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JP4319945B2 - 焼き入れ性と加工牲に優れた高炭素鋼板 - Google Patents
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JP4319945B2 - 焼き入れ性と加工牲に優れた高炭素鋼板 - Google Patents

焼き入れ性と加工牲に優れた高炭素鋼板 Download PDF

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Description

本発明は、主として自動車部品に使用される焼き入れ性と加工性の優れた高炭素鋼板に関する。
自動車部品(ギヤー、ミッション)、チェーン等に使用される高炭素鋼板は、打ち抜き、成型加工後に焼き入れ、焼き戻し等の熱処理が施され、所望の強度に調整される。このため、高炭素鋼板は、熱処理前には軟質で延性に富み、加工後の熱処理時には焼き入れ性が良好であることが要求される。
近年、機械部品の製造コストを低減するため、部品加工の工程省略が進められている。また、従来は、複雑な形状の部品は、いくつかの部品を溶接したり、プレス加工後に切削加工することによって製作されていたが、これを一体成型することが進められている。
このため、従来にもまして焼き入れ性を損なうことなく、加工性の良好な鋼板が要求されるようになった。一般に、加工用の高炭素鋼板は炭化物の球状化焼鈍をすることで製造されており、加工性を良好にする球状化焼鈍方法が特許文献1、特許文献2等に開示されている。
特許文献1には、伸びフランジ性に優れた高炭素鋼板の製造方法に関し、Ac1温度以上で保持後に、5〜30℃/hrで冷却し、冷却途中にAr1−80℃〜Ar1点温度で2〜60時間の保持を行ない、鋼板の組織的特徴は、炭化物粒径を大きくさせると共に、炭化物平均間隔も大きくさせることにあるという技術が開示されている。
また、特許文献に2は、局部延性に優れた高炭素鋼板の製造法に関し、Ac1〜Ac1+100℃の温度範囲に保持、未溶解炭化物量を特定密度にした後、50℃/hr以下の冷却速度で冷却し、鋼板の組織的な特徴は、やはり、球状炭化物粒径を大きくさせ、炭化物粒子間隔を大きくさせることにあるという技術が開示されている。
しかし、この方法は、多段階の焼鈍を行なうので、実際の生産においては大容量のコイルを焼鈍することが必要となり、さらにコイルの温度制御に長時間を必要とするため、焼鈍時間が長くなり、生産性を著しく悪くする。また、高炭素鋼板の加工の主なものは、変形が局所に集中することが多く、大きな炭化物が存在するとその周りに低歪でボイドが生成し、加工性が必ずしも良好でなく、厳しい加工性が要求される用途には適用できない。
他に、加工性を良好にする手段として、炭化物球状化率、炭化物平均粒径、フェライト結晶粒径を制御する技術が特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7等に開示されている。
特許文献3では、炭化物球状化率を90%以上、炭化物粒径を0.4〜1.0μmに制御し、加工性と焼き入れ性が良好とされる高炭素鋼板が開示されているが、この技術で製造した高炭素鋼板は、必ずしも優れた加工性を示さない。
特許文献4には、熱延、冷延、焼鈍条件を制御することにより、平均粒径が0.7μm以下で最大粒径が1.6μm以下のセメンタイトおよび平均粒径が4.0μm以上のフェライト粒を形成させる自動車用高炭素鋼板の製造方法が開示されているが、この技術で製造された高炭素鋼板も優れた加工性を必ずしも示さない。
特許文献5に開示されている技術は、熱延、冷延、焼鈍条件を制御し、平均フェライト粒径が2.0μm以上、平均粒径が1.1μm以下、平均アスベクト比が1.5以下のセメンタイトを形成する成型性および焼き入れ性に優れた高炭素鋼板の製造方法である。この方法で製造された高炭素鋼板は、焼き入れ性は優れているが、加工性が必ずしも満足を得るものでない。
また、特許文献6において開示されている技術は、球状化率が80%以上の球状化焼鈍を行い、30%以上の冷間圧延をし、600℃〜Ac1温度で焼鈍する製造法であるが、高炭素鋼板では通常に用いられている条件の製造法で、十分な加工性が得られない。
さらに、特許文献7における開示技術は、通常に熱延し、冷却時に560〜650℃で2〜10秒保持し、600℃以下で巻き取り、冷延、焼鈍する製造方法であるが、この方法で製造した鋼板は、加工性が不十分である。
このような状況から、機械部品メーカーにおける成型工程の簡略化、一体成型、熱処理の低温短時間化に対応できる高炭素鋼板の提供が求められている。
特開平11−140544号公報 特開2000−273537号公報 特開平11−80884号公報 特開平11−189823号公報 特開平11−189827号公報 特開2000−45029号公報 特開2000−45031号公報
本発明は、上記の従来技術の欠点を克服し、安定して優れた加工性を有し、かつ焼き入れ性の優れた高炭素鋼板を提供することを目的とする。
高炭素鋼板を加工した場合の加工時の割れは、鋼板をミクロ的に観察した結果、炭化物の周りに生じるボイドを起点に発生することを知見した。炭化物の周りで生じるボイドは、炭化物の大きさが大きいほど低い歪で生じ、炭化物が小さいほどボイドが生じる歪は大きくなる。また、炭化物の周りに生じたボイドは、連結して割れに発展する。このため、炭化物の大きさに不均一があると相対的に割れが低歪で生じやすくなる。
また、フェライト粒径は、炭化物と共に主要な組織要因であるが、鋼板の硬さには直接に影響しても、実際の加工時には大きな影響を及ぼさないことを知見した。
本発明は、この知見に基づき完成したもので、その要旨は、C:0.20〜0.99質量%を含有する鋼からなり、炭化物の平均粒径が0.4〜1.0μm、炭化物粒径の標準偏差/炭化物平均粒径が1.0以下であることを特徴とする焼き入れ性と加工性の優れた高炭素鋼板にある。
以下、本発明の限定理由について説明する。
Cは、加工性と焼き入れ後の硬さに直接影響する。C量が0.20質量%以下になると焼き入れ後、機械部品として十分な強度が得られない。C量が多くなると炭化物が多くなり、加工時に炭化物の周りにボイドが生成され、このボイドが連結する機構で破断が進行するため、加工性が劣化する。また、C量が0.99%を超えると、均一な炭化物の鋼板を製造するのが困難になるため、C量の上限を0.99質量%に特定した。
さらに、本発明のように、炭化物粒径分布を精緻に制御して加工性を確保する場合には、下記のように、Cを0.45%超とすることが望ましい。
炭化物の平均粒径と炭化物粒径の標準偏差/炭化物の平均粒径は重要な用件である。炭化物粒径は、加工時のボイドの生成する歪量に影響し、炭化物が微細になると、ボイドが生じる歪は大きくなるが、ボイドが連結して、クラックが発生する歪が低くなる。このため、炭化物の平均粒径の下限を0.4μmに特定した。一方、炭化物粒径が大きくなると加工時に炭化物の周りに生成するボイドが大きくなり、これを起点に破断が進行する過程で割れが進行し、やはり割れが生じる歪が低下し、加工性を悪くするので、炭化物平均粒径の上限を1.0μmに限定した。
C:0.45質量%、Si:0.15質量%、Mn:0.65質量%、P:0.010質量%、S:0.002質量%、Al:0.015質量%の鋼を溶解炉で溶製し、凝固速度を変えて鋼塊を造った。この鋼塊を1240℃に加熱後、熱延仕上温度:790〜880℃、圧延後の冷却条件を種々に変えて、巻取り温度:450〜680℃で3.5mm厚の鋼板を製造し、酸洗後に、630〜720℃×6〜96時間の焼鈍を行なった。この鋼板の圧延方向と平行な断面の炭化物を走査型電子顕微鏡で観察し、各々の炭化物の投射面積を測定して、これを真円と仮定してその直径を求めた。さらに、この炭化物粒径の標準偏差を計算した。炭化物の測定個所は10視野以上、炭化物口数が2000個以上になるように測定した。
成型高さが3.5mmのモジュール:0.4のギャーをプレスで成型し、ギャー部を外観し、クラックが観察されないものは歯の山部断面を光学顕微鏡で、ミクロクラックの有無を観察した。外観観察でギャーが完全に成型できていて、断面にミクロクラックの無いものを評点5、ギャーが完全に成型できているが、断面にミクロクラックが観察されるものを評点4、外観に微細なクラックが存在するものを評点3、明らかにクラックが観察されるものを評点2、ギャー高さの10%以上の割れが観察されるものを評点1で評価し、各々10個成型し、10個の平均値で加工性を評価した。
炭化物粒径が0.61〜0.67μmの鋼板について、炭化物粒径の標準偏差/炭化物平均粒径と加工評点の関係を図1に示した。炭化物の粒径にバラツキが大きくなると加工評点は悪くなり、加工性が劣化する。この加工では、評点4以上が合格となる。また、合格となる炭化物粒径の標準偏差/炭化物平均粒径は1.0である。この事実から良好な加工性が得られる条件として、標準偏差/炭化物平均粒径は1.0以下を特定した。好ましい範囲は、同様の理由から0.80以下である。
炭化物の標準偏差/炭化物平均粒径<1.0に炭化物を制御することで加工性が良好になる機構は定かではないが、本発明者は、次のように考えている。
高炭素鋼板の加工時には、炭化物の周りに生じるボイドが連結することで破断が進行するが、炭化物の周りに生じるボイドは、炭化物の大きさに依存し、このボイドが大きいとこれを起点に破断が進行し、ボイドが小さい時は、ボイドが連結する形態で破断が進行する。
また、炭化物粒径のバラツキが小さいと、大きなボイドが生じる炭化物を少なくすると同時に、各々の炭化物周りでの歪が均一に分担されるため、ボイドが生じる歪を大きくする効果があり、加工性が良好になる。
このため、炭化物の平均粒径、炭化物の粒径のバラツキを小さくすることによって加工性を良好にする効果は、炭化物量が多いほど、即ち、上述の如くC:0.45%超の鋼で顕著となる。
この発明は、加工性と焼き入れ性を両立するにあたり、単に炭化物の粒径を制御するだけでなく、炭化物の粒径のバラツキをも制御することで、加工時のボイドの生成とその連結を抑制することができる。この結果、極めて加工性が優れ、かつ焼き入れ性の優れた高炭素鋼板を提供することができる。この炭素鋼板を用いることにより、自動車の駆動系機械部品等の加工において、加工度を高く取ることができ、製造工程を省略して低コストで部品等の製造が可能となり、工業的に極めて有効な発明である。
この発明の鋼は、C:0.20〜0.99質量%を含有する他は、炭化物の平均粒径とそのバラツキが前述のものであれば良い。その他の化学成分については特に規定せず、Si,Mn,P,S,Al,N,Cr,Moなどの元素は、通常の範囲で含有しても本発明の特徴を損なわない。但し、好ましくは次のようにすると良い。
Siは、鋼板を硬質にし、加工性を損なうと同時に、鋼板の表面欠陥の原因となるので、1.0質量%以下にすることが好ましい。
Mnは、過剰に添加すると延性の低下を引き起こすと同時に、炭化物の粒径バラツキを大きくし、加工性を劣化させる傾向があるので、1.5質量%以下とすることが好ましい。
P,Sは、共に過剰に添加すると延性を低下させるので、0.03質量%以下とすることが好ましい。
Alは、過剰に添加すると鋼板の表面欠陥の原因となりやすいので、0.08質量%以内で添加することが好ましい。
Crは、炭化物に固溶し、炭化物の粗大化を抑制したり、熱延後のパーライト変態挙動を通して、炭化物粒径のバラツキを少なくする働きがあるが、多量に添加すると鋼板を硬質にし、加工性を劣化させるので、添加する時は、1.0質量%以下とすることが好ましい。
Nは、Al,Siと結合し、窒化物を形成し、焼き入れ時のγ粒径を介して、焼き入れ性、靭性に影響するが、通常の焼き入れ条件では影響が小さいので、0.010質量%以内とすることが好ましい。
Moは、焼き戻し抵抗を高める元素であるが、炭化物の球状化を遅らせ、再結晶温度を高めるため、球状化焼鈍あるいは再結晶焼鈍を長時間行なう必要が生じるので、添加する場合は0.30%以内で添加することが好ましい。
さらに、目的に応じて、通常添加される範囲で、Ti,B,Ni,Nb,V,Ca,Mg等の元素を添加しても良い。これらの元素は、本発明の特徴に特に影響を及ぼさない。また、製造過程で不可避的に混入する不純物も本発明の特徴を損なわない。
上記のように成分調整された鋼は、連続鋳造、あるいは造塊−分塊圧延によりスラブを造る。この際、スラブの成分偏析は、鋼板の炭化物粒径のバラツキを大きくするので、凝固時は偏析を小さくするように細心の注意を払うことが好ましい。
スラブは熱間圧延に供されるが、その際、スラブ加熱温度は、スケール生成による表面状況の劣化を避けるため、1280℃以下とすることが好ましい。熱間圧延の仕上温度は、加工性の観点からAr3点温度〜Ar3点+50℃間で行なうことが好ましい。巻取り温度は、鋼板の炭化物サイズおよびバラツキに影響する。
巻取り温度が低いと炭化物が小さくなり、巻取り温度が高いと、炭化物の粒径が大きくなると同時にバラツキも大きくなるので、500〜650℃で巻き取ることが好ましい。仕上圧延後の冷却は、炭化物サイズ分布に影響するので、パーライト変態が恒温で進行するように、変態発熱による温度上昇を注水冷却することで昇温を抑えることが望ましい。
このようにして製造された熱延鋼帯は、酸洗等の手段で脱スケールして、球状化焼鈍、あるいは、冷間圧延して焼鈍、または熱延酸洗鋼帯を焼鈍後に冷間圧延、焼鈍されて製品に供される。
熱延鋼帯を酸洗後に直接あるいは球状化焼鈍後に冷間圧延する場合の冷間圧延率は、炭化物を均一な大きさに制御するために、20%以上にすることが望ましい。一方、冷間圧延率が高くなると、必然的に熱延鋼帯の板厚が厚くなり、炭化物のバラツキが大きくなりやすいので、70%以下の冷間圧延率を採用することが好ましい。
また、熱延鋼帯の球状化焼鈍、冷間圧延後の焼鈍は、大きな粒径の炭化物を多くしないために、Ac1温度以下の温度で行なうことが好ましい。
このようにして製造された鋼板は、必要に応じ、調質圧延して機械部品等の加工に供される。
本発明の高炭素鋼板は、熱延鋼板でも、冷延鋼板でもよく、いずれの場合も本発明の特徴の効果を得ることができる
質量%で、C:0.50%、Si:0.12%、Mn:0.72%、P:0.012%、S:0.002%、Al:0.012%、N:0.0045%の組成の鋼を転炉で溶製し、連続鋳造でスラブを造った。連続鋳造の一部は鋳造速度を通常の1.4倍に速めて行い、一部は電磁攪拌装置を用いて、等軸晶率を高める鋳造方法を採用した。このスラブを1240℃に加熱保持後に仕上温度が800〜870℃、巻取り温度が450〜710℃で4.0mm厚みの熱間圧延を行なった。この鋼板を酸洗後に610〜720℃で保持時間を14〜96時間に変えた焼鈍を行った。この鋼板の圧延方向に平行な断面の炭化物平均粒径と炭化物粒径の標準偏差を測定した。
この鋼板を図2に示す形状の部品にプレス加工した。このプレス加工でのポイントは、ギャー部成型の良否にある。そこで、成型品のギャー部を外観観察し、割れが認められず、その山部の断面観察でミクロクラックも無いものを評点:◎、ギャー部を外観観察し、割れは認められないが、その山部の断面観察ではミクロクラックが観察されるものを評点:○、外観観察で微細な割れが認められるものを評点:△で、ギャー部に2mm以上の割れが観察されるものを評点:×で評価した。
また、焼き入れ性を評価するため、810℃に3分保定後に60℃の油中に焼き入れを行い、その硬さをビッカス硬さで測定した。この鋼板の焼き入れ硬さは、Hv:550以上であれば合格である。これらの測定結果を表1に記載した。
Figure 0004319945
鋼No.1,2,3は、炭化物粒径、炭化物粒径の標準偏差/炭化物平均粒径が共に本発明範囲内の実施例である。これらの鋼板は、いずれも焼き入れ硬さがHv:650以上と焼き入れ性に優れ、加工部品のギャー部に外観観察でクラックが観察されず、しかも、ギャー山部の断面でもミクロクラックも観察されず、優れた加工性を示すことが分かる。
鋼No.4は、炭化物の平均粒径が1.20μmと本発明範囲から外れた比較例である。炭化物粒径が大きいと焼き入れ硬さが低く、加工部品でもギャー部にクラックが生じ、加工性、焼き入れ性共に、本発明の実施例より劣る。
鋼No.5は、炭化物平均粒径が0.35μmと本発明の下限から外れた比較例である。この鋼板は、焼き入れ性は良好であるが、加工部品のギャー部に微細なクラックが観察され、加工性が不十分である。
鋼No.6は、炭化物の平均粒径は0.78μmで、本発明範囲内にあるが、炭化物粒径の標準偏差/炭化物平均粒径が1.20と炭化物粒径のバラツキが大きい比較例である。この鋼板は、やはり加工部品のギャー部にクラックが観察され、ほぼ同一の炭化物平均粒径の鋼No.3に比べて加工性が劣ることがわかる。
このように、単に炭化物粒径だけでなく、そのバラツキをも制御することによって、はじめて優れた加工性と焼き入れ性を兼備した高炭素鋼板の提供が可能となることが分かる。
炭化物の平均粒径が0.4〜1.0μm、炭化物粒径の標準偏差/炭化物平均粒径が1.0以下に制御する方法は種々あるが、鋼No.1は、電磁攪拌を用い、等軸晶率を70%とした連続鋳造スラブを1240℃に加熱後、仕上温度:815℃で4.21mm厚みに熱間圧延した。熱延後の冷却は、仕上温度〜620℃まで、20℃/秒の冷却速度で注水冷却し、620±5℃の温度でパーライト変態が完了するように注水し、巻取り温度を610℃で行なった。この鋼板を5%の調質圧延後に酸洗、690℃×64時間の焼鈍、0.5%の調質圧延して製造した。
鋼No.2は、巻取り温度が625℃、パーライト変態温度が620〜630℃間で進行するように注水し、他の条件は鋼No.1とほぼ同じである。
鋼No.3、は連続鋳造時に未凝固域で軽圧下を行い、スラブを造った。このスラブを1240℃に加熱後、仕上温度:810℃で4.00mm厚みに熱間圧延した。熱延後の冷却は、仕上温度〜620℃まで、20℃/秒の冷却速度で注水冷却し、610〜620℃の温度でパーライト変態が進行するように注水し、巻取り温度を600℃で行なった。この鋼板を酸洗、690℃×64時間の焼鈍、0.5%の調質圧延して製造した。
質量%で、C:0.50%、Si:0.12%、Mn:0.72%、P:0.012%、S:0.002%、Al:0.012%、N:0.0045%の組成の鋼を転炉で溶製し、連続鋳造でスラブを造った。連続鋳造の一部は鋳造速度を通常の1.4倍に速めて行い、一部は電磁攪拌装置を用いて、未凝固域軽圧下を行う鋳造方法を採用した。このスラブを1240℃に加熱保持後に仕上温度が800〜870℃、巻取り温度が450〜710℃で熱間圧延を行なった。この鋼板を酸洗後に、冷間圧延率:20〜70%の冷間圧延後に、610〜720℃で保持時間を14〜96時間に変えた焼鈍を行った。なお、最終の鋼板厚みは4.0mmで、冷間圧延率により、熱間圧延板厚を調整した。この鋼板の圧延方向に平行な断面の炭化物平均粒径と炭化物粒径の標準偏差を測定した。
この鋼板を図2に示す形状の部品にプレス加工した。このプレス加工でのポイントは、ギヤー部成型の良否にある。そこで、成型品のギャー部を外観観察し、割れが認められず、その山部の断面観察でミクロクラックも無いものを評点:◎、ギャー部を外観観察し、割れは認められないが、その山部の断面観察ではミクロクラックが観察されるものを評点:○、外観観察で微細な割れが認められるものを評点:△で、ギャー部に2mm以上の割れが観察されるものを評点:×で評価した。
また、焼き入れ性を評価するため、810℃に1分保定後に60℃の油中に焼き入れを行い、その硬さをビッカス硬さで測定した。この鋼板の焼き入れ硬さは、Hv:550以上であれば合格である。これらの測定結果を表2に記載した。
Figure 0004319945
鋼No.11は、炭化物平均粒径が0.72μmで、炭化物粒径の標準偏差/炭化物平均粒径が0.68と本発明範囲の実施例である。この鋼板を、連続鋳造時に電磁攪拌を付加し、成分偏析をできるだけ少なくするようにして造られたスラブを、加熱温度:1240℃、仕上温度:805℃、巻取り温度:600℃で熱延し、パーライト変態温度を620〜630℃でパーライト変態が進行するように、注水冷却した後、冷間圧延率:45%、680℃×24時間の焼鈍を行ない、製造した。焼き入れ硬さは、Hv:635で十分な硬さが得られ、加工性もギャー部に割れが観察されず、ギャー山部の断面にミクロクラックも無く、良好な加工性を示した。
鋼No.12,13も共に炭化物大きさ、分布ともに本発明範囲内の実施例である。この鋼も焼き入れ性、および加工性が共に優れた特性を有することが分かる。鋼No.12は、鋼No.11とパーライト変態温度域が590〜600℃、巻取り温度が580℃と異なる以外はほぼ同じ条件で製造した。鋼No.13は、連続鋳造時に未凝固域で軽圧下を加えてスラブを造り、熱延仕上温度:800℃、巻取り温度:620℃で熱延し、酸洗後に35%の冷間圧延、680℃×14時間の焼鈍で製造した。
鋼No.14は、炭化物平均粒径が0.25μmと本発明範囲の下限を下回り、しかも粒径のバラツキが大きい比較例である。この鋼板の焼入れ後の硬さは高いが、加工時に外観観察で、ギャー部にクラックが観察され、本発明範囲内の実施例に比較して加工性が劣ることが分かる。
鋼No.15は、炭化物平均粒径が1.35μmと本発明範囲から外れた比較例である。この鋼板は、焼き入れ硬さがHv:520と他の鋼板に比べて低く、焼き入れ性が劣ると同時に、加工晶のギャー部にクラックが観察され、加工性も劣ることが分かる。
鋼No.16は、炭化物平均粒径が0.81μmで本発明範囲内であるが、炭化物粒径の標準偏差/炭化物平均粒径が1.32と炭化物粒径のバラツキが大きい鋼板である。この鋼板は、炭化物粒径が同じ鋼No.13に比較して、焼き入れ硬さが若干低い上に、加工品のギャー部にクラックが観察され、加工性も劣る。
このように、炭化物の粒径だけでなく、そのバラツキをも特定範囲内に制御することにより、初めて、加工性と焼き入れ性の優れた高炭素鋼板の提供が可能となることが分かる。
質量%で、C:0.50%、Si:0.15%、Mn:0.68%、P:0.009%、S:0.0002%、Al:0.008%、N:0.0048%の組成の鋼を転炉で溶製し、連続鋳造でスラブを造った。このスラブを1240℃に加熱保持後に、仕上温度が790〜880℃、巻取り温度が480〜700℃で熱間圧延し、5.8mm厚みの鋼板を造った。この鋼板を酸洗後に600〜730℃で14〜64時間保持する焼鈍を行い、続いて、4.0mm厚みまで冷間圧延した。この冷延鋼板を600〜690℃で保持時間が16〜46時間の焼鈍を行なった。この鋼板の圧延方向と平行な断面の炭化物の平均粒径および炭化物粒径の標準偏差を測定した。炭化物粒径の測定は、ピクリン酸腐食液で腐食後に走査型電子顕微鏡で観察して、炭化物の面積を測定し、炭化物が真円と仮定して面積からその炭化物粒径を求め、各々の炭化物粒径からその標準偏差を求めた。なお、炭化物粒径測定は、少なくとも10視野以上、測定個数が2000個以上となるように行なった。
この鋼板を図2に示す形状にプレス加工し、加工性の評価を行なった。このプレス加工でのポイントはギャー部成型の良否にある。そこで、成型品のギャー部を外観観察し、割れが認められず、その山部の断面観察ではミクロクラックも無いものを評点:◎、ギャー部を外観観察し、割れは認められないが、その山部の断面観察ではミクロクラックが観察されるものを評点:○、外観観察で微細な割れが認められるものを評点:△で、ギャー部に2mm以上の割れが観察されるものを評点:×で評価した。
また、焼き入れ性を評価するため、810℃に10秒保定後に60℃の油中に焼き入れを行い、その硬さをビッカス硬さで測定した。
Figure 0004319945
鋼No.21,22は、炭化物平均粒径、炭化物粒径の標準偏差/炭化物平均粒径が共に本発明範囲内の実施例である。いずれの鋼板も焼き入れ硬さが高く、加工品のギャー部が完全に成型され、加工の厳しいギャー山部の断面にも微細なミクロクラックも認められず、優れた加工性と焼き入れ性を兼備した高炭素冷延鋼板であることが分かる。
鋼No.21,22は、電磁攪拌を付与して連続鋳造でスラブを造った。このスラブは、通常のスラブに比し、成分偏析が1/3程度に減少していた。鋼No.21は、仕上温度:805℃、巻取り温度:605℃、熱延後の冷却はパーライト変態が595〜610℃で進行するように注水制御した。一次焼鈍は680℃×32時間、二次焼鈍は660℃×18時間で行った。鋼No.22は、仕上温度:790℃、巻取り温度:615℃、熱延後の冷却はパーライト変態が610〜620℃で進行するように注水制御した。一次焼鈍は690℃×32時間、二次焼鈍は670℃×18時間で行った。
鋼No.23は、炭化物平均粒径が1.35μmと本発明の上限から外れた比較例である。この鋼板は、焼き入れ硬さが低く、加工品のギャー部にクラックが生じ、加工性、焼き入れ性共に本発明範囲内の実施例に比較して劣る。
鋼No.24は、炭化物平均粒径が本発明範囲の下限から外れた比較例である。この鋼板で加工した部品のギャー部に、クラックが観察され、加工性が劣る。
鋼No.25は、炭化物平均粒径は本発明範囲内であるが、炭化物粒径の標準偏差/炭化物平均粒径が本発明範囲から外れ、1.25と炭化物粒径のバラツキが大きい比較例である。この鋼板も加工部品のギャー部にクラックが観察され、同一炭化物平均粒径の鋼No.22に比べ、加工性が劣ることが分かる。
このように、炭化物平均粒径だけでなく、炭化物粒径のバラツキも小さくする制御を行なうことにより、初めて優れた加工性と焼き入れ性を両立する高炭素冷延鋼板の提供が可能となることが分かる。
この発明は、加工性と焼き入れ性を両立するにあたり、単に炭化物の粒径を制御するだけでなく、炭化物の粒径のバラツキを制御することで、加工時のボイドの生成とその連結を抑制することができる。その結果、極めて加工性が優れ、かつ焼き入れ性の優れた高炭素鋼板を提供することができる。この炭素鋼板を用いることにより、自動車の駆動系機械部品等の加工において加工度を高く取ることができ、製造工程を省略して低コストで部品等の製造が可能となり、工業的に極めて有効な発明である。
炭化物粒径の標準偏差/炭化物平均粒径と加工性評点の関係を示す図。 加工部品の形状の概略を示す図。

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C :0.20〜0.99%、
    Si:1.0%以下、
    Mn:1.5%以下、
    P :0.03%以下、
    S :0.03%以下、
    Al:0.08%以下、
    N :0.010%以下、
    残部Feおよび不可避的不純物からなり、
    炭化物の平均粒径が0.4〜1.0μm、
    炭化物粒径の標準偏差/炭化物平均粒径が0.5以上1.0以下であることを特徴とする焼き入れ性と加工性の優れた高炭素鋼板。
  2. 更に、質量%で、Cr:1.0%以下、Mo:0.30%以下のいずれか一種または二種を含有することを特徴とする請求項1に記載の焼き入れ性と加工性の優れた高炭素鋼板。
  3. 質量%で、
    C :0.45超〜0.99%、
    Si:1.0%以下、
    Mn:1.5%以下、
    P :0.03%以下、
    S :0.03%以下、
    Al:0.08%以下、
    N :0.010%以下、
    残部Feおよび不可避的不純物からなり、
    炭化物の平均粒径が0.4〜1.0μm、
    炭化物粒径の標準偏差/炭化物平均粒径が0.5以上1.0以下であることを特徴とする焼き入れ性と加工性の優れた高炭素鋼板。
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