JP4277157B2 - 表面粗粒層を制御した塑性加工用押出形材の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、表面粗粒層の厚みが一定化され、曲げ加工,バルジ加工等に好適に使用される押出形材を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム合金の押出成形では、コンテナに装填された高温のビレットに押出圧を加え、ダイスから押し出すことによって所定の断面形状をもつ押出形材を押出成形している。6061,6N01,7N01等の再結晶を抑制する作用のある遷移元素を含むアルミニウム合金の押出成形で得られた押出形材の表面を観察すると、中心部に繊維状組織,外周部に再結晶粒からなる粗粒層が形成される。
表面粗粒層の厚みは押出形材の押出方向に関してばらついているため、押出形材を所定長さに切り出して製品とすると、製品ごとに表面粗粒層の厚みが異なる。表面粗粒層が不均一な押出製品に塑性変形を伴う曲げ加工,バルジ加工等の塑性加工を施すと、表面粗粒層に応じてスプリングバック量が異なることから、加工後の形状が一定化しない。また、色調,光沢等の表面性状も不安定化する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
表面粗粒層に起因する欠陥を抑制するため、ダイスの出口直後で押出形材に液体窒素等の低温冷媒を吹き付け、表面粗粒層の生成を抑制する方法が知られている(特開平2−127916号公報,特開平5−7927号公報)。しかし、ダイス出口直後の押出形材に低温冷媒を吹き付けることは、押出形材を急冷することであり、熱応力に起因する形状劣化が避けられない。また、吹き付けられた低温冷媒がダイスに接触すると、熱衝撃でダイスが破損する虞もある。ダイスの破損に至らないまでも、ダイスが部分的に急冷されるため、押出条件が不安定化し、押出形材の形状劣化やダイスの短命化等を引き起こす。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、コンテナ内のビレット残存量に応じてステム速度を制御することにより、押出形材の全長にわたって表面粗粒層の厚みを均一化し、塑性加工時のスプリングバック量の一定化を図り、形状精度の良好な加工品の製造に適した押出形材を提供することを目的とする。
【0005】
本発明の製造方法は、その目的を達成するため、コンテナに装填した遷移元素を含むアルミニウム合金のビレットの後端にステムを押し当て、ステムの押出圧をビレットに加えてコンテナの前端に設けられているダイスから押出形材を押し出す際、コンテナに収容しているビレットの残存長さが短くなるに従ってステムの前進速度を小さくすることを特徴とする。
ステムの前進速度Vは、コンテナ内ビレットの残存長さをL(m),押出比をEとするとき、式ε=(V/L)×Eで定義される歪速度ε(/秒)が一定になるようにコンテナ内ビレットの残存長さに応じて低下させる。
本発明で対象とするアルミニウム合金は、強度,耐食性等の特性を改善するため再結晶抑制作用のある遷移元素を含んだ2014,2024,6061,6N01,6082,7003,7N01,7075等のアルミニウム合金が挙げられる。遷移元素としては、特にCr,Mn,Zrが有効な成分であり、それぞれ単独に添加した場合にはCr:0.04質量%以上,Mn:0.08質量%以上,Zr:0.05質量%以上で再結晶抑制効果が顕著となる。
【0006】
【作用】
押出成形では、高温に加熱されたアルミニウム合金のビレットBをコンテナ1に装填し、後方からステム2で押出圧FをビレットBに加える。押出圧Fが加えられたビレットBは、コンテナ1内を塑性流動し、コンテナ1の前端に設けられているダイス3の賦形空間から押し出され、所定断面形状をもつ押出形材Pになる(図1)。製造された押出形材Pには、押出成形時及び押出直後の冷却過程で再結晶が進行し、再結晶粒からなる表面粗粒層が生成する。
【0007】
押出形材Pの断面観察で表面粗粒層の生成状況を調査したところ、表面粗粒層は押出形材Pの押出方向前方で薄く、後方になるほど厚くなっていた。表面粗粒層は再結晶組織であることから、押出形材Pの温度が表面粗粒層の生成・成長に影響を及ぼしているものと考えられるが、押出形材Pのダイス出口温度が一定になるように温度管理した定温押出でも依然として表面粗粒層の厚みが押出形材Pの押出方向前方と後方とで異なることが避けられない。
【0008】
そこで、本発明者等は、コンテナ1内にある押出形材Pに蓄えられる歪速度が表面粗粒層の生成・成長に大きな影響を及ぼしているものと推定し、歪速度が一定となるようにステム2の前進速度Vを漸次低下させたところ、表面粗粒層の厚み変動が小さくなることを見出した。歪速度の管理により表面粗粒層の押出方向に関する厚み変動が抑制されることは、次のように推察される。
【0009】
コンテナ1内のビレットBは、塑性流動しながらダイス3から押し出されるが、ダイス3のベアリングを通過する際にベアリング接触面と内部との間でメタルの流速が異なり、流速差に起因する剪断歪が発生する。歪速度は、ビレットBの後端部が押し出しされるに従って大きくなり、ダイス3から押し出された押出形材Pに持ち越される。歪は押出形材Pの再結晶を促進させる要因であり、同じステム2の前進速度VでビレットBを押し出すと、歪速度が小さい押出形材Pの押出方向前方部に比較して歪速度が大きい後方部ほど再結晶が進行する。その結果、表面粗粒層は、押出形材Pの押出方向前方部で薄く、後方部で厚くなる。
【0010】
歪速度が押出形材Pの表面粗粒層に影響を及ぼすことを前提とし、従来の等速押出では歪速度が大きな後端部になるほどステム2の前進速度Vを遅くした。ステム2の前進速度Vに前述の変化をつけるとき、実施例にもみられるように、押出方向に関する再結晶の進行状態が均一化され、表面粗粒層の厚み変動が抑制された押出形材Pが得られる。このようにして得られた押出形材Pは、表面粗粒層の厚みに起因するスプリングバック量が押出形材Pの押出方向に均一化されているので、曲げ加工,バルジ加工等の塑性変形を伴う加工を施しても各部が所定の形状に成形され、形状精度の良好な加工品となる。
【0011】
歪速度は、本来、ベアリングを通過する材料のベアリング接触面と内部との流速差に起因する剪断歪速度で表わされる。しかし、流速差の検出は、現実的には困難である。そこで、ベアリング出口を塞いだ状態でコンテナ1内にあるビレットBに加わる押出方向の圧縮歪速度がベアリング開放状態では剪断歪速度に対応するものと考え、式ε=(V/L)×E〔ただし、L:コンテナ1内に残存しているビレットBの長さ(m),V=ステム2の前進速度をV(m/秒),E:押出比(=コンテナ内断面積/ベアリング開口面積)〕で歪速度εを定義した。この歪速度εが一定になるように、コンテナ内ビレットの残存長さをLに応じてステム2の前進速度Vを減少するとき、後述の実施例にみられるように表面粗粒層の生成・成長が精度良く制御された押出形材Pが得られることを見出した。
【0012】
【実施例】
本発明者等は、先ずダイス3を出た直後の押出形材Pにベアリング部から突出させた熱電対の先端を押出形材の表面に接触させて押出形材のダイス出口温度T(℃)を測定しながら、押出形材Pを押出成形し、ダイス出口温度Tが表面粗粒層の生成・成長に及ぼす影響を調査した。この場合、500℃に予熱した径196mm,長さ470mmの6N01アルミニウム合金ビレットBを内径203mmのコンテナ1に装填し、60mm×5mmのフラットバーを押し出した。
【0013】
【0014】
製造された押出形材が室温まで冷却した後、押出方向各位置における押出形材の断面を観察し、表面粗粒層の厚さを測定した。測定値から、押出形材の断面に占める表面粗粒層の割合(%)を面積率として算出した。求められた面積率とダイス出口温度Tとの関係を調査したところ、図2に示すように両者の間に明確な相関性がみられなかった。なお、図2中の凡例では、温度はビレット初期加熱温度,数値は押出速度(m/分)を示す。
【0015】
図2から、ダイス出口温度Tが高くなると表面粗粒層面積率が高くなる傾向がみられる。ただし、各ダイス出口温度Tにおける表面粗粒層面積率の幅が広く、たとえば押出速度30m/分の結果に表されているように表面粗粒層面積率が広幅になる傾向は高温域になるほど顕著となる。このように、ダイス出口温度Tが同じであっても表面粗粒層面積率が幅広の範囲をもつことから、表面粗粒層の生成・成長は単にダイス出口温度Tで一義的に定まらないことが判る。
【0016】
そこで、式ε=(V/L)×Eで定義される歪速度εを用い、ダイス出口温度T470℃以上で押出された押出形材Pに生成した表面粗粒層の面積率と歪速度εとの関係を調査した。図3の調査結果にみられるように、歪速度εが大きくなるに従って表面粗粒層の面積率Ar(%)が増加した。このとき、歪速度εと面積率Arとの関係はAr=17×ε1/2で表わされ、相関係数0.880と極めて高い相関関係にあった。したがって、図3の関係を利用して歪速度εから表面粗粒層の面積率Arを推定できることが判る。
【0017】
次いで、表面粗粒層の面積率Arを一定にした操業例を説明する。径196mm,長さ470mmの6N01アルミニウム合金ビレットBを460℃に加熱した後、内径203mmのコンテナ1に装填し、幅60mm,厚み5mmのフラットバーを押出成形した。ディスカード厚を30mmに設定すると、押出長さは(196/2)2×π×60-1×5-1×(470−30)=44.2mと算出される。
【0018】
このとき、コンテナ内ビレットの残存長さをLに応じて押出速度(ステム2の前進速度V)を図4に示すように減少させた。すなわち、コンテナ内ビレットの残存長さをLが470mmから78mmになるまでの間は歪速度εを一次関数的に減少させ、残存長さをLが78mmとなった時点で押出速度を一定値5m/分に維持した。L=78mmは押出時間が長くなることを避けるために設定した下限値であり、押出時間に制約がない場合には図4に点線で示すように押出速度を更に遅くすることも可能である。
【0019】
得られた押出形材Pの表面を観察したところ、図5に示すように、押出形材Pの先端から押出方向に沿って40mの範囲にわたって表面粗粒層の面積率は約40%の一定範囲に収まっていた。そして、押出速度を5m/分の一定値に維持した押出後期で成形された押出形材Pの先端から40m以上の部分では表面粗粒層の面積率が上昇していた。表面粗粒層の面積率に上昇傾向がみられる部分は、押出形材Pを整直した後で切り落とされた。整直された押出形材Pは、所定長さに切断されて押出製品となるが、押出形材Pの押出方向に沿った表面粗粒層面積率の変動が抑制されているため、切断後に得られた押出製品相互の間で表面粗粒層面積率にバラツキがない。したがって、各押出製品を同一条件下で目的形状に曲げ加工でき、形状精度の良好な曲げ加工品が得られた。
【0020】
比較のため、全押出工程を通して30m/分の一定した押出速度でビレットBから押出形材Pを押出成形した。この場合に得られた押出形材Pの表面を観察すると、図6に示すように押出形材Pの押出方向に関して表面粗粒層の面積率が次第に大きくなっていた。そのため、押出形材Pから長さ10mの押出製品を4本切り出すと、押出形材Pの先端から切り出された押出製品と後端から切り出された押出製品の間で表面粗粒層の面積率が50%以上も異なっていた。したがって、同一条件下で各押出製品を曲げ加工すると、スプリングバック量が異なることから曲げ加工品の形状が不安定であった。
【0021】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明においては、コンテナに装填されているビレットの残存長さが短くなるに従ってステムの前進速度を低下させ、歪速度を実質的に一定化しているので、押出形材表面に生成する粗粒層が押出方向に関してほぼ均一な厚みとなる。表面粗粒層の厚みが均一化された押出形材は、曲げ加工,バルジ加工等の際に表面粗粒層の肉厚変動に起因したスプリングバック量の相違が抑えられているため、形状精度の良好な加工品に成形される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 コンテナに装填したビレットを押し出している説明図
【図2】 押出形材のダイス出口温度と表面粗粒層の面積率との間の相関性が低いことを示すグラフ
【図3】 歪速度と表面粗粒層の面積率との間に密接な相関関係が成立していることを示すグラフ
【図4】 コンテナ内ビレットの残存長さに応じて押出速度を低下させた実施例の押出成形を説明するグラフ
【図5】 本発明に従って製造された押出形材の押出方向に沿った表面粗粒層の面積率の分布を示すグラフ
【図6】 一定の押出速度で製造された押出形材の押出方向に沿った表面粗粒層の面積率の分布を示すグラフ
【符号の説明】
1:コンテナ 2:ステム 3:ダイス B:ビレット P:押出形材
Claims (3)
- コンテナに装填した遷移元素を含むアルミニウム合金のビレットの後端にステムを押し当て、ステムの押出圧をビレットに加えてコンテナの前端に設けられているダイスから押出形材を押し出す際、コンテナに収容しているビレットの残存長さが短くなるに従ってステムの前進速度を小さくすることを特徴とする表面粗粒層を制御した塑性加工用押出形材の製造方法。
- コンテナ内ビレットの残存長さをL(m),ステムの前進速度をV(m/秒),押出比をEとするとき、式ε=(V/L)×Eで定義される歪速度ε(/秒)が一定になるようにコンテナ内ビレットの残存長さに応じてステムの前進速度を低下する請求項1記載の製造方法。
- 請求項1又は2記載の方法で製造された塑性加工用押出形材。
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