JP4314864B2 - 有機化合物及びこれを用いた有機電界発光素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、新規な有機化合物及びこれを用いた有機電子デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
有機化合物はその構造や特性がバリエーションに富んでおり、近年、有機化合物の電気的、光学的機能などを利用した有機電子デバイスが注目されている。例えば、有機発光素子、特に電界発光機能を備えた有機電界発光素子(以下、有機EL素子という)は、省電力で、高視野角かつ高輝度発光が可能であるという特性を備えており、次世代平面ディスプレイ素子や、その平面光源として注目されている。
【0003】
有機EL素子は、有機発光材料を含む有機層が形成されて構成されるが、近年において、各々の有機層に、電荷輸送や発光といった機能を持たせた複層構造の素子が主に研究されている。
【0004】
また、最近では、燐光型発光材料として用い、蛍光型発光材料よりも非常に高効率の燐光型有機EL素子の開発も進められている。このような燐光型発光材料を用いることで従来の蛍光素子の外部量子効率における理論限界の5%を超え、量子効率が19%にも達する高効率素子が報告されている。
【0005】
このような有機EL素子については、高輝度発光、高効率発光が実現されつつあるが、素子の寿命や、素子品質の安定性などの一層の向上が必要であり、そのため有機EL素子に適した有機化合物の開発が強く要求されている。
【0006】
有機EL素子の有機層の材料として、例えば下記化学式
【化4】
に示すようにカルバゾール基を備えたCBP(4,4’−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニル:4,4’−N,N’−dicarbazole−biphenyl)がある。このCBPは、下記非特許文献1などに上述燐光発光素子のホスト材料などとして用いられることが記載されている。
【0007】
なお、上記ホスト材料中にドープされるドーピング材料(燐光型発光材料)としては、例えば下式
【化5】
に示されるようなトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(tris(2−phenylpyridine)iridium(III))[Ir(ppy)3]などを用いることが知られている。
【0008】
【非特許文献1】
M. A. Baldo et al., Appl. Phys. Lett. 1999, 75, 4-6
【非特許文献2】
S.Kuroda et al., “A Convenient Synthetic Method for Preparing2,5-Disubstituted 1,6-Methano-[10]annulenes from1,6-Diacetylcyclohepta-1,3,5-triene"Bull. Chem. Soc. Jpn., 2000, 73,1659-1671
【非特許文献3】
Tachimori, H.; Masuda, T. J. Polym. Sci., Part A: Polym. Chem. 1995, 33, 2079-2085
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように発光層のホスト材料としてCBPを用い、ドーピング材料としてIr(ppy)3を採用することで、原理的に高効率発光の可能な燐光発光素子を得ることはできる。しかし、実際にはCBPは、CBP薄膜を室温に放置すると結晶化してしまい、ガラス転移温度(Tg)は測定不能であり、高温下での安定性に大きな問題があった。また、上記化学式からも類推できるように、CBPの分子は、平面構造であるため、分子間力が働きやすく、薄膜化した場合に、凝集、結晶化が起き、駆動時間にともなう輝度低下や、表示不良などの発生する可能性が高くなるという問題がある。
【0010】
上記課題を解決するために、この発明では、例えば電荷輸送機能や発光機能などの機能を備えた機能性有機化合物であると共に、耐久性、特性の安定性に優れた新規な有機化合物を提供することを目的とする。
【0011】
また他の目的は、このような有機化合物を利用して耐久性に優れた有機電子デバイスを提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためにこの発明の化合物は、下記化学式(1)又は(2)又は(3)
【化6】
のいずれかで表され、式中X1〜X5は、任意の置換基、前記化学式(1)中の置換基R1〜R8の少なくとも1つ、前記化学式(2)中の置換基R11〜R20の少なくとも1つ、前記化学式(3)中の置換基R21−R30の少なくとも一つが、トリフェニルアミン、カルバゾールまたはフェニルカルバゾール、またはこれらいずれかの誘導体を含む構造を有する。
【0013】
本発明の他の態様では、上記有機化合物において、前記化学式(1)中の置換基R1〜R8、前記化学式(2)中の置換基R11〜R20、前記化学式(3)中の置換基R21〜R30のうち、前記トリフェニルアミン、カルバゾールまたはフェニルカルバゾール、またはこれらいずれかの誘導体を含む置換基以外の置換基が、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシル基、アシル基、アシロキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、エステル、アミド、ハロゲンのいずれかであり、それぞれ同一または互いに異なるか、又は互いに結合して環を形成した化合物を採用可能である。
【0014】
具体的には、下記化学式(7)〜(12)
【化7】
で示される化合物を採用可能である。
【0015】
上記本発明にかかる架橋アヌレン化合物では、架橋部がアヌレンの共役平面上から突出して薄膜化した場合の結晶性を低下させることができ、またトリフェニルアミン等が置換していることで高い融点を実現し、かつ、高い電荷輸送機能、発光機能などを実現できる。
【0016】
本発明の他の態様では、下記一般式(i)
【化8】
で表される構造を有し、式(i)中、A1及びA2は、互いに同一又は異なり、A1とY、A2とYとの一方又は両方は、直接結合するか又はZを介して結合し、介在する場合のZは、酸素、硫黄、ビニル基、アリール基、ヘテロアリール基のいずれかであり、どの位置でA1又はA2と、Yとが結合していてもよく、Yは、窒素、リン、芳香族環又は複素環のいずれかであり、k1とl1とは、k1+l1≧2の関係を満たす。また、A1及びA2は、上記化学式(1)〜(3)のいずれかで表され、前記化学式(1)中の置換基R1〜R8、前記化学式(2)中の置換基R11〜R20、前記式(3)中の置換基R21〜R30、及び式(1)〜(3)のX1〜X5は、任意の置換基とすることができる。
【0017】
本発明の他の態様では、上記一般式(i)で示される有機化合物において、前記A1及び前記A2は、前記化学式(1)中の置換基R1〜R8及び前記化学式(2)中の置換基R11〜R20及び前記化学式(3)中の置換基R21〜R30のいずれかの位置で前記Y及び前記Zのいずれかと結合し、該Y及びZのいずれかとの結合していない残りの置換基の内、少なくとも一つには、トリフェニルアミン,カルバゾール,またはフェニルカルバゾールのいずれかが含まれている。
【0018】
本発明の他の態様では、上記一般式(i)の有機化合物において、該一般式(i)中の前記Yが窒素またはリンの場合には、前記k1及びl1は、k1+l1=2〜3を満たし、前記Yが芳香環又は複素環の場合には、k1+l1≧2を満たす。
【0019】
上記一般式(i)に示すような化合物では、Y又は更にZが介在した架橋アヌレンの多量体構造を備えることで、単体の架橋アヌレンでは実現し得ない特性、即ち、結晶性が低いだけでなく融点が高く、耐久性に優れた薄膜材料として有用となる。また共役結合を分子内に有するので電荷輸送性、発光性を備えると共に、多量体であることと置換基の選択によってより高い電荷輸送機能や発光機能を実現することができる。
【0020】
具体的には、下記化学式(13)〜(15)
【化9】
で示される有機化合物を採用可能である。
【0021】
本発明の他の態様では、下記一般式(ii)
【化10】
で表される環構造又は直線状の非環構造化合物又は枝分かれした非環構造を備える化合物であって、式(ii)中、k2は2〜10の範囲であり、A3は、上記化学式(1)〜(3)のうち、同一もしくは互いに異なる2個以上が直接結合している。
【0022】
本発明の他の態様では、上記一般式(ii)で示される有機化合物において、前記A3が、前記化学式(1)中の置換基R1〜R8及び前記式(2)中の置換基R11〜R20及び前記式(3)中の置換基R21〜R30のいずれかの位置で他の前記化学式(1)〜(3)の構造と結合し、該他の化学式(1)〜(3)の構造と結合しない残りの置換基の内、少なくとも一つには、トリフェニルアミン,カルバゾール,またはフェニルカルバゾールのいずれかが含まれている。
【0023】
具体的には、下記化学式(16)〜(18)
【化11】
に示される有機化合物を採用可能である。
【0024】
この化合物は、式(1)〜(3)のような架橋アヌレン同士が直接複数結合したオリゴマー化合物であり、結晶性が低いだけでなく融点が高く、耐久性に優れた薄膜材料として有用である。また多量体であるため高い電荷輸送機能や発光機能を発揮することができる。
【0025】
本発明の他の態様では、電極間に少なくとも1層の有機層を備えた有機EL素子において、前記有機層の材料の1種として上記いずれかの有機化合物を用いる。
【0026】
また本発明の他の態様では、さらに、上記いずれかの有機化合物を有機層中の正孔輸送材料、正孔注入材料、正孔ブロック材料、発光材料、発光ホスト材料、電子輸送材料、電子注入材料、電子ブロック材料のいずれかとして用いる。
【0027】
以上のように有機電子デバイスや、その一例である有機EL素子の発光材料や発光ホスト材料或いは電荷輸送・注入材料などとして上述の本発明にかかる架橋アヌレン誘導体化合物を採用することで、これらの素子の耐久性を向上でき、また発光機能などを強めることができ、高い機能を安定して発揮することの可能な素子を実現することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いてこの発明の好適な実施の形態(以下実施形態という)について説明する。
【0029】
[実施形態1]
実施形態1に係る化合物は、下記化学式(1)又は(2)又は(3)
【化12】
のいずれかで表される。すなわち直線的にベンゼン環が複数縮環し、環縮合部がX1〜X5で架橋されたいわゆる架橋アヌレン化合物の誘導体である。また、本実施形態1において、この架橋アヌレン化合物は、さらに、式(1)中の置換基R1〜R8の少なくとも1つ、式(2)中の置換基R11〜R20の少なくとも1つ、式(3)中の置換基R21−R30の少なくとも一つが、下記式(4)〜(6)
【化13】
で示されるトリフェニルアミン(式(4))、カルバゾール(式(5))またはフェニルカルバゾール(式(6))、またはこれらいずれかの誘導体を置換基として含む。
【0030】
以上の式(1)〜(3)に示される架橋アヌレン類は、その架橋部(例えばメチレン架橋部)が、共役平面上に突き出た構造を有する。したがって、架橋されていないアヌレン化合物、例えば化学式(1)の架橋[10]アヌレン化合物はナフタレン、化学式(2)の架橋[14]アヌレン化合物は、アントラセン)に比べ結晶性が低い。このため、励起状態の分子と、基底状態の分子とが結合して形成されるエキシマーの発生が抑制されると考えられる。エキシマーの発光波長は単量体の発光波長よりも長波長側にピークがずれ、また幅の広いスペクトルとなることが多い。よって、例えば、有機EL素子の有機発光材料がエキシマーを形成しやすい分子構造の場合、エキシマーの生成が素子の駆動中に発光色の色ずれを生ずる一因となると考えられる。したがって、有機EL素子の発光材料などとして、本実施形態1のような架橋アヌレン化合物を採用することで、駆動時の色ずれの低減が期待できる。
【0031】
また、式(1)〜(3)において置換基R1〜R8、R11〜R20、R21−R30が全て水素である架橋アヌレン類は非常に融点が低い(例えば、化学式(1):28−29℃、化学式(2)116℃、化学式(3):41−42℃)。このような融点の低い有機材料では、素子の寿命向上のために耐熱性の向上が強く望まれている有機EL材料として優れた性能を発揮することができない。しかし、本実施形態1のように、トリフェニルアミン、カルバゾール、フェニルカルバゾール等が置換基R1〜R8、R11〜R20、R21〜R30のそれぞれの少なくとも一つとして置換することで、分子の融点を飛躍的に高めることが可能となる。また、トリフェニルアミン、カルバゾール、フェニルカルバゾールなどが分子中に存在することで、分子の正孔輸送能力などを得ることもでき、有機EL素子の材料として非常に有用となる。ここで、有機EL素子の材料としては、例えば正孔輸送材料、発光材料、発光アシスト材料(ホスト材料)、電子輸送材料、正孔ブロック材料、電子ブロック材料、正孔注入材料、電子注入材料等が挙げられ、下記のような残りの置換基の選択などによっても様々な機能を発揮させることが可能である。また、この化合物を能動層として用いるなど、電荷輸送性を利用して例えば有機トランジスタ等の有機電子デバイスに利用したり、その他コピー機(電子写真)、写真フィルム等の感光材料、CD、CD−R(conpact disc − recordable)、CD−RW(ReWritble)、DVDの例えば色素材料などとしても有用である。
【0032】
上記化学式(1)中の置換基R1〜R8、化学式(2)中の置換基R11〜R20、前記化学式(3)中の置換基R21〜R30のうち、上記トリフェニルアミン、カルバゾールまたはフェニルカルバゾール、またはこれらいずれかの誘導体を含む置換基以外の置換基は、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシル基、アシル基、アシロキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、エステル、アミド、ハロゲンのいずれかであり、それぞれ同一または互いに異なるか、又は互いに結合して環を形成している構造が採用可能である。これらの構造により薄膜化した場合の化合物の特性を調整し、例えアモルファス性を高める(結晶性を下げる)等ができる。
【0033】
また、上記式(1)〜(3)において、架橋部のX1〜X5としては、任意の置換基が採用可能であるが、2官能性基であり、例えば酸素、硫黄、CRR1、C=CRR1、C=O、C=S、SO、SO2、NR、SiRR1、PR、P(=O)Rのいずれかを採用することができる。ここで、R、R1は、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシル基、アシル基、アシロキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、エステル、アミド、ハロゲンのいずれかであって、RとR1とは、同一または互いに異なっているか、互いに結合して環を形成している構成が採用できる。これらの構造の採用により上記同様化合物のアモルファス性の調整などができる。
【0034】
化学式(2)のX2とX3、化学式(3)のX4とX5は、直接、もしくは酸素,硫黄,NR2,−(CR2R3)k−、−(CR2=CR3)l−、−(C≡C)m−、ケトン(−CO−)、エステル(−OCO−)、アミド(−CONR2−)、アリール基、ヘテロアリール基、−(SiR2R3)n−のいずれか、またはそれらが複数種含まれる基で結合された構造を採用することができる。ここで、k,l,m,nは、それぞれ1〜30の数値である。また、上記R2、R3は、水素,アルキル基,アルケニル基,アルキニル基,アリール基,ヘテロアリール基、アルコキシル基、アシル基、アシロキシ基,アミノ基、ニトロ基,シアノ基、エステル,アミド,ハロゲンのいずれかであり、それぞれ同一または互いに異なっているか、互いに結合して環を形成している構成が採用可能である。このような構成によっても、化合物のアモルファス性の調整が可能となる。
【0035】
以上説明した実施形態1にかかる化合物の具体的な例としては、下式(7)〜(12)
【化14】
に示す化合物が挙げられる。
【0036】
式(7)〜(12)いずれの化合物も、架橋アヌレンであり、例えばメタノ[10]アヌレン化合物である式(7)及び式(8)の化合物では、R1とR4の位置に、フェニルカルバゾール、トリフェニルアミンが置換している。また、式(9)〜(11)の化合物もメタノ[10]アヌレン化合物であり、R1とR5の位置、R1とR3の位置、R1とR2の位置にそれぞれフェニルカルバゾールが置換している。また、式(12)の化合物はメタノ[14]アヌレン化合物であり、R15とR20の位置にフェニルカルバゾールが置換している。いずれの化合物も嵩高い置換基を備えるため融点又はTgが高い(例えば式(7)の化合物の融点は300℃以上、Tg179℃)。また電荷輸送能力や発光能力のあるフェニルカルバゾール、トリフェニルアミンが分子内に存在することで、有機EL材料、例えば正孔輸送材料、発光材料、発光アシスト材料(ホスト材料)、電子輸送材料などとして利用できる。さらに、架橋アヌレンの架橋部の存在により薄膜化した場合にも結晶化を防止でき、膜質の安定化を図ることができる。
【0037】
[実施形態2]
本発明の実施形態2にかかる化合物は、複数の架橋アヌレン化合物(メタノアヌレン類)が分子中に含まれた、架橋アヌレンの多量体であり、下記一般式(i)
【化15】
で表される構造を有する。
【0038】
式(i)中、A1及びA2は、互いに同一又は異なり、A1とY、A2とYとのいずれか一方又は両方は、直接結合するか又はZを介して結合する。ここで、A1及びA2と、Yとの間のZは、全く存在しない場合、両側に存在する場合、一方のみに存在する場合という態様が存在する。介在する場合のZは、酸素、硫黄、ビニル基、アリール基、ヘテロアリール基のいずれかであり、どの位置でA1又はA2と、Yと結合していてもよい。Yは、窒素、リン、芳香族環又は複素環のいずれかであり、k1とl1とは、k1+l1≧2の関係を満たす。Yの芳香族環又は複素環としては、具体的には、下記
【化16】
に示すいずれかの環が挙げられる。
【0039】
前記A1及びA2は、上述の化学式(1)〜(3)のいずれかで表され、かつ、式(1)中の置換基R1〜R8、式(2)中の置換基R11〜R20、式(3)中の置換基R21−R30、及び式(1)〜(3)のX1〜X5としては、水素のほか、任意の置換基が採用可能である。
【0040】
また、上記化合物において、上記式(1)中の置換基R1〜R8及び上記式(2)中の置換基R11〜R20及び上記式(3)中の置換基R21〜R30のいずれかの位置で、上記Y及びZのいずれかと結合し、該Y及びZのいずれかとの結合していない残りの置換基の内、少なくとも一つには、トリフェニルアミン、カルバゾール、またはフェニルカルバゾールのいずれかを含む構造を採用することができる。このように置換基として、トリフェニルアミン、カルバゾール、あるいはフェニルカルバゾールを採用することで、分子に電荷輸送機能性や発光機能、発光アシスト機能などを付与することができ、例えば有機EL素子の材料として採用可能である。
【0041】
また、上記化合物において、一般式(i)中のYが窒素またはリンの場合には、k1及びl1は、k1+l1=2〜3を満たし、Yが芳香環又は複素環の場合には、k1+l1≧2を満たす構造が採用可能である。
【0042】
上記化学式(1)中の置換基R1〜R8、化学式(2)中の置換基R11〜R20、前記化学式(3)中の置換基R21〜R30のうち、上記トリフェニルアミン、カルバゾールまたはフェニルカルバゾール、またはこれらいずれかの誘導体を含む置換基以外の置換基は、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシル基、アシル基、アシロキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、エステル、アミド、ハロゲンのいずれかであり、それぞれ同一または互いに異なるか、又は互いに結合して環を形成している構造が採用可能である。
【0043】
また、上記式(1)〜(3)において、架橋部のX1〜X5としては、任意の置換基が採用可能であるが、2官能性基であり、例えば酸素、硫黄、CRR1、C=CRR1、C=O、C=S、SO、SO2、NR、SiRR1、PR、P(=O)Rのいずれかを採用することができる。ここで、R、R1は、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシル基、アシル基、アシロキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、エステル、アミド、ハロゲンのいずれかであって、RとR1とは、同一または互いに異なっているか、互いに結合して環を形成している構成が採用できる。
【0044】
化学式(2)のX2とX3、化学式(3)のX4とX5は、直接、もしくは酸素,硫黄,NR2,−(CR2R3)k−、−(CR2=CR3)l−、−(C≡C)m−、ケトン(−CO−)、エステル(−OCO−)、アミド(−CONR2−)、アリール基、ヘテロアリール基、−(SiR2R3)n−のいずれか、またはそれらが複数種含まれる基で結合された構造を採用することができる。ここで、k,l,m,nは、それぞれ1〜30の数値である。また、上記R2、R3は、水素,アルキル基,アルケニル基,アルキニル基,アリール基,ヘテロアリール基、アルコキシル基、アシル基、アシロキシ基,アミノ基、ニトロ基,シアノ基、エステル,アミド,ハロゲンのいずれかであり、それぞれ同一または互いに異なっているか、互いに結合して環を形成している構成が採用可能である。
【0045】
このように本実施形態2の化合物は、架橋アヌレン誘導体の多量体構造を備えることで、融点を一層上昇させることができ、またTgも高まる。このため、高温耐久性に優れた材料を得ることができる。また、A1、A2を上述の式(1)〜(3)の置換基として、トリフェニルアミン、カルバゾール、フェニルカルバゾールなどを採用することで一層の融点の向上、電荷輸送機能、発光機能の向上が実現できる。
【0046】
本実施形態2の化合物の具体例としては、例えば下記式(13)〜(15)
【化17】
に示される構造の化合物が挙げられる。式(13)〜(15)において、Rで示す置換基の少なくとも1つは、例えば、水素、カルバゾール、フェニルカルバゾールのいずれかからなる構造が採用可能である。
【0047】
上記化学式(13)〜(15)等に示される化合物は、いわゆるスターバースト型の構造を備えており、このようなスターバースト型の構造の化合物は、高いTgを有する。したがって、高温耐久性の要求される例えば上述のような有機EL材料などとして有用である。
【0048】
[実施形態3]
本発明の実施形態3にかかる化合物は、A3で表わす架橋アヌレン構造体(メタノアヌレン類)が直接結合した構造を備える架橋アヌレンの多量体である。具体的には、下記一般式(ii)
【化18】
で表され、環構造又は直線状の非環構造化合物又は枝分かれした非環構造を備える化合物である。式(ii)中、k2は2〜10の範囲であり、即ち架橋アヌレンのオリゴマーといえる。
【0049】
A3は、上記化学式(1)〜(3)で表される架橋アヌレン構造体のうち、同一もしくは互いに異なる2個以上が直接結合した化合物が採用可能である。このような架橋アヌレン誘導体のオリゴマー構造を有することで、架橋アヌレンの単体よりも融点が大幅に上昇し、有機EL材料や、上述の実施形態と同様に、電子写真、写真の感光材料や、CD−Rなどの色素等の材料として採用することが可能となる。また、単量体と比較してオリゴマー構造を備えることで、例えば蛍光の発光機能を向上させることができる。
【0050】
また、本実施形態3において、上記A3は、前記化学式(1)中の置換基R1〜R8及び前記式(2)中の置換基R11〜R20及び前記式(3)中の置換基R21〜R30のいずれかの位置で他の前記化学式(1)〜(3)の構造と結合し、該他の化学式(1)〜(3)の構造と結合しない残りの置換基の内、少なくとも一つには、トリフェニルアミン,カルバゾール,またはフェニルカルバゾールのいずれかが含まれた構造が採用可能である。このようにトリフェニルアミン、カルバゾール、フェニルカルバゾールなどを置換基として備えることで、本実施形態3にかかる化合物も、上述の実施形態と同様、例えば電荷輸送機能、発光機能、発光アシスト機能などを発揮できる。有機EL素子の正孔輸送材料、発光材料、ホスト(発光アシスト)材料、電子輸送材料、正孔注入材料、電子注入材料、正孔ブロック材料、電子ブロック材料などに有用である。
【0051】
上記本実施形態3にかかる化合物の具体例としては、下記式(16)〜(18)
【化19】
に示される構造の化合物が挙げられる。これらの化合物は、上述の化学式(1)〜(3)に示すような架橋アヌレンを含み、これらの架橋アヌレンは、蛍光発光機能や電子輸送機能などを備えるが、多量体となることでより強い発光機能や電子輸送機能を実現することができる。また、多量体となるため、単量体に比較してその電子輸送能力を高めることができる。なお、分子内にトリフェニルアミンやカルバゾールを含む場合には、発光ホスト材料としての高い能力の実現も可能である。
【0052】
[実施形態4]
図1は、本実施形態4にかかる有機EL素子の概略断面構造を示す。有機EL素子は、例えばガラスやプラスチックなどの透明基板100の上に形成され、陽極(正孔注入電極)10と陰極(電子注入電極)12との間に有機層200を備えた構成を有する。有機層200は、少なくとも有機発光機能を有する有機化合物を含む層であり、単層構造の他、発光層と正孔又は電子輸送層との2層構造や、正孔輸送層/発光層/電子輸送層の3層構造或いはそれ以上の多層構造によって構成される。
【0053】
本実施形態4では、上述の実施形態1〜3で説明した架橋アヌレン誘導体を分子中に備える材料を有機層200の材料として用いる。上記実施形態1〜3の化合物は、有機層200の電荷輸送材料、発光材料、発光ホスト材料、電荷注入材料などに採用できる。
【0054】
以下に発光層の発光材料として採用した例と、発光ホスト材料として採用した例をそれぞれ説明する。
【0055】
発光材料としては、上記実施形態1〜3の化合物のうち、例えば、上記化学式(7)の2,5−ビス(4−N−カルバゾリルフェニル)−1,6−メタノ[10]アヌレンや、上記化学式(8)の2,5−ビス(4−ジフェニルアミノフェニル)−1,6−メタノ[10]アヌレンを採用することができる。この場合の有機EL素子の有機層200は、図1に示すように、陽極10と陰極12の間に、陽極10側から正孔輸送層22、発光層24、正孔ブロック層26、電子輸送層28が順に積層された4層構造から構成されている。
【0056】
なお、陽極10としては、ITO(Indium tinoxide)などの透明導電性材料を例えば150nmの厚さにスパッタリングなどによって形成する。陰極12の金属電極16は、AlやMgAgなどの金属材料を例えば150nmの厚さに真空蒸着などで形成し、金属電極16と有機層200との層間に形成される電子注入層14はLiFなどの薄膜(例えば0.5nm)などが採用できる。
【0057】
発光層24の材料としては、上記の通り、例えば化学式(7)や、化学式(8)が採用できる。化学式(7)の化合物を用いた場合には、水色の発光を得ることができる。また、化学式(8)の化合物を用いれば黄緑色の発光を得ることができる。
【0058】
上記発光層24と組み合わせて採用可能な他の層のうち、正孔輸送層22の材料としては、例えば
下記式(19)
【化20】
に示すようなα−NPDの他、トリフェニルアミンの3量体、4量体の化合物が採用可能である。もちろん、上記実施形態1〜3の化合物のうち正孔輸送能力のある化合物を材料として採用してもよい。
【0059】
電子輸送層28の材料としては、例えば下記化学式(20)
【化21】
に示すAlq3が採用可能である。また、上記実施形態1〜3の化合物のうち電子輸送能力のある化合物を用いてもよい。
【0060】
ここで、発光層24に、上記化学式(7)や化学式(8)等の化合物を用いた場合、上記各実施形態において説明したようにこれらの化合物は正孔輸送機能を備えているため、正孔は発光層24を通り抜け、陰極12へ到達する可能性がある。また、上述のように電子輸送層28にAlq3等を用いている場合、電子輸送層に正孔が流れ込むことでこのAlq3が発光したり、正孔を発光層に閉じこめることができずに発光効率が低下する可能性がある。そこで、本実施形態4では、発光層24と電子輸送層28との間に正孔ブロック層26を設け、発光層24から電子輸送層28に正孔が流れ出てしまうことを防止している。但し、電子輸送層28が非発光性の場合や、正孔ブロック機能を備えている場合には、この正孔ブロック層26は不要である。正孔ブロック層26の材料としては、例えば下記化学式(21)
【化22】
に示すようなBCP(バソクプロイン)を用いることができる。
【0061】
本実施形態4の他の態様として、有機EL素子の発光性ドーパント材料に対するホスト材料として上記実施形態1〜3で説明した化合物を用いた素子について説明する。この例では、燐光発光型の有機EL素子への層のホスト材料として上記実施形態1〜3の化合物、例えば、上記化学式(7)の2,5−ビス(4−N−カルバゾリルフェニル)−1,6−メタノ[10]アヌレンや、上記化学式(8)の2,5−ビス(4−ジフェニルアミノフェニル)−1,6−メタノ[10]アヌレンを採用している。この燐光発光型の有機EL素子は、発光層24が燐光発光層である点を除き、上記図1と同様の構成により実現できる。
【0062】
上記ホスト材料中にドープして燐光を発光可能な材料(ドーパント)としては、例えば、下記化学式(22)
【化23】
に示すような白金ポルフィリン錯体(PtOEP)が挙げられる。
【0063】
もちろん、本発明にかかる上記実施形態1〜3の化合物は、燐光発光素子のホスト材料に限られず、蛍光発光素子のホスト材料として用いることも可能である。本発明にかかる上記実施形態1〜3の化合物をホスト材料として採用可能な発光性ドーパント材料としては、上記実施形態1〜3の化合物の発光スペクトルが図2に示すような波長範囲である場合に、この範囲内に吸収をもつ発光性材料、より好ましくは400nm〜600nmの範囲に吸収を持つ発光性材料であれば蛍光発光、燐光発光のいずれの材料も採用可能である。
【0064】
上記燐光発光層24と組み合わせて使用可能な正孔輸送材料は、例えば、上記EL素子と同様の化学式(19)に示すようなα−NPD等のトリフェニルアミンの多量体が挙げられる。
【0065】
また、正孔ブロック層26の材料及び電子輸送層28の材料としても、上記有機EL素子と同様の材料、即ち、BCP、Alq3等が採用可能である。
【0066】
この燐光発光素子において、陰極12と陽極10からそれぞれ電子と正孔を燐光発光層24に注入してここで再結合させると、ホスト材料を介して再結合エネルギがドーパント材料に供給され、このドーパントが燐光を発光する。ここで、注入電流密度が低い条件下では、この燐光発光型の有機EL素子は、ドーパントであるPtOEPに起因した赤色発光が得られる。また、注入電流密度の高い条件下では、発光機能を備える本発明にかかるホスト材料も発光し、ホスト材料の発光色とドーパント材料の発光色の加色光が得られる。例えば、上記化学式(7)の化合物は、水色に発光し、PtOEPは、赤色に発光するため、この有機EL素子では、水色と赤色が合成された白色光を外部に射出することができる。
【0067】
以上のように、実施形態1〜3の化合物は、融点、ガラス転移温度の高い機能性材料であり、有機EL素子の材料、例えば本実施形態4において具体例を示したように発光層の材料(発光材料、発光ホスト材料)の他、電荷輸送材料、電荷注入材料として採用できる。
【0068】
なお、上記実施形態1〜4で提案されている化合物の基本骨格である上記化学式(1)〜(3)に示すメタノ[10]アヌレンは、例えば上述の非特許文献2、3に例示するような合成方法を応用して実際に合成することができる(合成例は以下の実施例中に記載する)。
【0069】
【実施例】
[合成例1]
以下に、合成例1として、化学式(7)で示される新規化合物(2,5−ビス(4−N−カルバゾリルフェニル)−1,6−メタノ[10]アヌレン)の合成例を説明する。
【0070】
【化24】
まず、上記式(23)に示す(meso−およびdl−1,6−ビス[1−ヒドロキシ−1−(4−N−カルバゾリルフェニル)エチル]シクロヘプタ−1,3,5−トリエン)を以下の手順により合成した。
【0071】
9−(4−ヨードフェニル)カルバゾール(3.88g,10.5mmol)をTHF(20mL)に溶解し、その溶液を−78℃に冷却した後、そこに1.59MBuLi溶液(7.9mL)をシリンジでゆっくり加えた。添加終了後、−78℃で20分撹拌し、その温度のまま1,6−ジアセチルシクロヘプタ−1,3,5−トリエン2)(0.880g,5.00mmol)のTHF(20mL)溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、−78℃で5時間、室温で15時間撹拌した後、反応混合物を水に注ぎ、エーテル抽出した。得られたエーテル層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー精製する事により目的とするジオール体1を2.04g(3.08mmol,62%)得た。
【0072】
次に、上記方法によって得たジオール体(式(23))を用い、化学式(7)
【化25】
に示される化合物を以下の方法にて得た。
【0073】
上記式(23)のジオール体(1.33g,2.00mmol)とp−トルエンスルホン酸ピリジニウム(0.0251g,0.100mmol)をベンゼン(15mL)に溶解し、2時間還流した。室温まで冷却した後、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(0.454g,2.00mmol)を加え、さらに2時間還流した。反応終了後、減圧下溶媒を留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー精製する事により目的とする架橋アヌレンを2.50g(0.400 mmol,20%)得た。
【0074】
得られたこの化合物は、ペールイエローの針状体(pale yellow needles)であり、融点(mp)は、mp>300℃であった。
【0075】
また、この化合物のIRと、1H NMR及び13C NMRの測定結果は以下の通りである。
【0076】
IR (KBr) νmax 1507s, 1450s, 1228s, 747s, 722s cm-1.
1H NMR (CDCl3-TMS) δ = -0.17 (d, J = 9.5 Hz, 1H), 0.35 (d, J = 9.5 Hz, 1H), 7.33 (m, 6H), 7.43 (s, 2H), 7.46 (tm, J = 7.7 Hz, 4H), 7.56 (d, J = 8.2 Hz, 4H), 7.71 (m, 2H), 7.71 (d, J = 8.2 Hz, 4H), 8.07 (dm, J = 8.6 Hz, 4H), 8.18 (d, J = 7.6 Hz, 4H).
13C NMR (CDCl3-TMS) δ = 35.95, 109.89, 116.74, 120.09, 120.38, 125.52, 126.02, 126.17, 126.95, 128.85, 129.04, 132.18, 137.28, 138.86, 140.80, 142.49。
【0077】
[合成例2]
以下に、合成例2として、化学式(8)で示される新規化合物<2,5−ビス(4−ジフェニルアミノ)−1,6−メタノ[10]アヌレン>の合成例を説明する。
【0078】
まず、下記式(24)
【化26】
に示す4−ニトロトリフェニルアミンを以下の方法にて合成した。
【0079】
ジフェニルアミン(4.23g,25.0mmol)を乾燥DMF(60mL)に溶解し、そこに水素化ナトリウム(0.600g,25.0mmol)を加えた。この溶液に4−フルオロニトロベンゼン(3.53g,25.0mmol)を滴下し、120℃で3.5時間撹拌した。放冷後、反応混合物を水に注ぎ、ジクロロメタン抽出した。得られたジクロロメタン層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー精製する事により目的とする上記式(24)に示されるニトロ体を5.11g(17.6mmol,70%)得た。
【0080】
次に、下記式(25)
【化27】
に示される4−アミノトリフェニルアミンを以下の方法にて合成した。
【0081】
上記(24)で示されるニトロ体(4−ニトロトリフェニルアミン)(2.90g,10.0mmol)と無水塩化カルシウム(1.00g,9.01mmol)をエタノール(80mL)と水(20mL)に溶解し、そこに亜鉛粉末(30.0g,459mmol)を加え、激しく撹拌しながら2.5時間還流した。反応混合物を熱いうちにろ過し、熱エタノールで洗浄した。エタノールを留去後、水を加えエーテル抽出した。得られたエーテル層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー精製する事により目的とする上記式(25)に示すアミノ体を1.89g(7.26mmol,73%)得た。
【0082】
次に、下記式(26)
【化28】
で示される4−ヨードトリフェニルアミンを以下の方法にて合成した。
【0083】
上記(25)で示すアミノ体(4−アミノトリフェニルアミン)(1.64g,6.30mmmol)を酢酸(24mL)に溶解し、そこに濃塩酸(3.6mL)を加え室温で30分撹拌した。反応混合物に水(6mL)を加え0℃に冷却し、その温度を保ちながら亜硝酸ナトリウム(0.552g,8.00mmol)を水(6mL)に溶解したものを加えた。得られた溶液を、ヨウ化カリウム(6.64g,40.0mmol)を水(20mL)に溶解したものにゆっくり加え、室温で1時間撹拌した。その後ゆっくりと90℃まで昇温し、さらにその温度で10分撹拌する。放冷後、エーテル抽出し、エーテル層を5%塩酸、5%水酸化ナトリウム水溶液、水、5%硫酸水素ナトリウム水溶液、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー精製する事により目的とする上記式(26)で示されるヨード体を1.70g(4.58mmol,73%)得た。
【0084】
次に、下記式(27)
【化29】
で示されるmeso−およびdl−1,6−ビス{1−ヒドロキシ−1−(4−ジフェニルアミノフェニル)エチル}シクロヘプタ−1,3,5−トリエンを以下の手順で合成した。
【0085】
上記式(26)に示される4−ヨードトリフェニルアミン(0.833g,3.15mmol)をエーテル(30mL)に溶解し、その溶液を−78℃に冷却した後、そこに1.59MBuLi溶液(2.3mL)をシリンジでゆっくり加えた。添加終了後、−78℃で20分撹拌し、その温度のまま1,6−ジアセチルシクロヘプタ−1,3,5−トリエン(0.264g,1.50mmol)のエーテル(10mL)溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、−78℃で2時間、室温で1時間撹拌した後、反応混合物を水に注ぎ、エーテル抽出する。得られたエーテル層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー精製する事により目的とする上記式(27)に示されるジオール体を0.561g(0.841mmol,56%)得た。
【0086】
最後に、下記化学式(8)
【化30】
で示される2,5−ビス(4−N−カルバゾリルフェニル)−1,6−メタノ[10]アヌレンを以下の手順で合成した。
【0087】
まず、上記式(27)で示されるジオール体(0.534g,0.801mmol)とp−トルエンスルホン酸ピリジニウム(0.0101g,0.0401mmol)をベンゼン(6mL)に溶解し、2時間還流させる。室温まで冷却した後、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(0.182g,0.801mmol)を加え、さらに2時間還流した。反応終了後、減圧下溶媒を留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー精製する事により目的とする化学式(8)の架橋アヌレンを0.192g(0.305mmol,38%)得た。
【0088】
この化合物は、ペールイエローの針状体であり、融点は145℃であった。
【0089】
また、この化合物の1H NMR及び13C NMRの測定結果は以下の通りである。
【0090】
1H NMR (CDCl3-TMS)δ = -0.33 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 0.25 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 7.05 (t, J = 7.3 Hz, 4H), 7.15 (d, J = 8.6 Hz, 4H), 7.17 (d, J = 8.0 Hz, 8H), 7.20 (s, 2H), 7.21 (dd, J = 5.8, 2.4 Hz, 2H), 7.29 (t, J = 7.8 Hz, 8H), 7.58 (dd, J = 5.7, 2.6 Hz, 2H), 7.67 (d, J = 8.5 Hz, 4H).
13C NMR (CDCl3-TMS) δ= 35.95, 117.16, 123.07, 123.13, 124.64, 125.19, 128.22, 128.81, 129.32, 131.47, 134.19, 142.32, 147.35, 147.63。
【0091】
[実施例1]
以下本発明の実施例1として、化学式(7)に示すメタノ[10]アヌレンのカルバゾール置換体(PhCz methano[10]annulene、以下PhCzメタノ[10]アヌレンと示す)と、上記CBPの膜形状の比較を以下のような方法により行った。
【0092】
まず、石英基板上に真空装置内で100nmの厚さに、それぞれ化学式(7)に示すPhCzメタノ[10]アヌレンの有機薄膜と、CBPの有機薄膜を形成した。その後、各薄膜を大気中に1年間放置した。その表面を原子間力顕微鏡(atomic force microscope:AFM(tappingmode))(Digital Instruments社製)を用いて表面粗さ(Ra)を測定した。
【0093】
その結果、CBPの場合は、薄膜が凝集し、表面が粗くなり、Ra=7.7nmであった。一方、本発明にかかる化学式(7)のPhCzメタノ[10]アヌレンの場合には1年経っても膜質は変化せず、Ra=0.4nmであった。このように、本発明にかかる化合物の内、カルバゾールを分子中に備える架橋アヌレン誘導体は、同様のカルバゾールを分子中に備えるCBPと比較して、長期間膜表面の平滑性を保つことが可能であり、このことから、薄膜とした場合の耐久性が飛躍的に向上することが理解できる。
【0094】
[実施例2]
実施例2として、上記化学式(7)のPhCzメタノ[10]アヌレン及び上記化学式(8)のメタノ[10]アヌレンのトリフェニルアミン置換体(TPAmethano[10]annulene、以下TPAメタノ[10]アヌレンと示す)の各PL(photoluminescence)スペクトルの評価結果を説明する。
【0095】
石英基板上に100nmの厚さに積層した化学式(7)のPhCzメタノ[10]アヌレンを254nmの光で励起した。この場合、水色発光が得られ、図3に示すように、484nmにピークを有するPLスペクトルとなった。また、半値幅は76nmであり、急峻なピークが得られた。
【0096】
石英基板上に100nmの厚さに積層した化学式(8)のTPAメタノ[10]アヌレンを365nmの光で励起した。この場合、上記化学式(7)の化合物より長波長の黄緑色発光が得られ、図4に示すように、510nmにピークを有するPLスペクトルとなった。また、半値幅は86nmであり、急峻なピークが得られた。
【0097】
[実施例3]
実施例3として、上記化学式(7)のPhCzメタノ[10]アヌレンの吸収スペクトルの評価結果を説明する。
【0098】
石英基板上に100nmの厚さに積層した化学式(7)のPhCzメタノ[10]アヌレンの吸収スペクトルでは、238nm,295nm,345nm,371nmに吸収ピークが現れた。吸収端から光学的エネルギーギャップを求めると、2.8eVとなった。
【0099】
[実施例4]
実施例4として、上記化学式(7)のPhCzメタノ[10]アヌレン及び上記化学式(8)のメタノ[10]アヌレンのトリフェニルアミン置換体(TPAmethano[10]annulene、以下TPAメタノ[10]アヌレンと示す)のイオン化ポテンシャルの測定結果を説明する。
【0100】
光電子分光装置AC−2(理研計器製)を用い、シリコン基板上に100nmの厚さに形成された化学式(7)のPhCzメタノ[10]アヌレン薄膜及び化学式(8)のTPAメタノ[10]アヌレン薄膜の各イオン化ポテンシャルを測定した。
【0101】
その結果、化学式(7)のアヌレンのイオン化ポテンシャル値は5.9eVであった。光学的エネルギーギャップが2.8eVであることより、LUMOレベルが3.1eVであると予想される。また、化学式(8)のアヌレンのイオン化ポテンシャル値は、5.5eVであった。
【0102】
なお、正孔輸送材料として知られているトリフェニルアミンのイオン化ポテンシャル値は5.5eV、α−NPD及びTPTEが5.4eVである。したがって、本発明にかかる上記式(7)、式(8)等に示される架橋アヌレン化合物、特に化学式(8)に示される架橋アヌレンは、上記公知の正孔輸送材料と同程度の高い正孔輸送能力を備えることがわかる。
【0103】
[実施例5]
実施例5として、上記化学式(7)に示すPhCzメタノ[10]アヌレンを発光材料として用いた有機EL素子について説明する。素子構造の概要は、図1と同じであり、ガラス基板100上に、ITOからなる陽極10、α−NPDからなる40nmの正孔輸送層22、化学式(7)のPhCzメタノ[10]アヌレンからなる20nmの発光層24、BCPからなる20nmの正孔ブロック層26、Alq3からなる30nmの電子輸送層28、陰極12を構成する電子注入層14/金属層16として、LiF(0.5nm)/Al(150nm)の積層体が順に形成されて構成されている。
【0104】
この素子を駆動したところ、化学式(7)のアヌレン化合物に起因した水色の発光がガラス基板100側にて観察された。図5は、この素子の発光スペクトルを示しており、注入電流密度が11mA/cm2の条件下で、図3に示した化学式(7)の化合物のPLスペクトルとほぼ同じ484nm付近をピークとする半値幅の狭いピークが得られた。また、外部量子効率の最大値は、1.1mA/cm2の注入電流密度の条件下で、0.7%であった。
【0105】
[実施例6]
実施例6として、上記化学式(8)に示すTPAメタノ[10]アヌレンを発光材料として用いた有機EL素子について説明する。素子構造は、発光材料が化学式(8)の化合物である点を除き、上記実施例5と同一である。
【0106】
この素子を駆動したところ、化学式(8)のアヌレン化合物に起因した黄緑色の発光がガラス基板100側にて観察された。図6は、この素子の発光スペクトルを示しており、注入電流密度が11mA/cm2の条件下で、図4に示した化学式(8)の化合物のPLスペクトルとほぼ同じ510nm付近をピークとする半値幅の狭いピークが得られた。また、外部量子効率の最大値は、0.2mA/cm2の注入電流密度の条件下で、1.6%であった。
【0107】
[実施例7]
実施例7として、燐光発光型の有機EL素子を作成した例について説明する。この燐光発光型素子では、上記化学式(7)に示すPhCzメタノ[10]アヌレン化合物をホスト材料として利用した。リン光性ドーパントとして赤色発光のPtOEPを用いた。素子構造は図1と同様であるが、具体的には以下のとおりである。
【0108】
即ち、ガラス基板100の上に、ITOからなる陽極10、α−NPDからなる25nmの正孔輸送層22、化学式(7)のPhCzメタノ[10]アヌレンからなるホスト材料中にドーパント材料として10.9重量%のPtOEPをドープした35nmの厚さの発光層(燐光発光層)24、BCPからなる20nmの正孔ブロック層26、Alq3からなる30nmの電子輸送層28、陰極12を構成する電子注入層14/金属層16として、LiF(0.5nm)/Al(150nm)の積層体が順に形成されて構成されている。
【0109】
この素子を駆動したところ、注入電流密度が低い条件下では、PtOEP由来の赤色発光(メインピーク649nm)が得られた。図7は、注入電流密度が0.55mA/cm2におけるこの有機EL素子のELスペクトルを示す。図7に示されるように、この素子では、半値幅の狭い急峻なピークが実現されており、色純度の高い発光素子に有用であることが理解できる。
【0110】
この素子を注入電流密度をさらに増加させて駆動したところ、550mA/cm2において白色発光が得られた。図8は、このような高い注入電流密度(550mA/cm2)における、この有機EL素子のELスペクトルを示す。図8に示されるように、この白色発光は、化学式(7)のアヌレン化合物に起因した水色発光(484nm)と、PtOEP由来の赤色発光(649nm)の2色の加色により達成されている。この白色高について測定したCIEの色度座標は、(x,y)=(0.322,0.318)であり、色純度の良い白色光が得られることが分かる。
【0111】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の架橋アヌレン化合物は、メチレン架橋部が、共役平面上に突き出た構造であって、薄膜化した場合の結晶性が低いため、薄膜の安定性が高く、また発光材料などとして用いた場合にもエキシマーの生成を抑制して発光色の色ずれ防止が容易となる。
【0112】
また、本発明のように架橋アヌレンの置換基にトリフェニルアミン,カルバゾール,フェニルカルバゾール等を含む化合物や、架橋アヌレンの多量体構造を有する化合物では、高い融点が実現され、また、高い電荷輸送機能や発光機能などを発揮し又は単量体と比較して向上させることができる。したがって、この材料を用いて例えば有機EL素子を構成することで、素子の耐久性、色純度の向上、発光効率の向上などを達成することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかる有機EL素子の概略断面構造を示す図である。
【図2】 本発明にかかる化合物をホスト材料と組み合わせ可能なドーパント材料を説明するための本発明のホスト材料の発光スペクトルを示す図である。
【図3】 実施例2にかかる化学式(7)の化合物のPLスペクトルを示す図である。
【図4】 実施例2にかかる化学式(8)の化合物のPLスペクトルを示す図である。
【図5】 実施例5にかかる化学式(7)の化合物を発光材料に用いた有機EL素子のELスペクトルを示す図である。
【図6】 実施例6にかかる化学式(8)の化合物を発光材料に用いた有機EL素子のELスペクトルを示す図である。
【図7】 実施例7にかかる化学式(7)の化合物をホスト材料として採用しPtOEPをドーピング材料として用いた有機EL素子のELスペクトルを示す図である。
【図8】 実施例7の素子に対する注入電流密度を高めた際のELスペクトルを示す図である。
【符号の説明】
10 陽極、12 陰極、14 電子注入層、16 金属層、22 正孔輸送層、24 発光層、26 正孔ブロック層、28 電子輸送層、100 基板(ガラス基板)、200 有機層。
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