まず、本明細書において、いくつかの用語の意味を予め明らかにしておく。まず、「窒化物半導体基板」とは、窒化物半導体で構成されている基板であればよく、AlaGabIncN(0≦a≦1,0≦b≦1,0≦c≦1,a+b+c=1)基板に置き換えても構わない。また、当該AlaGabIncN(0≦a≦1,0≦b≦1,0≦c≦1,a+b+c=1)基板の窒素元素の内、約10%以下(但し、六方晶系であること)が、As,P,Sbのいずれかの元素に置換されても構わない。また、本明細書では、これら全てを「GaN基板」とする。
本明細書に記載の「溝」とは、窒化物半導体基板の上面(成長面)に形成されたストライプ状の凹部を意味する。また、「丘」とは溝同様にストライプ状の凸部を意味する。尚、丘と溝の断面形状は、必ずしも矩形である必要はなく、例えば、順テーパや逆テーパといった形状であっても構わない。また、溝を掘ることによって丘および溝の側面が現れるが、これらは同じ面であり、本明細書では、これらを「丘の側面」とする。
本明細書に記載の「活性層」とは、井戸層もしくは井戸層と障壁層から構成された層の総称を意味するものとする。例えば、単一量子井戸構造の活性層は、1つの井戸層のみから構成されるか、もしくは、障壁層/井戸層/障壁層から構成される。また、多重量子井戸構造の活性層は、複数の井戸層と複数の障壁層から構成される。
本明細書に記載の「オフ角」とは、単結晶GaNの結晶成長面である(0001)面、即ち、C面に対し、単結晶GaNから切り出しなどによって得られたGaN基板表面とが成す角度を「オフ角」とする。
尚、結晶の面や方位を示す指数が負の場合、絶対値の上に横線を付して表記するのが結晶学の決まりであるが、本明細書では、そのような表記ができないため、絶対値の前に負号「−」を付して負の指数を表す。
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。窒化物発光素子の一例として窒化物半導体レーザ素子について説明する。図1は本実施形態における窒化物半導体レーザ素子が設けられたウエーハの一部の概略断面図である。図2は、本実施形態の、窒化物半導体成長層11を積層する前のn型GaN基板10の上面図である。面方位も併せて表示する。図2に示したn型GaN基板10上に、窒化物半導体成長層11を積層させるなどして、図1の窒化物半導体レーザ素子を得る。
図2に示すように、n型GaN基板10には、〈1−100〉方向と平行な方向に丘17、溝18が形成されている。また、丘と溝の断面形状は矩形とする。また、図3は窒化物半導体成長層11の構成を示す概略断面図である。
このような窒化物半導体レーザ素子において、まず、n型GaN基板10の作製方法について、図面を参照して説明する。n型GaN基板10上面の主面方位は(0001)面であり、主面方位に対して0.1°のオフ角を有している(図示せず)。当該n型GaN基板10の上面に、SiO2又はSiNx等を蒸着する。尚、本実施形態ではSiO2を用いるとするが、これに限定されるものではなく、他の誘電体膜等でも構わない。次に、このSiO2膜上に、レジスト材を塗布し通常のリソグラフィ技術を用いて、ストライプ形状のレジストマスクパターンを〈1−100〉方向に形成する。次に、RIE(Reactive Ion Etching)技術等を用い、SiO2およびn型GaN基板10の上面をエッチングすることで、溝18を形成する。その後、HF(フッ酸)などのエッチャントを用いて、SiO2を除去し、図2に示すような、〈1−100〉方向に丘17と溝18が形成されたn型GaN基板10が作製される。尚、本実施形態では、n型GaN基板10の上面をエッチングして溝18を形成するのに、RIE技術を用いているが、この方法に限定されるものではなく、ウエットエッチング技術等を用いても構わない。
上述のように形成された溝17と丘18は、n型GaN基板10の上面に〈1−100〉方向と平行に形成され、溝の幅Mを500μm、丘の幅Lを500μm、溝の深さZ(図1参照)を5μmとする。また、丘17と溝18の断面形状は矩形であっても構わないし、溝18の開口部の幅が底面部の幅より広い順テーパ形状や、逆に、溝18の開口部の幅が底面部より狭い逆テーパ形状などであっても構わない。
又、溝18の深さZは、窒化物半導体成長層11を形成する際、溝18の埋め込まれやすさに影響する。このため、深さ3μm未満の溝18が形成されたn型GaN基板10を作製した場合、当該n型GaN基板10上に窒化物半導体成長層11を積層させると、後述する這い上がり成長によって溝18の埋め込まれる領域が広くなる。この場合、リッジストライプ部を作製する領域が得られなくなることや、窒化物半導体成長層11の表面平坦性が低下するため、好ましくない。又、溝18の深さZが20μmを超えると、窒化物半導体レーザ素子の作製工程において、ウエーハ割れが発生するなどの可能性があるため、好ましくない。よって、溝18の深さZは、3μm以上20μm以下が好ましく、5μm以上10μm以下であれば、より好ましい。
尚、丘17と溝18とを形成するn型GaN基板10のオフ角は、主面に対して0.2°以内であることが好ましい。このオフ角が0.2°を超えるGaN基板を用いて窒化物半導体成長層11の積層を行った場合、丘17の上面や溝18の中央付近が特定方向に傾斜したり、窒化物半導体成長層11の表面全体が、波を打ったような表面となり、ウエーハ表面全体で平坦性が悪化し、好ましくない。
上述の処理をして得られた基板上に、MOCVD(Metal Organic Vapor Deposition:有機金属化学気相蒸着)法などを用い、図3で示すような窒化物半導体成長層11をエピタキシャル成長させることで、図1に示された窒化物半導体レーザ素子を作製する。
図3に示すように、窒化物半導体成長層11は、n型GaN基板10表面に、層厚1μmのn型GaN層21と、層厚1.2μmのn型Al0.1Ga0.9Nクラッド層22と、層厚0.1μmのn型GaN光ガイド層23と、層厚8nmのIn0.01Ga0.99N障壁層が4層および層厚4nmのIn0.1Ga0.9N井戸層が3層から成る多重量子井戸構造活性層24と、層厚20nmのp型Al0.3Ga0.7Nキャリアブロック層25と、層厚0.1μmのp型GaN光ガイド層26と、層厚0.5μmのp型Al0.1Ga0.9Nクラッド層27と、層厚0.1μmのp型GaNコンタクト層28と、が順に積層され構成される。
次に、窒化物半導体成長層11の製造方法を説明する。以下の説明ではMOCVD法を用いた場合を示しているが、エピタキシャル成長できる成長法であれば、MOCVD法に限定されるものではなく、MBE法(Molecular Beam Epitaxy:分子線エピタキシ法)、HDVPE法(Hydride Vapor Phase Epitaxy:ハイドライドVPE法)等、他の気相成長法を用いても構わない。
n型GaN基板10をMOCVD装置の成長炉内の所定のサセプタ上に設置し、サセプタ温度を1050℃まで昇温し、H2あるいはN2をキャリアガスとして用い、Nの原料としてNH3を、Gaの原料としてTMGa(トリメチルガリウム)またはTEGa(トリエチルガリウム)を、n型不純物(ドーパント)であるSiの原料としてSiH4とを、それぞれ成長炉内に供給し、n型GaN層21を成長させる。その後、Al原料としてTMAl(トリメチルアルミニウム)またはTEAl(トリエチルアルミニウム)を成長炉内に供給し、n型Al0.1Ga0.9Nクラッド層22を成長させる。尚、上述の膜において、n型不純物(ドーパント)であるSiの濃度は、5×1017/cm3〜1×1019/cm3となるように調整されている。引き続き、膜中のSiの濃度が、1×1016/cm3〜1×1018/cm3となるように調整されたn型GaN光ガイド層23を成長させる。
その後、サセプタ温度を750℃に降温し、3周期のIn0.1Ga0.9N井戸層と4周期のIn0.01Ga0.99N障壁層から構成された多重量子井戸構造活性層24を成長させる。当該多重量子井戸構造活性層24は、障壁層/井戸層/障壁層/井戸層/障壁層/井戸層/障壁層の順序で形成される。この多重井戸構造活性層24を形成する際、障壁層、又は障壁層と井戸層の両方の膜中のSi濃度が1×1016〜1×1018/cm3となるように、成長炉内にSiH4を供給する。
次に、サセプタ温度を再び1050℃まで昇温させ、SiH4の供給を止め、Nの原料としてNH3を、Gaの原料としてTMGa(トリメチルガリウム)またはTEGa(トリエチルガリウム)を、Al原料としてTMAl(トリメチルアルミニウム)またはTEAl(トリエチルアルミニウム)とを、それぞれ成長炉内に供給し、p型Al0.3Ga0.7Nキャリアブロック層25、p型GaN光ガイド層26、p型Al0.1Ga0.9Nクラッド層27とp型GaNコンタクト層28を順次成長させる。これらの膜を成長させる際、p型不純物(ドーパント)であるMgの原料としてEtCP2Mg(ビスエチルシクロペンタジエニルマグネシウム)を炉内に供給し、膜中のMg濃度が1×1018/cm3〜2×1020/cm3になるように調整する。尚、Mgの原料としてはシクロペンタジエニルマグネシウム、ビスメチルシクロペンタジエニルマグネシウムなど、他のシクロペンタ系のMg原料を用いても構わない。また、p型Al0.3Ga0.7Nキャリアブロック層25、p型GaN光ガイド層26、p型Al0.1Ga0.9Nクラッド層27とp型GaNコンタクト層28などのp型層中の残留水素は、p型ドーパントであるMgの活性化を妨げている。この残留水素を除去するために、p型層の成長中に微量の酸素を混入しても構わない。
このようにして、p型GaNコンタクト層28を成長させた後、MOCVD装置の炉内を全てN2ガスとNH3に入れ替え、サセプタ温度を60℃/分の割合で降温させる。サセプタ温度が800℃に達した時点で、NH3の供給を停止し、サセプタ温度を800℃で5分間、維持し、その後、室温まで降下させる。尚、本実施形態では、サセプタ温度を800℃で5分間維持するものとしたが、これに限定されるものではない。又、維持するサセプタ温度は650℃から900℃の間が好ましく、待機時間は、3分以上10分以下が好ましい。更に、降下する温度の割合は、30℃/分以上が好ましい。
上述のようにして作製された窒化物半導体成長膜11をラマン測定によって評価した結果、MOCVD装置からウエーハを取りだした後、p型化アニールが実施される前においても、既にMgが活性化してp型化の特性が示されていた。更に、p電極形成後のコンタクト抵抗も低減した。即ち、従来のp型化アニールを実施すれば、Mgの活性化率がより向上するものと考えられ、好ましい。
尚、多重井戸構造活性層24を形成する際、障壁層を成長させた後、井戸層の成長を開始するまで、もしくは、井戸層を成長させた後、障壁層の成長を開始するまでの間に、1秒以上180秒以内の時間、成膜が中断されると、障壁層又は井戸層の各層の平坦性が向上する。良好な平坦性が得られると、障壁層又は井戸層の各層のIn組成や層厚が均一になり、発光する波長のムラが抑制される。その結果、自然放出光の半値幅が減少し、好ましい。
又、多重井戸構造活性層24にAsを添加する場合はAsH3(アルシン)またはTBAs(ターシャリブチルアルシン)もしくはTMAs(トリメチルアルシン)を、Pを添加する場合はPH3(ホスフィン)またはTBP(ターシャリブチルホスフィン)もしくはTMP(トリメチルホスフィン)を、Sbを添加する場合はTMSb(トリメチルアンチモン)もしくはTESb(トリエチルアンチモン)とを、それぞれ供給しても構わない。また、多重井戸構造活性層24を形成する際、Nの原料として、NH3以外にジメチルヒドラジン等のヒドラジン原料、もしくはエチルアジドなどのアジド原料を用いても構わない。
又、本実施形態のように、複数層のInxGa1-xN量子井戸を用いて活性層を形成する場合や、該活性層にAs又はPを添加して量子井戸構造活性層を形成する場合に、量子井戸層中に貫通転位があると、Inが転位部分に偏析し、好ましくない。よって、上述したようにInxGa1-xNを用いた量子井戸層を活性層に用いる場合には、量子井戸層中の転位などの結晶欠陥を可能な限り少なくすることが、良好な窒化物半導体レーザ特性を得るには好ましい。
又、本実施形態における多重量子井戸構造活性層24は、障壁層で始まり障壁層で終わる構成であったが、井戸層で始まり井戸層で終わる構成であっても構わない。また、井戸層の層数は、上述した3層に限定されるものではなく、10層以下であれば、閾値電流密度が低く室温連続発振が可能であるので、構わない。特に、井戸層の層数は、2層以上6層以下のとき閾値電流密度が低く、好ましい。又、多重量子井戸構造活性層24にAlを含有させても構わない。
又、本実施形態における多重量子井戸構造活性層24は、井戸層と障壁層の両層に、不純物としてSiを添加するものとするが、不純物は添加しなくても構わない。又、添加する不純物はSiに限定されるものではなく、O、C、Ge、Zn、Mgなどでも構わない。又、この不純物の添加量の総和は、1×1017〜8×1018/cm3程度が好ましい。更に、不純物を添加する層は、井戸層と障壁層の両層に限らず、一方の層のみに添加しても構わない。
このように、上述した方法により形成されたn型GaN基板10の表面にn型GaN層21をはじめとする窒化物半導体成長層11を平坦性良く積層し、クラックのない窒化物半導体レーザ素子を形成する。このとき、溝18の深さZの値やn型GaN層21の設計層厚などに大きく影響を受ける這い上がり成長を利用する。以下に、この這い上がり成長について説明をする。
溝18と丘17が形成されたn型GaN基板10上に窒化物半導体成長層11を構成する窒化物半導体層の積層を行うと、丘の側面部17b(図1参照)から略〈11−20〉方向(以下、「横方向」とする)に成長した窒化物半導体層の層厚及び溝の底面部18a(図1参照)から略〈0001〉方向(以下、「縦方向」とする)に成長した窒化物半導体層の層厚よりも、溝18の端付近で成長した窒化物半導体層の層厚が厚くなる領域が生じる。その後、窒化物半導体層の成長を続けると、溝18の端付近で成長した窒化物半導体層の縦方向の成長速度が、他の領域よりも速く、溝18の端付近の領域での成長層が、丘の上面部17a(図1参照)から縦方向に成長した窒化物半導体層の厚さにまで達し、結果、溝18が埋め込まれ始める。
このように溝18の端付近の領域での窒化物半導体層が成長する様子が、溝18の底面から丘17の側面を這い上がるように見えることから、本明細書では、これを「這い上がり成長」とする。更に、這い上がり成長が起こる領域を、「這い上がり成長領域」、這い上がり成長した部分を「這い上がり成長部」とする。又、本明細書において「溝が埋め込まれる」とは、丘の上面部17a上に成長した窒化物半導体層表面と溝の底面部18a上に成長した窒化物半導体層表面の高さが、ほぼ同等になることを指す。
このような這い上がり成長を含め、n型GaN基板10上に窒化物半導体層を成長させたときの膜成長の状態遷移について、図面を参照して、以下に説明する。図4は、溝18と丘17が形成されたn型GaN基板10上に、それぞれ、層厚の異なるn型GaN層21を成長させたときのウエーハの一部の断面形状図である。
図4のn型GaN基板10は、〈1−100〉方向と平行な方向に、丘17の幅Lを300μmとし、溝18の幅Mを100μm及び深さZを5μmとして、形成されたものである。図4(a)は、当該n型GaN基板10上に、層厚0.2μmを設計層厚として、n型GaN層21を成長させたときのウエーハの一部の断面形状図である。丘の上面部17a及び丘の側面部17bと、溝の底面部18aに、n型GaN層21がそれぞれ、上面成長部31a、側面成長部31b、底面成長部31cとして成長する。ここで、上面成長部31aと側面成長部31bに挟まれた領域を、成長部31dとする。
上面成長部31a及び、底面成長部31cの溝の中心部32においては、略0.2μmのn型GaN層21が成長する。また、成長部31d付近の側面成長部31bでは、溝18の中心に向かって成長したn型GaN層21の層厚が略0.3μmである。また、溝の底面部18aに近い側面成長部31bでは、丘の側面部17bから成長したn型GaN層21の盛り上がりが見られ、盛り上がり部34が形成されている。又、盛り上がり部34が形成される這い上がり領域33において、這い上がり成長は初期段階であり、溝の底面部18aから縦方向に成長した底面成長部31cと、丘の側面部17bの盛り上がり部34とは結合していない。
図4(b)は、n型GaN基板10上に、層厚2μmを設計層厚としてn型GaN層21を成長させたときのウエーハの一部の断面形状図である。図4(a)に示された溝の底面部18aに近い側面成長部31bに形成された盛り上がり部34は、溝の底面部18aから縦方向に成長した底面成長部31cと結合し、結果、這い上がり成長が起こり、這い上がり成長部31eが形成されている。しかし、這い上がり成長領域33に形成された這い上がり成長部31eは、縦方向の層厚が、丘の上面部17a上に成長した上面成長部31aの厚さまでは到達しておらず、傾斜形状となっている。又、這い上がり成長領域33は溝18の中心方向に向かって広がっているが、溝の中心部32において、十分に広い平坦な領域が得られている。
上述したように、溝の底面部18aから縦方向に成長する底面成長部31cと、丘の側面部17bから横方向に成長する側面成長部31bが溝18の端部で結合し、その結果、這い上がり成長が促進される。さらに這い上がり成長が進行すると、這い上がり成長領域33で形成された這い上がり成長部31eにおいて成長したn型GaN層21が、丘の上面部17a上で成長したn型GaN層21から成る上面成長部31aの表面の高さにまで達する。引き続き、成長行うと、溝18において、まだ埋め込まれていない領域で、溝の低面部18aから縦方向の膜成長と這い上がり成長部31eからの横方向の膜成長双方の影響受け、さらに溝18の埋め込みが進行する。
図4(c)に、n型GaN基板10上に、層厚5μmを設計層厚としてn型GaN層21を成長させたときのウエーハの一部の断面形状図を示す。このとき、図4(c)に示すn型GaN層21が這い上がり成長を起こし、這い上がり成長部31eの横方向の層厚が厚くなる。そのため、這い上がり成長領域33が広くなり、結果的に、溝の中心部32の略20μmを残して溝18は埋め込まれる。よって、溝の中心部32で平坦な領域は得ることはできない。又、上面成長部31aの表面においても平坦性が低下している。これは這い上がり成長領域33が広くなったことにより、n型GaN層21内の歪を十分に緩和できなくなったためである。上面成長部31a上に、引き続き、窒化物半導体成長層11を積層させ窒化物半導体レーザ素子を作製すると、クラックが発生する可能性が高く、良好な平坦性も得ることは出来ず、信頼性の高い窒化物半導体レーザ素子を作製することができない。
即ち、上述したように、這い上がり成長は、n型GaN基板10上に成長させるn型GaN層21の層厚と関係する。這い上がり成長はGaNを成長させるときに最も顕著に表れ、n型GaN層21の層厚が厚すぎると這い上がり成長が進行し、平坦性が低下するため、層厚は2μmを超えることは好ましくない。また、n型GaN層21を成長させずに、直接、n型基板上にn型Al0.1Ga0.9Nクラッド層22を成長させ、窒化物半導体レーザ素子を作製した場合、n型GaN基板10の影響を窒化物半導体成長層11が受け、結晶性が悪化する。このため、n型GaN層21は、少なくとも層厚0.1μm以上成長させた方が好ましい。よって、n型GaN層21は、0.1μm以上2μm以下が好ましい。更に、溝の底面部18aからn型GaN層21が縦方向に成長した底面成長部31cと、丘の側面部17bからn型GaN層21が横方向に成長した側面成長部31bとが、結合するまでに、n型GaN層21の成長が完了することが、より好ましい。又、這い上がり成長は、AlGaNやInGaNでは生じにくいことが分かっている。
又、溝18の幅が十分に広くないと、這い上がり成長によって溝18は埋め込まれてしまい、溝の中心部32に平坦な領域を得ることができない。このため、溝18の幅は50μm以上であることが、好ましい。又、溝18の幅が広いと、溝18全体が埋め込まれにくくなるが、窒化物半導体成長層11に生じる歪みを十分に緩和することができず、結果、クラックが発生しやすくなる。また、平坦性も悪化するため、溝18の幅は1200μm以下であることが、好ましい。
次に、このような方法でn型GaN基板10上に、n型GaN層21を始めとして積層された窒化物半導体成長層11の表面には、丘17の端付近に、幅20〜30μmで高さ0.3μm程度の膜の盛り上がりであるエッジグロース19(図1参照)が発生することが判明している。当該エッジグロース19は、窒化物半導体成長層11のうちn型層を成長させるときには殆ど発生せず、p型層を成長させるときに顕著に生じる。
このようなエッジグロース19は、図4(c)のように這い上がり成長が促進され溝18の埋め込みが進行したウエーハでは、殆ど発生しない。エッジグロース19が発生しない状態では、丘17および溝18表面に積層された窒化物半導体成長層11の上面の平坦性は、著しく悪化する傾向にある。一方、エッジグロース19が生じた状態では、エッジグロース19が生じた領域を除いて、丘17表面に積層された窒化物半導体成長層11の上面の平坦性は良好である。この丘17表面の平坦な領域は、少なくともリッジストライプ部が形成できる幅が必要であり、このため、丘17の端からエッジグロース19が発生する領域の幅20〜30μmの部分を避けてリッジストライプ部を形成するために、丘17の幅Lは、70μm以上であるのが好ましい。逆に丘17の幅Lが広くなるとクラックが発生しやすくなるため、幅は1200μm以下であることが望ましい。
上述したような本実施形態による方法を用いると、溝18と丘17が形成されたn型GaN基板10上に図3で示したような窒化物半導体成長層11を積層させ、ウエーハ全体でクラックの発生が無く、更に、丘17部で幅400μm、溝18部で幅400μmの平坦な領域を得ることが出来た。このようにして得られた平坦な領域に図1に示された窒化物半導体レーザ素子を作製する。
図1の窒化物半導体レーザ素子は、上述したようにして溝18と丘17が形成されたn型GaN基板10上に図3で示したような窒化物半導体成長層11を積層させている。又、窒化物半導体成長層11の表面にはレーザ光導波路であるリッジストライプ部12と、リッジストライプ部12を挟むように設置されて、電流狭窄を目的とした絶縁膜としてSiO2層13とが形成される。そして、このリッジストライプ部12及びSiO2層13のそれぞれの表面には、p電極14が形成され、又、n型GaN基板10の裏面にはn電極15が形成されている。
リッジストライプ部12の作製される位置は、丘17および溝18の表面で平坦な領域であれば、特に限定されず、平坦な領域の端から5μm以上離れた位置であれば、より好ましい。本実施形態では、丘17および溝18の表面で積層された窒化物半導体成長層11上面に、丘の側面部17bより、それぞれ250μm離れた平坦な領域の中央付近にリッジストライプ部12を作製する。
リッジストライプ部12の作製方法を、以下に説明する。通常のフォトリソグラフィ技術とドライエッチング技術を用いて、窒化物半導体成長層11の最表面(p型GaNコンタクト層28)よりp型Al0.1Ga0.9Nクラッド層27の途中まで、ストライプ形状を残してエッチングを実施することで、リッジストライプ部12が形成される。尚、ストライプ幅は1〜3μm、好ましくは1.3〜2μmである。又、p型GaN光ガイド層26とp型Al0.1Ga0.9Nクラッド層27の界面からエッチング底面までの距離は、0.1〜0.4μmとする。
引き続き、リッジストライプ部12以外の部分に、電流狭窄を目的とした絶縁膜としてSiO2層13を形成する。この際、エッチングされずに残ったストライプ形状のp型GaNコンタクト層28は露出しており、この露出した部分及びSiO2層13上にPd/Mo/Auの順序で蒸着し、p電極14を形成する。
尚、本実施形態では、上述のように絶縁膜としてSiO2を用いているが、これに限定されるものではなく、珪素、チタン、ジルコニア、タンタル、アルミニウム等の酸化物又は窒化物でも構わない。又、p電極14の材料として、Pd/Mo/Auを用いているが、これに限定されるものではなく、Pd/Pt/Au、Pd/Au、又はNi/Au等を用いても構わない。
次に、n型GaN基板10の裏面側から、研磨もしくはエッチングすることによりn型GaN基板10の一部を除去し、ウエーハの厚みを80〜200μm程度までに薄くする。その後、n電極15としてn型GaN基板10の裏面側に、n型GaN基板10に近い側から、Hf/Alを形成する。尚、n電極15に用いる材料は、これに限定されるものではなく、Hf/Al/Mo/Au、Hf/Al/Pt/Au、Hf/Al/W/Au、Hf/Au、Hf/Mo/Au、などを用いても構わない。又、これらの材料で、HfをTi、又はZrに置き換えた電極材料を用いても構わない。また、n電極15は図1のように、個々の窒化物半導体レーザ素子に対して、分割して形成されても構わないし、分割せず、n電極15の層が連続して形成されても構わない(図7参照)。
このようにしてリッジストライプ部12及びp電極14及びn電極15が形成され、窒化物半導体成長層11が積層されたウエーハを、リッジストライプ部12が形成された〈1−100〉方向(図1参照)に対して垂直方向に劈開し、共振器端面を形成し、共振器長400μmの導波型ファブリ・ペロー共振器を作製する。尚、共振器長は、400μmに限定されるものではなく、300μmから1000μmの範囲であれば、どの値でも構わない。
上述のように、ウエーハを劈開し共振器端面を形成する工程によって、バー形状にする。バーには、図1に示されるような窒化物半導体レーザ構造が、多数、横に連なって形成されている。形成された共振器端面は、窒化物半導体結晶の{1−100}面に相当する。劈開は、ウエーハの裏面全面にダイヤモンドカッタによって罫書き線がつけられ、ウエーハに適宜力を加えられ、実施される。又、ウエーハの一部、例えば、ウエーハのエッジ部分にのみにダイヤモンドカッタによって罫書きがいれられ、これを起点に劈開しても構わない。また、共振器端面の形成はエッチングによって形成しても構わない。
このように、導波型ファブリ・ペロー共振器の前後に二つの共振器端面を形成した後、当該共振器端面の両面に、反射率70%のSiO2及びTiO2から成る誘電体膜を交互に蒸着し、誘電体多層反射膜を形成する。なお、形成された二つの共振器端面のうち、一つはレーザ出射面とし、例えば、当該共振器端面に形成される誘電体多層反射膜の反射率を5%としても構わない。又、他方の共振器端面はレーザ反射面とし、例えば、当該共振器端面に形成される誘電体多層反射膜の反射率を95%としても構わない。尚、反射率については、これに限定されるものではない。又、誘電体膜材料としては、SiO2/TiO2に限定されるものではなく、例えば、SiO2/Al2O3などを用いても構わない。次に、窒化物半導体レーザ素子が、多数、横に連なって形成されているバーを、リッジストライプ部12に平行な方向に沿って分割することで、個々の窒化物半導体レーザ素子(チップ)を得る。
このとき、ウエーハの裏面側を上にして、ステージ上に得られたバーを置き、光学顕微鏡を用いて、キズ入れ位置をアライメントし、バーの裏面にダイヤモンドカッタで罫書き線を入れる。そして、バーに適宜力を加え、罫書き線に沿ってバーを分割することで、窒化物半導体素子(チップ)を作製する。本方法はスクライビング法と言われるものである。
チップ分割工程は、スクライビング法による以外の方法で、バーの裏面側からキズ、溝等をいれてチップに分割する方法で構わない。このチップ分割工程での他の手法として、例えば、ワイヤーソーもしくは薄板ブレードを用いてキズ入れ、もしくは切断を行うダイシング法、エキシマレーザ等のレーザ光の照射加熱とその後の急冷により照射部に生じさせたクラックをスクライブラインとするレーザスクライブ法、高エネルギー密度のレーザ光を照射し、蒸発させることで溝入れ加工を行うレーザアブレーション法等を用いても構わない。
上述したチップ分割工程により、図1に示されるような丘17の平坦な領域上および溝18の平坦な領域上に形成された窒化物半導体レーザ素子が個々のチップに分割される。分割された個々の窒化物半導体レーザ素子の横幅を400μmとする。本実施形態では、n型GaN基板10に、500μm周期で丘17と溝18が形成されており、図5のように、丘の側面部17bより、丘17と溝18の中心部の向かって、それぞれ50μm離れた位置で、分割ライン51に沿って劈開が行われ、窒化物半導体レーザ素子に分割される。尚、本実施形態では、丘17と溝18との間の段差を含まないように分割を行われているが、図6のように、丘17部に形成された窒化物半導体レーザ素子または溝18部に形成された窒化物半導体レーザ素子が、当該段差を含むように、分割ライン61に沿って分割しても構わない。尚、分割ラインの位置は、これらに限定されるものではないが、リッジストライプ部12から少なくとも20μm以上離れた位置であることが、好ましい。
上述のような方法で作製された本実施形態の窒化物半導体レーザ素子は、殆どの素子で、窒化物半導体成長層11中の面積1cm2当たりの中にクラックは0本であった。従来技術による窒化物半導体レーザ素子では、窒化物半導体成長層11中の面積1cm2当たりの中に3〜6本のクラックが入っている。このように、本実施形態による方法で、クラックの発生が抑制されている。また、良好な平坦性も得られウエーハ全体の均一化が図れるため、歩留りを向上させることが出来た。
即ち、従来技術による窒化物半導体レーザ素子では、窒化物半導体成長層11の中に含まれるAlGaNクラッド層とGaN層等、異なる膜の格子定数や熱膨張係数の違いから生じる歪により、クラックが引き起こされるのに対し、本実施形態の窒化物半導体レーザ素子では、n型GaN基板10に形成された溝18が埋め込まれないように窒化物半導体成長層11を積層させるため、窒化物半導体成長層11に内在する歪みが分散され、クラックが抑制される。また、良好な平坦性が得られるのは、窒化物半導体成長層11中の歪みのムラが低減するためである。
尚、本実施形態の窒化物半導体レーザは、ファブリ・ペロー共振器を備えるものとしたが、この方式に限定されるものではなく、グレーティングを電流注入領域の内側に設けた分布帰還型(Distributed Feedback:DFB)レーザ、又はグレーティングを電流注入領域の外側に設けた分布ブラッグ反射型(Distributed Bragg Reflector:DBR)レーザ等、他の帰還方式を用いた窒化物半導体レーザでも構わない。
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について図面を参照して説明する。図7は本実施形態における窒化物半導体レーザ素子が設けられたウエーハの一部の概略断面図である。本実施形態において、n型GaN基板10上に積層される窒化物半導体成長層11は、その構成はn型GaN層21の層厚の値以外は図3のような構成となるので、同一の符号を付し、その詳細な説明は第1の実施形態を参照するものとして、省略する。また、図7には示されていないが、本実施形態のn型GaN基板10のオフ角は、主面方位のC面(0001)に対して0.2°とする。
n型GaN基板10は、n型GaN基板上に、溝18と丘17が〈1−100〉方向と平行な方向に、丘17の幅Lを50μm、溝18の幅Mを300μm、深さZを20μmとして形成されている。溝18と丘17の形成方法などは、第1の実施形態と同様なので、その詳細な説明は、省略する。尚、丘17と溝18の断面形状は矩形であっても構わないし、溝18の開口部の幅が底面部の幅より広い順テーパ形状や、逆に、溝18の開口部の幅が底面部より狭い逆テーパ形状などであっても構わない。
このような溝18のと丘17の形成されたn型GaN基板10の上に、図3のような窒化物半導体成長層11を積層させる。但し、本実施形態では、n型GaN層21の層厚を2μmとする。このように窒化物半導体成長層11が積層されたウエーハの上面は、丘17の平坦な領域の幅が狭く、エッジグロース19(図示せず)による盛り上がりが顕著となり、良好な平坦性は得られなかった。また溝18においては、丘の側面部17bより溝18の中心部に向かって、略30μm幅の這い上がり成長領域33(図示せず)が現れ、溝18部において、略240μm幅の平坦な領域が得られた。
次に、上述の方法で得られたウエーハに、窒化物半導体レーザ素子を形成する。本実施形態では、丘の幅が狭く、平坦な領域が十分に得られていないため、溝18部の平坦な領域にリッジストライプ部12及びSiO2層13上にp電極14を形成する。作製方法などは第1の実施形態と同様であるので、その詳細な説明は省略する。尚、本実施形態では、形成されたSiO2層13上及びp電極14は、窒化物半導体レーザ素子ごとに分割されていないが、通常のフォトリソグラフィ技術やドライエッチング技術などを用い、第1の実施形態と同様に、窒化物半導体レーザ素子ごとにSiO2層13およびp電極14が分割、形成されるものとしても構わない。
リッジストライプ部12の作製される位置は、丘17および溝18の表面で平坦な領域であれば、特に限定されず、平坦な領域の端から5μm以上離れた位置であれば、より好ましい。本実施形態では、丘17および溝18の表面で積層された窒化物半導体成長層11上面に、丘の側面部17bより150μm離れた平坦な領域の中央付近にリッジストライプ部12を作製する。
次に、n型GaN基板10の裏面側から、研磨もしくはエッチングすることによりn型GaN基板10の一部を除去し、ウエーハの厚みを80〜200μm程度までに薄くする。その後、n型GaN基板10の裏面にn電極15を形成する。n型GaN基板10の裏面の除去及びn電極15の作製方法などは、第1の実施形態と同様なので、その詳細な説明は省略する。尚、本実施形態では、形成されたn電極15は窒化物半導体レーザ素子ごとに分割されていないが、通常のフォトリソグラフィ技術やドライエッチング技術などを用い、第1の実施形態と同様に、窒化物半導体レーザ素子ごとにn電極15が分割、形成されるものとしても構わない。
このようにしてリッジストライプ部12及びp電極14及びn電極15が形成され、窒化物半導体成長層11が積層されたウエーハを、リッジストライプ部12が形成された〈1−100〉方向(図7参照)に対して垂直方向に劈開し、共振器端面を形成する。本実施形態では共振器長600μmの導波型ファブリ・ペロー共振器を作製する。尚、共振器長は、600μmに限定されるものではなく、300μmから1000μmの範囲であれば、どの値でも構わない。尚、共振器端面の形成方法などは、第1の実施形態と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
このように、導波型ファブリ・ペロー共振器の前後に二つの共振器端面を形成した後、当該共振器端面の両面に、反射率70%のSiO2及びTiO2から成る誘電体膜を交互に蒸着し、誘電体多層反射膜を形成する。なお、形成された二つの共振器端面のうち、一つはレーザ出射面とし、例えば、当該共振器端面に形成される誘電体多層反射膜の反射率を5%としても構わない。又、他方の共振器端面はレーザ反射面とし、例えば、当該共振器端面に形成される誘電体多層反射膜の反射率を95%としても構わない。尚、反射率については、これに限定されるものではない。又、誘電体膜材料としては、SiO2/TiO2に限定されるものではなく、例えば、SiO2/Al2O3などを用いても構わない。次に、窒化物半導体レーザ構造が、多数、横に連なって形成されているバーを、リッジストライプ部12に平行な方向に沿って分割することで、個々の窒化物半導体レーザ素子(チップ)を得る。チップ分割方法などについては、第1の実施形態と同様なので、その詳細な説明は省略する。
チップ分割工程により、図7に示されるような溝18の平坦な領域上に形成された窒化物半導体レーザ素子が個々のチップに分割される。分割された個々の窒化物半導体レーザ素子の横幅を350μmとする。本実施形態では、n型GaN基板10に、350μm周期で丘17と溝18が形成されているが、図7のように、丘の側面部17bより、溝18の中心部に向かって40μm離れた位置において、分割ライン71に沿って劈開が行われ、個々の窒化物半導体レーザ素子に分割される。尚、分割ライン71の位置は、これに限定されるものではないが、リッジストライプ部12から少なくとも20μm以上離れた位置であることが、好ましい。
上述のような方法で作製された本実施形態の窒化物半導体レーザ素子は、殆どの素子で、窒化物半導体成長層11中の面積1cm2当たりの中にクラックは0本であった。従来技術による窒化物半導体レーザ素子では、窒化物半導体成長層11中の面積1cm2当たりの中に3〜6本のクラックが入っている。このように、本実施形態による方法で、クラックの発生が抑制されている。また、良好な平坦性も得られウエーハ全体の均一化が図れるため、歩留りを向上させることが出来た。
尚、本実施形態の窒化物半導体レーザは、ファブリ・ペロー共振器を備えるものとしたが、この方式に限定されるものではなく、グレーティングを電流注入領域の内側に設けた分布帰還型(Distributed Feedback:DFB)レーザ、又はグレーティングを電流注入領域の外側に設けた分布ブラッグ反射型(Distributed Bragg Reflector:DBR)レーザ等、他の帰還方式を用いた窒化物半導体レーザでも構わない。
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態について図面を参照して説明する。図8は本実施形態における窒化物半導体レーザ素子が設けられたウエーハの一部の概略断面図である。n型GaN基板10上に積層される窒化物半導体成長層11は、その構成はn型GaN層21の層厚の値以外は図3のような構成となるので、同一の符号を付し、その詳細な説明は第1の実施形態を参照するものとして、省略する。また、図8には示されていないが、本実施形態のn型GaN基板10のオフ角は、主面方位のC面(0001)に対して0°(ジャスト)であるとする。
本実施形態では、n型GaN基板10は、n型GaN基板上に、溝18と丘17が〈1−100〉方向と平行な方向に、丘17の幅Lを1200μm、溝18の開口部の幅Mを50μm、深さZを10μmとして形成されている。溝18の断面形状は、溝18の底面部18aの幅の値Nが溝の開口部の幅の値Mより大きい、逆テーパ形状とする。
まず、第1の実施形態と同様に、通常のフォトリソグラフィ技術とドライエッチング技術を用いて、SiO2及びn型GaN基板10の一部を除去し、第1の実施形態と同様な断面形状が矩形の溝18が形成される。この後、引き続きウエットエッチングを行うと、図8に示されているように、断面形状が、底面部18aの幅の値Nが溝の開口部の幅の値Mより大きい逆テーパ形状をした溝18が形成される。
このウエットエッチングに用いる溶液として、KOH(水酸化カリウム)もしくは、NaOH(水酸化ナトリウム)とKOHとの混合液を用いる。これらの溶液を80℃〜250℃に加熱することで、等方的なエッチングが可能となり、逆テーパ形状をした溝18が形成される。
このような溝18の断面形状が逆テーパ形状であるn型GaN基板10の上に、図3のような窒化物半導体成長層11を積層させる。尚、本実施形態では、n型GaN層21の層厚を0.1μmとする。
本実施形態では、溝18の開口部の幅Mが50μmと、溝18の底面部の幅Nより小さく、溝18の断面形状が逆テーパ形状となっている。このため、這い上がり成長が抑制され、溝18が埋め込まれることがなく、窒化物半導体成長層11を積層した後、溝18部の中央付近には略10μm幅の平坦な領域が、丘17部では1140μm〜1150μm幅の平坦な領域が、それぞれ得られた。この溝18部の平坦な領域のほぼ中央部と丘17部の平坦な領域の中央部の双方に、リッジストライプ部12、SiO2層13及びp電極14を作製する。作製方法などは第1の実施形態と同様なので、同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。尚、本実施形態では、形成されたSiO2層13上及びp電極14は、窒化物半導体レーザ素子ごとに分割されていないが、通常のフォトリソグラフィ技術やドライエッチング技術などを用い、第1の実施形態と同様に、窒化物半導体レーザ素子ごとにSiO2層13およびp電極14が分割、形成されるものとしても構わない。
尚、リッジストライプ部12の作製される位置は、丘17および溝18の表面で平坦な領域であれば、特に限定されず、平坦な領域の端から5μm以上離れた位置であれば、より好ましい。
次に、n型GaN基板10の裏面側から、研磨もしくはエッチングすることによりn型GaN基板10の一部を除去し、ウエーハの厚みを80〜200μm程度までに薄くする。その後、n型GaN基板10の裏面にn電極15を形成する。n型GaN基板10の裏面の除去及びn電極15の作製方法などは、第1の実施形態と同様なので、その詳細な説明は省略する。尚、本実施形態では、形成されたn電極15は窒化物半導体レーザ素子ごとに分割されていないが、通常のフォトリソグラフィ技術やドライエッチング技術などを用い、第1の実施形態と同様に、窒化物半導体レーザ素子ごとにn電極15が分割、形成されるものとしても構わない。
このようにしてリッジストライプ部12及びp電極14及びn電極15が形成され、窒化物半導体成長層11が積層されたウエーハを、リッジストライプ部12が形成された〈1−100〉方向に対して垂直方向に劈開し、共振器端面を形成する。本実施形態では共振器長400μmの導波型ファブリ・ペロー共振器を作製する。尚、共振器長は、400μmに限定されるものではなく、300μmから1000μmの範囲であれば、どの値でも構わない。尚、共振器端面の形成方法などは、第1の実施形態と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
このように、導波型ファブリ・ペロー共振器の前後に二つの共振器端面を形成した後、当該共振器端面の両面に、反射率70%のSiO2及びTiO2から成る誘電体膜を交互に蒸着し、誘電体多層反射膜を形成する。なお、形成された二つの共振器端面のうち、一つはレーザ出射面とし、例えば、当該共振器端面に形成される誘電体多層反射膜の反射率を5%としても構わない。又、他方の共振器端面はレーザ反射面とし、例えば、当該共振器端面に形成される誘電体多層反射膜の反射率を95%としても構わない。尚、反射率については、これに限定されるものではない。又、誘電体膜材料としては、SiO2/TiO2に限定されるものではなく、例えば、SiO2/Al2O3などを用いても構わない。次に、窒化物半導体レーザ構造が、多数、横に連なって形成されているバーを、リッジストライプ部12に平行な方向に沿って分割することで、個々の窒化物半導体レーザ素子(チップ)を得る。チップ分割方法などについては、第1の実施形態と同様なので、その詳細な説明は省略する。
チップ分割工程により、図8に示されるような丘17の平坦な領域及び溝18の平坦な領域上に形成された窒化物半導体レーザ素子が個々のチップに分割される。本実施形態では、溝18の開口部の幅Mが50μmと狭いため、例えば、分割ライン81に沿って、丘17部で劈開を行う。この場合、第2の実施形態と同様に、リッジストライプ部12より少なくとも20μm以上離れた位置で劈開することが好ましい。
上述のような方法で作製された本実施形態の窒化物半導体レーザ素子は、殆どの素子で、窒化物半導体成長層11中の面積1cm2当たりの中にクラックは0本であった。従来技術による窒化物半導体レーザ素子では、窒化物半導体成長層11中の面積1cm2当たりの中に3〜6本のクラックが入っている。このように、本実施形態による方法で、クラックの発生が抑制されている。また、良好な平坦性も得られウエーハ全体の均一化が図れるため、歩留りを向上させることが出来た。
尚、本実施形態の窒化物半導体レーザは、ファブリ・ペロー共振器を備えるものとしたが、この方式に限定されるものではなく、グレーティングを電流注入領域の内側に設けた分布帰還型(Distributed Feedback:DFB)レーザ、又はグレーティングを電流注入領域の外側に設けた分布ブラッグ反射型(Distributed Bragg Reflector:DBR)レーザ等、他の帰還方式を用いた窒化物半導体レーザでも構わない。