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JP4308368B2 - 無端状金属ベルトの製造方法 - Google Patents
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、無段変速機の動力伝達ベルトに用いられる無端状金属ベルトの製造方法に関し、さらに詳しくはガス軟窒化処理を用いる前記無端状金属ベルトの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
V溝間隔を変換できる1対のプーリと、両プーリ間に張設された動力伝達ベルトからなる無段変速機が知られている。前記無段変速機では、前記動力伝達ベルトとして複数の無端状金属ベルトを重ね合わせた状態で保持したものが用いられている。
【0003】
前記無端状金属ベルトは、前記プーリ間を走行するときには直線状態を呈する一方、前記プーリに沿って走行するときには湾曲状態を呈し、前記直線状態と湾曲状態との繰り返しによる過酷な曲げ変形が加えられる。そこで、前記無端状金属ベルトは、前記過酷な曲げ変形に耐える強度を備えることが必要とされる。
【0004】
前記過酷な曲げ変形に耐える強度を備える材料としてマルエージング鋼が知られている。前記マルエージング鋼は、17〜19%のNiの他、Co,Mo,Tiを含む低炭素鋼であり、溶体化後、適温に加熱することによりマルテンサイト状態において時効硬化を生じ、高強度、高靱性を兼ね備える超強力鋼であるので、前記無端状金属ベルトに賞用される。
【0005】
前記無端状金属ベルトは、前記マルエージング鋼の薄板の端部同士を溶接してリング状に形成し、所定の長さに圧延した後、時効処理を施して時効硬度を発現させることにより形成されている。しかし、前記動力伝達ベルト用無端状金属ベルトに用いる場合には、さらに、耐摩耗性、耐疲労強度を備えることが望まれるので、前記マルエージング鋼に表面硬化処理を施すことが行われている。
【0006】
前記時効処理後の表面硬化処理として、例えばガス軟窒化処理により、前記マルエージング鋼の表層部に窒化層を形成することが行われている。前記ガス軟窒化処理は、前記無端状金属ベルトを、RXガスとアンモニアガスとの混合雰囲気下に加熱することにより行われる。前記RXガスは、メタン、エタン、プロパン等に空気を混合してNi触媒を用いた吸熱型変成炉中で変成したガスであり、CO、H2 、N2 を主成分とし、微量のCO2 等を含む。
【0007】
前記マルエージング鋼は、前記のように低炭素鋼でありしかも多量のNiを含むので、純粋のアンモニアのみによるガス窒化処理によっては窒化が不安定である。しかし、無端状金属ベルトは、前記RXガスとアンモニアガスとの混合雰囲気下に加熱することにより、前記RXガス中のCOの分解により生じるCが前記マルエージング鋼の表層部に吸着し、浸透する浸炭を生じる。この結果、前記マルエージング鋼の組織中に前記Cを核としてセメンタイト(Fe3 C)が形成され、アンモニアガスによる前記無端状金属ベルトの窒化を容易にすることができる。
【0008】
従来、前記無端状金属ベルトのガス軟窒化処理は、露点0〜+2℃の範囲のRXガスは一般にCO24%、H31%、CO0.18〜0.25%、残部Nからなり、そのRXガスとアンモニアガスとをRXガス/アンモニアガスの体積比0.6〜1.0の範囲、例えば0.7で混合した混合雰囲気中、570〜580℃の範囲の温度に1〜3時間保持することにより行われている。
【0009】
次に、前記ガス軟窒化に関与する化学反応を示す。
【0010】
【化1】
Figure 0004308368
【0011】
前記式(1)〜(3)は、いずれも平衡状態を示しており、ギブスの自由エネルギー(ΔG)の値がマイナスであれば右に、プラスであればに左に反応が進み易い。各反応のΔGを図2に示す。
【0012】
前記式(1)はブルドワ反応と呼ばれており、前記570〜580℃の範囲の温度では、ΔGの値がプラスであるために、反応が左に進み易くCを生成し、このCが前記マルエージング鋼(無端状金属ベルト)の表層部に吸着する。前記式(2)はアンモニア反応と呼ばれており、前記570〜580℃の範囲の温度では、ΔGの値がマイナスであるために、反応が右に進み易く、アンモニアが分解してNを生成する。この結果、前記マルエージング鋼の組織中に前記Cを核として形成されるセメンタイト(Fe3 C)が、前記Nを取り込んで、安定な窒化層が形成される。
【0013】
また、式(3)は水性ガス反応と呼ばれており、反応が右に進むと、水を生成して前記窒化層の形成を阻害する。式(3)はRXガス中のH2 が多いと、反応が右に進み易いので、RXガスの組成に占めるH2 の量に注意することが必要である。
【0014】
かかる従来のガス軟窒化処理によれば、前記無端状金属ベルトの表面に前記窒化層を形成することにより前記無端状金属ベルトを硬化させ、耐摩耗性及び耐疲労強度を向上させることができる。
【0015】
しかしながら、前記従来のガス軟窒化では、前記無端状金属ベルトの表面に過剰のCが吸着して煤が付着するために、窒化層が均一に形成されず、所要の耐疲労強度が得られにくいとの不都合がある。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる不都合を解消して、優れた耐疲労強度を得ることができる無端状金属ベルトの製造方法を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記従来技術の問題を解決するために種々検討を行った。
【0018】
まず、前記無端状金属ベルトのガス軟窒化処理において、前記無端状金属ベルトの表面に吸着するCの量を低減するために、アンモニアガスに対するRXガスの体積比(RXガス/アンモニアガス)を小さくすることが考えられる。ところが、この様にすると、相対的にガス軟窒化処理においてアンモニアガスの比率が高くなり、前記窒化層の形成に伴って前記無端状金属ベルトの表面に化合物層が形成されるとの問題がある。前記化合物層は、前記無端状金属ベルトに亀裂等の欠陥を発生させる虞がある。
【0019】
そこで、次に、前記化合物層の形成を防止する技術について検討したところ、前記体積比(RXガス/アンモニアガス)を小さくすると共に、前記ガス軟窒化処理の温度を従来の570〜580℃から480〜520℃と低くすればよいことが判明した。しかし、前記480〜520℃の範囲の温度では、アンモニアガスの窒化能力が低減する上、前記体積比(RXガス/アンモニアガス)を小さくしてもなお前記無端状金属ベルトの表面のCが過剰になって、窒化層が均一に形成されないとの問題がある。
【0020】
前記無端状金属ベルトの表面のCについて式(1)を勘案すると、図2から、前記480〜520℃の範囲の温度では、ΔGの値がプラスであり、しかも絶対値が大であるため、左に進む反応が促進され、前記の様に前記体積比を小さくしても、前記Cが過剰に生成するものと考えられる。
【0021】
本発明者らは、前記知見に基づいてさらに検討を重ねた結果、RXガスの露点を高くしてCOを増大させることにより、式(1)の反応が左に進んでCを生成することを抑制し、前記無端状金属ベルトの表層部に吸着するCを低減することができることを見出し、本発明に到達した。
【0022】
即ち、本発明の無端状金属ベルトの製造方法は、マルエージング鋼の鋼板の端部同士を溶接してリング状に形成した後、所定の長さに圧延して得られた無端状金属ベルトにガス軟窒化処理を施して、無段変速機の動力伝達ベルトに用いられる無端状金属ベルトを製造する方法において、前記無端状金属ベルトを、アンモニアガスに対して露点+4℃のRXガスを体積比0.05〜0.5の範囲で混合した混合雰囲気中、480〜520℃の範囲の温度下、45〜60分間の範囲でガス軟窒化処理することを特徴とする。
【0023】
本発明の製造方法によれば、前記条件でガス軟窒化処理を行うことにより、前記式(1)のブルドワ反応においてCの過剰な生成が抑制されるので、式(2)のアンモニア反応による前記無端状金属ベルトを窒化する能力が高められる。この結果、前記無端状金属ベルトの表面に均一な窒化層を形成することができ、優れた耐疲労強度を得ることができる。
【0024】
前記RXガスは、露点の値によりCOの含有量が異なり、露点が+4℃未満では、前記式(1)においてCの過剰な生成を十分に抑制することができない。一方、露点が+4℃を超えると、前記式(3)の水性ガス反応が盛んになり、該反応により生成する水が配管内に結露するので、操業上好ましくない。また、C濃度を抑制させる為のCO(酸化性ガス)の増加、露点(HO)の増加は、マルエージング鋼に含有されるTi及びMoの最表面での酸化を発生させる為に、表面硬度低下、窒化層深さのバラツキが確認され、好ましくない。
【0025】
前記アンモニアガスに対する前記RXガスの体積比(RXガス/アンモニアガス)が0.05未満であるときには、前記無端状金属ベルトの表面に対する浸炭が不十分になり、窒化処理に長時間を要する。また、前記無端状金属ベルトの表面に化合物層が形成されやすくなる。
【0026】
一方、前記アンモニアガスに対する前記RXガスの体積比が0.5を超えると、前記無端状金属ベルトの表面及びガス軟窒化処理を行う装置内に煤が付着しやすくなる。また、前記RXガスの体積比が0.5を超えると混合雰囲気中のH2 の量が増加し、窒化能力が低減する。
【0027】
前記ガス軟窒化処理の処理温度が480℃未満であるときには、前記アンモニアガスによる窒化能力が十分に得られない。また、前記処理温度が520℃を超えると、前記化合物層が形成される。
【0028】
また、前記ガス軟窒化処理により形成される窒化層は、前記無端状金属ベルトの最表層部で最も硬度が大であり、前記無端状金属ベルトの内部に向かうほど硬度が小になる硬度勾配を形成する。前記無段階変速機の動力伝達ベルトに好適な耐摩耗性及び耐疲労強度を得るために、前記無端状金属ベルトは前記硬度勾配が高からず低からず、中程度となることが望まれる。
【0029】
前記ガス軟窒化処理では、処理温度が45分間未満では前記硬度勾配が低く緩やかになり、60分間を超えると前記硬度勾配が高く急峻になって、いずれも前記無段階変速機の動力伝達ベルトに好適な耐摩耗性及び耐疲労強度が得られない。
【0030】
【発明の実施の形態】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。図1は本実施形態の製造方法により得られた無端状金属ベルトの耐疲労強度を示すグラフである。
【0031】
本実施形態に用いるマルエージング鋼は、Cが0.03%以下、Siが0.10%以下、Mnが0.10%以下、Pが0.01%以下、Sが0.01%以下の低炭素鋼であり、18〜19%のNi、4.7〜5.2%のMo、0.05〜0.15%のAl、0.50〜0.70%のTi、8.5〜9.5%のCoを含む18%のNi鋼である。
【0032】
本実施形態の製造方法では、まず、前記組成を有するマルエージング鋼の薄板をベンディングしてループ化したのち、端部を溶接して円筒状体を形成する。次に、これを真空炉中、820〜830℃に20〜60分間保持して溶体化処理する。前記溶体化処理により、結晶を再配列し、溶接歪を除去することができる。
【0033】
次に、前記円筒状体を所定の幅に切断し、リング状体を形成する。前記リング状体は前記切断により、その端部にエッジが立っているので、バレル研磨により面取りしたのち、圧下率40〜50%で冷間圧延し、無端状金属ベルトを形成する。
【0034】
次に、前記無端状金属ベルトを熱処理装置に収容して、時効処理及びガス軟窒化処理を行う。前記熱処理装置は、時効処理室とガス軟窒化処理室とが直線的に配置されて開閉自在の扉を介して連通される様になっていてもよく、時効処理室とガス軟窒化処理室とが全く分離して備えられていてもよい。また、時効処理とガス軟窒化処理とを1室で逐次行うようにしてもよい。
【0035】
本実施形態では、まず480〜520℃の範囲の温度で、60分間未満の時効処理行い、次いで480〜520℃の範囲の温度で、45〜60分間のガス軟窒化処理を行う。
【0036】
本実施形態のガス軟窒化処理では、露点が+4℃のRXガスを用いる。前記RXガスの組成は、露点が+4℃の場合にはCO約24%、H約31%、CO0.30〜0.34%で、残部がNである。
【0037】
本実施形態のガス軟窒化処理は、アンモニアガスに対する前記RXガスの体積比(RXガス/アンモニアガス)が0.05〜0.5である雰囲気下に行う。
【0038】
次に、露点がそれぞれ+2℃、+4℃の2種のRXガスを用い、アンモニアガスに対するRXガスの体積比(RXガス/アンモニアガス)0.14、処理温度500℃、処理時間60分の条件でガス軟窒化処理を行って、無端状金属ベルトを製造した。前記RXガスの露点と無端状金属ベルトの物性との関係を表1に示す。表1において、無端状金属ベルト表面のC及びNの濃度は、オージエ分析により表面から深さ1.3μmの位置の部分について測定した。また、窒化層の厚さについては目視により測定した。
【0039】
【表1】
Figure 0004308368
【0040】
表1から、本実施形態のように露点+4℃のRXガスを用いることにより、従来の露点+2℃のRXガスを用いる場合に比較して、無端状金属ベルトの表面のC濃度が低くなり、N濃度が高くなることが明らかである。この結果、本実施形態で得られた無端状金属ベルトは、従来の露点+2℃のRXガスを用いて得られたものに比較して、表面硬度及び圧縮残留応力が大であり、耐摩耗性及び耐疲労強度に優れていることが明らかである。
【0041】
次に、表1の場合と同一条件でガス軟窒化処理して製造した無端状金属ベルトを可動プーリと固定プーリとの間に巻き回し、前記可動プーリに4000Nの引張荷重を掛けて回転させた。このとき、前記RXガスの露点と無端状金属ベルトが破損するまでの回転回数との関係を図1に示す。
【0042】
図1から、本実施形態のように露点+4℃のRXガスを用いる場合には無端状金属ベルトが破損するまでの回転回数を10回以上とすることができ、従来の露点+2℃のRXガスを用いる場合の10回に比較して、格段に優れた耐疲労強度が得られることが明らかである。
【0043】
次に、露点+4℃のRXガスを用い、アンモニアガスに対する前記RXガスの体積比(RXガス/アンモニアガス)を変えて、処理温度500℃、処理時間60分の条件でガス軟窒化処理を行い、無端状金属ベルトを製造した。アンモニアガスに対する前記RXガスの体積比(RXガス/アンモニアガス)と無端状金属ベルトの物性との関係を表2に示す。表2において、窒化層の厚さについては目視により測定した。
【0044】
【表2】
Figure 0004308368
【0045】
表2から、本実施形態のようにアンモニアガスに対する前記RXガスの体積比(RXガス/アンモニアガス)を0.05〜0.5とする(例として0.2の場合を示す)ことにより、前記範囲を超える0.7の場合(従来例)よりも無端状金属ベルトの表面の硬度が大になることが明らかである。
【0046】
また、表2から、本実施形態の0.05〜0.5の範囲未満の0の場合(アンモニアガスのみを用いるガス窒化処理)によれば、本実施形態よりも無端状金属ベルトの表面の硬度は大になるものの、無端状金属ベルトの表面に化合物層が形成されるとともに、本実施形態の半分の厚さの窒化層の形成に本実施形態の2倍の時間を要することが明らかである。
【0047】
次に、露点+4℃のRXガスを用い、アンモニアガスに対する前記RXガスの体積比(RXガス/アンモニアガス)を0.14として、処理温度及び処理時間を変えてガス軟窒化処理を行い、無端状金属ベルトを製造した。ガス軟窒化処理の時間及び温度と無端状金属ベルトに形成される硬度勾配の状態との関係を表3に示す。表3において、AAは無段階変速機の動力伝達ベルトに最適な硬度勾配、BBは適用可能な硬度勾配、CCは勾配が低く不適当な硬度勾配、DDは勾配が高く不適当な硬度勾配をそれぞれ示す。
【0048】
【表3】
Figure 0004308368
【0049】
表3から、ガス軟窒化処理の処理温度を480〜520℃の範囲とし、加熱時間を45〜60分の範囲とすることにより、無段階変速機の動力伝達ベルトに最適な硬度勾配を得ることができることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 RXガスの露点と無端状金属ベルトの耐疲労強度との関係を示すグラフ。
【図2】 ガス軟窒化処理に関する反応のギブスの自由エネルギーを示すグラフ。
【符号の説明】
符号なし。

Claims (1)

  1. マルエージング鋼の鋼板の端部同士を溶接してリング状に形成した後、所定の長さに圧延して得られた無端状金属ベルトにガス軟窒化処理を施して、無段変速機の動力伝達ベルトに用いられる無端状金属ベルトを製造する方法において、前記無端状金属ベルトを、アンモニアガスに対して露点+4℃のRXガスを体積比0.05〜0.5の範囲で混合した混合雰囲気中、480〜520℃の範囲の温度下、45〜60分間の範囲でガス軟窒化処理することを特徴とする無端状金属ベルトの製造方法。
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