JP4363052B2 - 非対称βジケトン配位子を有する銅錯体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、銅薄膜層の形成に好適な銅錯体及びその製造方法に関するものである。殊に高速高集積回路配線、すなわち、高速演算回路用の銅配線を化学蒸着法により形成させる際に用いるに好適な銅錯体及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子産業の集積回路分野の製造技術において、高集積化かつ高速化の要求が高まっている。現在、集積回路の大部分にアルミニウム配線が使用されているが、高集積化及び高速化の要求にともなって、より電気抵抗が低く、マイグレーション耐性のある銅による配線技術が実用化されつつある。
【0003】
銅配線の形成技術については、0価のCuスパッタリング法と二価Cuの溶液メッキ法を組み合わせた方法と主に一価Cuの有機金属錯体を用いた化学蒸着法(以下MOCVD法と記載)とがある。しかしながら、前者のスパッタ法とメッキ法を組み合わせた方法では、0.07μm以下程度の小さい口径を有する深い溝に対する埋め込みが困難である。これを解決する為にMOCVD法が用いられ、高い深さ/口径比(高アスペクト比)の溝や孔及び段差を凹凸が小さく平滑かつ良好な膜質で被覆することが可能となった。
【0004】
上記のMOCVD用銅化合物としては既に種々のものが知られている。例えば、特許文献1では、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトナト銅(I)ビニルトリメチルシランを用いることを提案している。本銅化合物は、液状である為、供給量を液体流量計で制御でき、蒸気圧も比較的高く、従来の固体の化合物に比し、MOCVD材料としては、使い易くなっている。
【0005】
しかしながら、ヘキサフルオロアセチルアセトナート銅(I)ビニルトリメチルシランは、気化のための長時間加熱によって徐々に分解し、Cu(O)の析出があったり、トリメチルビニルシランのオリゴマー及びポリマーが生成し、装置内の閉塞原因となる場合があった。更にヘキサフルオロアセチルアセトナート銅(I)ビニルトリメチルシランは、弗素含有量が高いことから、これを用いMOCVDにより、LSI用銅配線を形成した場合、銅配線組成中に弗素が残存し、TaN,TiN等のバリアメタルに対する密着性が、スパッタリング法によるものに比し、極めて劣ることが問題となっている。より、弗素含有量の低い銅化合物が求められている。
【0006】
この問題点を解決する為に本発明者らは、既に、特許文献2及び特許文献3に示される銅化合物を提案している。しかしながら、これら特許文献で提案した銅化合物の蒸気圧は、高成膜速度を実現する為には、不十分であった。より高い蒸気圧を有する安定な銅化合物が求めらている。
【0007】
すなわち、市場からは、常に高性能な銅化合物に対する要求があり、特に弗素含有量が低く、高蒸気圧特性を有し、気化温度範囲内で安定であり、200℃程度の比較的低い温度で分解して、蒸着可能な銅錯体が切望されている。
【0008】
【特許文献1】
特許第2132693号
【特許文献2】
特開2002−193974号公報
【特許文献3】
特開2002−193988号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来技術の問題を解決すること、すなわち、本発明は、蒸気圧が高く、気化が安定的かつ容易で、その銅薄膜の形成速度が制御可能な低弗素含有量のMOCVD用銅錯体の提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、非対称βジケトン配位子と特定構造のシリル基置換オレフィン配位子との組み合わせを有する銅化合物が熱的に安定であり、蒸気圧が高く、MOCVD材料として良質の銅薄膜を制御可能な速度で形成可能な銅化合物を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)
【0012】
【化4】
(式中、R1は、水素原子又は炭素数1乃至20の炭化水素基であり、R2は、炭素数1乃至20の炭化水素基であり、Rfは、少なくとも一つの弗素原子を有する弗化炭化水素基である。R1どうし,R2どうしは、同一でも異なってもよい。nは、0乃至20の整数を表わす。)
で示される銅錯体及びその製造方法を提供することにあり、殊に上記一般式(1)で示される銅錯体は、Cu−MOCVD材料として銅薄膜形成に有用である。
【0013】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0014】
上記一般式(1)おいてR1は、水素原子又は炭素数1乃至20の炭化水素基であり、好ましくは、銅錯体の蒸気圧を上昇させるために炭素数1乃至10の炭化水素基である。R2は、炭素数1乃至20、好ましくは、銅錯体の蒸気圧を上昇させるために炭素数1乃至10の炭化水素基である。R1どうし、R2どうしは、同一であっても異なっても良い。
【0015】
炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基を挙げることができる。
【0016】
具体的には、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、tert.−ブチル、n−ペンチル、tert.−アミル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、フェニル、トルイル基等をあげることができる。
【0017】
Rfは、少なくとも一つの弗素原子を有する炭素数1〜20の弗化炭化水素基である。弗化炭化水素基としては、少なくとも一つの弗素原子を有する炭化水素基であれば特に限定されるものではなく、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10の弗化飽和炭化水素基や弗化不飽和炭化水素基等をあげることができる。
【0018】
弗化飽和炭化水素基としては、例えば、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロシクロプロピル基、パーフルオロメチルシクロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロシクロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロシクロペンチル基、パーフルオロメチルシクロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロシクロヘキシル基、パーフルオロ−1,2−ジメチルシクロヘキシル基、パーフルオロヘプチル基等のパーフルオロカーボン残基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、1,1,1−トリフルオロエチル基、2−パーフルオロアルキルエチル基のフルオロハイドロカーボン残基等を挙げることができる。
【0019】
更に弗化不飽和炭化水素基としては、例えば、パーフルオロエテニル基、パーフルオロプロペニル基、パーフルオロ−1,3−ブタジエニル基、シクロブテニル基、パーフルオロ−2−ブチニル基、ペンタフルオロフェニル基、パーフルオロトルイル基、ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、パーフルオロナフタレニル基、パーフルオロインデニル基、パーフルオロフルオレニル基等を挙げることができる。
【0020】
nは、0乃至20の整数、好ましくは0乃至10の整数、特に好ましくは0乃至2の整数を表す。
【0021】
続いて、上記一般式(1)の非対称βジケトン配位銅錯体の製造の際に用いることができる原料について説明する。
【0022】
銅(I)原料としては、酸化第一銅を用いることができる。
【0023】
シリル基置換アルケンとしては、下記一般式(2)のシリル基置換アルケンを用いることができる。
【0024】
【化5】
(式中、R2およびnは、上記に同じ。)
βジケトン成分としては、下記一般式(3)のβジケトンを用いることができる。
【0025】
【化6】
(式中、R1、Rfは、上記に同じ。)
一般式(1)の非対称βジケトン配位銅錯体の製造方法については、一般式(2)のシリル基置換アルケンの共存下、一般式(3)のβジケトンに酸化第一銅を反応させることによって製造することができる。
【0026】
この際の量論比については、特に限定されないが、β−ジケトン1molに対し、酸化第一銅が0.01mol乃至100mol、好ましくは、0.5mol乃至50mol、特に好ましくは、0.1mol乃至10molの範囲であり、シリル基置換アルケンが0.01mol乃至500mol、好ましくは、0.5mol乃至250mol、特に好ましくは、0.1mol乃至50molの範囲で添加することができる。この範囲を外れた場合、目的物である非対称βジケトン配位銅錯体の収量が低くなったり、精製が困難となる場合がある。
【0027】
一般式(2)のシリル基置換アルケンの共存下、一般式(3)のβジケトンに酸化第一銅を反応させる場合、副生する水をモレキュラーシーブ、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム等の脱水剤を共存させて除去することが好ましい。脱水剤を共存させることにより、目的物の非対称βジケトン配位銅錯体の収率が向上する場合がある。
【0028】
非対称βジケトン配位銅錯体を製造する際、溶媒非存在下、又は溶媒存在下で反応を行うことができる。溶媒の種類は、当該技術分野で使用されるものであれば特に限定されるものではない。例えば、n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−デカン等の飽和炭化水素類、トルエン、キシレン、デセン−1等の不飽和炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類を挙げることができる。
【0029】
しかしながら、溶媒希釈しない製造法を用いることにより、非対称βジケトン配位銅錯体の顕著な収率向上及び反応器当りの収量向上が観られる場合がある。
【0030】
銅錯体を製造する際の反応温度については、特に限定されないが、生成する銅錯体が分解しない様な温度範囲で行うことが好ましい。通常、工業的に使用されている温度である−78〜200℃の範囲、好ましくは、−50〜150℃の範囲で行うことが好ましい。反応の圧力条件は、加圧下、常圧下、減圧下いずれであっても可能である。
【0031】
製造された非対称βジケトン配位銅錯体の精製法については特に限定されないが、減圧蒸留及びシリカ、アルミナ、高分子ゲルを用いたカラム分離精製を使用することができる。この際の操作は、当該有機金属化合物合成分野での方法に従えばよい。すなわち、例えば、脱水及び脱酸素された窒素又はアルゴン雰囲気下で行い、使用する溶媒及び精製用のカラム充填剤等は、予め脱水操作を施しておくことが好ましい。この操作により、生成する銅錯体の収量及び純度が向上する場合がある。
【0032】
以下に実施例を示すが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0033】
【実施例】
実施例1
窒素気流下、攪拌装置を有する500mlのシュレンク管に1,1,1−トリフルオロ−5,5−ジメチル−2,4−ヘキサンジオン28.2g(144mmol)、酸化第一銅24.7g(173mmol)、ビニルトリメトキシシラン64.0g(432mmol)、乾燥n−ペンタン300ml、モレキュラーシーブ50mlを仕込み、室温で24時間攪拌反応させた。モレキュラーシーブ及び未反応の酸化第一銅をガラスフィルターで除去し、濾液から、未反応の1,1,1−トリフルオロ−5,5−ジメチル−2,4−ヘキサンジオン及びビニルトリメトキシシランを減圧条件下留去し、更に減圧蒸留により、目的物である1,1,1−トリフルオロ−5,5−ジメチル−2,4−ヘキサンジオナト)銅(I)ビニルトリメトキシシランの濃青色液体33.9g(83.3mol)を蒸留単離した。収率は、57.9%(ヘキサンジオン基準)に相当した。
【0034】
目的物の元素分析及び1H−NMRの結果は以下の通りであった。
C13H22O5F3SiCu (wt%)
測定値(C:38.1,H:5.6,F:14.1,Cu:15.4,Si:6.9)
計算値(C:38.4,H:5.5,F:14.0,Cu:15.6,Si:6.9)
1H−NMR(in C6D6) δ1.03ppm(9H,s,SiОCH 3 )、δ3.47ppm(9H,s,(H 3C)3C(C=O))、δ4.20〜4.83ppm(3H,m,CH 2 CH−)、δ6.12ppm(1H,s,(C=O)CH(C=O))
実施例2
実施例1において溶媒であるn−ペンタンを添加せず、ビニルトリメトキシシランの量を106.6g(719mmol)としたこと以外は、実施例1と同様に目的物である1,1,1−トリフルオロ−5,5−ジメチル−2,4−ヘキサンジオナト)銅(I)ビニルトリメトキシシランを合成し、減圧蒸留単離した。結果は、目的物の濃青色液体を収率83.3%で得た。無溶媒条件での合成で明確な収率向上が認められた。
【0035】
実施例3
実施例1において、1,1,1−トリフルオロ−5,5−ジメチル−2,4−ヘキサンジオンに変えて、1,1,1−トリフルオロアセチルアセトン用いたこと以外は、実施例1と同様にして目的物である(1,1,1−トリフルオロアセチルアセトナト)銅(I)ビニルトリメトキシシランの緑色液体を得た。収率は、54.9%であった。本目的物の元素分析及び1H−NMRの結果は以下の通りであった。
【0036】
C10H16O5F3SiCu (wt%)
測定値(C:32.8,H:4.4,F:15.5,Cu:16.8,Si:7.6)
計算値(C:32.9,H:4.4,F:15.6,Cu:17.4,Si:7.7)
1H−NMR(in C6D6) δ1.693ppm(3H,s,CH 3 (C=O))、δ3.479ppm(3H,s,Si(ОCH3)3)、δ3.95〜4.63ppm(3H,m,CH2=CH−)、δ5.708ppm(1H,s,(C=O)CH(C=O))
比較例1
実施例1において、1,1,1−トリフルオロ−5,5−ジメチル−2,4−ヘキサンジオンに変えて、1,1,1−トリフルオロアセチルアセトン用い、ビニルトリメトキシシランに変えて、ビニルトリメチルシランを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、目的物である(1,1,1−トリフルオロアセチルアセトナト)銅(I)ビニルトリメチルシランの濃青色液体を得た。収率は、57.1%であった。本濃青色液体の1H−NMRは、以下の通りであった。
【0037】
1H−NMR(in C6D6) δ0.068ppm(9H,s,SiCH3)、δ1.74ppm(3H,s,CH3(C=O))、δ4.12ppm(3H,broad,CH2=CH−)、δ5.73ppm(1H,s,(C=O)CH(C=O))
しかしながら、本1,1,1−トリフルオロアセチルアセトナト)銅(I)ビニルトリメチルシランの濃青色液体を窒素雰囲気下、室温にて3時間放置したところ、緑色固体及び黄金色の金属銅が析出し、目的物の液体がすべて固化した。すなわち、室温で本銅錯体が不安定で分解し易く、MOCVD材料としては不適であることが認められた。
【0038】
比較例2
[非対称βジケトンアルカリ金属塩の製造]
窒素気流下、攪拌装置を有する500mlのシュレンク管に、1,1,1−トリフルオロ−5,5−ジメチル−2,4−ヘキサンジオン28.1g(143mmol)を、脱水したテトラヒドロフラン400mlに希釈し、85%純度の水酸化カリウム9.46g(143mmol)及びモレキュラーシーブ200mlを添加し、室温で4時間攪拌し1,1,1−トリフルオロ−5,5−ジメチル−2,4−ヘキサンジオンのカリウム塩溶液を得た。反応後、モレキュラーシーブをガラスフィルターで除去し、得られた濾液からテトラヒドロフランを減圧留去し、n−ペンタンでスラリー化し、ガラスフィルターで目的物である1,1,1−トリフルオロ−5,5−ジメチル−2,4−ヘキサンジオンのカリウム塩20.5g(87.4mmol)を得た。収率は、61.0%であった。
[非対称βジケトン配位銅(I)錯体の製造]
窒素気流下、攪拌装置を有する200mlのシュレンク管に1,1,1−トリフルオロ−5,5−ジメチル−2,4−ヘキサンジオンのカリウム塩7.03g(30.0mmol)、塩化第一銅3.56g(36.0mmol)、ビニルトリメトキシシラン22.2g(150mmol)を仕込み、これに乾燥n−ペンタン150mlを加え、反応を開始した。室温で27時間反応させた後、未反応物及び副生物である塩化カリウムをガラスフィルターで除去し、得られた濾液からn−ペンタンを留去したが、青緑色の固体が得られたのみであった。元素分析を行ったところCu含有量が5.2wt%であった。計算値15.6wt%とはかけ離れており、目的の錯体が合成されていないことが判明した。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、以下の顕著な効果が奏される。
【0040】
本発明の第一の効果としては、従来の弗素含有βジケトン銅(I)ビニルシラン錯体よりも弗素含有量が低く、安定であり、蒸気圧が高い新規な銅錯体を提供することが可能となった。殊に本錯体は、銅配線用MOCVD材料として好適である。
【0041】
第二の効果としては、非対称β−ジケトンを配位子として有する銅(I)錯体を製造するにあたり、極めて効率的で、経済的な合成処方を提供することが可能となった。
Claims (3)
- 溶媒を添加することなしに、シリル基置換アルケン、βジケトン及び酸化第一銅を反応させることを特徴とする請求項2記載の銅錯体の製造方法。
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