JP4284052B2 - 欠陥補修方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被補修部材、例えば弁座等の部品に生じた割れ等の欠陥を補修する欠陥補修方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
火力発電プラントや原子力発電プラントには仕切弁、流量調節弁等の多数の弁が設けられており、これらの弁には弁ケーシングに弁体との間で水密性を保持する弁座が設けられる。これらの弁座等の構成部材は、長期間使用すると表面に割れ等の欠陥が生じる。例えば弁座は、弁体と水密性を保持して密着させる必要がありシール機能を要するため溶接による肉盛り施工が行われる。しかし、弁座は長期間使用すると摩耗、損耗あるいはその他の理由により、凸状の肉盛り施工部分に割れ等の欠陥が発生する恐れがある。
【0003】
このため、欠陥が発生した構成部材は、補修する必要がある。
【0004】
そこで、従来は弁座等の構成部材に発生した欠陥部にフラックスを含むペースト状の粉末ろう材を塗布し、その後に加熱処理により粉末ろう材を溶融して欠陥部に浸透させる欠陥補修方法により欠陥が補修される(例えば特許文献1参照)。このとき、粉末ろう材は、加熱したときに構成部材を溶融させないために、構成部材の融点よりも低い融点であるものが使用される。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−123617号公報(第3頁−第4頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来の欠陥補修方法はフラックスを用いるため、酸化作用の影響や、残留物などの不純物の影響を避けることができず、被補修部材の品質が劣化する恐れがある。そこで被補修部材への酸化作用の影響を低減させるためには、被補修部材の補修は粉末ろう材を負圧下で加熱することにより行う必要がある。
【0007】
しかし、粉末ろう材を負圧下で加熱するためには真空炉等の機器が必要であり、かつ真空炉等の機器内部に被補修部材を配置する必要があるためコスト増加の要因となる。さらに、被補修部材が大型であるときは、真空炉内に設置することができない場合がある。そこで、被補修部材の一部を部分的に囲う小型真空炉を用いる方法が考えられるが、特に被補修部材の形状が複雑で凹凸がある場合には、真空炉内の気密性を保つことが困難である。
【0008】
また、従来の欠陥補修方法においては、ろう材が被補修部材の欠陥部に浸透した後、ろう材により形成される面が基材面より高く肉盛られるように、すなわち凸状に形成することができない。このため、被補修部材が例えば弁座であり、欠陥部が凸状の肉盛り施工部分である場合には、シール機能を維持することができない。
【0009】
一方、被補修部材の欠陥部に、被補修部材と同質の材料を用いて溶接により補修施工することもできる。しかし、被補修部材に部分的な溶融が生じ、非溶融部分との境界面に残留応力が残る。このため、補修部近傍に摩耗や割れ等の欠陥が再発する恐れがある。従って、被補修部材の欠陥部が例えば弁座の肉盛り施工部分である場合には、長期間弁座のシール効果を維持することができない。
【0010】
さらに、被補修部材の欠陥部が弁座の肉盛り施工部分である場合のように凸形状であるときには、残留応力の発生を抑制するために被補修部材の凸形状部分を全て機械加工により除去した後、被補修部材と同質の材料を用いて溶接により補修施工することもできる。
【0011】
しかし、再び被補修部材に肉盛り施工をする必要があるため、特に作業エリアが狭い場合には補修作業が困難であり、労力および時間を要する。
【0012】
本発明はかかる従来の事情に対処するためになされたものであり、摩耗や割れ等の欠陥部が生じた被補修部材を、フラックスを用いることなくより高品質に補修を施工することが可能な欠陥補修方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る欠陥補修方法は、上述の目的を達成するために、請求項1に記載したように、被補修部材に発生した欠陥部に補修材を設けるステップと、前記被補修部材の欠陥部近傍に、不活性ガスの流路を形成するためのガスシールド板を設けるステップと、前記補修材および前記被補修部材の欠陥部近傍に不活性ガスを吹き付けながらレーザビームを照射して加熱することにより前記補修材を前記欠陥部に浸透させるステップとを有することを特徴とするものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明に係る欠陥補修方法の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0017】
図1は本発明に係る欠陥補修方法の実施形態の手順を示す説明図である。
【0018】
図1(a)に示すように欠陥補修方法の適用対象である被補修部材1は、例えば各種弁の弁座、弁体、弁ケーシング等の部材を対象とし、基材2に耐摩耗部3を被着して構成される。基材2は、例えば炭素鋼である。そして炭素鋼の基材2には、プラズマアーク溶接により肉盛り施工した1.5wt%C、1wt%Mn、28wt%Cr、0.5wt%Mo、4wt%W、残部Coで組成した耐摩耗部3が被着される。
【0019】
被補修部材1の長年の使用により、耐摩耗部3には欠陥部4が生じている場合を想定する。欠陥部4の大きさは、幅Wが例えば0.1mmあるいは0.2mm程度であり、深さDが1mmあるいは2mm程度である。
【0020】
そして、図1(b)に示すように、耐摩耗部3の欠陥部4に補修材5を設ける。補修材5は、基材2より融点の低いろう材を含む材料が用いられる。そして補修材5は、例えば塩素等の有害な成分を含まない有機バインダ6を用いて欠陥部4に被着される。
【0021】
次に、図1(c)に示すように、レーザビーム照射装置7を耐摩耗部3の欠陥部4に設けた補修材5の近傍に配置する。そして、このレーザビーム照射装置7により高出力のレーザビームXを照射して不活性ガスYをノズルより吹き付けながら補修材5を加熱し、欠陥部4に浸透させて溶け込ませる。このとき不活性ガスYは、補修材5と欠陥部4全体を覆って不活性ガスYの膜を形成し、外部環境から遮断する遮断層を構成する。不活性ガスYには、アルゴン、ヘリウム、窒素やさらに酸化防止を推進するため、数%から数10%の水素を混合するガスも含まれる。
【0022】
さらに、図1(d)に示すように、耐摩耗部3表面から凸状に形成された補修材5の部分を機械加工等の加工により平坦化する。
【0023】
すなわち、欠陥補修方法は被補修部材1の欠陥部4に補修材5を設け、不活性ガスYを欠陥部4に吹き付けながらレーザビームXを照射して加熱し、欠陥部4に溶け込ませた後、補修材5により形成された凸部を機械加工等の加工により平坦化する方法である。
【0024】
次に、被補修部材1の欠陥部4に設ける補修材5の組成について説明する。
【0025】
補修材5の組成の具体例を表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
補修材5は、主成分と副成分とから構成される。そして、補修材5の主成分には、被補修部材1より融点の低い例えばAu等の金属材料が用いられる一方、補修材5の副成分には補修材5の主成分と合金化して融点を低下させる例えばCu等の材料が用いられる。
【0028】
このため補修材5が加熱されると補修材5は被補修部材1の融点より低い温度で溶融する。このため、被補修部材1の溶融に先駆けて補修材5が溶融され、補修材5はより少ない被補修部材1の溶融量で補修材5が被補修部材1の欠陥部4に浸透して充填させることができる。
【0029】
補修材5の主成分の例としては、融点が1064℃であるAu、融点が962℃であるAg、融点が1083℃であるCuが挙げられる。
【0030】
一方、補修材5の副成分の例としては、Auを主成分とする場合は、Cu、Co、Ge、Fe、Niが挙げられる。そして、主成分であるAuにCuを副成分として含有させて補修材5を構成させる場合、補修材5の融点が最小となるときのCuの補修材5に対する概略含有量は22wt%程度である。このときの補修材5の最小融点、すなわちAuを主成分として副成分であるCuを22wt%含有させた補修材5の融点は、889℃程度である。
【0031】
同様に、Auを主成分としてAuに副成分であるCo、Ge、Fe、Niをそれぞれ含有させて補修材5を構成させる場合、補修材5の融点が最小となるときの補修材5に対する概略含有量はそれぞれ24.8wt%、28wt%、18.5wt%、18wt%程度である。さらに、このときの補修材5の最小融点はそれぞれ996℃、361℃、1036℃、955℃程度である。
【0032】
また、Agを主成分としてAgに副成分であるCu含有させて補修材5を構成させる場合、補修材5の融点が最小となるときの補修材5に対する概略含有量は28wt%程度であり、このときの補修材5の最小融点は780℃程度である。
【0033】
さらに、Cuを主成分としてCuに副成分であるMn、Pをそれぞれ含有させて補修材5を構成させる場合、補修材5の融点が最小となるときの補修材5に対する概略含有量はそれぞれ37wt%、15.7wt%程度であり、このときの補修材5の最小融点はそれぞれ871℃、714℃程度である。
【0034】
さらに第2の副成分として、Al、Cr、Ti、Zr等を加えてもよい。これらの第2の副成分は、上記金属材料(主成分)あるいは副成分の少なくとも1成分と合金化して、硬い析出物を生成するものである。すなわち、前記主成分、副成分、第2の副成分からなる硬質ろう材を用いてろう付けすると、ろう付時にろう材の温度が上がると共にろう材中の主成分あるいは副成分1の少なくとも1成分が副成分2の少なくとも1成分と合金化反応を生じ、硬い析出物がろう材中に生成して、その結果、ろう材部分の硬さそのものが大きくなる効果が得られる。これら、第2の副成分として、上記Al、Cr、Ti、Zr等が挙げられる。
【0035】
また、補修材5は、主成分と副成分あるいは、主成分と副成分と第2の副成分とを主材として、この主材にさらに硬質材料を添加することができる。補修材5に硬質材料を添加すると、硬質材料により主材が保持されて補修材5が被補修部材1の欠陥部4を充填した後、更に肉盛層が形成される。このため、被補修部材1の欠陥部4を補修材5により充填した後、被補修部材1の表面を平坦化加工する際、補修後の欠陥部4が被補修部材1の表面から凹むことがない。
【0036】
補修材5の硬質材料は、主材の主成分より融点が高い材料が用いられ、1種類に限らず複数種類により構成してもよい。補修材5に添加する硬質材料の具体例を表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
例えば、補修材5の主材はAuを主成分としてAuには、Cu、Co、Fe、Ge、Ni、Siが融点低減のために副成分として含有される。このとき主成分と副成分が合金化して補修材5を構成することにより、補修材5の融点がAuの融点よりも低下すれば副成分の含有量は任意である。
【0039】
一方、補修材5の主材の主成分がAuであるとき、補修材5に添加する硬質材料の例としては、Ni基合金、Co基合金、耐火金属、炭化物、ほう化物、窒化物が挙げられる。この硬質材料の補修材5に対する含有量は、1〜40vol%が望ましい。
【0040】
補修材5は、所要の組成の合金に限らす組成の構成要素となる複数の単体金属粉末の混合物により構成してもよい。補修材5を単体金属粉末の混合物により構成しても、単体金属粉末の混合物を加熱すると各単体金属粉末が相互拡散して、被補修部材1より低融点の合金が形成されるため所要の組成の補修材5を得ることができる。
【0041】
このため、補修材5を単体金属粉末の混合物により構成すると、合金を用いる場合に比べて合金化の工程が不要となり、より安価に補修材5を構成することができる。
【0042】
尚、補修材5は、組成を構成する単体金属粉末の混合物により構成するのみならず、組成要素の一部を合金化した金属粉末の混合物を用いて構成しても良い。
【0043】
補修材5を金属粉末の混合物により構成する場合、補修材5を被補修部材1の欠陥部4に設ける方法としては、例えば金属粉末の混合物を有機バインダで混練して被補修部材1の欠陥部4に被着する方法、あるいは金属粉末の混合物を各金属粉末の融点以下の温度で加熱または加圧して一体化してから被補修部材1の欠陥部4に設ける方法がある。
【0044】
金属粉末の混合物を加熱または加圧して一体化する方法により得られた補修材5は有機バインダを含まないため、補修後の被補修部材1内部に有機バインダによる分解残留物が残留しない。このため、補修後の被補修部材1の品質の劣化を低減させることができる。
【0045】
さらに、金属粉末の混合物を加熱または加圧して一体化する方法により得られた補修材5は、施工性がよく所定のサイズに加工することができる。
【0046】
また、金属粉末の混合物を加熱または加圧して一体化して補修材5を構成した後、さらにこの一体化した金属粉末の補修材5を適量の有機バインダで被補修部材1の欠陥部4に被着することも可能である。この場合、被補修部材1の欠陥部4が存在をする面が水平でなくても、補修材5を所定の位置に設けることができる。
【0047】
次に、被補修部材1の欠陥部4に設けた補修材5の加熱方法について説明する。
【0048】
図2は図1(c)に示す欠陥補修方法において被補修部材1の欠陥部4に設けた補修材5に不活性ガスYを吹き付けながらレーザビーム照射装置7によりレーザビームXを照射して加熱する方法を示す詳細説明図である。
【0049】
レーザビーム照射装置7は、光ファイバ10の端部にレーザヘッド11を設けた構成である。そして、レーザヘッド11は筒状の配管12内部に設けられる。さらに配管12内部の欠陥部4(被補修部)近傍には筒状あるいは板状のガスシールド板13が設けられる。
【0050】
そして、レーザヘッド11は配管12内部のガスシールド板13を経由して被補修部材1の欠陥部4に設けた補修材5にレーザビームXを照射可能に構成される。さらに、ノズル14より供給される不活性ガスYも、レーザビームXとともにガスシールド板13の間を経由して補修材5に吹き付けられるように構成される。
【0051】
すなわち、ガスシールド板13により不活性ガスYの流路が形成され、不活性ガスYの流れが補修材5に一様に向かう適切な流れとなるように構成される。このため、不活性ガスYが補修材5近傍に停留しやすくなるとともに大気の混入を抑制することができる。
【0052】
そして、補修材5近傍にガスシールド板13を配置し、さらに不活性ガスYを吹き付けながらレーザビーム照射装置7によりレーザビームXを補修材5に照射して加熱する。この結果、補修材5は溶融し、被補修部材1の欠陥部4に浸透して溶け込む。
【0053】
このとき、基材2あるいは耐摩耗部3の温度が低いと補修材5が被補修部材1の欠陥部4に十分に浸透しない。このため、補修部である耐摩耗部3の欠陥部4近傍を予熱することにより、補修材5をより良好に欠陥部4に浸透させることができる。耐摩耗部3の欠陥部4近傍を予熱する方法として、例えば、欠陥部4の周囲にヒータを巻き付けて加熱する方法が挙げられる。あるいは、レーザビームを複数回照射したり、照射する際の移動速度を遅くして照射するレーザビームXの入熱量を調整する方法も挙げられる。
【0054】
図3は、図1(a)に示す被補修部材1の上面図である。
【0055】
被補修部材1の耐摩耗部3には、線状の欠陥部4が生じている。この欠陥部4は線状の端部あるいはその近傍である助走部20と、助走部20以外の主部21とで構成される。
【0056】
レーザビーム照射装置7が補修材5に照射するレーザビームXによる入熱量を、耐摩耗部3に生じた欠陥部4の助走部20において多くすることにより、助走部20での欠陥部4への補修材5の浸透を良好にすることができる。
【0057】
一方、レーザビーム照射装置7が耐摩耗部3に生じた欠陥部4の主部21にレーザビームXを照射するときは、助走部20での入熱があるため欠陥部4が予熱され、助走部20より少ない入熱であっても補修材5の欠陥部4への浸透が良好となる。
【0058】
耐摩耗部3の欠陥部4において、レーザビーム照射装置7からのレーザビームXによる入熱量を増やす方法としては、レーザビームXの移動速度を遅くする方法、レーザビームXの出力を大きくする方法、レーザビームXを欠陥部4において複数回移動させる方法等の方法が挙げられる。尚、レーザビーム照射装置7によりレーザビームXを耐摩耗部3の欠陥部4において複数回移動させる場合、主部21よりも助走部20においてより多数回移動させて予熱を十分与えることも有効である。
【0059】
すなわち、補修材5が耐摩耗部3の欠陥部4に十分に浸透しない場合には、レーザビームXの移動速度を遅くする方法、レーザビームXの出力を大きくする方法、レーザビームXを複数回助走部20において移動させる方法等の方法により欠陥部4への入熱料を増加させることにより、補修材5を欠陥部4に浸透させることができる。
【0060】
逆に、レーザビーム照射装置7が被補修部材1および補修材5に照射するレーザビームXのエネルギ密度が大きいと、補修材5の一部あるいは耐摩耗部3の一部のみが溶融され、補修材5全体を溶融して予熱された欠陥部4に十分に浸透させることができなくなる恐れがある。
【0061】
このため、レーザビーム照射装置7が補修材5および耐摩耗部3の欠陥部4近傍に照射するレーザビームXのエネルギ密度は、1平方ミリメートル当たり5ワットから120ワットにすることが望ましい。レーザビームXのエネルギ密度が1平方ミリメートル当たり5ワット未満の場合、補修材5および耐摩耗部3の加熱が十分になされなくなる一方、1平方ミリメートル当たり120ワットを超えると、補修材5および耐摩耗部3の一部のみが溶融し易くなるためである。
【0062】
レーザビーム照射装置7が補修材5および耐摩耗部3の欠陥部4近傍に照射するレーザビームXのエネルギ密度は、レーザビームXの出力をレーザビームXの照射面積で割った値となる。このため、レーザビームXのエネルギ密度は、レーザビームXの出力あるいは照射面積を変化させることにより調整することができる。
【0063】
例えば、補修材5および耐摩耗部3の欠陥部4近傍に照射されるレーザビームXの照射面積を1平方ミリメートル、レーザビームXの出力を20ワットとすると20ワット/平方ミリメートルのエネルギ密度が得られる。
【0064】
同様に、例えば補修材5および耐摩耗部3の欠陥部4近傍に照射されるレーザビームXの照射面積を10平方ミリメートル、レーザビームXの出力を50ワットとすると5ワット/平方ミリメートルのエネルギ密度となり、レーザビームXの照射面積を10平方ミリメートル、レーザビームXの出力を500ワットとすると50ワット/平方ミリメートルのエネルギ密度となる。
【0065】
また、同様に補修材5および耐摩耗部3の欠陥部4近傍に照射されるレーザビームXの照射面積を30平方ミリメートル、レーザビームXの出力を2500ワットとすると約80ワット/平方ミリメートルのエネルギ密度となる。
【0066】
補修材5を溶融させることにより耐摩耗部3の欠陥部4を補修する場合、欠陥部4に被着した補修材5は、その全体を加熱するほうがより効率的に加熱することができる。このため、レーザビームXの照射面積をある程度広げて補修材5を加熱することが望ましい。
【0067】
また、補修材5および耐摩耗部3の欠陥部4近傍に照射されるレーザビームXの移動速度は任意であるが、レーザビームXの移動速度がより遅い方が補修材5および耐摩耗部3の欠陥部4近傍に、より効果的に予熱的効果を与え、補修材5の耐摩耗部3への浸透性が有効となる。補修材5および耐摩耗部3の欠陥部4近傍に照射されるレーザビームXの移動速度は、例えば毎分0.01メートルから毎分0.5メートルの範囲が望ましい。
【0068】
また、補修材5および耐摩耗部3の欠陥部4近傍に照射されるレーザビームXの波長も任意であるが、補修材5および耐摩耗部3の欠陥部4近傍からの反射がより少なく、吸収効率がより大きい波長、すなわちより短い波長とすることが望ましい。さらに、光ファイバ10でレーザビームXを伝送する際に、光ファイバ10内においてレーザビームXの損失が少ない波長のレーザビームXを用いることが望ましい。
【0069】
このため、補修材5および耐摩耗部3の欠陥部4近傍に照射されるレーザビームXは、例えば波長が約1ミクロンメートルのYAGレーザビームやさらに波長の短い半導体レーザビーム等のレーザビームXが挙げられる。
【0070】
また、光ファイバ10によりレーザビームXを伝送することにより、レーザヘッド11のサイズをより小さくすることができる。このため、被補修部材1の耐摩耗部3に生じた欠陥部4周辺の領域が狭い場合であっても被補修部材1の欠陥部4近傍に容易にレーザビームXを導くことが可能となり、また補修材5および耐摩耗部3の欠陥部4近傍へのレーザビームXの照射も容易とすることができる。
【0071】
例えば、被補修部材1の欠陥部4がパイプ状形状の内面にある場合には、レーザヘッド11のサイズをパイプの内部に挿入可能な大きさにする必要がある。さらに、被補修部材1の欠陥部4に所定の角度でレーザビームXを照射する必要がある場合には、レーザヘッド11のサイズがパイプの内部に挿入可能な大きさでありかつレーザヘッド11を所定の角度に傾けることが可能なサイズとする必要がある。
【0072】
そこで、光ファイバ10によりレーザビームXを伝送することでレーザヘッド11のサイズをより小さくすることにより、例えばパイプ状形状の被補修部材1の内面に存在する欠陥部4であっても所定の角度でレーザビームXを照射することができる。
【0073】
図1に示す欠陥補修方法により補修した後の被補修部材1を切断し、さらに研磨して光学顕微鏡で観察した。その結果、被補修部材1の耐摩耗部3の欠陥部4に補修材5が十分に溶け込んでいることが認められた。
【0074】
また、欠陥補修方法による補修においては、フラックスを用いることなく補修材5を不活性ガスY雰囲気中で加熱したため、補修部での酸化物の生成や変色も認められなかった。このため、欠陥補修方法により被補修部材1を補修すれば、補修後の被補修部材1の品質をより良好に維持することができる。
【0075】
被補修部材1の例としては火力発電プラントや原子力発電プラントの主蒸気隔離弁30の構成要素である弁座32および弁体31が挙げられる。
【0076】
図4は、図1に示す欠陥補修方法の被補修部材1の例である弁座32および弁体31を具備する発電プラントの主蒸気隔離弁30の一部を切り欠いた図である。
【0077】
主蒸気隔離弁30は弁体31と弁座32とを具備しており、弁体31を駆動させて弁座32に着脱することにより主蒸気隔離弁30が開閉される。弁体31および弁座32は互いに水密的に当接されている。
【0078】
図5は、図4に示す主蒸気隔離弁30の弁体31の正面図、図6は図5に示す弁体31の側面図、図7は図4に示す主蒸気隔離弁30の弁座32の正面図、図8は図7に示す弁座32の側面図である。
【0079】
主蒸気隔離弁30の弁体31および弁座32の接触部位は、基材40に耐摩耗部31が溶接により肉盛り施工されて構成される。そして、弁体31および弁座32の耐摩耗部31の作用により、主蒸気隔離弁30の閉弁時におけるシール効果が高められる。しかし、弁体31および弁座32の耐摩耗部31は、長期間使用すると摩耗あるいはその他の理由により割れ等の欠陥が生じることがあった。
【0080】
このため、耐摩耗部31の欠陥部4をシール機能を維持した状態で補修する必要がある。
【0081】
一方、従来の被補修部材1の欠陥補修方法として、被補修部材1の欠陥部4にフラックスを含み被補修部材1よりも低融点のペースト状の粉末ろう材を塗布し、その後に加熱処理により粉末ろう材を溶融して欠陥部4に浸透させて欠陥部4を補修させる方法がある。
【0082】
しかし、従来の欠陥補修方法においては、フラックスを用いて大気中で施工するため、酸化作用の影響や残留物などの不純物の影響を避けることができず、被補修部材1の補修部の品質が劣化するという問題点があった。さらに、ろう材が被補修部材1の欠陥部4に浸透した後、ろう材により形成される被補修部材1の表面が当初の被補修部材1の表面より高く肉盛られるように施工することができない。
【0083】
このため、弁体31および弁座32のように凸状に形成されシール機能を要する被補修部材1に従来の欠陥補修方法を適用すると、シール機能が低下するという問題があった。
【0084】
また、従来の欠陥補修方法において酸化作用の影響を低減させるため、被補修部材1の補修を負圧下でろう材を加熱することにより行う方法があるが、真空炉等の機器が必要となり、コスト増加の要因となる。さらに、被補修部材1が主蒸気隔離弁30の弁体31および弁座32である場合には、主蒸気隔離弁30が大型であり真空炉等の機器内に設定できない。
【0085】
そこで、弁体31および弁座32を囲う小型真空炉を設ける方法が考えられるが、弁体31および弁座32は形状が複雑で凹凸が多いため、補修部の気密性を保つことが困難である。
【0086】
このため、主蒸気隔離弁30の弁体31および弁座32に発生した欠陥部4の補修は、耐摩耗部31と同質材を用いて溶接補修施工し、弁体31と弁座32との水密性を維持させる場合が多かった。
【0087】
しかし、耐摩耗部31と同質材を用いた溶接補修による補修においては、弁体31および弁座32を構成する補修前の耐摩耗部31も部分的に溶融する。このため、耐摩耗部31の溶融部分と非溶融部分との境界面に残留応力が残り、耐摩耗部31の補修部近傍に摩耗や割れ等の欠陥が再度発生することがあり、長期間シール効果を維持することができないという問題点があった。
【0088】
一方、主蒸気隔離弁30の弁体31および弁座32の耐摩耗部31による肉盛り施工部分に欠陥が発生した場合、残留応力を局部的に残留させないために、肉盛り施工部分を機械加工により全て除去した後、再び肉盛り施工を実施する欠陥補修方法が考えられる。しかし、主蒸気隔離弁30の周囲に十分な作業空間が得られず、補修作業が困難で多大な労力と時間が必要であった。
【0089】
本発明の欠陥補修方法によれば、フラックスを用いることなく不活性ガスY雰囲気中で補修材5を加熱溶融することにより主蒸気隔離弁30の弁体31および弁座32に発生した欠陥部4を補修することができるため、酸化物の生成を抑制させることができる。このため欠陥補修方法では、補修後の主蒸気隔離弁30の弁体31および弁座32に、より高い品質を維持させることができる。
【0090】
このため、真空炉等の機器を設ける必要がなくより安価に弁体31および弁座32に発生した欠陥部4を補修することができるとともに主蒸気隔離弁30の弁体31および弁座32のように大型の被補修部材1であっても被補修部材1を工場等に移送させることなく補修することが可能である。
【0091】
また、欠陥補修方法では、補修材5に添加した硬質材料の作用により、補修材5が弁体31および弁座32に発生した欠陥部4を充填した後、肉盛層が形成される。すなわち、補修後の弁体31および弁座32の肉盛り施工部分は、他の肉盛り施工部分から凹むことがない。このため、補修後の弁体31および弁座32のシール機能を維持することができる。
【0092】
尚、欠陥補修方法は主蒸気隔離弁30の弁体31および弁座32に発生した欠陥部4の補修に限らず、電動弁等の弁あるいはその他の任意の構成部材に発生した欠陥の補修に適用することができる。
【0093】
また、被補修部材1は、基材2と耐摩耗部3とにより構成される必要はなく単一の部材で構成されていてもよい。
【0094】
【発明の効果】
本発明に係る欠陥補修方法においては、フラックスを使用せずに不活性ガスを吹き付けつつレーザビームを照射して補修材を加熱溶融し、被補修部材の欠陥部に浸透させるため、酸化作用の影響を回避させて、より高い品質を補修後の被補修部材に維持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る欠陥補修方法の実施形態の手順を示す説明図。
【図2】図1(c)に示す欠陥補修方法において被補修部材の欠陥部に設けた補修材に不活性ガスを吹き付けながらレーザビーム照射装置によりレーザビームを照射して加熱する方法を示す詳細説明図。
【図3】図1(a)に示す被補修部材の上面図。
【図4】図1に示す欠陥補修方法の被補修部材の例である弁座および弁体を具備する発電プラントの主蒸気隔離弁の一部を切り欠いた図。
【図5】図4に示す主蒸気隔離弁の弁体の正面図。
【図6】図5に示す弁体の側面図。
【図7】図4に示す主蒸気隔離弁の弁座の正面図。
【図8】図7に示す弁座の側面図。
【符号の説明】
1…被補修部材、2…基材、3…耐摩耗部、4…欠陥部、5…補修材、6…有機バインダ、7…レーザビーム照射装置、10…光ファイバ、11…レーザヘッド、12…配管、13…ガスシールド板、14…ノズル、20…助走部、21…主部、30…主蒸気隔離弁、31…弁体、32…弁座、40…基材、41…耐摩耗部、X…レーザビーム、Y…不活性ガス。
Claims (11)
- 被補修部材に発生した欠陥部に補修材を設けるステップと、前記被補修部材の欠陥部近傍に、不活性ガスの流路を形成するためのガスシールド板を設けるステップと、前記補修材および前記被補修部材の欠陥部近傍に不活性ガスを吹き付けながらレーザビームを照射して加熱することにより前記補修材を前記欠陥部に浸透させるステップとを有することを特徴とする欠陥補修方法。
- 前記被補修部材を予熱することを特徴とする請求項1記載の欠陥補修方法。
- 前記欠陥部の端部近傍の助走部の入熱量を、前記助走部以外の前記欠陥部近傍である主部の入熱量より大きくすることを特徴とする請求項1記載の欠陥補修方法。
- 前記レーザビームのエネルギ密度は、1平方ミリメートル当たり5ワットから120ワットであることを特徴とする請求項1記載の欠陥補修方法。
- 前記補修材は前記被補修部材よりも融点の低い金属材料を含むことを特徴とする請求項1記載の欠陥補修方法。
- 前記補修材は、前記被補修部材より融点の低い金属材料で構成される主成分と、この主成分と合金化して前記主成分の融点を低下させる副成分とで構成されることを特徴とする請求項1記載の欠陥補修方法。
- 前記補修材は、前記被補修部材より融点の低い金属材料で構成される主成分と、この主成分と合金化して前記主成分の融点を低下させる副成分と、この主成分より融点の高い硬質材料とにより構成されることを特徴とする請求項1記載の欠陥補修方法。
- 前記硬質材料は、Ni基合金、Co基合金、炭化物、ほう化物あるいは窒化物のうちのいずれかにより構成したことを特徴とする請求項7記載の欠陥補修方法。
- 前記補修材は、金属粉末の混合物により構成されることを特徴とする請求項1記載の欠陥補修方法。
- 前記補修材は、金属粉末の混合物を前記金属粉末の融点以下の温度で加熱あるいは加圧および加熱して一体化することにより構成されることを特徴とする請求項1記載の欠陥補修方法。
- 前記補修材は、有機バインダにより前記被補修部材の欠陥部に被着されることを特徴とする請求項1記載の欠陥補修方法。
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