該結合量を、被験物質非存在下で成長ホルモン放出因子受容体若しくはそのホモログと成長ホルモン放出因子若しくはそのホモログとを接触させることによって得られる成長ホルモン放出因子受容体若しくはそのホモログに対する成長ホルモン放出因子若しくはそのホモログの結合量(対照結合量)と比較する工程、及び
(iii) 上記(ii)の結果に基づいて、対照結合量に比して結合量を低下させる被験物質を選択する工程。 - 請求項3に記載の工程(i)、(ii)及び(iii)に更に:(iv) 上記(iii)で選択された被験物質の中から、更に成長ホルモン放出因子と同じ作用を発揮しない被験物質を選択する工程を含む、請求項3に記載の抗自己免疫疾患剤の有効成分の候補物質をスクリーニングする方法。
- 被験物質の中から、成長ホルモン放出因子阻害作用を有する物質を、成長ホルモン放出因子受容体の発現阻害を指標として探索することを特徴とする、抗自己免疫疾患剤の有効成分のスクリーニング方法。
- 下記の工程(i)、(ii)及び(iii)を含む請求項5に記載の抗自己免疫疾患剤の有効成分の候補物質をスクリーニングする方法:
(i)被験物質を成長ホルモン放出因子受容体を発現可能な細胞と接触させる工程、
(ii)被験物質を接触させた細胞の成長ホルモン放出因子受容体の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない上記に対応する成長ホルモン放出因子受容体を発現可能な細胞(対照細胞)の成長ホルモン放出因子受容体の発現量(対照発現量)と比較する工程、
(iii) 上記(ii)の比較結果に基づいて、対照発現量に比して成長ホルモン放出因子受容体の発現量を低下させる被験物質を選択する工程。 - 被験物質の中から、成長ホルモン放出因子阻害作用を有する物質を、成長ホルモン放出因子の発現又は分泌の阻害を指標として探索することを特徴とする、抗自己免疫疾患剤の有効成分の候補物質をスクリーニングする方法。
- 下記の工程(i)、(ii)及び(iii)を含む請求項7に記載の抗自己免疫疾患剤の有効成分の候補物質をスクリーニングする方法:
(i)被験物質を成長ホルモン放出因子を発現可能な細胞と接触させる工程、
(ii)被験物質を接触させた上記細胞の成長ホルモン放出因子の発現量または分泌量を測定し、該発現量または分泌量を、被験物質を接触させない上記に対応する対照細胞の成長ホルモン放出因子の発現量(対照発現量)又は分泌量(対照分泌量)と比較する工程、
(iii) 上記(ii)の比較結果に基づいて、対照発現量または対照分泌量に比して成長ホルモン放出因子の発現量または分泌量を低下させる被験物質を選択する工程。 - 抗自己免疫疾患剤が多発性硬化症、慢性関節リウマチまたは全身性エリテマトーデスの予防または治療薬である、請求項1乃至8のいずれかに記載のスクリーニング方法。
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