JP4327516B2 - 無線通信装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空間分割多重通信を行う無線通信装置に関し、特に、無線通信装置の省電力化を図る技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話システム等の移動無線通信システムの利用者の急増に伴い、周波数資源の有効利用に対する社会的要請が高まっている。この要請に応える1つの技術に空間分割多重方式による通信がある。
空間分割多重方式とは、無線基地局と当該無線基地局から異なる方向に位置する複数の移動局それぞれとの間で、アンテナ装置の指向性を利用することによって同時刻に単一の搬送波を用いて多重通信する方式である。
【0003】
この方式には、指向性を適応制御できるアダプティブアレイアンテナ装置が用いられる。アダプティブアレイアンテナ装置は、固定的に設置された複数のアンテナを備え、個々のアンテナの送受信信号間に適切な振幅比と位相差とを与えることによって、アンテナ装置全体として、所望方向に大きな利得を有し(ビームを向けるとも言う)かつ非所望方向に小さな利得を有する(ヌル点を向けるとも言う)指向性パターンを形成する。アダプティブアレイアンテナ装置を用いた指向性パターンの適応制御の動作原理と構成について、例えば、非特許文献1に詳細に述べられているので、ここでは説明を省略する。
【0004】
従来の無線基地局は、アダプティブアレイアンテナ装置を用いて、多重通信している複数の移動局それぞれに異なる指向性パターンを形成し、形成した指向性パターンを用いて各移動局との間で信号を送受信する。この種の無線基地局の構成、及び、そこで指向性パターンを形成するために行われる信号処理について、特許文献1に詳しく開示されている。
【0005】
空間多重分割方式によれば、ある移動局用に形成される指向性パターンの他の移動局方向に向けた利得は、現実には無限小にまでは小さくならないから、ある移動局へ宛てた送信信号は他の移動局方向に向けてもある程度漏洩する。そして、この漏洩した送信信号は他の移動局にとっての干渉信号となる。
一般に、通信品質に関して、ビットエラーレートを所期の目標値以下に抑制するために、所望信号の電力と干渉信号の電力との間に、変調方式に応じて定まる所定の比(所要D/U比と称する)と同等か又はそれを上回る電力比がなければならないことは周知である。
【0006】
このため、従来の無線基地局は、各移動局方向において、その移動局用の指向性パターンと他の移動局用の指向性パターンとの間に所定の利得比を持たせることによって、送信信号の電力と干渉信号の電力との間に所要D/U比を与えている。
図7は、従来の無線基地局が2つの移動局と多重通信している場合の、各移動局へ宛てた送信信号の送信電力(縦軸)と当該無線基地局からの方向(横軸)との関係の典型例を表すグラフである。図7に見られるように、従来の無線基地局は、各移動局方向において、送信信号の電力と干渉信号の電力との間に、所要D/U比を満たす一律の電力比を与えている。
【0007】
【特許文献1】
特許第3113637号公報
【0008】
【非特許文献1】
「アレーアンテナによる適用信号処理」、菊間信良著、科学技術出版刊、1998年11月25日初版、第3章
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来技術の無線基地局は各移動局方向に向けて送信信号と干渉信号との間に一律の電力比を与えることから、多重している移動局毎に異なる変調方式を用いる場合、所要D/U比が小さい変調方式を用いる移動局に必要以上に大きな送信電力で信号を送信することとなって、無線基地局の省電力化が阻害されるという問題が生じる。
【0010】
上記の問題に鑑み、本発明は、空間分割多重方式により複数の移動局と多重通信する無線基地局に適用可能な無線通信装置であって、多重通信している各移動局方向に向けて、送信信号と干渉信号との間に、その移動局に用いる変調方式に応じた電力比を与える無線通信装置の提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
(1)上記問題を解決するため、本発明の無線通信装置は、複数の移動局それぞれに向けた送信信号を、個別の指向性パターンに従って合成して送信することによって、空間分割多重通信を行う無線通信装置であって、各送信信号を、個別の変調方式を用いて変調する変調手段と、各送信信号の最大送信電力を、当該送信信号の変調に用いた変調方式に応じて個別に決定する決定手段と、各送信信号を、前記決定された最大送信電力それぞれを所望方向に生ぜしめる個別の指向性パターンに従って合成して送信する送信手段とを備える。
(2)また、前記決定手段は、各送信信号について、当該送信信号の最大送信電力と、当該最大送信電力が生じる方向に他の送信信号が漏洩する漏洩電力との比が、当該送信信号の変調に用いた変調方式に応じて所定のビット誤り率を達成するために必要な比と同等か又はそれを上回る大きさに、各最大送信電力を決定してもよい。
(3)また、前記決定手段は、各最大送信電力を、その合計が自装置から送信可能な最大電力を超えない大きさに決定してもよい。
【0012】
【発明の実施の形態】
本実施の形態における無線通信装置は、時分割多重アクセス(TDMA:Time Division Multiple Access)方式と空間分割多重アクセス(SDMA:Space Division Multiple Access)方式とを併用して、複数の移動局と無線通信する無線基地局である。時分割多重アクセス方式と空間分割多重アクセスとを併用する点で、本無線基地局は、従来実施されている無線基地局、例えばPHS(Personal Handy phone System)規格に従う無線基地局、と共通している。
【0013】
しかしながら、本無線基地局は、空間分割多重する個々の移動局へ宛てた情報信号それぞれを、固有の変調方式を用いて変調し、かつそれぞれの変調方式に応じた固有の強度で1つの周波数の搬送波に多重して送信するという、従来にない特徴を有している。
以下、この特徴を実現するための構成と、そこからもたらされる効果とについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、従来と共通する事項については、簡略に説明するか又は説明を省略する。
(1.全体構成)
図1は、第1の実施の形態における無線基地局100の全体構成を示す機能ブロック図である。無線基地局100は、アダプティブアレイ部10、変復調部40、ベースバンド部50、制御部60、及び記憶部70から構成される。
【0014】
アダプティブアレイ部10、変復調部40、及びベースバンド部50における信号処理機能は、DSP(Digital Signal Processor)がメモリに記憶されているプログラムを実行することによって実現される。制御部60の機能は、CPU(Central Processing Unit)がメモリに記憶されているプログラムを実行することによって実現される。
【0015】
制御部60は、移動局から制御チャネルを通して既定の変調方式を用いて送信されるリンクチャネル割り当て要求情報に応じて、当該移動局との本体的な通信に使用するリンクチャネル、変調方式、及び当該移動局宛ての送信信号の送信電力を決定する。当該既定の変調方式は、例えばπ/4QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調方式であってもよい。そして、記憶部70は、当該決定されたリンクチャネル、変調方式、及び送信電力の調整量を示す電力係数を対応付けて記憶する。この決定処理については、後に詳述する。
【0016】
その後、無線基地局100の各部は、決定されたリンクチャネルを通して移動局との間で本体的な通信を行う。
ベースバンド部50は、電話交換網等のネットワークを介して、図外の複数の通信装置からそれぞれ、音声又はデータ等を表す送信情報信号を取得する。そして、当該取得された送信情報信号を時分割多重信号に時分割多重し、当該時分割信号を変復調部40に出力する。また、変復調部40から入力された時分割多重信号を、前記複数の通信装置それぞれへの受信情報信号に時分割分離し、当該ネットワークを介して供給する。
【0017】
こうした時分割多重及び時分割分離処理は、例えば従来のPHS規格に準じて実施できる。その場合の時分割多重信号は、5mSの周期で繰り返されるTDMAフレームによって表され、1つのTDMAフレームは、4つの送信タイムスロットと4つの受信タイムスロットとに8等分され、送信、受信各々1つのタイムスロットの組が、1つの移動局との双方向のリンクチャネルを構成する。つまり、1つの時分割多重信号に、4つのリンクチャネルが収容される。
【0018】
無線基地局100が、4つのこのような時分割多重信号を空間分割多重するとした場合、タイムスロット毎、分割される空間(以降、パスと称する)毎に、最大で16のリンクチャネルが1つの周波数の搬送波によって形成される。そして、この場合、ベースバンド部50は、空間分割多重される4つの信号を並列処理する。
【0019】
変復調部40は、ベースバンド部50から与えられ空間分割多重されるべき4つの時分割多重信号をそれぞれ送信信号に変調し、変調して得られた各送信信号をアダプティブアレイ部10へ出力する。また、変復調部40は、アダプティブアレイ部10から空間分割分離して得られた4つの受信信号を与えられ、それぞれを時分割多重信号に復調し、復調して得られた各時分割多重信号をベースバンド部50へ出力する。
【0020】
変復調部40は、空間分割多重される各信号の各タイムスロット期間を、信号が収容されるパスとタイムスロットとに対応付けて記憶部70に記憶されている変調方式を用いて変調及び復調する。なお、変復調部40が処理する変調方式は全て、実現方法が周知であるものとする。例えば、16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)、π/4QPSK、BPSK(BiPhase Shift Keying)を処理するものとして、それぞれを処理する回路を備え、タイムスロット毎に必要な回路を動作させる。
【0021】
アダプティブアレイ部10は、パス毎に個別の指向性パターンを形成し、形成した指向性パターンを用いてそのパスに収容される信号を送受信する。アダプティブアレイ部10は、さらに、空間分割多重される各送信信号の各タイムスロット期間における信号レベルを、送信信号が収容されるパス及びタイムスロットに対応付けて記憶部70に記憶されている電力係数に応じて調整し、当該調整後の各送信信号を送信する。アダプティブアレイ部10については、後に詳述する。
(2.電力係数決定処理)
図2は、制御部60が実行する電力係数決定処理を示したフローチャートである。
【0022】
この処理は、空間分割多重メンバに変動があったタイムスロットについて実行され、当該変動後の各移動局の電力係数を決定する。ここで空間分割多重メンバの変動とは、そのタイムスロットにおいて、新たな移動局が空間分割多重に参加すること、及び、移動局が空間分割多重から離脱することを言う。
この処理は、記憶部70に保持されている所要D/U比情報を参照し、電力係数情報を更新する。
【0023】
図3は、所要D/U比情報を保持するためのテーブルの一具体例である所要D/U比テーブル200を示している。所要D/U比テーブル200は、変調方式欄201、及び所要D/U比欄202を有している。
変調方式欄201は、変復調部40が処理可能な各変調方式の識別名を保持し、所要D/U比欄202は、変調方式に対応する所要D/U比を保持する。
【0024】
ここで、所要D/U比を、便宜上、最大所要D/U比を0dBとするdB値によって表している。最大所要D/U比の具体的な実装値は、回路構成や使用する部品の精度特性といった実装上の要因を考慮して決定される設計事項である。
図4は、電力係数情報を保持するためのテーブルの一具体例である電力係数テーブル300を示している。電力係数テーブル300は、タイムスロット欄301、パス欄302、変調方式欄303、電力配分比欄304、及び電力係数欄305を有している。
【0025】
タイムスロット欄301はタイムスロットを識別するスロット番号を保持し、パス欄302はパスを識別するパス番号を保持し、変調方式欄303は当該タイムスロットの当該パスに設けられるリンクチャネルで使用する変調方式を保持し、電力配分比欄304は当該タイムスロットで無線基地局100が出力可能な全送信電力の各パスへの配分比を保持し、電力係数欄305は当該リンクチャネルで送信する送信電力の調整量を保持する。
【0026】
以下、電力係数決定処理の各ステップを詳細に説明する。
(ステップS01:変調方式の記録)
このステップは、リンクチャネルでの通信に用いると決定された変調方式を、電力係数テーブル300の当該リンクチャネルに対応する変調方式欄303に記録する。
【0027】
変調方式を決定するための手順は、従来のPHS規格に規定されたリンクチャネル割り当て手順に組み込んで容易に実現できる。一具体例として、移動局が無線基地局100へ送信するリンクチャネル割り当て要求情報を、従来のPHS規格に規定されているリンクチャネル割り当て要求情報の各フィールドに、当該移動局が使用を希望する変調方式を表す変調方式フィールドを追加したフォーマット(不図示)で表すことが考えられる。
【0028】
この場合、制御部60は、移動局が変調方式フィールドに示した変調方式を承認する場合にのみ、当該移動局へリンクチャネル割り当て通知情報を返信すればよい。そして、制御部60は、割り当てたリンクチャネルに対応する変調方式欄303に、承認した変調方式を記録する。
また、このステップでは、通信が終了した場合、当該通信を行っていたリンクチャネルに対応する変調方式欄に、当該リンクチャネルが未使用となったことを表す記号を記録する。
(ステップS02:電力配分比の算出)
このステップは、無線基地局100から出力可能な全送信電力の各パスへの配分比を示す電力配分比を、次のように算出する。
【0029】
電力係数テーブル300から、空間分割多重メンバに変動があったタイムスロットについて、有効な変調方式が記録されているパスを検索する。そのようなパスがただ一つある場合、つまり、当該タイムスロットでの通信が空間分割多重することなく行われている場合には、全送信電力を示す1をそのパスに対応する電力配分比欄304へ記録する。
【0030】
そのようなパスが2つ以上ある場合には、まず、所要D/U比テーブル200から各パスに使用される変調方式に対応する所要D/U比を検索し、検索された所要D/U比のうちの最大値と2番目に大きな値との差の半分を補正値として求める。次に、最大の所要D/U比はそのままで、それ以外の各D/U比には当該求めた補正値をそれぞれ加えて、補正D/U比とする。そして、当該各補正D/U比に従って全送信電力1を配分した電力配分比を算出する。
【0031】
このステップは、図4に示した具体例に対して、次のように適用される。
タイムスロット1に適用した場合、16QAMを使用する1つのパスと、BPSKを使用する1つのパスが検索される。補正値は(0−(−6.02))/2から3.01と求まり、各パスの補正D/U比は、0dB、−3.01dBである。全送信電力1をこの補正D/U比である約1:0.5に配分して得られる0.667及び0.333が、対応するパスの電力配分比欄304に記録される。
【0032】
タイムスロット2に適用した場合、16QAMを使用する1つのパスと、π/4QPSKを使用する1つのパスと、BPSKを使用する2つのパスが検索される。補正値は(0−(−3.01))/2から1.51と求まり、各パスの補正D/U比は、パス番号順に、−4.51dB、−1.50dB、−4.51dB、0dBである。全送信電力1をこの補正D/U比である約0.354:0.707:0.354:1に配分して得られる0.146、0.293、0.146、0.414が、対応するパスの電力配分比欄304に記録される。
(ステップS03:電力係数の算出)
このステップは、各パスに配分された電力配分比の0.250に対するdB値を算出し、それを各パスの電力係数と決定する。ここで、0.250とは、送信電力が各パス均等に配分された場合の電力配分比である。
【0033】
このステップは、図4に示した具体例に対し、次のように適用される。
タイムスロット1に適用した場合、各パスの電力配分比は、パス番号順に、0.667、0.333であり、0.250に対するdB値である4.26、1.25が、対応するパスの電力係数欄305に記録される。
タイムスロット2に適用した場合、各パスの電力配分比は、パス番号順に、0.146、0.293、0.146、0.414であり、それぞれの0.250に対するdB値である−2.33、0.69、−2.33、2.91が、対応するパスの電力係数欄305に記録される。
【0034】
このようにして、リンクチャネル、つまり、タイムスロットとパスの組毎に、電力係数が決定され、電力係数テーブル300に記録される。
(3.アダプティブアレイ部10の詳細)
図5は、アダプティブアレイ部10の詳細な構成を示す機能ブロック図である。アダプティブアレイ部10は、アンテナ11〜14、無線部20、信号処理部30から構成される。
【0035】
無線部20は、ローノイズアンプを用いて実現される受信部21、ハイパワーアンプを用いて実現される送信部22、及び、送受信切り替えスイッチ23を含む。信号処理部30は、DSPを用いた信号処理によって実現される指向性制御部31〜34、及び加算器360を含む。
指向性制御部31〜34は、例えば最小二乗誤差法を用いて、タイムスロット毎、パス毎に個別の指向性パターンを形成する。最小二乗誤差法の論理的な根拠、並びに具体的な計算方法は、従来の技術の項で引用した非特許文献1に詳述されている周知事項である。ここでは、指向性制御部31の動作について、1つの受信タイムスロット、1つのパスに着目して簡単に説明する。
【0036】
受信信号調整部310は、受信ウェイト計算部320から供給される受信ウェイトベクトルと呼ばれる複素ベクトルと、受信部21から供給されるアンテナ毎の受信信号とを複素乗算することよって、受信信号にアンテナ個別の振幅及び位相変化を与えてから、加算合成する。
参照信号生成部340は、所望される受信信号を表す参照信号を生成し、受信ウェイト計算部320は、参照信号生成部340から供給される参照信号と受信信号調整部310から得られる合成信号との誤差を減少させる方向に、受信ウェイトベクトルを逐次修正する。
【0037】
この操作によって、誤差を極小化する最適受信ウェイトベクトルが得られる。最適受信ウェイトベクトルを適用して得られた合成信号において、所望信号成分は極大化され、かつ非所望信号成分は極小化される。つまり、所望方向に大きな利得を有し、かつ非所望方向に小さな利得を有する受信指向性パターンが形成される。
【0038】
送信ウェイト計算部330は、最適受信ウェイトベクトルを受信タイムスロット毎に記憶する。そして、各送信タイムスロットにおいて、直前の対応する受信タイムスロットで記憶した最適受信ウェイトベクトルに基づいて送信ウェイトベクトルを算出する。
送信信号調整部350は、送信ウェイト計算部330から供給される送信ウェイトベクトルを用いて、変復調部40から供給される送信信号にアンテナ個別の振幅及び位相変化を与え、その結果信号を対応するアンテナから送信することによって、受信指向性パターンと等しい送信指向性パターンを形成する。
(4.送信電力の調整)
次に、送信信号の、各タイムスロット期間における送信電力を調整するための構成について説明する。
【0039】
送信ウェイト計算部330は、自らが処理するパスの各送信タイムスロットに適用される電力係数を、電力係数テーブル300の対応する電力係数欄305から取得する。
そして、送信タイムスロット毎に、対応する最適受信ウェイトベクトルを取得された電力係数でスカラー倍することによって送信ウェイトベクトルを算出し、当該算出された送信ウェイトベクトルを送信信号調整部350へ供給する。
【0040】
送信信号調整部350は、このスカラー倍操作によって得られた送信ウェイトベクトルを用いることで、最適受信ウェイトベクトルを用いた場合と同等の利得比を有する指向性パターンを形成し、かつ送信信号の振幅を調整する。
指向性制御部32〜34もまた、それぞれが処理するパスについて、並列して同様の動作を行う。
【0041】
なお、ウェイトベクトルのスカラー倍操作は送信信号の振幅調整操作なので、dB表示された電力係数に対して、実際の倍率を10の(電力係数/20)乗倍として与えることで、相応する電力比が得られる点に注意する。
(5.具体例)
図6は、前述した構成によって得られる、送信電力と当該無線基地局からの方向との関係の一例を示すグラフであり、図4の電力係数テーブル300のタイムスロット1の数値に基づいて一具体例を描いている。
【0042】
ここで、実線がパス1に収容される移動局Aに宛てた送信信号Aの送信電力、破線がパス2に収容される移動局Bに宛てた送信信号Bの送信電力を表している。d、uは、4つの信号に送信電力が均等配分された場合の各信号の最大電力、最小電力である。そして(d−u)は、アダプティブアレイ部10が有する方向分離性能に応じて各信号一律にもたらされる電力比である。
【0043】
送信信号A、Bは個々に振幅調整され、送信信号Aの送信電力は均等配分時に比べて4.26dBアップ、送信信号Bの送信電力は均等配分時に比べて1.25dBアップされる。
そして、図から明らかなように、移動局Aの方向における所望信号と干渉信号との比は(d−u+3.01)であり、移動局Bの方向における所望信号と干渉信号との比は(d−u−3.01)である。
【0044】
この場合、16QAMの所要D/U比をRDU16QAMと表記し、アダプティブアレイ部10が、少なくともRDU16QAM−3.01の電力比(実施の形態では、この値をπ/4QPSKの所要D/U比として例示した)を各信号にもたらすだけの方向分離性能を有していれば、移動局A、移動局Bそれぞれの方向における所望信号と干渉信号との比が、RDU16QAM、(RDU16QAM−6.02)となるので、16QAM信号と、BPSK信号とを、適正に空間分割多重できる。
【0045】
また、アダプティブアレイ部10が、RDU16QAMの方向分離性能を有していれば、送信信号Bの送信電力を図6からさらに−3.01dBダウンできるので、送信電力をさらに削減して無線基地局の省電力化に貢献できる。
(その他の変形例)
なお、本発明を上記の実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上記の実施の形態に限定されないのはもちろんである。以下のような場合も本発明に含まれる。
(1)本発明は、実施の形態で説明した方法を、コンピュータシステムを用いて実現するためのコンピュータプログラムであるとしてもよいし、前記プログラムを表すデジタル信号であるとしてもよい。
【0046】
また、本発明は、前記プログラム又は前記デジタル信号を記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD、MO、DVD、BD、半導体メモリ等であるとしてもよい。
また、本発明は、電気通信回線、無線又は有線通信回線、若しくはインターネットに代表されるネットワーク等を経由して伝送される前記コンピュータプログラム又は前記デジタル信号であるとしてもよい。
【0047】
また、本発明は、マイクロプロセッサ及びメモリを備えたコンピュータシステムであり、前記メモリは前記プログラムを記憶しており、前記マイクロプロセッサは前記メモリに記憶されている前記プログラムに従って動作することにより、前記方法を実現するとしてもよい。
また、前記プログラム又は前記デジタル信号は、前記記録媒体に記録されて移送され、若しくは、前記ネットワーク等を経由して移送され、独立した他のコンピュータシステムにおいて実施されるとしてもよい。
(2)無線基地局と、移動局とが、通信を継続しながら使用する変調方式を切り替え可能な場合には、実施の形態で述べた空間分割多重メンバが変動する場合として、変調方式を切り替える場合を含めてもよい。
(3)ステップS02の電力配分比の算出処理において、最大の所要D/U比を与える送信信号が複数ある場合には、前述した補正値の加算を行わない。この補正値の加算は、最大の所要D/U比を与える送信信号がただ1つである場合に、2番手の送信信号の送信電力が低減することによって、所望信号と干渉信号との比が拡大することを考慮したものだからである。
(4)送信信号の電力調整を行うための別法として、電力係数に応じた利得を生じる可変利得アンプを用いてもよい。この場合、例えば指向性制御部31における送信信号調整部350の前段にそのような可変利得アンプを設け、変復調部40から取得した送信信号のレベルを調整した後、送信信号調整部350へ引き渡すことが考えられる。このような可変利得アンプは、他にも、変復調部40からパス毎の送信信号を加算合成するための加算器360までの間の、好適な箇所に挿入できる。
【0048】
【発明の効果】
(1)本発明の無線通信装置は、複数の移動局それぞれに向けた送信信号を、個別の指向性パターンに従って合成して送信することによって、空間分割多重通信を行う無線通信装置であって、各送信信号を、個別の変調方式を用いて変調する変調手段と、各送信信号の最大送信電力を、当該送信信号の変調に用いた変調方式に応じて個別に決定する決定手段と、各送信信号を、前記決定された最大送信電力それぞれを所望方向に生ぜしめる個別の指向性パターンに従って合成して送信する送信手段とを備える。
【0049】
この構成によれば、空間分割多重する送信信号それぞれを、変調方式に応じた必要最小限の送信電力で送信できるようになるので、無線基地局の省電力化に貢献できる。
(2)また、前記決定手段は、各送信信号について、当該送信信号の最大送信電力と、当該最大送信電力が生じる方向に他の送信信号が漏洩する漏洩電力との比が、当該送信信号の変調に用いた変調方式に応じて所定のビット誤り率を達成するために必要な比と同等か又はそれを上回る大きさに、各最大送信電力を決定してもよい。
【0050】
この構成によれば、前述した必要最小限の送信電力を、変調方式に応じたビット誤り率に応じて決定するので、無線基地局の省電力化に加えて、適正な通信品質の確保が可能となる。
(3)また、前記決定手段は、各最大送信電力を、その合計が自装置から送信可能な最大電力を超えない大きさに決定してもよい。
【0051】
この構成によれば、前述した効果に加えて、送信可能な最大電力を上限として各送信信号に最適な電力配分を行うことができる。
(4)本発明の無線通信方法は、複数の移動局それぞれに向けた送信信号を、個別の指向性パターンに従って合成して送信することによって、空間分割多重通信を行う通信方法であって、各送信信号を、個別の変調方式を用いて変調する変調ステップと、各送信信号の最大送信電力を、当該送信信号の変調に用いた変調方式に応じて個別に決定する決定ステップと、各送信信号を、前記決定された最大送信電力それぞれを所望方向に生ぜしめる個別の指向性パターンに従って合成して送信する送信ステップとを含む。
【0052】
この構成によれば、前記(1)と同様の効果が得られる。
(5)本発明のプログラムは、複数の移動局それぞれに向けた送信信号を、個別の指向性パターンに従って合成して送信することによって、空間分割多重通信を行う無線通信装置を制御するための、コンピュータ実行可能なプログラムであって、各送信信号を、個別の変調方式を用いて変調する変調ステップと、各送信信号の最大送信電力を、当該送信信号の変調に用いた変調方式に応じて個別に決定する決定ステップと、各送信信号を、前記決定された最大送信電力それぞれを所望方向に生ぜしめる個別の指向性パターンに従って合成して送信する送信ステップとをコンピュータに実行させる。
【0053】
この構成によれば、前記(1)と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】無線基地局の全体構成を示す機能ブロック図である。
【図2】電力係数決定処理を示すフローチャートである。
【図3】所要D/U比テーブルの内容例である。
【図4】電力係数テーブルの内容例である。
【図5】アダプティブアレイ部の詳細構成を示す機能ブロック図である。
【図6】無線基地局が送信する送信信号の送信電力と方向との関係を示すグラフである。
【図7】従来の無線基地局が送信する送信信号の送信電力と方向との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
10 アダプティブアレイ部
11〜14 アンテナ
20 無線部
21 受信部
22 送信部
23 送受信切り替えスイッチ
30 信号処理部
31〜34 指向性制御部
40 変復調部
50 ベースバンド部
60 制御部
70 記憶部
100 無線基地局
200 所要D/U比テーブル
300 電力係数テーブル
310 受信信号調整部
320 受信ウェイト計算部
330 送信ウェイト計算部
340 参照信号生成部
350 送信信号調整部
360 加算器
Claims (5)
- 複数の移動局それぞれに向けた送信信号を、個別の指向性パターンに従って合成して送信することによって、空間分割多重通信を行う無線通信装置であって、
各送信信号を、個別の変調方式を用いて変調する変調手段と、
各送信信号の変調に用いた変調方式に応じて定まる所要D/U比に基づいて、各移動局への送信に用いる電力を配分して各移動局への送信に係る最大送信電力を個別に決定する決定手段と、
各送信信号を、前記決定された最大送信電力により各移動局へと送信する送信手段と
を備えることを特徴とする無線通信装置。 - 前記決定手段は、各送信信号について、当該送信信号の最大送信電力と、当該最大送信電力が生じる方向に他の送信信号が漏洩する漏洩電力との比が、当該送信信号の変調に用いた変調方式に応じて所定のビット誤り率を達成するために必要な比と同等か又はそれを上回る大きさに、各最大送信電力を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。 - 前記決定手段は、各最大送信電力を、その合計が自装置から送信可能な最大電力を超えない大きさに決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。 - 複数の移動局それぞれに向けた送信信号を、個別の指向性パターンに従って合成して送信することによって、空間分割多重通信を行う通信方法であって、
無線通信装置が、各送信信号を、個別の変調方式を用いて変調する変調ステップと、
前記無線通信装置が、各送信信号の変調に用いた変調方式に応じて定まる所要D/U比に基づいて、各移動局への送信に用いる電力を配分して各移動局への送信に係る最大送信電力を個別に決定する決定ステップと、
前記無線通信装置が、各送信信号を、前記決定された最大送信電力により各移動局へと送信する送信ステップと
を含むことを特徴とする無線通信方法。 - 複数の移動局それぞれに向けた送信信号を、個別の指向性パターンに従って合成して送信することによって、空間分割多重通信を行う無線通信装置を制御するための、コンピュータ実行可能なプログラムであって、
各送信信号を、個別の変調方式を用いて変調する変調ステップと、
各送信信号の変調に用いた変調方式に応じて定まる所要D/U比に基づいて、各移動局への送信に用いる電力を配分して各移動局への送信に係る最大送信電力を個別に決定する決定ステップと、
各送信信号を、前記決定された最大送信電力により各移動局へと送信する送信ステップと
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
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