JP4305982B2 - 半導体発光素子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、窒化物系III−V族化合物半導体層の成長方法、半導体装置の製造方法および半導体発光素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
GaN、AlGaN、GaInNなどの窒化物系III−V族化合物半導体は、そのバンドギャップエネルギーが1.8eVから6.2eVと広範囲にわたっており、赤色から紫外線におよぶ発光が可能な発光素子への応用が期待され、活発な研究開発が行われている。また、この窒化物系III−V族化合物半導体は、飽和電子速度が大きく、破壊電界も極めて大きいため、高周波、大電力用の電界効果トランジスタ(FET)などのキャリア走行素子の材料としても注目されている。
【0003】
この窒化物系III−V族化合物半導体を用いて発光ダイオード、半導体レーザ、FETなどを製造する場合には、例えば、化学気相成長法によりサファイア(Al2 O3 )基板、酸化亜鉛(ZnO)基板、炭化ケイ素(SiC)基板などの基板上に窒化物系III−V族化合物半導体層をエピタキシャル成長させることが行われている。
【0004】
この窒化物系III−V族化合物半導体を用いた素子の具体的な製造方法を、c面サファイア基板を用いたSCH(Separate Confinement Heterostructure)構造のGaN系半導体レーザを例にとって説明する。すなわち、このGaN系半導体レーザを製造するには、まず、c面サファイア基板上に有機金属化学気相成長(MOCVD)法により例えば560℃の温度で第1層目のGaNバッファ層を低温成長させた後、引き続いてMOCVD法により、この第1層目のGaNバッファ層上に第2層目のGaNバッファ層、n型GaNコンタクト層、n型AlGaNクラッド層、n型GaN光導波層、GaInN/GaN多重量子井戸構造の活性層、p型AlGaNキャップ層、p型GaN光導波層、p型AlGaNクラッド層およびp型GaNコンタクト層を順次成長させる。ここで、第2層目のGaNバッファ層、n型GaNコンタクト層、n型AlGaNクラッド層、n型GaN光導波層、p型GaN光導波層、p型AlGaNクラッド層およびp型GaNコンタクト層の成長温度は1000℃とし、GaInN/GaN多重量子井戸構造の活性層およびp型AlGaNキャップ層の成長温度については、InNの分解を抑えるために700℃とする。これらの窒化物系III−V族化合物半導体層の成長は、III族元素の原料の供給量に対するV族元素の原料の供給量のモル比(以下単に「V/III比」といも言う)を8000〜10000程度にして行う。次に、p型GaNコンタクト層上に所定形状のレジストパターンを形成した後、このレジストパターンをマスクとして反応性イオンエッチング(RIE)法によりn型GaNコンタクト層の厚さ方向の途中の深さまでエッチングする。次に、レジストパターンを除去した後、p型GaNコンタクト層上にp側電極を形成すると共に、エッチングされた部分のn型GaNコンタクト層上にn側電極を形成する。この後、上述のようにしてレーザ構造が形成されたc面サファイア基板をバー状に加工して両共振器端面を形成し、さらにこのバーをチップ化する。以上により、目的とするSCH構造のGaN系半導体レーザが製造される。
【0005】
ここで、従来より、MOCVD法によりp型窒化物系III−V族化合物半導体層、例えばp型GaN層やp型AlGaN層などを得る手法としては、p型不純物のドーパントとしてマグネシウム(Mg)有機金属を用いる方法が一般的である。p型不純物としてのMgは、成長層への添加効率が高く、濃度制御が容易であるという性質を有する。また、Mgは、現在知られているp型不純物のうちで最も浅いアクセプタ準位を作ることがわかっており、他のp型不純物に比べて高い活性化率が期待される。
【0006】
しかしながら、MOCVD法によりMgドープの窒化物系III−V族化合物半導体層、例えばMgドープGaN層を成長させる際に、原料ガス中またはキャリアガス中などに水素(H)が含まれる場合は、結晶中のMgアクセプタが水素によって不活性化されるという現象が起こる。このため、成長直後のMgドープGaN層は、一般に高抵抗である。
【0007】
そこで、その対策として、例えば、MgドープGaN層の成長後に、不活性ガス中で700〜900℃程度の温度で熱処理することによりMgと結合した水素を取り除き、Mgの活性化率を向上させることで低抵抗のp型GaN層を得るようにした技術が提案されている(例えば、Jpn. J. Appl. Phys., 30,(10A)L1708-L1711(1991))。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、MgドープGaN層においては、上述のように成長後に熱処理を施すことによってMgアクセプタの活性化率は改善されるものの、GaNにおけるMgのアクセプタ準位が200meVと深いため、ドープされたMgが全てアクセプタ化したとしても、室温でのキャリア濃度(正孔濃度)としては、Mg濃度よりもほぼ2桁低い値しか得られないという問題がある。このように、従来技術では、p型窒化物系III−V族化合物半導体層のキャリア濃度を高くすることが困難であるため、例えば、このp型窒化物系III−V族化合物半導体層にコンタクトさせるオーミック電極の接触抵抗が高くなるなどの問題が生じる。このため、例えば、上述したGaN系半導体レーザにおいては、動作電圧やしきい値電流密度が高くなってしまい、発光強度を増大させることが困難であった。
【0009】
したがって、この発明の目的は、キャリア濃度が高く、低抵抗なp型窒化物系III−V族化合物半導体層を得ることができる窒化物系III−V族化合物半導体層の成長方法および半導体装置の製造方法を提供することにある。
【0010】
この発明の他の目的は、キャリア濃度が高く、低抵抗なp型窒化物系III−V族化合物半導体層を得ることができ、動作電圧が低く、かつ、高発光効率の窒化物系III−V族化合物半導体を用いた半導体発光素子を実現することができる半導体発光素子の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、従来技術が有する上述の課題を解決すべく、鋭意実験、検討を行ったところ、MOCVD法により成長されたMgドープGaN層のキャリア濃度(ホール濃度)は、その結晶中に微量含まれる酸素(O)の濃度に相関があるという知見を得た。そこで、本発明者はさらに実験、検討を重ねた結果、MOCVD法によりMgドープGaN層を成長させる場合、成長に用いる原料のV/III比に応じて酸素濃度が変化し、これに伴ってキャリア濃度も変化することを見い出した。このようにMgドープGaN層において酸素のドーピングによりキャリア濃度が向上するのは、Mgアクセプタ準位が浅くなったか、あるいは、新たに浅い準位が形成されたことによる。このことに関しては、温度可変ホール測定により明らかになった。以下、本発明者が課題を解決する手段を案出する契機となった実験について説明する。
【0012】
図1および図2に、V/III比を変えて、c面サファイア基板上にMgドープGaN層をMOCVD法により成長させ、得られたMgドープGaN層における酸素濃度およびキャリア濃度を測定した結果を示す。ただし、実験に用いた試料は、反応管内に2つのガス導入部から別々に原料ガスを供給する、いわゆるツーフロー(Two−Flow)タイプのMOCVD装置であって、主流となる第1の原料ガスおよびキャリアガスを基板に対してほぼ平行に流すと共に、副流となるキャリアガスまたは第2の原料ガスを基板に対して45度以下の角度で、好適には基板に対してほぼ平行に流すようにしたものを用いて作製した。また、MgドープGaN層の成長においては、III族元素であるGaの原料としてはトリメチルガリウム(TMGa)を、V族元素であるNの原料としてはアンモニア(NH3 )を用い、p型ドーパントとしてはビス−メチルシクロペンタジエニルマグネシウム((MeCp)2 Mg)を用いた。また、キャリアガスとしては、水素(H2 )と窒素(N2 )との混合ガスを用いた。
【0013】
実験に用いた試料は具体的に次のようにして作製した。図3に示すように、まず、c面サファイア基板1を、上述のMOCVD装置の反応管内に設置し、1050℃の温度に加熱してその表面をサーマルクリーニングすることにより表面清浄化を行った後、このc面サファイア基板1上にMOCVD法により成長温度560℃で厚さ34nmのGaNバッファ層2を低温成長させる。引き続いてMOCVD法により、このGaNバッファ層2上に成長温度1000℃で厚さ1μmのアンドープGaN層3および厚さ1μmのMgドープGaN層(p型GaN層)4を順次成長させる。MgドープGaN層4の成長は、試料毎にV/III比を変化させて行った。V/III比は、TMGaの供給量のみを変化させることにより制御した。具体的には、NH3 の供給量を15slmとし、TMGaの供給量を39.6〜158μmol/minの範囲で変化させた。また、この際、MgドープGaN層4に1×1020/cm3 の濃度にMgがドープされるように、(MeCp)2 Mgの供給量を0.35〜1.38μmol/minの範囲で変化させた。
【0014】
以上のように基板上に各窒化物系III−V族化合物半導体層を成長させた後、MgドープGaN層4におけるMgアクセプタの電気的活性化のために、N2 雰囲気中、800℃の温度で10分間、熱処理を行った。そして、このようにして作製された各試料毎に、MgドープGaN層4中の酸素濃度をSIMS法により求め、MgドープGaN層4中の室温でのキャリア濃度をホール測定により求めた。
【0015】
図1より、V/III比に応じて酸素濃度が変化し、V/III比が小さいほど酸素濃度が高くなることがわかる。また、図2より、キャリア濃度もV/III比に応じて変化し、V/III比が小さいほどキャリア濃度が高くなることがわかる。その他の不純物に関しては、V/III比の変化による濃度変化は見られなかった。
【0016】
この実験結果から、MgドープGaN層におけるキャリア濃度は、酸素濃度と相関があり、特に、V/III比を低くして成長を行った方が成長層に酸素が多く取り込まれ、キャリア濃度が増大することがわかる。具体的には、V/III比が8000以上の場合は、酸素濃度が1×1018/cm3 未満であるのに対して、V/III比が8000未満の場合は、酸素濃度が1×1018/cm3 以上であり、しかも、V/III比の変化による酸素濃度の変化の度合いが大きくなり、酸素濃度に着目すると、V/III比が6000以下の場合は、V/III比が8000程度のときに比べて2.5倍程度に増加し、V/III比が5000以下の場合には、V/III比が8000程度のときに比べて3.5倍程度に増加し、それに伴って、キャリア濃度も増加していることがわかる。
【0017】
なお、Mg濃度に関しては、CV測定により有効アクセプタ濃度NA −ND を測定したところ、V/III比によらずほぼ一定であった。キャリア濃度に関しては、活性化エネルギーの違いによって差が生じることから、上述のようにMgドープGaN層において、酸素濃度の増加に伴ってキャリア濃度が増加するのは、酸素のドーピングによって活性化エネルギーが小さくなったことにより、したがって、Mgのアクセプタ準位が浅くなったことにより、キャリア(ホール)が得やすくなったためと推測される。また、Mg濃度が1×1020/cm3 程度の場合、キャリア濃度の向上には1×1018/cm3 程度以上(Mg濃度の1%以上)のO濃度が最低限必要であり、そのためには、V/III比を6000以下、好適には5000以下にすればよいことが実験結果から推測される。また、O濃度の上限は1×1022/cm3 (母体原子の数)とする。
【0018】
以上より、MgドープGaN層において高いキャリア濃度を得るためには、その成長時にp型不純物としてのMgに加えて同時に酸素をドープしてやり、この際、所定の濃度に酸素がドープされるようにV/III比を最適化することが有効であると言える。
【0019】
なお、上述の実験では、MOCVD法によりMgドープGaN層を成長させる場合に、MOCVD装置の反応管内の残留酸素または原料ガス、ドーパントガス、キャリアガスに不純物として含まれる酸素が取り込まれることによって、結果的に成長層に酸素がドープされることになるが、これは、通常の成長に用いる原料ガス、ドーパントガス、キャリアガスに酸素を含むガスを追加するなどして、成長層に積極的に酸素をドープすることも考えられる。本発明者が別に行った実験によれば、MOCVD法によりMgドープGaN層を成長させる際に、キャリアガスに酸素ガスを追加して流すことにより酸素のドーピングを行うようにした場合であっても、酸素濃度はV/III比によって制御され、V/III比が低いほど酸素が多く取り込まれ、キャリア濃度が通常に比較して増大することが確認された。なお、キャリアガスに酸素ガスを追加して流すことにより酸素のドーピングを行うようにした場合は、成長条件(V/III比)を変えずに、キャリアガスに追加して流す酸素濃度を制御することでも、ドーピングされる酸素の濃度の制御は可能である。
【0020】
以上は、MOCVD法によりMgドープGaN層を成長させる場合についてであるが、より一般的に、化学気相成長法によりp型不純物をドープして窒化物系III−V族化合物半導体層を成長させる場合に、同様なことが成立する。
【0021】
この発明は、本発明者による以上のような検討に基づいて案出されたものである。
【0022】
すなわち、上記目的を達成するために、この発明の第1の発明は、
p型窒化物系III−V族化合物半導体層を化学気相成長法により成長させるようにした窒化物系III−V族化合物半導体層の成長方法において、
p型窒化物系III−V族化合物半導体層の成長時にp型不純物と酸素とをドープすると共に、p型窒化物系III−V族化合物半導体層を構成するIII族元素の原料の供給量に対するp型窒化物系III−V族化合物半導体層を構成するV族元素の原料の供給量のモル比を6000以下にしてp型窒化物系III−V族化合物半導体層を成長させるようにした
ことを特徴とするものである。
【0023】
この発明の第2の発明は、
p型窒化物系III−V族化合物半導体層を化学気相成長法により成長させるようにした半導体装置の製造方法において、
p型窒化物系III−V族化合物半導体層の成長時にp型不純物と酸素とをドープすると共に、p型窒化物系III−V族化合物半導体層を構成するIII族元素の原料の供給量に対するp型窒化物系III−V族化合物半導体層を構成するV族元素の原料の供給量のモル比を6000以下にしてp型窒化物系III−V族化合物半導体層を成長させるようにした
ことを特徴とするものである。
【0024】
この発明の第3の発明は、
活性層を1層以上のn型半導体層と1層以上のp型半導体層とにより挟んだ発光素子構造を有すると共に、活性層、n型半導体層およびp型半導体層は窒化物系III−V族化合物半導体からなり、発光素子構造を形成する窒化物系III−V族化合物半導体層を化学気相成長法により成長させるようにした半導体発光素子の製造方法において、
p型半導体層を構成する少なくも1層のp型窒化物系III−V族化合物半導体層の成長時にp型不純物と酸素とをドープすると共に、p型窒化物系III−V族化合物半導体層を構成するIII族元素の原料の供給量に対するp型窒化物系III−V族化合物半導体層を構成するV族元素の原料の供給量のモル比を6000以下にしてp型窒化物系III−V族化合物半導体層を成長させるようにした
ことを特徴とするものである。
【0025】
この発明においては、p型窒化物系III−V族化合物半導体層においてより高いキャリア濃度を得る観点から、p型窒化物系III−V族化合物半導体層を構成するIII族元素の原料の供給量に対するp型窒化物系III−V族化合物半導体層を構成するV族元素の原料の供給量のモル比を好適には5000以下にしてp型窒化物系III−V族化合物半導体層を成長させる。
【0026】
この発明において、化学気相成長は、典型的には、第1のガス導入部および第2のガス導入部を備えた反応管を有し、かつ、反応管内に第1のガス導入部を通じて導入する主流を反応管内に設置した基板に対してほぼ平行に流すと共に、反応管内に第2のガス導入部を通じて導入する副流を基板に対して45度以下の角度で、好適には基板に対してほぼ平行に流すようにした気相成長装置を用いて行われる。また、上述のモル比は、典型的には、この気相成長装置を用いて成長を行う場合の値である。
【0027】
この発明において、窒化物系III−V族化合物半導体は、Ga、Al、In、BおよびTlからなる群より選ばれた少なくとも一種類のIII族元素と、少なくともNを含み、場合によってはさらにAsまたはPを含むV族元素とからなる。この窒化物系III−V族化合物半導体の一例を挙げると、GaN、AlGaN、GaInNなどがある。
【0028】
この発明において、窒化物系III−V族化合物半導体層の成長には、典型的には有機金属化学気相成長法が用いられる。p型窒化物系III−V族化合物半導体層へのp型不純物のドーピングは所定のドーパントを用いて行う。また、酸素のドーピングは、成長装置内の残留酸素や、原料ガス、ドーパントガス、キャリアガスなどの成長に用いるガスに不純物として含まれる酸素を成長層に取り込ませることにより行うようにしてもよく、あるいは、成長に用いるガスに不純物ガスとして酸素ガスまたは酸素を含むガスを追加して流すことにより行うようにしてもよい。
【0029】
この発明においては、好適には、p型窒化物系III−V族化合物半導体層中の酸素濃度が、p型窒化物系III−V族化合物半導体層中のp型不純物濃度の1%以上、1×1022/cm3 以下となるようにp型不純物および酸素のドーピングを制御する。なお、酸素濃度の制御は、p型窒化物系III−V族化合物半導体層を構成するIII族元素の原料の供給量に対するp型窒化物系III−V族化合物半導体層を構成するV族元素の原料の供給量のモル比を変えることによって行う。
【0030】
この発明において、p型不純物としては、周期律表IIA族およびIIB族より選択される少なくとも1種類の元素またはCなどを用いるが、その中でも好適には、酸素との組み合わせにおいて最も顕著な効果のあるMg、Be、Znを用いる。
【0031】
この発明においては、p型窒化物系III−V族化合物半導体層においてより高いキャリア濃度を得る観点から、好適には、p型窒化物系III−V族化合物半導体層の成長後、p型窒化物系III−V族化合物半導体層中のp型不純物を活性化する。p型不純物の活性化は、例えば、p型窒化物系III−V族化合物半導体層中の水素を除去することにより行う。このp型不純物を活性化するための具体的な手法としては、例えば、熱処理または電子線照射処理などがある。
【0032】
この発明の第2の発明において、半導体装置は、具体的には、例えば、発光ダイオードや半導体レーザのような半導体発光素子、あるいは、電界効果トランジスタなどのキャリア走行素子である。
【0033】
この発明の第3の発明においては、半導体発光素子の動作電圧を低減する観点から、p型半導体層のうちの少なくともp側電極とコンタクトするp型コンタクト層を成長させる際に、p型不純物と酸素とをドープすると共に、V/III比を6000以下、好適には5000以下にする。このp型コンタクト層を成長させる際のV/III比は、活性層に隣接するp型半導体層または活性層近傍のp型半導体層を成長させる際のV/III比、例えばp型光導波層やp型クラッド層(p型クラッド層のうちの活性層に近い側の一部)を成長させる際のV/III比の1/2程度、またはそれ以下とすることが好ましい。
【0034】
この発明の第3の発明においては、半導体発光素子において良好な光学特性を得る観点から、V/III比を6000以下にして成長させるp型窒化物系III−V族化合物半導体層は、活性層から所定の距離だけ離れた位置、例えば活性層から300nm程度離れた位置に形成することが好ましい。
【0035】
上述のように構成されたこの発明によれば、p型窒化物系III−V族化合物半導体層の成長時にp型不純物と酸素とをドープすることで、本質的にp型窒化物系III−V族化合物半導体層のキャリア濃度を向上させていることに加えて、V/III比が最適化されていることにより、p型窒化物系III−V族化合物半導体層に酸素が効率よくドーピングされるので、p型窒化物系III−V族化合物半導体層のキャリア濃度を効果的に向上させることができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0037】
まず、この発明の第1の実施形態によるSCH構造のGaN系半導体レーザの製造方法について説明する。
【0038】
ここで、この第1の実施形態において、レーザ構造を形成する窒化物系III−V族化合物半導体層の成長に用いられるMOCVD装置について説明する。図4はそのMOCVD装置の例を示す。
【0039】
図4に示すMOCVD装置においては、反応管11の内部にサセプタ12が設けられ、このサセプタ12上に成長を行う基板13が設置されるようになっている。また、図示省略した加熱手段によりサセプタ12が加熱され、それによって基板13が加熱されるようになっている。
【0040】
反応管11の一端部にはガス導入管14、15が設けられ、他端部にはガス排気管16が設けられている。ガス導入管14から反応管11内に有機金属やNH3 などの原料ガス、ドーパントガスおよびH2 やN2 などのキャリアガス(主流)が供給されると共に、ガス導入管15から反応管11内に副次的に流すH2 やN2 などのキャリアガス(副流)が供給され、ガス排気管16から反応管11内のガスが排気されて除害装置(図示せず)に送られるようになっている。ここで、ガス導入管14から反応管11内に供給される主流は、反応管11内を基板13に対してほぼ平行に流れるようになっていると共に、ガス導入管15から反応管11内に供給される副流は、反応管11内を基板13に対してほぼ平行に、かつ、主流が壁面につかないように流れるようになっている。なお、これらのガス導入部14,15から反応管11内に供給される原料ガス、ドーパントガスおよびキャリアガスは、例えばマスフローコントローラ(図示せず)などによって流量制御が行われる。
【0041】
次に、この発明の第1の実施形態によるSCH構造のGaN系半導体レーザの製造方法について説明する。図5は、この第1の実施形態によるSCH構造のGaN系半導体レーザの製造方法を説明するための断面図である。この第1の実施形態においては、図4に示すMOCVD装置を用いてレーザ構造を形成する窒化物系III−V族化合物半導体層の成長を行う。
【0042】
図5に示すように、この第1の実施形態においては、まず、c面サファイア基板21を、図4に示すMOCVD装置の反応管11内のサセプタ12上に設置し、例えば1050℃の温度に加熱してその表面をサーマルエッチングすることにより表面清浄化を行った後、このc面サファイア基板21上に、MOCVD法により例えば560℃の温度でGaNバッファ層22を低温成長させる。引き続いてMOCVD法により、このGaNバッファ層22上に、GaNバッファ層23、n型GaNコンタクト層24、n型AlGaNクラッド層25、n型GaN光導波層26、GaInN/GaN多重量子井戸構造の活性層27、p型AlGaNキャップ層28、p型GaN光導波層29、p型AlGaNクラッド層30およびp型GaNコンタクト層31を順次成長させる。ここで、GaNバッファ層23、n型GaNコンタクト層24、n型AlGaNクラッド層25、n型GaN光導波層26、p型GaN光導波層29、p型AlGaNクラッド層30およびp型GaNコンタクト層31の成長温度は1000℃程度とし、GaInN/GaN多重量子井戸構造の活性層27およびp型AlGaNキャップ層28の成長温度は、InNの分解を抑えるために600〜800℃程度とする。
【0043】
n型AlGaNクラッド層25およびp型AlGaNクラッド層30を構成するAlGaN層の組成は、例えばAl0.06Ga0.94Nとする。p型AlGaNキャップ層28を構成するAlGaN層の組成は、例えばAl0.2 Ga0.8 Nとする。活性層27を構成するGaInN量子井戸層におけるIn組成は、発光波長により異なるが例えば1%〜40%程度の範囲とする。
【0044】
ここで、これらのレーザ構造を形成する窒化物系III−V族化合物半導体層のうち、p型窒化物系III−V族化合物半導体層、すなわち、p型AlGaNキャップ層28、p型GaN光導波層29、p型AlGaNクラッド層30およびp型GaNコンタクト層31の成長は、p型不純物に加えて同時に酸素(O)をドープして成長を行う。この際、Oのドーピングは、これらのp型窒化物系III−V族化合物半導体層の成長中に、例えば、MOCVD装置の反応管11内の残留酸素や、原料ガス、ドーパントガスおよびキャリアガスなどに不純物として含まれる酸素を成長層に取り込ませることにより行い、ドープされるOの濃度の制御はV/III比を制御することにより行う。なお、成長層中のO濃度をV/III比によって制御する場合は、V/III比が小さいほど、成長層にOが多く取り込まれる(O濃度が高くなる)。この第1の実施形態においては、これらのp型窒化物系III−V族化合物半導体層のうちの少なくとも1層、例えば、特にキャリア濃度を高くし、低抵抗化することが望ましいp型GaNコンタクト層31については、V/III比を6000以下、好適には5000以下(図4に示すMOCVD装置を用いて常圧MOCVD法により成長を行う場合)にして成長を行う。このとき、V/III比は、例えば、III族元素の原料の供給量のみを変化させることにより制御する。
【0045】
また、このとき、少なくともこのp型GaNコンタクト層31については、p型不純物濃度の1%以上、1×1022/cm3 以下の濃度にOがドーピングされるようにする。さらに、少なくともこのp型GaNコンタクト層31を成長させる際のV/III比については、好適には、活性層27に隣接するp型窒化物系III−V族化合物半導体層または活性層27近傍のp型窒化物系III−V族化合物半導体層、具体的には、p型AlGaNキャップ層28またはp型GaN光導波層29を成長させる際のV/III比の1/2程度またはそれ以下とする。
【0046】
これらのレーザ構造を形成する各窒化物系III−V族化合物半導体層は、具体的には、一例として次のような成長条件で成長させる。なお、以下に挙げる成長条件のうち、V/III比の値は、図4に示すMOCVD装置を用いて常圧MOCVD法により成長を行う場合の値である。
【0047】
GaNバッファ層22およびGaNバッファ層23の成長は、III族元素であるGaの原料としてTMGaを、V族元素であるNの原料としてNH3 を用い、V/III比を10000にして行う。これらのGaNバッファ層22およびGaNバッファ層23の厚さは、それぞれ30nmおよび1μmとする。
【0048】
n型GaNコンタクト層24の成長は、III族元素であるGaの原料としてTMGaを、V族元素であるNの原料としてNH3 を、n型不純物のドーパントとしてモノシラン(SiH4 )用い、V/III比を10000にして行う。このn型GaNコンタクト層24にはn型不純物としてのSiを5×1018/cm3 程度ドープする。このn型GaNコンタクト層24の厚さは2μmとする。
【0049】
n型AlGaNクラッド層25の成長は、III族元素であるAlの原料としてトリメチルアルミニウム(TMAl)を、III族元素であるGaの原料としてTMGaを、V族元素であるNの原料としてNH3 を、n型不純物のドーパントとしてSiH4 を用い、V/III比を10000にして行う。このn型AlGaNクラッド層25にはn型不純物としてのSiを5×1018/cm3 程度ドープする。このn型AlGaNクラッド層25の厚さは1.2μmとする。
【0050】
n型GaN光導波層26の成長は、III族元素であるGaの原料としてTMGaを、V族元素であるNの原料としてNH3 を、n型不純物のドーパントとしてSiH4 を用い、V/III比を10000にして行う。このn型GaN光導波層26にはn型不純物としてのSiを5×1018/cm3 程度ドープする。このn型GaN光導波層26の厚さは100nmとする。
【0051】
GaInN/GaN多重量子井戸構造の活性層27の成長は、GaInN量子井戸層については、III族元素であるGaの原料としてTMGaを、III族元素であるInの原料としてトリメチルインジウム(TMIn)を、V族元素であるNの原料としてNH3 を用い、V/III比を10000にして行い、GaN障壁層については、III族元素であるGaの原料としてTMGaを、V族元素であるNの原料としてNH3 を用い、V/III比を10000にして行う。この活性層27の厚さは、GaInN量子井戸層については3nm、GaN障壁層については6nmとする。
【0052】
p型AlGaNキャップ層28の成長は、III族元素であるAlの原料としてTMAlを、III族元素であるGaの原料としてTMGaを、V族元素であるNの原料としてNH3 を、p型不純物のドーパントとして(MeCp)2 Mgを用い、V/III比を10000にして行う。このp型AlGaNキャップ層28にはp型不純物としてのMgを1×1019/cm3 程度ドープし、酸素を1×1017/cm3 程度ドープする。このp型AlGaNキャップ層28の厚さは10nmとする。
【0053】
p型GaN光導波層29の成長は、III族元素であるAlの原料としてTMAlを、III族元素であるGaの原料としてTMGaを、V族元素であるNの原料としてNH3 を、p型不純物のドーパントとして(MeCp)2 Mgを用い、V/III比を10000にして行う。このp型GaN光導波層29にはp型不純物としてのMgを1×1019/cm3 程度ドープし、Oを1×1017/cm3 程度ドープする。このp型GaN光導波層29の厚さは100nmとする。
【0054】
p型AlGaNクラッド層30の成長は、III族元素であるAlの原料としてTMAlを、III族元素であるGaの原料としてTMGaを、V族元素であるNの原料としてNH3 を、p型不純物のドーパントとして(MeCp)2 Mgを用い、V/III比を10000にして行う。このp型AlGaNクラッド層30にはp型不純物としてのMgを2×1019/cm3 程度ドープし、Oを1×1017/cm3 程度ドープする。このp型AlGaNクラッド層30の厚さは1.2μmとする。
【0055】
p型GaNコンタクト層31の成長は、III族元素であるGaの原料としてTMGaを、V族元素であるNの原料としてNH3 を、p型不純物のドーパントとして(MeCp)2 Mgを用い、V/III比を4000にして行う。このp型GaNコンタクト層31にはp型不純物としてのMgを5×1019/cm3 程度ドープし、Oを1×1019/cm3 程度ドープする。このp型GaNコンタクト層31の厚さは200nmとする。
【0056】
なお、上述の各窒化物系III−V族化合物半導体層の成長においては、キャリアガスとしてH2 およびN2 の混合ガスを用いる。
【0057】
このように、c面サファイア基板21上にMOCVD法によりレーザ構造を形成する窒化物系III−V族化合物半導体層を成長させた後、これらの層にドープされたn型不純物およびp型不純物の電気的活性化、特に、p型AlGaNキャップ層28、p型GaN光導波層29、p型AlGaNクラッド層30およびp型GaNコンタクト層31にドープされたp型不純物(Mg)の電気的活性化のための熱処理を行う。この熱処理は、不活性ガス雰囲気中で、最終的に製造されるGaN系半導体レーザの光学特性に悪影響を及ぼさない条件で行うことが好ましい。この熱処理条件の一例を挙げると、N2 ガス雰囲気中で、加熱温度を800℃とし、処理時間を10分とする。この熱処理により、p型窒化物系III−V族化合物半導体層中においてMgと結合したHが除去されることにより、Mgの活性化率が向上する。なお、p型不純物の電気的活性化は、上述の熱処理に代えて電子線照射処理により行ってもよい。
【0058】
次に、p型GaNコンタクト層31上に所定のストライプ形状のレジストパターン(図示せず)を形成した後、このレジストパターンをマスクとしてRIE法によりn型GaNコンタクト層24の厚さ方向の途中の深さまでエッチングする。次に、レジストパターンを除去した後、p型GaNコンタクト層31上に例えばNi/Pt/AuまたはNi/Auからなるp側電極32を形成すると共に、エッチングされた部分のn型GaNコンタクト層24上に例えばTi/Al/Pt/Auからなるn側電極33を形成する。この後、上述のようにしてレーザ構造が形成されたc面サファイア基板21をバー状に加工して両共振器端面を形成し、さらに、このバーをチップ化する。以上により、目的とするSCH構造のGaN系半導体レーザが製造される。
【0059】
以上のように、この第1の実施形態によれば、p型窒化物系III−V族化合物半導体層のうち、少なくともp型GaNコンタクト層31の成長時にMgとOとをドープすると共に、V/III比を6000以下にしていることにより、このp型GaNコンタクト層31はキャリア濃度(正孔濃度)、特に室温でのキャリア濃度が高く、したがって低抵抗なp型層となる。このため、このp型GaNコンタクト層31にコンタクトするオーミック電極(p側電極32)の接触抵抗が低くなり、これにより、動作電圧が低減される。これに加えて、p型窒化物系III−V族化合物半導体層の成長時にp型不純物としてのMgに加えて、Oをドープしていることにより、本質的に、これらのp型窒化物系III−V族化合物半導体層のキャリア濃度は従来に比べて向上する。したがって、動作電圧が低く、かつ、低しきい値電流密度で高発光効率のGaN系半導体レーザを実現することができる。
【0060】
次に、この発明の第2の実施形態によるSCH構造のGaN系半導体レーザの製造方法について説明する。
【0061】
この第2の実施形態においては、p型窒化物系III−V族化合物半導体層のうち、少なくとも、V/III比を6000以下にして成長を行うp型GaNコンタクト層31を成長させる際に、不純物ガスとして例えば酸素(O2 )ガスのようなOを含むガスを用いることによりOのドーピングを行う。ここで、不純物ガスとしてO2 ガスを用いる場合は、このO2 ガスを、例えばキャリアガスに追加してMOCVD装置の反応管内に供給する。この場合、キャリアガスとしては、N2 ガスのような不活性ガスを用いる。その他のことは第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0062】
この第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。なお、この第2の実施形態においては、キャリアガスに追加して流すO2 ガスの流量を制御する制御することによっても、O濃度を制御することが可能である。
【0063】
次に、この発明の第3の実施形態によるGaN系発光ダイオードの製造方法について説明する。図6は、この第3の実施形態によるGaN系発光ダイオードの製造方法を説明するための断面図である。この第3の実施形態においては、図4に示すMOCVD装置を用いて発光ダイオード構造を形成する窒化物系III−V族化合物半導体層の成長を行う。
【0064】
図6に示すように、この第3の実施形態においては、まず、c面サファイア基板41を、図4に示すMOCVD装置の反応管11内のサセプタ12上に設置し、例えば1050℃の温度に加熱してその表面をサーマルエッチングすることにより表面清浄化を行った後、このc面サファイア基板41上に、MOCVD法により例えば560℃の温度でGaNバッファ層42を低温成長させる。引き続いてMOCVD法により、このGaNバッファ層42上に、GaNバッファ層43、n型GaNコンタクト層44、GaInN/GaN多重量子井戸構造の活性層45、p型AlGaNキャップ層46、p型GaNクラッド層47およびp型GaNコンタクト層48を順次成長させる。なお、n型GaNコンタクト層44はn型クラッド層としての役割をも有するものである。ここで、GaNバッファ層43、n型GaNコンタクト層44およびp型GaNコンタクト層48の成長温度は1000℃程度とし、Ga1-x Inx N多重量子井戸構造の活性層45、p型AlGaNキャップ層46およびp型GaNコンタクト層47の成長温度は、InNの分解を抑えるために600〜800℃程度とする。
【0065】
p型AlGaNキャップ層46を構成するAlGaN層の組成は、例えばAl0.2 Ga0.8 Nとする。活性層45を構成するGaInN量子井戸層におけるIn組成は、発光波長により異なるが例えば1%〜40%程度の範囲とする。
【0066】
ここで、これらの発光ダイオード構造を形成する窒化物系III−V族化合物半導体層のうち、p型窒化物系III−V族化合物半導体層、すなわち、p型AlGaNキャップ層46、p型GaNクラッド層47およびp型GaNコンタクト層48の成長は、p型不純物に加えて同時に酸素(O)をドープして成長を行う。この際、Oのドーピングは、これらのp型窒化物系III−V族化合物半導体層の成長中に、例えば、MOCVD装置の反応管11内の残留酸素や、原料ガス、ドーパントガスおよびキャリアガスなどに不純物として含まれる酸素を成長層に取り込ませることにより行い、ドープされるOの濃度の制御はV/III比を制御することにより行う。なお、成長層中のO濃度をV/III比によって制御する場合は、V/III比が小さいほど、成長層にOが多く取り込まれる(O濃度が高くなる)。したがって、これらのp型窒化物系III−V族化合物半導体層のうちの少なくとも1層、例えば、特にキャリア濃度を高くし、低抵抗化することが望ましいp型GaNコンタクト層48については、V/III比を6000以下、好適には5000以下(図4に示すMOCVD装置を用いて常圧MOCVD法により成長を行う場合)にして行う。このとき、V/III比は、III族元素の原料の供給量のみを変化させることによって制御する。
【0067】
また、このとき、少なくともこのp型GaNコンタクト層48については、p型不純物濃度の1%以上、1×1022/cm3 以下の濃度にOがドーピングされるようにする。さらに、このp型GaNコンタクト層48を成長させる際のV/III比については、好適には、活性層45に隣接するp型窒化物系III−V族化合物半導体層または活性層45近傍のp型窒化物系III−V族化合物半導体層を成長させる際のV/III比の1/2程度またはそれ以下とする。
【0068】
これらの発光ダイオード構造を形成する各窒化物系III−V族化合物半導体層は、具体的には、一例として次のような成長条件で成長させる。なお、以下に挙げる成長条件のうち、V/III比の値は、図4に示すMOCVD装置を用いて常圧MOCVD法により成長を行う場合の値である。
【0069】
GaNバッファ層42およびGaNバッファ層43の成長は、III族元素であるGaの原料としてTMGaを、V族元素であるNの原料としてNH3 を用い、V/III比を10000にして行う。これらのGaNバッファ層42およびGaNバッファ層43の厚さは、それぞれ30nmおよび1μmとする。
【0070】
n型GaNコンタクト層44の成長は、III族元素であるGaの原料としてTMGaを、V族元素であるNの原料としてNH3 を、n型不純物のドーパントとしてSiH4 を用い、V/III比を10000にして行う。このn型GaNコンタクト層44にはn型不純物としてのSiを5×1018/cm3 程度ドープする。このn型GaNコンタクト層44の厚さは3μmとする。
【0071】
GaInN/GaN多重量子井戸構造の活性層45の成長は、GaInN量子井戸層については、III族元素であるGaの原料としてTMGaを、III族元素であるInの原料としてTMInを、V族元素であるNの原料としてNH3 を用い、V/III比を10000にして行い、GaN障壁層については、III族元素であるGaの原料としてTMGaを、V族元素であるNの原料としてNH3 を用い、V/III比を10000にして行う。この活性層45の厚さは、GaInN量子井戸層については3nm、GaN障壁層については6nmとする。
【0072】
p型AlGaNキャップ層46の成長は、III族元素であるAlの原料としてTMAlを、III族元素であるGaの原料としてTMGaを、V族元素であるNの原料としてNH3 を、p型不純物のドーパントとして(MeCp)2 Mgを用い、V/III比を10000にして行う。このp型AlGaNキャップ層46にはp型不純物としてのMgを1×1019/cm3 程度ドープし、Oを1×1017/cm3 程度ドープする。このp型AlGaNキャップ層46の厚さは10nmとする。
【0073】
p型GaNクラッド層47の成長は、III族元素であるGaの原料としてTMGaを、V族元素であるNの原料としてNH3 を、p型不純物のドーパントとして(MeCp)2 Mgを用い、V/III比を10000にして行う。このp型AlGaNクラッド層47にはp型不純物としてのMgを2×1019/cm3 程度ドープし、Oを1×1017/cm3 程度ドープする。このp型AlGaNクラッド層47の厚さは1.2μmとする。
【0074】
p型GaNコンタクト層48の成長は、III族元素であるGaの原料としてTMGaを、V族元素であるNの原料としてNH3 を、p型不純物のドーパントとして(MeCp)2 Mgを用い、V/III比を4000にして行う。このp型GaNコンタクト層48にはp型不純物としてのMgを5×1019/cm3 程度ドープし、Oを1×1019/cm3 程度ドープする。このp型GaNコンタクト層48の厚さは200nmとする。
【0075】
このように、c面サファイア基板41上にMOCVD法により発光ダイオード構造を形成する窒化物系III−V族化合物半導体層を成長させた後、これらの層にドープされたn型不純物およびp型不純物の電気的活性化、特に、p型AlGaNキャップ層46、p型GaNクラッド層47およびp型GaNコンタクト層48にドープされたp型不純物(Mg)の電気的活性化のための熱処理を行う。この熱処理は、例えば第1の実施形態におけると同様の条件で行う。なお、p型不純物の電気的活性化は、上述の熱処理に代えて電子線照射処理により行ってもよい。
【0076】
次に、p型GaNコンタクト層48上に所定のストライプ形状のレジストパターン(図示せず)を形成した後、このレジストパターンをマスクとしてRIE法によりn型GaNコンタクト層44の厚さ方向の途中の深さまでエッチングする。次に、レジストパターンを除去した後、p型GaNコンタクト層48上に例えばNi/Pt/AuまたはNi/Auからなるp側電極49を形成すると共に、エッチングされた部分のn型GaNコンタクト層44上に例えばTi/Al/Pt/Auからなるn側電極40を形成する。この後、上述のようにして発光ダイオード構造が形成されたc面サファイア基板41をバー状に加工して両共振器端面を形成し、さらに、このバーをチップ化する。以上により、目的とするGaN系発光ダイオードが製造される。
【0077】
この第3の実施形態によれば、GaN系発光ダイオードにおいて、第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0078】
次に、この発明の第4の実施形態によるGaN系発光ダイオードの製造方法について説明する。
【0079】
この第4の実施形態においては、p型窒化物系III−V族化合物半導体層のうち、少なくとも、V/III比を6000以下にして成長を行うp型GaNコンタクト層48を成長させる際に、不純物ガスとして例えば酸素(O2 )ガスのようなOを含むガスを用いることによりOのドーピングを行う。ここで、不純物ガスとしてO2 ガスを用いる場合は、このO2 ガスを、例えばキャリアガスに追加してMOCVD装置の反応管内に供給する。この場合、キャリアガスとしては、N2 ガスのような不活性ガスを用いる。その他のことは第3の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0080】
この第4の実施形態によれば、第3の実施形態と同様な効果を得ることができる。なお、この第4の実施形態においては、キャリアガスに追加して流すO2 ガスの流量を制御する制御することによっても、O濃度を制御することが可能である。
【0081】
以上この発明の実施形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、上述の第1〜第4の実施形態において挙げた数値、構造、原料、プロセスなどはあくまでも例に過ぎず、必要に応じて、これらと異なる数値、構造、原料、プロセスなどを用いてもよい。
【0082】
また、上述の第1〜第4の実施形態において、レーザ構造または発光ダイオード構造を形成する窒化物系III−V族化合物半導体層の成長に用いる図4に示すMOCVD装置は、一例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成のMOCVD装置を用いてもよい。具体的には、図4にMOCVD装置においては副流を基板に対してほぼ平行に流すようにしているが、この副流は基板に対して45°以下の角度で流すようにしてもよい。
【0083】
また、上述の第1〜第4の実施形態においては、p型窒化物系III−V族化合物半導体層のうちp型GaNコンタクト層31,48を成長させる際に、V/III比を6000以下にしているが、場合によっては、p型GaNコンタクト層31,48以外のp型窒化物系III−V族化合物半導体層を成長させる際にも、V/III比を6000以下にしてもよい。ただし、この場合、良好な光学特性を得る観点から、V/III比を6000以下にして成長させるp型窒化物系III−V族化合物半導体層は、活性層から所定の距離だけ離れた位置、例えば活性層から300nm程度離れた位置に形成することが好ましい。一例を挙げると、例えば、第1および第2の実施形態においては、p型AlGaNクラッド層30を成長させる際に、V/III比を例えば10000にしてp型AlGaNクラッド層30を300nm程度成長させた後、V/III比を6000以下、好適には5000以下、例えば4000にして残りのp型AlGaNクラッド層30を成長させてもよい。この場合、活性層27近傍のp型AlGaNクラッド層30ではO濃度が1×1017/cm3 程度と低く、残りの部分のp型AlGaNクラッド層30ではO濃度が1×1019/cm3 程度と高く、高キャリア濃度となるため、光学特性に悪影響を及ぼすことなく、p型AlGaNクラッド層30を低抵抗化することができる。
【0084】
また、上述の第1〜第4の実施形態においては、この発明を窒化物系III−V族化合物半導体を用いた半導体発光素子の製造に適用した場合について説明したが、この発明は、例えば、窒化物系III−V族化合物半導体を用いたFETなどのキャリア走行素子の製造に用いることも可能である。
【0085】
【発明の効果】
以上、この発明による窒化物系III−V族化合物半導体層の成長方法によれば、窒化物系III−V族化合物半導体層の成長時にp型不純物と酸素とをドープすると共に、V/III比を6000以下にして窒化物系III−V族化合物半導体層を成長させるようにしていることにより、従来に比べてキャリア濃度が高く、低抵抗のp型窒化物系III−V族化合物半導体層を得ることができる。
【0086】
この発明による半導体装置の製造方法および半導体発光素子の製造方法によれば、p型窒化物系III−V族化合物半導体層を成長させる場合に、この発明による窒化物系III−V族化合物半導体層の成長方法を適用していることにより、従来に比べてキャリア濃度が高く、低抵抗のp型窒化物系III−V族化合物半導体層を得ることができ、特性が良好な半導体装置を製造することができる。
【0087】
この発明による半導体発光素子の製造方法によれば、p型半導体層を構成する少なくも1層のp型窒化物系III−V族化合物半導体層を成長させる場合に、この発明による窒化物系III−V族化合物半導体層の成長方法を適用していることにより、従来に比べてキャリア濃度が高く、低抵抗のp型窒化物系III−V族化合物半導体層を得ることができ、動作電圧が低く、かつ、高発光効率の半導体発光素子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】V/III比を変えてMOCVD法によりMgドープGaN層を成長させてその酸素濃度を測定した結果を示す略線図である。
【図2】V/III比を変えてMOCVD法によりMgドープGaN層を成長させてその室温でのキャリア濃度を測定した結果を示す略線図である。
【図3】図1および図2に示す実験に用いた試料を示す断面図である。
【図4】この発明の第1の実施形態によるSCH構造のGaN系半導体レーザの製造方法において、レーザ構造を形成する窒化物系III−V族化合物半導体層の成長に用いられるMOCVD装置の構成例を示す略線図である。
【図5】この発明の第1の実施形態によるSCH構造のGaN系半導体レーザの製造方法を説明するための断面図である。
【図6】この発明の第3の実施形態によるGaN系発光ダイオードの製造方法を説明するための断面図である。
【符号の説明】
21,41・・・c面サファイア基板、22,23,42,43・・・GaNバッファ層、24、44・・・n型GaNコンタクト層、25・・・n型AlGaNクラッド層、26・・・n型GaN光導波層、27,45・・・活性層、28,46・・・p型AlGaNキャップ層、29・・・p型GaN光導波層、30・・・p型AlGaNクラッド層、31,48・・・p型GaNコンタクト層、32,49・・・p側電極、33,50・・・n側電極、47・・・p型GaNクラッド層
Claims (8)
- n型クラッド層と、
上記n型クラッド層上の活性層と、
上記活性層上のp型キャップ層と、
上記p型キャップ層上のp型クラッド層と、
上記p型クラッド層上のp型コンタクト層とを有し、
上記n型クラッド層、上記活性層、上記p型キャップ層、上記p型クラッド層および上記p型コンタクト層は窒化物系III−V族化合物半導体層からなる半導体発光素子の製造方法において、
上記n型クラッド層、上記活性層、上記p型キャップ層、上記p型クラッド層および上記p型コンタクト層を化学気相成長法により成長させ、
上記p型キャップ層、上記p型クラッド層および上記p型コンタクト層を成長させる際に、p型不純物と酸素とをドープし、
上記p型コンタクト層を成長させる際に、p型不純物と酸素とをドープすると共に、上記窒化物系III−V族化合物半導体層を構成するIII族元素の原料の供給量に対する上記窒化物系III−V族化合物半導体層を構成するV族元素の原料の供給量のモル比を6000以下で、かつ少なくとも上記p型キャップ層を成長させる際の上記モル比の1/2以下にするようにした
ことを特徴とする半導体発光素子の製造方法。 - 上記p型キャップ層と上記p型クラッド層との間にp型光導波層を有し、上記p型コンタクト層を成長させる際に、p型不純物と酸素とをドープすると共に、上記窒化物系III−V族化合物半導体層を構成するIII族元素の原料の供給量に対する上記窒化物系III−V族化合物半導体層を構成するV族元素の原料の供給量のモル比を6000以下で、かつ上記p型キャップ層および上記p型光導波層を成長させる際の上記モル比の1/2以下にすることを特徴とする請求項1記載の半導体発光素子の製造方法。
- 上記p型コンタクト層がp型GaNコンタクト層であることを特徴とする請求項1記載の半導体発光素子の製造方法。
- 上記モル比を5000以下にして上記p型コンタクト層を成長させるようにしたことを特徴とする請求項1記載の半導体発光素子の製造方法。
- 上記化学気相成長を、第1のガス導入部および第2のガス導入部を備えた反応管を有し、かつ、上記反応管内に上記第1のガス導入部を通じて導入する主流を上記反応管内に設置した基板に対してほぼ平行に流すと共に、上記反応管内に上記第2のガス導入部を通じて導入する副流を上記基板に対して45度以下の角度で流すようにした気相成長装置を用いて行うようにしたことを特徴とする請求項1記載の半導体発光素子の製造方法。
- 上記p型コンタクト層中の酸素濃度が、上記p型コンタクト層中のp型不純物濃度の1%以上、1×10 22 /cm 3 以下であることを特徴とする請求項1記載の半導体発光素子の製造方法。
- 上記p型コンタクト層の成長後、上記p型コンタクト層中の上記p型不純物の活性化を行うことを特徴とする請求項1記載の半導体発光素子の製造方法。
- 上記p型不純物の活性化を、上記p型コンタクト層中の水素を除去することにより行うことを特徴とする請求項7記載の半導体発光素子の製造方法。
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