以下に図面を参照して、本発明の一実施形態による複合部材の製造方法を説明する。
まず、多孔質基材の空孔内に感光性層を形成して、図1に示すような感光性層を有する多孔質基材を用意する。多孔質基材としては、三次元的に形成された連続空孔を有していれば、いかなる絶縁性物質からなるものであってもよく、具体的にはポリマーやセラミックス等が挙げられる。
ポリマーとしては、例えば、エポキシ樹脂や、ビスマレイミド−トリアジン樹脂、PEEK樹脂、ブタジエン油脂等プリント配線基板の絶縁基材として従来からよく用いられる樹脂や、その他ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリビニルエチレン等のポリジエン類、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリスチレン誘導体、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル等のポリアクリロニトリル誘導体、ポリオキシメチレン等のポリアセタール類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等や芳香族ポリエステル類を含むポリエステル類、ポリアリレート類、アラミド樹脂等の芳香族ポリアミドやナイロン等のポリアミド類、ポリイミド類、エポキシ樹脂類、ポリp−フェニレンエーテル等の芳香族ポリエーテル類、ポリエーテルスルホン類、ポリスルホン類、ポリスルフィド類、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系ポリマー、ポリベンゾオキサゾール類、ポリベンゾチアゾール類、ポリパラフェニレン等のポリフェニレン類、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリシロキサン誘導体、ノボラック樹脂類、メラミン樹脂類、ウレタン樹脂類、ポリカルボジイミド樹脂類等が挙げられる。
上述したような有機材料は、例えば延伸法、相転換法などでシート状に作製して用いることができる。具体的にはPTFEの延伸シートやポリスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミドなどの相転換法による多孔質シートなどである
これら多孔質基材の中でも、低誘電率で耐熱性に優れることから、ポリマー類が好ましく、特にポリイミド類、芳香族ポリアミド類などの液晶性ポリマー類、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系ポリマー類などを用いることが好ましい。
また、ブロックコポリマーの三次元網目状のミクロ相分離構造から特定の相を選択的に除去して作製した多孔質シートは同一シート内での空孔径が揃っているので、微細導電部を形成するのに適しており最も好ましい。ミクロ相分離構造から特定の相を選択的に除去する手法としては特に限定されないが、例えばオゾン酸化やβ線照射によって特定の相のポリマーを分解した後に溶媒洗浄などの手法で分解物を除去して多孔質化する方法が用いられる。
ミクロ相分離構造から作製される多孔質シートの材料としては、ポリカルボオキシシランシートや架橋ポリブタジエンシートやポリシクロヘキセンシートなどが挙げられる。また、ミクロ相分離構造の特定の相を熱分解させて揮発させることによって除去してもよく、ポリイミドなどの耐熱性ポリマーの多孔質シートを作製することができる。
セラミックスとしては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、チタン酸カリウム等の金属酸化物、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。こうした無機材料を用いて、例えば、ゾルゲル法、エマルジョンテンプレーティング法などで作製される多孔質セラミックシートを用いることができる。
さらに、上述したような多孔質シートに親水化処理等の表面処理により改質した多孔質シートを多孔質基材として用いてもよい。
多孔質基材における空孔の平均空孔径は、0.05μmから10μmの範囲内であること好ましく、0.05μmから5μmの範囲にあることがより好ましく、さらには、0.1μmから0.5μmの範囲にあることが望ましい。平均空孔径が小さすぎる場合には、多孔質基材内部まで導電物質を充填するのが困難となる。一方、大きすぎると、微細な導電部を形成することが難しい。空孔径があまり大きいとめっきで形成する場合にはめっき核分布密度が不十分になったり、また微細な導電部が形成しにくくなる。多孔質基材の平均空孔径は小角X線散乱測定、光散乱測定や、断面の光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡などの観察によって測定することができる。
こうした多孔質基材の空孔内には、図1に示すように感光性層を形成する。感光性層は、後の工程で導電物質を充填して導電部を選択的に形成するために用いられ、露光によって、露光部または未露光部のいずれかに、陽イオン交換基および陰イオン交換基の少なくとも一方を形成させることの可能な層である。この感光性層は、感光性還元剤、金属塩等から構成される材料等によって形成される。
陽イオン交換基は、陽イオンを吸着可能な基、または塩基と反応して陽イオン化して親水性を発現することが可能な基であり、陰イオン性の基および酸性基が挙げられる。例えば、カルボキシル基およびその塩(−COOX基)、スルホキシル基およびその塩(−SO3X基)、リン酸基およびその塩(−PO3X2基)、シラノール基およびその塩(−SiOX基)、フェノール性水酸基およびその塩(−φ−OX基(Xは水素原子、アルカリ金属やアルカリ土類金属および周期律表I、II族に属する典型金属、およびアンモニウム基から選択される。φは2価の芳香環))などが挙げられる。
なお、金属イオン、金属化合物または金属コロイドをイオン交換性基に吸着させて無電解めっきを行なう場合には、水中でのイオン解離定数から求めたpKa値が7.2以下を呈する陽イオン交換基がより好ましい。pKa値が7.2を越えた場合には、金属イオンあるいは金属コロイドを吸着させる際に単位面積あたりの吸着量が少なく、無電解めっきが充分に行なわれないおそれがある。また、陽イオン交換基では充分な吸着量が得られる−COOX基が最もよい。さらに、−SO3X基は吸着量が充分なものの、複合部材の製造後に強酸を発生して導電部を腐食するおそれがある。
陰イオン交換基は、陰イオンを吸着可能な基、または酸と反応して陰イオン化し、親水性を発現することが可能な基であり、陽イオン性の基および塩基性の基が挙げられる。陽イオン性の基としては、例えば、アンモニウム基等の脂肪族系アミン、あるいは、芳香族系アミンの4級アンモニウム塩誘導体基、あるいは、ピリジニウム基やイミダゾリウム基等の含窒素複素環の4級アンモニウム塩誘導体基が挙げられる。
なお、上述したように選択的にイオン交換基を形成するもののみならず、多孔質基材空孔内表面に形成された感光性層が露光により多孔質基材を構成する絶縁性物質と化学反応を起こし、多孔基材を構成する絶縁性物質が変化して露光部に選択的にイオン交換基を形成するような方法で作用する感光性材料によって、感光性層を形成してもよい。こうした材料としては、例えば、疎水性のフッ素樹脂製多孔質基材をフッ素原子と容易に結合する性質を有し、露光によって樹脂から遊離したフッ素原子をトラップする作用を有するような水酸基、カルボキシル基、およびアミノ基等のイオン交換基を有する化合物が挙げられる。この場合には、イオン交換基がフッ素樹脂に導入され、この部分にめっき等によって導電物質を選択的に充填することが可能になる。
上述したように感光性層は、露光を施すことによって、無電解めっきの反応開始点であるめっき核が形成されることが必要である。
「露光によって」とは、化学反応を生じさせるきっかけを指すものであり、感光性層が露光されたときに化学反応を生じ、単独でイオン交換基が形成される場合に行なわれる露光を含む。また、感光性層が露光されたときに化学反応が生じて何らかのイオン交換基の前駆体が生成され、この前駆体がさらに化学反応を生じることによりイオン交換基が形成される場合、いわゆる露光による化学反応をきっかけとする多段階反応によりイオン交換基が形成される場合に行なわれる露光も含む。
露光により単独でイオン交換基を生成する分子としては、カルボン酸あるいはシラノールのo−ニトロベンジルエステル誘導体、p−ニトロベンジルエステルスルフォネート誘導体が挙げられる。さらには、tert−ブチルエステルの過酸化物のような過酸化エステル類も用いられ、こうした過酸化エステル類を露光すると、陽イオン交換基のカルボキシル基が形成される。
露光による化学反応をきっかけとする多段階反応によりイオン交換基を生成分子としては、例えば、キノンジアジド類やアジド誘導体等が挙げられる。キノンジアジド類は、露光によって生じた中間体が水と反応することによって、インデンカルボン酸類へ変化してカルボキシル基が生成される。具体的には、ベンゾキノンジアジド、ナフトキノンジアジド、アントラキノンジアジドなどのo−キノンジアジド誘導体が挙げられる。アジド基は、露光によってナイトレンを生成し、その後の水素引き抜き反応によってアミノ基などを生成する。
さらに、光酸発生剤と、酸の存在下でイオン交換基を生成する基を含む分子とを含有する化学増幅型の感光剤を用いることもできる。このような感光剤を用いる場合には、露光後に熱処理が施される。この結果、感度を高めるとともに露光波長を長波長側にシフトさせることができる。例えば、アクリル樹脂にテトラヒドロピラニル基やtert−ブチル基を保護基として導入してなる化合物と、光酸発生剤としてナフタルイミドトリフルオロメタンスルホネートとを用いたものなどが挙げられる。
露光によりイオン交換基を消失する基や分子は、照射前にはイオン交換基を有し、このイオン交換基が露光によって脱離するか、疎水性基に変化する基や分子である。具体的には、脱炭酸反応を生じて分解可能なカルボキシル基を含有する基や分子が挙げられる。例えば、α−シアノカルボン酸誘導体、α−ニトロカルボン酸誘導体、α−フェニルカルボン酸誘導体、α−ニトロカルボン酸誘導体、α−フェニルカルボン酸誘導体、β,γ−オレフィンカルボン酸などが挙げられる。塩基性化合物としては、光酸発生剤から放出される酸によって中和され、カルボキシル基含有化合物の脱炭酸反応の触媒として作用するものであれば任意のものを用いることができ、有機化合物および無機化合物いずれでも構わない。好ましくはアンモニア、1級アミン類、2級アミン類、3級アミン類等が挙げられる。
光塩基発生剤や塩基性化合物の含有量は、感光性層中0.1重量%〜30重量%、好ましくは0.5重量%〜15重量%とするのがよい。0.1重量%未満であれば、脱炭酸反応が進まなくなり、30重量%を越えると、未露光部に残存するカルボキシル基含有化合物の劣化を促すおそれがある。
感光性層は、後の工程で金属イオン、金属化合物または金属コロイドを吸着させる際や導電物質を充填する際に、アルカリ性または酸性の水溶液中に曝される。こうした水溶液に容易に溶解するのを避けるため、感光性層形成用材料に含有されるイオン交換基を生成あるいは消失する基は、ポリマーや高分子化合物等に担持あるいは結合されていることが望まれる。ポリマーや高分子化合物としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、キシレノールノボラック樹脂、ビニルフェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のフェノール系樹脂やポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアクリル酸エステル誘導体、およびポリシロキサン誘導体等が挙げられる。
ポリマー中におけるイオン交換基を生成あるいは消失する基の導入量は、少なすぎると金属イオン、金属化合物または金属コロイドを十分に吸着させることが困難となる。その結果、金属イオン、金属化合物または金属コロイドを吸着させたり導電物質を充填する際に、使用するアルカリまたは酸性の液などへ溶解や膨潤が生じやすくなる。さらに、作製した複合部材が吸湿しやすくなって、絶縁不良などの不具合を起こしやすくなる。イオン交換基を生成あるいは消失する基のポリマー中への導入量は好ましくは5%〜300%、より望ましくは30%〜70%の範囲の導入率とすることが好ましい。ここでの導入率は、以下の式で表わされる。
導入率(%)=(イオン交換基を生成あるいは消失する基の数)÷(ポリマーのモノマー単位の数)×100
感光性層形成用材料には、各種増感剤が添加されていてもよい。増感剤を添加することによって感度の向上や、用いる光源に合わせて感光波長を様々に変化させることが可能となる。また、多孔質基材を構成する絶縁物質の吸収波長以外の波長の光など基材を透過しやすい波長の光で感光させるのが好ましい。
さらに、感光性層形成用材料には、各種架橋剤が添加されていてもよい。架橋性化合物あるいは架橋基としては、露光によって三次元架橋して重合するものが用いられる。
ポリマー中における架橋基の導入量は、好ましくは1%〜300%、より望ましくは20%〜200%の範囲の導入率とするのがよい。ここでの導入率は以下の式で表わされる。
導入率(%)=(架橋基の数)÷(ポリマーのモノマー単位の数)×100
架橋性化合物の感光性層への添加量は、好ましくは重量比で1%〜50%であり、10%〜30%の範囲に設定されるのがより好ましい。少なすぎる場合には、架橋が不充分となって、金属イオン、金属化合物、金属コロイドを吸着させたり導電物質を充填する際に使用するアルカリまたは酸性の液などへ溶解や膨潤しやすくなる。一方、多すぎると場合には、硬化収縮を起こして基材を変形させるおそれがある。
導電物質を充填するためのイオン交換基を生成あるいは消失する基、架橋基および増感基が導入されるポリマー鎖は、溶液の塗布性が良好であるとともに、酸やアルカリに対する耐性および濡れ性に優れ、基材に対する接着性が高くて、耐熱性に優れるものであることが好ましい。これらの観点から、好ましいポリマー鎖としては、以下のものが挙げられる。
ノボラック樹脂およびその誘導体、ポリアクリル酸エステルおよびその誘導体、ポリスチレン誘導体、スチレン誘導体とマレイミド誘導体とのコポリマー、ポリノルボルネンおよびその誘導体、ポリシクロヘキセンおよびその誘導体、ポリシクロヘキサンおよびその誘導体、ポリフェニレンおよびその誘導体、シリコーン樹脂、ポリアミド類、ポリイミド類、ポリアリレート類である。
なかでも、フェノールノボラックやクレゾールノボラックなどのノボラック樹脂や、シリコーン樹脂、以下のモノマーを原料として合成されたコポリマーなどが好ましい。
導電物質を充填するためのイオン交換基を生成あるいは消失する基と架橋基および増感基を導入したポリマーの分子量は特に限定されないが、重量平均分子量が500〜500万であることが好ましく、1500〜5万であることがより望ましい。小さすぎる場合には成膜性が悪く、金属イオン、金属化合物または金属コロイド吸着させたり導電物質を充填する際に使用するアルカリ性または酸性の液などに対する耐性も低くなってしまう。一方、分子量が大きすぎると、塗布用の溶媒への溶解性が低下するうえ、塗布性も悪くなってしまう。
感光性層形成用材料としては、露光により生成または消失する陽イオン交換基あるいは陰イオン交換基を少なくとも含有するポリマーが用いられる。これらのイオン交換基のうち、導電物質を充填するためのイオン交換基は露光により生成あるいは消失するイオン交換基であり、さらに、架橋反応によって導電物質を充填するためのイオン交換基とは逆性のイオン交換基の生成を伴なうような架橋基が含まれるものが最も好ましい。感光性層および感光性層形成用材料の好ましい組み合わせとしては、以下のようなものが挙げられる。
例えば、フェノールノボラック樹脂あるいはクレゾールノボラック樹脂のフェノール性水酸基に、陽イオン交換基を生成するナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホン酸エステル基、o−ニトロベンジルオキシカルボニルメチル基あるいはo−ニトロベンジルオキシカルボニルエチル基が導入されたポリマーと、陰イオン交換基を生成する基としてアジド基が導入された化合物との組み合わせである。
フェノールノボラック樹脂またはクレゾールノボラック樹脂のフェノール性水酸基に、陽イオン交換基としてカルボキシル基が導入され、陰イオン交換基を生成しかつ架橋することも可能なアジド基が導入されたポリマーもまた、好ましく用いられる。
感光性層は、感光性層を形成する材料が変化して、露光部あるいは未露光部に選択的にイオン交換基を形成するもののみならず、多孔質基材空孔内表面に形成された感光性層が露光により多孔質基材を構成する絶縁性物質と化学反応を起こし、多孔基材を構成する絶縁性物質が変化して露光部に選択的にイオン交換基を形成するような方法で作用する感光性材料により形成することもできる。例えば、疎水性のフッ素樹脂からなる多孔質基材を用いる場合には、フッ素原子と容易に結合する性質を有し、露光によって樹脂から遊離したフッ素原子をトラップする作用を有するような水酸基、カルボキシル基、アミノ基等のイオン交換基を有する化合物により感光性層として形成してもよい。この場合には、イオン交換基がフッ素樹脂に導入され、この部分にめっき等によって導電物質を選択的に充填することが可能になる。
上述したような感光性層が空孔内に形成された多孔質基材には、表面および裏面の少なくとも一方の面に充填材を充填して、所定の深さの充填層を形成する。
充填材とは、空気と多孔質基材を構成する絶縁性物質との屈折率差の絶対値に比べて、多孔質基材を構成する絶縁性物質との屈折率差の絶対値が小さい材料が用いられる。具体的には、下記数式(1)で表わされる関係を満たすことが必要である。
(上記数式(1)中、εAは、多孔質基材を構成する絶縁性物質の屈折率であり、εBは、前記充填材の屈折率である。また、空気の屈折率は1とした。)
上述したような充填材は、多孔質基材の空孔内に含浸、充填しうる材料であり、多孔質基材に形成される感光性層の露光によって生じる反応を阻害せず、露光後導電物質を充填する前までに導電物質の充填性を悪化させないように除去可能な任意の材料を用いることができる。具体的には、ポリエチレングリコールのようなポリエーテル化合物またはポリエーテル化合物とポリイソシアネート化合物との反応物含有化合物、ポリビニルアルコール、ポリ(アクリル酸−2−ヒドロキシエチル)、ポリ(メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル)、ポリ(アクリル酸−ポリエチレングリコール)、ポリ(メタクリル酸−ポリエチレングリコール)、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のポリマーあるいは、上述した水溶性モノマーとの共重合体等が挙げられる。
また充填材には、上述のポリマーに加えて、吸湿材、防腐材、あるいは防カビ材などの添加剤が添加されていてもよい。ただし、添加量が多すぎると、添加剤により光散乱が生じたり、露光波長が吸収されたりするなどして露光時の透明性が著しく低下するおそれがある。充填材を除去する工程で除去しきれずに残存して、導電物質の充填性を悪化させるのを避けるため、充填材の添加量は、ポリマーに対して50重量%以下にとどめることが望まれる。
さらに、粘度を調整したり、多孔質基材への含浸性を向上させる目的で、アルコール系溶剤や界面活性剤を少量添加してもよい。アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどが挙げられ、界面活性剤としては、浸透性の良好なラウリルアルコールのエチレンオキサイド9モル付加物のような非イオン活性剤などが挙げられる。
このように、本発明の実施形態において用いられる充填材は、空気と多孔質基材を構成する絶縁性物質との屈折率差の絶対値に比べて、多孔質基材を構成する絶縁性物質との屈折率差の絶対値が小さいことが必要である。これは、以下のようなことを表わしている。多孔質基材を構成する絶縁性物質によってそれぞれ屈折率が異なるため、充填剤の屈折率は一概には規定することはできない。ただし、充填材は多孔質基材の空孔内に含浸、充填しうる材料であり、多孔質基材に形成される感光性層の露光によって生じる反応を阻害せず、露光後導電物質を充填する前までに導電物質の充填性を悪化させないように除去することができるなどの制約上、使用できるものが限られている。
ほとんどの場合、充填材の屈折率は1.4〜1.6の範囲内である。例えば、1.6より大きな屈折率を有する絶縁性物質から構成される多孔質基材に充填材を充填する場合には、必然的に上述の条件を満たすが、屈折率差が0.3以上となる場合には、透明性が充分でない。また、屈折率が1.4に近く、充填材より屈折率の小さい絶縁性物質から構成される多孔質基材を使用する場合には、空気と多孔質基材を構成する絶縁性物質との屈折率差の絶対値に比べて小さいという屈折率差に関する条件が満たされ、屈折率差が0.3未満となって透明性の良好な複合部材形成用基材が得られる。
したがって、多孔質基材を構成する絶縁性物質の屈折率に応じて、適切な充填材を選択することが望まれる。例えば、屈折率が1.7のセラミックスで構成される多孔質基材はその空孔に、通常では屈折率が約1.0の空気を含んでいる。この空孔に屈折率が1.5のポリエチレングリコールを充填する。その結果、空気とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)との屈折率差0.7に比べて、セラミックスとの屈折率差が0.2と小さいポリエチレングリコール(PEG)を充填材として充填されてなる複合部材形成用基材が形成される。また、屈折率が1.36のPTFEで構成される多孔質基材はその空孔に、通常では屈折率が約1.0の空気を含んでいる。この空孔に屈折率が1.5のポリエチレングリコールを充填する。この場合には、空気とPTFEとの屈折率差0.36に比べて、PTFEとの屈折率差が0.14と小さいPEGを充填材として充填されてなる複合部材形成用基材を形成することができる。
特定の充填材が所定の深さで多孔質基材に充填されているので、いずれの組み合わせにおいても、得られる複合部材形成用基材は、露光の際には光散乱を十分に防止することができる。
充填材は、加熱溶融させて多孔質基材に直接塗布することができ、充填材をラミネートにより軟化させて多孔質基材内部に充填させてもよい。あるいは、充填材を水や有機溶剤等の溶媒に溶解させた溶液を塗布するなどして使用することもできる。溶液として用いる場合には、乾燥性、作業性、透明性を考慮し、充填材を5重量%以上とするのが好ましい。さらには、バーコーターなどの機器を用いる方法、あるいはローラー、刷毛などを用いる方法、スプレーによる塗布、ディップ法、真空含浸法などが挙げられる、充填方法は特に限定されない。
例えば、多孔質基材として感光性層が形成されたPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を用い、充填材としてポリビニルアルコール(PVA)のシートを用いる場合には、以下のようにして充填層を形成することができる。まず、感光性層が形成されたPTFE上にPVAシートを載置し、ラミネートによりPVAシートをPTFE空孔内表面に充填させた層を形成する。
このようにして形成すると、多孔質基材に充填層、充填材が充填されていない未充填層(散乱層)を有する複合部材形成用基材となる。充填材を充填した充填層によって光散乱が低減され、充填材が充填されていない層によって、露光光を散乱させて強度を低下させることができる。
充填層が形成された多孔質基材の表面は、保護フィルムで覆われていてもよい。保護フィルムは、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、アクリル等により形成することができ、その厚さは1〜100μm程度とすることができる。なお、多孔質基材の表面および裏面の両面に充填層を形成した場合、上述したような樹脂を使用すると、充填層は加熱により膨張・収縮する。したがって、加熱ラミネートし、充填材が膨張した状態で多孔質内に充填されると、冷却時に充填材が収縮し、基材の反りが発生する場合がある。片面のみでなく、両面に対称に形成することにより、このような基材の変形を低減することができる。ただし、作製しようとする複合部材のうち、微細パターンを必要とする領域が例えば総面積の10%以下と十分に小さい場合には、必要な箇所のみ、また、多孔質基材の片面のみに充填層を設ける方が、簡便・安価で有利である。このことは、上述したような反りの懸念がほとんど無視される場合にも適用される。
本発明の実施形態においては、充填材の多孔質基材への充填深さは、多孔質基材の全厚さの40%以下に規定される。この深さを越えると、光の透過率が高くなり、パターン露光の際に裏面まで光が透過しやすくなり、多孔質基材内部を貫通し裏面にまで配線が形成されてしまうといった不都合が生じる。特に多孔質基材の両面に配線を形成する場合には、配線同士が多孔質内部でつながってショートするといった不都合が生じる。多孔質基材の片面のみに配線を形成する場合でも、多孔質基材内部に形成される配線は基材を形成する絶縁性物質との複合体になっているため、多孔質基材表面に形成される導電性物質のみの配線に比べて抵抗値が高い。したがって、多孔質基材内部に形成される配線の厚みが薄いほうが、低抵抗化に有利であることから、充填深さは基材の全厚さの40%以下に制限される。
あるいは、充填層の深さの最大値は15μmである。本発明の実施形態において使用される多孔質基材の厚さは、通常、最大でも500μm程度であることから、上述した15μm以内に含まれる。これは、多孔質体での光吸収・散乱モデルを用いたシミュレーションの結果から確認された。具体的には、PVA(ポリビニルアルコール)をPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)に充填した基材においては、厚さ15μmの充填層を設けることによって、光散乱は十分に低減されたことが確認されている。
なお、多孔質基材の表面および裏面の両側に充填層を形成する場合には、両側に設けられた充填層の厚さ(充填深さ)の合計が、多孔質基材の厚さ全体の80%以下であることが望まれる。この場合には、それぞれの充填層の深さは最大でも15μmであることが好ましい。本発明の実施形態にかかる複合部材形成用基材においては、充填剤を有しない層(散乱層)が基材の内側に存在しなければならない。特に、上述の表裏面に形成した配線のショート、それぞれの配線の抵抗値の低抵抗化等を考慮すると、この散乱層の厚さは、少なくとも多孔質基材全体の20%以上であることが望まれる。
複合部材形成用基材は、所定の領域にパターン露光を行なった後、導電物質を充填して配線等の導電部を形成することによって複合部材とされる。こうして形成された配線は、ほとんどの場合、多孔質内部の多孔質基材を構成する絶縁性物質と導電性物質との複合体となっている部位と、表層に形成される導電性物質単体からなる部位とから構成される。多孔質基材内部に形成される部位については、多孔質基材を構成する絶縁性物質と導電性物質との複合体となることから、導電性物質単体と比べて抵抗値が高くなる。したがって、多孔質基材内部に形成される配線部位は、深く形成した場合でも配線自体の抵抗値を劇的に低下させるという効果はほとんど期待できない。表層に形成される配線部位との密着性を保持できる深さ、すなわち、最低でも1μm以上は必要である。少なくとも1μm以上の充填深さを確保するには、例えば、以下のような制御を行なって充填材を充填すればよい。ラミネートにより充填する場合には、充填材の厚み、ラミネート温度、あるいはラミネート回数等を制御することによって、1μm以上の深さで充填層を形成することができる。
複合部材形成用基材は、表面および裏面の少なくとも一方の全面が充填材によって充填されているものでなくてもよい。つまり、複合部材形成用基材の領域のうち、露光光の散乱を防ぐ必要のない一部の領域には充填材が存在せず、露光光の散乱を防ぐ必要のある一部の領域には充填材が充填されているというものであってもよい。さらに、複合部材形成用基材は、多孔質基材の空孔2内が体積分率で100%完全に充填材によって充填されているものだけでなく、少なくとも体積分率で50%以上、好ましくは体積分率で80%以上が充填材によって充填されているものでもよい。
充填材の充填率は、次のようにして算出することができる。まず、以下のようにして、充填材の密度、充填材を充填後の多孔質基材の重量(測定した値)、充填剤を充填前の多孔質基材の重量(測定した値)から、多孔質基材の空孔に充填した充填材の体積を計算する。
多孔質基材の空孔に充填した充填材の体積={(充填材を充填後の多孔質基材の全重量)−(充填材を充填前の多孔質基材の重量)}÷充填材の密度
得られた値を多孔質基材の全体積で割り以下のようにして計算すると、充填材の体積分率での充填率(%)が求められる。
充填材の充填率(%)={(多孔質基材の空孔に充填した充填材の体積)÷(空孔の全体積)}×100
ここで、ラミネートにより多孔質基材の両面に充填材を充填する方法を説明する。図2に示すように、充填材シート13を多孔質基材10の両面に配置する。多孔質基材10の空孔内には、すでに説明したような感光性層12が形成されている。充填材シート13は、空気と多孔質基材を構成する絶縁性物質との屈折率差の絶対値に比べて、多孔質基材を構成する絶縁性物質との屈折率差の絶対値が小さい充填材から構成される。例えば、こうした充填材を加熱溶融し、バーコーター法によって、充填材シート13が作製される。あるいは、市販の充填材シートを用いてもよい。具体的には、クラレ(株)、クラリア112等が挙げられる。充填材シート13の厚さは、1〜100μmの範囲内であることが好ましい。1μm未満の場合には、1μm以上の深さの充填層を形成することが困難となる。一方、100μmを越えると、充填されない層が表面に残ってパターンが描かれたマスクと基材との距離が広がり、回折の影響によりパターンが広がってしまうといった不都合が生じるおそれがある。
充填材シート13は、多孔質基材10の両面に配置し、加熱・加圧することによって多孔質基材内に充填される。加熱温度は、多孔質基材の変形が生じない範囲の温度に制限される。しかも加熱によって、多孔質基材内の感光性層が反応や分解することは、極力避けれることが必要である。例えば、多孔質基材がPTFEから構成され、この内部にナフトキノンジアジドからなる感光性層が形成されている場合には、加熱温度の上限は120℃程度である。一方、加熱温度が低すぎる場合には、充填材が軟化し、多孔質基材の空孔内部へ充填されるが、この軟化・充填が不十分となりやすいために、多孔質基材に充填材を充填することが困難となる。最低でも80℃以上に加熱することが望まれる。また、圧力は、0〜20kg/cmの範囲内とすることが好ましい。こうした条件での加熱・加圧は、例えばラミネーターといった装置を用いて行なうことができる。
なお、使用する充填材の特性(軟化温度等)にもよるが、主として、ラミネート温度や速度により、充填材が充填された充填層の厚みを制御することができる。ラミネートの速度は、具体的には、装置のローラーの回転速度を変えることによって制御することが可能である。
充填材は、ラミネートで軟化・押しつぶされることによって基材の空孔内に充填されている。反応が生じて結合した状態ではないので、この充填材は、露光後には容易に除去することができる。
上述したようにして充填材を多孔質基材に充填させることにより、露光光の光散乱抑制効果に優れ、表面のべたつきもなく、露光後に充填材を除去することが可能な複合部材形成用基材を得ることがきる。
本発明の実施形態にかかる複合部材形成用基材においては、露光される面に所定の深さで充填層が形成されている。この充填層には、所定の屈折率の充填材が含まれているため、露光時の光散乱を低減することができる。しかも、こうした充填層の内側の領域には、充填材を含まない層が存在し、この内側の層の空孔内には、空気が充填されているということができる。空気の屈折率は約1であり、多孔質基材を形成する絶縁性物質の屈折率は1.4〜1.6程度である。空気と絶縁性物質との屈折率差が大きいことから、この層は、光の散乱が生じる散乱層として作用する。充填層の内側に散乱層が存在していることにより光強度が低下し、それに起因して、充填層により露光光の非散乱成分の割合が向上することで、マスクパターンを超えて横方向へ露光される太りを低減する。しかも、散乱層によって露光光が散乱されて強度が低下することで、深さ方向への露光強度を低減できるという効果が得られる。
得られた複合部材形成用基材を、図3に示す。図示するように、本発明の実施形態にかかる複合部材形成用基材15は、三次元的に形成された連続空孔を有し、絶縁性物質からなる多孔質基材10の空孔11内表面に、感光性層12が形成されている。さらに、空気と多孔質基材を構成する絶縁性物質との屈折率差の絶対値に比べて、多孔質基材を構成する絶縁性物質との屈折率差の絶対値が小さい充填材13が、多孔質基材11の全厚みの40%以下の深さで充填されてなる充填層14が存在する。
本発明の実施形態にかかる複合部材形成用基材は、表面および裏面の一方のみに充填層が形成されていてもよい。この場合には、図4に示すように、多孔質基材10の片面に上述したような充填材シート13を配置して、加熱・加圧してラミネートを行なう。多孔質基材の他方の面は、例えばPETなどのフィルムによって支持し、変形等が生じるのを回避することが望まれる。その結果、図5に示すような一方の側のみに充填層が形成された複合部材形成用基材が得られる。
図3に示したように両方の側に充填層14が形成された複合部材形成用基材15の所定の領域に光を照射することによって、感光性層の露光部を選択的に活性化する。例えば、図6に示すように、露光マスク16を介して、複合部材形成用基材15に紫外線17を照射する。複合部材形成用基材15において、15aは導電物質を充填しようとする領域であり、露光マスク5には、この領域15aに対応する開口部16aが形成されている。露光マスク16には、複合部材形成用基材15の絶縁領域15bに対応して、非開口部16bが形成されている。
露光を施すことによって、露光部の感光性層においては、導電物質を充填するためのイオン交換基を生成または消失する基、架橋基や増感基が活性化される。あるいは、露光部では、無電解めっきの反応開始点であるめっき核が形成される。露光光源としては、露光光は、紫外線、可視光線、赤外線など特に限定されないが、複合部材形成用基材の所望の領域を、低コストで選択的に露光するパターン露光が容易に行なえることから、紫外線や可視光線が優れている。
パターン露光は、図6に示したように所定のパターンを有する露光マスク16を介して、あるいはレーザー光線などのビームを走査して行なうことができる。また、レーザーダイオードアレイを用いてパターン露光してもよい。さらには、光源からの光を、マイクロミラーアレイで変調して露光することもできる。マイクロミラーアレイとは、微小な鏡であるマイクロミラーをマトリックス状に多数配列した光変調装置である。例えば、1辺が5μm〜20μm程度の正方形のマイクロミラーが数万個から数百万個、あるいはそれ以上マトリックス状に配列されている。個々のマイクロミラーは、独立して角度を変調可能であり、光源から入射した露光光の反射角度を個別に変更することができる。このため、1つのミラーが1画素となって、露光すべき配線やビアのパターンに応じて各ミラーの角度を変調して、露光パターンを形成する。多孔質基材に配線やビアのパターンをマスクレスで露光することが可能である。マイクロミラーアレイとしては、テキサス・インスツルメンツ社(Texas Instruments, Inc., Dallas, Texas, USA)製のデジタル・マイクロミラー・デバイスが挙げられる。
配線やビアの2次元パターンが全て厚さ方向に多孔質基材を貫通するように、多孔質基材に露光を行なうことができる。また、多孔質基材内を三次元的に露光してもよい。
三次元的に露光する方法は特に限定されず、例えば、レーザー光線を集光した焦点を多孔質基材内で三次元的に走査することができる。あるいは、2次元パターンの露光マスクを用いて露光する場合にも、露光量の調整や露光波長の選択などによって三次元的な露光が可能である。例えば、ビアの部分は厚さ方向に貫通して露光し、配線の部分は表面付近のみ露光すれば、配線およびその配線を電子デバイスの電極と接続するビアの両方を、一枚の多孔質基材に作りこむことができる。例えば露光量を調整するには、ビアの部分と配線の部分とで透過率を調整したハーフトーンマスクなどのマスクを用いることもできる。
パターン露光後には、図7に示すように露光マスク16を取り除き、多孔質基材11の空孔内から充填材を除去する。例えば、端面より引き剥がして、あるいは40℃程度の温水の流水中に基材を静置して洗浄することにより充填材を剥離して、充填材を除去することができる。あるいは、適切な洗浄剤によって洗浄して、充填材を除去してもよい。洗浄液としては、水または水を含む溶液が用いられ、水を含む溶液は、酸性溶液およびアルカリ性溶液のいずれでもよい。具体的には、水を含む溶液としては、pH9〜13となるように調整した水酸化ナトリウム水溶液や炭酸ナトリウム水溶液等が挙げられる。
剥離により充填材を除去した場合も、洗浄剤により洗浄して、充填材残渣を確実に除去することが望まれる。ここで酸性溶液とはpH<7の溶液であり、アルカリ性溶液とはpH>7である溶液を示す。
洗浄は、10秒から5時間、露光後の複合部材形成用基材を所定の洗浄液に浸漬することによって行なうことができる。充填材の除去率、プロセスコストの面から、洗浄時間は1分から1時間の範囲であることがより好ましい。なお充填剤の除去率は、以下の式で示される。
除去率(%)=(充填材が充填されている多孔質基材の重量−洗浄により充填材を除去した後の多孔質基材の重量)×100
上述したような洗浄剤は、引き続いて行なわれる導電物質の充填工程までに、水あるいは他の溶液等プロセス上浸透性や反応性の面から都合のよい溶液で置換しても構わない。
その後、図8に示すように、多孔質基材11空孔12内表面の光吸収部15aに生じたイオン交換基に、金属イオン、金属化合物あるいは金属コロイドなどのめっき核、好ましくは金属陽イオン、金属化合物の陽イオンあるいは正に帯電した金属コロイドなどのめっき核を吸着させ、さらに無電解めっきを施す。これにより、複合部材形成用基材5に選択的に形成された光吸収部15aは、導電物質19によって充填される。
なお、多孔質基材空孔内表面に形成された感光性層が露光により多孔質基材を構成する絶縁性物質と化学反応を起こし、多孔基材を構成する絶縁性物質が変化して露光部に選択的にイオン交換基を形成する感光性材料により感光性層が形成されている場合には、このイオン交換基がフッ素樹脂に導入され、この部分にめっき等によって導電物質を選択的に充填することが可能になる。
また、感光性還元剤、金属塩等から構成される材料等に、露光によって無電解めっきの反応開始点であるめっき核を形成し、上述したように無電解めっきを施して導電物質を充填してもよい。
導電物質とは、金、銀、パラジウム、銅、ニッケル、クロム、コバルト、錫などの金属や銅−ニッケル、ニッケル−コバルト、錫−ニッケル等の合金あるいは置換および非置換の導電性ポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリピロール、ポリセレノフェン、ポリイソチアナフテン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアセチレン、ポリピリジルビニレン、ポリアジン等の導電性ポリマーである。これらは、単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、導電性を有しないポリマーを添加することもでき、これらをモノマーやコポリマーとして用いてもよい。導電性ポリマーと、多孔質基材内表面に形成した感光性層の露光によって形成されたイオン交換基とが、陽イオンと陰イオンの関係で吸着するように選択することによって、イオン交換基に導電性ポリマーがカウンターイオンとして吸着できる。例えば、イオン交換基としてカルボン酸を、導電性ポリマーとしてチオフェンを選択すると、カウンターアニオンとしてカルボキシル基を有するポリチオフェンが形成されることになる。
金属イオンや金属コロイドをイオン交換基に吸着させるには、金属イオンの溶液や金属コロイド溶液に、イオン交換基を形成した複合部材形成用基材を接触させればよい。接触に当たっては、複合部材形成用基材を浸漬するのが最も好ましいが、溶液を基材にスプレーするなどして塗布することもできる。金属イオン溶液としては、還元などして無電解めっきの触媒となる金、銀、白金、パラジウム、銅などの有機塩あるいは無機塩の水溶液、アルコール溶液などが用いられる。金属イオンはイオン交換基に対イオンとして吸着される。吸着された金属イオンは、そのままあるいは還元して金属化することによって無電解めっきの触媒として用いる。めっきする金属よりイオン化傾向の小さな金属のイオンは、還元せずとも、めっき液中のめっき金属のイオンによって還元される。例えば、銅めっきする場合、金、白金、パラジウムなどのイオンはそのまま用いることができる。銅イオンは還元して銅微粒子にしてから無電解めっきの触媒として用いる。還元剤としてはホルムアルデヒド、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、ヒドラジン、次亜リン酸ナトリウム等の次亜リン酸塩等など公知の還元剤を用いることができる。
還元剤は水溶液などの溶液として、この溶液に基材を浸漬するなどして還元する。還元する前に基材を水などで洗浄して余分の金属イオンを除去しておくことが好ましい。
金属コロイド溶液としては、金、銀、白金、パラジウムなどのコロイドの水溶液、あるいはアルコールなどの有機溶媒の溶液が用いられる。金属コロイドは界面活性剤やポリマーなど保護物質によって保護された保護コロイドを用いるのが、金属コロイド溶液の貯蔵安定性の点から望ましい。金属コロイドは多くの場合、正または負に帯電しており、帯電する極性は保護物質によって変化させることができる。イオン交換基も多くの場合、液中で帯電する。金属コロイドはイオン交換基との静電引力によって吸着される。金属コロイドは還元する必要はなく、そのまま無電解めっきの触媒として用いることができる。保護コロイドの場合、酸やアルカリ溶液、酸化剤溶液などを用いたエッチングなどで保護物質を除去した方が触媒としての活性は向上する。
金属イオン溶液あるいは金属コロイド溶液の濃度は、好ましくは0.1〜30重量%であり、より望ましくは1〜15重量%の範囲内である。濃度が小さすぎるとイオン交換基に充分な量の金属イオンやコロイドが吸着させることが困難となって、吸着速度が遅く吸着に長時間を要する。一方、濃度が大き過ぎる場合には、目的のイオン交換基以外にも無秩序に金属イオンやコロイドが吸着してしまうおそれがあり、良好な複合部材を形成することが困難となる。金属イオン溶液あるいは金属コロイド溶液に基材を浸漬するなどして、溶液と複合部材形成用基材を接触させる時間は特に限定されないが、一般的には10秒から5時間程度の間で行なわれる。銅イオンは選択性がよく、他の金属イオンに比べてイオン交換基が存在する領域以外にも無秩序に吸着しにくく、特に好ましい。
複合部材形成用基材を金属イオン溶液または金属コロイド溶液と接触させた後は、洗浄して余分な金属イオンまたは金属コロイドを除去することが望まれる。具体的には、水などの金属イオンやコロイド溶液の溶媒と同じ溶媒で洗浄することによって、導電物質を充填しようとするイオン交換基が存在する領域以外に付着した溶液を除去する。これによって、導電物質を充填しようとするイオン交換基が存在する領域以外に無秩序にめっきされることを防止することができる。
以下、具体例を示して、本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
多孔質基材として、PTFE多孔質基材(住友電工(株)、平均空孔径0.1μm、膜厚50μm)を用いて、以下のような手法により複合部材を製造した。この多孔質基材の屈折率は1.38である。
まず、ナフトキノンジアジド含有フェノール樹脂(ナフトキノンジアジド含有率;46等量mol%)の2mmol%THF溶液に、ジアジドカルコンをナフトキノンジアジド含有フェノール樹脂に対して約20重量%ほど添加して、感光性層材料を調製した。この感光性層材料をディップ法にて多孔質基材の空孔内表面にコーティングして、感光性層を形成した。
室温で30分間乾燥させて、空孔内表面をナフトキノンジアジド含有フェノール樹脂およびジアジドカルコンで被覆し、感光性層が形成された多孔質基材を2枚準備した。一方の多孔質基材は、そのまま露光を行なって比較例の多孔質基材(A)とした。
他方の多孔質基材には、以下のような手法により充填材を充填して充填層を形成し、本実施例の複合部材形成用基材(B)とした。
充填材としては、PVA(クラレ(株)、クラリア112、35μm厚)を用意した。この充填材の屈折率は、1.49である。充填材は、100℃、0.3m/分でラミネーター(フジテック(株)製、Fuji LAMIPACKER LPD 3206City)を三回通した。具体的には、多孔質基材の表面および裏面の両方に、上述した充填材のPVAを置き、そのPVA表面をPTFEフィルムで覆い、ラミネーターの中に通すという作業を繰り返して行なった。こうして、多孔質基材の表面および裏面には、充填材が充填されて充填層が形成され、充填材が充填されていない層(散乱層)が基材内部に残された多孔質基材(B)が得られた。
ラミネート前後の各厚みを測定し、多孔質基材およびPVAシートのラミネート前後での厚み変化を取り除いて、PVAシートの多孔質基材内部への潜り込み深さを算出した。その結果、多孔質基材(B)の表面および裏面には、厚さ5μmの充填層が形成され、これらの充填層の間には、厚さ40μmで散乱層が挟まれている構造であることが確認された。
露光は、導電パターン(幅10μm、長さ2cm)が30μmピッチで配置されたマスクを2枚用いて、CANON PLA501により行なった。多孔質基材(A)の一方の面に一つのマスクを配置し、他方の面には、パターンの方向が直交するようにもう一つのマスクを配置した。このように2枚のマスクで多孔質基材を挟み込み、光量500mJ(ウシオ電機製、UIT−100、405P detectorによるi線換算値)の条件で、表面および裏面にそれぞれ露光して、潜像を形成した。多孔質基材(B)も同様に、両面にパターン露光を行なった。
基材(B)は水で10分間洗浄し、複合部材形成用基材の空孔内に充填された充填材を除去した。充填材除去後の基材(B)の一部を切り取って乾燥させた後、SEM観察を行なった。その結果、充填材形成前と同様の構造であり、複合部材形成用基材の空孔内から充填材がきれいに除去されることが確認された。
パターン潜像が形成された基材(A)、および水で洗浄した基材(B)は、それぞれを水素化ホウ素ナトリウム0.01M水溶液に10分浸漬して湿潤させた。その後、蒸留水による洗浄を3回繰り返した。洗浄は、静水中に基材を5分間程度静置することにより行なった。さらに、0.5Mに調整した酢酸銅水溶液に10分間浸漬して銅イオンを吸着後、蒸留水による洗浄を3回繰り返した。続いて、水素化ホウ素ナトリウム0.01M水溶液に10分間浸漬後、蒸留水で洗浄した。その後、無電解銅めっき液PB−503に60分間浸漬して、パターン潜像を形成した部位に銅めっきを施した。
顕微鏡により観察したところ、基材(B)においては、幅15μm、長さ2cm、30μmピッチのラインの導電部が、表面および裏面に形成され、複合部材を構成していた。一方、基材(A)においては、隣接するライン同士がつながってショートしてしまい、30μmピッチのラインを表面、裏面のいずれにも、形成することができなかった。
このラインを、エポキシ樹脂((株)三啓、EPO−KWICK RESIN)にて包埋し、切断および研磨によって断面だしをした後、この断面を光学顕微鏡により観察した。基材(A)および(B)のいずれについても、表面および裏面の導電部のもぐりこみ深さは基材の約10%程度であり、基材(B)のラインは、表面、裏面で導電部がつながることなく、絶縁性が保たれていた。
(実施例2)
実施例1と同様の感光性層が形成された同様の多孔質基材を、複数枚用意した。種々の条件で充填材を充填して充填層および散乱層を形成し、本実施例の複合部材形成用基材を作製した。充填に当たっては、ラミネートの回数および温度を変更した。さらに、実施例1と同様の条件で、パターン露光および導電物質の充填を行なって、複合部材を製造し、ラインの状態を観察した。その結果を、充填条件、各層の厚さとともに、下記表1および2にまとめる。
比較のため、充填層を有しない基材(A)についても、同様にしてパターン露光および導電物質の充填を行なって、ラインの形成を試みた。下記表1および2には、その結果も併せて示した。
上記表に示されるように、基材(B)についてのみ、長さ2cm、30μmピッチのラインの導電部が表面および裏面に形成された複合部材が得られた。一方、(A)は、隣接するライン同士がつながってショートしてしまい、30μmピッチのラインを表面、裏面いずれの面においても、形成することができなかった。
このラインを、エポキシ樹脂((株)三啓、EPO−KWICK RESIN)にて包埋し、切断および研磨を行なって断面だしをした後、この断面を光学顕微鏡により観察した。その結果、基材(A)および(B)いずれについても、表面、裏面の導電部のもぐりこみ深さは基材の約10%程度であり、基材(B)のラインは、表面、裏面で導電部がつながることなく、絶縁性が保たれていた。
なお、表2に示されるように、充填材を充填する際の温度が70℃の場合には、多孔質基材の両面に充填層を形成することができない。本実施例においては、多孔質基材の材質はPTFEであり、この多孔質基材の空孔内表面に感光性層が形成されており、充填材の材質はPVAであることから、120℃程度までの加熱温度は許容される。これらの材質の耐熱性および多孔質基材内部への充填材の充填性を考慮すると、所定の深さで充填材を充填して本発明の実施形態にかかる複合部材形成用基材を作製するには、最低でも80℃以上の加熱を行なうことが求められる。
(実施例3)
実施例1と同様の感光性層が形成された多孔質基材を複数枚用意し、充填材を充填して本実施例の複合部材形成用基材を作製した。
充填材としては、ポリエチレングリコール(PEG)(関東化学(株)、重量平均分子量1500)を用意した。この充填材の屈折率は、1.46である。充填材2gを加熱溶融し、バーコーターにて20μm厚みの充填材シートを作製した。この充填材シートを、100℃、0.3m/分でラミネーターを三回通した。具体的には、多孔質基材の表面および裏面の両方に、上述した充填材のPEGを置き、そのPEG表面をPTFEフィルムで覆い、ラミネーターの中に通すという作業を繰り返して行なった。こうして、多孔質基材の表面および裏面には、充填材が充填されて充填層が形成され、基材の内部には、充填材が充填されていない層(散乱層)が残された多孔質基材Bが得られた。
ラミネート前後の各厚みを測定し、多孔質基材およびPEGシートのラミネート前後での厚み変化を取り除き、PEGシートの多孔質基材内部への潜り込み深さを算出した。その結果、多孔質基材(B)の表面および裏面には、厚さ8μmの充填層が形成され、これらの充填層の間には、厚さ42μmで散乱層が挟まれている構造であることが確認された。
次いで、実施例1と同様の条件でパターン露光を行ない、多孔質基材(B)の表面および裏面に潜像を形成した後、水で10分間洗浄して、空孔内に充填された充填材を除去した。充填材除去後の基材(B)の一部を切り取って乾燥させた後、SEM観察を行なった。その結果、充填材形成前と同様の構造であり、複合部材形成用基材の空孔内から充填材がきれいに除去されていることが確認された。
水で洗浄した基材(B)のパターン潜像を形成した部位には、実施例1と同様の手法により銅めっきを施した。断面を観察したところ、表面、裏面の導電部のもぐりこみ深さは基材の厚さ全体の約15%程度であり、ラインは、表面、裏面で導電部がつながることなく、絶縁性が保たれていた。こうして、幅15μm、長さ2cm、30μmピッチのラインの導電部が、表面および裏面に形成された複合部材が得られた。
(実施例4)
多孔質基材としては、実施例1と同様のPTFE多孔質基材およびポリイミド製基材(宇部興産(株)、ユーピレックス)を用意し、充填材としては、実施例1と同様のPVAおよび実施例3と同様のPEGを用意した。これらを組み合わせて、多孔質基材の表面または片面に充填材を充填し、本実施例の複合部材形成用基材を作製した。なお、いずれの多孔質基材にも、上述したような感光性層が形成されている。
充填材は、基本的には実施例1と同様の手法により多孔質基材に充填した。すなわち、ラミネート条件は、100℃、0.3m/分でラミネーターを3回通して、充填を行なった。多孔質基材の両面に充填する場合には、実施例1と同様の手法とし、片面のみに充填する場合には、他方の面はPETフィルムにより支持して基材(C)を作製した。さらに、実施例1と同様の条件で、パターン露光および導電物質の充填を行なって、複合部材を製造し、ラインの状態を観察した。その結果を、用いた多孔質基材および充填材の種類などとともに、下記表3および4にまとめる。
比較のため、充填層を有しない基材(A)についても、同様にしてパターン露光および導電物質の充填を行なって、ラインの形成を試みた。下記表3および4には、その結果も併せて示した。
上記表に示されたように、基材(B)については、長さ2cm、30μmピッチのラインの導電部が表面および裏面に形成された複合部材が得られた。また、基材(C)については、長さ2cm、30μmピッチのラインの導電部が一方の面に形成された複合部材が得られた。
これら基材(B)および(C)について、パターン露光後、導電物質を充填する前に断面をSEM観察したところ、充填材形成前と同様の構造であり、複合部材形成用基材の空孔内から充填材がきれいに除去されることが確認された。
一方、(A)は、隣接するライン同士がつながってショートしてしまい、30μmピッチのラインを表面、裏面いずれの面においても、形成することができなかった。また、このラインを、エポキシ樹脂((株)三啓、EPO−KWICK RESIN)にて包埋し、切断・研磨により断面だしをした後、光学顕微鏡にて断面観察したところ、基材(A)、(B)いずれについても、表面、裏面の導電部のもぐりこみ深さは基材の約10%程度であり、基材(B)のラインは、表面、裏面で導電部がつながることなく、絶縁性が保たれていた。