JP4314541B2 - 希土類永久磁石の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、希土類磁石用磁性粉末を含む溶媒スラリーを成形キャビティに供給し、磁場中で加圧成形する工程を含む希土類永久磁石の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
R−T−B系(RはYを含む希土類元素のうち1種または2種以上、TはFe又はFeとCo)希土類永久磁石は高磁気特性を得られる磁石として知られており、原料合金を溶解し、鋳造して得られたインゴットを粉砕、成形、焼結して製造される。原料粉末である希土類永久磁石用粉末は、微粉砕後化学的に非常に活性になるため、酸化を防止することが高い磁気特性を得る上で重要であるが、乾式成形法によって製造した場合には、焼結体の酸素含有量は少なくとも0.4%である。これに対し、本出願人により開発された原料粉末と鉱物油、合成油あるいは植物油からなる溶媒との混合物(以下、スラリーと称す)を作成し、スラリー濃度を調整後、金型のキャビティに供給し、混合物中の溶媒を濾過しながら加圧成形を行う湿式成形法によって製造した場合には、焼結体の酸素含有量を0.25%以下にすることが可能であり、適切な原料組成を選定することで、高い保磁力iHcを維持しつつ、高い残留磁束密度Brと最大エネルギー積(BH)maxを得ることができる。
【0003】
希土類永久磁石の湿式成形装置として、特開平9−94814号に開示されているものがある。この装置は図3に示すように、ダイス51の上面に、配管58を介してスラリー定量供給手段50に連結された供給ノズル56と空気抜き(図示せず)を有しかつ駆動手段54で摺動される供給ヘッド55を配設したものである。この装置によれば、ダイス51と下パンチ52とで所定寸法のキャビティ53を形成し、供給ヘッド55を供給ノズル56がキャビティ53の開口部中央位置にくるように移動し、次いで定量供給手段50を作動して、容器57に収容されたスラリーをノズル56からキャビティ53上方より供給し、供給終了後供給ヘッド55をダイス51上から退避させるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記装置では、キャビティを満たしうる量のスラリーを供給しても、キャビティの大きさや形状によっては、成形体の重量に10%程度のバラツキが発生してしまう。これは、スラリーに空気が巻込まれたり、あるいはキャビティ内に空気が残存することによるもので、スラリーがキャビティの隅々まで十分充填されないためである。特に、加圧方向に直交する面の寸法が小さい薄肉品であったり、あるいはリング状やアーク状の異形品に対応する形状を有し、かつ加圧方向深さが深いようなキャビティにおいてはこの傾向が大きい。しかも、成形時間を短縮するためにスラリーの供給速度を早くしようとすると一層大きな問題となる。
また、生産効率を高めるために、1つの金型に複数のキャビティを形成した、いわゆるマルチキャビティにおいて、単一の定量供給手段から分岐された複数の供給ノズルから、マルチキャビティに同時にスラリーを供給する構造とした場合、各キャビティ間にスラリー供給量のばらつきが生じるという問題がある。これは、供給ノズル間ではどうしても供給速度が異なり、早く満杯になるキャビティが出現するが、引続きスラリーは空気抜き用隙間から漏出してしまい、他のキャビティへの供給に供さないためである。
従って本発明の目的は、マルチキャビティであってもキャビティの隅々までスラリーを充填することができ、重量ばらつきのを少ない希土類磁石を得ることのできる製造方法を提供することである。
【0005】
【問題を解決するための手段】
本発明は、R−T−B系(RはYを含む希土類元素のうち1種または2種以上、TはFe又はFeとCo)希土類磁石用磁性粉末と溶媒の混合物であるスラリーを成形機のダイスと下パンチで形成されるキャビティに供給し、磁場中で加圧成形し、この成型体に含まれる溶媒を除去後焼結する希土類永久磁石の製造方法において、前記スラリーを成形機のダイスと下パンチで形成されるキャビティに供給する工程が、前記下パンチの上部を前記ダイスの上面とほぼ一致させ、キャビティが形成されていない状態とする工程と、スラリー供給路を有する供給ヘッドをスラリー供給位置へ摺動させる工程と、前記ダイスと前記下パンチの相対移動により密閉状態のキャビティを形成することによりキャビティを負圧にし、スラリーをキャビティに吸引、充填する工程を含むことを特徴としている。本発明において、スラリーとは、酸化防止用に開発された前述した湿式成形法に用いる不活性雰囲気下(窒素雰囲気など)で溶媒中に微粉砕直後の原料粉末を投入して作成したものだけでなく、大気中で製造した例えば乾式成形用の乾粉に溶媒を加えたようなものも含む。
【0006】
また、本発明においてスラリーはその濃度が70〜85重量%のものを用いることが望ましい。また、本発明は、成形機にキャビティが複数形成されるマルチキャビティ方式で成形する場合にも有効に適用できる。その場合前記供給ヘッドが複数のスラリー供給路を有し、複数のスラリー供給路はメイン配管から分岐されており、前記複数のスラリー供給路からマルチキャビティにスラリーを供給することを望ましい。また前記スラリーをキャビティに吸引、充填する工程において、前記メイン配管のスラリー圧力が所定値以上になったときスラリー供給を停止することが望ましい。
なお、スラリー濃度は次の理由により上記の範囲であることが望ましい。スラリーの濃度が70%未満では溶媒である油が多すぎて上澄みが生じ易くなり、原料粉末の供給量が不安定となり、一方、85%を越えると供給配管内で詰まりが生じやすくなるとともに、キャビティへの充填性が低下するという問題が生ずる。また、磁気特性の点からもスラリー濃度は70〜85%の範囲が望ましい。希土類磁石を磁場中で成形する場合、製品形状と磁気特性に応じて横磁場成形又は縦磁場成形のいずれかで成形が行われる。
【0007】
通常の加圧成形機では垂直方向から加圧するため、横磁場成形が適用される製品は、直方体などの単純形状のものがほとんどであるが、縦磁場成形に比べて高磁気特性が得られやすい。しかし、スラリー濃度が85%を越えると、印加磁界に対するスラリー中の微粉の配向性が低下し、磁気特性の内特に残留磁束密度Brが低下する。
縦磁場成形では、扇形などの複雑形状の成形体を得ることも可能であるが、横磁場成形ほどの磁気特性を得難い。これは、磁界の印加方向と成形の加圧方向が平行なため、いったん配向した微粉の配向性が加圧成形時に乱されるためであり、横磁場成形に比べて残留磁束密度Brは低いものとなるが、スラリー濃度が高いほど加圧成形から受ける配向の乱され方は少ないという傾向にある。このため、縦磁場成形ではスラリー濃度が高いほど得られる残留磁束密度Brが高くなり、特にスラリー濃度が70%以上でこの傾向が顕著になる。しかし、スラリー濃度が85%を越えると、横磁場成形と同じ理由で配向性が低下し、残留磁束密度Brは低下する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の詳細を図面により説明する。
図2に希土類永久磁石の製造工程の一例を示す。Nd−Fe−B系希土類永久磁石原料合金を微粉砕し、得られた微粉を鉱物油の溶媒中に回収し、スラリーを作成する。このスラリーを加圧成形に適したスラリー濃度に調整し、成形機のキャビティに充填し、溶媒を濾過しながら加圧成形する。得られた成形体に含まれる溶媒を除去後焼結し、希土類永久磁石の焼結体が得られる。
【0009】
本発明の対象である成形工程におけるスラリーのキャビティへの充填方法について、マルチキャビティに充填する場合を示す図1により説明する。
ダイス1には、複数(本例では4個)の下パンチ2が貫装され、下パンチとダイスの相対的移動により4個のキャビティ3(3a、3b、3c、3d)が形成される。ダイス1の上面には、供給ヘッド5がシリンダー等の移動手段4によりスラリー供給位置と退避位置との間を、その下面がダイス上面を摺動して移動するように配設される。
【0010】
供給ヘッド5は、貫通した4個のスラリー供給路6(6a、6b、6c、6d)を有する。スラリー供給路6は、供給ヘッド5がダイス1上のスラリー供給位置にある時、対応するキャビティ3に開放されるような位置に設けられる。スラリー供給手段10から供給されるスラリーは、メイン配管11及びこれから分岐して各スラリー供給路6に接続された配管によりキャビティに注入することができる。スラリー供給手段10は例えば定容積シリンダー又は容積式ポンプを用いればよく、スラリー100を収納した原料タンク13と連結し、定容積シリンダーではピストンの移動量や速度、あるいは容積式ポンプでは原動機の回転数又は回転時間等の作動量に応じたスラリー100を吐出することができる。制御装置12は、スラリー供給手段10から所望の条件でスラリー100を供給できるように前記作動量を設定し制御できるように構成される。すなわち、スラリー供給手段10は、はぼ所定量のスラリーを所望の速度で送り出すことができる。メイン配管11には、スラリーの圧力を検出できる圧力スイッチ14が設けられている。
【0011】
以下、上記の装置による成形動作について説明する。
この成形装置は、下パンチ2の上部がダイス1の上面とほぼ一致し、キャビティ3が形成されていない状態をスラリー供給のための初期位置(図1(a))とする。スラリー供給動作は、移動手段4を作動させ、供給ヘッド5をスラリー供給のための所定位置に摺動することから開始する。次いで、下パンチ2を下降させてキャビティを形成する。ほぼ同じタイミングで、スラリー供給手段10を作動させ、原料タンク13内のスラリー100を、配管11を通じてスラリー供給路6からキャビティ3に供給する。スラリー供給手段10からのスラリー供給速度を下パンチの下降速度に合せて調整して、キャビティの容量に対応する量のスラリーが供給されるようにする。所定寸法のキャビティが形成されるまでの間、キャビティの容量は徐々に増加するが、それを埋めるように刻々とスラリーが充填されていくので、キャビティ内にほとんど空間は存しないことになる。即ち、スラリー供給中には、キャビティの大きさや形状を考慮する必要はなく、最終的なキャビティの大きさや形状がいかなるものであっても対応することができる。また、供給ヘッドには空気抜きを設けず、キャビティは密閉状態になるようにしているので、形成されるキャビティは負圧となり、スラリーが吸引されるように充填されていく。
【0012】
下パンチが所定位置(図1(b))まで下降し、配管11に設けた圧力スイッチ14が所定圧に達したら、スラリー供給手段10の動作を停止する。その後、移動手段4を作動させ、供給ヘッド5をダイス1上から退避させる。次いで、脱液口と瀘過フィルターを備えた上パンチ(図示せず)が下降し、磁場中で加圧成形が行われる。
前述したように、分岐先の配管抵抗の違い等でキャビティ間で充填速度が異なるが、スラリーで満杯になったキャビティ内は圧力が高くなり、スラリーはそれ以上入ることができないので、必然的にまだ空間の存する圧力の低いキャビティへとスラリーは流れを変え、結果的にすべてのキャビティは満杯になる。また、キャビティはほとんど密閉構造となっているため、キャビティが満杯になると配管内のスラリー圧力が上昇し、圧力スイッチで検知することができる。
尚、本説明ではマルチキャビティの場合について述べたが、1個のキャビティに対しても適用できることは言うまでもない。
【0013】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明は次の効果を有する。
1)スラリーをキャビティの隅々まで充填することができるので、形状の安定した重量バラツキの少ない希土類永久磁石を製造することができる。
2)キャビティは徐々に大きくなるため、最終製品形状によらない増加容量分だけスラリーを供給すればよいので、形状開口部が狭く深さの大きいようなキャビティにもスラリーを隅々まで充填することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施するための成形装置の断面図。
【図2】希土類永久磁石の製造工程図を示す。
【図3】従来の成形装置を示す断面図。
【符号の説明】
1…ダイス、 2…下パンチ、 3…キャビティ、 4…移動手段、
5…供給ヘッド、 6…スラリー供給管、 8…摺動板、
10…スラリー供給手段、11…配管、 12…制御装置、
13…原料タンク、 14…圧力スイッチ、
55…従来の原料供給装置の供給ヘッド、
56…従来の原料供給装置の供給ノズル、 100…スラリー
Claims (3)
- R−T−B系(RはYを含む希土類元素のうち1種または2種以上、TはFe又はFeとCo)希土類磁石用磁性粉末と溶媒の混合物であるスラリーを成形機のダイスと下パンチで形成されるキャビティに供給し、磁場中で加圧成形し、この成型体に含まれる溶媒を除去後焼結する希土類永久磁石の製造方法において、前記スラリーを成形機のダイスと下パンチで形成されるキャビティに供給する工程が、前記下パンチの上部を前記ダイスの上面とほぼ一致させ、キャビティが形成されていない状態とする工程と、スラリー供給路を有する供給ヘッドをスラリー供給位置へ摺動させる工程と、前記ダイスと前記下パンチの相対移動により密閉状態のキャビティを形成することによりキャビティを負圧にし、スラリーをキャビティに吸引、充填する工程を含むことを特徴とする希土類永久磁石の製造方法。
- キャビティがマルチキャビティであり、前記供給ヘッドが複数のスラリー供給路を有し、複数のスラリー供給路はメイン配管から分岐されており、前記複数のスラリー供給路からマルチキャビティにスラリーを供給する請求項1に記載の希土類永久磁石の製造方法。
- 前記スラリーをキャビティに吸引、充填する工程において、前記メイン配管のスラリー圧力が所定値以上になった時スラリー供給を停止する請求項2に記載の希土類永久磁石の製造方法。
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