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JP4299604B2 - 線引き装置 - Google Patents
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JP4299604B2 - 線引き装置 - Google Patents

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Description

本発明は、特に、ソリッドワイヤや、フラックス入り (フラックスコアード) 溶接用ワイヤなどの伸線性に優れた線引き装置に関するものである。
全自動若しくは半自動溶接用のアーク溶接用ワイヤは、ソリッド(中実)ワイヤと、管状の外皮鋼帯(以下フープあるいは鋼フープとも言う)内にフラックスを充填したフラックスコアードワイヤ(以下単にワイヤ、あるいはFCW とも言う)がある。この内、FCW には、フープに合わせ目(以下シームとも言う)を有するタイプと、この合わせ目のないシームレスタイプのものがある。
これらのワイヤは、基本的には、素材となる鋼棒や鋼線材、あるいは鋼帯や鋼管を、孔ダイス群(列)やローラダイス群(列)などの線引き装置により順次伸線して、細径の溶接用ワイヤとして製造される。
この内、ローラダイス線引き装置 (以下、単に線引き装置あるいはローラダイスとも言う) は、一般的には、線引き型孔を構成すべく対向する一対のローラと、これらの各ローラを各々回転自在に軸支するベアリングなどの軸受と、この軸受ベアリングを各々保持するベアリングボックスと、これらのベアリングボックスを支持する一体型の枠体とから構成される (例えば特許文献1、2、3、4、5、6参照) 。これらローラダイスのローラは、ローラの位置調節用ボルトで支持されている (例えば特許文献4参照) 。また、ローラダイス線引き装置の加工発熱対策として、銅板などを枠体に設けて、枠体を冷却し、これによって、ローラやベアリングなどを冷却することも公知である (特許文献4、5、6参照) 。なお、フープをステンレス鋼としたステンレス鋼溶接用FCW の製造方法では、孔ダイスの代わりに、ローラダイスを用い、中間焼鈍を行いながら伸線を行なうことも知られている (例えば特許文献7参照) 。
特公昭58-17686号公報 (第2 頁、図3) 特開昭58-199618 号公報 (第2 -3頁、図2) 特公平3-49644 号公報 (第2 頁、図2) 特開平10-225713 号公報 (第3 頁、図1) 特開平11-290935 号公報 (第3 頁、図4 、5) 特開平11-290936 号公報 (第3-4 頁、図2) 特開平11-285892 号公報 (第3 頁、図1)
これらローラダイスは、上記構成の通り、対向する一対のローラダイスによって形成された型孔にワイヤを挟んで線引きする装置である。このため、ローラダイスは、その構造上、孔ダイスよりも高速の伸線に適する。この理由は、小さい型孔を持つ孔ダイスを用いた伸線に比して、ダイス面における潤滑層に負荷される剪断力が比較的小さく、潤滑被膜切れの問題が発生しにくいためである。また、伸線の潤滑を水素増加の問題がない非水素系の無機乾式潤滑剤によって行なう場合にも、小さい型孔を持つ孔ダイスのような、この潤滑剤の固化、目詰まりの問題が発生しないためである。
しかし、このようなローラダイスにおいて、製品溶接用ワイヤの溶接対象鋼に応じたワイヤ素材として、通常の軟鋼の他に、ハイテン、合金鋼、ステンレス鋼などのより高強度の溶接用ワイヤを伸線する場合には、その構造上、伸線の高速度化や高精度化( 高形状精度化) には、大きな限界があった。
これらハイテン、合金鋼、ステンレス鋼などのより高強度の溶接用ワイヤは、伸線において、軟鋼溶接用ワイヤに比して、より大きな加工力を必要とし、ダイスに対して大きな負荷がかかる。このために、ダイスの振動や、これによりワイヤが振動してダイスと接触することにより生じる打痕傷が生じやすい。このため、伸線速度を上げることができず、伸線効率や溶接用ワイヤの生産性が、軟鋼溶接用ワイヤに比して、著しく低い。
したがって、前記従来のローラダイスによる、高強度の溶接用ワイヤの伸線においては、高速度化すれば、高精度化( 高形状精度化) が犠牲になり、高精度化すれば、高速度化が犠牲になる、という具合に、両者を両立させることが困難であった。
本発明者らの知見によれば、このような前記従来のローラダイスによる、高強度の溶接用ワイヤを伸線する場合の、伸線の高速度化や高精度化の大きな限界は、ローラダイスを支持する一体型の枠体の剛性不足からくる構造上の問題である。前記従来のローラダイスあるいは線引き装置の提案は、装置構成あるいは部材構造の提案に終始しており、このローラダイスを支持する一体型の枠体の剛性自体について明確に開示したものは無い。
即ち、前記従来のローラダイスにおいては、ローラダイスを支持する枠体の、伸線の高速度化や高精度化のための必要剛性についての具体的な開示は一切無い。勿論、前記従来のローラダイスにおいても、実際の伸線のためには、ローラダイスを支持する枠体の一定の高剛性が必要であるとは当然認識されている。また、前記従来のローラダイスの支持構造や、一体型の枠体の構造の提案は、当然枠体の剛性を間接的に高めている。
しかし、一方で、このローラダイスを支持する枠体の剛性についての認識は、現実の伸線におけるローラダイスの使われ方 (使用態様) によって制約させられざるを得ない。即ち、従来では、溶接用ワイヤのローラダイスによる伸線では、ワイヤ形状が溶接用ワイヤに必要な真円ではなく、楕円形状となるため、伸線された溶接用ワイヤの形状精度に問題があると認識されていた。この結果、溶接用ワイヤの伸線工程においてはローラダイスを部分的にしか、あるいは加工率が小さい部分にしか使用していなかった。言い換えると、上記伸線初期の加工率が大きい工程 (一次伸線) 部分や、伸線速度が速い伸線工程 (例えば伸線最終工程) では、孔ダイスを使わざるを得ないというのが従来の認識であった。
したがって、前記ローラダイスを支持する枠体の剛性についての認識も、この加工率が小さい部分での使用に耐えるだけ程度の枠体の剛性が必要として、限定、あるいは制約されていたものである。
これは、前記従来のフープをステンレス鋼としたステンレス鋼溶接用FCW の製造方法で、ローラダイスを用いて伸線を行なう方法でも同様である。この上記ステンレス鋼フープのFCW のローラダイスによる伸線方法では、伸線の前半と後半で加工率の配分を行い、FCW の伸線を行なおうとしている。しかし、ローラダイスを支持する枠体の剛性についての具体的な開示は一切無い。これは、前記ローラダイスを支持する枠体の剛性についての認識が、やはり限定、あるいは制約されていたからである。このため、上記ステンレス鋼フープのローラダイスによる伸線方法では、0.8mm φの細径の伸線ワイヤを得るための可能な最高伸線速度は300m/min. 程度でしかない。
言い換えると、これらローラダイスを用いて溶接用ワイヤを伸線する従来技術は、敢えて、ローラダイスを支持する枠体の剛性をより高剛性化して用いるという積極性はない。むしろ、支持する枠体の剛性が一定程度ある、既存のローラダイスを、その持てる剛性の使用可能な範囲内で用いるという消極性しかないものであった。したがって、その伸線速度や形状精度にも、自ずと限界を有していたものである。
本発明は、この様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、特に高強度の溶接用ワイヤの伸線において、高速度化と高精度化 (高形状精度化) とを両立させた線引き装置を提供しようとするものである。
この目的を達成するために、本発明線引き装置の要旨は、ローラダイスによって線材を線引きする装置であって、ローラダイスを構成する一対のローラを各々回転自在に軸支するベアリングと、このベアリングを保持するベアリングボックスと、このベアリングボックスを支持する一体型の枠体とを有し、前記各ベアリングボックスが各々ベアリングボックス固定用梁を介して前記枠体に固定されており、この一体型の枠体に対しローラダイスの線引き荷重方向に10000Nの引張荷重を付加して拡張した際の、枠体の伸び量が20〜150 μm の範囲の高剛性を枠体が有することである。
本発明では、ローラダイスを用いて、素線から略製品径( 製品径か製品径に近いワイヤ径) までの溶接用ワイヤを伸線する線引き装置において、このローラダイスを支持する枠体の剛性をより高剛性化することを大きな特徴とする。そして、更に、特に高強度の溶接用ワイヤの伸線において、高速度化と高精度化 (高形状精度化) とを両立させるために必要な前記枠体の剛性を、謂わば上記枠体の引張試験によって、上記定量化した点が特徴的である。
本発明者らは、ローラダイスを支持する枠体における剛性の、上記定量化に際し、500MPa級以上の高強度鋼 (ハイテン) のソリッド(中実)溶接用ワイヤの伸線によって、高速度化と高精度化 (高形状精度化) とを両立させるために必要な前記枠体の剛性を求めた。この求められた前記枠体の剛性値は、その臨界的な意義を含めて、後述する実施例の通り、他のハイテン、合金鋼、ステンレス鋼などのより高強度の溶接用ワイヤの伸線や、より強度の低い軟鋼溶接用ワイヤの高速伸線に適用できる。また、ソリッドワイヤだけでなく、フラックスコアードワイヤ(FCW )の高速伸線にも適用できる。そして、本発明線引き装置は、溶接用ワイヤの素線から略製品径 (製品ワイヤ径か製品ワイヤ径に近いワイヤ径) までの伸線を全てローラダイスにて行なう、例えば伸線速度が600m/ 分以上の高速伸線工程に適用できる。
先ず、ローラダイスを支持する枠体における剛性について以下に説明する。 ローラダイスを支持する前記一体型の枠体は、伸線時のローラダイスの剛性を確保する重要な役割を果たす。この一体型の枠体の剛性が低い場合、一体型の枠体は容易に変形し、変形量が大きくなる。このため、ローラダイスの固定強度も低く、変形しやすくなり、ローラ自身が伸線の際の回転時に振動しやすくなる。これにより、伸線の際の溶接用ワイヤの振動が励起され、ローラの型孔と断続的に接触し、溶接用ワイヤ表面に打痕傷が発生する。したがって、溶接用ワイヤの線径精度や形状精度が出なくなる、ワイヤの肌荒れが生じる、などの問題が起こり易くなる。特に高強度の溶接用ワイヤの伸線ほどこの傾向が強い。このため、特に高強度の溶接用ワイヤの伸線はできない、あるいは例えできても、伸線速度を低くせざるを得なくなる。
これに対し、本発明のように、一体型の枠体の剛性を高めることで、伸線時の負荷に対し、枠体の変形が防止できる。これによって、ローラダイスの固定強度を高め、高強度の溶接用ワイヤの伸線であっても、伸線速度や形状精度を向上させることができる。
一体型の枠体の剛性は、図13に示すような引張試験装置20を用いて、線引き装置の内の一体型の枠体のみの引張試験を行い、この枠体単独の伸び量で表す。この計測方法と伸び量とが最も計測が簡便であり、実際の高強度の溶接用ワイヤの伸線における高速度化と高精度化と良く対応する。
引張試験の際の枠体に負荷する引張荷重は、実際に使用する線引き装置から、ローラダイスやベアリングボックスなどの枠体の支持対象物を取り外し、一体型の枠体のみに対し、ローラダイスのワイヤへの荷重方向に10000N( ニュートン) の引張荷重を、枠体の中央部に付加して拡張した際の、枠体の伸び量を計測する。この一体型の枠体のみの、そして枠体中央部の伸び量は、一体型の枠体が最も大きく変形する最大変形量を示している。枠体の伸び量を計測するに際して、敢えて、ローラダイスやベアリングボックスなどの枠体の支持対象物を取り外したのは、これら支持対象物による枠体剛性への影響を排除して、高強度の溶接用ワイヤの伸線状態に大きく寄与する枠体のみ( 枠体単独) の剛性を評価するためである。
図13(a) の引張試験装置20は、基本的には、基台22上に設置された枠体24と、この枠体24に垂直方向に設置された引張試験機21a 、21b から構成され、通常の引張試験機と基本的に同じ構成である。要は、通常の引張試験片が、線引き装置の一体型枠体に置き替わった点のみが相違し、この一体型枠体の引張試験のための上下取り付け乃至固定方法を、一体型枠体9 の内の枠体9d、9b側の中央部 (一体型枠体9 の上下軸心) に設けたボルト23a 、23b によっている点が相違する。なお、図13(a) の測定用の一体型枠体9 は、引張荷重方向を、ローラダイス線引き装置のワイヤへの荷重方向とするため、図1 に示した一体型枠体9 の向きに対し、90度横に傾けた状態としている。図13(b) に、この一体型枠体9 の平面図 (上方から一体型枠体9 を見た図) を示す。図13(b) のように、一体型枠体9 の上下軸心あるいは上下軸心に近い位置である、枠体9dの中央部c で引張荷重を負荷する。この枠体9dの中央部c に、既に線引き装置としての位置調整用のボルトなどがある場合には、上記引張試験用の固定ボルト23a の代わりに、これを利用して固定すれば良い。また、このような引張試験用の固定ボルトやボルト孔が無い場合には、枠体9dの中央部c に、引張試験用の固定ボルト23a を挿入する孔を新たに設ける。これは他方の枠体9bの場合も同様である。なお、これらいずれの場合でも、引張試験用の固定ボルトは10000Nの引張荷重に十分耐える太さなり強度を有する必要があることは言うまでもない。
そして、引張り荷重を負荷する前の枠体9 中央部の (枠体9 の上下軸心方向の) 枠体の外形距離をL0、引張り荷重を負荷した後の枠体中央の枠距離をL1として、L1−L0を求めて、枠外形距離の伸び量とする。この一体型の枠体9 のみの伸び量は、前記した通り、一体型の枠体9 が最も大きく変形する最大変形量を示している。この距離L0、L1はマイクロメータ、レーザ式距離測定器、ダイヤルゲージ、歪み式ギャップ測定器、等を用いてμm 単位で測定する。
本発明では、このような引張試験における一体型枠体の伸び量が20〜150 μm の範囲の高剛性を有するものとする。例えば、伸線工程における複数群のローラダイスの内、例え1 群 ( 1列) のローラダイスでも、その一体型枠体の伸び量が150 μm を越えた場合、特に高強度の溶接用ワイヤを伸線する場合に、一体型の枠体の剛性とローラダイスの固定強度が不足する。このため、伸線時のワイヤに打痕疵が発生する、線径精度や形状精度が出なくなる、ワイヤの肌荒れが生じるなどの問題が起こり易くなる。特に高強度の溶接用ワイヤの伸線ほどこの傾向が強い。このため、特に高強度の溶接用ワイヤの伸線では、伸線できない、あるいはできても、伸線速度を低くせざるを得なくなる。この結果、特に高強度の溶接用ワイヤの伸線において、高速度化と高精度化 (高形状精度化) とが両立できない。
一方、一体型枠体の伸び量が20μm 未満では、比較的伸線しやすい、軟鋼ソリッドワイヤや軟鋼フープのFCW などの伸線であっても、ローラダイスへの負荷が高まりすぎる。このため、ローラダイスがWC-Co 系超硬製であっても、ローラダイスの疲労強度が低下し、破壊されやすくなり、寿命が大幅に低下する。したがって、一体型枠体の伸び量は20〜150 μm の範囲とする。
ここで、ローラダイスにおける一体型枠体の、伸線時の変形の構造解析を実施した。より具体的には、一体型の枠体の剛性が低いローラダイス線引き装置の伸線時に、ローラの振動、変位測定器を取り付け、ローラダイスの各部分の変位量を計算によって求め、一体型枠体の変形 (変位量) の構造解析を実施した。この解析結果を図14(a) 、(b) と図15(c) 、(d) とに示す。
なお、変位量の計測は、後述する図1 に示す構造の線引き装置4aを用いて、後述する図15のソリッドワイヤ製造工程の内、ローラダイス線引き装置による二次伸線工程を使用して行なった。そして、二次伸線工程の内の伸線速度が最も速くなる5 段目のローラダイス線引き装置405 を対象として行なった。この二次伸線条件として、800 〜1000N の加工力 (ワイヤを押す力= 一体型枠にかかる力) で、1.36mmΦの高強度中実ワイヤを、1.28mmΦの中実ワイヤに、900 〜1000m/分の高速伸線により行なった。なお、図14の線引き装置のモデル化に際しては、図1 に示す構造の内、ローラダイスや細部を省略して簡略化した。
図14(a) は上記引張試験における一体型枠体の伸び量が145 μm の変形モードモデルを示している。また、図14(b) と図15(c) 、(d) とは、上記引張試験における一体型枠体の伸び量がいずれも150 μm を越えた、155 μm (図14b)、200 μm ( 図15c)、250 μm (図15d)の各場合の線引き装置の各変形モードモデルを示している。図14、15において、図14 (a)、(b) 、図15(c) 、(d) の順にしたがって、高次の変形モードを示している。なお、図14(a) の枠体の向きに対し、図14(b) と図15(c) 、(d) の枠体の向きは90度ずらしている。これら図14、15にモデル化した線引き装置4aにおいて、7a、7b、7c、7dはベアリングボックス、8a、8bはベアリング固定用梁(前記ベアリングボックス固定用梁のこと)、9a、9b、9c、9dは一体型枠体の各枠体を示す。
実際の線引き装置の変形は、これら構成要素の変形が重ね合わされて( 複合して) 発生する。図14(a) の一体型枠体の伸び量が145 μm の各変形モードでは殆ど枠体の変形が生じていない。これに対して、図14(b) と図15(c) 、(d) の一体型枠体では、枠体の剛性が、枠体の伸び量でいずれも150 μm を越えて低い。このため、図14(b) 、図15(c) 、(d) となるほど、これらの枠体9a、9b、9c、9dは容易に、かつ大きく変形している。そして、更にベアリングボックス7a、7b、7c、7dやベアリング固定用梁8a、8bにも変形が伝わっていることが分かる。したがって、一体型枠体の伸び量が150 μm を越えて剛性が低下した場合に、特に高強度の溶接用ワイヤの伸線時の一体型の枠体の剛性とローラダイスの固定強度が不足することが裏付けられる。
以上のローラダイスを支持する枠体の高剛性化を前提に、以下に、図面を用いて、本発明線引き装置の好ましい基本構造の実施の形態を説明する。図1 は好ましい態様の線引き装置の正面図である。図2 は図1 の線引き装置におけるローラダイスの要部拡大正面図である。
先ず、図1 において、線引き装置4aは、基本的に、ローラダイス1 、ベアリングボックス (ベアリングカバー)7a 、7b、7c、7d、ベアリング固定用梁8a、8b、一体型枠体9a、9b、9c、9dなどから構成される。
ローラダイス1 は左右一対の2 個のローラ2a、2bからなる。各ローラ2a、2bの軸 (シャフト)6a 、6bは、ベアリングボックス7a、7b、7c、7d内の (図示しない) ベアリング (軸受) によって各々回転自在に軸支されている。このベアリングは4 個のベアリングボックス7a、7b、7c、7d内に保持収容されている。ベアリングボックス7a、7cと、7b、7dとは、各々2 本のベアリング固定用梁8a、8bに結合、固定され、これらの梁を各々介して、4 本の枠体9a、9b、9c、9dに各々固定されている。これらのベアリング固定用梁8a、8bは各々後述する調整用のボルトを介して、枠体9a、9b、9c、9dに各々固定されている。
図1 において、11a 、11b 、11c 、11d はローラダイス1 のローラ軸方向 (図の上下方向) の位置調整用のボルトであり、12a 、12b 、および 13a、13b 、13c 、13d はローラギャップ (ローラ間距離) 調整用のボルトである。これら調整用のボルトは、押しネジや引きネジなどから構成され、枠体9a、9b、9c、9dと、ベアリング固定用梁8a、8bとに各々結合している。そして、これらのボルトは、これらベアリング固定用梁と、この梁に固定された前記ベアリングボックスを介して、ローラ2a、2bにおける、伸線の際の溶接用ワイヤに対する、ローラ軸方向の位置やローラギャップを制御している。これによって、溶接用ワイヤに対するローラダイスの荷重および加工率、および溶接用ワイヤの形状や線径を制御する。
一方、ローラダイス1 を支持しつつ囲む枠体9a、9b、9c、9dは、ボルト10群などによって互いに結合され、一体型の矩形枠体を構成している。一体型の枠体の全体形状は、ローラダイス1 を四方より支持するためには、略矩形形状を有することが合理的である。27は、後述する図3 に示すように、線引き装置4aを溶接用ワイヤ5 に対して直列に複数個配置した線引き装置列 (群)4として用いる場合に、線引き装置4a同士を積層、固定するための固定シャフト用孔群である。これら固定シャフト用孔27は、上記した線引き装置4aの構成や機能を阻害しないように、各々一体型枠体の四隅 (枠体9a、9cの隅角部) に配置されている。
図2 に拡大して示すローラダイス1 を構成する、左右一対のローラ2a、2bは、各々半割りの型孔3a、3bを有する。そして、この型孔3a、3bで一体に形成する型孔3 内にワイヤ5 ( 図示しているのはソリッドワイヤ) を挟持して、ワイヤ5 を伸線する。この際、前記した図1 のボルト11a 、11b 、11c 、11d によって、ローラ2a、2bのローラ軸方向( 図の上下方向) の位置調整を行なう。また、図1 のボルト12a 、12b 、および 13a、13b 、13c 、13d によって、ローラギャップ (図の左右方向) の調整を行なう。
以上の好ましい基本構成であれば、後述する設計条件をも含めて、一体型の矩形枠体9a、9b、9c、9dの必要剛性と、それに伴う、伸線時のローラダイス1 の固定強度が基本的に確保されやすい。したがって、高強度の溶接用ワイヤの伸線であっても、一体型の矩形枠体9a、9b、9c、9dの変形が防止できる。また、これによって、ローラダイス1 の固定強度を高め、高強度の溶接用ワイヤの伸線であっても、伸線速度や形状精度を向上させることができる。
線引き装置4aにおけるローラダイス1 の固定強度 (剛性) は、これらローラダイス1 、ベアリングボックス7 、ベアリング固定用梁8 、矩形枠体9 の構成要素自身の強度、矩形枠体への固定強度、及び矩形枠体の強度が互いに相乗されて決まる。本発明では、これらの要素の内、特に、最も影響が大きい一体型の矩形枠体9 の強度 (剛性) を前記所定のレベルに高めて、ローラダイス1 の固定強度を高めている。したがって、線引き装置4aがこのような好ましい基本構成であっても、前記した図14、15の変形解析結果のように、一体型枠体の伸び量が150 μm を越えて剛性が低下した場合には、特に高強度の溶接用ワイヤの伸線時の一体型の枠体の剛性とローラダイスの固定強度が不足する。
このような構成の線引き装置4aを実際に溶接用ワイヤの伸線に用いる場合には、図3 に示すように、溶接用ワイヤ5 に対して直列に複数個配置した線引き装置列 (群)4として用いる。図3 の場合には、溶接用ワイヤ5 を形状精度良く伸線するために、同じ構成で、かつローラ2a、2bの向きを互いに90度ずつ角度をずらした線引き装置4aを4 個、交互に配置している。そして、これら各々の線引き装置4aの固定シャフト用孔( 前記図1 に記載した固定シャフト用孔27) に、固定シャフト28a 、28b を貫通させて、固定板29 (線引き装置4aの底部の支持部を含めて L字状を有する) に固定するとともに、線引き装置4 として一体化させている。なお、図3 における伸線方向は図の右から左への方向となる。
前記図3 に示した線引き装置4 はベアリング等の定期交換が必要である。この交換時の操作性も極めて重要であり、大きすぎたり、重すぎたりすると作業効率を著しく落とす。この点、線引き装置4 の外径を決める一体型枠体の外径寸法は400mm 角以下の200 〜300mm 角程度、そして、1 組のローラダイスを取り付けた際の一体型枠体の質量は合計で20kg以下であることが好ましい。
以下に、一体型矩形枠体9 の強度 (剛性) を高めるための好ましい実施態様について以下に説明する。
各枠体
矩形枠体を構成する各枠体 (4 本の枠体) の素材は、機械構造用炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼、工具鋼などの比較的高強度の鋼から構成されることが好ましい。また、矩形を構成する個々の枠体の断面形状はI型でも中空ロ型でも構わないが、加工の容易性を考慮すれば、単純な矩形で十分である。個々の枠体の断面形状が矩形であれば、一体型枠体の断面二次モーメント (下記式で表せる) を調整しやすく、前記引張試験における一体型枠体の伸び量を小さくし剛性を高めることが容易である。
一体型枠体の断面二次モーメントI= (bh3)/12 、
但し、b: 荷重方向に対する一体型枠体の幅、h: 一体型枠体の高さ。
更に、この矩形断面形状の中でも、長方形の断面形状であることが好ましい。個々の枠体の断面形状が正方形や正方形に近いと、ワイヤ半径方向( 加工により拡張力の作用する方向) とワイヤ引き抜き方向との、互いの枠振動周波数が近くなるため、枠体の連成振動が発生しやすくなる。これに対して、個々の枠体の断面形状が長方形の場合には、前記両方向の枠振動周波数が乖離し、枠体の連成振動が発生しにくくなる。このため、ワイヤへの打痕疵がよりつきにくくなる。
また、個々の枠体の変形量は、断面二次次モーメントが同じでも、その長さが長いほうが変形量は大きくなる。したがって、各枠体の長さは、ローラダイス1 の支持に必要な長さを設計上確保した上で、できるだけ短くすることが好ましい。なお、枠体に部分的に減厚されている箇所があっても、一体型枠体の伸び量が上記所定の範囲にあれば良い。
更に、伸線では前記図3のように、線引き装置4 を複数枚を重ねて使用するために、枠体の厚さが厚すぎると、各ローラダイスを貫通して固定する図1 の各ローラ2a、2bの軸 (シャフト)6a 、6bが長くなり、たわみやすくなる。更に、隣接し90°ずつ角度を変えて回転するローラ型孔間の距離が大きくなり、ワイヤが捩れやすく高精度の加工ができない。これらの理由から個々の各枠体の厚さは70mm以下が好ましい。以上の条件に加え、各枠体素材の肉厚 (板厚) や幅などの設計事項を含めて、前記引張試験における枠体の伸び量が20〜150 μm の範囲の高剛性を有するように、枠体および矩形枠体を設計する。
また、矩形枠体を構成する4 本の枠体を各々一体的に固定する場合において、前記ボルト10を使用する場合は、一体型枠体の剛性や枠体同士の結合力を高めるために、外径4mm 以上の直径を有する鋼製ボルトなどが好ましい。また、ボルト10に加えて、あるいは替えて、アーク、プラズマ、レーザなどの溶接で4 本の枠体を強固に固定しても良い。
図4 に各枠体をボルトにより矩形 (四角形状) 一体型枠体に固定する例を正面図で示す。図中の横方向の矢印は、伸線により枠体に対する拡張力が働く方向を示す。図中の枠体の4 隅にある10は前記図1 の固定用ボルトを示す。図4 (a) 、(d) 、(f) は、固定用ボルト10を各々拡張力に対して平行方向に使用した例、図4(b)、(c) 、(e) は、固定用ボルト10を各々拡張力に対して縦方向に使用した例、である。また、図4 (a) 、(b) は枠体端部同士を斜めに突き合わせて接合したタイプ、図5(c)、(d) は枠体端部同士を嵌め合わせて接合したタイプ、図4(e)、(f) は枠体端部同士を互いに直角に接合したタイプ、を各々示している。更に、固定用ボルトは、図4 の三次元的な意味での上下方向から固定しても良い。これらいずれかの固定用ボルトや枠体端部同士接合のタイプ、あるいはいずれかのタイプ同士を組み合わせ態様を用いて、一体型枠体を構成する。
次に、以上説明した矩形枠体9 以外の、線引き装置4aを基本的に構成する他の要素について、ローラダイスの固定強度 (剛性) を高めるための、あるいは、線引きを高精度化、高速化させる好ましい態様を以下に説明する。
ローラダイス
本発明で使用するローラダイス1 のローラ2a、2bの各ローラ直径は、前記一体型枠体との関係や実用性から、30〜80mmの範囲のものが好ましい。ローラ直径が小さくなると、隣接するローラ間距離が小さくできるため、伸線されたワイヤの線径精度は向上する。一方、ローラ直径が小さくなると、ローラの単位時間当たりの回転数が大きくなり、ローラが発熱しやすくなり、ローラ寿命が短くなる。この線径精度やローラ寿命が良くバランスする範囲が前記30〜80mmのローラ直径範囲である。同様に、ローラの回転軸6 の直径は8 〜25mm、ローラの全長( 軸方向) は50〜150mm 、ローラの厚みは5 〜25mmの範囲から選択することが好ましい。
本発明で使用するローラダイス1 ( ローラ2a、2b) は、超硬製 (超硬材料製) からなることが好ましい。これ以外の材料では、特に高強度で高速の溶接用ワイヤ伸線では、ローラダイスの疲労強度が低下し、破壊されやすくなり、寿命が大幅に低下する可能性が大きい。この超硬材料としては、WC基超硬合金製、TiC 基超硬合金製、TiCN基サーメット製などがあり、これら超硬材料に、ZrC 、HfC 、TaC 、NbC 、VC、Cr3C2 などが適宜分散されるとともに、バインダーとしてCoおよび/ またはNiで焼結したものなどが多々ある。
ただ、本発明で使用するローラダイス1 には、これら超硬材料の中でも、粒径が0.1 〜20μm の微細なWC粒子をバインダーとしてCo、またはCoおよび Ni で焼結した組成のものが好ましい。このようなWC基超硬合金であるWC-Co 系超硬材料からなるローラダイスは、硬度や剛性が高く、溶接用ワイヤの強度や硬度が高くなっても、ローラダイス1 の固定強度が基本的に確保される。また、伸線後の溶接用ワイヤ表面の仕上がり性が確保され、溶接用ワイヤを溶接機に供給する際のワイヤ供給性などが向上する利点もある。更に、ローラの型孔表面の摩耗が防止でき長期間安定した伸線が行える。
ベアリング固定用梁
上記図1 のベアリング固定用梁8a、8bの存在は、ローラ2a、2bと、一体型の矩形枠体9a、9b、9c、9dとの固定強度を向上させる。これらの梁8a、8b、8c、8dを用いず、前記ベアリングボックス7a、7b、7c、7dを直接、上記調整ネジで一体型の矩形枠体9a、9b、9c、9dに固定した場合、ローラ2a、2bや矩形枠体の固定強度が上記図1 の態様の場合に比して著しく低くなる。このため、より高強度の溶接用ワイヤの伸線など、より大きな加工力を必要とした場合に、ダイスの振動やワイヤの打痕傷が生じやすい。
図5 、6 、7 に、上記図1 の態様における、これらベアリング固定用梁8aとベアリングボックス (ボックス)7a 、7cとの具体的な構成例を要部拡大断面図で示す。図5 、6 、7 において、各々(a) は正面図、各々(b) は側面図である。ここで、図5 、6 、7 は、上記図1 のベアリングボックス7a、7c側 (ベアリング固定用梁8a側) のみの片側で示している。この点、図示はしないが、他方のベアリングボックス7b、7d側( ベアリング固定用梁8b側) も左右対称にて同じ構造となる。
図5 はベアリング14を嵌め込むための円筒状の穴15を各々有するベアリングボックス7a、7cを、ベアリング固定用梁8aと突き合わせて、8aに複数本のボルト10で互いに固定した例である。
図6 はベアリングボックス7a、7cの半分とベアリング固定用梁8aとが一体であり、ベアリングボックス7a、7cに、ベアリングボックスの蓋16をボルト10で固定した例である。
図7 はベアリング固定用梁8aとベアリングボックス7a、7c、更にベアリングボックスの蓋16とベアリングボックス7a、7cを、各々ボルト10で固定した例である。
これらいずれの例においても、ベアリングボックスとベアリング固定用梁をボルトで完全に一体化するところに特徴がある。ボルト以外にレーザ、電子ビーム等の熱源を用いた低歪の溶接によって、両者の一体化を行なっても良い。
ベアリング
ここで、上記ベアリングボックス内に収容されたベアリング14は、前記図2 における型孔3 を有するローラ2a、2bの回転運動を容易にするために以下の軸受型から選択されることが好ましい。即ち、単列又は複列の深溝玉軸受型、単列、複列、又は組み合わせのアンギュラ玉軸受型、単列又は複列の円錐ころ軸受型、から選択する。上記ベアリングボックス7a、7cに、これらのベアリングの外輪を挿入する一方、これらのベアリングの内輪に、型孔3 を有するローラ2aの回転軸6aを挿入して軸支することで、ローラ2aは高精度に、かつ低抵抗で回転することができる。この点は、ローラ2bの回転軸6bも同様である。
ローラダイスの位置調節
図8 〜10を用いて、前記図1 のベアリングボックス7 の固定およびローラダイス位置調節を、調節用ボルトによって行なう一態様を以下に示す。図8 は前記図1 の線引き装置の他の態様を示し、ローラの図示を省略した、線引き装置4bの正面図である。図9 は図8 の要部側面図であって、ローラ2a、2b間のギャップ (図の横方向) の調整用のボルト12および13a 、13b の配置例を示す。図10(a) は図8 の要部断面正面図であって、ローラ2a、2bのローラ軸6a、6b方向( 図の縦方向) 調整用のボルト11a および11c の配置例を示す。図10(b) は10(a) の要部拡大図である。図11も図8 の要部断面正面図であって、ローラ2a、2bのローラ軸6a、6b方向( 図の縦方向) 調整用のボルト11a および11c の他の配置例を示す。
ローラ間隔 (ギャップ) 調節
図8 において、13a 、13b がロックナットを有する外径4mm 以上の鋼製押しボルトであり、12は外径4mm 以上の鋼製引きボルトである。これらのボルトは、各々枠体9dと9bとベアリング固定用梁8a、8bとに各々穿たれた雌ネジ25を介して、枠体外側から挿入され、ベアリング固定用梁8a、8bに各々固定されている。これら押しボルト、及び引きボルトを微調節することによってローラ間距離を最適にあわせることができ、またロックナットを用いて強固に固定することが可能となる。
また図8 において、18a 、18b 、18c 、18d は振動防止用のキーである。このように、ベアリング固定用梁8a、8bをキー18によって枠体9a、9cに固定することで、一体型の矩形枠体9a、9b、9c、9dへの、ローラ2a、2bの固定強度を一層向上させることができる。振動防止用のキー18は、矩形一体型枠9 又はベアリング固定用梁8 のどちらかに、ボルトで固定すれば良い。
図9(a)、(b) 、(c) 、(d) 、(e) は、各々図8 の線引き装置4bを枠9d側の側面から見た場合の、押しボルト13a 、13b ( 図9 では黒丸で示す) と、引きボルト12( 図9 では白丸で示す) との配列例を示す。これらの押しボルト13a 、13b と引きボルト12とは、図9(a)から(e) に各々変形例を示すように、各々同一直線状に並べても、平面状に幾何学的に並べても良い。また、押しボルト13と引きボルト12との位置を互いに入れ替えても良い。押しボルト13と引きボルト12とを合計で3 本以上用いることで、一体型矩形枠9 とベアリングボックス8 とを強固に固定することができる。そして、これら、押しボルト13を押し込み、また、引きボルト12を引き込むことによって、ローラ2a、2b間のギャップ (図の横方向) を調整することができる。
ローラの軸方向の位置調節
図10(a) の態様では、ローラ回転軸6aに、ローラ2aに対称的に 2箇所の、軸の太さが異なる段差26を各々設けている。そして、これらの段差26によって、2 個のベアリング14の内輪14a を各々支持させている。一方、ベアリング14の外輪14b 側には、各々キャップ17が当接している。このキャップ17は、枠体9aと9cとに穿たれた雌ネジ25を介して挿入された、調整用ボルト11a および11c に各々固定されている。また、ローラ2aとベアリング14とは、前記ローラ回転軸6aの段差26によって位置が固定されている。
このように構成することで、調整用ボルト11a および11c を押して、キャップ17を介して、ベアリング14の外輪14b 側を押すことで、ベアリング14を、各々ベアリングボックス7a、7c内で移動させることができる。また、これに合わせて、ローラ2aをローラ回転軸6a方向( 図の上下方向) に移動させ、ローラ2aのローラ回転軸6a方向の位置調節ができ、かつ固定することができる。以上のような構成は、もう一方のローラ2bの場合も同じである。
図10(b) に10(a) の要部を拡大して示す通り、より詳細には、ベアリング14は例えば、単列円錐ころ軸受型ベアリング14c とベアリング14の外側ケース14d とから構成され、ベアリング14の外側ケース14d は前記ベアリング14の前記外輪14b を形成している。したがって、調整用ボルト11a および11c を押して、キャップ17を介して、ベアリング14の外側ケース14d ( ベアリング14の外輪14b 側) を押すことで、ベアリング14を、各々ベアリングボックス7a、7c内で移動させることができる。なお、防塵を目的として、ローラ2aのベアリング面に防塵カバー28などを取り付けても良く、元々このような防塵カバーを有するベアリングを用いても良い。
図11の態様は、調整用ボルト11a および11c を各々2 本ずつ平行に取り付け、前記キャップ17を介さず (設けず) 、調整用ボルト11a および11c を各々ベアリング14の外輪14b 側に当接させている。これ以外の構成は、前記した図10(a) と基本的に同じである。このように構成することで、図10(a) と同様に、調整用ボルト11a および11c を押して、ベアリング14の外輪14b 側を押すことで、ベアリング14を、各々ベアリングボックス7a、7c内で移動させることができる。なお、このように、調整用ボルト11a および11c をベアリング14の外輪14b 側に直接当接させる場合、これらの調整用ボルトは、調整用ボルト11a および11c のように、個々のベアリングに対し、各々設けることが好ましい。また、合計で複数本設けることが好ましく、3 本以上あるとベアリング14を安定して固定することができる。
線引き装置の冷却方法
ローラダイス線引き装置は、ワイヤの伸線中に加工発熱する。このため、溶接用ワイヤと接触するローラ表面とベアリングが発熱源となる。水系等の湿式潤滑剤による伸線を行うと、湿式潤滑剤によってローラとベアリングとは効率よく冷却されるために、線引き装置自体の積極的な冷却は不要である。これに対して、粉末潤滑剤などの乾式潤滑剤を用いて伸線を行うと、潤滑剤によっての冷却は期待できないために、線引き装置自体の温度上昇は非常に大きな問題となる。
また、本発明のように高強度で、かつ高速の伸線の場合、あるいは加工率が高い工程での伸線の場合には、この加工発熱量が多くなる傾向がある。このため、ローラ (型孔) の熱膨張により、線径精度が低下する可能性が高い。
更に、線引き装置の構成上からくる自然冷却の限界もある。例えば、前記した図8 に示すように、一体型枠体9 とベアリング固定用梁8 とがボルト12や13などで部分的にしか接触していないと、ローラ2 表面とベアリングから発生し、ベアリング固定用梁8 を介した熱流が、ボルト12や13部分で遮蔽されることとなる。このため、枠体9 の側の温度は上昇し難く、ローラ2 、ベアリングボックス7 及びベアリング固定用梁8 のみの温度が上昇する。この結果、外側は一体型枠体9 で固定されているために、枠体9 の内側のこれらの部材のみが熱膨張して、ローラ間距離が小さくなり、伸線される溶接用ワイヤの直径も小さくなる。したがって、溶接用ワイヤの線径精度が低下し、またベアリングの温度が高くなるためにグリースなども劣化しやすい。
これらを防止するためには、ワイヤの伸線中に、ローラやベアリング、あるいはベアリングボックスを冷却することが好ましい。
ローラダイス線引き装置を冷却することは前記した通り公知である。しかし、その方法は、銅板などを枠体に設けて、枠体を冷却し、これによって、ローラやベアリングなどを冷却するやり方である。本発明者らの知見によれば、これら従来技術のように、一体型枠体を冷却する必要は無く、一体型枠体を冷却した場合、却って、ローラなどとの間に温度差がついて、線径精度が低下する可能性が高い。したがって、本発明では、ローラダイス線引き装置を冷却する場合、ローラやベアリング、あるいはベアリングボックスを冷却する。
図12は、ローラやベアリングあるいはベアリングボックスを冷却するために、ベアリングボックス7a、7cおよび/ またはベアリング固定用梁8aに、冷却媒体通過用の流路 (空間) を内部に設けた冷却方法の一例を示す。図12に矢印19で示すのは冷却水の水路 (流路) である。この水路19を、図12(a) 、(b) 、(c) 、(d) 、(e) に各々変形例を示すように、ベアリングボックス7a、7c内および/ またはベアリング固定用梁8a内に穿孔によって設ける。このように、ベアリングボックス7a、7c内および/ またはベアリング固定用梁8a内を、水冷却することで、ローラやベアリングあるいはベアリングボックスの、伸線に伴う温度上昇を抑制することができる。なお、この図12では水冷却の場合を示したが。空気や他の気体あるいは液体などの冷媒を用いても良い。更に、図12(f) に示すように、ローラの軸中心を通る貫通孔を設けて、冷却水など冷媒の流路19となし、この貫通孔両端に回転軸シールを取り付けることで、ローラ自身の内部に冷却手段を設けることができる。このようにすれば、ローラの最も効率の良い冷却ができ、ローラ自身の熱膨張を完全に抑えることができる。
以下に、本発明ローラダイス線引き装置を、ソリッドワイヤの、高速伸線工程を含めた、製造工程に適用した例を説明する。
図16および図17は、例えば、5.5 mmΦの高強度鋼線材素線から1.2mm Φの製品径の溶接用ソリッドワイヤを製造する工程を示す。この図16、17に示す溶接用ソリッドワイヤの伸線工程は一次伸線(B) および二次伸線(C) からなる。そして、一次伸線(B) および二次伸線(C) を含めて、溶接用ワイヤの素線径から製品ワイヤ径に近いワイヤ径までの伸線を、孔ダイス線引き装置を用いず、全てローラダイスにて行なう工程を示している。
このようなローラダイス線引き装置を適用した工程で、500MPa以上の高強度鋼線材素線を溶接用ワイヤに伸線する場合、高速と言える伸線速度は、一次伸線(B) および二次伸線(C) ともに、600m/ 分以上、好ましくは700m/ 分以上である。本発明ローラダイス線引き装置を適用することで、この高速化が可能となる。
しかも、溶接用ソリッドワイヤにおいて、特に伸線が困難な、銅めっきを有しない溶接用ソリッドワイヤの高速伸線が可能となる。従前から、銅めっきを施した溶接用ソリッドワイヤは、溶接施工時の溶接用ワイヤの送給性に問題があり、それは、ワイヤ表面からの銅めっきの剥離に起因する、送給抵抗の異常な増加が生じやすいという現象であった。ところが、銅めっき溶接用ワイヤの銅めっき層は、溶接用ワイヤの製造工程における伸線性向上の潤滑皮膜としての機能を担っているので、工業製品として、一般市場を占有するに至っている。銅めっきを有しない溶接用ソリッドワイヤを、銅めっきを施した溶接用ソリッドワイヤと同様に、高速で、効率良く伸線することは、従来、非常に困難であったからである。しかし、本発明のローラダイス線引き装置を適用することで、銅めっきを有しない溶接用ソリッドワイヤの高速伸線が可能となるのである。
図17に示す工程では、先ず、500MPa以上の高強度鋼線材素線(A) のコイル100 を巻き戻して、図3 のように複数段(3段若しくは4 段) のローラダイスを各々連接した線引き装置201 、202 、203 、204 、205 、206 を順に6 段直列に配置した一次伸線工程(B) において、後述する伸線用潤滑剤を用いて、2.4mm Φの線径のワイヤに伸線し、その後巻き取り、コイル106 とする。なお、図17において、111 は各ダイス間に適宜配置される引取キャプスタンである。
次いで、コイル106 を巻き戻して、図3 のように複数段(3段若しくは4 段) のローラダイスを各々連接した線引き装置401 、402 、403 、404 、405 を順に5 段直列に配置した二次伸線工程(C) において、後述する伸線用潤滑剤を用いて、あるいは、新たな伸線用潤滑剤を用いずに、2.4mm Φの線径のワイヤを1.3mm Φの線径の略製品径( 製品径に近い線径) のワイヤに伸線する。この略製品径のワイヤに伸線した後、1 段の孔ダイス501 により、線径精度を上げるための仕上げ伸線D を行い、1.3mm Φの線径のワイヤを1.2mm Φの最終製品径のワイヤに伸線する。この孔ダイスによる仕上げ伸線D を入れるか否かは、製品溶接用ワイヤの製品取り扱いの必要性や製品の要求線径精度から適宜選択され、この孔ダイスによる仕上げ伸線D が無い工程も、ソリッドワイヤに限らず選択できる。その場合は、ローラダイスで最終製品径の1.2mm Φに仕上げれば良い。
この伸線後、ワイヤは、有機系洗剤および酸もしくはアルカリを含まない簡易な洗浄槽108 による洗浄工程E で洗浄され、ワイヤ表面に残留した伸線用潤滑剤が除去される。その後ワイヤは、ワイヤ送給用潤滑剤を塗油工程E にて、ワイヤ表面に塗布され、これら一連の処理をインラインで行なった後に、1.2mm Φの線径の製品溶接用ワイヤF としてコイル110 に巻き取られる。なお、上記洗浄工程E は、伸線用潤滑剤を除去するための、研磨布、フェルトなどを表面に設けた拭い取り(ワイパー)ロール、ワイヤを加振する、ワイヤを打撃するなどの物理的な除去手段、あるいはこれら除去手段の適宜の組み合わせにより、洗浄しても良い。
ここで、伸線に用いる潤滑剤について説明する。高強度鋼線材素線を溶接用ワイヤに伸線する場合、潤滑剤に必要な特性は、ローラダイス伸線の際に良好な潤滑性を発揮するとともに、更に、このローラダイス伸線後に、その残留付着量にもよるが、インラインでの洗浄工程で除去可能なことである。なお、ここで、インラインとは、伸線と同じ工程にて、伸線後のワイヤを搬送しつつ、連続的に処理を行なうことを言う。これに対し、ワイヤを伸線後、この伸線後のワイヤに対し伸線とは別の工程にて処理を行なうことをオフラインと言う。
この特性を満足する潤滑剤として、本発明では、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウムなどのステアリン酸系金属石鹸を主成分とする乾式固体潤滑剤が好ましい。これら水溶性のステアリン酸系金属石鹸であれば、ローラダイスによる伸線の際に良好な潤滑性を発揮するとともに、焼鈍、アルカリ脱脂、酸洗処理、有機系洗浄剤処理などによるような、除去のためのオフラインでの洗浄工程を必要とせず、インラインで温水などを用いた洗浄工程により除去が可能である。また、この金属石鹸により、製品溶接用ワイヤ表面のpHが弱アルカリに維持され、ワイヤ表面の酸化が抑制され、優れた防錆性能を得ることが出来る。
但し、上記ステアリン酸系石鹸の単体では軟化点が低く、銅めっきを有しない溶接用ソリッドワイヤのローラダイス伸線を高速で行なった場合に、石鹸成分が孔ダイス内で炭化し、高速で伸線することが出来ない可能性がある。このため、全体工程の高速化、高効率化のために、ローラダイス伸線を高速化するために、潤滑剤を高軟化点化することが好ましい。このため、上記ステアリン酸系石鹸に軟化点調整剤を添加することが好ましい。軟化点調整剤としては、燐酸ナトリウム、硼酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、炭酸カリウム、燐酸カリウム、硼酸カリウム、亜硝酸カリウム、炭酸カリウムの1 種または2 種以上が選択される。これらの軟化点調整剤を添加することで、銅めっきを有しないソリッドワイヤの高速伸線が可能となる。
更に、特にローラダイスにおける伸線性を補完し、ローラダイス面を保護するために、潤滑性向上剤として少量のMoS2、WS2 、BN、グラファイト、ZnS などから選択された1種または2種以上の極圧剤を含有させることが好ましい。
このような組成の伸線潤滑剤は、ローラダイス伸線後の前記インラインにおける洗浄において、製品溶接用ワイヤ表面に微量残留したとしても、アーク安定性に影響を与えない利点がある。言い換えると、オフラインでの前記煩雑な洗浄工程を採らずとも、後述するインラインによる簡易な洗浄処理により、アーク安定性が良好な製品溶接用ワイヤが製造可能となる利点がある。
なお、通常、銅めっきを有しないワイヤを伸線する場合に使用される、ステアリン酸カルシウム系の潤滑剤 (カルシウム石鹸) を含有する乾式固体潤滑剤は、潤滑性は良好である。しかし、ステアリン酸カルシウムはインラインによる簡易な洗浄処理では除去することが難しく、Caは製品溶接用ワイヤ表面に微量残留しても、アーク安定性に顕著な悪影響を及ぼす。このため、製品溶接用ワイヤ表面への微量残留が許容できない。したがって、ローラダイス伸線後のインラインによる簡易な洗浄処理が適用できない。言い換えると、ローラダイス伸線伸線完了後に、焼鈍、アルカリ脱脂、酸洗処理、有機系洗浄剤による洗浄といった、オフラインでの処理に適した綿密な除去処理が必要となり、製造コスト面および環境面での問題がある。
以下に本発明の実施例を示す。上記した図16、17に示した、溶接用ソリッドワイヤの製造工程に従い、5.5 mmΦの高強度鋼線材素線から1.2mm Φの銅めっきを有しないソリッドワイヤを製造した。この際、伸線工程における特定のローラダイス線引き装置の一体型枠体の剛性を変化させ、伸線性や製品溶接用ワイヤの特性を評価した。素線は5.5 mmΦの、JIS Z3312 YGW12 相当の化学成分組成を有し、引張強度500MPaの高強度鋼線材を用いた。
より具体的には、第1 のケースとして、図17に示す一次伸線工程(B) の内、最も伸線加工力が大きく、伸線速度も大きくなるローラダイス線引き装置205 における一体型枠体の剛性 (前記した引張試験における伸び量) を変化させた。また第2 のケースとして、二次伸線工程(C) の内、最も伸線速度が大きくなるローラダイス線引き装置405 における一体型枠体の剛性を変化させた。なお、ここで、405 における図3 のように4 個配列されたローラダイス同士の枠体剛性は同じとした。この各々のケースにおいて、上記した特定のローラダイス線引き装置以外の、ローラダイス線引き装置は、各一体型枠体の剛性を、全て、一体型枠体の前記した引張試験における伸び量で40〜80μm の本発明範囲内の高剛性とした。
この際、ローラダイス線引き装置としては、全て、図1 および図3 に示した線引き装置4aを用いた。また、全ての線引き装置におけるローラダイスを、前記したWC-Co 系超硬材料製とした。そして、線引き装置4aにおける構造条件などの諸条件も変えて伸線した。この線引き装置の構造条件は、図1 のベアリングボックス固定用梁8 の有無、図8 のキー18の有無、図1 のローラギャップ調整用引きボルト12の有無 (調整用押しボルト13の方は共通して設ける) 、図1 のローラダイスのローラ軸方向 (図1 の上下方向) の位置調整用ボルト11の有無、図12(a) の水冷 (水路) の有無、などの条件を変えた。なお、線引き装置4aにおける他の設計条件は、前記した各好ましい設計条件の範囲内とした。また、全て、一体形枠体の外形は250 ×250mm 、個々の枠体9 の厚みは60mm、ローラ2 の直径は65mm、ローラ回転軸6 の直径は17mm、ローラの厚みは15mmとした。
伸線用潤滑剤は、一次伸線工程(B) 、二次伸線工程(C) ともに、ステアリン酸ナトリウム (金属石鹸)75 質量% −燐酸ナトリウム+亜硝酸ナトリウム (軟化点調整剤) 合計25質量%(適量は10〜30質量% の範囲) の組成を用い、ローラダイス線引き装置201 と401 との直前で (一次および二次伸線前に) 素線およびワイヤに各々塗布した。
ワイヤ送給用潤滑剤としては、植物油 (ナタネ油) を用い、ワイヤ10kg当たり1.0g塗布した。なお、植物油の代わりに合成油を用いても良い。
これらローラダイス線引き装置の設計条件を変えた各伸線例について、ローラダイス線引き装置による一次伸線工程(B) あるいは二次伸線工程(C) における伸線性を評価し、枠体の引張試験における伸び量 (μm)などの設計条件との関係を調査した。伸線性の評価は、ダイスの振動発生状況、伸線中のワイヤの打痕疵発生状況の目視観察で行なった。また、伸線性能は、一次伸線か、または二次伸線における伸線速度が最も高い、いずれかの線引き装置 (上記206 、405 とは限らない) の最高伸線速度 (m/分) と、安定して伸線できた一次伸線か二次伸線におけるワイヤ量 (安定伸線量:ton) で行なった。
また、製品溶接用ワイヤの特性も、線径精度( 線径最大誤差: ±μm ) と、目視による表面肌観察とで評価した。表面肌は、肌荒れが大きいもの: 不均一、小さい肌荒れがあるもの: 若干不均一、肌荒れが無いもの: 均一、と3 段階で評価した。線径精度は、製品溶接用ワイヤのスプールなどへの再巻替効率と、溶接用ワイヤがワイヤ供給機から溶接機へ途切れずに供給できる、ワイヤの供給性に大きく影響する。
上記第1 のケース (一次伸線工程(B) のローラダイス線引き装置205 における一体型枠体の剛性を変化させたケース) の、線引き装置の設計条件、一次伸線工程(B) における伸線性、最終製品溶接用ワイヤの特性を表1に記載する。また、第2 のケース( 二次伸線工程(C) のローラダイス線引き装置405 における一体型枠体の剛性を変化させたケース) の、線引き装置の設計条件、二次伸線工程(B) における伸線性、最終製品溶接用ワイヤの特性を表2 に記載する。
先ず、上記第1 のケースについて、表1 から明らかな通り、前記枠体の伸び量が20〜150 μm の範囲内にある発明例1 〜11は、基本的に一次伸線における伸線性や製品溶接用ワイヤの特性も良好である。この結果、特に高強度の銅めっき無し溶接用ソリッドワイヤの伸線において、高速度化と高精度化 (高形状精度化) とが両立できている。
これに対して、前記伸び量が150 μm を越える比較例14、15、16は、ローラダイス線引き装置の他の設計条件は発明例と同じであるにも関わらず、基本的に一次伸線における伸線性や製品溶接用ワイヤの特性が、発明例に比して著しく劣っていた。
即ち、比較例14、15、16は、前記枠体の伸び量が150 μm を越えるために、一次伸線工程(B) の内、伸線加工力と伸線速度が大きくなるローラダイス線引き装置205 における一体型枠体の剛性と、ローラダイスの固定強度とが不足している。このため、ローラダイス線引き装置205 において、伸線速度500 〜600m/ 分の遅い伸線速度の段階で、ダイスの振動が強く発生して、伸線中のワイヤに打痕疵が発生した。したがって、比較例14、15、16は伸線速度を600m/ 分以上に上げることができなかった。この結果、伸線速度500 〜600m/ 分の伸線速度でも、線径精度や形状精度が製品として出ないのは勿論、それ以前の問題として、安定した伸線自体が不可能であった。
一方、枠体の伸び量が145 μm と、上限値150 μm に近い発明例1 は、伸線性や製品溶接用ワイヤの特性も比較例に対しては優れている。但し、発明例1 は、伸線速度700m/ 分のレベルで、ワイヤの打痕疵までは発生していないものの、ローラダイス線引き装置205 において、ダイスの振動が若干発生している。これ以上の伸線速度では、ワイヤの打痕疵に到る可能性があるため、発明例1 は伸線速度を700m/ 分以上に上げることができなかった。このため、枠体の伸び量以外の他の条件が同じである、発明例2 〜6 などに比して、一次伸線における最高伸線速度、安定伸線量が比較的小さくなっている。また、線径精度やワイヤ表面肌も比較的劣る。したがって、これらの結果から、高強度の溶接用ワイヤのローラダイスによる高速伸線における、線引き装置の一体型の枠体の剛性である、前記枠体の伸び量の上限値の臨界的な意義が分かる。
一方、前記伸び量が20μm 未満の比較例12、13は、高強度の溶接用ワイヤの伸線時に、ローラダイス線引き装置205 のローラダイスへの負荷が高まりすぎていた。このため、伸線速度を900m/ 分とした場合、伸線中にこのローラダイスの疲労強度が低下し、WC-Co 系超硬工具製ローラダイス表面が早期に破壊された。したがって、安定して伸線できるワイヤ量が、発明例に比して、著しく少なかった。比較例12、13は、一次伸線の最高速度を例えば600m/ 分以下に低下させれば、ローラダイスの寿命がもっと延びるものの、伸線効率が著しく低下して、実用的では無い。これに対して、枠体の伸び量が25μm と、下限値20μm に近い発明例5 は、伸線性や製品溶接用ワイヤの特性も比較的良好である。したがって、高強度の溶接用ソリッドワイヤのローラダイスによる高速伸線における、線引き装置の一体型の枠体の剛性である、前記枠体の伸び量の下限値の臨界的な意義が分かる。
更に、発明例の中でも、前記した枠体の引張試験における伸び量が範囲内であっても、ローラダイス線引き装置の他の構造設計条件が、本発明の好ましい条件を外れる発明例は、この条件範囲内の発明例に比して、伸線性や溶接特性が劣っていた。したがって、本発明線引き装置の好ましい設計条件の意義が裏付けられる。
即ち、ベアリングボックス固定用梁8 を設けなかった例7 、図8 のキー18を設けなかった発明例8 、ローラギャップ (ローラ間距離) 調整用引きボルト12を設けなかった発明例9 、図12(a) の水冷 (水路) を設けなかった発明例10、ローラダイスのローラ軸方向 (図1 の上下方向) の位置調整用のボルト11を設けなかった発明例11、は、いずれも、他の条件が同じ発明例6 などに比して、伸線性や溶接用ソリッドワイヤの特性が比較的劣っている。特に、発明例11は、ワイヤ表面に手入れ可能だが微小なバリが若干生じていた。
次に、上記第2 のケースについて、表2 から明らかな通り、前記枠体の伸び量が150 μm 以下である発明例17〜27は、基本的に一次伸線における伸線性や製品溶接用ワイヤの特性も良好である。この結果、特に高強度の銅めっき無し溶接用ソリッドワイヤの伸線において、高速度化と高精度化 (高形状精度化) とが両立できている。
これに対して、前記伸び量が150 μm を越える比較例30〜32は、ローラダイス線引き装置の他の設計条件は発明例と同じであるにも関わらず、基本的に一次伸線における伸線性や製品溶接用ワイヤの特性が、発明例に比して著しく劣っていた。
即ち、比較例30〜32は、前記枠体の伸び量が150 μm を越えるために、二次伸線工程(C) の内、最も伸線速度が大きくなるローラダイス線引き装置405 における一体型枠体の剛性と、ローラダイスの固定強度とが不足している。このため、ローラダイス線引き装置405 において、伸線速度500 〜600m/ 分の遅い伸線速度の段階で、ダイスの振動が強く発生して、伸線中のワイヤに打痕疵が発生した。したがって、比較例30〜32は伸線速度を500 〜600m/ 分以上に上げることができなかった。この結果、伸線速度500 〜600m/ 分の伸線速度でも、線径精度や形状精度が製品として出ないのは勿論、それ以前の問題として、安定した伸線自体が不可能であった。
これに対して、枠体の伸び量が145 μm と、上限値150 μm に近い発明例17は伸線速度800m/ 分のレベルで、ワイヤの打痕疵までは発生していないものの、ローラダイス線引き装置205 において、ダイスの振動が若干発生している。これ以上の伸線速度では、ワイヤの打痕疵に到る可能性があるため、発明例17は伸線速度を800m/ 分以上に上げることができなかった。このため、枠体の伸び量以外の他の条件が同じである、発明例18〜22などに比して、二次伸線における最高伸線速度、安定伸線量が比較的小さくなっている。また、線径精度やワイヤ表面肌も比較的劣る。したがって、これらの結果から、高強度の溶接用ワイヤのローラダイスによる伸線における、線引き装置の一体型の枠体の剛性である、前記枠体の伸び量の上限値の臨界的な意義が分かる。
一方、前記伸び量が20μm 未満の比較例28、29は、伸線速度を1000m/分とした場合、高強度の溶接用ワイヤの伸線時に、ローラダイス線引き装置405 のローラダイスへの負荷が高まりすぎていた。このため、伸線中にこのローラダイスの疲労強度が低下し、WC-Co 系超硬工具製ローラダイス表面が早期に破壊された。したがって、安定して伸線できるワイヤ量が著しく少なかった。比較例28、29は、一次伸線の最高速度を600m/ 分以下に低下させれば、ローラダイスの寿命がもっと延びるものの、伸線効率が著しく低下して、実用的では無い。これに対して、枠体の伸び量が25μm と、下限値20μm に近い発明例21は、伸線性や製品溶接用ワイヤの特性も比較的良好である。したがって、高強度の溶接用ソリッドワイヤのローラダイスによる高速伸線における、線引き装置の一体型の枠体の剛性である、前記枠体の伸び量の下限値の臨界的な意義が分かる。
更に、発明例の中でも、前記した枠体の引張試験における伸び量が範囲内であっても、ローラダイス線引き装置の他の構造設計条件が、本発明の好ましい条件を外れる発明例は、この条件範囲内の発明例に比して、伸線性や溶接特性が劣っていた。したがって、本発明線引き装置の好ましい設計条件の意義が裏付けられる。
即ち、ベアリングボックス固定用梁8 を設けなかった発明例23、図8 のキー18を設けなかった発明例24、ローラギャップ (ローラ間距離) 調整用引きボルト12を設けなかった発明例25、図12(a) の水冷 (水路) を設けなかった発明例26、ローラダイスのローラ軸方向 (図1 の上下方向) の位置調整用のボルト11を設けなかった発明例27は、いずれも、他の条件が同じ発明例6 に比して、伸線性や製品溶接用ワイヤの特性が比較的劣っている。特に、発明例27は、ワイヤ表面に手入れ可能だが微小なバリが若干生じていた。
以上の二つの実施例の結果は、前記した図14、15のローラダイスにおける一体型枠体の伸線時の変形の構造解析とも良く対応している。特に、同じ二次伸線のローラダイス線引き装置405 を用いた、上記実施例 (第2 のケース) 結果と、前記構造解析とは良く一致している。したがって、このことからも、本発明線引き装置の一体型枠体の、前記伸び量範囲の臨界的な意義が裏付けられる。
また、以上の実施例から、一次伸線にせよ二次伸線にせよ、伸線工程における多くのローラダイス線引き装置群 (列)のうち、いずれかの、あるいは、たった一つのローラダイス線引き装置の一体型枠体の剛性が、本発明範囲より外れるだけでも、その伸線工程全般に多大な悪影響を及ぼすことが分かる。したがって、このことからも、本発明における前記一体型枠体の伸び量範囲の臨界的な意義が裏付けられる。
本発明によれば、特に高強度の溶接用ワイヤの伸線において、高速度化と高精度化 (高形状精度化) とを両立させたローラダイス線引き装置を提供できる。したがって、高強度の溶接用ワイヤの伸線工程を、溶接用ワイヤ品質、特性を保持した上で、大幅に効率化できる。
本発明線引き装置の一実施態様を示す正面図である。 図1 の線引き装置におけるローラダイスの要部拡大正面図である。 伸線に用いる線引き装置列を示す正面図である。 ローラダイスの一体型枠体を示す正面図である。 ローラダイスのベアリング固定用梁とベアリングボックスとの構成例を示す要部拡大断面図であり、図5(a)は正面図、図5(b)は側面図である。 ローラダイスのベアリング固定用梁とベアリングボックスとの構成例を示す要部拡大断面図であり、図6(a)は正面図、図6(b)は側面図である。 ローラダイスのベアリング固定用梁とベアリングボックスとの構成例を示す要部拡大断面図であり、図7(a)は正面図、図7(b)は側面図である。 本発明線引き装置の他の実施態様を示す正面図である。 図8 の要部側面図である。 図10(a) は図8 の要部断面正面図であり、図10(b) は10(a) の要部拡大図である。 図8 の要部断面正面図である。 ローラダイスのベアリングボックスおよび/ またはベアリング固定用梁に、冷却媒体循環用の空間を内部に有する冷却方法の一例を示す説明図である。 図13(a) はローラダイス一体型枠の引張試験装置を示す正面図、図13(b) は図13(a) における試験用枠体を示す平面図である。 ローラダイス一体型枠体の剛性の違いによる伸線時の変形の構造解析結果を示し、図14 (a)、(b) の順にしたがって、高次の変形モードを示す説明図である。 ローラダイス一体型枠体の剛性の違いによる伸線時の変形の構造解析結果を示し、図15(c) 、(d) の順にしたがって、高次の変形モードを示す説明図である。 ソリッドワイヤの製造工程を示すフローチャート図である。 ソリッドワイヤの製造工程を示す工程図である。
符号の説明
1:ローラダイス、2:ローラ、3:型孔、4:線引き装置 (列) 、5:ワイヤ、
6: ローラ軸、7:ベアリングボックス、8:ベアリング固定用梁、9:枠体、
10: ボルト、11: 調整ボルト、12: 調整ボルト、13: 調整ボルト、
14: ベアリング、15: 孔、16: 蓋、17: キャップ、18: キー、19: 流路、
20: 引張試験装置、21: 引張試験機、22: 基台、23: ボルト、24: 枠体、
25: 雌ネジ、26:段差、27: 固定用シャフト孔、28: 防塵カバー、
100:素線コイル、201 〜206 、401 〜405 : ローラダイス線引き装置 (列) 、
106:ワイヤコイル、107:ワイヤ、108:洗浄装置、109:塗油装置、501:孔ダイス、110:製品溶接用ワイヤコイル、111:キャプスタン

Claims (6)

  1. ローラダイスによって線材を線引きする装置であって、ローラダイスを構成する一対のローラを各々回転自在に軸支するベアリングと、このベアリングを保持するベアリングボックスと、このベアリングボックスを支持する一体型の枠体とを有し、前記各ベアリングボックスが各々ベアリングボックス固定用梁を介して前記枠体に固定されており、この一体型の枠体に対しローラダイスの線引き荷重方向に10000Nの引張荷重を付加して拡張した際の、枠体の伸び量が20〜150 μm の範囲の高剛性を枠体が有することを特徴とする線引き装置。
  2. 前記ベアリングボックス固定用梁が、前記ローラの間隔調整用のボルトによって、前記枠体に固定されているとともに、前記ベアリングが、前記ローラの回転軸方向の位置調整用のボルトに支持されたキャップによって、前記ベアリングボックス内で移動可能なように保持されている請求項1に記載の線引き装置。
  3. 前記ベアリングボックス固定用梁がキーによって前記枠体に固定されている請求項に記載の線引き装置。
  4. 前記ベアリングボックス、前記固定用梁、前記ローラの回転軸、のいずれかの内部に冷却媒体の流路を形成した請求項1乃至3のいずれか1項に記載の線引き装置。
  5. 前記線引き装置が溶接用ワイヤの伸線用である請求項1乃至のいずれか1項に記載の線引き装置。
  6. 前記線引き装置が溶接用ワイヤの素線から略製品径までの伸線を全てローラダイスにて行なう伸線工程用である請求項1乃至のいずれか1項に記載の線引き装置。
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