JP4353609B2 - インクジェット記録用紙 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高光沢性、高耐久性で、しかも優れたインクジェツト適性を持つインクジェット用記録用紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録は、水性インクを用いた非接触型の記録方式であり、近年その高速性、低騒音性、多色印字の容易性、記録パターンの融通性が大きいこと及び現像、定着が不要であること等を特徴としており、漢字を含むカラー図形情報のハードコピー装置をはじめ、種々の用途において急速に普及している。
さらに、近年インクジェット印字の高速化、高精細化が進み、インクジェット方式により形成される画像は通常の多色印刷、例えばオフセット印刷などによるものに比較して遜色なく、作成部数が少ない場合には通常の製版方式によるものより安価であることから、インクジェット記録方式を単なる記録用途に留めず、多色印刷やカラー写真の分野にまで応用する動きが見られている。また、耐水性の低い染料インクを耐水性や耐光性に優れた顔料インクに変更することで、大型ポスターや屋外看板用途までインクジェットプリンターで対応しようとする動きも見られる。
【0003】
このようなインクジェットプリンター装置の進化に伴い、同時に記録媒体に対してもより高度な特性が要求されるようになっている。
例えば、大型ポスターや屋外看板用途を考慮した場合、記録媒体に水性インク吸収性に加えて、悪天候時でも印字部分が消失しないといった意味での耐水性、加えて風等により媒体が引っ張られた場合でも破れないといった耐久性も要求される。
また、デジタルカメラで撮影した写真を出力するといった写真出力用途を考慮した場合は、水性インク吸収性に加えて、印字物の高級感といった意味から記録媒体に高光沢性が要求される。
【0004】
上記目的のインクジェット用紙としては、パルプ紙やプラスチックフィルム、合成紙の上に高光沢性のインク受容層を設けたインクジェット用紙が開発され、市販化されている。
しかし、上記目的のインクジェット用紙の支持体としてパルプ紙を用いた用紙では、高光沢性のインク受容層を設けることで、高光沢性およびインク吸収性は満足されるものの、支持体が破れやすく媒体の耐久性に大きな問題がある。
また、耐久性が高い支持体としてプラスチックフィルムや、合成紙を用いることが提案されているが、支持体に水性インク吸収性が全くないために、高塗工量のインク受容層を設ける必要があり、コーティング工程を多数回行い、しかも高コストであるという問題があった。
【0005】
上記問題を解決するため本発明者らは、「Japan TAPPI No.51−87」により測定される液体吸収容積が0.5ml/m2 以上の範囲にあることを特徴とする多孔性樹脂フィルムが高耐久性でかつ水系液体の吸収が良好であり、更に表面接触角が110°以下の多孔性樹脂フィルムがインクの吐出量が多い場合でも濃度ムラなくインクを吸収することができ、インクジェット等の記録媒体として好適であることを見出した(特願平11−320769号公報参照)。
しかし、上記多孔性樹脂フィルムはインク吸収性は高いものの、インク滲みが発生しやすいことに加え、インク定着性がないために染料インクに対する耐水性も低く、さらに表面光沢性が低いため印字物の見映えという点では今一つであり、インク滲み性、耐水性、表面光沢性という点で改善の余地が残されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高光沢性、高耐久性であり、優れたインクジェットプリンター適性を示す安価なインクジェット用記録用紙を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決することを目的として鋭意研究を行った結果、本発明者らが提案した多孔性樹脂フィルム(特願平11−320769号公報参照)の上に特定の光沢度以上のインク受容層を備えたインクジェット記録用紙が高光沢性、かつ高耐久性で、しかもインクジェット用インクを滲みを発生せず速やかに吸収することを見いだした。
さらに本発明者らは、上記多孔質樹脂フィルムを支持体として使用した場合は、従来の樹脂フィルムの支持体と比較して、低塗工量のインク受容層を備えることでインクジェットジェット適性を満足することが可能である、すなわち低価格でインクジェット記録用紙が製造可能であることも見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、多孔性樹脂フィルム上にインク受容層を備えたインクジェット記録用紙であって、多孔性樹脂フィルムが、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、親水性熱可塑性樹脂を10〜60重量部の割合で含有する熱可塑性樹脂30〜90重量%、および無機または有機微細粉末70〜10重量%を含有するものであり、「Japan TAPPI No.51−87」により測定される液体吸収容積が1〜500ml/m2 であり、かつインク受容層が、平均粒径350nm以下の無機フィラーを70〜95重量%およびバインダー樹脂を5〜30重量%含有するものであり、その表面光沢度(JIS−Z8741:60度測定)が40%以上であることを特徴とするインクジェット記録用紙である。
無機フィラーが不定形シリカであり、特に中でも不定形シリカが平均粒径1〜10nmの一次粒子が凝集した不定形シリカであることが好ましい。さらに不定形シリカがカチオン処理シリカであることが好ましい。
【0009】
また本発明では、インク受容層に、架橋剤を1〜20重量%、インク定着剤を1〜20重量%含有させることが好ましい。
さらに本発明では、インク受容層の上にさらにトップコート層を設け、かつ表面光沢度(JIS−Z8741:60度測定)が50%以上であることが好ましい。トップコート層は、350nm以下の無機フィラーを70〜95重量%およびバインダー樹脂を5〜30重量%含有し、さらにインク定着剤を1〜20重量%含有することが好ましい。
また本発明の多孔性樹脂フィルムは、表面光沢度(JIS−Z8741;60度測定)が20%以上であることが好ましい。
【0010】
多孔性樹脂フィルムに用いる親水性熱可塑性樹脂としては、アルキレンオキシド化合物およびジカルボン酸化合物との反応生成物であり、常温30分間で水に溶解するものないしは吸水倍率が5倍(5g/g)〜50倍の範囲のものを用いることが好ましい。多孔性樹脂フィルムは親水性熱可塑性樹脂を含有することにより、水に対する平均接触角が45〜110°の範囲である。
多孔性樹脂フィルムは表面及び内部に空孔を有し、特に空孔率が20〜75%の範囲であることが好ましい。
また、多孔性樹脂フィルムは延伸されているものであることが好ましい。
【0011】
本発明の実施形態として、多孔性樹脂フィルムが表面に空孔を1×10 6 個/m 2 以上有しており、表面の空孔の平均直径が0.01〜50μmの範囲にあることが好ましい。また、無機または有機微細粉末の平均粒子径が0.01〜20μmの範囲にあることが好ましく、該無機または有機微細粉末の比表面積が0.5m 2 /g以上の範囲にあることがより好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下において、本発明のインクジェット記録用紙について詳細に説明する。
多孔性樹脂フィルム
本発明の多孔性樹脂フィルムの液体吸収容積は、0.5ml/m2 以上、好ましくは5ml/m2 以上である。
0.5ml/m2 未満ではインクジェットインクが不充分であるため、本発明の目的の一つであるインクと受容層の塗工量削減が困難である。また、吸収量を増やすためには多孔性フィルムの厚さも考慮する必要があるので、基材厚みやインク受容層によって液体吸収容量の上限は適宜決められる。
【0013】
本発明での多孔性樹脂フィルムの液体吸収容積とは、「Japan、TAPPI、No.51−87」(紙パルプ技術協会、紙パルプ試験方法No.51−87、ブリストー法)に準拠して測定されるものであり、本発明に於いては吸収時間が2秒以内の測定値を液体吸収容積とする。測定溶媒は水70重量%とエチレングリコール30重量%の混合溶媒を100重量%として着色用染料を加えてなるものを使用して測定される。着色用染料としては、マラカイトグリーン等を使用し、その量は混合溶媒100重量部に対し、それに加えて2重量部程度であるが、測定に使用する溶媒の表面張力を大きく変化させない範囲であれば、使用する着色用染料の種類及び量は特に限定されない。
測定機としては、例えば熊谷理機工業株式会社製、液体吸収性試験機が挙げられる。
【0014】
また、より短い吸収時間における液体吸収容積が大きい方が、インク吸収速度が向上する。本発明に於いては40ミリ秒以内の液体吸収容積が0.8ml/m2 以上、より好ましくは1〜500ml/m2 の範囲である。
さらに、上述の液体吸収容積の測定に付随して測定される液体吸収速度は、より大きい方が重色部の吸収や乾燥によりよい結果を与える傾向がある。本発明に於いては20ミリ秒〜400ミリ秒の間における吸収速度が、一般的には0.02ml/{m2 ・(ms)1/2}以上であり、より好ましくは、0.1〜100ml/{m2 ・(ms)1/2}以上である。
【0015】
本発明の多孔性樹脂フィルムの表面光沢度(JIS−Z8741:60度測定)は20%以上であることが好ましい。
多孔性樹脂フィルムの表面光沢度が20%未満であると、多孔質樹脂フィルム上に設けたインク受容層の光沢度も相対的に低下するため好ましくない。
本発明の多孔性樹脂フィルムの水に対する表面接触角は、110°以下、好ましくは20〜100°、より好ましくは20〜80°の範囲であり、またインクジェット記録シートでは、特に45〜80°の範囲が好ましい。
インクジェットインクの浸透をよりよいレベルとするためには表面接触角は110°以下の範囲である。また、インクジェットインクのフィルム紙面に平行な方向への広がりと、フィルムの厚さ方向への浸透のバランスをはかるという観点から、インク種類に応じて適宜選択されるケースがある。
【0016】
なお、本発明におけるフィルム表面の水接触角は、市販の接触角計を用い、純水をフィルム表面に滴下して1分後に同接触角計を用いて測定されるものである。1試料にたいして測定を10回行い、1回の測定毎に純水で表面が濡れていない未測定のフィルムに交換して測定される接触角の平均値を水接触角とする。本発明の接触角測定に使用可能な市販の接触角計の例として、協和界面化学(株)製の型式CA−Dが挙げられる。
また更に、10回の接触角測定における「最大値と最小値との差」が小さいほどインクや水性媒体を使用する液体の吸収がより均一となる傾向となり、印字媒体としてよりよい印字品質を与えるが、一例としては、最大値と最小値との差は40°以内、好ましくは、30°以内、より好ましくは、15°以内である。
【0017】
本発明の多孔性樹脂フィルムは表面に微細な空孔を有しており、この空孔より表面に接触した水性インクや水系の液体を吸収する。多孔性フィルム表面の空孔の数や形状は、電子顕微鏡観察により求めることができる。
多孔性フィルム試料より任意の一部を切り取り、観察試料台に貼り付けて、観察面に金ないしは金−パラジウム等を蒸着し、電子顕微鏡、例えば、日立製作所(株)製の走査型電子顕微鏡S−2400等を使用して観察しやすい任意の倍率にて表面の空孔形状を観察することができ、空孔数や空孔の大きさや空孔形状を知ることができる。観察する視野の面積における空孔数を、単位面積当たりに換算し空孔数とする。
【0018】
多孔性フィルム表面の単位面積当たりの空孔の数は、1×106 個/m2 以上の範囲であり、インクジェットインキの浸透を速くするという観点から、好ましくは1×108 個/m2 以上である。また、表面強度をより良いレベルとするという観点から、好ましくは1×1015個/m2 以下、より好ましくは1×1012個/m2 以下の範囲である。
また、多孔性フィルムの表面付近の空孔形状は、円状、楕円状等様々であるが、それぞれの空孔の最大径(L)とそれに直角な方向の最大の径(M)を測定して平均したもの[(L+M)/2]をそれぞれの空孔の平均直径とする。少なくとも20個の表面空孔につき繰り返して測定し、その平均値を本発明の多孔性フィルムの表面の空孔の平均直径とする。より良いレベルの液体吸収性を得るという観点から、平均直径は0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは1μm以上である。多孔性フィルムの表面強度をより良いレベルとするためには、平均直径は10μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下である。
【0019】
本発明の多孔性樹脂フィルムは内部に微細な空孔を有する多孔質構造を有しており、水性インクの吸収乾燥性をよりよいレベルとするという関連から、その空孔率は10%以上であり、好ましくは20〜75%であり、より好ましくは30〜65%の範囲である。空孔率が75%以下であればフィルムの材料強度が良いレベルとなる。内部に空孔があることは、断面の電子顕微鏡観察により確かめることができる。
【0020】
なお、本発明における空孔率は、次式で示される空孔率、ないしは断面の電子顕微鏡写真観察した領域に空孔が占める面積割合(%)を示す。次式で表される空孔率と面積割合は同じものである。具体的には、多孔性樹脂フィルムをエポキシ樹脂で包埋して固化させた後、ミクロトームを用いて例えばフィルムの厚さ方向に対して平行かつ面方向に垂直な切断面を作製し、この切断面をメタライジングした後、走査型電子顕微鏡で観察しやすい任意の倍率、例えば500倍から2000倍に拡大し観察したり、電子顕微鏡像を撮影して画像解析することにより、観察した領域の空孔面積を空孔率としてもよい。面積比の求め方の一例として、空孔部分をトレーシングフィルムにトレースし塗りつぶした図を画像解析装置(ニレコ(株)製:型式ルーゼックスIID)で画像処理を行い、空孔の面積割合(%)を求めて空孔率とすることもできる。
【0021】
【式1】
【0022】
また、本発明の多孔性樹脂フィルムを表面に有する積層体の場合は、該積層体及びこれから本発明の多孔性樹脂フィルム層を取り除いた部分の厚さと坪量(g/m2 )より本発明の多孔性樹脂フィルム層の厚さと坪量を算出し、これより密度(ρ)を求め、さらに構成成分の組成より真密度(ρ0 )を求めて上記の式により求めることもできる。
さらに、内部空孔の形状やその寸法は、走査型電子顕微鏡で観察しやすい任意の倍率、例えば200倍ないしは2000倍に拡大して観察することができる。内部空孔の寸法は、少なくとも10個の内部空孔の面方向の寸法と厚さ方向の寸法を測定してそれぞれを平均したものとする。
【0023】
多孔性フィルムの空孔の面方向の平均寸法は、0.1〜1000μm、好ましくは1〜500μmの範囲である。多孔性フィルムの機械的強度をよりよいレベルにするという観点から、空孔のフィルムの面方向の最大寸法は1000μm以下が良い。また、より高いレベルの水系液体吸収性を得るという観点からフィルムの面方向の最大寸法は、0.1μm以上が好ましい。
多孔性フィルムの空孔の厚さ方向の平均寸法は、通常0.01〜50μm、好ましくは0.1〜10μmの範囲である。水系液体の吸収向上には、厚さ方向の寸法が大きい方が良いが、フィルムの適度な機械的強度を得るという観点から、用途に応じて上限が選定可能である。
【0024】
<多孔性樹脂フィルムの組成、製造法>
本発明の多孔性樹脂フィルムのなかで、好ましくは、親水性樹脂を含む熱可塑性樹脂30〜90重量%および無機または有機微細粉末70〜10重量%を含有するものである。
熱可塑性樹脂は、非親水性熱可塑性樹脂と親水性熱可塑性樹脂との混合物からなるものであってもよいし、親水性熱可塑性樹脂のみからなるものであってもよい。熱可塑性樹脂として、好ましくは、非親水性熱可塑性樹脂と親水性熱可塑性樹脂との混合物である。熱可塑性樹脂が非親水性熱可塑性樹脂と親水性熱可塑性樹脂との混合物からなる場合は、非親水性熱可塑性樹脂100重量部に対して、親水性熱可塑性樹脂を5〜100重量部の割合で含有することが好ましく、より好ましくは10〜60重量部の範囲である。
【0025】
本発明の多孔性樹脂フィルムにおいて使用される非親水性熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂、あるいはプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリメチル−1−ペンテン、エチレン−環状オレフィン共重合体、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,10、ナイロン−6,12等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやその共重合体、ポリエチレンナフタレート、脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは2種以上混合して用いることもできる。
【0026】
これらの中でも、耐薬品性や低比重、コスト等の観点より、好ましくは、エチレン系樹脂、あるいはプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂であり、より好ましくは、プロピレン系樹脂である。プロピレン系樹脂としては、プロピレンを単独重合させたアイソタクティック重合体ないしはシンジオタクティック重合体を例示することができる。また、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンとプロピレンとを共重合体させた様々な立体規則性を有するポリプロピレンを主成分とする共重合体を使用することもできる。共重合体は2元系でも3元系以上の多元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。プロピレン系樹脂には、プロピレン単独重合体よりも融点が低い樹脂を2〜25重量%配合して使用することが好ましい。そのような融点が低い樹脂として、高密度ないしは低密度のポリエチレンを例示することができる。
親水性熱可塑性樹脂は、水に対して溶解または膨潤する特性を有し、常温以上の温度で塑性を有するものであれば特に制限されない。
【0027】
例えば、合成樹脂であるポリビニルアルコールやその共重合体ないしは架橋体、ポリビニルピロリドンやその共重合体等のポリビニル系樹脂;2−ヒドロキシエチル基2−ヒドロキシプロピル基等のヒドロキシアルキル基を含むアクリル酸、メタクリル酸、ないしはマレイン酸のエステルの重合体や共重合体ないしはそれらの架橋体、ポリアクリルアミドやその共重合体、アクリロニトリルの重合体や架橋重合体の加水分解物、アクリル酸やメタクリル酸の重合体やその共重合体ないしはそれらの架橋体等のポリアクリル系樹脂やその塩(例えばナトリウム塩やカリウム塩、リチウム塩、1〜4級アンモニウム塩等);ポリマレイン酸やマレイン酸共重合体ないしはそれらの架橋体等の樹脂やその塩(例えばナトリウム塩やカリウム塩、リチウム塩、1〜4級アンモニウム塩等)、酢酸ビニルとメタクリル酸メチルの共重合体の加水分解物;水溶性ナイロン;ウレタン系樹脂、すなわち、水溶性ポリウレタン、高吸水性ポリウレタン、熱可塑性ポリウレタン;ポリエチレンオキシドやその共重合体、ポリプロピレンオキシドやその共重合体等のポリアルキレンオキシド系樹脂;ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド;ポリビニルアミン、ポリアリルアミンやその共重合体等を使用することができる。
【0028】
また、「高分子加工」1984年第9号第32〜38頁等の文献に記載されている樹脂より選択することも可能である。なかでも、常温以上の温度で塑性を示し、フィルム成形が比較的容易な樹脂を用いることが好ましい。
さらに、水系溶媒、ないしは水性インクの吸収をより良くするという観点から、常温30分間で溶解ないしは吸水倍率が5倍以上(5g/g以上)であり、より好ましくは吸水倍率が8〜50倍の範囲である。吸水倍率は、親水性樹脂を押し出し機を接続したTダイや熱プレス成形により約0.1mmの厚さに成形し、常温、例えば25℃の蒸留水に30分間浸漬して吸水させ、吸水後の重量を吸水前の重量で割って得られるものである。
なお、アラビアゴム、トランガントゴム、コーンスターチ、小麦デンプン、コラーゲン等の熱に非常に弱い天然樹脂は、プラスチックを溶融する温度で使用することが困難であるため、好適な親水性熱可塑性樹脂ではない。
なかでも、常温以上の温度で塑性を有し、フィルム成形が比較的容易なポリアルキレンオキシド系樹脂を用いることが好ましい。
【0029】
本発明で使用するポリアルキレンオキシド系樹脂として、アルキレンオキシドと二塩基酸、ないしはカルボキシル基を3個以上有する多塩基酸との反応生成物、ポリアルキレンオキシド化合物とジカルボン酸化合物やその低級アルキルエステル化合物ないしはカルボキシル基を3個以上有するカルボン酸やその低級アルキルエステル化合物との反応生成物を例とし、エステル結合を含むポリエステル系ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンオキシド化合物とイソシアネート基を2個以上有する化合物との反応生成物を例とし、ウレタン結合を含むポリウレタン系ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンオキシド化合物とジアルキルカーボネート等の炭酸ジエステル化合物との反応生成物を例とする炭酸エステル結合を含むポリアルキレンオキシド、アミド結合を含むポリアルキレンオキシド、尿素やチオ尿素結合を含むポリアルキレンオキシド、スルフィド結合ないしはスルホニル結合を含むポリアルキレンオキシド、燐酸エステル結合や亜燐酸エステル結合を含むポリアルキレンオキシド等を挙げることができる。
【0030】
これらの内で、非親水性熱可塑性樹脂との混合分散性をよりよいレベルとするという観点からエステル結合を含むポリアルキレンオキシドが好ましい。
使用するアルキレンオキシドの種類は特に制限されない。例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサン、およびその他の炭素数30までのα−オレフィンオキシドが挙げられる。これらのうちで、好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシヘキサンである。これらのアルキレンオキシドは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上のアルキレンオキシドを用いる場合は、それらを1種ずつ反応させてもよいし、2種以上を混合して反応させてもよい。
【0031】
ポリアルキレンオキシド化合物の種類はとくに制限されるものではないが、上記のアルキレンオキシドの重合体ないしは共重合体であり、重量平均分子量が5,000〜30,000であるものが好ましい。フィルム成形性をよりよいレベルとするためには重量平均分子量が5,000以上である。また、ポリアルキレンオキシド系樹脂の製造においてアルキレンオキシド付加反応の反応速度が比較的速く、生産性が良いのは30,000以下の範囲である。
ポリアルキレンオキシド化合物は、アルキレンオキシドを付加重合させることによって得ることができる。例えば、活性水素を2個有する有機化合物に、アルキレンオキシドを付加重合させて得られるポリアルキレンオキシド化合物を好ましく用いることができる。
【0032】
活性水素を2個有する有機化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ポリテトラメチレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール等の脂環式ジオール、ブチルアミン、ラウリルアミン、オクチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン等のアミン類が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらの活性水素を2個有する有機化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、好ましくは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールより選ばれるものである。
【0033】
活性水素を2個有する有機化合物に付加重合させるアルキレンオキシドの種類は特に制限されない。例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサン、およびその他の炭素数30までのα−オレフィンオキシドを挙げることができる。これらのアルキレンオキシドは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上のアルキレンオキシドを用いる場合は、それらを1種ずつ反応させてもよいし、2種以上を混合して反応させてもよい。
【0034】
好ましいポリアルキレンオキシド化合物は、活性水素を2個有する有機化合物に、エチレンオキシドを付加重合させ、ついで炭素数4以上のアルキレンオキシドを付加重合させ、更にエチレンオキシドを付加重合させることにより得られる化合物である。このような方法により得られたポリアルキレンオキシド化合物をジカルボン酸化合物と反応させることにより、非親水性樹脂、なかでもポリオレフィン系樹脂との相溶性が比較的良好なポリアルキレンオキシド系樹脂を提供することが可能になる。したがって、当該ポリアルキレンオキシド系樹脂とポリオレフィン系樹脂を混合したフィルムは、印刷時のインクを吸収が良好となり、また吸収の均一性が向上する。
【0035】
ポリアルキレンオキシド化合物と反応させるカルボン酸ないしはその低級アルキルエステル化合物は、カルボン酸基またはカルボン酸誘導基を分子内に2つ以上、好ましくは2つ有する化合物であればその構造は特に制限されない。具体例としては、炭素数6〜36、好ましくは炭素数8〜24の範囲の直鎖状、分岐状、脂環式、ないしは芳香属ジないしはトリカルボン酸、および、これらのジないしはトリカルボン酸の低級アルキルエステルの少なくとも一方、芳香属ジないしはトリカルボン酸などが挙げられる。
【0036】
さらに具体的には、セバシン酸、1,10−デカメチレンジカルボン酸、1,14−テトラデカメチレンジカルボン酸、1,18−オクタデカメチレンジカルボン酸、1,32−ドトリアコンタメチレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸の種々の異性体、4,4’−ビフェニレンジカルボン酸及びこれらの低級アルキルエステルが挙げられる。これらのうちで好ましいのは、炭素数12〜36の直鎖状ジカルボン酸、および炭素数12〜36の直鎖状ジカルボン酸の低級アルキルエステルの少なくとも一方である。より詳細に説明すると、炭素数12〜36の飽和直鎖脂肪族ジカルボン酸、炭素数12〜36の不飽和直鎖脂肪族ジカルボン酸、およびそれらの低級アルキルエステルが好ましく用いられる。
【0037】
より好ましくは上記化合物において、炭素数12〜26の直鎖状ジカルボン酸およびその低級アルキルエステル、特に好ましくは炭素数16〜24の直鎖状ジカルボン酸およびその低級アルキルエステルである。上記炭素数12〜36の直鎖状ジカルボン酸としては、具体的には、1,10−デカメチレンジカルボン酸、1,14−テトラデカメチレンジカルボン酸、1,18−オクタデカメチレンジカルボン酸、1,32−ドトリアコンタメチレンジカルボン酸等が挙げられる。上記の低級アルキルエステルとしては、これらジカルボン酸のメチルエステル、ジメチルエステル、エチルエステル、ジエチルエステル、プロピルエステル、ジプロピルエステル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
これらのうちで、特に好ましくは、活性水素を2個有する有機化合物として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオールより選ばれるものに、アルキレンオキシドとしてエチレンオキシドを主成分とし、プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシヘキサンより選ばれるものを付加重合して得られる分子量が10,000〜30,000の範囲にあるポリアルキレンオキシドを炭素数12〜36の範囲の脂肪族ジカルボン酸ないしはその低級アルキルエステルと共重合して得られ、全体の分子量が20,000〜200,000、さらに好ましくは80,000〜160,000の範囲にあるものである。
【0039】
本発明の多孔性樹脂フィルムにおいては、多孔性とするために有機または無機微細粉末を含有させることが好ましい。有機または無機微細粉末の量は、一例として10〜70重量%であるが、有機微細粉末の場合には比重が小さいものが多く、好ましくは10〜50重量%、より好ましくは15〜40重量%であり、無機微細粉末の場合には、好ましくは20〜65重量%、より好ましくは40〜65重量%の範囲である。空孔を増やすためには微細粉末の量が多い方がよいが、多孔性樹脂フィルムの表面の強度を良いレベルとするという目的のためには70重量%以下が良い。
【0040】
有機または無機微細粉末の種類は特に制限されない。無機微細粉末としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、凝集型軽質炭酸カルシウム、種々の細孔容積を有するシリカ、ゼオライト、クレー、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、珪藻土、酸化珪素、シリカなど水酸基含有無機微細粉末の核の周囲にアルミニウム酸化物ないしは水酸化物を有する複合無機微細粉末等を例示することができる。中でも重質炭酸カルシウム、クレー、珪藻土を使用すれば、安価であり、延伸により成形する場合には、空孔形成性がよいために好ましい。
【0041】
有機微細粒子としては、空孔形成の目的より、上述の非親水性熱可塑性樹脂として使用する熱可塑性樹脂よりも融点ないしはガラス転移点が高くて非相溶性の樹脂より選択される。具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、アクリル酸エステルないしはメタクリル酸エステルの重合体や共重合体、メラミン樹脂、ポリフェニレンサルファイト、ポリイミド、ポリエールエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド等を例示することができる。なかでも、非親水性熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン系樹脂を使用する場合には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレンより選ばれるものが好ましい。
【0042】
無機ないしは有機の微細粉末のうちで、燃焼時の発生熱量が少ないという観点から、より好ましくは無機微細粉末である。
本発明に使用する無機または有機微細粉末の平均粒子径は、好ましくは0.01〜20μm、より好ましくは0.1〜10μm、更に好ましくは、0.5〜10μmの範囲である。親水性熱可塑性樹脂や非親水性熱可塑性樹脂との混合の容易さから0.01μm以上が良い。また、延伸により内部に空孔を発生させて吸収性を向上させる場合に、延伸時のシート切れや表面層の強度低下等のトラブルを発生させにくくするという観点から20μm以下が好ましい。
【0043】
本発明に使用する無機ないしは有機の微細粉末の粒子径は、一例として粒子計測装置、例えば、レーザー回折式粒子計測装置「マイクロトラック」(株式会社日機装製、商品名)により測定した累積で50%にあたる粒子径(累積50%粒径)により測定することができる。また、溶融混練と分散により非親水性樹脂や親水性樹脂中に分散した微細粉末の粒子径は、多孔質フィルム断面の電子顕微鏡観察により粒子の少なくとも10個を測定してその粒子径の平均値として求めることも可能である。
本発明に使用する無機または有機微細粉末の比表面積は、BET法により測定され、一例として0.1〜1000m2 /g、より好ましくは0.2〜700m2 /g、更に好ましくは0.5〜100m2 /gの範囲である。
【0044】
比表面積が大きい無機ないしは有機の微細粉末を使用すると水系溶媒やインクの吸収がより良くなる傾向となる。また、親水性熱可塑性樹脂や非親水性熱可塑性樹脂との混合分散において、分級による分散不十分や随伴する空気による発泡などのトラブルが起きやすくなる傾向がある場合は、使用に適した比表面積上限は適宜選定される。また、種々の吸油量のものが使用可能であり、一例として、吸油量(JIS−K5101−1991等)が1〜300ml/100g、好ましくは10〜200ml/gの範囲である。
本発明の多孔性樹脂フィルムに使用する微細粉末は、上記の中から1種を選択してこれを単独で使用してもよいし、2種以上を選択して組み合わせて使用してもよい。2種以上を組み合わせて使用する場合には、有機微細粉末と無機微細粉末の組み合せであってもよい。
【0045】
これらの微細粉末を熱可塑性樹脂中に配合混練する際に、必要に応じて分散剤、酸化防止剤、相溶化剤、難燃剤、紫外線安定剤、着色顔料等を添加することができる。また、本発明の多孔性樹脂フィルムを耐久資材として使用する場合には酸化防止剤や紫外線安定剤等を添加するのが好ましい。さらに、有機微細粉末を使用する場合は、相溶化剤の種類や添加量が有機微細粉末の粒子形態を決定することから重要である。有機微細粉末用の好ましい相溶化剤として、エポキシ変性ポリオレフィン、マレイン酸変性ポリオレフィンが挙げられる。また、相溶化剤の添加量は、有機微細粉末100重量部に対して0.5〜10重量部の範囲にするのが好ましい。
親水性熱可塑性樹脂を非親水性熱可塑性樹脂や無機ないしは有機の微細粉末とと溶融混練などの方法により混合する際に、必要に応じて分散改良剤を添加することは分散の改良や分散安定性向上、ないしは表面接触角の測定における最大値と最小値の差を小さくして水系液体吸収をより均一にするのに有効である。
【0046】
分散改良剤としては、エポキシ基含有樹脂、例えば、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル−グリシジルメタクリレート共重合体、グリシジルメタクリレートグラフト変性ポリプロピレン、エポキシ化ポリブタジエン系重合体、酸変性ポリオレフィン、例えばマレイン酸変性ポリプロピレン、ヒドロキシ基含有ポリオレフィン、例えば2−ヒドロキシエチルメタクリレートグラフト変性ポリプロピレン、アミノ変性ポリオレフィン、例えば3,3−ジメチルアミノエチル−メタクリレートグラフト変性ポリプロピレンなどに例示される極性樹脂系分散改良剤や、有機リン化合物、例えば、フォスファイト化合物、フォスフォナイト化合物、より具体的には、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビスフェニレンジホスフォナイトなどに例示されるリン系分散改良剤が挙げられる。
【0047】
インキの吸収をより良いレベルとするという観点から、極性樹脂系分散改良剤の使用量は、通常、非親水性の熱可塑性樹脂100重量部に対して0.1重量部以上、好ましくは0.5〜30重量部、より好ましくは1〜15重量部であり、リン系分散改良剤の使用量は、通常、非親水性の熱可塑性樹脂100重量部に対して0.01重量部以上、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.2〜3重量部である。
【0048】
本発明の多孔性樹脂フィルムの構成成分の混合方法としては、公知の種々の方法が適用でき、特に限定されないが、混合の温度や時間も使用する成分の性状に応じて適宜選択される。溶剤に溶解ないしは分散させた状態での混合や、溶融混練法が挙げられるが、溶融混練法は生産効率が良い。粉体やペレットの状態の熱可塑性樹脂や無機ないしは有機の微細粉末及び、親水化剤をヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、スーパーミキサー等で混合した後、一軸や二軸の混練機にて溶融混練し、ストランド状に押し出してカッティングし、ペレットとする方法や、ストランドダイより水中に押し出してダイ先端に取り付けられた回転刃をでカッティングする方法が挙げられる。また、粉体、液状ないしは水や有機溶剤に溶解した状態の親水化剤を一旦熱可塑性樹脂や無機ないしは有機の微細粉末に混合し、更に他の成分と混合する方法などが挙げられる。使用される一軸や二軸の混練機としては、種々のL/D(軸長/軸径)比や、センダン速度、比エネルギー、滞留時間、温度等のものが使用成分の性状に合わせて選択可能である。
【0049】
本発明の多孔性樹脂フィルムの厚さは特に制限されない。例えば、10〜400μm、好ましくは30〜100μmに調製することができる。
本発明の多孔性樹脂フィルムは、そのまま使用に供してもよいし、さらに別の熱可塑性フィルム、ラミネート紙、パルプ紙、不織布、布等に積層して使用してもよい。さらに、積層する別の熱可塑性フィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリオレフィンフィルム等の透明または不透明なフィルムに積層することができる。特に後述する実施例に記載されるような適切な機能層を形成することによって記録媒体にすることできる。
【0050】
例えば、熱可塑性フィルムからなる基材層の上に本発明の多孔性樹脂フィルムを表面層として積層することによって記録媒体を調製することができる。本発明の多孔性樹脂フィルムを表面層として有する記録媒体は特にインクジェット記録用の記録媒体として有用である。基材層の種類は特に制限されるものではないが、例えばポリプロピレン系樹脂と無機微細粉末を含有するフィルムを例示することができる。
このように、本発明の多孔性樹脂フィルムと他のフィルムとを積層することによって形成される記録媒体は、例えば全体の厚さを50μm〜1mm程度にすることができる。
【0051】
本発明の多孔性樹脂フィルムは、当業者に公知の種々の方法を組み合わせることによって製造することができる。いかなる方法により製造された多孔性樹脂フィルムや記録媒体であっても、本発明の条件を満たす多孔性樹脂フィルムを利用するものである限り本発明の範囲内に包含される。
液体吸収容積が0.5ml/m2 以上である本発明の多孔性樹脂フィルムの製造法としては、公知の種々のフィルム製造技術やそれらの組合せが可能である。例えば、延伸による空孔発生を利用した延伸フィルム法や、圧延時に空孔を発生させる圧延法やカレンダー成形法、発泡剤を使用する発泡法、空孔含有粒子を使用する方法、溶剤抽出法、混合成分を溶解抽出する方法などが挙げられる。これらのうちで、好ましくは延伸フィルム法である。
【0052】
延伸を行う場合には、必ずしも本発明の多孔性樹脂フィルムだけを延伸しなくてもよい。例えば、本発明の多孔性樹脂フィルムを基材層の上に形成した記録媒体を最終的に製造しようとしている場合には、無延伸の多孔性樹脂フィルムと基材層とを積層したうえでまとめて延伸しても構わない。予め積層してまとめて延伸すれば、別個に延伸して積層する場合に比べて簡便でコストも安くなる。また、本発明の多孔性樹脂フィルムと基材層に形成される空孔の制御もより容易になる。特に記録媒体として利用する場合には、本発明の多孔性樹脂フィルムが基材層よりも多くの空孔が形成されるように制御し、多孔性樹脂フィルムがインク吸収性を改善しうる層として有効に機能させることが好ましい。
【0053】
延伸には、公知の種々の方法を使用することができる。延伸の温度は、非結晶樹脂の場合は使用する熱可塑性樹脂のガラス転移点温度以上、結晶性樹脂の場合には非結晶部分のガラス転移点温度以上から結晶部の融点以下の熱可塑性樹脂に好適な温度範囲内で行うことができる。具体的には、ロール群の周速差を利用した縦延伸、テンターオーブンを使用した横延伸、圧延、チューブ状フィルムにマンドレルを使用したインフレーション延伸、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時二軸延伸などにより延伸することができる。
【0054】
延伸倍率は特に限定されず、本発明の多孔性樹脂フィルムの使用目的と用いる熱可塑性樹脂の特性等を考慮して適宜決定する。例えば、非親水性の熱可塑性樹脂としてプロピレン単独重合体ないしはその共重合体を使用するときには、一方向に延伸する場合は約1.2〜12倍、好ましくは2〜10倍であり、二軸延伸の場合は面積倍率で1.5〜60倍、好ましくは10〜50倍である。その他の熱可塑性樹脂を使用するときには、一方向に延伸する場合は1.2〜10倍、好ましくは2〜7倍であり、二軸延伸の場合には面積倍率で1.5〜20倍、好ましくは4〜12倍である。
さらに、必要に応じて高温での熱処理を施すことができる。延伸温度は使用する非親水性熱可塑性樹脂の融点より2〜160℃低い温度、非親水性熱可塑性樹脂としてプロピレン単独重合体ないしはその共重合体を使用するときには、好ましくはその融点より2〜60℃低い温度であり、延伸速度は20〜350m/分であるのが好ましい。
【0055】
本発明の多孔性樹脂フィルムは、そのまま使用に供してもよいし、さらに別の基材(A)の少なくとも片面に積層して積層体として使用してもよい。基材(A)としては、例えばポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリオレフインフィルム等の透明または不透明なフィルム、プラスチックボード、パルプ紙、不織布、布、木板、金属板、等が挙げられる。
積層体における基材(A)が樹脂フィルムである場合には、使用される樹脂や無機ないしは有機の微細粉末は、上記の非親水性の熱可塑性樹脂の中から1種を選択して使用してもよいし、2種以上を選択して組み合わせて使用してもよい。また、非親水性熱可塑性樹脂と親水性熱可塑性樹脂を混合して使用してもよく、多孔性樹脂フィルムに使用するものと同じものであってもよい。さらには、延伸したものであってもよい。
【0056】
非親水性熱可塑性樹脂と親水性熱可塑性樹脂を混合して基材(A)に使用する場合は、非親水性熱可塑性樹脂100重量部に対して親水性熱可塑性樹脂を10〜100重量部混合するのが好ましい。
基材(A)は、一例として、熱可塑性樹脂を40〜85重量%および無機または有機微細粉末を60〜15重量%含有する。
また、基材(A)は多孔性樹脂フィルムに使用するものと同一の微細粉末を使用してもよいし、異なる微細粉末を使用してもよい。平均粒子径の範囲は、一例として、基材層(A)が0.1〜10μm、好ましくは0.6〜3μmの範囲内である。
本発明の積層体に使用する基材(A)の厚さには特に制限はない。一例として、5〜1000μm、好ましくは20〜500μmの範囲である。
本発明の積層体の厚さに特に制限はなく、用途に応じて適宜選択される。一例として、15〜2000μm、好ましくは20〜500μm、より好ましくは25〜350μmである。
【0057】
(表面酸化処理)
本発明の多孔性樹脂フィルムないしはこれを使用した積層体には、必要に応じて表面酸化処理を施すことができる。表面酸化処理により表面の親水性や吸収性の向上、ないしはインク受理層の塗工性の向上や基材との密着向上がはかれるケースがある。表面酸化処理の具体例としては、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、グロー放電処理、オゾン処理より選ばれた処理方法などが挙げられ、好ましくはコロナ処理、フレーム処理であり、より好ましくはコロナ処理である。
処理量は、コロナ処理の場合は600〜12,000J/m2 (10〜200W・分/m2 )、好ましくは1,200〜9,000J/m2 (20〜180W・分/m2 )である。コロナ放電処理の効果を十分に得るには600J/m2 (10W・分/m2 )以上であり、12,000J/m2 (200W・分/m2 )超では処理の効果が頭打ちとなるので12,000J/m2 (200W・分/m2 )以下で十分である。フレーム処理の場合は8,000〜200,000J/m2 、好ましくは20,000〜100,000J/m2 が用いられる。フレーム処理の効果を明確に得るには8,000J/m2 以上であり、200,000J/m2 超では処理の効果が頭打ちとなるので200,000J/m2 以下で十分である。
【0058】
インク受容層
本発明では、インク吸収性に加えて高い光沢性を得るため表面光沢度(JISZ−8741:60度測定)が40%以上のインク受容層を設ける。
<無機フィラー>
インク受容層はインク吸収性の向上および高光沢性の実現といった目的で、平均粒径が350nm以下の無機フィラーを70〜95%、バインダー樹脂を5〜30%含有する。
平均粒径が350nm以上の無機フィラーを使用した場合は、得られたインク受容層の表面光沢性が大きく低下するので好ましくない。
本発明で使用する無機フィラーとしては、コロイダルシリカ、コロイダル炭カル、酸化アルミニウム、不定形シリカ、パールネックレス状コロイダルシリカ、繊維状酸化アルミニウム、板状酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0059】
上記無機フィラーの中で、インクジェットインク吸収性や低コストであるという点から、不定形シリカを使用することが好ましく、特に中でも高光沢のインク受容層を得るためには、平均粒径1〜10nmの一次粒子が凝集した不定形シリカであることが好ましい。
不定形シリカは、平均粒径1〜50nmの一次粒子が凝集した構造をとるが、、一次粒径が1〜10nmの範囲にある不定形シリカを使用することがインク吸収性が向上するため好ましい。
一次粒径が10nm以上の不定形シリカをインク受容層に使用した場合は、光沢性およびインク吸収性が大きく低下するため好ましくない。本発明の範囲にある不定形シリカが高性能である理由は明らかではないが、一次粒径が1〜10nmの範囲にある不定形シリカは光沢性が高いことに加えて、一次粒子の隙間が増加するためにインク吸収性が向上するものと推定される。
【0060】
不定形シリカの製造方法については、製造法により乾式法シリカと湿式法シリカに大別されるが、本発明では、一次粒径が1〜10nmでありかつ平均粒径350nm以下の不定形シリカであれば、いずれの方法で製造されたシリカでも使用することができる。
また本発明では、市販されている平均粒径2〜10μmの不定形シリカを粉砕して、平均粒径350nm以下の範囲に調製した不定形シリカも使用することができる。不定形シリカの粉砕方法は特に限定しないが、品質の均一性、低コストで粉砕可能であるという点から粉砕器を使用した機械的粉砕法が好ましい。粉砕器の具体例としては、超音波粉砕器、ジェットミル、サンドグラインダー、ローラーミル、高速回転ミル等が挙げられる。
【0061】
さらに、本発明で使用する不定形シリカは、アニオン性であるインクジェット用インクの定着性を向上のため、不定形シリカの表面をカチオン処理することが好ましい。
カチオン処理とは、シリカ粉砕時もしくはシリカ製造時にシリカ表面をカチオン性薬剤でシリカ表面を被覆させる処理のことであり、カチオン性薬剤としては、無機金属塩やカチオン性カップリング剤やカチオン性ポリマー等が挙げられる。
無機金属塩の具体例としては、酸化アルミニウム水和物、酸化ジルコニウム水和物、酸化スズ水和物等の無機金属酸化物水和物が、また水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、酢酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化スズ等の水溶性無機金属塩等が挙げられる。
【0062】
またカチオン性カップリング剤の具体例としては、アミノ基含有シランカップリング剤、4級アンモニウム基含有シランカップリング剤等のカチオン性シランカップリング剤、およびアミノ基含有ジルコニウムカップリング剤、4級アンモニウム基含有ジルコニウムカップリング剤等のジルコニウムカップリング剤のカチオン性ジルコニウムカップリング剤、およびアミノ基含有チタニウムカップリング剤、4級アンモニウム基含有チタニウムカップリング剤等のカチオン性チタンカップリング剤、およびアミノ基含有グリシジルエーテル、4級アンモニウム基含有グリシジルエーテル等のカチオン性グリシジルカップリング剤が挙げられる。
【0063】
カチオン性ポリマーの具体例としては、ポリエチレンイミンやポリプロピレンポリアミン等のポリアルキレンポリアミン類、またはその誘導体、アミノ基や4級アンモニウム基含有アクリル系ポリマー、アミノ基や4級アンモニウム塩含有ポリビニルアルコール等が挙げられる。
なお、本発明にインク受容層に使用する無機フィラーの平均粒子径および一次粒子径は、前述の多孔質基材の無機ないしは有機の微細粉末の粒子径の測定と同様の装置で測定することが可能である。
【0064】
<バインダー樹脂>
本発明のインク受容層において、接着剤としてバインダー樹脂が用いられる。
本発明において、インク受容層には、無機フィラーに加えて、接着剤としてバインダー樹脂が使用される。無機フィラーとバインダー樹脂の配合割合は、無機フィラーが70〜95重量%、バインダー樹脂が5〜30重量%であることが好ましい。
無機フィラーの割合が95重量%を上回る場合は、多孔性樹脂フィルムとの接着性が大きく低下し、また70重量%を下回る場合は、インク吸収性が大きく低下する。
【0065】
バインダー樹脂の具体例としては、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、澱粉等の水溶性樹脂、並びにウレタン系樹脂、エステル系樹脂、エポキシ系樹脂、エチレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体樹脂、アクリル酸系樹脂、メタクリル酸系樹脂、ポリブチラール系樹脂、シリコン樹脂、ニトロセルロース樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂、スチレン−ブタジエン系共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン系共重合体樹脂などのような非水溶性樹脂樹脂を用いることができる。上記水溶性樹脂は水溶液として、非水溶性樹脂は溶液、エマルジョン、又はラテックスとして用いられる。
【0066】
上記バインダー樹脂の中でも、無機フィラーとの混和性やインク吸収性といった点からポリビニルアルコールが好ましい。特に中でも塗工膜強度の点から、重合度3000以上、ケン化度80〜95%のポリビニルアルコールが好ましい。
さらに本発明では、バインダー樹脂の耐水性向上のため、架橋剤をインク受容層の1〜20重量%の範囲で使用することが好ましい。架橋剤の具体例としては、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミドポリ尿素−ホルムアルデヒド樹脂、グリオキザール、エポキシ系架橋剤、ポリイソシアネート樹脂、硼酸、硼砂、各種硼酸塩等が挙げられる。
【0067】
加えて本発明ではインク定着性向上のため、インク受容層中にインク定着剤をインク受容層の1〜20重量%の範囲で使用することが好ましい。インク定着剤としては、無機金属塩やカチオン性カップリング剤やカチオン性ポリマー等が挙げられる。
無機金属塩の具体例としては、酸化アルミニウム水和物、酸化ジルコニウム水和物、酸化スズ水和物等の無機金属酸化物水和物が、また水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、酢酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化スズ等の水溶性無機金属塩等が挙げられる。
【0068】
またカチオン性カップリング剤の具体例としては、アミノ基含有シランカップリング剤、4級アンモニウム基含有シランカップリング剤等のカチオン性シランカップリング剤、およびアミノ基含有ジルコニウムカップリング剤、4級アンモニウム基含有ジルコニウムカップリング剤等のジルコニウムカップリング剤のカチオン性ジルコニウムカップリング剤、およびアミノ基含有チタニウムカップリング剤、4級アンモニウム基含有チタニウムカップリング剤等のカチオン性チタンカップリング剤、およびアミノ基含有グリシジルエーテル、4級アンモニウム基含有グリシジルエーテル等のカチオン性グリシジルカップリング剤が挙げられる。
【0069】
カチオン性ポリマーの具体例としては、ポリエチレンイミンやポリプロピレンポリアミン等のポリアルキレンポリアミン類、またはその誘導体、アミノ基や4級アンモニウム基含有アクリル系ポリマー、アミノ基や4級アンモニウム塩含有ポリビニルアルコール等が挙げられる。
また、本発明のインク受容層では、必要に応じて一般的に塗工紙で使用される分散剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤という各種助剤を含有させることもできる。
本発明のインク受容層の塗工量は、支持体として使用される多孔質樹脂フィルムの液体吸収容量によって適宜選択されるが、塗工量は5〜30g/m2 であることが好ましい。塗工量が5g/m2 未満であると、光沢性や滲み性、耐水性が不足し、また30g/m2 を上回る場合は、インク吸収量は満足できるものの、インク受容層の表面強度が低下する。
【0070】
トップコート層
本発明では、光沢性および表面擦過性の向上といった目的で、インク受容層の上にさらに表面光沢度(JIS Z−8741:60度測定)が50%以上のトップコート層を設けることが好ましい。
本発明のトップコート層は無機フィラーを70〜95重量%、バインダー樹脂を5〜30%含有することが好ましい。無機フィラーおよびバインダー樹脂は、インク受容層で使用した無機フィラーおよびバインダー樹脂と同種類のフィラーおよびバインダーが使用できる。
さらにトップコート層には、インク定着性向上という目的でカチオン性のインク定着剤を1〜20重量%含有させることが好ましい。インク定着剤としては、上記インク受容層に使用したインク定着剤と同種類の定着剤が使用できる。
【0071】
本発明のトップコート層の塗工量は、多孔質樹脂フィルムやインク受容層によって適宜選択されるが、0.1〜5.0g/m2 、好ましくは0.5〜3.0g/m2 であることが好ましい。塗工量が0.1g/m2 未満の場合は、トップコート層の効果が十分発現せず、また5.0g/m2 を上回る場合は効果が飽和する。
本発明のトップコート層には必要に応じて一般的に塗工紙で使用される分散剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤という各種助剤を含有させることもできる。
【0072】
塗工方法
上記インク受容層およびトップコート層を多孔性樹脂フィルムに塗工する方法は、公知の方法から適宜選択して行うことができる。塗工方法としては、ブレードコーティング法、ロッドバーコーティング法、ロールコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、グラビアコーティング法、カーテンコーティング法、ダイコーティング法、コンマコーティング法等が挙げられる。
その他の記録方法
本発明のインクジェット記録用紙は、インクジェットプリンター用記録用紙として使用できることに加えて、インクリボンを使用する溶融熱転写プリンターや昇華熱転写プリンター、さらにはページプリンター用の記録用紙としても使用可能である。
【0073】
【実施例】
以下に製造例、実施例、比較例および試験例を記載して、本発明をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、使用量、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。なお、以下に記載される%は、特記しない限り重量基準である。使用する材料を表1にまとめて示す。以下の手順に従って本発明の多孔性樹脂フィルムとおよび比較用の樹脂フィルムを使用する記録媒体を製造した。
【0074】
(製造例)
以下、実施例中で使用される多孔性樹脂フィルム(支持体a〜f)の製造方法について説明する。
(製造例1)
<基材層の調製と縦延伸>
メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が1g/10分のポリプロピレン75重量%とメルトフローレート(MFR:190℃、2.16kg荷重)が8g/10分の高密度ポリエチレン5重量%との混合物に、平均粒子径3μmの炭酸カルシウム20重量%を配合した組成物[イ]を、250℃の温度に設定した押出機にて混練し、ストランド状に押し出し、カッティングしてペレットとした。この組成物[イ]を、250℃に設定した押出機に接続したTダイよりシート状に押出し、これを冷却装置により冷却して無延伸シートを得た。次いで、この無延伸シートを140℃に加熱した後、縦方向に4.5倍延伸して、延伸シートを得た。
尚、各実施例中の樹脂成分ないしはこれと微細粉末との混合物の溶融混練において、樹脂成分と微細粉末の合計重量を100重量部として、これに加えて、酸化防止剤として、BHT(4−メチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール)0.2重量部と、イルガノックス1010(フェノール系酸化防止剤、チバガイギー社製、商品名)0.1重量部を添加した。
【0075】
<表面の多孔性樹脂フィルムの形成>
これとは別に、MFRが5g/10分のポリプロピレン(略号:PP1)28重量%、とポリアルキレンオキシド系樹脂(エチレンオキシド約90%とブチレンオキシド約10%との共重合体で平均分子量約20,000のものとオクタデカメチレンジカルボン酸とのエステルで、全体の平均分子量は約114,000、30分間の吸水倍率は14g/g、略号:PEPO1)12重量%との混合物に、平均粒子径3μm、BET法による比表面積が1.8m2 /g、JIS−K5101−1991により測定される吸油量が31ml/100gの炭酸カルシウム(略号:炭カル1)58重量%を配合して二軸混練機機にて組成物[ロ]を調製した。
【0076】
この組成物を240℃(温度a)に設定した押出機にて押出した。得られたシートを上述の操作により調製した5倍延伸シートの両面に積層し、55℃(温度b)にまで冷却した後、155℃(温度c)に加熱してテンターで横方向に8倍延伸した。その後、156℃(温度d)でアニーリング処理し、50℃(温度e)にまで冷却し、耳部をスリットして3層(表側の吸収層[ロ]/基材層[イ]/裏側吸収層[ロ]:肉厚72μm/40μm/23μm)構造の全厚135μmの多孔性樹脂フィルムを得た。本フィルムを支持体aとする。配合および製造条件、加えて支持体としての性能評価結果も表1に示す。
尚、本明細書の実施例に使用した炭酸カルシウム粉末の粒子径は、レーザー回折式粒子計測装置「マイクロトラック」(株式会社日機装製、商品名)により測定した累積50%粒径である。
多孔質樹脂フィルムの性能評価は以下の方法で行った。性能評価結果を表1に示す。
【0077】
<性能評価>
(1)液体吸収容積
液体吸収容積は、「Japan TAPPI No.51−87」(紙パルプ技術協会、紙パルプ試験方法No.51−87、ブリストー法)に準拠し、熊谷理機工業株式会社製、液体吸収性試験機を使用して液体吸収容積を測定した。測定溶媒は水70重量%とエチレングリコール30重量%を混合し、この混合溶媒100重量部に着色用染料として、マラカイトグリーン2重量部を溶解したものである。
(2)多孔性樹脂フィルムの水に対する平均接触角、その最大値と最小値の差上記多孔性フィルムの表面の接触角は、純水をフィルム表面に滴下して1分後に接触角計(協和界面化学(株)製:型式CA−D)を用いて測定した。この測定を10回行い(1回の測定毎に純水で表面が濡れていない未測定のフィルムに交換)、10回測定した接触角の平均値と、最大値と最小値との差を求めた。
【0078】
(3)表面空孔の存在確認と表面空孔数及び表面空孔寸法の測定
上記の多孔性フィルムの一部を切り取り、表面及び断面に空孔が存在することを確認した。多孔性フィルム試料より任意の一部を切り取り、観察試料台に貼り付けて、観察面にメタライジングし、(株)日立製作所製の走査型電子顕微鏡S−2400を使用し、500倍に拡大して表面の空孔の存在を確認した。また、電子顕微鏡像を感熱紙に出力ないしは写真撮影し、表面の空孔数を計測した結果、約1.2×109 個/m2 であった。次いで、それぞれの、表面空孔の大きさを測定し、観察領域内の50個の空孔の測定値を平均した結果、長径が15.1μm、短径が4.9μmであり、平均直径は約10μmであった。なお、各2つの空孔が微細粉末の左右ないしは上下に連結している場合、微細粉末を中心に空孔が生じているものとして2つの空孔は連結した一つの空孔として計測した。
【0079】
(4)内部空孔の存在確認と内部空孔率の測定
上記の多孔性樹脂フィルムをエポキシ樹脂で包埋して固化させた後、ミクロトームを用いて、フィルムの厚さ方向に対して平行かつ面方向に垂直な切断面を作製し、この切断面をメタライジングした後、(株)日立製作所製の走査型電子顕微鏡S−2400を使用し、2000倍に拡大して観察し、内部空孔の存在を確認した。また観察した領域の電子顕微鏡像を感熱紙に出力して各層の厚さを測定した。また、全体の厚さと坪量(g/m2 )を測定し、ついで表面の吸収層を一定面積剥がし取り、残りのフィルムの坪量と厚さを測定してれぞれの差より、多孔質樹脂フィルム層の厚さと坪量(g/m2 )を求め、これより坪量を厚さで割って吸収層の密度(ρ)を算出した。次いで、組成物[ロ]を230℃にて厚さ1mmのプレスシートとし、真密度(ρ0 )を測定し、次式により空孔率を算出した。
【0080】
【式2】
【0081】
(5)インクジェットプリンター適性
下記の条件でプリンター印字し、染料インクおよび顔料インクに対する各種適性を評価した。
プリンター▲1▼:EPSON PM−770C(染料インク)
プリンター▲2▼:GRAPHTEC JP−2115(顔料インク)
印字サンプル:日本規格協会SCID カラーチヤートサンプル「S7」
A4(6.6×14.3cm)
印字設定:推奨設定きれい、ドライバによる色補正なし
使用環境:Windows95 PentiumII 300MHz、RAM128MB パラレルI/F
使用ソフト:Adobe Photoshop 4.0J
(インク吸収性)
印字終了後、印字部分から完全にインクが消失した時間を目視にて判定して乾燥時間とした。乾燥時間を下記の4段階に評価した。
◎:乾燥時間0分(印字終了時にはインクを完全吸収している)
○:乾燥時間0〜1分
△:乾燥時間1〜3分
×:乾燥時間3分以上
【0082】
(インク滲み性)
上記インク吸収性試験で使用した印字サンプルにおいて、以下の基準でインク滲みの有無を目視にて判定した。
○:滲み観測されず
△:重色部分のみ滲み観測される
×:重色および単色部分に滲み観測される
(耐水性)
上記インク吸収性試験と同等の条件で印刷した印字サンプルを充分な量の水道水(水温25℃)の中に4時間浸漬させた後、紙面を風乾しインクの残留程度を目視判定した。
【0083】
(製造例2)
製造例1のポリアルキレンオキサイドをエチレンオキシド約85%とブチレンオキシド約15%との共重合体で平均分子量約20,000のものとテトラデカメチレンジカルボン酸とのエステルで、全体の分子量は約118,000、30分間の吸水倍率は約13g/g(略号:PEPO2)に変更し、加えて、ポリプロピレン、ポリアルキレンオキシド共重合体、及び炭酸カルシウムの組成比を表1記載に、温度a〜温度eを表1記載の温度と変更したほかは製造例1と同様の操作により多孔性樹脂フィルムを得た。本フィルムを支持体bとする。配合、製造条件、および性能評価結果を表1に示す。
【0084】
(製造例3)
使用する微細粉末を平均粒子径2μmの炭酸カルシウム(比表面積2.2m2 /g、JIS−K5101−1991により測定される吸油量が35ml/100g、略号:炭カル2に、また配合比を表1記載のものとしたほかは、製造例1と同様の操作を行い、多孔性樹脂フィルムを得た。本フィルムを支持体cとする。配合、製造条件および性能評価結果を表1に示す。
(製造例4)
非親水性熱可塑性樹脂(PP−1)40重量%とし、微細粉末として炭カル1を60重量%とし、親水性樹脂を加えない以外は製造例1と同様の操作により、多孔性樹脂フィルムを得た。本フィルムを支持体dとする。配合製造条件および性能評価結果を表1に示す。
【0085】
(製造例5)
樹脂成分を親水性樹脂(PEPO1)30重量%と非親水性熱可塑性樹脂(PP−1)70重量%とし、微細粉末を加えず、さらにテンターでの延伸操作を行なわない他は、製造例1と同様の操作により多孔性樹脂フィルム作成した。本フィルムを支持体eとする。配合、製造条件および性能評価結果を表1に示す。
(製造例6)
ポリプロピレン、ポリアルキレンオキシド共重合体、及び炭酸カルシウムの組成比を表1記載に、温度a〜温度eを表1記載の温度と変更たほかは製造例1と同様の操作により多孔性樹脂フィルムを得た。本フィルムを支持体fとする。配合、製造条件および性能評価結果を表1に示す。
【0086】
(実施例1〜9、比較例1〜3、5〜8)
表2に記載される材料を所定量用いて、以下の手順にしたがってインクジェット記録用シートを製造した。
不定形シリカ、バインダー樹脂、架橋剤、インク定着剤、水を混合してインク受容層形成用塗工液を調製した。この塗工液を乾燥後の塗工量が15g/m2 になるようにメイヤバーにて多孔質樹脂フィルム表側に塗工し、110℃のオーブンで5分間乾燥・固化して受容層を形成してインクジェット記録用紙を得た。また本インクジェット記録用紙のインクジェットプリンター適性を多孔質樹脂フィルムと同様の方法で評価した。
配合、表面光沢度、インクジェット適性評価結果を表3に示す。
【0087】
(実施例10〜12)
表2に記載される材料を所定量用いて、以下の手順にしたがってインクジェット記録用シートを製造した。
無機フィラー、バインダー樹脂、インク定着剤、水を混合してトップコート層用塗工液を調製した。
実施例1と同様な方法で、多孔質樹脂フィルム上にインク受容層を形成した上に、乾燥後の塗工量が1.0g/m2 になるようにメイヤバーにてトップコート層用塗工液を塗工し、110℃のオーブンで1分間乾燥・固化してトップコート層を形成してインクジェット記録用紙を得た。配合、表面光沢度およびインクジェットプリンター適性評価結果を表3に示す。
(比較例4)
インク受容層の塗工量が25g/m2 に変更した以外は比較例1と同様な方法でインクジェット記録用紙を製造した。配合、表面光沢度およびインクジェットプリンター適性評価結果を表3に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
表1〜表3から明らかなように、本発明の無機フィラーおよびバインダーを含有するインク受容層を設けたインクジェット記録用紙(実施例1〜4)は、高光沢性であることに加え、滲みを発生せず高いインク吸収性を示す。さらに、架橋剤およびインク定着剤を配合することで(実施例5〜9)インク定着性も向上する。またインク受容層の上に、トップコート層を設けることで(実施例10〜12)、表面光沢度がさらに向上する。
これに対して、本発明の規定範囲から外れる多孔質フィルムを使用したインクジェット記録用紙(比較例1〜3)や本発明の規定範囲から外れるインク受容層を使用したインクジェット記録用紙場合(比較例5〜8)は、上記特性を満足することができず性能的に劣っている。また、本発明の多孔質樹脂フィルムと、従来の非吸収性樹脂フィルムとを支持体として比較すると(実施例1、比較例1、4)、本発明の多孔質樹脂フィルムを使用したインクジェット記録用紙は、インク受容層の塗工量が削減できるため、低コストでインク記録用紙が製造可能である。
【0092】
【発明の効果】
本発明のインクジェット記録用紙は、高光沢性、かつ、高耐久性であり、インクジェットインクを速やかに吸収することができる安価なインクジェット用記録用紙である。
Claims (13)
- 多孔性樹脂フィルム上にインク受容層を備えたインクジェット記録用紙であって、多孔性樹脂フィルムが、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、親水性熱可塑性樹脂を10〜60重量部の割合で含有する熱可塑性樹脂30〜90重量%、および無機または有機微細粉末70〜10重量%を含有するものであり、「Japan TAPPI No.51−87」により測定される液体吸収容積が1〜500ml/m2 であり、かつインク受容層が、平均粒径350nm以下の無機フィラーを70〜95重量%およびバインダー樹脂を5〜30重量%含有するものであり、その表面光沢度(JIS−Z8741:60度測定)が40%以上であることを特徴とするインクジェット記録用紙。
- 該無機フィラーが不定形シリカであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用紙。
- 該不定形シリカが、平均粒径1〜10nmの一次粒子が凝集した不定形シリカであることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット用紙。
- 該不定形シリカがカチオン処理シリカであることを特徴とする請求項3に記載のインクジェット用紙。
- 該インク受容層が、架橋剤を1〜20重量%、インク定着剤を1〜20重量%含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録用紙。
- 該インク受容層の上にさらにトップコート層を設け、かつ表面光沢度(JIS−Z8741:60度測定)が50%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット記録用紙。
- 該トップコート層が平均粒径350nm以下の無機フィラーを70〜95重量%およびバインダー樹脂を5〜30重量%含有することを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録用紙。
- 該トップコート層中にインク定着剤を1〜20重量%含有することを特徴とする請求項7に記載のインクジェット記録用紙。
- 該親水性熱可塑性樹脂が、アルキレンオキシド化合物およびジカルボン酸化合物との反応生成物であり、常温30分間で水に溶解するものないしは吸水倍率が5〜50倍の範囲であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のインクジェット記録用紙。
- 該多孔性樹脂フィルムの水に対する平均接触角が45〜110°の範囲であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のインクジェット記録用紙。
- 該多孔性樹脂フィルムが表面及び内部に空孔を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のインクジェット記録用紙。
- 該多孔性樹脂フィルムの空孔率が20〜75%であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のインクジェット記録用紙。
- 該多孔性樹脂フィルムが延伸されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のインクジェット記録用紙。
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