従って、本発明の目的の一つは、火花点火運転から自着火運転へと運転を切り換えたとき、水などの液体を噴射することにより運転切換え後の最初の自着火燃焼における筒内圧力上昇率が過大にならないようにして、自着火運転へと運転を切り換えた直後に燃焼騒音が過大となることを回避することができる内燃機関の制御装置を提供することにある。
上記目的を達成するための本発明の制御装置は、一部の運転領域においてシリンダとピストンとにより構成される燃焼室内に少なくとも空気及び燃料を含む混合ガスを形成し同混合ガスを火花により点火して燃焼させる火花点火運転を行い、他の運転領域において前記燃焼室内に少なくとも空気と燃料と燃焼ガスとを含む均質な混合ガスを形成し同混合ガスを圧縮することにより自着火させて燃焼させる予混合圧縮自着火運転を行う内燃機関に適用される。
そして、この制御装置は、
駆動信号に応答して液体を噴射する液体噴射手段を備えるとともに、
火花点火運転から予混合圧縮自着火運転に運転を切り換えるとき、同運転切換え直後の予混合圧縮自着火運転の最初の自着火に基づく燃焼が終了する時点において同時点までに前記液体噴射手段から噴射された液体が気化したガス(例えば、噴射される液体が水であれば水蒸気)が前記燃焼室内に存在するように、同運転切換え直前の最後の火花点火に基づく燃焼により生成された燃焼ガスが前記燃焼室から排出され始めた後の所定のタイミング(同運転切換え直前の火花点火運転における最後の火花点火に基づく燃焼が終了した後の所定のタイミング)にて前記駆動信号を発生する液体噴射制御手段を備えている。この場合、液体噴射手段は、液体を、燃焼室に直接噴射するように構成されていてもよく、燃焼室に連通された吸気通路(吸気ポートやインテークマニホールド)内に噴射するように構成されていてもよい。
これによれば、液体噴射手段が燃焼室に連通した吸気通路に液体を噴射するように構成されている場合、その液体噴射手段から噴射された液体は、運転切換え直前の火花点火運転における最後の火花点火に基づく燃焼が終了した後から同運転切換え直後の予混合圧縮自着火運転の最初の自着火に基づく燃焼が終了する時点まで(即ち、運転切換え時の最後の火花点火燃焼終了後から最初の自着火燃焼終了までの期間)において、吸気通路の壁面から熱を受けた後に燃焼室内に流入する。つまり、噴射された液体は、吸気通路において一部又は全部が気化した後に燃焼室に流入するか、或いは、液体の状態のまま燃焼室に流入した後に燃焼室内で気化する。
また、液体噴射手段が燃焼室に液体を直接噴射するように構成されている場合、その液体噴射手段から噴射された液体は、運転切換え直前の最後の火花点火燃焼終了後から運転切換え直後の最初の自着火燃焼終了までの期間において、燃焼室内にて気化する。
従って、このような液体の気化が自着火開始時期よりも適度に前の時点にて生じれば、自着火燃焼に供せられる混合ガスの温度が低くなるので、着火時期が早くなりすぎること(過早着火)が回避され、その結果、筒内圧力上昇率が過大とならず、燃焼騒音が過大とならない。
一方、このような液体の気化が自着火開始時期の直前の時点にて生じれば、混合ガスの空間的な温度不均一性が液体噴射を行わない場合よりも大きくなって、自着火が高温の混合ガスから低温の混合ガスへと順次進行することになるから、自着火燃焼が緩慢となる。その結果、筒内圧力上昇率が過大とならず、燃焼騒音が過大とならない。
他方、このような液体の気化が燃焼室において自着火燃焼中(特に、自着火燃焼による熱の量が上昇している期間)に生じれば、その時点以降における混合ガスの空間的な温度不均一性が液体噴射を行わない場合よりも大きくなって、その後に遅れて自着火する位置にある混合ガスの自着火が更に遅れる(自着火が一層緩慢に順次発生するようになる。)。その結果、筒内圧力上昇率が過大とならず、燃焼騒音が過大とならない。
本発明による他の内燃機関の制御装置は、上記内燃機関と同様に一部の運転領域において火花点火運転を行い、他の運転領域において予混合圧縮自着火運転を行う内燃機関に適用される制御装置であって、
駆動信号に応答して液体を前記燃焼室に直接噴射する液体噴射手段と、
前記火花点火運転から前記予混合圧縮自着火運転に運転を切り換えるとき、同運転切換え直前の最後の火花点火に基づく燃焼により生成された燃焼ガスが前記燃焼室から排出され始めてから同運転切換え直後の最初の自着火に基づく燃焼に供される前記混合ガスに含まれる空気が同燃焼室に流入され始める前までの期間に前記駆動信号を発生する液体噴射制御手段と、
を備えている。
これによれば、運転切換え直前の最後の火花点火に基づく燃焼ガスが燃焼室から排出され始めた後であって未だに運転切換え直後の最初の自着火燃焼に供される空気(新気)が燃焼室に流入させられていないとき、即ち、燃焼室内に燃焼ガスのみが存在してそのガス温度が極めて高いとき、その燃焼室内(燃焼ガス中)に液体が直接噴射される。従って、液体の量を多くしても同液体は十分に気化するので、燃焼ガス温度を十分に低下させることができる。これにより、最初の自着火燃焼に供せられる混合ガスの温度が低くなるので、過早着火が回避される。その結果、筒内圧力上昇率が過大とならず、燃焼騒音が過大とならない。
なお、この場合、液体は、最後の火花点火に基づく燃焼ガスを燃焼室から排出することを終了する排気弁閉弁時期(又は、排気弁閉弁時期直前の時期)から最初の自着火燃料に供せられる空気を燃焼室に流入させ始める吸気弁開弁時期までの期間(即ち、排気弁及び吸気弁の両者が閉弁している所謂、「負のバルブオーバーラップ期間」)に噴射されることが好ましい。なぜなら、燃焼ガスが燃焼室から排出され始めた直後(排気弁開弁時期直後、排気行程前半)に液体が噴射されると、その時点では冷却すべき燃焼ガス量が燃焼室内に多く、且つ、冷却した燃焼ガスの多くが燃焼室から排出されてしまうので、最初の自着火燃焼に供される混合ガスの温度を十分に下げようとすると、多量の液体を噴射しなければならないことになるからである。
この点は、以下に説明する他の発明であって、運転切換え直前の最後の火花点火に基づく燃焼により生成された燃焼ガスが前記燃焼室から排出され始めてから同運転切換え直後の最初の自着火に基づく燃焼に供される混合ガスに含まれる前記空気が同燃焼室に流入され始める前までの時点において、液体を燃焼室に直接噴射する発明についても、同様に適用される。
更に、この場合、前記液体噴射制御手段は、
前記運転切換え直後の最初の自着火に基づく燃焼をもたらすために前記燃焼室において前記混合ガスが圧縮され始めてから同混合ガスの自着火が終了するまで(好ましくは、自着火が開始するまで、又は、自着火が開始してその自着火に基づく燃焼により発生する熱の量が上昇している期間が終了するまで)の期間に前記駆動信号を更に発生するように構成されることが好適である。
これによれば、運転切換え直前の最後の火花点火に基づく燃焼により生成された燃焼ガスが燃焼室から排出され始めてから同運転切換え直後の最初の自着火に基づく燃焼に供される混合ガスに含まれる前記空気が同燃焼室に流入され始める前までの期間において燃焼室内に直接噴射される液体の量(第1回目の液体噴射量)を若干少なくして燃焼ガス温度を若干だけ低下せしめ、混合ガスを圧縮行程にて圧縮しても過早着火が発生しない範囲(過度に高温とならない範囲)で十分に高温化することができるので、失火が発生する可能性を極めて小さくすることができる。
また、上記第1回目の液体噴射量を若干少なくすることにより、定常的に自着火運転が行われている場合に比較して着火時期が僅かに早期になったとしても、液体は運転切換え直後の最初の自着火に基づく燃焼をもたらすために燃焼室において混合ガスが圧縮され始めてから同混合ガスの自着火が終了するまでの期間の所定の時期(好ましくは、最も早い自着火が発生する直前の圧縮行程後半の時期であって、その自着火に基づく燃焼により発生する熱量が上昇しているときに液体噴射手段から噴射された液体が丁度気化するような時期)にても燃焼室内に直接噴射される。
このように第2回目の噴射により噴射された液体は主として運転切換え直後の最初の自着火燃焼中において気化するので、混合ガスの空間的温度不均一性が大きくなり、液体噴射がない場合であっても自然に生じる混合ガスの空間的温度不均一性によって最も早く着火する位置の混合ガスよりも遅れて着火する位置にあった混合ガスの着火が更に遅れる(自着火が一層緩慢に順次発生するようになる。)。その結果、上記第1回目の液体噴射量を若干少なくしても、筒内圧力上昇率が過大とならず、燃焼騒音が過大とならない。
本発明による他の内燃機関の制御装置は、上記内燃機関と同様に一部の運転領域において火花点火運転を行い、他の運転領域において予混合圧縮自着火運転を行う内燃機関に適用される制御装置であって、
駆動信号に応答して液体を前記燃焼室に直接噴射する液体噴射手段と、
前記内燃機関の回転速度が所定の閾値回転速度より大きい高回転速度である場合には、同運転切換え直前の最後の火花点火に基づく燃焼により生成された燃焼ガスが前記燃焼室から排出され始めてから同運転切換え直後の最初の自着火に基づく燃焼に供される前記混合ガスに含まれる空気が同燃焼室に流入され始める前までの期間に前記駆動信号を発生し、
同内燃機関の回転速度が同閾値回転速度より小さい低回転速度である場合には、同運転切換え直後の最初の自着火に基づく燃焼をもたらすために前記燃焼室において前記混合ガスが圧縮され始めてから同混合ガスの自着火が終了するまでの期間に前記駆動信号を発生するように構成された液体噴射制御手段と、
を備える。
この構成によれば、内燃機関の回転速度が所定の閾値回転速度より大きい高回転速度である場合、運転切換え直前の最後の火花点火に基づく燃焼ガスが燃焼室から排出され始めた後であって未だに運転切換え直後の最初の自着火燃焼に供される空気(新気)が燃焼室に流入させられていないとき、即ち、燃焼室内に燃焼ガスのみが存在してそのガス温度が極めて高いとき、その燃焼室内(燃焼ガス中)に液体が直接噴射される。従って、噴射する液体の量を多くしても同液体は十分に気化するので、燃焼ガス温度を十分に低下させることができる。これにより、最初の自着火燃焼に供せられる混合ガスの温度が低くなるので、着火時期が早くなりすぎること(過早着火)が回避される。その結果、筒内圧力上昇率が過大とならず、燃焼騒音が過大とならない。
一方、上記構成によれば、内燃機関の回転速度が所定の閾値回転速度より小さい低回転速度である場合、液体は運転切換え直後の最初の自着火に基づく燃焼をもたらすために燃焼室において混合ガスが圧縮され始めてから同混合ガスの自着火が終了するまでの期間に燃焼室内に直接噴射される。そして、その液体は主として運転切換え直後の最初の自着火燃焼中において気化するので、混合ガスの空間的温度不均一性が大きくなり、液体噴射がない場合であっても自然に生じる混合ガスの空間的温度不均一性によって最も早く着火する位置の混合ガスよりも遅れて着火する位置にあった混合ガスの着火が更に遅れる(自着火が一層緩慢に順次発生するようになる。)。その結果、筒内圧力上昇率が過大とならず、燃焼騒音が過大とならない。
なお、低回転速度である場合、前記液体噴射手段は、前記運転切換え直後の予混合圧縮自着火運転の最初の自着火に基づく燃焼が開始した後であって同燃焼により発生する熱量が上昇しているときに前記液体噴射手段から噴射された液体が気化するように、同最初の自着火に基づく燃焼をもたらすために前記燃焼室において前記混合ガスが圧縮されている最中(好ましくは、最も早い自着火が発生する直前の圧縮行程後半の時期)に前記駆動信号を発生することが望ましい。
更に、一般に、低回転時において、混合ガスの温度は高くなり難い。従って、高回転時のように、液体が、運転切換え直前の最後の火花点火に基づく燃焼ガスが燃焼室から排出され始めた後であって未だに運転切換え直後の最初の自着火燃焼に供される空気(新気)が燃焼室に流入させられていないときに噴射されてしまうと、圧縮初期の混合ガス温度が低下しすぎ、圧縮によっても混合ガス温度が十分に上昇せず、その結果、着火時期が大幅に遅れるか、或いは、失火する可能性が生じる。
一方、圧縮行程中(特に、自着火開始直前)に燃焼室内に液体が噴射されたとしても、その液体は直ちに燃焼室全体に行き渡ることはない。従って、液体噴射直後において、噴射された液体から温度上の影響を殆ど受けない混合ガスが燃焼室内に存在し、その温度上の影響を殆ど受けない混合ガスは液体噴射がなされなかった場合の混合ガスの着火開始時点とほぼ同様な時点にて着火する。以上の結果、本発明による内燃機関の制御装置は、低回転時において、運転切換え直後の着火開始時期が大幅に遅角することがないので失火が発生せず、且つ、運転切換え直後の自着火燃焼が緩慢となるので過大な燃焼騒音を発生させなくすることができる。
本発明による他の内燃機関の制御装置は、上記内燃機関と同様に一部の運転領域において火花点火運転を行い、他の運転領域において予混合圧縮自着火運転を行う内燃機関に適用される制御装置であって、
駆動信号に応答して液体を前記燃焼室に直接噴射する液体噴射手段と、
前記駆動信号を内燃機関の回転速度に応じて以下に述べるタイミングにて発生し、以下に述べる利点を有する液体噴射制御手段と、を備える。
(1)前記内燃機関の回転速度が所定の第1回転速度より小さい低回転速度である場合には、同運転切換え直後の最初の自着火に基づく燃焼をもたらすために前記燃焼室において前記混合ガスが圧縮され始めてから同混合ガスの自着火が終了するまでの期間に前記駆動信号を発生する。
これによれば、液体は運転切換え直後の最初の自着火に基づく燃焼をもたらすために燃焼室において混合ガスが圧縮され始めてから同混合ガスの自着火が終了するまでの期間に燃焼室内に直接噴射される。従って、上述したように、最も早く着火する位置の混合ガスよりも遅れて着火する位置にあった混合ガスの着火が更に遅れる(自着火が一層緩慢に順次発生するようになる。)。
更に、上述したように、噴射された液体から温度上の影響を殆ど受けない混合ガスが燃焼室内に存在し、その温度上の影響を殆ど受けない混合ガスは液体噴射がなされなかった場合の混合ガスの着火開始時点とほぼ同様な時点にて着火する。以上の結果、本発明による内燃機関の制御装置は、低回転時における運転切換え直後の着火開始時期が大幅に遅角することがないので失火が発生せず、且つ、運転切換え直後の自着火燃焼が緩慢となるので過大な燃焼騒音を発生させなくすることができる。
なお、この低回転速度である場合、前記液体噴射手段は、前記運転切換え直後の予混合圧縮自着火運転の最初の自着火に基づく燃焼が開始した後であって同燃焼により発生する熱量が上昇しているときに前記液体噴射手段から噴射された液体が気化するように、同最初の自着火に基づく燃焼をもたらすために前記燃焼室において前記混合ガスが圧縮されている最中(好ましくは、最も早い自着火が発生する直前の圧縮行程後半の時期)に前記駆動信号を発生することが望ましい。この点は、以下の(3)に述べる中回転速度である場合にも、同様に適用される。
(2)内燃機関の回転速度が同所定の第1回転速度より大きい第2回転速度より大きい高回転速度である場合には、同運転切換え直前の最後の火花点火に基づく燃焼により生成された燃焼ガスが前記燃焼室から排出され始めてから同運転切換え直後の最初の自着火に基づく燃焼に供される前記混合ガスに含まれる空気が同燃焼室に流入され始める前までの期間に前記駆動信号を発生する。
これによれば、上述したように、燃焼室内に燃焼ガスのみが存在してそのガス温度が極めて高いとき、その燃焼室内(燃焼ガス中)に液体が直接噴射される。従って、液体の量を多くしても同液体は十分に気化するので、燃焼ガス温度を十分に低下させることができる。これにより、最初の自着火燃焼に供せられる混合ガスの温度が低くなるので、着火時期が早くなりすぎること(過早着火)が回避される。その結果、筒内圧力上昇率が過大とならず、燃焼騒音が過大とならない。
(3)内燃機関の回転速度が同第1回転速度と同第2回転速度との間の中回転速度である場合には、同運転切換え直前の最後の火花点火に基づく燃焼により生成された燃焼ガスが前記燃焼室から排出され始めてから同運転切換え直後の最初の自着火に基づく燃焼に供される前記混合ガスに含まれる空気が同燃焼室に流入され始める前までの期間に前記駆動信号を発生し(最初の液体噴射を行い)、且つ、同運転切換え直後の最初の自着火に基づく燃焼をもたらすために前記燃焼室において前記混合ガスが圧縮され始めてから同混合ガスの自着火が終了するまでの期間にも更に前記駆動信号を発生する(最後の液体噴射を行う)。
これによれば、最初の液体噴射により噴射された液体は、高い温度の燃焼ガスにより確実に気化する。また、その液体の量を若干少なくして燃焼ガス温度を若干だけ低下せしめ、圧縮により混合ガスを過度に高温とならない範囲で十分に高温化して混合ガスを着実に自着火させるとともに、最後の液体噴射により噴射された液体により、最も早く着火する位置の混合ガスよりも遅れて着火する位置にあった混合ガスの着火を更に遅らせることにより、過大な燃焼騒音を発生させなくすることができる。
本発明による他の内燃機関の制御装置は、上記内燃機関と同様に一部の運転領域において火花点火運転を行い、他の運転領域において予混合圧縮自着火運転を行う内燃機関に適用される制御装置であって、
第1駆動信号に応答して液体を前記燃焼室に直接噴射する筒内液体噴射手段と、
第2駆動信号に応答して液体を前記燃焼室に連通された吸気通路内に噴射する吸気通路液体噴射手段と、を備える。
更に、この制御装置は、
前記火花点火運転から前記予混合圧縮自着火運転に運転を切り換えるとき、
前記内燃機関の回転速度が所定の閾値回転速度より小さい低回転速度である場合には、前記筒内液体噴射手段から液体を噴射し、
同内燃機関の回転速度が同所定の閾値回転速より大きい高回転速度である場合には、前記吸気通路液体噴射手段から液体を噴射するように構成された液体噴射制御手段を備える。
この場合、内燃機関の回転速度が所定の閾値回転速度より小さい低回転速度であるとき、同運転切換え直後の最初の自着火に基づく燃焼が終了する時点において同時点までに前記筒内液体噴射手段から噴射された液体が気化したガスが前記燃焼室内に存在するように、液体は筒内液体噴射手段から、同運転切換え直後の最初の自着火に基づく燃焼をもたらすために前記燃焼室において前記混合ガスが圧縮され始めてから同混合ガスの自着火が終了する前の所定の第1タイミングにて燃焼室内に直接噴射される。
従って、この液体の気化が自着火開始時期よりも適度に前の時点にて生じれば、自着火燃焼に供せられる混合ガスの温度が低くなるので、着火時期が早くなりすぎること(過早着火)が回避され、その結果、筒内圧力上昇率が過大とならず、燃焼騒音が過大とならない。
一方、この液体の気化が自着火開始時期の直前の時点にて生じれば、混合ガスの空間的な温度不均一性が液体噴射を行わない場合よりも大きくなって、自着火が高温の混合ガスから低温の混合ガスへと順次進行することになるから、自着火燃焼が緩慢となる。その結果、筒内圧力上昇率が過大とならず、燃焼騒音が過大とならない。
他方、液体の気化が燃焼室において自着火燃焼中(特に、自着火燃焼による熱の量が上昇している期間)に生じれば、その時点以降における混合ガスの空間的な温度不均一性が液体噴射を行わない場合よりも大きくなって、その後に遅れて自着火する位置にある混合ガスの自着火が更に遅れる(自着火が一層緩慢に順次発生するようになる。)。その結果、筒内圧力上昇率が過大とならず、燃焼騒音が過大とならない。
このように、低回転時は、液体が燃焼室内に直接噴射されるので、その液体が一般に低回転時において低温となる吸気通路壁面に付着することがなく、しかも、燃焼室内で効率良く気化せしめられて燃焼騒音の抑制に利用されるので、液体の使用量を低減することができる。
これに対し、内燃機関の回転速度が所定の閾値回転速度より大きい高回転速度である場合、液体は吸気通路液体噴射手段から、運転切換え直前の最後の火花点火に基づく燃焼が終了した後であって同運転切換え直後の最初の自着火に基づく燃焼に供される混合ガスに含まれる空気の前記燃焼室への流入が終了する前の所定の時期にて吸気通路内に噴射される。そして、その噴射された液体は、吸気通路の壁面から熱を受けた後に燃焼室内に流入する。
従って、運転切換え直前の最後の火花点火に基づく燃焼の終了時点から運転切換え直後の最初の自着火に基づく燃焼開始までの時間が短い高回転時においても、噴射された液体に熱を加える時間を長くとることができるので、同液体を十分に気化させることができる。このため、高回転時においても自着火燃焼に供せられる混合ガスの温度を低くすることができるので、過早着火が回避される。その結果、筒内圧力上昇率が過大とならず、燃焼騒音が過大とならない。
本発明による他の内燃機関の制御装置は、上記内燃機関と同様に一部の運転領域において火花点火運転を行い、他の運転領域において予混合圧縮自着火運転を行う内燃機関に適用される制御装置であって、
駆動信号に応答して液体を前記燃焼室に直接噴射する液体噴射手段と、
前記火花点火運転から前記予混合圧縮自着火運転に運転を切り換えるとき、同運転切換え直後の最初の自着火に基づく燃焼をもたらすために前記燃焼室において前記混合ガスが圧縮され始めてから同混合ガスの自着火が終了するまでの期間に前記駆動信号を発生するように構成された液体噴射制御手段と、
を備える。
これによれば、液体は運転切換え直後の最初の自着火に基づく燃焼をもたらすために燃焼室において混合ガスが圧縮され始めてから同混合ガスの自着火が終了するまでの期間に燃焼室内に直接噴射される。従って、上述したように、最も早く着火する位置の混合ガスよりも遅れて着火する位置にあった混合ガスの着火が更に遅れる(自着火が一層緩慢に順次発生するようになる。)。従って、過大な燃焼騒音が発生しない。
この場合、前記液体噴射制御手段は、前記運転切換え直後の予混合圧縮自着火運転の最初の自着火に基づく燃焼が開始した後であって同燃焼により発生する熱量が上昇しているときに前記液体噴射手段から噴射された液体が気化するように、同最初の自着火に基づく燃焼をもたらすために前記燃焼室において前記混合ガスが圧縮されている最中に前記駆動信号を発生するように構成されることが望ましい。
これによれば、混合ガスの燃焼により発生する熱の量(単位時間又は単位クランク角あたりの熱量)が上昇している期間(即ち、燃焼中)において前記液体噴射手段から噴射された液体が気化し、その気化(気化熱)により混合ガスが冷却される。このように、噴射された液体が自着火燃焼に伴って発生する熱の量が上昇している期間に気化すると、混合ガスの空間的温度不均一性が大きくなり、液体噴射がない場合であっても自然に生じる混合ガスの空間的温度不均一性によって最も早く着火する位置の混合ガスよりも遅れて着火する位置にあった未着火の混合ガスの着火が更に遅れる(自着火が一層緩慢に順次発生するようになる。)。この結果、液体が気化を開始した時点以降において、着火が一層緩慢に発生し、燃焼が緩慢に進行するので、筒内圧力上昇率が過大にならない。
また、着火開始前に燃焼室内に液体が噴射されたとしても、その液体は直ちに燃焼室全体に行き渡ることはない。従って、液体噴射直後において、噴射された液体から温度上の影響を殆ど受けない混合ガスが燃焼室内に存在し、その温度上の影響を殆ど受けない混合ガスは液体噴射がなされなかった場合の混合ガスの着火開始時点とほぼ同様な時点にて着火する。以上の結果、本発明による内燃機関の制御装置は、着火開始時期が大幅に遅角されてしまうことがないので失火が発生せず、且つ、燃焼が緩慢となるので運転切換え時の過大な燃焼騒音を発生させなくすることができる。
以下、本発明による内燃機関の制御装置の各実施形態について説明する。各実施形態の制御装置は、ピストン往復動型の多気筒(ここでは4気筒)内燃機関に適用される。この内燃機関は、一部の運転領域において上述した火花点火運転を行い、他の運転領域において上述した均質予混合圧縮自着火運転を行う内燃機関である。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る制御装置が適用される4サイクル内燃機関10の概略を示している。4サイクル内燃機関とは、クランク角が720度経過する毎に、膨張行程、排気行程、吸気行程及び圧縮行程を繰り返す内燃機関のことをいう。
この内燃機関10は、図1に示したように、シリンダブロック部20と、シリンダブロック部20の上に固定されたシリンダヘッド部30とを含んでいる。なお、図1は、特定気筒の断面のみを示しているが、他の気筒も同様な構成を備えている。
シリンダブロック部20は、図示しないクランク軸を収容したシリンダブロックロワーケース及びオイルパン等を含んでいる。シリンダブロック部20は、更に、シリンダ21、ピストン22及びコネクティングロッド23を備えている。ピストン22はシリンダ21内を往復動し、ピストン22の往復動がコネクティングロッド23を介してクランク軸に伝達され、これにより同クランク軸が回転するようになっている。シリンダ21のボア壁面とピストン22の頂面は、シリンダヘッド部30の下面とともに燃焼室24を形成している。
シリンダヘッド部30は、燃焼室24に連通した吸気ポート31、吸気ポート31を開閉する吸気弁32、吸気弁32を駆動する吸気弁駆動機構32a、燃焼室24に連通した排気ポート33、排気ポート33を開閉する排気弁34、排気弁34を駆動する排気弁駆動機構34a、点火プラグ35及び点火プラグ35に与える高電圧を発生するイグニッションコイルを含むイグナイタ36を備えている。
吸気弁駆動機構32a及び排気弁駆動機構34aは、電磁駆動機構を備えていて、駆動信号に応答して吸気弁32及び排気弁34をそれぞれ開閉駆動するようになっている。吸気ポート31、吸気弁32及び吸気弁駆動機構32aからなる組は、一つの気筒に2組備えられている。また、排気ポート33、排気弁34及び排気弁駆動機構34aからなる組も、一つの気筒に2組備えられている。
吸気ポート31には、吸気ポート31とともに燃焼室24に連通した吸気通路を構成するインテークマニホールド41が接続されている。このインテークマニホールド41には、液体噴射弁42と燃料噴射弁(インジェクタ)43とが配設されている。
液体噴射弁42は、液体供給管44を介してポンプ(液体加圧手段)45に接続されている。ポンプ45は水を収容した液体タンク46に接続されている。ポンプ45は高圧の液体(水)を液体噴射弁42に供給するようになっている。これにより、液体噴射弁42は、駆動信号に応答して開弁したとき、インテークマニホールド41及び吸気ポート31(吸気通路)内であって吸気弁32の背面に向けて高圧の液体(水)を噴射するようになっている。なお、液体噴射弁42、液体供給管44、ポンプ45及び液体タンク46は、液体噴射手段を構成している。
燃料噴射弁43は、図示しない燃料配管を介して図示しない燃料ポンプに接続されている。燃料ポンプは図示しない燃料タンクに接続されている。燃料ポンプは高圧の燃料(ガソリン)を燃料噴射弁43に供給するようになっている。これにより、燃料噴射弁43は、駆動信号に応答して開弁したとき、インテークマニホールド41及び吸気ポート31(吸気通路)内であって吸気弁32の背面に向けて燃料を噴射するようになっている。なお、これらは燃料噴射手段を構成している。
次に、電気ブロック図である図2を参照しながら、内燃機関10の制御装置の電気的構成について説明する。この制御装置は電気制御装置50を含んでいる。電気制御装置50は、CPU、ROM、RAM及びインターフェース等(何れも図示省略)を含むマイクロコンピュータである。
電気制御装置50には、図示しないアクセルペダルの操作量Accpを検出するアクセルペダル操作量センサ51と、クランク軸の回転速度からエンジン回転速度NEを検出するエンジン回転速度センサ52とが接続されている。電気制御装置50は、これらのセンサから各検出信号を入力するようになっている。更に、電気制御装置50は、各気筒の吸気弁駆動機構32a、排気弁駆動機構34a、イグナイタ36、液体噴射弁42及び燃料噴射弁43と接続されている。電気制御装置50は、これらに駆動信号を送出するようになっている。
次に、上記のように構成された内燃機関の制御装置の作動について説明する。電気制御装置50のCPUは、図3にフローチャートにより示した運転領域判定ルーチンを所定時間が経過する毎に繰り返し実行するようになっている。
従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ300から処理を開始してステップ305に進み、現時点の負荷(この例では、アクセルペダル操作量Accp)及び現時点のエンジン回転速度NEと、アクセルペダル操作量Accp及びエンジン回転速度NEと目標トルクTqtgtとの関係を規定するテーブルMapTqtgtとに基づいて現時点の目標トルクTqtgt(=MapTqtgt(Accp,NE))を決定する。
なお、以下の説明において、Map*X(a,b)と標記されるテーブルは、変数a及び変数bと値Xとの関係を規定するテーブルを意味することとする。記号「*」は必要に応じてテーブルを特定するために使用される添え字である。また、値XをテーブルMap*X(a,b)に基づいて求めるとは、値Xを現時点の変数a及び現時点の変数bとテーブルMap*X(a,b)とに基づいて求める(決定する)ことを意味することとする。
次に、CPUはステップ310に進み、上記決定された目標トルクTqtgtと現時点のエンジン回転速度NEとステップ310内に図示された領域判定マップとにより、現在の運転状態が4サイクル自着火運転領域にあるか、4サイクル火花点火運転領域にあるかを判定する。なお、4サイクル自着火運転領域は、4サイクル火花点火運転領域よりも低負荷側且つ低回転側に設定されている。
次に、CPUはステップ315に進み、現在の運転状態が4サイクル自着火運転領域にあるか否かを判定する。そして、現在の運転状態が4サイクル自着火運転領域にあれば、CPUはステップ315にて「Yes」と判定してステップ320に進み、自着火運転領域フラグXJの値を「1」に設定する。一方、現在の運転状態が4サイクル火花点火運転領域にあれば、CPUはステップ315にて「No」と判定してステップ325に進み、自着火運転領域フラグXJの値を「0」に設定する。その後、CPUはステップ395に進み、本ルーチンを一旦終了する。
また、CPUは、図4にフローチャートにより示した制御量及び制御時期決定ルーチンを、各気筒のクランク角が排気上死点前90度(火花点火運転及び自着火運転における排気弁開弁時期EOより遅角側であって排気弁閉弁時期ECよりも進角側の所定クランク角)となる毎に各気筒毎に独立して繰り返し実行するようになっている。以下、任意の一つの気筒に着目して説明を続けると、その気筒のクランク角がその気筒の排気上死点前90度となったとき、CPUはステップ400から処理を開始してステップ405に進み、目標トルクTqtgtをMapTqtgt(Accp,NE)に基づいて求める。次に、CPUはステップ410に進んで自着火運転領域フラグXJの値が「0」であるか否かを判定する。
いま、現在の運転状態が4サイクル火花点火運転領域にあるとして説明を続けると、自着火運転領域フラグXJの値は「0」となっている(図3のステップ325を参照。)。従って、CPUはステップ410にて「Yes」と判定してステップ415乃至ステップ450の処理を順に実行し、各種の制御量及び制御時期を以下のように決定した後、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ415;4サイクル火花点火運転用の排気弁開弁時期EOをテーブルMapHEO(Tqtgt,NE)に基づいて求める。
ステップ420;4サイクル火花点火運転用の吸気弁開弁時期IOをテーブルMapHIO(Tqtgt,NE)に基づいて求める。
ステップ425;4サイクル火花点火運転用の排気弁閉弁時期ECをテーブルMapHEC(Tqtgt,NE)に基づいて求める。
ステップ430;4サイクル火花点火運転用の吸気弁閉弁時期ICをテーブルMapHIC(Tqtgt,NE)に基づいて求める。
ステップ415乃至ステップ430にて決定される吸気弁開弁時期IO、吸気弁閉弁時期IC、排気弁開弁時期EO及び排気弁閉弁時期ECは、図6(A)に示したように定められる。燃焼室24に流入する空気の量は、これらの時期により調整される。
ステップ435;4サイクル火花点火運転用の燃料噴射時期(燃料噴射開始時期)θinjをテーブルMapHθinj(Tqtgt,NE)に基づいて求める。
ステップ440;4サイクル火花点火運転用の燃料噴射量TAUをテーブルMapHTAU(Tqtgt,NE)に基づいて求める。燃料噴射量TAUは、目標トルクTqtgt及びエンジン回転速度NEにより定まる空燃比が得られるように定められる。なお、この空燃比は、例えば、理論空燃比であって、後述する自着火運転における空燃比よりもリッチな空燃比に設定されている。
ステップ445;4サイクル火花点火運転用の点火時期θigをテーブルMapHθig(Tqtgt,NE)に基づいて求める。
ステップ450;その時点の自着火運転領域フラグXJの値を直前の自着火運転領域フラグXJoldに格納する。
更に、CPUは、図5にフローチャートにより示した駆動制御ルーチンを、クランク角が微少の角度だけ経過する毎に各気筒別に実行するようになっている。以下、前記任意の一つの気筒に着目して説明を続けると、CPUは所定のタイミングにてステップ500から本ルーチンの処理を開始し、ステップ505に進んで現時点のクランク角が前述した図4のステップ415にて決定された排気弁開弁時期EOと一致しているか否かを判定する。そして、現時点のクランク角が排気弁開弁時期EOと一致していると、CPUはステップ505にて「Yes」と判定してステップ510に進み、排気弁34を開弁するための駆動信号を排気弁駆動機構34aに出力する。これにより、排気弁34が開弁せしめられ、膨張期間が終了し、燃焼ガスが燃焼室24から排出され始める(排気期間が開始する)。
以降、CPUはステップ515乃至ステップ585の処理を適宜実行する。これにより、CPUは排気弁34を開弁させる場合と同様に各種の駆動信号を適当なタイミングにて発生し、以下に記述する各種の動作を行う。その後、CPUはステップ595にて本ルーチンを一旦終了する。
ステップ515及びステップ520;クランク角が図4のステップ420にて決定された吸気弁開弁時期IOとなったとき、吸気弁32を開弁するための駆動信号を吸気弁駆動機構32aに出力する。これにより、吸気弁32が開弁せしめられ、燃焼室24に空気が流入され始める(吸気期間が開始する)。
ステップ525及びステップ530;クランク角が図4のステップ435にて決定された燃料噴射時期θinjとなったとき、ステップ440にて決定された燃料噴射量TAUに応じた時間だけ燃料噴射弁43を開弁し、燃料噴射量TAUの燃料を吸気通路に噴射する。
ステップ535及びステップ540;クランク角が図4のステップ425にて決定された排気弁閉弁時期ECとなったとき、排気弁34を閉弁するための駆動信号を排気弁駆動機構34aに出力する。これにより、排気弁34が閉弁せしめられ、排気期間が終了する。
ステップ545及びステップ550;クランク角が図4のステップ430にて決定された吸気弁閉弁時期ICとなったとき、吸気弁32を閉弁するための駆動信号を吸気弁駆動機構32aに出力する。これにより、吸気弁32が閉弁せしめられ、吸気期間が終了し、圧縮期間が開始する。
ステップ555乃至ステップ565;後述する液体噴射フラグXLiqの値が「1」であり、且つ、クランク角が後述する図4のステップ490にて決定された液体噴射時期θLiqとなったとき、後述するステップ491にて決定された液体噴射量Liqに応じた時間だけ液体噴射弁42を開弁し、液体噴射量Liqの液体である水を吸気通路(ポート)内に噴射する。
ステップ570;液体噴射フラグXLiqの値を「0」に設定する。
ステップ575乃至ステップ585;自着火運転領域フラグXJの値が「0」であり、且つ、クランク角が図4のステップ445にて決定された点火時期θigとなったとき、イグナイタ36に駆動信号を送出する。これにより、点火プラグ35により火花が生成され、火花点火燃焼が開始する。
以上により、図6(A)に示したような4サイクル火花点火運転が行われる。
次に、現在の運転状態が4サイクル火花点火運転領域から4サイクル自着火運転領域へと変化した場合について説明する。このとき、CPUが図3の運転領域判定ルーチンの処理をステップ300から開始すると、同CPUはステップ315にて「Yes」と判定してステップ320に進み、自着火運転領域フラグXJの値を「1」に設定する。
この直後、CPUが図4のルーチンの処理をステップ400から開始すると、同CPUはステップ410にて「No」と判定し、ステップ455に進んで直前の自着火運転領域フラグXJoldの値が「0」であるか否かを判定する。この場合、直前の自着火運転領域フラグXJoldの値は「0」であるから、CPUはステップ455にて「Yes」と判定し、ステップ490乃至ステップ492の処理を以下のように順に実行する。
ステップ490;液体噴射時期(吸気通路噴射用液体噴射開始時期)θLiqをテーブルMapθLiq(Tqtgt,NE)に基づいて求める。このテーブルMapθLiq(Tqtgt,NE)によれば、液体噴射時期θLiqは、火花点火運転から自着火運転への運転切換え直後の最初の自着火に基づく燃焼が終了する時点において同時点までに液体噴射弁42から噴射された液体(水)が気化したガス(水蒸気)が燃焼室24内に存在するように、同運転切換え直前の最後の火花点火に基づく燃焼により生成された燃焼ガスが前記燃焼室から排出され始めた後の所定のタイミングとなるように定められる。なお、本明細書において、「運転切換え直前の最後の火花点火に基づく燃焼により生成された燃焼ガスが燃焼室24から排出され始めた後」と「運転切換え直前の最後の火花点火に基づく燃焼が終了した後」とは実質的に同じ意味に使用される。
より具体的には、液体噴射時期θLiqは、運転切換え直前の最後の火花点火に基づく燃焼の終了後であって同燃焼に基づく燃焼ガスを燃焼室24から排出する期間を終了する排気弁閉弁時期EC(後述するステップ470を参照。)から、同運転切換え直後の最初の自着火燃焼に対する吸気弁閉弁時期IC(後述するステップ475を参照。)までの期間内の時期であることが好ましい。更に好ましくは、液体噴射時期θLiqは、運転切換え直前の最後の火花点火に対する排気弁閉弁時期ECから同運転切換え直後の最初の自着火燃焼に対する吸気弁開弁時期IO(後述するステップ465を参照。)までの期間(後述する「負のバルブオーバーラップ期間」)内の所定の時期に設定される。
ステップ491;液体噴射量LiqをテーブルMapLiq(Tqtgt,NE)に基づいて求める。
ステップ492;液体噴射フラグXLiqの値を「1」に設定する。
その後、CPUはステップ460乃至ステップ485の処理を以下のように順に実行し、ステップ450を経由してステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
ステップ460;4サイクル自着火運転用の排気弁開弁時期EOをテーブルMapJEO(Tqtgt,NE)に基づいて求める。
ステップ465;4サイクル自着火運転用の吸気弁開弁時期IOをテーブルMapJIO(Tqtgt,NE)に基づいて求める。
ステップ470;4サイクル自着火運転用の排気弁閉弁時期ECをテーブルMapJEC(Tqtgt,NE)に基づいて求める。
ステップ475;4サイクル自着火運転用の吸気弁閉弁時期ICをテーブルMapJIC(Tqtgt,NE)に基づいて求める。
ステップ460乃至ステップ475にて決定される吸気弁開弁時期IO、吸気弁閉弁時期IC、排気弁開弁時期EO及び排気弁閉弁時期ECは、図6(B)に示したように定められる。燃焼室24に流入する空気の量及び燃焼室24に残留する燃焼ガスの量は、これらの時期により調整される。なお、排気弁閉弁時期ECは吸気弁開弁時期IOよりも所定クランク角だけ先に到来するように設定されている。これにより、排気終了時点から吸気開始時点まで吸気弁32及び排気弁34が共に閉弁している、所謂「負のバルブオーバーラップ期間」が設定される。その結果、燃焼ガスは燃焼室24内に滞留せしめられ、その燃焼ガスが自着火燃焼に供される混合ガスに含まれるようになる。また、目標トルクTqtgt及びエンジン回転速度NE等の燃焼ガス量を決定するパラメータが変化しない場合、火花点火運転から自着火運転への運転切換え直後の(一回の)自着火燃焼に供される混合ガス中の燃焼ガス量と、その後の自着火運転時における一回の自着火燃焼に供される混合ガス中の燃焼ガス量とは、一定値(又は略一定値)に維持される。
ステップ480;4サイクル自着火運転用の燃料噴射時期(燃料噴射開始時期)θinjをテーブルMapJθinj(Tqtgt,NE)に基づいて求める。
ステップ485;4サイクル自着火運転用の燃料噴射量TAUをテーブルMapJTAU(Tqtgt,NE)に基づいて求める。燃料噴射量TAUは、目標トルクTqtgt及びエンジン回転速度NEにより定まる空燃比が得られるように定められる。
一方、CPUは図5に示したルーチンを繰り返し実行している。従って、自着火運転領域フラグXJの値が「1」となっていて、図4のステップ410にて「No」と判定される場合は、上記ステップ460乃至ステップ485により決定された自着火運転用の制御量及び制御時期に従って各種の制御が実行され、図6(B)に示したような4サイクル自着火運転が行われる。
また、現時点のように、運転領域が4サイクル火花点火運転領域から4サイクル自着火運転領域へと変化した直後においては、図4のステップ490乃至ステップ492が実行されている。従って、液体噴射フラグXLiqの値は「1」に設定されているから、CPUは図5のステップ555乃至ステップ570を実行する。この結果、クランク角が液体噴射時期θLiqとなったとき、液体噴射量Liqの液体(水)が液体噴射弁42から吸気通路内に一度だけ噴射される。
なお、図4に示したルーチンの実行タイミングは、火花点火運転及び自着火運転における排気弁閉弁時期ECより僅かに前であって、排気弁開弁期間中である。従って、現時点のように、運転領域が4サイクル火花点火運転領域から4サイクル自着火運転領域へと変化したとき、排気弁34は運転切換え直前において火花点火運転に適した排気弁開弁時期EOにて開弁せしめられ、その開弁している排気弁34は運転切換え直後において自着火運転に適した排気弁閉弁時期ECにて閉弁せしめられることになる。
以上、説明したように、第1実施形態に係る内燃機関の制御装置は、火花点火運転から自着火運転に運転を切換えるとき、図7に示したように、運転切換え直前の最後の火花点火燃焼に対する排気弁閉弁時期ECから同運転切換え直後の最初の自着火燃焼に対する吸気弁開弁時期IOまでの期間に、吸気通路(インテークマニホールド41及び吸気ポート31)に液体噴射弁42から液体(水)を噴射する。そして、その噴射された液体(水)は、運転切換え直後の予混合圧縮自着火運転の最初の自着火に基づく燃焼が終了する時点(その自着火に基づく燃焼に対する排気弁開弁時期EO)までに気化し、同時点において気化したガス(水蒸気)の状態にて燃焼室24内に存在する。
より具体的に述べると、液体噴射弁42から噴射された液体は、運転切換え直前の最後の火花点火燃焼終了後から運転切換え直後の最初の自着火燃焼終了までの期間において、吸気通路の壁面から熱を受けた後に燃焼室24に流入する。つまり、噴射された液体は、吸気通路において一部又は全部が気化した後に燃焼室24に流入するか、或いは、液体の状態のまま燃焼室24に流入した後に燃焼室24内で気化する。
従って、この液体は、運転切換え直後の最初の自着火開始時期よりも適度に前の時点(例えば、最初の自着火に基づく燃焼に対する圧縮行程開始前、即ち、その自着火に基づく燃焼に対する吸気弁閉弁時期ICの前)にて気化するから、自着火燃焼に供せられる混合ガスの圧縮開始時の初期温度及び/又は圧縮途中における温度が低くなる。これにより、圧縮行程中に混合ガスの温度が早く上昇しすぎることがないので、着火時期が早くなりすぎること(過早着火)が回避される。その結果、筒内圧力上昇率が過大とならず、燃焼騒音が過大とならない。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る内燃機関の制御装置について説明する。この第2実施形態は、図8に示したように、第1実施形態における液体噴射弁42の配設位置及び液体噴射方向を変更した液体噴射弁47を採用した点、及び、火花点火運転から予混合圧縮自着火運転に運転を切り換えるにあたり、液体噴射弁47から噴射される液体の液体噴射時期θLiqを、同運転切換え直前の最後の火花点火に基づく燃焼により生成された燃焼ガスが燃焼室24から排出され始めてから同運転切換え直後の最初の自着火に基づく燃焼に供される混合ガスに含まれる空気が燃焼室24に流入され始める前までの期間に設定した点のみにおいて同第1実施形態と相違している。従って、以下、この相違点を中心として図8を参照しながら説明する。
液体噴射弁47は、シリンダブロック部20とシリンダヘッド部30との間に配置されている。液体噴射弁47の噴射口は燃焼室24の上部に露呈している。液体噴射弁47は、第1実施形態の液体噴射弁42と同様、ポンプ45によって液体タンク46の液体(この場合、水)が供給されている。そして、液体噴射弁47は、駆動信号により開弁せしめられたとき、ピストン22の頂面と略平行な方向に液体を噴射するように配設されている。
また、第2実施形態の電気制御装置50は、液体噴射弁47と接続されている。電気制御装置50のCPUは、図3乃至図5に示したフローチャートを第1実施形態と同様に実行するようになっている。ただし、図4のステップ490にて使用されるテーブルMapθLiqは、第1実施形態のテーブルMapθLiqと相違するように変更されている。
この変更されたテーブルMapθLiqによれば、液体噴射時期θLiqは、火花点火運転から予混合圧縮自着火運転に運転を切り換えるとき、同運転切換え直前の最後の火花点火に基づく燃焼により生成された燃焼ガスが燃焼室24から排出され始めた時点(より具体的には、最後の火花点火に基づく燃焼により生成された燃焼ガスの排出を開始する排気弁開弁時期EO)から、同運転切換え直後の最初の自着火に基づく燃焼に供される混合ガスに含まれる空気が燃焼室24に流入され始める時点(より具体的には、その最初の自着火に基づく燃焼に対する吸気弁開弁時期IO)までの期間内となるように設定される。
従って、第2実施形態によれば、運転切換え直前の最後の火花点火に基づく燃焼ガスが燃焼室24から排出され始めた後であって未だに運転切換え直後の最初の自着火燃焼に供される空気(新気)が燃焼室24に流入させられていないとき、即ち、燃焼室24内に燃焼ガスのみが存在してそのガス温度が極めて高いとき、その燃焼室24内(燃焼ガス中)に液体が直接噴射される。従って、液体の量を多くしても同液体は十分に気化するので、燃焼ガス温度を十分に低下させることができる。これにより、最初の自着火燃焼に供せられる混合ガスの温度が低くなるので、着火時期が早くなりすぎること(過早着火)が回避される。その結果、筒内圧力上昇率が過大とならず、燃焼騒音が過大とならない。
なお、上記液体噴射時期θLiqは「負のバルブオーバーラップ期間」内に設定されることが好ましい。これは、燃焼ガスが燃焼室24から排出され始めた直後(排気弁開弁時期EO直後)に液体が噴射されると、その時点では冷却すべき燃焼ガス量が燃焼室24内に多く存在していて、且つ、液体により冷却した燃焼ガスの多くが燃焼室24から排出されてしまうことになるので、最初の自着火燃焼に供される混合ガスの温度を十分に下げようとすると、多量の液体を噴射しなければならないからである。換言すると、負のバルブオーバーラップ期間に液体を噴射することにより、最初の自着火燃焼に供せられる混合ガスを効率的に(液体の無駄なく)冷却することができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る内燃機関の制御装置について説明する。この第3実施形態は、火花点火運転から予混合圧縮自着火運転に運転を切り換えるとき、液体噴射弁47から液体を二回噴射する点のみにおいて第2実施形態と相違している。
この二回の液体噴射のうち、最初(一回目)の噴射時期は、上記第2実施形態と同一である。即ち、最初の液体噴射時期は、「運転切換え直前の最後の火花点火に基づく燃焼により生成された燃焼ガスが燃焼室24から排出され始めてから同運転切換え直後の最初の自着火に基づく燃焼に供される混合ガスに含まれる空気が燃焼室24に流入され始める前までの期間」内に設定される。また、二回の液体噴射のうち最後(二回目)の噴射時期は、「運転切換え直後の最初の自着火に基づく燃焼をもたらすために燃焼室24において混合ガスが圧縮され始めてから同混合ガスの自着火が終了するまでの期間」内に設定される。以下、かかる第2実施形態との相違点を中心として、図9及び図10を参照しながら説明する。
第3実施形態のCPUは、図9に示したルーチンを図4に示したルーチンと同様のタイミングにてステップ900から実行するようになっている。この図9に示したルーチンは、図4のルーチンのステップ490及びステップ491をステップ910及びステップ920にそれぞれ置換した点のみにおいて、図4のルーチンと相違している。なお、図9において図4に示したステップと同一のステップには同一の符号が付されている。従って、以下においては、これらのステップについての詳細な説明を省略する。
いま、図9のルーチンが前回実行されてから今回実行されるまでの期間に、内燃機関10の運転領域が火花点火運転領域から自着火運転領域に変化したと仮定する。この場合、自着火運転領域フラグXJの値は「1」、直前の自着火運転領域フラグXJoldの値は「0」となっている。従って、CPUは図9のステップ900及びステップ405に続くステップ410にて「No」と判定するとともに、ステップ455にて「Yes」と判定し、ステップ910、ステップ920及びステップ492の処理を以下のように実行する。
ステップ910;第1液体噴射時期(第1回目の液体噴射開始時期)θLiq1をテーブルMapθLiq1(Tqtgt,NE)に基づいて求め、第2液体噴射時期(第2回目の液体噴射開始時期)θLiq2をテーブルMapθLiq2(Tqtgt,NE)に基づいて求める。
第1液体噴射時期θLiq1は、第2実施形態の液体噴射時期θLiqと同様な時期となるようにテーブルMapθLiq1(Tqtgt,NE)に基いて求められる。即ち、テーブルMapθLiq1によれば、第1液体噴射時期θLiq1は、火花点火運転から予混合圧縮自着火運転に運転を切り換えるとき、同運転切換え直前の最後の火花点火に基づく燃焼により生成された燃焼ガスが燃焼室24から排出され始めた時点(より具体的には、最後の火花点火に基づく燃焼により生成された燃焼ガスの排出を開始する排気弁開弁時期EO)から、同運転切換え直後の最初の自着火に基づく燃焼に供される混合ガスに含まれる空気が燃焼室24に流入され始める時点(より具体的には、その最初の自着火に基づく燃焼に対する吸気弁開弁時期IO)までの期間(以下、「排気開始後期間」と称呼する。)内となるように設定される。
第2液体噴射時期θLiq2は、火花点火運転から予混合圧縮自着火運転への運転切換え直後の最初の自着火に基づく燃焼をもたらすために燃焼室24において混合ガスが圧縮され始めた時点(より具体的には、その最初の自着火燃焼のための吸気弁閉弁時期IC)から同混合ガスの自着火が終了する時点(より具体的には、その最初の自着火燃焼に対する排気弁開弁時期EO)までの期間(以下、「圧縮開始後期間」と称呼する。)内となるように設定される。なお、より好ましくは、圧縮開始後期間は、最初の自着火燃焼のための吸気弁閉弁時期ICから、同最初の自着火燃焼(自着火)が開始する時点、又は、その自着火燃焼により発生する熱の量が上昇している期間が終了する時点(例えば、排気上死点後の所定クランク角)までと定義される。第2液体噴射時期θLiq2は、係る圧縮開始後期間内の所定タイミングであることが好適である。
この場合、第2液体噴射時期θLiq2にて噴射した液体が主として運転切換え直後の最初の自着火燃焼中において気化するように定められることが好ましい。また、第2液体噴射時期θLiq2にて噴射した液体が主として最初の自着火燃焼により発生する熱の量が上昇している期間内に気化するように、第2液体噴射時期θLiq2が定められることが更に好ましい。
ステップ920;第1液体噴射量Liq1をテーブルMapLiq1(Tqtgt,NE)に基づいて求めるとともに、第2液体噴射量Liq2をテーブルMapLiq2(Tqtgt,NE)に基づいて求める。
ステップ492;液体噴射フラグXLiqの値を「1」に設定する。
その後、CPUはステップ460乃至ステップ485の処理を順に実行し、ステップ450を経由してステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。
一方、CPUは図10に示したルーチンを、図5に示したルーチンと同様に、クランク角が微少の角度だけ経過する毎に各気筒別に実行するようになっている。この図10に示したルーチンは、図5のルーチンのステップ560乃至ステップ570を、ステップ1005乃至ステップ1025に置換した点のみにおいて、図5のルーチンと相違している。なお、図10において図5に示したステップと同一のステップには同一の符号が付されている。従って、以下においては、これらのステップについての詳細な説明を省略する。
この図10に示したルーチンによれば、運転領域が火花点火運転から予混合圧縮自着火運転に変化し、図9のステップ492にて液体噴射フラグXLiqの値が「1」に設定されると、CPUはステップ555にて「Yes」と判定するようになり、ステップ1005乃至ステップ1025の処理を以下のように実行することによって液体噴射を行う。
ステップ1005及びステップ1010;クランク角が図9のステップ910にて決定された第1液体噴射時期θLiq1となったとき、ステップ920にて決定された第1液体噴射量Liq1に応じた時間だけ液体噴射弁47を開弁し、第1液体噴射量Liq1の液体である水を吸気通路内に噴射する。
ステップ1015及びステップ1020;クランク角が図9のステップ910にて決定された第2液体噴射時期θLiq2となったとき、ステップ920にて決定された第2液体噴射量Liq2に応じた時間だけ液体噴射弁47を開弁し、第2液体噴射量Liq2の液体である水を吸気通路内に噴射する。
ステップ1025;液体噴射フラグXLiqの値を「0」に設定する。
この第3実施形態によれば、第1液体噴射時期θLiq1にて噴射される第1液体噴射量Liq1を第2実施形態の液体噴射量Liqよりも若干少なくして燃焼ガス温度を若干だけ低下せしめておくことができる。これにより、混合ガスを圧縮行程にて圧縮しても過早着火が発生しない範囲で十分に高温化することができるので、失火が発生する可能性を極めて小さくすることができる。
また、第1液体噴射量Liq1を若干少なくすることにより、定常的に自着火運転が行われている場合に比較して着火時期が僅かに早期になったとしても、液体は第2液体噴射時期θLiq2となったときに第2液体噴射量Liq2だけ噴射される。
そして、第2液体噴射時期θLiq2にて噴射された液体は、主として運転切換え直後の最初の自着火燃焼中において気化するので、混合ガスの空間的温度不均一性が大きくなり、液体噴射がない場合であっても自然に生じる混合ガスの空間的温度不均一性によって最も早く着火する位置の混合ガスよりも遅れて着火する位置にあった混合ガスの着火が更に遅れる(自着火が一層緩慢に順次発生するようになる。)。その結果、第1液体噴射量Liq1を若干少なくしても、筒内圧力上昇率が過大とならず、燃焼騒音が過大とならない。即ち、第3実施形態は、燃焼騒音が過大になることを防止しつつ、混合ガスを確実に自着火させることができる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る内燃機関の制御装置について説明する。この第4実施形態は、火花点火運転から予混合圧縮自着火運転に運転を切り換えるとき、内燃機関10の回転速度NEに応じたタイミングにて燃焼室24に液体を噴射する。
即ち、第4実施形態は、(i)内燃機関10の回転速度NEが所定の閾値回転速度より大きい高回転速度である場合には、「排気開始後期間」に、液体を液体噴射弁47から噴射し、(ii)内燃機関10の回転速度NEが前記閾値転速度より小さい低回転速度である場合には、「圧縮開始後期間」に液体を液体噴射弁47から噴射する点において、第2実施形態と相違している。従って、以下、この相違点を中心として図11を参照しながら説明する。
第4実施形態のCPUは、図3、図4に代わる図11及び図5に示したルーチンを、第1及び第2実施形態のCPUと同様のタイミングにて実行するようになっている。図11に示したルーチンは、図4のルーチンのステップ490乃至ステップ492をステップ1105乃至ステップ1130に置換した点のみにおいて、図4のルーチンと相違している。なお、図11において図4に示したステップと同一のステップには同一の符号が付されている。従って、以下においては、これらのステップについての詳細な説明を省略する。
いま、図11のルーチンが前回実行されてから今回実行されるまでの期間に、内燃機関10の運転領域が火花点火運転領域から自着火運転領域に変化したと仮定する。この場合、自着火運転領域フラグXJの値は「1」、直前の自着火運転領域フラグXJoldの値は「0」となっている。従って、CPUは図11のステップ1100及びステップ405に続くステップ410にて「No」と判定するとともにステップ455にて「Yes」と判定し、ステップ1105に進んで現時点のエンジン回転速度NEが所定の閾値回転速度である第1回転速度(第1の所定値)NEth1以上であるか否かを判定する。
そして、現時点のエンジン回転速度NEが第1回転速度NEth1以上である高回転速度のとき、CPUはステップ1105にて「Yes」と判定し、ステップ1110及びステップ1115の処理を以下のように行う。そして、CPUはステップ1130に進んで液体噴射フラグXLiqの値を「1」に設定し、ステップ460以降に進む。
ステップ1110;液体噴射時期(液体噴射開始時期)θLiqを高速用テーブルMapθHispdLiq(Tqtgt,NE)に基づいて求める。
ステップ1115;液体噴射量Liqを高速用テーブルMapHispdLiq(Tqtgt,NE)に基づいて求める。
上記ステップ1110にて求められる液体噴射時期θLiqは、第2実施形態の液体噴射時期θLiq及び第3実施形態の第1液体噴射時期θLiq1と同様な「排気開始後期間」内の時期となるように設定される。
一方、現時点のエンジン回転速度NEが第1回転速度NEth1より小さい低回転速度のとき、CPUはステップ1105にて「No」と判定し、ステップ1120及びステップ1125の処理を以下のように行った後、ステップ1130に進む。
ステップ1120;液体噴射時期(液体噴射開始時期)θLiqを低速用テーブルMapθLospdLiq(Tqtgt,NE)に基づいて求める。
ステップ1125;液体噴射量Liqを低速用テーブルMapLiq(Tqtgt,NE)に基づいて求める。
上記ステップ1120にて求められる液体噴射時期θLiqは、第3実施形態の第2液体噴射時期θLiq2と同様な「圧縮開始後期間」内の時期となる。この液体噴射時期θLiqは、液体噴射時期θLiqにて噴射した液体が主として運転切換え直後の最初の自着火燃焼中において気化するように定められることが好ましい。また、液体噴射時期θLiqにて噴射した液体が主として最初の自着火燃焼により発生する熱の量が上昇している期間内に気化するように、液体噴射時期θLiqが定められることがより一層好ましい。
このように、エンジン回転速度NEが高回転速度であるか低回転速度であるかに応じて異なる液体噴射時期θLiqが定められ、CPUが図5のルーチンのステップ555乃至ステップ570を実行することにより、定められた液体噴射時期θLiqにて液体が燃焼室24に直接噴射される。
この第4実施形態によれば、内燃機関10の回転速度NEが所定の閾値回転速度NEth1より大きい高回転速度である場合、運転切換え直前の最後の火花点火に基づく燃焼ガスが燃焼室24から排出され始めた後であって未だに運転切換え直後の最初の自着火燃焼に供される空気(新気)が燃焼室24に流入させられていないとき、即ち、燃焼室24内に燃焼ガスのみが存在してそのガス温度が極めて高いとき、その燃焼室24内(燃焼ガス中)に液体が直接噴射される。
従って、噴射する液体の量を多くしても同液体は十分に気化するので、燃焼ガス温度を十分に低下させることができる。これにより、最初の自着火燃焼に供せられる混合ガスの温度が低くなるので、過早着火が回避される。その結果、筒内圧力上昇率が過大とならず、燃焼騒音が過大とならない。
一方、内燃機関10の回転速度NEが所定の閾値回転速度NEth1より小さい低回転速度である場合、液体は運転切換え直後の最初の自着火に基づく燃焼をもたらすために燃焼室24において混合ガスが圧縮され始めてから同混合ガスの自着火が終了するまでの期間に燃焼室24に直接噴射される。そして、その液体は主として運転切換え直後の最初の自着火燃焼中において気化するので、混合ガスの空間的温度不均一性が大きくなり、液体噴射がない場合であっても自然に生じる混合ガスの空間的温度不均一性によって最も早く着火する位置の混合ガスよりも遅れて着火する位置にあった混合ガスの着火が更に遅れる(自着火が一層緩慢に順次発生するようになる。)。その結果、筒内圧力上昇率が過大とならず、燃焼騒音が過大とならない。
更に、一般に、低回転時において、混合ガスの温度は高くなり難い。従って、高回転時のように、液体が、排気開始後期間内に噴射されてしまうと、圧縮初期の混合ガス温度が低下しすぎ、圧縮によっても混合ガス温度が十分に上昇せず、その結果、着火時期が大幅に遅れるか、或いは、失火する可能性が生じる。
一方、圧縮開始後期間(特に、自着火開始直前)に燃焼室24に液体が噴射されたとしても、その液体は直ちに燃焼室24全体に行き渡ることはない。従って、液体噴射直後において、噴射された液体から温度上の影響を殆ど受けない混合ガスが燃焼室24内に存在し、その温度上の影響を殆ど受けない混合ガスは液体噴射がなされなかった場合の混合ガスの着火開始時点とほぼ同様な時点にて着火する。以上の結果、第4実施形態に係る内燃機関の制御装置は、低回転時において、運転切換え直後の着火開始時期が大幅に遅角することがないので失火が発生せず、且つ、運転切換え直後の自着火燃焼が緩慢となるので過大な燃焼騒音を発生させなくすることができる。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態に係る内燃機関の制御装置について説明する。この第5実施形態は、火花点火運転から予混合圧縮自着火運転に運転を切り換えるとき、内燃機関10の回転速度NEに応じたタイミングにて燃焼室24に液体を噴射する。より具体的には、第5実施形態は、火花点火運転から予混合圧縮自着火運転に運転を切り換えるとき、以下のように液体を液体噴射弁47から噴射する。
第5実施形態は、
(i)内燃機関10の回転速度NEが所定の第1回転速度NEth1より小さい低回転速度である場合、「圧縮開始後期間」に液体を噴射し、
(ii)内燃機関10の回転速度NEが所定の第1回転速度NEth1より大きい第2回転速度NEth2より大きい高回転速度である場合、「排気開始後期間」に液体を噴射し、
(iii)内燃機関の回転速度NEが第1回転速度NEth1と第2回転速度NEth2との間の中回転速度である場合、「排気開始後期間」に液体を噴射し、且つ、「圧縮開始後期間」にも液体を噴射する。
第5実施形態は、液体噴射時期が上記第2実施形態の液体噴射時期と相違するが、その他の点は同第2実施形態と同一である。従って、以下、この相違点を中心として図12及び図13を参照しながら説明する。
第5実施形態のCPUは、図3のルーチン、図4のステップ490乃至ステップ492を図12のステップ1205乃至ステップ1270に置換したルーチン、及び、図5のステップ555乃至ステップ570を図13のステップ1305乃至ステップ1370に置換したルーチンを、第1及び第2実施形態のCPUと同様のタイミングにて実行するようになっている。
いま、図4及び図12により示されたルーチンが前回実行されてから今回実行されるまでの期間に、内燃機関10の運転領域が火花点火運転領域から自着火運転領域に変化したと仮定する。この場合、自着火運転領域フラグXJの値は「1」、直前の自着火運転領域フラグXJoldの値は「0」となっている。
従って、CPUは図4のステップ400及びステップ405に続くステップ410にて「No」と判定するとともに図12のステップ455にて「Yes」と判定し、ステップ1205に進んで現時点のエンジン回転速度NEが第1回転速度(低側閾値回転速度)NEth1より小さいか否かを判定する。そして、現時点のエンジン回転速度NEが第1回転速度NEth1より小さい低回転速度のとき、CPUはステップ1205にて「Yes」と判定し、ステップ1210乃至ステップ1220の処理を以下のように行った後、図4のステップ460以降に進む。
ステップ1210;低速用液体噴射時期(低速用液体噴射開始時期)θLoLiqをテーブルMapθLoLiq(Tqtgt,NE)に基づいて求める。この低速用液体噴射時期θLoLiqは、図9のステップ910にて求められる第2液体噴射時期θLiq2と同様な「圧縮開始後期間」内の時期に設定される。
ステップ1215;低速用液体噴射量LoLiqをテーブルMapLoLiq(Tqtgt,NE)に基づいて求める。
ステップ1220;低速用液体噴射フラグXLoLiqの値を「1」に設定する。
一方、現時点のエンジン回転速度NEが第1回転速度NEth1以上であると、CPUはステップ1205にて「No」と判定してステップ1230に進み、現時点のエンジン回転速度NEが第1回転速度NEth1と同第1回転速度NEth1より大きい第2回転速度(高側閾値回転速度)NEth2との間の中回転速度であるか否かを判定する。そして、現時点のエンジン回転速度NEが中回転速度のとき、CPUはステップ1230にて「Yes」と判定し、ステップ1235乃至ステップ1255の処理を以下のように行い、図4のステップ460以降へ進む。
ステップ1235;中速用第1液体噴射時期(中速用第1液体噴射開始時期)θM1LiqをテーブルMapθM1Liq(Tqtgt,NE)に基づいて求める。この中速用第1液体噴射時期θM1Liqは、図9のステップ910にて求められる第1液体噴射時期θLiq1と同様な「排気開始後期間」内の時期となるように求められる。
ステップ1240;中速用第1液体噴射量M1LiqをテーブルMapM1Liq(Tqtgt,NE)に基づいて求める。
ステップ1245;中速用第2液体噴射時期(中速用第2液体噴射開始時期)θM2LiqをテーブルMapθM2Liq(Tqtgt,NE)に基づいて求める。この中速用第2液体噴射時期θM2Liqは、図9のステップ910にて求められる第2液体噴射時期θLiq2と同様な「圧縮開始後期間」内の時期となるように求められる。
ステップ1250;中速用第2液体噴射量M2LiqをテーブルMapM2Liq(Tqtgt,NE)に基づいて求める。
ステップ1255;中速用液体噴射フラグXMiLiqの値を「1」に設定する。
他方、現時点のエンジン回転速度NEが第2回転速度NEth2以上の高回転速度であると、CPUはステップ1205及びステップ1230の両ステップにて「No」と判定し、ステップ1260乃至ステップ1270の処理を以下のように行った後、図4のステップ460以降へ進む。
ステップ1260;高速用液体噴射時期(高速用液体噴射開始時期)θHiLiqをテーブルMapθHiLiq(Tqtgt,NE)に基づいて求める。この高速用液体噴射時期θHiLiqは、図9のステップ910にて求められる第1液体噴射時期θLiq1と同様な「排気開始後期間」内の時期となるように求められる。
ステップ1265;高速用液体噴射量HiLiqをテーブルMapHiLiq(Tqtgt,NE)に基づいて求める。
ステップ1270;高速用液体噴射フラグXHiLiqの値を「1」に設定する。
以上のようにして、低速用液体噴射時期θLoLiq、低速用液体噴射量LoLiq、中速用第1液体噴射時期θM1Liq、中速用第1液体噴射量M1Liq、中速用第2液体噴射時期θM2Liq、中速用第2液体噴射量M2Liq、高速用液体噴射時期θHiLiq及び高速用液体噴射量HiLiqが現時点のエンジン回転速度NEに応じて定められる。
一方、CPUは図5及び図13に示したルーチンを、図5に示したルーチンと同様に繰り返し実行するようになっている。従って、CPUは図13のステップ1305乃至ステップ1370のうちの適当なステップを以下のように実行する。
ステップ1305乃至ステップ1320;CPUは、低速用液体噴射フラグXLoLiqの値が「1」に設定されていれば、クランク角が低速用液体噴射時期θLoLiqとなったとき、低速用液体噴射量LoLiqの液体を噴射し、低速用液体噴射フラグXLoLiqの値を「0」に設定する。
ステップ1325乃至ステップ1350;CPUは、中速用液体噴射フラグXMiLiqの値が「1」に設定されていれば、クランク角が中速用第1液体噴射時期θM1Liq及び中速用第2液体噴射時期θM2Liqとなったとき、それぞれ中速用第1液体噴射量M1Liq及び中速用第2液体噴射量M2Liqの液体を噴射するとともに、中速用第2液体噴射時期θM2Liqが経過した後に中速用液体噴射フラグXMiLiqの値を「0」に設定する。
ステップ1355乃至ステップ1370;CPUは、高速用液体噴射フラグXHiLiqの値が「1」に設定されていれば、クランク角が高速用液体噴射時期θHiLiqとなったとき、高速用液体噴射量HiLiqの液体を噴射し、高速用液体噴射フラグXHiLiqの値を「0」に設定する。
この第5実施形態は、第4実施形態と同様に、低回転時は「圧縮開始後期間」内に液体を噴射し、高回転時は「排気開始後期間」内に燃焼室24に液体を噴射する。従って、第5実施形態は第4実施形態と同様の利点を備える。更に、第5実施形態は、中回転時において、「圧縮開始後期間」内において最初の(第1回目の)液体噴射を行い、「排気開始後期間」内に最後の(第2回目の)液体噴射を行う。
この最初の液体噴射により噴射された液体は、高い温度の燃焼ガスにより確実に気化する。また、その液体の量を若干少なくして燃焼ガス温度を若干だけ低下せしめ、圧縮により混合ガスを過度に高温とならない範囲で十分に高温化して混合ガスを確実に自着火させるとともに、最後の液体噴射により噴射された液体により、最も早く着火する位置の混合ガスよりも遅れて着火する位置にある混合ガスの着火を更に遅らせることにより、過大な燃焼騒音を発生させなくすることができる。即ち、第5実施形態は、失火の回避と過大な燃焼騒音の回避とを確実に両立することができる。
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態に係る内燃機関の制御装置について説明する。この第6実施形態は、図14に示したように、第1実施形態の液体噴射弁(ポート液体噴射弁)42に加えて第2実施形態の液体噴射弁(筒内液体噴射弁)47を備える。液体噴射弁42及び液体噴射弁47は、いずれもが液体供給管48を介してポンプ45に接続されている。ポンプ45は水を収容した液体タンク46に接続されている。
更に、第6実施形態は、火花点火運転から予混合圧縮自着火運転に運転を切り換えるとき、(i)内燃機関10の回転速度NEが閾値回転速度NEth3より小さい低回転速度であれば、所定の第1タイミングにて液体噴射弁47から燃焼室24内に直接液体を噴射し、(ii)内燃機関10の回転速度NEが閾値回転速度NEth3より大きい高回転速度であれば、所定の第2タイミングにて液体噴射弁42から吸気通路内に液体を噴射する。以下、上述した各実施形態との作動上の相違点を中心として説明する。
第6実施形態のCPUは、図3のルーチン、図4のステップ490乃至ステップ492を図15のステップ1505乃至ステップ1535に置換したルーチン及び図5のステップ555乃至ステップ570を図16のステップ1605乃至ステップ1640に置換したルーチンを、第1及び第2実施形態のCPUと同様のタイミングにて実行するようになっている。
いま、図4及び図15により示されたルーチンが前回実行されてから今回実行されるまでの期間に、内燃機関10の運転領域が火花点火運転領域から自着火運転領域に変化したと仮定する。この場合、自着火運転領域フラグXJの値は「1」、直前の自着火運転領域フラグXJoldの値は「0」となっている。
従って、CPUは図4のステップ400及びステップ405に続くステップ410にて「No」と判定するとともに図15のステップ455にて「Yes」と判定し、ステップ1505に進んで現時点のエンジン回転速度NEが第3回転速度(閾値回転速度)NEth3より小さいか否かを判定する。そして、現時点のエンジン回転速度NEが第3回転速度NEth3より小さい低回転速度のとき、CPUはステップ1505にて「Yes」と判定し、ステップ1510乃至ステップ1520の処理を以下のように行い、図4のステップ460以降に進む。
ステップ1510;低速用液体噴射時期(低速用液体噴射開始時期)θLoLiqをテーブルMapθLoLiq(Tqtgt,NE)に基づいて求める。この低速用液体噴射時期θLoLiqは、図9のステップ910にて求められる第2液体噴射時期θLiq2と同様な「圧縮開始後期間」内の時期に設定される。
ステップ1515;低速用液体噴射量LoLiqをテーブルMapLoLiq(Tqtgt,NE)に基づいて求める。
ステップ1520;低速用液体噴射フラグXLoLiqの値を「1」に設定する。
一方、現時点のエンジン回転速度NEが第3回転速度NEth3以上であると、CPUはステップ1505にて「No」と判定し、ステップ1525乃至ステップ1535の処理を以下のように行い、図4のステップ460以降へ進む。
ステップ1525;高速用液体噴射時期(高速用液体噴射開始時期)θHiLiqをテーブルMapθHiLiq(Tqtgt,NE)に基づいて求める。この高速用液体噴射時期θHiLiqは、図4のステップ490にて求められる液体噴射開始時期(吸気通路噴射用液体噴射時期)θLiqと同様な時期(好ましくは、負のバルブオーバーラップ期間内の時期)に設定される。
ステップ1530;高速用液体噴射量HiLiqをテーブルMapHiLiq(Tqtgt,NE)に基づいて求める。
ステップ1535;高速用液体噴射フラグXHiLiqの値を「1」に設定する。
一方、CPUは図5及び図16に示したルーチンを、図5に示したルーチンと同様に繰り返し実行するようになっている。従って、CPUは図16のステップ1605乃至ステップ1640のうちの適当なステップを以下のように実行する。
ステップ1605乃至ステップ1620;CPUは、低速用液体噴射フラグXLoLiqの値が「1」に設定されていれば、クランク角が低速用液体噴射時期θLoLiqとなったとき、液体噴射弁47に第1駆動信号を送出することにより低速用液体噴射量LoLiqの液体を液体噴射弁47から燃焼室24に直接噴射し、低速用液体噴射フラグXLoLiqの値を「0」に設定する。
ステップ1625乃至ステップ1640;CPUは、高速用液体噴射フラグXHiLiqの値が「1」に設定されていれば、クランク角が高速用液体噴射時期θHiLiqとなったとき、液体噴射弁42に第2駆動信号を送出することにより高速用液体噴射量HiLiqの液体を液体噴射弁42から吸気通路に噴射し、高速用液体噴射フラグXHiLiqの値を「0」に設定する。
なお、低速用液体噴射時期θLoLiq及び高速用液体噴射時期θHiLiqは、運転切換え直後の最初の自着火に基づく燃焼が終了する時点より前のタイミングであって、且つ、各液体噴射手段から噴射された液体が、その最初の自着火に基づく燃焼が終了する時点において気化した状態で燃焼室24内に存在するようなタイミングに設定される。
この第6実施形態によれば、内燃機関10の回転速度NEが所定の閾値回転速度NEth3より小さい低回転速度である場合、液体は筒内液体噴射手段を構成する液体噴射弁47から燃焼室24内に所定の第1タイミング(低速用液体噴射時期θLoLiq)にて直接噴射される。そして、その噴射された液体は、運転切換え直前の火花点火運転における最後の火花点火に基づく燃焼が終了した後から同運転切換え直後の予混合圧縮自着火運転の最初の自着火に基づく燃焼が終了する時点までにおいて燃焼室24内で気化する。
従って、この液体の気化が自着火開始時期よりも適度に前の時点にて生じれば、自着火燃焼に供せられる混合ガスの温度が低くなるので、着火時期が早くなりすぎること(過早着火)が回避され、その結果、筒内圧力上昇率が過大とならず、燃焼騒音が過大とならない。
一方、特に、第1タイミング(低速用液体噴射時期θLoLiq)が、運転切換え直後の最初の自着火に基づく燃焼をもたらすために燃焼室24において混合ガスが圧縮され始めてから同混合ガスの自着火が終了する前の所定のタイミングであるとき、液体の気化が自着火開始時期の直前の時点にて生じれば、混合ガスの空間的な温度不均一性が液体噴射を行わない場合よりも大きくなって、自着火が高温の混合ガスから低温の混合ガスへと順次進行することになるから、自着火燃焼が緩慢となる。その結果、筒内圧力上昇率が過大とならず、燃焼騒音が過大とならない。
更に、液体の気化が燃焼室24において自着火燃焼中(特に、自着火燃焼による熱の量が上昇している期間)に生じれば、その時点以降における混合ガスの空間的な温度不均一性が液体噴射を行わない場合よりも大きくなって、その後に遅れて自着火する位置にある混合ガスの自着火が更に遅れる(自着火が一層緩慢に順次発生するようになる。)。その結果、筒内圧力上昇率が過大とならず、燃焼騒音が過大とならない。
このように、低回転時は、液体が燃焼室24に直接噴射されるので、その液体が吸気通路壁面に付着することがなく、しかも、燃焼室24内で効率良く気化せしめられて燃焼騒音の抑制に利用されるので、液体の使用量を低減することができる。
これに対し、内燃機関の回転速度NEが所定の閾値回転速度NEth3より大きい高回転速度である場合、液体は吸気通路液体噴射手段を構成する液体噴射弁42から、運転切換え直前の最後の火花点火に基づく燃焼が終了した後であって同運転切換え直後の最初の自着火に基づく燃焼に供される混合ガスに含まれる空気の燃焼室24への流入が終了する前の所定の第2タイミング(高速用液体噴射時期θHiLiq)にて吸気通路内に噴射される。そして、その噴射された液体は、吸気通路の壁面から熱を受けた後に燃焼室内に流入する。
従って、運転切換え直前の最後の火花点火に基づく燃焼の終了時点から運転切換え直後の最初の自着火に基づく燃焼開始までの時間が短い高回転時においても、噴射された液体に熱を加える時間を長くとることができるので、同液体を十分に気化させることができる。従って、高回転時において、自着火燃焼に供せられる混合ガスの温度を低くすることができるので、着火時期が早くなりすぎること(過早着火)が回避される。その結果、筒内圧力上昇率が過大とならず、燃焼騒音が過大とならない。
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態に係る内燃機関の制御装置について説明する。この第7実施形態は、第2実施形態と同様に液体噴射弁47から燃焼室24に液体を直接噴射するものである。また、第7実施形態は、火花点火運転から予混合圧縮自着火運転に運転を切り換えるとき、同運転切換え直後の最初の自着火に基づく燃焼をもたらすために燃焼室24において混合ガスが圧縮され始めてから同混合ガスの自着火が終了するまでの期間内の所定の時期に液体を噴射する点のみにおいて第2実施形態と相違している。より好ましくは、第7実施形態は、運転切換え直後の予混合圧縮自着火運転の最初の自着火に基づく燃焼が開始した後であって同燃焼により発生する熱量が上昇しているときに先に液体噴射弁47から噴射されていた液体が丁度気化するように、その液体噴射時期を定めている。従って、以下、第2実施形態との相違点を中心として説明する。
第7実施形態のCPUは、図3乃至図5に示したフローチャートを第1及び第2実施形態と同様に実行するようになっている。ただし、図4のステップ490で使用されるテーブルMapθLiqは、第1及び第2実施形態のテーブルMapθLiqと相違するように変更されている。
この変更されたテーブルMapθLiqによれば、液体噴射時期θLiqは、図9のステップ910にて求められる第2液体噴射時期θLiq2と同様な圧縮行程中であって最初の自着火が発生する直前である圧縮行程後半の時期、即ち、「圧縮開始後期間」内の時期に設定され、且つ、火花点火運転から予混合圧縮自着火運転への運転切換え直後の予混合圧縮自着火運転の最初の自着火に基づく燃焼が開始した後であって同燃焼により発生する熱量が上昇しているときに、噴射されていた液体が丁度気化するように設定される。
これによれば、混合ガスの燃焼により発生する熱の量(単位時間又は単位クランク角あたりの熱量)が上昇している期間(即ち、燃焼中)において液体噴射弁47から噴射された液体が気化し、その気化(気化熱)により混合ガスが冷却される。このように、噴射された液体が自着火燃焼に伴って発生する熱の量が上昇している期間に気化すると、混合ガスの空間的温度不均一性が大きくなり、液体噴射がない場合であっても自然に生じる混合ガスの空間的温度不均一性によって最も早く着火する位置の混合ガスよりも遅れて着火する位置にあった未着火の混合ガスの着火が更に遅れる(自着火が一層緩慢に順次発生するようになる。)。この結果、液体が気化を開始した時点以降において、着火が緩慢に発生し、燃焼が緩慢に進行するので、筒内圧力上昇率が過大にならず、過大な燃焼騒音が発生しない。また、液体は、上述した運転切換え時においてのみ噴射されるので、無駄に使用されない。
更に、第7実施形態のように、圧縮行程中(特に、自着火開始直前)に燃焼室内に液体が噴射されたとしても、その液体は直ちに燃焼室全体に行き渡ることはない。従って、液体噴射直後において、噴射された液体から温度上の影響を殆ど受けない混合ガスが燃焼室24内に存在し、その温度上の影響を殆ど受けない混合ガスは液体噴射がなされなかった場合の混合ガスの着火開始時点とほぼ同様な時点にて着火する。その結果、第7実施形態においては、運転切換え直後の着火開始時期が大幅に遅角することがない。
図17は、燃焼室24において、火花点火運転から自着火運転へと運転を切り換えた直後における最初の自着火燃焼によって発生する熱の量(単位時間あたりの熱量、発生熱量)をクランク角度に対して示したグラフである。一点鎖線C1は、第7実施形態のように水を噴射せず且つ着火時期を遅角しない場合の発生熱量を示している。実線C2は、第7実施形態による場合(水を噴射し且つ着火時期を遅角しない場合)の発生熱量を示している。破線C3は、水を噴射せず且つ吸気温度を調節することにより着火時期を遅角させた場合の発生熱量を示している。
この曲線C1と曲線C2との比較から明らかなように、第7実施形態に係る内燃機関の制御装置によれば、水の気化熱により着火時期が分散し、発生熱量の急激な上昇が抑制される(燃焼が緩慢になる)。従って、燃焼騒音が過大とならない。
図18は、燃焼騒音と着火時期の関係を示したグラフである。四角のプロットは、第7実施形態による場合(水を噴射した場合)の燃焼騒音と着火時期との関係を示し、三角のプロットは水を噴射せず且つ吸気温度を調節することにより着火時期を遅角させた場合の燃焼騒音と着火時期との関係を示している。
図17の曲線C1乃至曲線C3の比較から明らかなように、着火時期を遅角した場合にも発生熱量は小さくなって燃焼が緩慢になるので、燃焼騒音は小さくなる。しかしながら、図18の三角のプロットにより示したように、着火時期を遅角させることにより燃焼騒音を十分に小さくしようとすると、着火時期を失火領域近傍にまで大幅に遅角しなければならない。一方、実際の機関運転中においては、着火時期を一定時期に精密に制御することは困難である。この結果、着火時期の遅角により燃焼騒音を十分小さくしようとすると、自着火しない(失火する)場合が発生する。
これに対し、第7実施形態によれば、図18の四角のプロットにより示したように、燃焼騒音を十分に小さくした状態であっても、着火時期と失火領域とのマージンが大きいから、失火する可能性は極めて低くなる。以上から、第7実施形態の内燃機関の制御装置は、運転切換え時において安定した自着火を維持し、且つ、そのときの燃焼騒音を十分に低減することができる装置となっていることが理解される。
以上、説明したように、本発明による内燃機関の制御装置の各実施形態は、火花点火運転から自着火運転へと運転を切り換えるときに液体を噴射し、その噴射した液体(水)の気化熱により、過早着火を回避し、或いは、燃焼を緩慢化する。その結果、運転切換え時の燃焼騒音が過大にならないようにすることができる。
なお、液体は噴射された後に直ちに気化を開始するわけではなく、液体の種類や液体の粒径、或いは、液体に与えられる熱量を決定する燃焼室24やインテークマニホールド41及び吸気ポート31の温度等によって定まる所定の時間後に気化を開始する。従って、上記各実施形態の液体噴射時期(液体噴射弁42,47への駆動信号を発生する時期)は、水が噴射されてから気化するまでに必要な時間を考慮して定められる。更に、液体を気化させるべきタイミングは、内燃機関の負荷や回転速度等の機関運転状態に応じて変化するので、液体噴射時期は機関運転状態にも応じて変更されることが好適である。
更に、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において以下に述べる種々の変形例を採用することができる。
(1)液体噴射弁42,47から噴射する液体として、水に代え、メタノール等のアルコール、アルコールと水との混合液、ガソリン、ガソリンを改質した改質燃料等を使用してもよい。
(2)燃料噴射弁43は、燃焼室24に直接燃料を噴射するように配置構成されていてもよい。
(3)上記実施形態は他の運転領域において4サイクル自着火運転を行う内燃機関に適用されていたが、2サイクル自着火運転を行う内燃機関にも適用され得る。2サイクル自着火運転を行う内燃機関とは、クランク角度が360度経過する毎に、膨張行程、排気行程、掃気行程、吸気(過給機による給気)行程及び圧縮行程を繰り返す内燃機関のことをいう。
(4)上記実施形態は4サイクル火花点火運転を行う内燃機関に適用されていたが、2サイクル火花点火運転を行う内燃機関にも適用され得る。
(5)液体噴射弁47は、燃焼室24の上部からピストン22の頂面に向けて液体を噴射
するように配置・構成されていてもよい。
(6)一つの燃焼室24に対して複数の液体噴射弁47を設けてもよい。その場合、液体噴射弁47を対向配置すれば、液体が壁面に付着する量を低減でき、未燃の炭化水素の量をより減少することができる。また、複数の液体噴射弁47から、異なる種類の液体を噴射してもよい。
(7)自着火燃焼による運転中において、点火プラグ35による火花点火を補助的に実行してもよい。
(8)吸気弁駆動機構32a及び排気弁駆動機構34aに代えて、所謂、可変動弁機構を用いて吸気弁32及び排気弁34のバルブタイミングを変更してもよい。
10…4サイクル内燃機関、20…シリンダブロック部、21…シリンダ、22…ピストン、23…コネクティングロッド、24…燃焼室、30…シリンダヘッド部、31…吸気ポート、32…吸気弁、32a…吸気弁駆動機構、33…排気ポート、34…排気弁、34a…排気弁駆動機構、35…点火プラグ、36…イグナイタ、41…インテークマニホールド、42,47…液体噴射弁、43…燃料噴射弁、44…液体供給管、45…ポンプ、46…液体タンク、50…電気制御装置、51…アクセルペダル操作量センサ、52…エンジン回転速度センサ。