JP4359474B2 - ベル用冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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本発明は、リムド鋼から連鋳材への切替えによってコストを低減させるべく案出されたものであり、連鋳材を用いても、特定の物性も持たせることにより、従来から用いられているリムド鋼と同等以上の音色および加工後の表面性状を有したベル用の冷延鋼板を得ることを目的とするものである。
その成分・組成は、C:0.001〜0.03質量%,Si:0.01質量%未満,Mn:0.1〜1.5質量%,P:0.05質量%以下,S:0.01質量%以下,酸可溶Al:0.01質量%以下,N:0.034〜0.010質量%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有する。
そして、このようなベル用冷延鋼板は、上記の成分・組成を有する鋼を連続鋳造し、熱延仕上げ温度:Ar3変態点以上,熱延巻取り温度:450〜600℃とした熱間圧延を行い、引き続き酸洗後、冷延率:50〜80%の冷間圧延を行い、次いで650〜850℃の範囲で焼鈍することにより得られる。
一般的に、ベル用材として最も重要な特性である音色の良否は、残響時間の長短で判断される。残響時間の長いものほどベル用材として適していると言える。そして、残響は振動が減衰振動として残る現象と解釈すると、材料自身の振動減衰能が小さいものほど残響時間が長く、ベル用材として優れることになる。鋼板の振動減衰能は損失係数ηで表わされるので、損失係数ηが小さいものほど残響時間が長くなり、ベル用材として適するものになる。
その結果、引張試験で評価される時効指数(AI値)と損失係数ηの間に相関があり、AI値が大きいものほど損失係数ηが小さくなることがわかった。ところで、時効指数(AI値)は、引張試験片、例えばJIS5号試験片に所定比率の予歪みを付与した後、除荷し、所定温度で所定時間加熱する時効処理を施した後、再び引張試験し、時効前後の降伏応力の差から求めた数値である。なお、本明細書中では、2.0%の予歪みを付与した後、100℃×1時間の時効を行ったときの数値を用いている。そして、このAI値は固溶C,Nの存在状態を示すパラメータとして取り扱われており、この値が大きいほど、固溶C,Nが多くなっている。
このような理由により、時効指数AI値を所定の範囲に調整することで、ベル用材として音色に優れる冷延鋼板が得られたと推察される。種々の予備実験を重ねた結果、本発明鋼のような低C鋼においては、上記の条件で測定したAI値が40N/mm2に満たないと損失係数ηが大きくなり、残響時間が小さくてベル用材にとしては不適であった。一方、AI値が80N/mm2を超えると深絞り成形時にひずみ模様が発生しやすくなるばかりでなく、曲げ加工時に腰折れを起こしやすくなる。
焼鈍後の結晶粒径は、一般的に大きい方が深絞り性に優れるとされている。しかし、深絞り加工によりベル型に成形しようとするとき、結晶粒径が大きすぎると表面に肌荒れが発生し、製品の外観が劣化する。表面に肌荒れを生成させることなく、良好な外観のベル型製品を得るためには、焼鈍後のフェライト結晶粒の粒径は40μm以下にする必要があることも確認した。
C:0.001〜0.03質量%
Cは、深絞り性の点からは少ないほどよいが、0.001質量%に満たないと固溶Cとしてほとんど残存せず、AI値が小さくなるとともに結晶粒が粗大化する傾向にある。しかし、0.03質量%を超えると深絞り性や延性が低下し、加工性が劣化する。さらに固溶Cが残り難くなりAI値が小さくなる。
Si:0.01質量%未満
Siは、必要に応じて添加される合金成分である。Alと同様脱酸剤として添加される場合もある。しかし、0.5質量%を超えると深絞り性が低下し、表面性状が悪化しやすい。
Mnは、強度の改善に寄与する成分である。Mnによる強度改善効果は0.1質量%に満たないと発揮されない。Mn含有量は多いほど有効であるが、1.5質量%を超えると深絞り性が低下することになる。
P:0.05質量%以下
Pは、低温脆性を招く。低温脆性に及ぼすPの悪影響は、P含有量を0.05質量%以下に規制することにより抑えられる。
S:0.01質量%以下
Sは、多量に含有されると冷間または熱間の加工性を害するので、可能な限り少なくすることが好ましい。MnSの硫化物量があまり多くなると深絞り性が低下するため、Sは0.01質量%以下とする。
Alは、脱酸剤として添加される合金成分であり、十分な脱酸効果を得るためには比較的多量のAlを添加することが好ましい。しかし、Al含有量が酸可溶Alとして0.01質量%を超えると、固溶NがAlNとして析出するため固溶Nが減少しAI値が小さくなって残響時間が著しく短くなる。
N:0.0034〜0.010質量%
Nは、深絞り性に有害な元素であり、少ないほど好ましい。しかし0.001質量%に満たないと固溶Nの効果がほとんどない。固溶Nを残すにはAl量を低減し、N添加を行う。Nの過剰添加は深絞り性を低下させるので、0.01質量%以下に止める必要がある。また、過剰にN添加を行っても、AI値を大きくすることには効かなくなる。
上記のような成分組成を有する鋼材を溶製した後、スラブに連続鋳造する。得られたスラブは、そのまま直送あるいは一旦冷却して冷却片とした後、熱間圧延される。得られた熱延板は酸洗され、冷間圧延が施された後、焼鈍される。
それぞれの条件は次のとおりである。
熱延仕上げ温度:Ar 3 変態点以上
Ar3変態点を下回ると、変態に伴った熱間強度の変動が大きく、板厚精度を低下させる原因になる。
巻取り温度は高いほど延性を向上させるが、600℃を超えると炭化物の粗大化や、AlNの生成により固溶Nが少なくなってAI値が小さくなる。巻取り温度が450℃を下回ると鋼板の形状が劣化し、硬質となる。
冷間圧延:冷延圧下率50〜80%
冷間圧延においては、圧下率を60%以上にしないと十分な加工性が得られないので、圧延率を60%以上とする。圧下率が80%を超えると加工性が低下するばかりでなく、コストも上昇するので、圧下率の上限は80%とする。
冷延後の焼鈍温度:650〜850℃
650〜850℃の範囲の温度で焼鈍を行う。焼鈍はバッチ焼鈍,連続焼鈍のいずれを採用してもよい。焼鈍温度が650℃を下回ると十分な加工性が得られない。一方、850℃を上回ると結晶粒が粗大化し、加工後,表面の肌荒れが著しくなる。
得られた鋼板について、室温で引張試験を行って引張特性を測定した。引張試験には、JIS Z2201の5号試験片を用いた。AI値の測定は、JIS5号試験片に2.0%の歪み付与した後、100℃×1時間の加熱処理を行い、加熱処理前後の降伏応力の差により求めた。
また、各冷延鋼板のフェライト結晶粒の平均粒径をJIS G0552に準拠して測定した。
さらに、各冷延鋼板について損失係数の測定と、カップ絞り加工を施した試料につき打撃加振後の残響時間の測定を行った。なお、損失係数ηは、15mm幅×250mm長さの試験片を使用し、JIS G0602に準拠して、常温で周波数125Hzにおいて測定した。残響時間の測定は、絞り加工を施したカップに、40N・cmのエネルギーで打撃加振した場合の音圧レベルが60dB減少するのに要した時間を測定した。
その結果を表2、および図1,2に示す。
これに対して、Al含有量が多いNo.5,6の試料では、固溶Nが少なくなっているためにAI値は本発明で規定する40N/mm2を下回っており、損失係数ηも大きくなって、残響時間が短くなっている。
なお、本発明例であるNo.1の試料では、結晶粒径は38μmであり、深絞り加工後の表面肌に問題はなかった。結晶粒径がさらに大きくなると加工後の表面性状が劣化することは、別の実施例で確認した。
Claims (2)
- C:0.001〜0.03質量%,Si:0.01質量%未満,Mn:0.1〜1.5質量%,P:0.05質量%以下,S:0.01質量%以下,酸可溶Al:0.01質量%以下,N:0.0034〜0.010質量%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有し、引張試験で評価される時効指数(AI値)が40〜80N/mm2であり、かつフェライト結晶粒の粒径が40μm以下の大きさであることを特徴とするベル用冷延鋼板。
- C:0.001〜0.03質量%,Si:0.01質量%未満,Mn:0.1〜1.5質量%,P:0.05質量%以下,S:0.01質量%以下,酸可溶Al:0.01質量%以下,N:0.0034〜0.010質量%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有する鋼を連続鋳造し、熱延仕上げ温度:Ar3変態点以上,熱延巻取り温度:450〜600℃とした熱間圧延を行い、引き続き酸洗後、冷延率:50〜80%の冷間圧延を行い、次いで650〜850℃の範囲で焼鈍することを特徴とするベル用冷延鋼板の製造方法。
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