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JP4334973B2 - チタン合金鋳造用の鋳型の製造方法 - Google Patents
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JP4334973B2 - チタン合金鋳造用の鋳型の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、チタンあるいはチタン合金の鋳造を行う際に使用する鋳型の製造方法に関する。さらに詳しくは、例えば、クラウンやインレーなどの歯科医療用材料に好適に用いることのできるチタン合金鋳造用の鋳型の製造方法に関する。
生体適合性が高いチタンあるいはチタン合金は、生体代替材料や歯科医療等の分野において広く利用されつつある。例えば歯科医療の分野において、虫歯の治療に用いられるクラウン、インレーなどには精密加工が必要とされる。このため、チタンあるいはチタン合金の精密鋳造に適した鋳型の研究が種々なされている。
従来、いわゆるロストワックス法によるチタン合金鋳造用鋳型の製造方法として、特許文献1及び特許文献2に開示された技術が知られている。
特許文献1に開示された技術によれば、消失性模型の表面に初層スラリーの付着と初層スタッコの付着を行った後、バックアップスラリーの付着とバックアップスタッコの付着を所要回数実施して耐火物の積層体を形成する。そして、消失性模型の除去及び積層体の焼成を経ることによって、内部に鋳造用キャビティが形成されたチタン合金鋳造用の鋳型を得ることができる。前記初層スラリーの材料としては、カルシアとジルコニアを含む配合原料を溶融粉化して得られたジルコン酸カルシウムの粉末が用いられる。これにより、チタンあるいはチタン合金からなる鋳造品の表面における反応層の発生を抑制することができるので、表面品質に優れた鋳造品を得ることができる。
特許文献2に開示された技術によれば、炭酸カルシウムの粉末と水性バインダーとを含んでなる上塗りコート用スラリーを調整し、このスラリーを消失性模型の表面にコート層として付着させることによって、内部に鋳造用キャビティが形成されたチタン合金鋳造用の鋳型を得ることができる。この場合でも、チタンあるいはチタン合金からなる鋳造品の表面における反応層の発生を抑制することができる。
特開平11−320036号公報 特表2000−510050号公報
しかしながら、上記した従来の方法によれば、耐火物積層体の各層における体積変化の比率が異なるために、焼成後の耐火物積層体において、最内面に位置するコート層にひび割れ等が生じてしまう。コート層にひび割れが生じると、鋳造品の表面にはそのひび割れに起因した鋳バリ等が発生するので、表面品質に優れて精密に加工された鋳造品が得られなくなるので問題であった。
本願発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、鋳型の焼成後におけるコート層のひび割れを防止し、より表面品質に優れた鋳造品を得ることのできるチタン合金鋳造用の鋳型の製造方法を提供することである。
上記した課題を解決するために、特許請求の範囲の各請求項に記載した発明が構成される。
本願の第1の発明は、消失性模型の表面にコート層を付着させた後に、そのコート層の表面にバックアップ層を付着させて積層体を形成し、前記消失性模型の除去及び前記積層体の焼成を経ることによって内部に鋳造用キャビティが形成された鋳型を得るチタン合金鋳造用の鋳型の製造方法であって、前記コート層を付着させる工程は、カルシア粉末をバインダ中に混合してなるスラリー中に前記消失性模型を侵漬させて内層側のコート層を付着させる第1の工程と、カルシア粉末と無機繊維状物質とをバインダ中に混合してなるスラリー中に前記消失性模型を侵漬させて外層側のコート層を付着させる第2の工程と、を有しているチタン合金鋳造用の鋳型の製造方法である。この方法によれば、コート層の材料としてカルシア粉末が用いられているので、チタン合金の表面と鋳型との反応が不活性となり、鋳造品の表面におけるαケースなどの反応層の発生を抑制できる。また、コート層は、内層側のコート層と外層側のコート層との2層構造で形成されるとともに、外層側のコート層には無機繊維状物質が含まれる。これにより、焼成時におけるコート層とバックアップ層との体積変化の差異に基づく応力の発生をこの繊維状物質によって抑制することができるので、焼成後の鋳型におけるコート層のひび割れを効果的に防止することができる。
なお、この第1の発明における「チタン合金」には、チタンと他の金属元素との合金のみならず、チタン単体の金属も含まれる。「チタンあるいはチタン合金」という表現を用いなかったのは、請求項の記載を簡潔にするための便宜的な理由に基づくものである。このことは、本明細書中に記載された他の発明についても同様である。
また、「無機繊維状物質」とあるのは、少なくとも一方向において長い部分を有する繊維状に形成された無機化合物全般を指すものであり、例えば、繊維状のシリカであるシリカファイバー、繊維状のジルコニアであるジルコニアファイバー、繊維状のアルミナであるアルミナファイバー等がこれに該当する。
本願の第2の発明は、上記第1の発明のチタン合金鋳造用の鋳型の製造方法であって、第1の工程及び/又は第2の工程におけるカルシア粉末として、平均粒径が0.3mm以下のカルシア粉末を用いるチタン合金鋳造用の鋳型の製造方法である。ここで、前記「第1の工程及び/又は第2の工程」とあるのは、「第1の工程及び第2工程のうち少なくとも一方の工程」という意味である。このことは、本明細書中に記載された他の発明についても同様である。
この第2の発明によれば、コート層の材料として平均粒径が0.3mm以下のカルシア粉末が用いられるので、鋳造品と鋳型との接触面が緻密で平滑になり、表面性状に優れたチタン合金の鋳造品を製造することができる。
また上記第1または第2の発明のチタン合金鋳造用の鋳型の製造方法であって、バックアップ層を付着させる工程では、カルシア粉末100重量部に対して10重量部以下のバインダを混合してなるバックアップ材料をコート層の表面に付着させることが好ましい。カルシア粉末に対するバインダの混合比率がこのように小さく設定されると、焼成時におけるバックアップ層の見掛けの体積変化を小さくすることができるので、焼成後の鋳型におけるバックアップ層のひび割れを防止することができる。これにより、鋳造品の表面における鋳バリの発生等をより効果的に防止することができる。
本願の第の発明は、上記第1又はの発明のチタン合金鋳造用の鋳型の製造方法であって、第2の工程における無機繊維状物質として、長軸方向の寸法が0.1mmから10mmのシリカファイバーを用いるチタン合金鋳造用の鋳型の製造方法である。これにより、焼成後の鋳型におけるコート層のひび割れをより効果的に防止することができる。
本願の第の発明は、上記第1から第の発明のうちいずれかの発明のチタン合金鋳造用の鋳型の製造方法であって、第2の工程におけるスラリー中には、そのスラリー全体に対して7%から20%(重量%)のジルコニウム(Zr)が混合されていることを特徴とするチタン合金鋳造用の鋳型の製造方法である。この方法によれば、外層側のコート層にジルコニウムが含有されることになるので、鋳型の焼成時において、この外層側のコート層の体積膨張率を調整することができる。これにより、鋳型の内部に形成されるキャビティ空間の体積を、所望とする鋳造品の体積に対して適当となるように制御することができる(一般的に、キャビティ空間の体積は、所望とする鋳造品の体積に対して102%程度となるように制御されるのが好ましい)。スラリー中のジルコニウムの混合率を7%から20%の範囲に設定したのは、ジルコニウムがこの範囲の割合で含有されていると、内層側のコート層にひび割れ等が発生せず、かつ、キャビティ空間の体積が適当となるように外層側のコート層の体積膨張率を制御することができるからである。なお、この第の発明における「ジルコニウム」には、Zrを分子内に含み、酸化反応により膨張する化合物、例えば、ジルコンフラワー(ジルコニウム+シリカ)なども含まれる。
本願の第の発明は、上記第1から第のうちいずれかの発明のチタン合金鋳造用の鋳型の製造方法によって製造された鋳型を用いて鋳造される歯科医療用チタン合金である。ここでいう「歯科医療用チタン合金」とは、人工歯根やクラウン、インレーなどの歯科医療用に用いられるチタン合金全般のことを指している。本願発明によるチタン合金は極めて精緻に鋳造することが可能であるので、このような歯科医療分野へ特に好適に用いることができる。
本願発明によれば、鋳型の焼成後におけるコート層のひび割れを防止し、より表面品質に優れた鋳造品を得ることのできるチタン合金鋳造用の鋳型の製造方法を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について具体的に説明する。
本発明の方法では、いわゆるロストワックス法により所望とする形状のキャビティ空間を有するチタン合金鋳造用の鋳型を製造する。この製造方法では、まず、製作しようとする鋳造品の形状と同一形状をなす消失性模型(ワックス模型)を準備する。次に、この消失性模型の表面にコート層を付着させた後に、そのコート層の補強用にバックアップ層を付着させて積層体を成形する。そして、消失性模型の除去及び積層体の焼成を経ることによって、内部に鋳造用のキャビティ空間が形成された鋳型を得ることができる。
本実施の形態では、チタン合金の鋳造品を製作するために、(1)Ti-6Al-7Nb合金、及び、(2)Ti-29Nb-13Ta-4.6Zr合金の鋳造を試みた。このうち、(2)のTi-29Nb-13Ta-4.6Zr合金は、本願の発明者らによって開発された機能性の高いチタン合金であり、生体適合性が高く歯科医療用に特に適している。以下では、Ti-29Nb-13Ta-4.6Zr合金のことを、TNTZ合金と称する場合がある。
〔ワックス模型について〕
本実施の形態では、図1に示すような6φ丸棒のワックス模型を準備した。ワックス模型の原料としては、市販のワックス材料(READY CASTING WAX:(株)ジーシー製)を用いた。そして、焼成した鋳型の内部にチタン合金を流し込むための湯口として、このワックス模型に市販の湯口フォーマー(PLASTICCRUCIBLE FORMER T:(株)ジーシー製)を取り付けた。
〔鋳型の材料について〕
本実施の形態では、鋳型の材料として電融カルシア(CaO)の粉末(タテホ化学工業(株)製)を用いた。
ところで、鋳型の材料粉末における粒径分布は、鋳型の亀裂生成に影響を及ぼす因子であると考えられる。そこで、本実施の形態では、以下の表1に示すC1〜C4までの4種類の粒径を有するカルシア粉末を準備した。そして、鋳型の骨材となる材料として、これら異なる粒径を有する複数種類のカルシア粉末を所定の比率で混合して用いた。なお、表1中には、カルシア粉末の平均粒径をmm単位で表示しているが、この場合の「粒径」とは、JISZ−8801等により規格化された標準篩を用いて測定される「粒径」ことを指している。また、「平均粒径」とは、ふるい上=50%に相当する粒径のことを指している。
以下では、表1中のC1〜C4のカルシア粉末を混合して得られた材料を、C1〜C4の記号を用いて略記して表示する。例えば、C1の粉末とC3の粉末を重量比で4:6で混合して得られた原料のことを、C1C346のように略記して表示する。
Figure 0004334973
〔内層側のコート層の材料について〕
本実施の形態では、カルシア粉末をバインダ中に混合してなるスラリー中に消失性模型を侵漬させることで内層側のコート層を付着させる(第1の工程)。
スラリー作製用のカルシア粉末としては、表1中のC1の粒径分布を有するカルシア粉末を用いる。このように、平均粒径が0.3mm以下の微粉状のカルシア粉末を用いることで、コート層の表面が緻密になる。この鋳型を用いてチタン合金を鋳造すると、表面性状に優れた鋳造品を得ることができる。
スラリー作製用のバインダとしては、カルシア粉末のバインダとして一般的なものであればどれを用いてもよいが、塩化カルシウムをメタノールに溶解させた塩化カルシウム−メタノール溶液を用いるのが好ましい。さらに好ましくは、濃度が6.5〜7.5重量%の塩化カルシウム−メタノール溶液である。塩化カルシウム−メタノール溶液の濃度がこの範囲に設定されると、カルシアとの反応によるコート層の硬化が適度に抑制されるので、コート層のひび割れ等をより効果的に防止することができる。
スラリー調整の際には、粒径がC1のカルシア粉末と塩化カルシウム−メタノール溶液とを同一の容器に投入し、大気中にて均一に混和するまで撹拌する。
ここで、バインダの混合比とコーティング性との関係を調べるため、バインダの重量比を18〜22%の範囲で変化させたスラリー中に50mm深さまで浸漬した6mmφ丸棒ワックスを-0.06MPaに保った真空デシケータ中に86.4ks(ks=103秒)保存し、コーティング前後における重量変化及びコーティングの状況を調べた。図2にその結果をグラフで示す。
図2に示すように、スラリー中のバインダ濃度が18%から19%に変化すると、重量は約1g減少するが、19%から22%までは、重量変化は急激に小さくなる。スラリーの付着重量がその粘性に依存するとすれば、18〜19%でスラリーの粘性が急変することが考えられる。付着重量は、コート厚さに概ね比例すると考えられるから、18%のコート厚さは19%の厚さの2倍以上であると考えられる。一方,真空デシケータ中に86.4ks保存された後のコートの状況を観察すると、18%および19%バインダのものに亀裂が生成していた。したがって、亀裂を生じさせずに消失性模型の表面に最も効率よくコート層を付着させるためには、バインダの濃度が20〜22%程度に調整されたカルシア粉末のスラリーを用いるのが好ましいと考えられる。さらに好ましくは、バインダの濃度が20%に調整されたスラリーである。
〔外層側のコート層の材料について〕
本実施の形態では、消失性模型に内層側のコート層を付着させた後、カルシア粉末と無機繊維状物質とをバインダ中に混合してなるスラリー中にその消失性模型を侵漬させることで外層側のコート層を付着させる(第2の工程)。つまり、消失性模型の表面に付着されるコート層は、内層側のコート層と、外層側のコート層とを有しており、2層構造で構成されることとなる。
この第2の工程に用いられるカルシア粉末は、特に制限しないが、第1の工程におけるC1のカルシア粉末、すなわち、平均粒径が0.3mm以下の微粉状のカルシア粉末が用いられるのが好ましい。これにより、内層側のコート層にひび割れ等が生じたとしても、外層側のコート層が緻密に形成されているので、チタン合金の鋳造時における鋳バリ等の発生を最小限に抑えることができる。
この第2の工程に用いられるバインダとしては、特に制限しないが、第1の工程と同じバインダが用いられるのが好ましい。すなわち、濃度が6.5〜7.5重量%の塩化カルシウム−メタノール溶液が用いられるのが好ましい。これにより、コート層のひび割れ等をより効果的に防止することができる。
また、この第2の工程に用いられる無機繊維状物質としては、少なくとも一方向に長い部分(長軸部分)を有する無機化合物やその結晶体であれば適用できる可能性がある。例えば、繊維状のシリカであるシリカファイバー、繊維状のジルコニアであるジルコニアファイバー、繊維状のアルミナであるアルミナファイバー等がこれに該当する。この中では、シリカファイバーが用いられるのが特に好ましい。最も好ましくは、長軸方向の大きさが0.1mmから10mmの範囲にあるシリカファイバーである。
本実施の形態では、市販されているシリカファイバー(1260バルク:(株)イソライト工業製)を必要に応じて適宜の大きさにカットして用いている。
第2の工程に使用するスラリー調整の際には、第1の工程と同様な方法により、バインダ濃度が20%のカルシア粉末のスラリーを調整する。そして、このスラリーに対してシリカファイバーを0.3%(質量比)添加することにより、外層側のコート層を形成するためのスラリーを調整する。
なお、本実施の形態において、内層側のコート層にシリカファイバーを用いないのは、チタン合金がシリカと反応して表面硬化層を助長する可能性があることから、これらが直接触れ合わないようにするためである。
〔ジルコニウムの添加について〕
さらに、焼成後の鋳型の体積膨張率を適当に制御するために、第2の工程に使用するスラリー全体に対して、7%〜20%(重量%)のジルコニウム(Zr)を添加して混合するのが好ましい。
一般的に、焼成後の鋳型におけるキャビティ空間の体積は、所望とする鋳造品の体積に対して102%程度の体積となるのが好ましいが、ジルコニウムの混合率が上記の範囲内に設定されると、外層側のコート層の体積膨張率を102%程度となるように適当に制御することができる。
なお、第2の工程に使用するスラリー中には、ジルコニウムに代えて、ジルコニウムを分子内の組成の一部として含有する化合物、例えばジルコンフラワー(Zr・SiO)などを添加することもできる。
〔バックアップ層の材料について〕
バックアップ層の骨材材料としては、C1〜C4の粒径の異なるカルシア粉末を混合した材料を用いる(C1〜C4については表1参照)。本実施の形態で用いたのは、2種類の混合粉末、すなわち、C1のカルシア粉末とC3のカルシア粉末とを4:6の重量比で混合した粉末材料(以下、C1C346粉末と称する)、及び、C1のカルシア粉末とC2のカルシア粉末とを4:6の重量比で混合した粉末材料(以下、C1C246粉末と称する)である。このように、粒径分布の異なるカルシア粉末を混合して用いるのは、以下の理由に基づくものである。
粒径が小さくて微粉状のカルシア粉末を用いた場合には、バックアップ層の組織が緻密に形成される。この場合、チタン合金の鋳造時にコート層にひび割れが生じた場合であっても、溶融したチタン合金のバックアップ層内への伝播が阻止されることとなる。これにより、チタン合金の鋳造時における鋳バリの発生等をより効果的に防止することができる。
これとは反対に、粒径が大きくて粗粒状のカルシア粉末を用いた場合には、バックアップ層の組織内に多くの空隙が形成される。これにより、焼成時の体積変化に基づく鋳型のひび割れを防止することができる。
つまり、ひび割れが生じにくくかつ成形性の高い鋳型を製造するためには、この鋳型の材料として使用するカルシア粉末の粒径の選択が極めて重要な因子となる。本願の発明者らは、C1〜C4のカルシア粉末を種々の重量比で混合して試験を行い、次の(1)及び(2)の混合比によるカルシア粉末が最も良好な鋳型の材料となることを見出したのである。
(1)C1:C2=4:6
(2)C1:C3=4:6
コート層の表面にバックアップ層を付着させる工程では、カルシア粉末100重量部に対して10重量部以下のバインダを混合してなるバックアップ材料をコート層の表面に付着させる。本実施の形態では、カルシア粉末とバインダとを重量比で14:1に混合したバックアップ材料を用いる。
バックアップ材料の調整に使用するバインダとしては、カルシア粉末のバインダとして使用できるものであれば特に制限しないが、好ましくは塩化カルシウム−メタノール溶液を用いることができる。特に好ましくは、濃度が6.5〜7.5重量%の塩化カルシウム−メタノール溶液である。
カルシア粉末に対するバインダの混合比率がこのように小さく設定されると、バックアップ材料の性状がスラリーよりもむしろ粉体状に近づくことになる。すると、焼成時におけるバックアップ層の見掛けの体積変化をより小さくすることができるので、鋳型の焼成時におけるバックアップ層のひび割れ等をより効果的に防止することができる。
本発明をさらに具体化した実施例1〜実施例4について説明する。
〔実施例1〕
6mmφの丸棒状に形成した消失性模型をC1カルシア粉末のスラリーに侵漬させて内層側のコート層を付着させた。その後、この消失性模型を2.4ks大気中に放置してコート層の乾燥を行った(第1の工程)。
次に、第1の工程で用いたスラリー中に2mm厚さで5mmにカットしたシリカファイバーを0.3質量%添加し,1.8ks手練り練和してスラリーを調整した。このスラリー中に消失性模型を侵漬させて外層側のコート層を付着させた後、-0.06MPaの真空デシケータ中に86.4ks保存してコート層の乾燥を行った(第2の工程)。
バックアップ材料については、カルシア粉末(C1C346及びC1C246)とバインダとを14:1に混合した材料を用いた。鋳型を成形するためのプラスチック製のカップ型を準備し、そのカップ型のほぼ中心部に消失性模型を配置し、その消失性模型の周囲にバックアップ材料を搗き固めてバックアップ層を付着させた。これにより、消失性模型の表面にコート層及びバックアップ層が付着してなる積層体を形成した。
こうして得た積層体をカップ型から取り出し、その積層体を-0.06MPaの真空デシケータ中に86.4ks保存した後、323Kに14.4ks、353Kに14.4ks、1373Kに3.6ks連続保持の熱サイクルによる焼成を施した。こうして得られた鋳型による鋳造品の試験片について、鋳バリ発生の有無、鋳肌の状況を調べた。
C1C346粉末およびC1C246粉末によりバックアップされたそれぞれの鋳型の写真を図3に示す。後者の方が、骨材が緻密に充填されていることが確認できる。この鋳型に、Ti-6Al-7Nb合金を鋳込んだ後、バックアップ材料のみを壊して取り出した、コート層にくるまれたままの鋳造試験片の写真を図4に示す。シリカファイバー入りの外層側コート層は、割れておらず、特に試験片底部の状況も良好である。コート層はバックアップ層から容易に分離し、バックアップ材料の崩壊性も極めて良い。次に、コート層から取り出した鋳造試験片の写真を図5に示す。コート層は試験片表面から容易に剥離する。写真に示す試験片は、サンドブラスターなどによる表面処理は全く施されておらず、コート層から取り出したままの状態を示している。また試験片底部あるいは側面に鋳バリは無い。このことから、C1のカルシア粉末にシリカファイバーを添加したスラリーを用いることで、コート層が強化され、き裂生成防止に効果があることが認められた。なおまた、バックアップ材料の崩壊性が良いことは、実用化の際、骨材カルシアの再利用にも都合が良く、このことも本願発明の大きな利点であると考えられる。
〔実施例2〕
実施例2では、実用歯科精密鋳造品の製作を試みた。
試作用歯科模型として、臼歯およびクラウンを選び、ワックス模型を作製した。作製したワックス模型の写真を図6に示す。これに内層側及び外層側のコート層を付着させ、-0.06MPaの真空デシケータに86.4ks保存した後、C1C246粉末のバックアップ材料によるバックアップを施し、-0.06MPaの真空デシケータに86.4ks保存した。図7は、消失性模型の表面に2層コートを施した状態の写真である。
得られた積層体を、323Kに14.4ks、353Kに14.4ks、1373Kに3.6ks連続保持の熱サイクルにより焼成し、焼成された鋳型によって鋳造を行った。得られたクラウン鋳造見本から、製品部分を切り取り、仕上研磨を施して完成品とした。図8に、得られた鋳造品の写真を示す。図8に示すように、本実施例では、表面が平滑で金属光沢のある製品が得られた。図9は、TNTZ合金によるクラウンの試作品をコート層から取り出している状況を示している。図9(a)は、鋳造品がコート層にくるまれたままの状態を示している。図9(b)、(c)は、コート層を破壊している状況を示し、図9(d)は、鋳造品が完全に取り出された状態を示している。このように、試作されたクラウンには、鋳バリや焼着もなく、また平滑で金属光沢がある。
〔実施例3〕
本発明の方法により作製された試験片について、試験片表面からバルクにかけてのミクロビッカース硬さ試験を行った。
硬さ測定では、実施例1の二重コーティングによるカルシア鋳型、および、比較のための市販マグネシア鋳型によって、6mmφ×55mm長さの丸棒試験片用の鋳型を作製した。ただしTNTZ合金をマグネシア鋳型に鋳込んだ試験片のみ、6mmφ×55mm長さで平行部を3mmφとするダンベル型試験片のグリップ部から切り出した試験片による結果を参考値とした。これらの鋳型に、Ti-6Al-7Nb合金およびTNTZ合金を鋳造し、試験片の中間部付近を、機械加工により鋳込み方向に対し垂直に切断した後、切断面を#1500までエメリー紙による湿式研磨を施し、さらに0.3mmのアルミナ粉末によるパフ研磨を施して、表面層硬さ測定用試験片とした。硬さ試験は、試験片表面からバルクにかけて、約25μm間隔でジグザグに測定した。硬さ測定は、加重200g、および保持時間15sにて行った。硬さ試験は各試験片につき5ヶ所測定し、その平均値をその試験片におけるビッカース硬さとした。
図10は、本発明によるカルシア鋳型および市販マグネシア系鋳型をそれぞれ用いて鋳造したTi-6Al-7Nb合金の、表面近傍から内部にかけてのミクロビッカース硬さ分布を示すグラフである。いずれの鋳型の場合も表面硬化層が認められ、表面から内部に向かって硬さが下がり、一定の内部硬さ約Hv330に到達している。マグネシア系鋳型では最表面硬さがHv450であるのに対し、本発明によるカルシア鋳型ではHv370である。また、硬化層範囲は、マグネシア系鋳型が約180μmであるのに対し、本発明のカルシア鋳型では約80μmであり、前者の1/2程度であることが判明した。すなわち、本発明により製造されるカルシア鋳型では、硬化層範囲が約1/2になるうえに、最高硬さ自体も極めて低く、表面硬化層の大きさを、これらの相乗的な効果として捉えれば、Ti-6Al-7Nb合金におけるカルシア鋳型の表面硬化層の大きさはマグネシア鋳型におけるそれの半分以下と考えられる。
図11は、本発明によるカルシア鋳型および市販マグネシア系鋳型をそれぞれ用いて鋳造したTNTZ合金の、表面近傍から内部にかけてのミクロビッカース硬さ分布を示すグラフである。Ti-6Al-7Nb合金の場合と同様に表面硬化層が認められる。カルシア鋳型に鋳込んだものは表面硬さがHv260であるのに対し、マグネシア鋳型の場合はそれがHv580に達している。硬化層範囲については、本発明によるカルシア鋳型の場合、分布曲線の変化が小さいため、硬化層の境界を判断するのが困難であるが、約200μm程度までなだらかに下がっている。しかし、最高硬さ自体が260Hvと十分低く、またマグネシア鋳型について得られた内部硬さが既にHv240〜260を示していることを考慮すれば、本発明の方法で得られた鋳型により、鋳造品の表面においてαケース層の発生が抑制されることが判明した。なお、鋳造品の表面にαケースなどの硬化層が形成されないことは、歯科材料用のチタン合金の鋳造に際して極めて有利な点である。
〔実施例4〕
実施例1の2重コーティングによるカルシア鋳型について、外層側のコート層にジルコニウムあるいはジルコンフラワーを添加した。具体的には、実施例1の第2の工程で用いるスラリー中に、さらに、ジルコニウムあるいはジルコンフラワーを量を変化させて添加した。そして、得られた焼成後の鋳型について、焼成前の鋳型とのキャビティ容積の比較を行った。比較した結果を以下の表2及び表3に示す。
Figure 0004334973
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表2及び表3に示すように、第2の工程におけるスラリー中に7%〜20%のジルコニウムあるいはジルコンフラワーを添加することにより、鋳型の内部に形成されるキャビティ空間の体積を、所望とする鋳造品の体積に対して適当な膨張率となるように制御できることが判明した。
ワックス模型の外観図である。 バインダ濃度によるコート層重量の変化を示すグラフである。 C1C346粉末およびC1C246粉末によりバックアップされたそれぞれの鋳型の写真である。 コート層にくるまれた状態のTi-6Al-7Nb合金鋳造品試験片の写真である。 コート層から取り出された状態のTi-6Al-7Nb合金鋳造品試験片の写真である。 クラウンのワックス模型の写真である。 消失性模型の表面に2層コートを施した状態の写真である。 Ti-6Al-7Nb合金による臼歯の鋳造品の写真である。 TNTZ合金によるクラウンの鋳造品をコート層から取り出している状況を示す写真である。 本発明によるカルシア鋳型および市販マグネシア系鋳型をそれぞれ用いて鋳造したTi-6Al-7Nb合金の、表面近傍から内部にかけてのミクロビッカース硬さ分布を示すグラフである。 本発明によるカルシア鋳型および市販マグネシア系鋳型をそれぞれ用いて鋳造したTNTZ合金の、表面近傍から内部にかけてのミクロビッカース硬さ分布を示すグラフである。

Claims (5)

  1. 消失性模型の表面にコート層を付着させた後に、そのコート層の表面にバックアップ層を付着させて積層体を形成し、前記消失性模型の除去及び前記積層体の焼成を経ることによって内部に鋳造用キャビティが形成された鋳型を得るチタン合金鋳造用の鋳型の製造方法であって、
    前記コート層を付着させる工程は、カルシア粉末をバインダ中に混合してなるスラリー中に前記消失性模型を侵漬させて内層側のコート層を付着させる第1の工程と、カルシア粉末と無機繊維状物質とをバインダ中に混合してなるスラリー中に前記消失性模型を侵漬させて外層側のコート層を付着させる第2の工程と、を有しているチタン合金鋳造用の鋳型の製造方法。
  2. 請求項1に記載のチタン合金鋳造用の鋳型の製造方法であって、
    第1の工程及び/又は第2の工程におけるカルシア粉末として、平均粒径が0.3mm以下のカルシア粉末を用いるチタン合金鋳造用の鋳型の製造方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載のチタン合金鋳造用の鋳型の製造方法であって、
    第2の工程における無機繊維状物質として、長軸方向の寸法が0.1mmから10mmのシリカファイバーを用いるチタン合金鋳造用の鋳型の製造方法。
  4. 請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載のチタン合金鋳造用の鋳型の製造方法であって、
    第2の工程におけるスラリー中には、そのスラリー全体に対して7%から20%のジルコニウムが混合されていることを特徴とするチタン合金鋳造用の鋳型の製造方法。
  5. 請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載のチタン合金鋳造用の鋳型の製造方法によって製造された鋳型を用いて鋳造される歯科医療用チタン合金
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