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JP4369333B2 - インパルス応答演算方法、装置及びプログラム - Google Patents
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JP4369333B2 - インパルス応答演算方法、装置及びプログラム - Google Patents

インパルス応答演算方法、装置及びプログラム Download PDF

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Description

本発明はインパルス応答演算方法、装置及びプログラムに係り、特に、物体を振動させる外力と物体の挙動との関係を周波数領域で表す動的剛性を、前記関係を時間領域で表すインパルス応答へ変換するインパルス応答演算方法、該インパルス応答演算方法を適用可能なインパルス応答演算装置、及び、コンピュータを前記インパルス応答演算装置として機能させるためのインパルス応答演算プログラムに関する。
地震時に震源から地盤を伝播した地震動(地震波)は、表層地盤を介して建物の基礎に入射し、その一部は基礎によって反射され残りは建物上部へ伝達されて建物の振動を引き起こすが、地震動によって振動された建物は新たな震源となって地盤へ波動を放出する。このように、地震時には建物と地盤が互いに影響し合って振動するので、地震時の建物の挙動や耐震安全性等を地震応答解析によって解析・評価する際には、地震動に対する地盤の挙動(反力の特性)も考慮する必要がある。地震動と地盤の挙動との関係は地盤の動的剛性(地盤インピーダンスともいう)で表すことができる。地盤の動的剛性は、振動の周波数の変化に応じて実部及び虚部の値が変化する周波数領域の複素関数で表され、地盤のポアソン比ν、密度ρ、減衰率h、層厚H等に基づき演算によって求めることができる。
また地震応答解析は、周波数領域で応答解析を行う周波数応答解析と、時間領域で応答解析を行う時刻歴応答解析とに大別される。前述のように、地盤の動的剛性は周波数領域の複素関数であるため、地震応答解析では地盤の動的剛性をそのまま利用可能な周波数応答解析も多用されている(例えば特許文献1を参照)。しかし、大きなエネルギーが建物に入力される大地震時等には、そのエネルギーの一部が、建物を構成する各部材の内部に亀裂を生じさせたり各部材を部分的に塑性化させる等によって消費されると共に、この亀裂発生や部分的な塑性化等に伴い各部材の破壊強度が低下することが繰り返されるというプロセスを経るため、建物の挙動は非線形性を有している。このため、地震時の建物の挙動等を高精度に予測解析するためには、時刻歴応答解析により、地震時の各時点での建物の状態(過去にどのような力が加わり、その力によってどのような状態になっているか)を考慮して各時点での建物の挙動を解析する必要がある。そして、時刻歴応答解析を行うにあたっては、周波数領域の複素関数である地盤の動的剛性を時間領域で表されるインパルス応答へ変換して用いる必要がある。
本願発明者は、地盤の動的剛性の周波数依存性が強い場合にも地盤の動的剛性を精度良くインパルス応答へ変換できる変換方法として、変位依存と速度依存の両方の時間遅れ成分に加えて加速度依存の同時成分を有する形式を、インパルス応答を用いた反力F(t)の一般解として設定し、設定した反力F(t)の一般解と、この一般解からインパルス応答の同時成分及び時間遅れ成分を用いて表される地盤の動的剛性S(ω)の式に基づき、ω0〜ωnの各周波数におけるN(=n+1)個の地盤の動的剛性のデータD(ωi)を用いて2N×2Nの係数マトリクスを有する連立方程式を立て、この連立方程式を解くことでインパルス応答の成分を求める変換方法を提案している(非特許文献1を参照)。また本願発明者は、複数種の地盤モデルについて、地盤の動的剛性を時間領域に変換してインパルス応答の性状を評価すると共に、構造物の地震応答解析(時刻歴応答解析)を行うことで、上記の変換方法の有効性を確認している。
特開平4−27829号公報 中村尚弘,「地盤インピーダンスの時間領域変換による成層地盤に埋込まれた構造物の地震応答解析 その2 変換法の改良及び離散的地盤モデルに基づく応答解析」,日本建築学会構造系論文集,2003年12月,第574号,p.99−106
周波数領域の複素関数である動的剛性が履歴減衰成分を含む場合、この動的剛性を時間領域へ変換すると因果性(原因が先、結果が後となるような時間的順序の関係)が壊れてしまうため、従来、履歴減衰成分を含む動的剛性を時間領域のインパルス応答へ変換することは困難と考えられていた。これに対し、上述した非特許文献1に記載の技術では、非因果的関数を因果関数に近似置換することにより、変換対象の動的剛性に若干の履歴減衰成分が含まれている場合にも、インパルス応答への変換を比較的高精度に行うことができる。しかしながら、本願発明者が実施した解析検討の結果、変換対象の動的剛性に比較的大きな履歴減衰成分が含まれている場合には、非特許文献1の技術を適用したとしても精度の良いインパルス応答が得られないことが明らかとなった。
本発明は上記事実を考慮して成されたもので、物体を振動させる外力と物体の挙動との関係を周波数領域で表す動的剛性に、比較的大きな履歴減衰成分が含まれている場合にも、前記動的剛性から、前記外力と物体の挙動との関係を時間領域で表すインパルス応答を精度良く得ることができるインパルス応答演算方法、インパルス応答演算装置及びインパルス応答演算プログラムを得ることが目的である。
図1(A)に示すように、地盤の動的剛性の演算条件として、地震波の伝播速度Vs2=400(m/s)、ポアソン比ν=0.45、密度ρ=2.0(t/m3)、減衰率h1=0%又は10%又は20%、層厚H=20(m)の第1の地層と、地震波の伝播速度Vs2=800(m/s)、ポアソン比ν=0.45、密度ρ=2.0(t/m3)、の第2の地層(減衰率h2=0%)から成る地盤の上に50×50(m)の正方形の基礎が設けられている条件を想定し、この演算条件に従い薄層要素法によって減衰率h1=0%,10%,20%の各場合について各々求めた地盤の動的剛性の一例を図1(B),(C)に示す。なお、図1(B),(C)において、"Real"は動的剛性の実部を、"Imag"は動的剛性の虚部を各々意味しており、図1(B)には動的剛性の水平成分が、図1(C)には動的剛性の回転成分が各々示されている。
本願発明者は、図1(B),(C)に示す減衰率h1=0%,10%,20%での地盤の動的剛性を各々用い、0〜20(Hz)の周波数範囲内の0.25(Hz),1.0(Hz),2.0(Hz),…の計21種の周波数における地盤の動的剛性の複素データを各々抽出し(計21個)、抽出した21個の複素データを用いて非特許文献1等に記載の変換方法によりΔt=0.05秒の条件で時間領域へ変換することでインパルス応答を各々求めた後に、求めたインパルス応答の精度を検証するために、求めたインパルス応答を周波数領域へ再変換することで動的剛性を再現し、再現した動的剛性を元の動的剛性(変換前の動的剛性)と比較した。再現された動的剛性を実部と虚部に分けて図2〜図4に示す。なお、周波数領域への再変換では、インパルス応答を求めることで算出された変位依存の時間遅れ成分(後出の(1)式における第5項)及び速度依存の時間遅れ成分(後出の(1)式における第4項)のうち、演算対象とするデータの個数を制限しない場合(「全項」)と、5個に制限した場合(「5項」)について各々演算を行った。
図2〜図4では、変換前の(元の)動的剛性(インパルス応答の演算に用いたデータ)を「データ点」として示しているが、図2〜図4を参照しても明らかなように、演算対象とする変位依存の時間遅れ成分及び速度依存の時間遅れ成分のデータの個数を制限しない場合、動的剛性から求めたインパルス応答を周波数領域へ再変換することで再現される動的剛性は、個々のデータ点では元の動的剛性に略一致しているものの、元の動的剛性に対して比較的高い周波数で振動する成分を加えたような変化を示しており、特に減衰率h1が0%→10%→20%と大きくなるに従って上記の振動成分の振幅が増大している。
一方、演算対象とする変位依存の時間遅れ成分及び速度依存の時間遅れ成分のデータの個数を5個に制限した場合、再現される動的剛性は滑らかに変化する望ましい特性を示しており、減衰率h1=10%,20%の条件でも上記の振動成分は加わっていない。但し、変位依存の時間遅れ成分及び速度依存の時間遅れ成分のデータの個数を制限した場合は、再現された動的剛性の実部が、元の動的剛性の実部の変化を縦軸方向へ平行移動させたような変化を示しており、この平行移動量(すなわち再現された動的剛性の実部と元の動的剛性の実部との偏差)は減衰率h1が大きくなるに従って増大している。このように、変換対象の動的剛性に比較的大きな履歴減衰成分が含まれている場合、非特許文献1の技術を適用したとしても精度の良いインパルス応答が得られないことが理解できる。
本願発明者は、上記結果のうち、演算対象とする変位依存の時間遅れ成分及び速度依存の時間遅れ成分のデータの個数を制限した方が、再現した動的剛性が比較的望ましい特性となることに着目し、物体の動的剛性を変換することで得られたインパルス応答を表すデータのうち、物体の変位に依存する剛性項の時間遅れ成分のデータ及び物体の速度に依存する減衰項の時間遅れ成分のデータについては、後段の処理(例えば時刻歴応答解析等)に用いるデータの個数を制限すると共に、インパルス応答を表すデータのうち、動的剛性の実部にのみ影響する剛性項の同時成分のデータ及び物体の加速度に依存する質量項の同時成分のデータを、インパルス応答から再現した動的剛性と元の動的剛性の偏差に応じて修正するようにすれば、例えば減衰率hが比較的大きい等のように、動的剛性に比較的大きな履歴減衰成分が含まれている場合にも、精度の良いインパルス応答(周波数領域へ変換することで再現した動的剛性が元の動的剛性と精度良く一致するインパルス応答)が得られることに想到して本発明を成すに至った。
上記に基づき請求項1記載の発明に係るインパルス応答演算方法は、物体を振動させる外力と前記物体の挙動との関係を周波数領域で表す動的剛性を、前記関係を時間領域で表すインパルス応答へ変換するにあたり、前記インパルス応答を規定する数式として、前記物体の変位に依存し同時成分と時間遅れ成分から成る剛性項と、前記物体の速度に依存し同時成分と時間遅れ成分から成る減衰項と、前記物体の加速度に依存し少なくとも同時成分を含んで成る質量項を含む数式を用い、前記振動が各周波数のときの前記動的剛性の値に基づいて前記インパルス応答を求めた後に、求めた時刻t=t0〜tnの期間のインパルス応答を表すデータのうち、時刻t0に相当する同時成分のデータと、時刻t1〜tn'の期間に相当するn'個の時間遅れ成分(但しn'<n、tn'<Δt・n')のデータを用いて物体の動的剛性を再現する演算を行い、再現した動的剛性と元の動的剛性の偏差に基づいて、前記インパルス応答を表すデータのうち前記剛性項の同時成分のデータ及び前記質量項の同時成分のデータを修正することを特徴としている。
請求項1記載の発明では、インパルス応答を規定する数式として、物体の変位に依存し同時成分と時間遅れ成分から成る剛性項と、物体の速度に依存し同時成分と時間遅れ成分から成る減衰項と、前記物体の加速度に依存し少なくとも同時成分を含んで成る質量項(この質量項についても同時成分と時間遅れ成分から構成されていてもよい)を含む数式を用いてインパルス応答を求めた後に、求めた時刻t=t0〜tnの期間のインパルス応答を表すデータのうち、時刻t0に相当する同時成分のデータと、時刻t1〜tn'の期間に相当するn'個の時間遅れ成分(但しn'<n、tn'<Δt・n')のデータを用いて物体の動的剛性を再現する演算を行う。これにより、この演算によってインパルス応答から再現される動的剛性は、元の動的剛性に比較的大きな履歴減衰成分が含まれている場合にも、滑らかに変化する特性(比較的高い周波数で振動する成分が加わっていない特性)を示す。
なお、時刻t=tX〜tmaxの期間(この期間に応じて、動的剛性を再現する演算(或いは後述する物体の時刻歴応答解析)に用いる剛性項及び減衰項の時間遅れ成分のデータの個数が変化する)については、例えば前記期間(前記データの個数)を変更しながら動的剛性を再現する演算を繰り返し、各演算によって得られた動的剛性における振動成分の有無や振幅の大きさに基づき、再現した動的剛性に振動成分が含まれていないか、再現した動的剛性に含まれる振動成分がごく僅かとなるように定めることができる。
また、請求項1記載の発明では、再現した動的剛性と元の動的剛性の偏差に基づいて、インパルス応答を表すデータのうち剛性項の同時成分のデータ及び質量項の同時成分のデータを修正する。剛性項の同時成分のデータ及び物体の加速度に依存する質量項の同時成分のデータは、前述のように動的剛性の実部にのみ影響し、上記各データを増減させると、インパルス応答から再現した動的剛性の実部の特性は、元の動的剛性の実部の特性に対して接近する方向(偏差が小さくなる方向)又は離間する方向(偏差が大きくなる方向)へ平行移動するので、再現した動的剛性と元の動的剛性の偏差に基づいて、インパルス応答を表すデータのうち剛性項の同時成分のデータ及び質量項の同時成分のデータを修正することで、再現した動的剛性(の特に実部の特性)が元の動的剛性に略一致するようにインパルス応答を修正することができる。従って、請求項1記載の発明によれば、物体を振動させる外力と物体の挙動との関係を周波数領域で表す動的剛性に、比較的大きな履歴減衰成分が含まれている場合にも、前記動的剛性から、前記外力と物体の挙動との関係を時間領域で表すインパルス応答を精度良く得ることができる。
請求項2記載の発明に係るインパルス応答演算方法は、物体を振動させる外力と物体の挙動との関係を周波数領域で表す動的剛性を、前記関係を時間領域で表すインパルス応答へ変換するにあたり、物体の変位に依存するインパルス応答の同時成分をk(t0)、物体の速度に依存するインパルス応答の同時成分をc(t0)、物体の加速度に依存するインパルス応答の同時成分をm(t0)、物体の変位に依存するインパルス応答のΔt刻みの時間遅れ成分をk(tj)、物体の速度に依存するインパルス応答のΔt刻みの時間遅れ成分をc(tj)(但し、jは自然数でtj=Δt・j)、時間領域での物体の変位をu(t)、速度をu'(t)、加速度をu"(t)としたときに、前記インパルス応答を用いて反力F(t)を規定する数式として、
Figure 0004369333
上記(1)式を用い、前記振動がN種(N=n+1)の周波数のときの前記動的剛性の値に基づいて前記インパルス応答を求めた後に、求めた時刻t=t0〜tnの期間のインパルス応答を表すデータのうち、時刻t0に相当する同時成分k(t0),c(t0),m(t0)のデータと、時刻t1〜tn'の期間に相当するn'個の時間遅れ成分k(tj),c(tj)(但しn'<n、tn'<Δt・n')のデータを用いて物体の動的剛性を再現する演算を行い、再現した動的剛性と元の動的剛性の偏差に基づいて、前記インパルス応答を表すデータのうち物体の変位に依存するインパルス応答の同時成分k(t0)のデータ及び物体の加速度に依存するインパルス応答の同時成分m(t0)のデータを修正することを特徴としている。
請求項2記載の発明において、インパルス応答を用いて反力F(t)を規定する数式((1)式)は、その第1項が前述の請求項1記載の発明における質量項(の同時成分)に、第2項が減衰項の同時成分に、第3項が剛性項の同時成分に、第4項が減衰項の時間遅れ成分に、第5項が剛性項の時間遅れ成分に各々対応している。請求項2記載の発明では、求めたインパルス応答を表すデータのうち、時刻t0に相当する同時成分k(t0),c(t0),m(t0)のデータと、時刻t1〜tn'の期間に相当するn'個の時間遅れ成分k(tj),c(tj)(但しn'<n、tn'<tn)のデータを用いて物体の動的剛性を再現する演算を行い、再現した動的剛性と元の動的剛性の偏差に基づいて、物体の変位に依存するインパルス応答の同時成分k(t0)(請求項1における「剛性項の同時成分」に相当)データ及び物体の加速度に依存するインパルス応答の同時成分m(t0)(請求項1における「質量項の同時成分」に相当)のデータを修正するので、請求項1記載の発明と同様に、物体を振動させる外力と物体の挙動との関係を周波数領域で表す動的剛性に、比較的大きな履歴減衰成分が含まれている場合にも、前記動的剛性から、前記外力と物体の挙動との関係を時間領域で表すインパルス応答を精度良く得ることができる。
また、請求項2記載の発明におけるインパルス応答の演算は、具体的には、例えば請求項3に記載したように、前記振動の角振動数をωとしたときに、前記(1)式に基づき、前記物体の動的剛性S(ω)を規定する数式として、
Figure 0004369333
上記(2)式を用い、物体の動的剛性のデータから、前記振動がN種の周波数のときの動的剛性の値を表すN個の複素データD(ω1),…,D(ωN)を抽出し、抽出したN個の複素データを
Figure 0004369333
前記(1)式及び(2)式から導出される上記(3)式及び(4)式へ代入して演算することで行うことができる。
なお、請求項2記載の発明において、再現した動的剛性と元の動的剛性の偏差に基づいて、インパルス応答を表すデータのうち物体の変位に依存するインパルス応答の同時成分k(t0)のデータ及び物体の加速度に依存するインパルス応答の同時成分m(t0)のデータを修正することは、例えば請求項4に記載したように、物体の変位に依存するインパルス応答の同時成分k(t0)に対する修正値Δk及び物体の変位に依存するインパルス応答の同時成分m(t0)に対する修正値Δmを、再現した動的剛性と元の動的剛性の偏差が最小となるように最小二乗法により各々求め、求めた修正値Δk,Δmを用いて同時成分k(t0),m(t0)のデータを修正することによって実現できる。
本願発明者は、本発明の効果を確認するために、図2〜図4に「時間遅れ成分=5項」と表記して示す動的剛性(物体の変位に依存するインパルス応答の時間遅れ成分(k(tj))及び物体の速度に依存するインパルス応答の時間遅れ成分(c(tj))における演算対象のデータの個数を5個に制限して再現した動的剛性)の実部と元の動的剛性の実部の偏差に基づき、該偏差が最小となるように、物体の変位に依存するインパルス応答の同時成分k(t0)に対する修正値Δk及び物体の変位に依存するインパルス応答の同時成分m(t0)に対する修正値Δmを最小二乗法により各々求め、求めた修正値Δk,Δmを用いて同時成分k(t0),m(t0)のデータを修正修正し、修正後のインパルス応答のデータを用いて上記と同様に演算対象のデータの個数を制限して動的剛性を再現する演算を行い、元の動的剛性及び修正前の動的剛性と比較した。結果を図5〜図7に示す。
図5〜図7からも明らかなように、修正後のインパルス応答から再現した動的剛性の実部は、減衰率h1=10%,20%の条件下でも元の動的剛性(図ではデータ点として示す)に精度良く一致しており、本発明を適用し、インパルス応答を表すデータのうち、時刻t0に相当する同時成分k(t0),c(t0),m(t0)のデータと、時刻t1〜tn'の期間に相当するn'個の時間遅れ成分k(tj),c(tj)(但しn'<n、tn'<Δt・n')のデータを用いて物体の動的剛性を再現する演算を行い、再現した動的剛性と元の動的剛性の偏差に基づいて、物体の変位に依存するインパルス応答の同時成分k(t0)データ及び物体の加速度に依存するインパルス応答の同時成分m(t0)のデータを修正することで、精度の良いインパルス応答が得られることが理解できる。
また、請求項4記載の発明において、物体の変位に依存するインパルス応答の同時成分k(t0)に対する修正値Δk及び前記物体の変位に依存するインパルス応答の同時成分m(t0)に対する修正値Δmは、例えば請求項5に記載したように、
Figure 0004369333
上記(5)式を用いて各々求め(但しS'(ω)は時刻t=t0〜tnの期間のインパルス応答を表すデータのうち、時刻t0に相当する同時成分k(t0),c(t0),m(t0)のデータと、時刻t1〜tn'の期間に相当するn'個の時間遅れ成分k(tj),c(tj)(但しn'<n、tn'<Δt・n')のデータを用いて再現した物体の動的剛性を表す)ることができ、求めた修正値Δk,Δmを用いて同時成分k(t0),m(t0)のデータを修正することができる。
また、請求項2乃至請求項4の何れかに記載の発明において、物体の時刻歴応答解析には、例えば請求項6に記載したように、求めた時刻t=t0〜tnの期間のインパルス応答を表すデータのうち、時刻t0に相当する同時成分k(t0),c(t0),m(t0)のデータと、時刻t1〜tn'の期間に相当するn'個の時間遅れ成分k(tj),c(tj)(但しn'<n、tn'<Δt・n')のデータであって、再現した動的剛性と元の動的剛性の偏差に基づいて、前記物体の変位に依存するインパルス応答の同時成分k(t0)のデータ及び物体の加速度に依存するインパルス応答の同時成分m(t0)のデータを修正したデータを用いることが好ましい。上記のインパルス応答のデータは、本発明が適用されることで、元の動的剛性に精度良く一致するデータであるので、このデータを用いることで時刻歴応答解析を高精度に行うことができる。
また、請求項1乃至請求項6の何れか1項記載の発明において、例えば請求項7に記載したように、前記物体としては地盤を、前記外力としては地震動を適用することができ、この場合、求めた地盤のインパルス応答は、例えば建物の時刻歴地震応答解析に用いることができる。
請求項9記載の発明に係るインパルス応答演算装置は、物体を振動させる外力と前記物体の挙動との関係を周波数領域で表す動的剛性を、前記関係を時間領域で表すインパルス応答へ変換するインパルス応答演算装置であって、前記動的剛性のデータから、前記振動がN種(N=n+1)の周波数のときの動的剛性の値を表すN個の複素データD(ω1),…,D(ωN)を抽出する抽出手段と、物体の変位に依存するインパルス応答の同時成分をk(t0)、物体の速度に依存するインパルス応答の同時成分をc(t0)、物体の加速度に依存するインパルス応答の同時成分をm(t0)、物体の変位に依存するインパルス応答のΔt刻みの時間遅れ成分をk(tj)、物体の速度に依存するインパルス応答のΔt刻みの時間遅れ成分をc(tj)(但し、jは自然数でtj=Δt・j)としたときに、前記抽出手段によって抽出されたN個の複素データを、
Figure 0004369333
上記(3)式及び(4)式へ代入して演算することで、前記インパルス応答を求める演算手段と、前記演算手段によって求められた時刻t=t0〜tnの期間のインパルス応答を表すデータのうち、時刻t0に相当する同時成分k(t0),c(t0),m(t0)のデータと、時刻t1〜tn'の期間に相当するn'個の時間遅れ成分k(tj),c(tj)(但しn'<n、tn'<Δt・n')のデータを用いて物体の動的剛性を再現する演算を行う動的剛性再現手段と、前記動的剛性再現手段によって再現された動的剛性と元の動的剛性の偏差に基づいて、前記インパルス応答を表すデータのうち物体の変位に依存するインパルス応答の同時成分k(t0)のデータ及び物体の加速度に依存するインパルス応答の同時成分m(t0)のデータを修正する修正手段と、を備えたことを特徴としているので、請求項2記載の発明と同様に、物体を振動させる外力と物体の挙動との関係を周波数領域で表す動的剛性に、比較的大きな履歴減衰成分が含まれている場合にも、前記動的剛性から、前記外力と物体の挙動との関係を時間領域で表すインパルス応答を精度良く得ることができる。
請求項9記載の発明に係るインパルス応答演算プログラムは、コンピュータを、物体を振動させる外力と前記物体の挙動との関係を周波数領域で表す動的剛性を、前記関係を時間領域で表すインパルス応答へ変換するインパルス応答演算装置として機能させるインパルス応答演算プログラムであって、前記コンピュータを、前記動的剛性のデータから、前記振動がN種(N=n+1)の周波数のときの動的剛性の値を表すN個の複素データD(ω1),…,D(ωN)を抽出する抽出手段、物体の変位に依存するインパルス応答の同時成分をk(t0)、物体の速度に依存するインパルス応答の同時成分をc(t0)、物体の加速度に依存するインパルス応答の同時成分をm(t0)、物体の変位に依存するインパルス応答のΔt刻みの時間遅れ成分をk(tj)、物体の速度に依存するインパルス応答のΔt刻みの時間遅れ成分をc(tj)(但し、jは自然数でtj=Δt・j)としたときに、前記抽出手段によって抽出されたN個の複素データを、
Figure 0004369333
上記(3)式及び(4)式へ代入して演算することで、前記インパルス応答を求める演算手段、前記演算手段によって求められた時刻t=t0〜tnの期間のインパルス応答を表すデータのうち、時刻t0に相当する同時成分k(t0),c(t0),m(t0)のデータと、時刻t1〜tn'の期間に相当するn'個の時間遅れ成分k(tj),c(tj)(但しn'<n、tn'<Δt・n')のデータを用いて物体の動的剛性を再現する演算を行う動的剛性再現手段、及び、前記動的剛性再現手段によって再現された動的剛性と元の動的剛性の偏差に基づいて、前記インパルス応答を表すデータのうち物体の変位に依存するインパルス応答の同時成分k(t0)のデータ及び物体の加速度に依存するインパルス応答の同時成分m(t0)のデータを修正する修正手段として機能させることを特徴としている。
請求項9記載の発明に係るインパルス応答演算プログラムは、コンピュータを、上記の抽出手段、演算手段、動的剛性再現手段及び修正手段として機能させるためのプログラムであるので、コンピュータが請求項9記載の発明に係るインパルス応答演算プログラムを実行することにより、コンピュータが請求項8に記載のインパルス応答演算装置として機能することになり、請求項8記載の発明と同様に、物体を振動させる外力と物体の挙動との関係を周波数領域で表す動的剛性に、比較的大きな履歴減衰成分が含まれている場合にも、前記動的剛性から、前記外力と物体の挙動との関係を時間領域で表すインパルス応答を精度良く得ることができる。
以上説明したように本発明は、インパルス応答を規定する数式として、同時成分と時間遅れ成分から成る剛性項と、同時成分と時間遅れ成分から成る減衰項と、少なくとも同時成分を含んで成る質量項を含む数式を用い、物体の振動が各周波数のときの動的剛性の値に基づいてインパルス応答を求めた後に、求めた時刻t=t0〜tnの期間のインパルス応答を表すデータのうち、時刻t0に相当する同時成分k(t0),c(t0),m(t0)のデータと、時刻t1〜tn'の期間に相当するn'個の時間遅れ成分k(tj),c(tj)(但しn'<n、tn'<Δt・n')のデータを用いて物体の動的剛性を再現する演算を行い、再現した動的剛性と元の動的剛性の偏差に基づいて、インパルス応答を表すデータのうち剛性項の同時成分のデータ及び記質量項の同時成分のデータを修正するようにしたので、物体を振動させる外力と物体の挙動との関係を周波数領域で表す動的剛性に、比較的大きな履歴減衰成分が含まれている場合にも、前記動的剛性から、前記外力と物体の挙動との関係を時間領域で表すインパルス応答を精度良く得ることができる、という優れた効果を有する。
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。図8には本発明を適用可能なパーソナル・コンピュータ(PC)10が示されている。PC10は、CPU10A、ROM10B、RAM10C及び入出力ポート10Dが、データバス、制御バス、アドレスバス等から成るバス10Eを介して互いに接続されて構成されている。また入出力ポート10Dには、各種の入出力機器として、CRT又はLCDから成るディスプレイ12、キーボード14、マウス16、プリンタ18、ハードディスクドライブ(HDD)20、CD−ROM22からの情報の読み出しを行うCD−ROMドライブ24が各々接続されている。
PC10のHDD20には、後述する地震応答解析処理を行うための地震応答解析プログラムがインストールされている。この地震応答解析プログラムは、請求項9記載の発明に係るインパルス応答演算プログラムを含んで構成されている。地震応答解析プログラムをPC10にインストール(移入)するには幾つかの方法があるが、例えば地震応答解析プログラムをセットアッププログラムと共にCD−ROM22に記録しておき、該CD−ROM22をCD−ROMドライブ24にセットし、CPU10Aに対して前記セットアッププログラムの実行を指示すれば、CD−ROM22から地震応答解析プログラムが順に読み出され、読み出された地震応答解析プログラムがHDD20に順に書き込まれることで、インパルス応答演算プログラムを含む地震応答解析プログラムのインストールが行われる。PC10は、CPU10Aが地震応答解析プログラム(インパルス応答演算プログラム)を実行することで、請求項8記載の発明に係るインパルス応答演算装置として機能する。
なお、請求項7に記載のコンピュータはPC10に限られるものではなく、例えばワークステーションであってもよいし、汎用の大型コンピュータであってもよい。
次に本実施形態の作用として、解析対象の建物の地震応答解析の実行を所望しているオペレータによってキーボード14又はマウス16を介して地震応答解析プログラムの実行が指示されることで、PC10のCPU10Aで実行される地震応答解析処理について、図9のフローチャートを参照して説明する。
ステップ100では、解析対象の建物の建設予定地における地盤(演算対象の地盤)の動的剛性を演算するための演算条件データを取得する。この演算条件データとしては、例えば図1(A)に示したように演算対象の地盤の地層構成、各地層の層厚H、地震波の伝播速度Vs、ポアソン比ν、密度ρ、減衰率h、解析対象の建物の基礎の形状やサイズ等のデータが挙げられる。これらのデータのうち、演算対象の地盤に関する各種データは、例えば解析対象の建物の建設予定地でボーリングを行い、このボーリングによって得られたサンプルに対して所定の試験を行うことで求めることができる。また、演算条件データは、サンプルに対して所定の試験を行うことで得られたデータをそのまま用いることに限られるものではなく、例えば比較的強い地震が起こった後の余震に対する解析対象の建物の挙動を解析したい等の場合には、比較的強い地震により演算対象の地盤の特性が変化することを想定し、所定の試験によって得られたデータに対し、特性変化に相当する値の変更を加えたデータを演算条件データとして用いてもよい。ステップ100では、上記の演算条件データをキーボード14を介してオペレータに入力させたり、予め演算条件データが記録された記録媒体(例えばCD−ROM等)から読み出すことによって取得し、取得した演算条件データをメモリ(RAM10C)又はHDD20に一旦記憶させる。
次のステップ102では、ステップ100で取得した演算条件データをメモリ又はHDD20から読み出し、読み出した演算条件データに基づいて、演算対象の地盤の動的剛性を、例えば薄層要素法等の演算方法を適用して演算し、演算によって得られた動的剛性のデータをメモリ又はHDD20に一旦記憶させる。これにより、例として図1(B),(C)に示すように、地盤を振動させる外力(地震動)と地盤の挙動との関係を周波数領域で表す動的剛性のデータを得ることができる。なお、動的剛性のデータは演算によって求めることに限られるものではなく、実験を行って求めることも可能である。
またステップ104では、ステップ102の演算によって得られた演算対象の地盤の動的剛性のデータをメモリ又はHDD20から読み出し、読み出した動的剛性のデータから、予め設定された演算対象の周波数範囲内のN種の周波数(N種の角振動数ω1,…,ωN)における動的剛性の値を表すN個の複素データD(ω1),…,D(ωN)を各々抽出し、抽出した複素データをメモリ又はHDD20に記憶させる。このステップ104は本発明に係る抽出手段に対応している。なお、演算対象の周波数範囲としては、例えば0〜20(Hz)の範囲を適用することができる。また、複素データの抽出を行うN種の周波数は、例えば演算対象の周波数範囲の上限に相当する周波数(例えば演算対象の周波数範囲が0〜20(Hz)であれば、上限周波数である20(Hz))を含むように設定することができる。また、地盤の動的剛性のデータから抽出した複素データはインパルス応答の演算に用いられ、この演算により時刻t=0及び時刻t=Δt・j(j=1,2,…,n)の各時刻における地盤のインパルス応答を表すインパルス応答データが得られるが、得られるインパルス応答データの個数は演算に用いる複素データの個数に応じて定まり(すなわちjの最大値nは複素データの個数−1(=N−1))、得られるインパルス応答データによって表される地盤のインパルス応答の時刻範囲も演算に用いる複素データの個数に応じて定まる(例えば複素データの個数が21個、Δt=0.05秒とすると、tn=Δt・jmax=0.05×20=1秒となり、時刻t=0〜1秒の時刻範囲の地盤のインパルス応答を表す21個のインパルス応答データが得られる)ことになるので、地盤の動的剛性から抽出する複素データの個数(複素データの抽出を行う周波数の種類数)は、地盤のインパルス応答を算出すべき時刻範囲の長さも勘案して予め定めておくことができる。
次のステップ106では、地震動と地盤の挙動との関係を周波数領域で表す動的剛性を、地震動と地盤の挙動との関係を時間領域で表すインパルス応答へ変換するための本発明に係る連立方程式(2N×2Nの係数マトリクスを有する前出の(3)式及び(4)式)をHDD20から読み出し、読み出した連立方程式に、ステップ104で抽出したN個の複素データD(ω1),…,D(ωN)を代入し、この連立方程式の解を求めることで、地盤のインパルス応答を表すインパルス応答データを、予め設定されたΔt刻みで演算する。このステップ106は本発明に係る演算手段に対応している。この演算により、地盤のインパルス応答を表すインパルス応答データとして、地盤の変位に依存するインパルス応答の同時成分k(t0)、地盤の速度に依存するインパルス応答の同時成分c(t0)、地盤の加速度に依存するインパルス応答の同時成分m(t0)のデータが得られると共に、地盤の変位に依存するインパルス応答の時間遅れ成分k(tj)のデータがΔt刻みでn個(n=N−1)得られ、地盤の速度に依存するインパルス応答の時間遅れ成分c(tj)のデータがΔt刻みでn−1個得られることになる。そして、得られたインパルス応答データはメモリ又はHDD20に一旦記憶される。
ステップ108では、ステップ106の演算によって得られたインパルス応答データのうち、時刻t0に相当する同時成分k(t0),c(t0),m(t0)のデータと、時刻t1〜tn'の期間に相当する予め定められたn'個の時間遅れ成分k(tj),c(tj)(但しn'<n、tn'<Δt・n')のデータを演算対象として各々選択する。そしてステップ108では、選択した時間遅れ成分のデータとインパルス応答の同時成分k(t0),c(t0),m(t0)のデータをメモリ又はHDD20から読み出し、読み出したデータが表す地盤のインパルス応答を周波数領域へ再変換することで、これらのデータが表す地盤のインパルス応答に対応する地盤の動的剛性を表すデータを求め、求めたデータをメモリ又はHDD20に一旦記憶させる。なお、ステップ108は本発明に係る動的剛性再現手段に対応している。
次のステップ110では、ステップ108の演算によって得られた地盤の動的剛性(再現された動的剛性)のデータをメモリ又はHDD20から読み出すと共に、先のステップ102の演算によって得られた動的剛性(以下、これを「元の動的剛性」と称する)のデータをメモリ又はHDD20から読み出し、再現した動的剛性の実部の誤差を最小とする修正値Δk,Δmを演算する。
ここで、動的剛性の再現に用いたインパルス応答のデータに対し、剛性項の同時成分k(t0)を演算した修正値Δkで修正する(k'(t0)=k(t0)+Δk)と共に、質量項の同時成分m(t0)を演算した修正値Δmで修正した(m'(t0)=m(t0)+Δm)後に、上記の再現演算を行うことで得られる動的剛性の再現値S'mod(ω)は次の(6)式で表される。
S'mod(ω)=S'(ω)−ω2・Δm+Δk …(6)
但し、動的剛性S'(ω)はステップ106の演算によって得られたインパルス応答データのうち、剛性項の時間遅れ成分のデータk(tj)及び減衰項の時間遅れ成分のデータc(tj)から選択した時刻t1を先頭とするn'個のデータと、インパルス応答の同時成分k(t0),c(t0),m(t0)のデータから再現した動的剛性であり、次の(7)式で表される。
Figure 0004369333
また、動的剛性のデータから抽出したN個の複素データD(ωi)(i=1〜N)と動的剛性の再現値S'mod(ω)の誤差の二乗和Sumは次の(8)式で表される。そして、次の(9)式の停留条件より、元の動的剛性の実部に対し再現した動的剛性の実部の誤差を最小とする修正値Δk,Δmを最小二乗法によって求める演算式として、前出の(5)式が導出される。
Figure 0004369333
ステップ110では、動的剛性のデータから抽出したN個の複素データD(ωi)と、再現された動的剛性S'(ω)のデータから抽出したN個の複素データS'(ωi)を前出の(5)式に各々代入することで、修正値Δk,Δmを演算する。
次のステップ112では、ステップ110で演算した修正値Δk,Δmを用いてインパルス応答のデータのうち剛性項の同時成分k(t0)を修正値Δkで修正すると共に、質量項の同時成分m(t0)を修正値Δmで修正する(次の(10)式参照)。
k'(t0)=k(t0)+Δk m'(t0)=m(t0)+Δm …(10)
なお、上述したステップ110,112は本発明に係る修正手段に対応している。
そしてステップ114では、メモリ又はHDD20に記憶されているインパルス応答データのうち、予め定められた選択個数n'個の時間遅れ成分のデータ、ステップ112で修正した剛性項の同時成分k'(t0)及び質量項の同時成分m'(t0)のデータ及び減衰項の同時成分のデータc(t0)をメモリ又はHDD20から読み出し、読み出したインパルス応答データを用いて解析対象の建物の時刻歴地震応答解析を行う。この時刻歴地震応答解析に用いるインパルス応答データは、本発明を適用して演算及び修正したデータであるので、演算対象の地盤の動的剛性が、比較的大きな履歴減衰成分を含んでいる場合にも、地震動と地盤の挙動との関係を時間領域で精度良く表すデータであり、解析対象の建物の時刻歴地震応答解析を精度良く行うことができる。
なお、上記ではインパルス応答データの時間遅れ成分のデータから予め定められた選択個数n'のデータを選択して、動的剛性の再現演算や時刻歴応答解析に用いる態様を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば時間遅れ成分のデータの選択個数を最小値から順次増加させながら動的剛性の再現演算及び元の動的剛性との一致度の演算を繰り返し、最初に一致度が所定値以上となった時点での選択個数を時間遅れ成分のデータの最終的な選択個数として設定するようにしてもよい。また、時間遅れ成分のデータの選択個数を最大値から最小値へ又は最小値から最大値へ変更しながら、動的剛性の演算及び一致度の演算を繰り返すことで、時間遅れ成分のデータの選択個数と一致度の関係を求め、求めた関係において一致度が所定値以上となる最小の選択個数を、時間遅れ成分のデータの最終的な選択個数として設定するようにしてもよい。
また、上記では予め定められた個数Nの複素データを演算対象の動的剛性のデータから抽出する例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば演算対象の動的剛性が周波数の変化に対して複雑に変化する特性を有している等の場合、時間遅れ成分のデータの選択個数を変更しても、再現された動的剛性と元の動的剛性との一致度が所定値以上にならない(すなわち、本発明を適用して得られたインパルス応答データの精度が不足している)ことも生じ得るので、このような条件を満たした場合には、演算対象の動的剛性のデータから抽出する複素データの個数を増加させた後に、インパルス応答(データ)の演算を再度行うようにしてもよい。
また、上記では物体のインパルス応答を用いて反力F(t)を規定する(1)式においてN=n+1としていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、N>n+1とし、未知数の数より方程式の数が多い連立方程式を立て、最小二乗法等を適用して解くことでインパルス応答を求めることも可能である。
更に、上記では物体のインパルス応答を規定する数式として、減衰項の時間遅れ成分(第4項)をj=1〜(n-1)の期間に亘って積算すると共に、剛性項の時間遅れ成分(第5項)をj=1〜nの期間に亘って積算する(1)式を用いていたが、これに限定されるものではなく、物体のインパルス応答を規定する数式として、以下の(10)式に示すように、減衰項の時間遅れ成分と剛性項の時間遅れ成分の積算期間を逆にした数式を用い、この(10)式と、(10)式から導出される物体の動的剛性を規定する次の(11)式に基づいて、物体のインパルス応答を求めるようにしてもよい。
Figure 0004369333
また、上記では物体のインパルス応答を規定する数式として、同時成分(第1項)のみから成る質量項を含む(1)式を用いていたが、これに限定されるものではなく、物体のインパルス応答を規定する数式として、以下の(12)式に示すように、同時成分(第1項)と時間遅れ成分(第4項)から成る質量項を含む数式を用い(なお、(12)式において、2N=n1+n2+n3+3)、この(12)式と、(12)式から導出される物体の動的剛性を規定する次の(13)式に基づいて、物体のインパルス応答を求めるようにしてもよい。
Figure 0004369333
また、上記では地盤の動的剛性から本発明を適用して地盤のインパルス応答を求め、求めたインパルス応答を解析対象の建物の時刻歴地震応答解析に用いる例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば建物の制振装置として用いられている粘性ダンパー等の他の物体の動的剛性をインパルス応答へ変換する際に本発明を適用することも可能であることは言うまでもない。
次に、本発明の効果を確認するために本願発明者が実施した解析検討の結果について説明する。この解析検討では、建屋モデルに対する地震応答解析として、地盤の動的剛性をそのまま用いた周波数応答解析と、上記の動的剛性に非特許文献1に記載の技術を適用することで得られたインパルス応答を修正することなく用いた時刻歴応答解析(修正無し時刻歴応答解析と、上記のインパルス応答に本発明を適用して修正することで得られた修正インパルス応答を用いた時刻歴応答解析(修正有り時刻歴応答解析)を各々行い、解析結果を比較した。
なお、この解析検討では、建屋モデルは底面50×50m、質量67,000tの構造物とした。建屋モデルの諸定数を図10に示す。また、地盤は図1(A)に示す2層地盤(減衰率h1=20%)とし、入力地震動はEl Centro1940NS(時間刻み0.0025秒、継続時間10.24秒)の最大加速度300Galとして地表面で定義した。また、各応答解析結果の比較を可能とするため、建屋は非減衰(地震動に対する建屋の挙動が線形)と仮定した。更に、周波数応答解析は前出の(7)式により行い、解析範囲は0〜20Hz、解析周波数刻み(Δf)は0.0977Hzとした。地盤の動的剛性は非連成の水平自由度と回転自由度を有する2×2の対角マトリクスである。
本解析検討では建屋を非減衰としているため、各応答解析による解析精度は、地盤の動的剛性をそのまま用いる周波数応答解析が最も高くなり、周波数応答解析による解析結果に対する個々の時刻歴応答解析による解析結果の偏差は、応答解析に用いたインパルス応答の精度に起因しているとみなすことができる。各応答解析による解析結果として、図11には建屋の最大応答値(最大加速度及び最大せん断力)を、図12には建屋頂部の加速度伝達関数を各々示す。図11、12から明らかなように、本発明を適用した修正有り時刻歴応答解析は、従来の修正無し時刻歴応答解析に比較して、周波数応答解析による解析結果により近い良好な解析結果が得られており、本発明を適用してインパルス応答を修正することで、インパルス応答の精度が向上することが理解できる。
(A)は地盤の動的剛性の演算条件の一例を示すイメージ図、(B)及び(C)は(A)の演算条件に従い演算によって求めた地盤の動的剛性の一例を示す線図である。 減衰率h1=0%の条件で演算した地盤の動的剛性からインパルス応答を求め、求めたインパルス応答を周波数領域へ再変換することで再現した動的剛性の特性を各々示す線図である。 減衰率h1=10%の条件で演算した地盤の動的剛性からインパルス応答を求め、求めたインパルス応答を周波数領域へ再変換することで再現した動的剛性の特性を各々示す線図である。 減衰率h1=20%の条件で演算した地盤の動的剛性からインパルス応答を求め、求めたインパルス応答を周波数領域へ再変換することで再現した動的剛性の特性を各々示す線図である。 減衰率h1=0%の条件において、本発明に係る修正を行ったインパルス応答から再現した動的剛性を示す線図である。 減衰率h1=10%の条件において、本発明に係る修正を行ったインパルス応答から再現した動的剛性を示す線図である。 減衰率h1=20%の条件において、本発明に係る修正を行ったインパルス応答から再現した動的剛性を示す線図である。 本実施形態に係るPCの概略構成を示すブロック図である。 地震応答解析処理の内容を示すフローチャートである。 本願発明者が実施した解析検討における建屋モデルの諸定数を示す概念図である。 本願発明者が実施した解析検討の結果(建屋の最大応答値)を示す線図である。 本願発明者が実施した解析検討の結果(建屋の頂部の加速度伝達関数)を示す線図である。
符号の説明
10 PC
12 ディスプレイ
14 キーボード
16 マウス
20 HDD

Claims (9)

  1. 物体を振動させる外力と前記物体の挙動との関係を周波数領域で表す動的剛性を、前記関係を時間領域で表すインパルス応答へ変換するにあたり、
    前記インパルス応答を規定する数式として、前記物体の変位に依存し同時成分と時間遅れ成分から成る剛性項と、前記物体の速度に依存し同時成分と時間遅れ成分から成る減衰項と、前記物体の加速度に依存し少なくとも同時成分を含んで成る質量項を含む数式を用い、前記振動が各周波数のときの前記動的剛性の値に基づいて前記インパルス応答を求めた後に、
    求めた時刻t=t0〜tnの期間のインパルス応答を表すデータのうち、時刻t0に相当する同時成分のデータと、時刻t1〜tn'の期間に相当するn'個の時間遅れ成分(但しn'<n、tn'<Δt・n')のデータを用いて物体の動的剛性を再現する演算を行い、
    再現した動的剛性と元の動的剛性の偏差に基づいて、前記インパルス応答を表すデータのうち前記剛性項の同時成分のデータ及び前記質量項の同時成分のデータを修正することを特徴とするインパルス応答演算方法。
  2. 物体を振動させる外力と物体の挙動との関係を周波数領域で表す動的剛性を、前記関係を時間領域で表すインパルス応答へ変換するにあたり、
    物体の変位に依存するインパルス応答の同時成分をk(t0)、物体の速度に依存するインパルス応答の同時成分をc(t0)、物体の加速度に依存するインパルス応答の同時成分をm(t0)、物体の変位に依存するインパルス応答のΔt刻みの時間遅れ成分をk(tj)、物体の速度に依存するインパルス応答のΔt刻みの時間遅れ成分をc(tj)(但し、jは自然数でtj=Δt・j)、時間領域での物体の変位をu(t)、速度をu'(t)、加速度をu"(t)としたときに、前記インパルス応答を用いて反力F(t)を規定する数式として、
    Figure 0004369333
    上記(1)式を用い、前記振動がN種(N=n+1)の周波数のときの前記動的剛性の値に基づいて前記インパルス応答を求めた後に、
    求めた時刻t=t0〜tnの期間のインパルス応答を表すデータのうち、時刻t0に相当する同時成分k(t0),c(t0),m(t0)のデータと、時刻t1〜tn'の期間に相当するn'個の時間遅れ成分k(tj),c(tj)(但しn'<n、tn'<Δt・n')のデータを用いて物体の動的剛性を再現する演算を行い、
    再現した動的剛性と元の動的剛性の偏差に基づいて、前記インパルス応答を表すデータのうち物体の変位に依存するインパルス応答の同時成分k(t0)のデータ及び物体の加速度に依存するインパルス応答の同時成分m(t0)のデータを修正することを特徴とするインパルス応答演算方法。
  3. 前記振動の角振動数をωとしたときに、前記(1)式に基づき、前記物体の動的剛性S(ω)を規定する数式として、
    Figure 0004369333
    上記(2)式を用い、物体の動的剛性のデータから、前記振動がN種の周波数のときの動的剛性の値を表すN個の複素データD(ω1),…,D(ωN)を抽出し、抽出したN個の複素データを
    Figure 0004369333
    前記(1)式及び(2)式から導出される上記(3)式及び(4)式へ代入して演算することで、前記インパルス応答を求めることを特徴とする請求項2記載のインパルス応答演算方法。
  4. 前記物体の変位に依存するインパルス応答の同時成分k(t0)に対する修正値Δk及び前記物体の変位に依存するインパルス応答の同時成分m(t0)に対する修正値Δmを、前記再現した動的剛性と元の動的剛性の偏差が最小となるように最小二乗法により各々求め、求めた修正値Δk,Δmを用いて同時成分k(t0),m(t0)のデータを修正することを特徴とする請求項2記載のインパルス応答演算方法。
  5. 前記物体の変位に依存するインパルス応答の同時成分k(t0)に対する修正値Δk及び前記物体の変位に依存するインパルス応答の同時成分m(t0)に対する修正値Δmを、
    Figure 0004369333
    上記(5)式を用いて各々求め(但しS'(ω)は時刻t=t0〜tnの期間のインパルス応答を表すデータのうち、時刻t0に相当する同時成分k(t0),c(t0),m(t0)のデータと、時刻t1〜tn'の期間に相当するn'個の時間遅れ成分k(tj),c(tj)(但しn'<n、tn'<Δt・n')のデータを用いて再現した前記物体の動的剛性を表す)、求めた修正値Δk,Δmを用いて同時成分k(t0),m(t0)のデータを修正することを特徴とする請求項4記載のインパルス応答演算方法。
  6. 前記求めた時刻t=t0〜tnの期間のインパルス応答を表すデータのうち、時刻t0に相当する同時成分k(t0),c(t0),m(t0)のデータと、時刻t1〜tn'の期間に相当するn'個の時間遅れ成分k(tj),c(tj)(但しn'<n、tn'<Δt・n')のデータであって、再現した動的剛性と元の動的剛性の偏差に基づいて、前記物体の変位に依存するインパルス応答の同時成分k(t0)のデータ及び物体の加速度に依存するインパルス応答の同時成分m(t0)のデータを修正したデータが、前記物体の時刻歴応答解析に用いられることを特徴とする請求項2乃至請求項4の何れか1項記載のインパルス応答演算方法。
  7. 前記物体は地盤、前記外力は地震動であり、求めた地盤のインパルス応答は建物の時刻歴地震応答解析に用いられることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項記載のインパルス応答演算方法。
  8. 物体を振動させる外力と前記物体の挙動との関係を周波数領域で表す動的剛性を、前記関係を時間領域で表すインパルス応答へ変換するインパルス応答演算装置であって、
    前記動的剛性のデータから、前記振動がN種(N=n+1)の周波数のときの動的剛性の値を表すN個の複素データD(ω1),…,D(ωN)を抽出する抽出手段と、
    物体の変位に依存するインパルス応答の同時成分をk(t0)、物体の速度に依存するインパルス応答の同時成分をc(t0)、物体の加速度に依存するインパルス応答の同時成分をm(t0)、物体の変位に依存するインパルス応答のΔt刻みの時間遅れ成分をk(tj)、物体の速度に依存するインパルス応答のΔt刻みの時間遅れ成分をc(tj)(但し、jは自然数でtj=Δt・j)としたときに、前記抽出手段によって抽出されたN個の複素データを、
    Figure 0004369333
    上記(3)式及び(4)式へ代入して演算することで、前記インパルス応答を求める演算手段と、
    前記演算手段によって求められた時刻t=t0〜tnの期間のインパルス応答を表すデータのうち、時刻t0に相当する同時成分k(t0),c(t0),m(t0)のデータと、時刻t1〜tn'の期間に相当するn'個の時間遅れ成分k(tj),c(tj)(但しn'<n、tn'<Δt・n')のデータを用いて物体の動的剛性を再現する演算を行う動的剛性再現手段と、
    前記動的剛性再現手段によって再現された動的剛性と元の動的剛性の偏差に基づいて、前記インパルス応答を表すデータのうち物体の変位に依存するインパルス応答の同時成分k(t0)のデータ及び物体の加速度に依存するインパルス応答の同時成分m(t0)のデータを修正する修正手段と、
    を備えたことを特徴とするインパルス応答演算装置。
  9. コンピュータを、物体を振動させる外力と前記物体の挙動との関係を周波数領域で表す動的剛性を、前記関係を時間領域で表すインパルス応答へ変換するインパルス応答演算装置として機能させるインパルス応答演算プログラムであって、
    前記コンピュータを、
    前記動的剛性のデータから、前記振動がN種(N=n+1)の周波数のときの動的剛性の値を表すN個の複素データD(ω1),…,D(ωN)を抽出する抽出手段、
    物体の変位に依存するインパルス応答の同時成分をk(t0)、物体の速度に依存するインパルス応答の同時成分をc(t0)、物体の加速度に依存するインパルス応答の同時成分をm(t0)、物体の変位に依存するインパルス応答のΔt刻みの時間遅れ成分をk(tj)、物体の速度に依存するインパルス応答のΔt刻みの時間遅れ成分をc(tj)(但し、jは自然数でtj=Δt・j)としたときに、前記抽出手段によって抽出されたN個の複素データを、
    Figure 0004369333
    上記(3)式及び(4)式へ代入して演算することで、前記インパルス応答を求める演算手段、
    前記演算手段によって求められた時刻t=t0〜tnの期間のインパルス応答を表すデータのうち、時刻t0に相当する同時成分k(t0),c(t0),m(t0)のデータと、時刻t1〜tn'の期間に相当するn'個の時間遅れ成分k(tj),c(tj)(但しn'<n、tn'<Δt・n')のデータを用いて物体の動的剛性を再現する演算を行う動的剛性再現手段、
    及び、前記動的剛性再現手段によって再現された動的剛性と元の動的剛性の偏差に基づいて、前記インパルス応答を表すデータのうち物体の変位に依存するインパルス応答の同時成分k(t0)のデータ及び物体の加速度に依存するインパルス応答の同時成分m(t0)のデータを修正する修正手段
    として機能させることを特徴とするインパルス応答演算プログラム。
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