JP4284832B2 - 多重モード誘電体共振器装置、フィルタ、デュプレクサおよび通信装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、多重モードで動作する誘電体共振器装置、それを用いたフィルタ、デュプレクサおよびこれらを用いた通信装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、キャビティ内に誘電体コアを配置してなる誘電体共振器は、TE01δモードやTM01δモードが利用されている。このような誘電体コアを用いた誘電体共振器によって複数段の誘電体共振器装置を構成する場合、キャビティ内に複数の誘電体コアを配列することになる。
【0003】
ところが、このような単一の誘電体コアに生じる単一の共振モードを利用する構造では、共振器を多段化すると全体に大型化し、しかも複数の誘電体コアを高精度に位置決め固定しなければならないため、特性の揃った誘電体フィルタなどの誘電体共振器装置の製造が困難であった。
【0004】
そこで、本願の出願人は、特開平11−145704号にて、単一の誘電体コアを用いながら多重化数を増した誘電体共振器装置に関して出願している。上記出願に係る誘電体共振器装置は、共振空間をx,y,zの直角座標形で表した場合に、x,y,zのそれぞれの軸方向に電界ベクトルが向くTMx,TMy,TMzモードと、x,y,zのそれぞれの軸に垂直な面方向に電界ベクトルがループを描くTEx,TEy,TEzモードを生じさせて、最大6つのモードを利用できるようにしたものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記出願に係る多重モード誘電体共振器装置においては、所定の共振モード間を結合させるために、その結合すべき2つの共振モードの電界が集中する部分に溝または孔を設けることによって摂動をかけ、2つの共振モード間でエネルギーの授受を行わせるものであった。しかし、このような構造でTMモードとTEモードとを結合させる場合、両者の電界が基本的に垂直に交わるため、強い結合が得難い。また、強く結合させるためには、結合用の溝や孔を深く形成する必要があるが、その影響により、各共振モードの電界の分布形状が乱れるため、共振周波数が上昇し、さらにフィルタ特性の調整が困難になるという問題も生じる。
【0006】
そこで、特願平11−333405および特願平11−333404にて、多重モード誘電体共振器装置について本願の出願人は出願している。前者の誘電体共振器装置は、使用周波数帯でTMモードで共振するTMモード用誘電体コア部分と、使用周波数帯で多重のTEモードでそれぞれ共振するTEモード用誘電体コア部分とによって誘電体コアを構成し、これをキャビティ内に配置したものである。後者の誘電体共振器装置は、上記TMモードとTEモードの内部結合を得るために、TEモードの電界が集中する誘電体コアの盛り上がり部をTMモードの電界が集中する誘電体コアの板部分に対して非対称に構成したものである。
【0007】
前者の誘電体共振器装置において、TMモードの共振周波数を主に変化させるためには、コアの板部分の辺寸法を変化させることがTMモードの共振周波数を最も大きく変化させる方法であるが、
(1) 同時にTEzモードの周波数も変動する。
【0008】
(2) 微調整が困難である。
【0009】
(3) 均等に削らないと内部結合の要因にもなる。
【0010】
(4) 入出力用のプローブとのギャップが変化すると外部結合Q(Qe)が変動する。
【0011】
等の難点が伴う。また、誘電体コアをキャビティ内に支持するサポート部分を切削する方法によってもTMモードの共振周波数が変動するが、サポート部分の強度が低下するという問題が生じる。
【0012】
また、後者の誘電体共振器装置においてTMモードとTEモードの内部結合を調整する方法として、上記誘電体コアの盛り上がり部を切削する方法が考えられるが、
(1) 大幅な結合係数の変化が望めない。
【0013】
(2) 2組のTM,TEモードの結合を同時に実現する方法であるため、2組の結合係数が同時に変化してしまう。
【0014】
という問題が生じる。
【0015】
この発明の目的は、TEモードとTMモードの共振周波数の設計・調整、およびTEモードとTMモード間の結合量の設計・調整を容易に行えるようにした多重モード誘電体共振器装置、フィルタ、デュプレクサ、およびをこれらを備えた通信装置を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
この発明は、少なくとも1つのTMモードを使用周波数帯で共振させるTMモード用誘電体コア部分と、多重TEモードのそれぞれのTEモードを使用周波数帯で共振させるTEモード用誘電体コア部分とを備えた誘電体コアを、導電性を有するキャビティ内に配置した多重モード誘電体共振器装置において、TMモードの電界の集中するTMモード用誘電体コアの端部にTMモードの共振周波数調整用突起を設ける。この構造によりTMモードの共振周波数のみを独立して上昇させて、他のモードの共振周波数へ影響を与えないようにする。
【0017】
また、この発明は、前記TMモード用誘電体コアを板状にするとともに、この板状の面に略垂直な方向に前記突起を突出させる。これにより、突起を切削してTMモードの共振周波数を調整する際に、Qeへの影響を抑える。
【0018】
また、この発明は、前記TMモード用誘電体コアを板状にするとともに、その面に略平行な方向に前記突起を突出させることによって、切削量に対する周波数調整の感度を高める。
【0019】
また、この発明は、前記TMモード用誘電体コアの板状の面に垂直な方向への前記突起部の突出量を、前記TMモード用誘電体コアの板状の面に対して非対称とする。この構造によりTMモードとTEモード間の結合量の調整を可能とする。なお、TMモード用誘電体コアの面に平行な所定の中心線に対して対称位置にある突起部の突出量の設計・調整によって、上記中心線の回りに電界ループを描くTEモードと、上記中心線に直交する向きに電界が向くTMモードとの結合量を定めることができるので、上記中心軸の配置によって、TEモードとTMモードの2つの組み合わせについて、結合量を独立して設計・調整することができる。
【0020】
また、この発明は、上記多重モード誘電体共振器装置における突起を切削して、その突起の突出量を調整することによって、多重モード誘電体共振器装置のTMモードの共振周波数の調整、またはTMモードとTEモードとの結合の調整を行う。
【0021】
また、この発明は、上記構造の多重モード誘電体共振器装置を用い、所定の共振モードに結合する入出力手段を設けてフィルタまたはデュプレクサを構成する。
【0022】
更に、この発明は、上記多重モード誘電体共振器装置、フィルタまたはデュプレクサを用いて、高周波回路部において送信信号または受信信号を帯域通過させたり、アンテナ共用器として設けて、通信装置を構成する。
【0023】
【発明の実施の形態】
この発明の第1の実施形態に係る多重モード誘電体共振器装置の構成を図1〜図4を参照して説明する。
図1の(A)は多重モード誘電体共振器装置の基本構成部分の斜視図、(B)は誘電体コア部分の斜視図である。(A)において2は誘電体コア10を内部に納めるキャビティであり、誘電体セラミックス製の角筒部材の外側面に導電体膜を形成したものである。このキャビティ2の図における上下の開口面には、導電体膜を形成した誘電体板または金属板を配置して、略直方体形状のシールド空間を構成する。10は誘電体コアであり、板状を成すTMモード用誘電体コア部分11と、この部分から円柱が階段状に膨出したTEモード用誘電体コア部分12とから成る。TMモード用誘電体コア部分11の端部には、TMモードの共振周波数を調整するための調整用突起16a,16b,16c,16dを形成している。
【0024】
なお、この図1ではキャビティ内における誘電体コアの配置構造を明瞭に示すために、誘電体コア10をキャビティ内に支持する支持体、および外部との間で信号の入出力を行う入出力手段については図示していない。
【0025】
図2の(A)は図1の(A)に示した多重モード誘電体共振器装置の上面図、図2の(B)は(A)におけるB−B部分の断面図である。図2において、3は誘電体コアのTMモード用誘電体コア部分11の一部とキャビティ2の内壁面との間を連結する支持体であり、誘電体コアより低誘電率材料から成る。
【0026】
図3は、この多重モード誘電体共振器装置で用いる五つの共振モードの電界分布の例を示している。但し、この図3においては、各モードの形を明瞭に示すために、調整用突起16a〜16dを省略している。ここで(A)はTMx+yモード、(B)はTMy−xモードについてそれぞれ示している。このようにTMx+yモードは、キャビティの外面に形成される一方の導電体膜からそれに対向する他方の導電体膜にかけてx+y軸方向に電界ベクトルが向き、同様にTMy−xモードはy−x方向に電界ベクトルが向く。また、図3において(C)はTEzモード、(D)はTEy−xモード、(E)はTEx+yモードについてそれぞれ示している。TEzモードは、z軸に垂直な面方向に電界ベクトルがループを描き、TEy−xモードはy−x軸に垂直な面方向に電界ベクトルがループを描き、更にTEx+yモードはx+y軸に垂直な面に電界ベクトルがループを描く。
【0027】
なお、z軸方向に電界ベクトルが向くTMzモードも生じるが、板状を成すTMモード用誘電体コア部分11の厚み方向寸法が、他方向の寸法より小さいため、TMzモードの共振周波数は、他のモードの共振周波数すなわち使用周波数帯より高く離れている。
【0028】
図4は上記TMx+yモードとTMy−xモードについて、それらの電界ベクトルの向きを示している。(A)に示すTMx+yモードでは、調整用突起16a,16cとキャビティ2の外面に形成した導電体膜との間に生じる静電容量成分が、調整用突起16a,16cの端部を切削して、その突出量を短くすることによって変化し、TMx+yモードの共振周波数を上昇方向に向かわせる。同様に、調整用突起16b,16dを切削して、その突出量を短くすることによって、TMy−xモードの共振周波数を上昇方向に調整する。このとき、調整用突起16a〜16dがTMモード用誘電体コアの外形に沿って断面略L字状に形成され、断面積を小さくしているため、この切削調整の際、切削が容易となる。なお、調整用突起を切削する場合には、電磁界分布のバランスを考慮して、16a,16cまたは16b,16dをそれぞれ同量切削するのが好ましい。
【0029】
ところで、誘電体コア10の中央部は上記TMモードとTEモードの各モードの電磁界が共存するため、この部分はTMモード用誘電体コア部分11でもあり、且つTEモード用誘電体コア部分12でもある。仮に、TMモード用誘電体コア部分を正方形板とし、TEモード用誘電体コア部分を球形として、この2つの部分を形式的に完全に分離しようとすれば、図21の(A)に示すように、板状のTMモード用誘電体コア部分11と2つの半球状のTEモード用誘電体コア部分12a,12bとに分けるか、(B)に示すように、中央部に孔を設けた板状のTMモード用誘電体コア部分11と、その孔に挿入される球状のTEモード用誘電体コア部分12とに分けることになる。しかし、(A)の場合でも、TMモード用誘電体コア部分11にTEモードの電界ベクトルが通り、(B)の場合でも、TEモード用誘電体コア部分12にTMモードの電界ベクトルが通る。この発明に係るTMモード用誘電体コア部分とTEモード用誘電体コア部分のそれぞれの一部は、誘電体コアの中央部において、TMモードとTEモードに共用するものであることに注意すべきである。
【0030】
次に、第2の実施形態に係る多重モード誘電体共振器装置の構成を図5〜図8を参照して説明する。
図5の(A)は多重モード誘電体共振器装置の基本構成部分の斜視図、(B)は誘電体コア部分の斜視図である。誘電体コア11の構成が図1に示した例と異なり、その他は図1に示したものと同様である。
【0031】
誘電体コア10は、板状を成すTMモード用誘電体コア部分11と、この部分から円柱が階段状に膨出したTEモード用誘電体コア部分12とから成り、TMモード用誘電体コア部分11の各辺の中央部に、TMモードの共振周波数を調整するための調整用突起17a,17b,17c,17dを形成している。
【0032】
図6の(A)は図5の(A)に示した多重モード誘電体共振器装置の上面図、図6の(B)は(A)におけるB−B部分の断面図である。図6において、3は誘電体コアのTMモード用誘電体コア部分11の一部とキャビティ2の内壁面との間を連結する支持体であり、誘電体コアより低誘電率材料から成る。
【0033】
図7は、この多重モード誘電体共振器装置で用いる五つの共振モードの電界分布の例を示している。但し、この図7においても、各モードの形を明瞭に示すために、調整用突起17a〜17dを省略している。ここで(A)はTMxモード、(B)はTMyモードについてそれぞれ示している。このようにTMxモードは、キャビティの外面に形成される一方の導電体膜からそれに対向する他方の導電体膜にかけてx軸方向に電界ベクトルが向き、同様にTMyモードはy方向に電界ベクトルが向く。また、図7において(C)はTEzモード、(D)はTEyモード、(E)はTExモードについてそれぞれ示している。TEzモードは、z軸に垂直な面方向に電界ベクトルがループを描き、TEyモードはy軸に垂直な面方向に電界ベクトルがループを描き、更にTExモードはx軸に垂直な面に電界ベクトルがループを描く。
【0034】
図8は上記TMxモードとTMyモードについて、それらの電界ベクトルの向きを示している。(A)に示すTMxモードでは、調整用突起17a,17cとキャビティ2の外面に形成した導電体膜との間に生じる静電容量成分が、調整用突起17a,17cの端部を切削して、その突出量を短くすることによって、TMxモードの共振周波数を上昇方向に調整する。同様に、調整用突起17b,17dの端部を切削して、その突出量を短くすることによって、TMyモードの共振周波数を上昇方向に調整する。
【0035】
図9は第3の実施形態に係る多重モード誘電体共振器装置の誘電体コア部分の斜視図である。
図1に示した例では、TMモード用誘電体コア部分11の四隅に断面L字型の調整用突起16a〜16dを形成したが、これらの調整用突起16a〜16dを、図9に示すように、角柱形状にしてもよい。
【0036】
次に、第4の実施形態に係る多重モード誘電体共振器装置の構成を図10および図11を参照して説明する。
図10は誘電体コア部分の斜視図である。この例では、板状を成すTMモード用誘電体コア部分11の四隅に、この板状の面に平行に突出する調整用突起18a〜18d,18a′〜18d′を形成している。
【0037】
図11はこの誘電体コアをキャビティ内に納めて構成した多重モード誘電体共振器装置の上面図であり、TMx+yモードとTMy−xモードについて電界ベクトルの向きを示している。TMx+yモードはTMモード用誘電体コア部分11の一方の角部から対向する他方の角部にかけて電界ベクトルが向くので、調整用突起18a,18a′,18c,18c′を切削して、その突出量を短くすることによって、TMx+yモードの共振周波数を上昇方向に調整する。同様に、調整用突起18b,18b′,18d,18d′を切削して、その突出量を短くすることによって、TMy−xモードの共振周波数を調整する。
【0038】
尚、TMモード用誘電体コア部分11の上面に沿って突出する調整用突起18a〜18dと、TMモード用誘電体コア部分の下面の面に沿って突出する調整用突起18a′〜18d′とに分離しているので、上下2つの調整用突起の間に入出力用プローブ(Qeプローブ)を配置することによって、入出力プローブとTMモード用誘電体コアとを接近させて、強く結合させることができる。
【0039】
図12および図13は第5の実施形態に係る多重モード誘電体共振器装置の構成を示す図である。
図12は誘電体コア部分の斜視図、図13は多重モード誘電体共振器装置の上面図であり、TMxモードおよびTMyモードについてそれらの電界ベクトルの向きを示している。この例ではTMモード誘電体コア部分11の四辺それぞれの中央部からTMモード用誘電体コア部分の面に沿って調整用突起19a〜19d,19a′〜19d′を突出させている。
【0040】
図13はこの誘電体コアをキャビティ内に納めて構成した多重モード誘電体共振器装置の上面図であり、TMxモードとTMyモードについて電界ベクトルの向きを示している。TMxモードはTMモード用誘電体コア部分11の一方の辺から対向する他方の辺に向かって電界ベクトルが向くので、調整用突起19a,19a′,19c,19c′を切削して、その突出量を短くすることによって、TMxモードの共振周波数を上昇方向に調整する。同様に、調整用突起19b,19b′,19d,19d′を切削して、その突出量を短くすることによって、TMyモードの共振周波数を調整する。
【0041】
尚、この例でも、TMモード用誘電体コア部分11の上面に沿って突出する調整用突起19a〜19dと、TMモード用誘電体コア部分の下面の面に沿って突出する調整用突起19a′〜19d′とに分離しているので、上下2つの調整用突起の間に入出力用プローブを配置することによって、入出力プローブとTMモード用誘電体コアとを接近させ、強く結合させることができる。
【0042】
次に、第1の実施形態で示した多重モード誘電体共振器装置で示した五つの共振モードを順に結合させたフィルタの例を図14および図15を参照して説明する。
図14は、図2の図示方法と同様に、(A)がフィルタの上面図、(B)が(A)のB−B部分の断面図である。図14において、5a,5bはそれぞれ同軸コネクタであり、それらの中心導体にはキャビティ2内に突出するプローブ4a,4bを取り付けている。14a,14a′はTEzモードとTEx+yモードとの結合用の溝、14b,14b′はTEy−xモードとTEzモードとの結合用の溝である。
【0043】
図15は上記結合溝14b,14b′の作用を示す図である。但し、ここではTEモード用誘電体コア部分を球形として簡略化して示している。図15の(A)はTEy−xモードとTEzモードの電界ベクトルを斜視図として表したもの、(B)は(y−x)−z面での断面における上記2つのモードの電界ベクトルを示している。ここで、TEy−xモードとTEzモードとを足し合わせたモード(TEy−x+zモード)を考えると、このモードは(C)に示すように、y−x+z軸方向に垂直な面に電界ベクトルがループを描くモードと成る。またTEy−xモードとTEzモードの差のモード(TEy−x−zモード)の電界ベクトルは、(D)に示すようにy−x−z軸方向に垂直な面にループを描くモードとなる。
【0044】
結合溝14b,14b′はTEy−x−zモードの電界ベクトルのループが通る位置にあるため、TEy−x−zモードの電界を弱める方向に作用し、この摂動によってTEy−xモードとTEzモードとが結合する。同様に、図14において結合溝14a,14a′は、TEzモードとTEx+yモードとに摂動を与えて、TEzモードとTEx+yモードとを結合させる。
【0045】
図16はTEx+yモードとTMy−xモードとの結合の様子を示している。この断面は図14の(B)に示したものと同じ面における断面である。図中の曲線で示す矢印はTMy−xモードとTEx+yモードの電界ベクトルを表している。(A)に示すモードを偶モード、(B)に示すモードを奇モードとすれば、板状のTMモード用誘電体コア部分11に対するTEモード用誘電体コア部分12の膨出量が上下非対称であるため、TMy−xモードとTEx+yモードにおける電界強度の分布に摂動が与えられることになる。これにより両モードの間でエネルギーの授受が行われ、この二つのモードが結合する。
【0046】
上記TMモード用誘電体コア11に対するTEモード用誘電体コア12の上下非対称性によるTMモードとTEモード間の結合は、上記2つのモードにそれぞれ直交するTMx+yモードとTEy−xモードとの結合にも同様に当てはまる。
【0047】
上記TMモード用誘電体コア11に対するTEモード用誘電体コア12の上下非対称性は、TMモード用誘電体コア部分11から上下方向に突出する調整用突起16の上下非対称性によっても生じる。したがって、TMモード用誘電体コア部分11から上下方向への調整用突起16の突出量の設定によって、TEモードとTMモードの電界強度の分布に摂動が与えられる。例えばTEモード用誘電体コア12がTMモード用誘電体コアに対して上方にずれている場合、上方の調整用突起16d,16bの突出量を、下方の調整用突起16d′,16b′より短くすれば、TMy−xモードとTEx+yモードとの電界強度分布の摂動が小さくなって、上記二つのモード間の結合係数が低下する。逆に、下方の調整用突起16d′,16b′の突出量を、上方の調整用突起16d,16bより短くすれば、TMy−xモードとTEx+yモードとの電界強度分布の摂動が大きくなって、上記二つのモード間の結合係数が上昇する。同様に、調整用突起16a,16cの突出量を、下方の調整用突起16a′,16c′より短くすれば、TMx+yモードとTEy−xモードとの結合係数が低下する。逆に、下方の調整用突起16a′,16c′の突出量を、上方の調整用突起16a,16cより短くすれば、TMx+yモードとTEy−xモードとの結合係数が上昇する。
【0048】
このように調整用突起16は、既に述べたようにTMモードの共振周波数の調整だけでなく、TEモードとTMモードとの結合を調整することができる。しかも、TMモード用誘電体コアの四隅に調整用突起を設けることによって、(TMx+yモード)−(TEy−xモード)間の結合と、(TMy−xモード)−(TEx+yモード)間の結合を独立して調整できるようになる。
【0049】
したがって、TMモード用誘電体コア11に対するTEモード用誘電体コア12の上下非対称性により、TMx+yモードとTEy−xモードとの結合およびTEx+yモードとTMy−xモードとの結合が生じ、結合溝14a,14a′によりTEy−xモードとTEzモードとの結合が生じ、結合溝14b,14b′によりTEzモードとTEx+yモードとの結合が生じるため、結局、TMx+y→TEy−x→TEz→TEx+y→TMy−xの順に、5つの共振器が順に結合した5重モードの共振器として作用する。
【0050】
図14においてプローブ4aは初段の共振器であるTMx+yモードと電界結合し、プローブ4bは終段の共振器であるTMy−xモードと電界結合するため、結局、同軸コネクタ5a−5b間が5段の共振器による帯域通過特性を示すフィルタとして機能する。
【0051】
次に、多重モード誘電体共振器装置に他の共振器を組み合わせて成るフィルタの構成例を図17を参照して説明する。
図17の(A)は、上部の蓋を取り除いた状態での上面図、(B)は(A)におけるB−B部分の断面図である。図17において20は図14に示した5重モードの共振器である。また21,22はそれぞれ半同軸共振器である。この半同軸共振器21,22は、キャビティ内に中心導体8を備え、周波数調整ネジ9の下端部と中心導体8の上端部との間に生じる静電容量と中心導体8の長さ等によって共振周波数を定めている。同軸コネクタ5aの中心導体とキャビティの内面との間には結合ループ7aを設けていて、この結合ループによって外部結合をとっている。同様に同軸コネクタ5bの中心導体とキャビティの内面との間には結合ループ7dを設けていて、この結合ループによって外部結合をとっている。また共振器20のプローブ4a,4bには結合ループ7b,7cをそれぞれ接続していて、結合ループ7b,7cを半同軸共振器21,22に対してそれぞれ磁界結合させている。
【0052】
以上の構成により、初段と終段の共振器と、その間の5段の誘電体共振器とによって、合計7段の共振器から成る帯域通過特性を有するフィルタとして作用することになる。このように初段と終段の共振器を半同軸共振器とし、結合ループにより強い外部結合をとるようにしたため、広帯域特性が容易に得られる。また5重モードの共振器20によるスプリアスモードが、半同軸共振器21,22により抑圧されるため、全体のスプリアス特性が改善される。さらに、外部と直接結合させる必要が無くなることによって、5重モード共振器20におけるプローブ4a,4bは小さくてすみ、これにより入出力間の信号の直接パスも少なくなり、直接パスによる特性の劣化も生じない。
【0053】
なお、図17に示した例では半同軸共振器を用いたが、同様にして初段と終段に同軸共振器を用いることができ、同様の効果を奏する。
【0054】
次に、多重モード誘電体共振器装置に他の共振器を組み合わせて成るフィルタの構成例を図18を参照して説明する。
図18の(A)は、上部の蓋を取り除いた状態での上面図、(B)は(A)におけるB−B部分の断面図である。図18において20は図14に示した5重モード共振器、23は3重モード共振器である。13は3重モード用誘電体コアであり、低誘電率の部材でキャビティの底面から所定高さの位置に支持している。
【0055】
結合ループ7aは誘電体コア13に対して斜め45度方向のx+y軸にループ面を向けているので、x+y軸方向に電界ベクトルが向くTMx+yモードと結合する。また結合ループ7bはy−x軸方向にループ面を向けているので、y−x軸方向に電界ベクトルが向くTMy−xモードと結合する。また、この誘電体コア13には、所定深さで45度方向に延びる結合溝15a,15bを設けていて、15aはTMy−xモードとTEzモードの電界ベクトルが重なり合う部分に設けているため、この溝によって両モード電界強度の分布に摂動が与えられて両者が結合する。同様に、結合溝15bはTMx+yモードとTEzモードの電界ベクトルが重なり合う部分に設けているため、この溝によって両モード電界強度の分布に摂動が与えられて両者が結合する。従って、この誘電体コア13によってTMx+yモード→TEzモード→TMy−xモードが順に結合して、3段の共振器として作用する。従って、この図18に示す装置全体が8段の共振器からなる帯域通過特性を示すフィルタとして機能する。
【0056】
次に、デュプレクサの構成例を図19を参照して説明する。
図19において、20TX,20RXはそれぞれ図14に示したものと同様の5重モード共振器、23TX,23RXはそれぞれ図18中に示したものと同様の3重モード共振器である。この3重モード共振器23TXおよび5重モード共振器20TXによって送信フィルタ部分を構成し、同様に3重モード共振器23RXおよび5重モード共振器20RXによって受信フィルタ部分を構成している。
【0057】
なお、同軸コネクタ5bの中心導体に接続している一方の結合ループ7bは3重モード共振器23TXに磁界結合し、他方の結合ループ7cは3重モード共振器23RXに磁界結合し、これによって、送信信号と受信信号とを分岐する。このようにしてアンテナ共用器としてのデュプレクサを構成する。
【0058】
図20は上記デュプレクサを用いた通信装置の構成を示すブロック図である。このように、送信フィルタの入力ポートに送信回路、受信フィルタの出力ポートに受信回路をそれぞれ接続し、デュプレクサの入出力ポートにアンテナを接続することによって、通信装置の高周波部を構成する。
【0059】
【発明の効果】
この発明によれば、TMモードの電界の集中するTMモード用誘電体コアの端部にTMモードの共振周波数調整用突起を設けることにより、TMモードの共振周波数のみを独立して上昇させて、他のモードの共振周波数への影響を与えないようにでき、特性の設計または調整が容易となる。また、その突起の突出量を調整することによって、所定の周波数で共振するTMモードと、所定の結合量でTMモードとTEモードとが結合する多重モード誘電体共振器装置が得られる。
【0060】
また、この発明によれば、TMモード用誘電体コアの板状の面に略垂直な方向に前記突起を突出させることにより、突起を切削してTMモードの共振周波数を調整する際に、Qeへの影響が抑えられる。
【0061】
また、この発明によれば、TMモード用誘電体コア板状の面に略平行な方向に前記突起を突出させることによって、切削量に対する周波数調整の感度を高めることができる。
【0062】
また、この発明によれば、TMモード用誘電体コアの板状の面に垂直な方向への突起部の突出量をTMモード用誘電体コアの板状の面に対して非対称とすることにより、TMモードとTEモード間の結合量の調整が可能となる。
【0063】
また、この発明によれば、上記多重モード誘電体共振器装置を用いた、小型で所定の特性を有するフィルタまたはデュプレクサが得られる。
【0064】
更に、この発明によれば、上記多重モード誘電体共振器装置、フィルタまたはデュプレクサを用いて、所定の通信特性を示す通信装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態に係る多重モード誘電体共振器装置の基本部分の構成を示す斜視図
【図2】同共振器装置の上面図および断面図
【図3】同共振器装置の各モードにおける電界分布を示す図
【図4】同共振器装置の二つのTMモードについての電界分布と調整用突起との関係を示す図
【図5】第2の実施形態に係る多重モード誘電体共振器装置の基本部分の構成を示す斜視図
【図6】同共振器装置の上面図および断面図
【図7】同共振器装置の各モードにおける電界分布を示す図
【図8】同共振器装置の二つのTMモードについての電界分布と調整用突起との関係を示す図
【図9】第3の実施形態に係る多重モード誘電体共振器装置の誘電体コア部分の斜視図
【図10】第4の実施形態に係る多重モード誘電体共振器装置の誘電体コア部分の斜視図
【図11】同共振器装置の二つのTMモードについての電界分布と調整用突起との関係を示す図
【図12】第5の実施形態に係る多重モード誘電体共振器装置の誘電体コア部分の斜視図
【図13】同共振器装置の二つのTMモードについての電界分布と調整用突起との関係を示す図
【図14】第6の実施形態に係る多重モード誘電体共振器装置の上面図および断面図
【図15】TEモード同士の結合調整の原理を示す図
【図16】TEモードとTMモードとの結合の様子を示す図
【図17】半同軸共振器と5重モード共振器を用いたフィルタの構成例を示す図
【図18】3重モード共振器と5重モード共振器を用いたフィルタの構成例を示す図
【図19】デュプレクサの構成例を示す図
【図20】通信装置の構成を示すブロック図
【図21】TMモード用誘電体コア部分とTEモード用誘電体コア部分との関係を説明するための図
【符号の説明】
2−キャビティ
3−支持体
4−プローブ
5−同軸コネクタ
6−蓋
7−結合ループ
8−中心導体
9−周波数調整ネジ
10−誘電体コア
11−TMモード用誘電体コア部分
12−TEモード用誘電体コア部分
13−3重モード用誘電体コア部分
14−結合溝
15−結合溝
16〜19−調整用突起
20−5重モード共振器
21,22−半同軸共振器
23−3重モード共振器
Claims (8)
- 少なくとも1つのTMモードを使用周波数帯で共振させるTMモード用誘電体コア部分と、多重TEモードのそれぞれのTEモードを使用周波数帯で共振させるTEモード用誘電体コア部分とを備えた誘電体コアを、導電性を有するキャビティ内に配置して成る誘電体共振器装置において、
TMモードの電界の集中する前記TMモード用誘電体コアの端部に突起を設けた多重モード誘電体共振器装置。 - 前記TMモード用誘電体コアを板状にするとともに、この板状の面に略垂直な方向に前記突起を突出させた請求項1に記載の多重モード誘電体共振器装置。
- 前記TMモード用誘電体コアを板状にするとともに、この板状の面に略平行な方向に前記突起を突出させた請求項1に記載の多重モード誘電体共振器装置。
- 前記TMモード用誘電体コアの板状の面に垂直な方向への、前記突起部の突出量を前記TMモード用誘電体コアの板状の面に対して非対称とした請求項2に記載の多重モード誘電体共振器装置。
- 請求項2、3または4のうちいずれかに記載の多重モード誘電体共振器装置における前記突起を切削して、当該突起の突出量を調整することによって、前記TMモードの共振周波数または前記TMモードと前記TEモードとの結合の調整を行う、多重モード誘電体共振器装置の特性調整方法。
- 請求項1〜4のうちいずれかに記載の多重モード誘電体共振器装置を用いたフィルタ。
- 請求項1〜4のうちいずれかに記載の多重モード誘電体共振器装置を用いたデュプレクサ。
- 請求項1〜4のうちいずれかに記載の多重モード誘電体共振器装置、請求項6に記載のフィルタ、または請求項7に記載のデュプレクサを用いた通信装置。
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