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JP4364064B2 - ディスクロール及びその製造方法 - Google Patents
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JP4364064B2 - ディスクロール及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、ディスクロール及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、中径継目無管(外径が150mm〜450mmの継目無管)を製造するための穿孔圧延機に用いられるディスクロール及びその製造方法に関する。
通常、中径継目無管はマンネスマン製管法により製造される。図15及び図16に示すように、マンネスマン製管法では、穿孔圧延機70が被圧延材4である丸ビレットの軸心部に孔を開け、中空素管(ホローシェル)を形成する。ホローシェルは、延伸圧延処理や形状修正処理を経て継目無管となる。
穿孔圧延機70は、一対の傾斜ロール1と、一対のディスクロール2と、被圧延材4を穿孔するためのプラグ3とを備える。一対の傾斜ロール1は、被圧延材4が通過するラインの中心線(以下、パスセンタLと称する)を挟んで対向して配置される。一対のディスクロール2は一対の傾斜ロール1に対して、パスセンタLを中心に90°の位置に配置される。
被圧延材4はパスセンタL上を搬送され、回転する傾斜ロール1に噛み込まれる。被圧延材4は傾斜ロール1により螺旋回転しながらX方向に押し出される。このとき、被圧延材4はプラグ3により穿孔され、ホローシェルに圧延される。穿孔されるに従い、被圧延材4(ホローシェル)の外径は膨れる。
図17に示すように、ディスクロール2は表面22に曲率を有する。穿孔圧延中、ディスクロール2は、表面22を被圧延材4(ホローシェル)に接触させながら回転し、被圧延材4の外径の膨らみを抑える。
以上のように、ディスクロール2は、螺旋回転しながら外径を膨張しようとする被圧延材4を受ける。そのため、表面22に高い面圧がかかり、摩擦が生じる。摩擦によりディスクロール2の表面22が摩耗した場合、ディスクロール2は被圧延材4の外径の膨らみを抑えることができなくなる。また、表面22に偏摩耗又は焼き付きが発生した場合、被圧延材4の表面に疵(パイプ疵)を発生させる。そのため、ディスクロール2の耐摩耗対策、及び耐焼き付き対策は重要である。下記特許文献1及び2では、圧延方法を調整することによりディスクロール2の摩耗及び焼き付きを抑制する対策が報告されている。しかしながら、ディスクロール自体の耐摩耗性及び耐焼き付き性を向上させる対策は報告されていない。
ところで、耐摩耗、耐焼き付き対策として、被圧延材に接触する工具の表面に、プラズマ粉体肉盛溶接法(Plasma Transferred Arc:PTA法)により肉盛層(PTA肉盛層)を形成する技術が報告されている(下記特許文献3及び4参照)。PTA肉盛層は高硬度であるため、耐摩耗性に優れる。また、高温の被圧延材と繰り返し接触することで、PTA肉盛層の表面は酸化される。この酸化膜は潤滑作用を持ち、焼き付きの発生を防止する。要するに、PTA肉盛層は耐焼き付き性にも優れる。なお、PTA肉盛層を有する工具は、初めて使用する時にPTA肉盛表面に潤滑剤が塗布され、酸化膜が形成されるまで、その潤滑剤が焼き付きの発生を防止する。潤滑剤は被圧延材と複数回接触するうちに工具から剥離するが、その間に酸化膜が形成されるため、潤滑剤が剥離した後は酸化膜が焼き付きの発生を防止する。
以上のように、PTA肉盛層は耐摩耗性及び耐焼き付き性に優れる。特許文献4では、PTA肉盛層にNbCを含めることで、工具の耐摩耗性及び耐焼き付き性を向上させている。
しかしながら、表面にNbCを含むPTA肉盛層を有するディスクロールは今までに製造されていない。中径管を製造するための穿孔圧延機に用いられるディスクロール2は、直径が3200mm〜3500mmと大型である。このような大型のディスクロールにPTA法による肉盛溶接(以下、PTA肉盛溶接と称する)を実施する場合、PTA肉盛層に熱応力が掛かりやすく、PTA肉盛層の表面に複数の割れが発生する。PTA肉盛層に割れが存在する場合、その割れにより被圧延材の表面に疵を発生させる恐れがある。また、割れを起点としてPTA肉盛層が剥離する場合もある。そのため、ディスクロールにPTA肉盛層を形成する場合、実用可能な程度にPTA肉盛層の割れを抑制する必要がある。
また、一般的に、PTA肉盛溶接では、ビードを重ね合わせてPTA肉盛層を形成するため、PTA肉盛層の表面に凹凸が生じる。凹凸の存在は、被圧延材の表面に疵を発生させる要因になる。ビードの凸部に被圧延材が接触し、凸部に応力が集中するためである。そのため、下記特許文献3及び4に示すように、通常PTA肉盛層の表面はグラインダ等で研削され、凹凸をなくしている。しかしながら大型のディスクロールにおいて、PTA肉盛層の表面全体を研削するには多大な時間が必要であり、それに伴い製造コストも上がる。さらに表面のPTA肉盛層を研削するため、研削されたPTA肉盛層分だけディスクロールの寿命が短くなる。よって、製造コスト及び研削量に起因する寿命を考えると、PTA肉盛層の表面を研磨することなく使用できる方が好ましい。
特開2002−248506号公報 特開2001−340904号公報 特開平9−85487号公報 特開平6−315704号公報
本発明の目的は、NbCを含むPTA肉盛層を表面に形成することで耐摩耗性、耐焼き付き性の優れたディスクロールを提供することである。
本発明のもう1つの目的は、PTA肉盛層の表面を研削することなく使用できるディスクロールを提供することである。
課題を解決するための手段及び発明の効果
本発明者らは、ディスクロールにNbCを含むPTA肉盛層を形成し、形成後のPTA肉盛層の割れの原因を調査した。その結果、発明者らは、PTA肉盛溶接中のディスクロールの温度がPTA肉盛層の割れに起因すると考えた。PTA肉盛層は高硬度であり、延性に乏しい。そのため、PTA肉盛溶接に常温のディスクロールを用いる場合、形成されるPTA肉盛層が溶接熱によるディスクロールの熱膨張に追従できず、割れを生じる。一方、適切な温度範囲で予熱したディスクロールを用いる場合、溶接熱によるディスクロールの熱膨張は抑制される。そのため、形成されるPTA肉盛層は割れを生じにくくなる。
以上の考えに基づいて、PTA肉盛溶接中のディスクロールの保持温度について調査した結果、ディスクロールの温度を250℃〜350℃に保持すれば、ディスクロールにNbCを含むPTA肉盛層を実用可能な状態で形成できることを見出した。250℃以下では溶接熱によるディスクロールの熱膨張を十分に抑制できなかった。また、350℃を超えると、PTA肉盛溶接のアークを受けたディスクロールの表面が溶融し、PTA肉盛層にディスクロールが溶け込むため、PTA肉盛層の硬度が低下した。
さらに、本発明者らは、PTA肉盛層表面の凹凸を調査した。本発明では、図1に示すように、PTA肉盛層の隣接するビードの山頂の差分△hを測定し、△hを凹凸の状態を示す凹凸値とした。凹凸値△hは、たとえば図2に示すように、ディスクロール50の表面30Cの曲率と同じ曲率を有するゲージ500を用いて測定できる。
本発明者らは、凹凸値△hと被圧延材の疵の発生との関係を調査した結果、PTA肉盛層の凹凸値△hを2mm以内に抑えれば、疵の発生を抑制できることを見出した。PTA肉盛層の表面の凹凸が減少することにより、被圧延材がPTA肉盛層全体と接触し、表面の凸部に発生する負荷が緩和されるためと考えられる。
さらに、凹凸値△hを0.1mm以上にしなければ、疵の発生を防止できないことも見出した。PTA肉盛層を有するディルスクロールを使用する場合、使用初期に表面に潤滑剤を塗布する。PTA肉盛層に酸化膜が形成されるまで、焼き付きの発生を防止するためである。しかしながら、PTA肉盛層表面に凹凸がなければ、酸化膜が形成される前に潤滑剤が剥離してしまい、焼き付きが発生する。そのため、凹凸値△hは0.1mm以上必要である。
以上より、ディスクロールのPTA肉盛層表面の凹凸値△hを0.1〜2.0mmとすれば、ディスクロール使用初期における被圧延材表面の疵の発生を防止できる。なお、PTA肉盛溶接後にPTA肉盛層を研削する必要がないため、研削した場合と比較して、ディスクロールの寿命は向上する。
表面の凹凸値△hを0.1mm〜2mmに抑えるために、本発明者らは、PTA肉盛溶接の条件を検討した。ディスクロールにPTA肉盛溶接を実施し、形成されたビードの形状を調査した結果、本発明者らは、ビードごとに形状が異なることを見出した。
図3に示すように、曲率を有する表面に形成されたビードBD3とBD4とを比較すると、角度αBD3<角度αBD4となる。ここで、角度αは図4に示すように、オシレート幅W1の垂直2等分線とディスクロール表面との交点を通る接線と、水平線とで形成される角度をいう。ここで、オシレート幅W1とは、ビード形成中のPTAトーチの移動幅をいう。詳細は後述する。
図3に戻って、ビードBD3の角度αBD3とBD4の角度αBD4とが異なるため、ビードBD3とBD4とは異なる形状となる。具体的には、角度αの大きいBD4の凸部の山頂は2等分線L4よりも谷側(BD3側)にずれる。角度αが大きい程、2等分線に対するビードの山頂のずれは大きくなる。よって、発明者らはPTA肉盛溶接時の角度αを所定の範囲内に制御すれば、形成されるビードの形状もほぼ同じ形状にすることができ、PTA肉盛の表面凹凸を調整できると考えた。以上の検討に基づいて、式(1)を導き出した。
W1×tanα≦1.0mm (1)
さらに、PTA肉盛溶接では、隣接するビードを重ね合わせてPTA肉盛層を形成する。図5を参照して、PTAトーチは、オシレート幅W1間を移動しながら、図5の紙面に対して垂直方向に移動し、ビードBD1を形成する。ビードBD1を形成後、PTAトーチは、ビード移行幅W2だけ移行する。移行後、PTAトーチは、移行した位置を中心としてオシレート幅W1間を移動しながら、ビードBD2を形成する。このように複数のビードを形成することでPTA肉盛層が完成する。
発明者らは、凹凸値△hを抑えるためには、角度αの制御だけでなく、ビードBD1とビードBD2とを重ね合わせる領域SPを調整する必要もあると考えた。重ね合わせる領域SPが小さければ、領域SPは凹型の形状になり、重ね合わせる領域SPが大きければ、領域SPは凸型の形状になる。よって、凹凸値△hを適正な範囲内にするためには、重ね合わせる領域SPを適正な大きさにする必要がる。換言すると、ビード幅W1と移行幅W2の比を適正に規定する必要がある。
以上の検討に基づいて、式(2)を導き出した。
0.8≦W2/W1≦1.5 (2)
以上より、本発明者らは、PTA肉盛溶接時に式(1)及び(2)を満足すれば、凹凸値△hを0.1mm〜2mmとすることができることを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づいて以下の本発明を完成させた。
本発明によるディスクロールは、プラズマ粉体肉盛溶接法により形成された肉盛層を表面に有するディスクロールであって、肉盛層は、体積%で30%〜60%を占め、粒径が50μm以上のNbCを主とする炭化物と、Co基合金又はNi基合金からなるマトリックス合金とを含有する。肉盛層の表面の凹凸は0.1〜2mmである。ここで、表面の凹凸とは、図1に示す凹凸値△hをいう。
本発明によるディスクロールの製造方法は、肉盛層を表面に有するディスクロールの製造方法であって、ディスクロールを250〜350℃に予熱する工程と、予熱した温度を保持しながら、プラズマ粉体肉盛溶接法によりディスクロールの表面に肉盛層を形成する工程とを備え、肉盛層を形成する工程は、体積%で30%〜70%を占め、粒径が50〜250μmのNbCを主とする炭化物と、Co基合金又はNi基合金からなるマトリックス合金粉末とをPTA肉盛層の原料とする。
好ましくは、肉盛層を形成する工程は、プラズマ粉体肉盛溶接法におけるオシレート幅W1及びビード移行幅W2が以下の式(1)及び(2)を満たす。
W1×Tanα≦1.0mm (1)
0.8≦W2/W1≦1.5 (2)
ここで、αは図4に示すように、オシレート幅W1の垂直2等分線とディスクロール表面との交点を通る接線と、水平線とで形成される角度をいう。
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
1.化学組成
本発明の実施の形態によるディスクロールの表面に形成されるPTA肉盛層はNbCを主とする炭化物とマトリックス合金とを含有する。
[NbCを主とする炭化物]
NbCは高温での硬度や耐酸化性が他の炭化物(WC、TiC等)よりも優れている。そのため、NbCを主とする炭化物を含むPTA肉盛層の耐摩耗性及び耐焼き付き性が良好となる。NbCを主とする炭化物とは、たとえばNbCを体積%で50%以上含む炭化物である。NbCの粒径は50μm以上とする。なお、ここでいう粒径とは、PTA肉盛層の断面に存在する炭化物粒子の長径と短径を測定後、(長径+短径)/2で求めた値である。長径及び短径は、光学顕微鏡又は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定される。
NbCの粒径が50μm未満とすると、被圧延材とPTA肉盛層中のマトリックス合金との接触を十分に妨げることができず、焼き付きを防止できない。望ましくは、粒径は100μm以上である。また、PTA肉盛層におけるNbCを主とする炭化物粒子の体積率は30%〜60%とする。NbCを主とする炭化物の体積率は耐摩耗性に影響する。30%未満とすると、耐摩耗性が低下する。一方、60%よりも多くなると、PTA肉盛層の靭性が著しく低下する。そのため使用中にPTA肉盛層の一部が欠落しやすく、寿命が短くなる。好ましくは、NbCを主とする炭化物の体積率は、40%〜60%である。
[マトリックス合金]
マトリックス合金は、ディスクロールの使用環境を考慮して耐酸化性及び耐食性に優れるCo基合金又はNi基合金とする。
Co基合金とは、たとえばCoを質量%で30%以上含む合金をいう。一般に硬化肉盛材として使用されるステライト合金はCo基合金である。たとえば、表1に示すステライト1、ステライト6、ステライト21、ステライト32等はCo基合金に相当する。
Figure 0004364064
Ni基合金とは、たとえばNiを質量%で30%以上含む合金をいう。たとえば、表2に示すアロイ600、アロイ625、アロイ718、C−276、50Cr50Ni等である。
Figure 0004364064
PTA肉盛層の母材となるディスクロールは、軟らかい材質がよい。ヒートクラックの進展を防止するためである。たとえば、STKM13AやS45Cがよい。
2.製造方法
本実施の形態によるPTA肉盛層を表面に有するディスクロールの製造方法を以下に説明する。
図6を参照して、ディスクロール50は軸21を含む軸部材40と、円環部材30とに分かれる。穿孔圧延機に設置されたディスクロール50を交換する場合、円環部材30を消耗品として取り替える。具体的には、摩耗した円環部材30を軸部材40から取り外し、焼き嵌めにより新しい円環部材30を軸部材40に取り付ける。本実施の形態では、円環部材30の表面30cにPTA肉盛溶接を実施する。PTA肉盛溶接はPTA肉盛溶接装置を用いて実施される。
図7〜図9を参照して、PTA肉盛溶接装置10は、円環固定治具11と、ポジショナ12と、PTAスタンド14と、本体15とを備える。
円環固定治具11は、円板状の治具本体部110と8本のアーム部11Aを備える。各アーム部11Aは治具本体部110の円周に等間隔に配置される。各アーム部11Aは円環部材30を挟み、固定する。具体的には、円環部材30において、PTA肉盛溶接を行う表面30c以外の側面30a及び底面30bが保温シート20で包まれる。アーム部11Aは保温シート20に包まれた円環部材30を挟む。
図8中の円環固定治具11は、図7中の線分VII−VIIの断面図である。アーム部11Aには貫通孔111が形成され、貫通孔111には固定治具11Cが挿入される。固定治具11Cはたとえばボルト及びナットである。円環部材30を挟んだ各アーム部11Aは固定治具11Cで締め付けられ、円環部材30を強固に挟む。
保温シート20はカーウォールで構成される。PTA肉盛溶接中、円環部材30は熱を一定に保ちにくい。そのため、円環部材の温度を一定にする工夫が必要である。本実施の形態では、保温シート20で円環部材30の表面を直接包み込み、PTA肉盛溶接中の温度の変動を抑制する。
ポジショナ12は、地面に設置された架台120と、回動傾斜部材121とを備える。架台120は図8に示すようにコの字型の形状であり、上部突起部120Aは回動傾斜部材121を回動可能に軸支する。回動傾斜部材121は、円環部材30を固定した円環固定治具11を装着し、円環部材30を回動又は傾斜する。
回動傾斜部材121は、傾斜部材122と回動機構123とを備える。傾斜部材122は半円板状のラックギアで、架台120内に備えられた図示しないピニオンギアを駆動させることにより、水平軸120Bを軸に回動する。傾斜部材122を回動し、円環部材30を傾斜させた状態を図10に示す。これにより、PTA肉盛溶接時に角度αを調整できる。
回動機構123は、装着板124と、平歯車125及び126と、モータ127とを備える。装着板124は矩形の板であり、一方の面に円環固定治具11が装着される。また、他方の面には平歯車125が固着される。平歯車125は傾斜部材122に回動自在に軸支される。平歯車125は平歯車126と噛み合う。モータ127により平歯車126が回動すると、平歯車125が固着した装着板124が回転する。その結果、円環固定治具11及び円環部材30が図7における時計回り(又は反時計回り)に回動する。
本体15は天板15Aと2つのフレーム151及び152とを備える。図7に示すように、フレーム151及び152は並行に配置され、図8に示すようにフレーム151及び152の一部は天板15Aに固着される。フレーム151及び152の下部には複数の車輪153が備えられ、複数の車輪153の下にはレール160が設置される。本体15はレール160上を水平方向に移動する。
本体15はさらに、PTAスタンド14とPTAトーチ制御盤145とを備える。PTAスタンド14及びPTAトーチ制御盤145は天板15A上に設置される。PTAスタンド14はPTAアーム141とPTAトーチ142とを備える。PTAアーム141は水平方向に固定され、その先端にPTAトーチ142が鉛直方向に固定される。図10に示すように、円環部材30を傾斜させた場合でも、本体15を水平方向に移動させることで、円環部材30の表面30cに対するPTAトーチ142の位置を調整できる。
バーナ16A〜16Eは、図7に示すように治具本体部110の中心から3時、5時、7時、9時、11時の位置にそれぞれ配置される。
本実施の形態によるディスクロール50の製造方法について説明する。
初めに、円環部材30を保温シート20で包む。続いて、保温シート20で包んだ円環部材30を円環固定治具11に固定する。その後、円環固定治具11を装着板124に装着する。このとき、円環部材30の中心軸が水平になるように(つまり、図8の状態になるように)ポジショナ12を調整する。
ポジショナ12を調整後、円環部材30を予熱する。具体的には、モータ127により装着板124を回動し、円環部材30を回動する。円環部材30は回動中にバーナ16で加熱される。このとき、円環部材30の温度を250℃〜350℃に保持する。円環部材30の温度は図示しない温度計にて所定時間ごとに測定し、測定結果に基づいてバーナ16を調整する。バーナ16A〜16Eの火力は強、中、弱の3段階に変更可能である。バーナ16Aの火力は常時「強」に設定される。また、バーナ16C及び16Dの火力は「中」に設定される。バーナ16B及び16Eの火力は初めは「中」に設定するが、ディスクロールの温度に基づいて変動させる。PTAトーチ142近傍に温度計を設置し、所定期間ごとに温度を測定する。
円環部材30の温度が250℃〜350℃で安定して保たれた後、PTA法により円環部材30の表面30cにPTA肉盛層を形成する。PTA肉盛層の原料として、粒径が50〜250μmのNbCを主とする炭化物と、マトリックス合金粉末とを用いる。NbCを主とする炭化物は、体積率で原料の30%〜70%とする。マトリックス合金粉末は、Co基合金又はNi基合金とする。
PTA肉盛溶接においてビードを形成するとき、式(1)及び(2)を満たすよう、角度αとオシレート幅W1とビード移行幅W2を決定する。
角度αとオシレート幅W1とビード移行幅W2とを決定後、円環部材30を回動させ、1回目のPTA肉盛溶接を実施する。円環部材30が1回転したとき、図11に示すように、円環部材30の表面30cにビードBDが形成される。このとき、1回目のPTA肉盛溶接を終了する。続いて、図12に示すように、PTAトーチ142をビード移行幅W2だけ移行した後、2回目のPTA肉盛溶接を実施する。同様に、n−1回目が終了すると、PTAトーチ142をビード移行幅W2だけ移行し、n回目のPTA肉盛溶接を実施する。n回目のPTA肉盛溶接を実施する前に、角度αnが設定した角度αを超えているか否かを確認する。超えていない場合は、PTA肉盛溶接を実施する。角度αnが角度αを超えている場合、円環部材30の表面30cとPTAトーチ142との位置関係を調整し、α=0°にする。具体的には、図10に示すように、ポジショナ12の傾斜部材122を回動し、円環部材30を傾斜させ、角度α=0°にする。このとき、本体15を水平方向に移動し、円環部材30の表面30cに対するPTAトーチ142の位置を調整する。調整後、PTA肉盛溶接を実施する。
以上のように、式(1)及び(2)を満足するようにPTA肉盛溶接を繰り返し実施し、円環部材30の表面30c上にNbCを含むPTA肉盛層を形成する。形成後のPTA肉盛層の凹凸値△hは0.1mm〜2.0mmに抑えることができる。
PTA肉盛溶接後、焼き嵌めにより円環部材30を軸部材40に取り付けることで、ディスクロール50が完成する。
PTA肉盛溶接中、保温シート20により円環部材30の温度が変動するのを防止し、かつ複数のバーナをディスクロールの円周方向にほぼ均等に配置することで、円環部材30の温度を250℃〜350℃に安定して保つことができる。これにより、PTA肉盛層に割れが発生するのを抑制できる。また、n回目のPTA肉盛溶接時の角度αnが設定した角度α以内となるように、ポジショナ12は円環部材30の角度を変更できる。これにより、PTA肉盛層の凹凸値△hを0.1mm〜2mmに抑えることができる。
ディスクロールD1〜D4及びE1〜E4の表面にPTA肉盛層を形成した。このとき、原料として粒径が75〜150μmのNbCと、表3に示すマトリックス合金粉末とを使用した。ディスクロールD1〜D4には、表3中のマトリックス合金D0を使用した。ディスクロールE1〜E4には、表3中のマトリックス合金E02を使用した。なお、原料全体に対するNbCの体積率を50%とした。
Figure 0004364064
PTA肉盛層を形成後、PTA肉盛層の状態を調査した。ディスクロールD1〜D4,E1〜E4は共に、質量%で、C:0.2〜2.0%、Si:0.15〜0.35%、Cr:3.1〜3.5を含有する0.6C−0.2Si−3.0Cr系とした。
プラズマ粉体肉盛溶接では、表4に示すディスクロールの予熱温度及び保持温度でPTA肉盛溶接を行った。なお、予熱及びPTA肉盛溶接中の温度以外の製造条件は同じとした。
製造後、各ディスクロールD1〜D4,E1〜E4のPTA肉盛層の組成と、NbCの粒径及び体積率を調査した。具体的には、肉盛層の断面のうち、複数の領域を選択した。このとき、選択した領域の面積の合計が3mm×3mmよりも大きくなるように選択した。走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、選択した領域内の全ての炭化物の粒径と面積率とを測定した。粒径は、(炭化物の長径+炭化物の短径)/2の値とした。粒径及び面積率は画像解析により測定した。求めた面積率をもって、炭化物の体積率とした。ある相の体積率は、断面での面積率と等しいことが証明されているからである(たとえば、日本金属学会誌Vol10,No.5,279〜289頁参照)。表4に調査結果を示す。ディスクロールD1〜D4のPTA肉盛層の組成に大きな違いはなかった。また、ディスクロールE1〜E4のPTA肉盛層の組成に大きな違いはなかった。
Figure 0004364064
[PTA肉盛層評価方法]
上記条件で製造したPTA肉盛層について、表面の割れと溶け込み深さとを調査した。溶け込み深さとは、ディスクロール母材へ溶け込んだPTA肉盛層の深さをいう。具体的には、図13に示すように、ディスクロール50の表面30Cから溶け込んだPTA肉盛層150の深さDEPを溶け込み深さとする。
(1)表面割れ調査
PTA表面を目視で観察し、PTA表面に発生した表面の割れ状況を調査した。具体的には、表面に発生した割れの大きさと、表面に発生した割れの数とを調査した。
PTA肉盛層の表面に大きな割れが発生している場合、そのディスクロールを穿孔圧延機に使用できない。なぜなら、割れの形状が被圧延材の表面にプリントされ、被圧延材の表面に疵を発生させるためである。そこで、ディスクロール表面に発生している割れの開口幅を調査した。各ディスクロールD1〜D4,E1〜E4において、PTA肉盛層の表面に発生している割れのうち、最大の開口幅が0.5mm以下である場合は合格とし、0.5mmよりも大きい場合は不合格と評価した。
一方、大きな開口割れが発生していなくても、微少な割れが多数発生している場合は、使用中にPTA肉盛層がディスクロールから剥離する可能性が高い。PTA肉盛層が剥離すれば、剥離部分が被圧延材に疵を発生させる。よって、微細な割れが多数発生しているディスクロールも使用できない。そこで、ディスクロール表面に発生している割れ数を調査した。割れ数は以下のように調査した。図14に示すように、PTA肉盛層表面の任意の位置10箇所において、周方向に10cmの直線を引き、その直線と交差する割れの数をカウントした。カウントした数を直線を引いた箇所数で平均した。割れ数が8個以下の場合は合格とし、9個以上の場合は不合格と評価した。
(2)溶け込み深さ調査
PTA肉盛溶接中、ディスクロールの表面をPTA肉盛層に溶かし出す必要がある。ディスクロールと肉盛層との密着強度を確保するためである。PTA肉盛層に対するディスクロールの溶け込み深さが大きい場合、たとえPTA肉盛層の表面に割れが発生していなくても、PTA肉盛層の耐摩耗性は低下する。具体的には、PTA肉盛層が溶け込んだディスクロールの材質により薄められ、単位体積当たりの炭化物量が減少するため、PTA肉盛層の硬度が低下する。さらに、ディスクロールの材質中のFeは耐食性に劣るため、Feの溶け込みがPTA肉盛層に腐食摩耗を引き起こす。そのため、PTA肉盛層の耐摩耗性が低下する。
そこで、各ディスクロールD1〜D4,E1〜E4のPTA肉盛層について、溶け込み深さを調査した。具体的には、PTA肉盛層を含むディスクロール本体を半径方向に10箇所切断した。切断面を光学顕微鏡で観察し、PTA肉盛溶接前の母材表面からの溶け込み深さを測定した。溶け込み深さが0.5mm以上3.0mm以下のものを合格とし、それ以外のものを不合格とした。溶け込み深さが3.0mmより深い場合、耐摩耗性が劣化し、0.5mm未満の場合、密着強度の不足によりPTA肉盛層が使用中に剥離するおそれがあるためである。
[評価結果]
割れ数と割れの大きさと溶け込み率の評価結果を表5に示す。
Figure 0004364064
表5を参照して、ディスクロールD1及びE1のPTA肉盛層は割れ数が不合格であった。予熱100℃では母材温度が不足したため、PTA肉盛層に微細な割れが発生した。また、ディスクロールD4及びE5のPTA肉盛層は溶け込み深さが深く、不合格であった。また、大きな割れも発生した。
一方、本発明のディスクロールD2,D3,E2,E3は、割れ数、割れの大きさ及び溶け込み深さ共に合格であった。つまり、大型のロールであるディスクロールであっても、使用可能なPTA肉盛層を形成できた。
複数のディスクロールに異なる凹凸値△hを有するPTA肉盛層を形成し、各ディスクロールに基づき発生するパイプ疵とディスクロールに発生する焼き付きとを調査した。
Figure 0004364064
ディスクロールD5〜D14及びE5〜E14に表6の製造条件でPTA肉盛溶接を実施した。ディスクロールD5〜D14に使用するマトリックス合金はステライト21とした。また、ディスクロールE5〜E14に使用するマトリックス合金はアロイ600とした。また原料として粒径が75〜125μmのNbCを使用した。なお、原料全体に対するNbCの体積率を50%とした。
PTA肉盛溶接を実施後、各ディスクロールD5〜D14及びE5〜E14のPTA肉盛層の凹凸値△hを測定した。なお、ディスクロールD5,D6,E5,E6は比較の為にPTA肉盛層の表面を研削及び研磨し、凹凸値△h=0とした。
凹凸値△hを測定後、各ディスクロールD5〜D14及びE5〜E14を穿孔圧延機に設置した。設置時にディスクロールの表面には潤滑剤を塗布した。設置後、1230℃に加熱した被圧延材を5本穿孔圧延し、被圧延材を中径管とした後、中径管の表面に発生したパイプ疵を調査した。被圧延材にはSTKM13A鋼とSUS304とを使用した。
パイプ疵の調査は以下の方法で行った。STKM13A鋼については、磁粉探傷法によりパイプ疵の有無及び発生したパイプ疵の深さを調査した。このとき、磁粉濃度を0.2g/Lとし、電流値を5500ATとした。また、SUS304については、ショットブラストを実施後、酸洗いによりパイプ疵を調査した。酸洗いでは硝酸及び弗酸を使用し、酸洗い後の酸液浸透箇所を調査することによりパイプ疵の有無及びパイプ疵の深さを調査した。
また、被圧延材を5本穿孔圧延した後、各ディスクロールD5〜D14及びE5〜E14のPTA肉盛層表面に焼き付きが発生しているか否かを調査した。焼き付きの有無は目視にて行い、PTA肉盛層表面に被圧延材が移着している場合は焼き付きが発生したと判断した。
表5を参照して、式(1)及び式(2)を満たすディスクロールD7〜D12及びE7〜E12は凹凸値△hが0.1mm〜2.0mmとなった。さらに、ディスクロールD7〜D12及びE7〜E12では、パイプ疵が発生しないか、パイプ疵が発生しても、その深さが許容範囲である0.2mm以内であった。さらにディスクロールD7〜D12及びE7〜E12では、焼き付きも発生しなかった。
一方、式(1)及び式(2)を満足しなかったディスクロールD13,D14,E13,E14では、凹凸値△hが2.0mmを越え、パイプ疵の深さが0.2mmを越えた。凹凸値が2.0mmを越えたため、被圧延材がPTA肉盛層に接触したとき、PTA肉盛層の凸部に応力が集中し、パイプ疵が発生したものと考えられる。また、応力集中の発生により、ディスクロールD14及びE14では焼き付きも発生した。
表面研削により凹凸値△h=0としたディスクロールD5,D6,E5,E6では、パイプ疵の発生はなかった。しかしながらディスクロールD5及びE5では、圧延後PTA肉盛層に焼き付きが発生した。凹凸値△h=0の場合、酸化膜が形成される前に使用初期に塗布した潤滑剤が剥離し、焼き付きが発生したと考えられる。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
本発明のディスクロールの表面に形成されたPTA肉盛層の凹凸を示す凹凸値△hの定義を説明するための概略図である。 凹凸値△hを測定するためのゲージの概略図である。 PTA肉盛溶接後のビード形状を説明するための概略図である。 本発明のディスクロールにおけるPTA肉盛溶接の条件である角度αの定義を説明するための概略図である。 PTA肉盛溶接を説明するための概略図である。 本発明の実施の形態によるディスクロールの構成を示す斜視図である。 本発明の実施の形態によるディスクロールを製造するためのPTA肉盛溶接装置の側面図である。 図7に示したPTA肉盛溶接装置の正面図である。 図8に示したPTA肉盛溶接装置中の円環部材30周辺の構成を示す図である。 図8に示したPTA肉盛溶接装置の動作の一例を示す図である。 PTA肉盛溶接中のPTAトーチの動作を説明するための概略図である。 図11後のPTAトーチの動作を説明するための概略図である。 溶け込み深さを説明するための概略図である。 PTA肉盛溶接後のディスクロールの表面割れの調査方法を説明するための概略図である。 従来の穿孔圧延機を上面からみた場合の構成を示す概略図である。 図15に示した穿孔圧延機を側面から見た場合の構成を示す概略図である。 図15に示した穿孔圧延機の正面から見た場合の構成を示す概略図である。
符号の説明
2,50 ディスクロール
10 PTA肉盛溶接装置
11 円環固定治具
12 ポジショナ
14 PTAスタンド
15 本体
16 バーナ
20 保温シート
30 円環部材
142 PTAトーチ

Claims (3)

  1. プラズマ粉体肉盛溶接法により形成された肉盛層を表面に有するディスクロールであって、
    前記肉盛層は、
    体積%で30%〜60%を占め、粒径が50μm以上のNbCを主とする炭化物と、
    Co基合金又はNi基合金からなるマトリックス合金とを含有し、
    前記肉盛層の表面の凹凸は0.1〜2mmであることを特徴とするディスクロール。
  2. 肉盛層を表面に有するディスクロールの製造方法であって、
    ディスクロールを250〜350℃に予熱する工程と、
    前記予熱した温度を保持しながら、プラズマ粉体肉盛溶接法により前記ディスクロールの表面に前記肉盛層を形成する工程とを備え、
    前記肉盛層を形成する工程は、
    体積%で30%〜70%を占め、粒径が50〜250μmのNbCを主とする炭化物と、Co基合金又はNi基合金からなるマトリックス合金とをPTA肉盛層の原料とすることを特徴とするディスクロールの製造方法。
  3. 請求項に記載のディスクロールの製造方法であって、
    前記肉盛層を形成する工程は、プラズマ粉体肉盛溶接法におけるオシレート幅W1及びビード移行幅W2が以下の式(1)及び(2)を満たすことを特徴とするディスクロールの製造方法。
    W1×tanα≦1.0mm (1)
    0.8≦W2/W1≦1.5 (2)
    ここで、αは、前記オシレート幅W1の垂直2等分線と前記ディスクロールの表面との交点を通る接線と、水平線とで形成される角度をいう。
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