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JP4375607B2 - クロストリジウム・ビフェルメンタンスdph−1株に特異的なオリゴヌクレオチド及びその利用 - Google Patents
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JP4375607B2 - クロストリジウム・ビフェルメンタンスdph−1株に特異的なオリゴヌクレオチド及びその利用 - Google Patents

クロストリジウム・ビフェルメンタンスdph−1株に特異的なオリゴヌクレオチド及びその利用 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、クロストリジウム・ビフェルメンタンスDPH-1株に特異的なオリゴヌクレオチド、及び、クロストリジウム・ビフェルメンタンスDPH-1株の検出方法、定量化方法等に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、地下水や土壌などが重金属や有機化合物などによって汚染されていることが問題となっている。なかでも特に問題となっているのが、毒性が指摘され、水質汚濁防止法等により有害物質として規制されているトリクロロエチレン(TCE)やテトラクロロエチレン(PCE)などの有機塩素化合物による汚染である。これらの有機塩素化合物はクリーニング用洗浄溶剤や金属部品の脱脂洗浄、製品の原料などとして30年以上前から諸産業で有用な溶剤として用いられてきている。現在までに、PCE、TCEは以下のような毒性を持つことが分かっている。急性毒性としては中枢神経の抑圧、皮膚障害、腎臓や肝臓の障害など、微量を長期間摂取した場合の慢性毒性としては指の麻痺、呼吸器や心臓への障害、視覚・聴覚障害などである。また、発がん性も指摘されており、報告されている癌への関与は肝臓ガン、食道ガン、子宮頸部ガン、非ホジキンリンパ腫などである。また、PCE、TCEは土壌中に浸出すると、微生物の働きにより、cis-1,2-ジクロロエチレン(cDCE)へ分解されることも分かってきている。
【0003】
PCEの人工的な浄化法としては、物理化学的手法と生物学的手法の2種類が考えられる。物理化学的手法では、PCEの揮発しやすいという性質を活かした「土壌ガス吸引技術」や「地下水揚水曝気技術」が開発・実用化されている。生物学的手法では、微生物などを利用して汚染環境を浄化するバイオレメディエーション(bioremediation)や、植物を利用したファイトレメディエーション(phytoremediation)が考えられている。前者のバイオレメディエーションは、基本的には分解や変換が可能な有機汚染物質が対象となるが、重金属のように金属そのものを除去しなければならない場合には、土壌から抽出して濃縮しなくてはならない。このような場合には後者のファイトレメディエーションの利用が可能である。ファイトレメディエーションで植物体に濃縮された重金属などは、燃焼させた後 、取り出し、最終処分を行う必要がある。
【0004】
バイオレメディエーションは微生物利用の形態から3つの方法に分類される。一つ目の方法はバイオスティミュレーション(biostimulation)と呼ばれる方法で、リンや窒素などの無機栄養塩類やエネルギー源となる基質を添加したり、酸素を吹き込んだりすることによって汚染現場に既に生息している汚染物質分解微生物の分解能力を活性化し浄化するものである。二つ目の方法はバイオオーギュメンテーション(bioaugmentation)と呼ばれるもので、純粋培養した分解微生物や、集積培養した分解微生物群を外部から投入し浄化を行わせる方法である([非特許文献1]参照)。三つ目の方法はナチュラルアテニュエーション(natural attenuaion)と呼ばれるもので、自然の浄化作用で分解されるのに任せて、どの程度分解されていくかをモニタリングするのものである。このようなバイオレメディエーション技術は現在、利用するプロセスにより以下の4種類に分類される。
●固体処理 (Solid phase bioremediation)
汚染した土壌を掘削・山積みにし、空気または酸素を通気しさらに水分や栄養塩類を添加して、土壌中の好気性微生物の活性を上げて浄化する方法。石油汚染の浄化に有効なバイオパイルに代表される。
●スラリー処理 (Slurry phase baioremediation)
汚染土壌に水を加え、スラリー状にし、これを反応層中に移し、分解微生物や栄養物質を添加し、攪拌混合して処理する方法。汚染物質が難分解性でかつ高濃度である場合に適している。
●原位置処理 (In situ bioremediation)
有機物質で汚染された土壌に窒素やリンなどの栄養塩類さらに有機物、酸素、必要に応じて分解微生物を注入して微生物の活性を高める方法。
●バイオリアクター(Bioreactor)
汚染した地下水を汲み上げて地上で反応装置を用いて処理する方法。排水および排ガスの処理に適用できる。
【0005】
バイオレメディエーションを効率よく行なうためには、汚染現場の実態(汚染の広さ、汚染物質の量や濃度、分解菌の有無)を知る必要があり、その結果を踏まえた上で処理方法を決定する必要がある。このようなことから、PCE等の有害物質を分解する分解菌の検出・定量化法の確立が強く求められている。
【0006】
現在、環境中の全微生物からDNAなどを抽出・増幅することができるようになったため、微生物群集の解析には、分子生物学的手法が用いられるようになっている。その基本は16SリボソームDNA(16SrDNA)の解析である。16SrDNAの配列を決定することで、各生物種の情報が得られることから生物系統進化・分類研究の有力な資料となっておりデータベース化されている(Ribosomal Database Project II:http://rdp.cme.msu.edu.html/)。これら分子生物学的手法を用いた微生物群集の解析は、大きくPCR(Polymerase Chain Reaction)法を用いた系統解析と遺伝子解析に基づく特定種の検出という2つの目的に分類される。
前者の系統解析を用いた方法は、環境サンプル中の混合微生物群集の遺伝子断片を増幅・分離した後、クローン化された各塩基配列から環境中に存在する微生物の系統を推察する方法で、アクリルアミドゲルに変性剤で濃度勾配をもたせて電気泳動を行ない分離するPCR-DGGE(Denatureing Gragient Gel Electrophoresis)法、PCR産物を制限酵素処理し、電気泳動によりその断片を検出するT-RFLP(Terminal-Restrictuin Fragment Length Polymorphisms)法、PCR反応自体に定量性を持たせる定量的PCR法などがある(例えば[非特許文献2]等を参照)。
後者の遺伝子解析をもとにした方法には、各微生物の遺伝子配列に特異的なオリゴヌクレオチドを用いて特定種を検出する方法でFISH(Fluorescent in situ Hybridization)法などがある。この方法は、微生物からDNAを抽出することなく微生物のまま蛍光色素などで標識し、観察・検出する方法である。DNAの抽出やPCRの増幅効率による影響を受けずに微生物を観察できる点でPCR法を用いた方法に比べて優れている。
【0007】
そして、従来、PCEを分解する働きを持つ有力な微生物の一つとして、クロストリジウム・ビフェルメンタンスDPH-1株(Clostridium bifermentans DPH-1株)が知られている([非特許文献3]参照)。
【0008】
【非特許文献1】
加来伸夫,渡辺一哉,石油汚染バイオレメディエーションの安全性評価,生物工学会誌,80,527-529(2002)
【非特許文献2】
Katsuji Tani, Masahiro Muneta, Kanji Nakamura, Katsutoshi Shibuya, and Masao Nasu Monitoring of Ralstonia eutropha KT1 in Groundwater in an Experimental Bioaugmentation Field by In Situ PCR Appl. Envrion. Microbiol., 68,412-416,2002
【非特許文献3】
Chang Y. C.Hatsu,K. Takamizawa,Isolation and characterization of a tetrachloroethylene dechlorination bacterium,Clostridium bifermentans DPH-1.,J.Biosci.Bioeng,89,489-491,2000
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本願発明は、上述したクロストリジウム・ビフェルメンタンスDPH-1株に特異的なオリゴヌクレオチドを利用することにより、クロストリジウム・ビフェルメンタンスDPH-1株をより簡易に検出、定量化できる方法を確立することを課題とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、以下の(1)〜(5)に記載した発明が構成される。
(1) 配列表の配列番号1及び配列番号3に記載の塩基配列からなるとともに、PCR法におけるプライマーとして機能することでクロストリジウム・ビフェルメンタンスDPH−1株の16SrDNAの特定領域を選択的に増幅させることのできるオリゴヌクレオチドセット
(2) 検体中に存在するクロストリジウム・ビフェルメンタンスDPH−1株を検出する方法であって、
(1)に記載のオリゴヌクレオチドセットをPCR法におけるプライマーとして機能させることで検体中に存在するDNAの増幅を試みる第1のステップと、
前記第1のステップにおいて検体中のDNA濃度が増加した場合に、その検体中にクロストリジウム・ビフェルメンタンスDPH−1株が存在していると判定する第2のステップと、を有することを特徴とするクロストリジウム・ビフェルメンタンスDPH−1株を検出する方法。
(3) 検体中に存在するクロストリジウム・ビフェルメンタンスDPH−1株を定量化する方法であって、
(1)に記載のオリゴヌクレオチドセットを定量的PCR法におけるプライマーとして機能させることでDPH−1株の初期DNA濃度と閾値を越えたときのサイクル数との相関関係を予め決定しておく第1のステップと、
検体中に存在する微生物のDNAを前記第1のステップで使用したプライマーを用いて定量的PCR法により増幅させてその増幅させたDNAの量が特定の閾値を越えたときのサイクル数を決定する第2のステップと、
検体中に存在するDPH−1株の初期DNA濃度を、前記第1のステップで決定した初期DNA濃度と閾値を越えたときのサイクル数との相関関係に基づいて、前記第2のステップにおいて決定したサイクル数より逆算して求める第3のステップと、を有することを特徴とするクロストリジウム・ビフェルメンタンスDPH−1株を定量化する方法。
(4) 配列表の配列番号8に記載の塩基配列からなるとともに、FISH法におけるプローブとして機能することでクロストリジウム・ビフェルメンタンスDPH−1株の16SrDNAの特定領域に選択的にハイブリダイゼーションすることのできるオリゴヌクレオチド。
(5) 検体中に存在するクロストリジウム・ビフェルメンタンスDPH−1株を検出する方法であって、
(4)に記載のオリゴヌクレオチドをFISH法におけるプローブとして機能させることで検体中に存在するDNAとのハイブリダイゼーションを試みる第1のステップと、
前記第1のステップにおいて検体中に存在するDNAとのハイブリダイゼーションが確認された場合に、その検体中にクロストリジウム・ビフェルメンタンスDPH−1株が存在していると判定する第2のステップと、を有することを特徴とするクロストリジウム・ビフェルメンタンスDPH−1株を検出する方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、「1.リアルタイム定量的PCR法による解析について」、「2.FISH法によるクロストリジウム・ビフェルメンタンスDPH-1株の検出」の2つのセクションに大別して詳細に説明する。
【0012】
1.リアルタイム定量的PCR法による解析について
〔PCR法の原理について〕
まず、PCR法及び定量的PCR法の原理について簡単に説明する。
PCR(Polymerase Chain Reaction)法とは、特定のDNA配列を短時間で大量に増幅する技術である。原理は、2本鎖DNAを1本鎖にする熱変性(denature)、1本鎖DNAに相補的な配列を持つオリゴヌクレオチドプライマを結合させるアニーリング(annealing)、そして、DNAの伸長反応を行なう伸長反応(extension)の3つのステップからなる反応を1サイクルとし、数十サイクル行ない目的とするDNA配列を増幅する。
理論的には1コピーの遺伝子が1サイクルで2倍に増えるのでn回のサイクルで2nコピーとなる。しかし、実際はサイクル初期の増幅効率の悪さや酵素の失活や基質の消費によるPCR反応効率低下(プラトー効果)が起こるため、増幅したコピー数は理論値よりも低く初期鋳型量をI、生成物の増幅率をE、サイクル数をnとすると下記の[1式]のようになる。
y=I×En(1≦E≦2) ・・・・・・[1式]
定量的PCR(quantitative PCR)法には、2つの解析方法がある。1つ目は、PCR反応で反応生成物がある程度の量までは指数関数的に増加し、その後プラトーに達するという特徴を利用し、指数関数的増加期に反応生成物量を解析し、初期鋳型量を算出する方法。2つ目は、反応生成物をリアルタイムでモニタリングすることにより、反応生成物量がある一定の値(threshold)を超えるPCRサイクル数(Ct)を決定する方法。どちらの解析方法にしても既知濃度のDNA量を変化させPCRを行ない、各サイクル数における反応生成物を解析し、そのカイネティクスから定量性のあるPCRサイクル数範囲を決定することが必要である。その結果をふまえて、未知のサンプル中における目的遺伝子の存在量を概算する。
【0013】
〔共試菌株からのDNA抽出〕
クロストリジウム・ビフェルメンタンスDPH-1株(以下、単にDPH-1株と称する場合がある)からのDNAの抽出は、以下のようにして行った。
125ml容バイアル瓶に95mlのMY培地を入れ、ビタミン溶液(ρ-アミノ安息香酸0.1mg/100mlとビオチン0.0001mg/100ml)と鉄溶液(硫酸鉄・7水和物 0.02g/l)をそれぞれ1%(v/v)ずつ添加し、PCE分解を確認したDPH-1株の培養液を3%(v/v)植菌し、全量を100mlとし、37℃のインキュベーターで1日間静置培養した。MY培地の組成は図1に示す通りである。
作成した培養液100mlを遠心分離(8,000rpm,10min,4℃)し、菌体をペレットとした。そこにTE buffer(Tris 10mM、EDTA・2NA 1mM、pH 8.0)を6ml加え再懸濁した後、細胞膜の浸透性を高めるためFreeze-and-thawサイクル(-80℃で凍結し、直ちに50℃で融解)を5回繰り返し行なった。リゾチーム(Lysozyme)を10mg添加し、穏やかに攪拌した (ボルテックスミキサーの使用は控えた方がよい。以下の攪拌工程においても同様) 。10% SDSを750μl、20 mg/ml protenase K 75μlを添加し、攪拌し、37℃で2時間インキュベートした。5M NaCl 2.7ml、CTAB/NaCl(270mM CTAB(cetyltrimethylammonium bromide),70mM NaCl) 2.25mlを添加し、攪拌した後、65℃で20分間インキュベートした。反応液が常温になるまで放置し、等量のCIA(Chloroform: Isoamyl alcohol=24:1)を添加し、1時間穏やかに攪拌した。遠心分離(8,000rpm,10min,4℃)を行い、上清を別の遠心管に分取した。分取した上清と等量のPCI(natural Phenol:Chloroform:Isoamyl alchol=25:24:1)を加えて攪拌し、上清を別の遠心管に分取した。分取した上清Xmlに対して10%(v/v)にあたる0.Xmlの3M 酢酸ナトリウム(pH 5.2)を加え攪拌した後、等量のイソアミルアルコールを添加し、室温で10min放置した。遠心分離(12,000rpm,10min,4℃)を行ない、上清を取り除いた。冷却した70% エタノール 3mlを添加し、遠心管の内部を洗浄するように静かに攪拌した。遠心分離(12,000rpm,2min,4℃)を行ない上清を取り除いた。デシケーターを用いてペレットを乾燥し、TE buffer 1.5mlを添加し4℃で一晩放置し、溶解させた。
【0014】
〔電気泳動による抽出したDNAの確認〕
抽出されたDNA 1μlを含む電気泳動サンプル(DNA loading buffer (-XC:キシレンシアノール)2μl、ddH2O 9μl)を調整し、電気泳動槽に電気泳動アガロースゲル(0.7% アガロース、0.5μl/ml 臭化エチジウム)を設置した後、分子量マーカーとしてλEcoT14Idigestを10μl、サンプルを12μlずつウェルに入れた。100Vで30分間電気泳動を行ない、UVトランスイルミナーター FASIII(東洋紡績株式会社)により、画像解析を行なった。
【0015】
〔RNAの処理〕
得られたDNAにはRNAが含まれているため、RNAの除去を行なった。上述の操作により得られたDNAに対し、10mg/ml RNase Aを1%(v/v)添加し、37℃で1時間インキュベートした。その後、等量のPCIを加えて、5〜10分間穏やかに攪拌した。遠心分離(13,000rpm,5min,4℃)を行ない水相を新しいエッペンドルフチューブに分取した。分取した水相Xmlに対して10%(v/v)にあたる0.Xmlの3M酢酸ナトリウムと等量のイソアミルアルコールを加えてよく攪拌し、室温で2分間放置した後、遠心分離(13,000rpm,5min,4℃)し、上清をマイクロピペッターで取り除いた。70%冷エタノールを1ml加えてエッペンドルフチューブ内を洗浄するように攪拌した後、 遠心分離(13,000rpm,2min,4℃)し、上清をマイクロピペッターで取り除いた。得られたペレットを凍結遠心乾燥機で乾燥させ、等量のTE bufferを加えて一晩放置し、溶解させた。
【0016】
〔PEG沈殿〕
ポリエチレングリコール(PEG)は、H-(O-CH2-CH2)n-OHの構造を持つ高分子エーテルアルコールで、重合度nによって様々な分子量を持つものが存在する。PEGはDNAの水和水を奪うことで、DNA分子の凝集を促進して沈殿させるものと考えられる。このとき、RNAはDNAに比べ、リボースの2位の水酸基の分だけ親水性が高い。そのため凝集が起きにくく沈殿しないため溶液と共にRNAを除去することが可能となる。
Rnase処理を行なったDNAサンプルに等量のPEG溶液(13%ポリエチレングリコール(PEG8000;平均分子量7,000〜9,000), 1.6M NaCl)を添加し、よく攪拌し、氷中にて4℃で一晩放置した。その後、遠心分離(13,000rpm,2min,4℃)し、上清をマイクロピペッターで取り除いた。70%冷エタノールを1ml加えてエッペンドルフチューブ内を洗浄するように攪拌した後、 遠心分離(13,000rpm,2min,4℃)し、上清をマイクロピペッターで取り除いた。得られたペレットを凍結遠心乾燥機で乾燥させ、等量のTE bufferを加えて一晩放置し、溶解させた。
【0017】
〔DNA濃度の測定〕
核酸溶液(ここではDNA)の濃度測定を行なう場合、測定するサンプル量が極めて微量であるためサンプルを適当な濃度になるように希釈したものを試料溶液として測定する。通常核酸溶液は、分光光度計により260nmという短波長で測定されるが、その際、溶液中のタンパク質の混入も無視できないため、同時に280nmでの吸光度も測定する必要がある。測定されたO.D.260 (qとする) O.D.280(pとする)を用いて、下記の[2式]式により溶液中のタンパク質、フェノールの混入を確認することができる。このことは、例えば、文献「中山広樹著、バイオ実験イラストレイテッド 1、1995、秀潤社」等に開示されている。
p/(r-q)=1.8〜2.0 ・・・・・・[2式]
(1.8≦の場合、タンパク質・フェノールの混入)
また、試料とした核酸の性状により吸光係数が異なるため、試料中の核酸の性状に適した吸光係数を考慮する必要がある。2本鎖DNAの場合、吸光係数は0.05であり、その際の濃度単位はμg/μlである。そのため、核酸濃度は[3式]によって得られる。
核酸濃度(μg/μl)=得られたO.D.260×希釈倍率×0.05 ・・・・・・[3式]
核酸測定用石英セル(容量400μl)及びTE bufferを用いて、Ultrospec2000(Pharmacia Biotech)により、波長260nmの校正を行なった。校正後、直ちに波長280nmに変え、その際の吸光度を確認した。RNase処理、PEG沈殿によりRNAを除去したDNA溶液をTE bufferを用いて、50倍、100倍、200倍希釈したものを試料溶液とし、各試料溶液についてO.D.260を測定し、直ちに波長を280nmに変え、O.D.280を測定した。測定されたO.D.260 (qとする) O.D.280(pとする)の比から、溶液中のタンパク質、フェノールの混入を確認し、核酸濃度を算出した。
【0018】
〔16SrDNAの増幅〕
Rnase処理、PEG沈殿処理によりRNAを除去したDNA溶液を鋳型とし、16SrDNAの増幅を行なった。4μMに調整したバクテリアforwardプライマー27Fとユニバースreverseプライマー1525Rを2μlずつ、ddH2Oを20.5μl、鋳型を0.5μl入れ全量25μlの反応系を調整した。このときに用いたプライマーの塩基配列を図2に示す(配列番号5及び配列番号6)。調整した反応系の中に、DNAポリメラーゼとしてEx Taq premix(TAKARA)を25μl入れPCRを行なった。このときのPCR反応条件は、図3に示す通りである。反応終了後、核酸精製用スピンカラムを用いて、PCR産物の精製を行なった。精製されたPCR産物は、電気泳動を行い(但し、DNA loading bufferは、-XCではなく-BPBを用いた。)、目的とする遺伝子の増幅がなされていることを確認した。
【0019】
〔塩基配列の決定について〕
本実施の形態では、塩基配列の決定にオートシークエンサーABI310(Applied Biosystems)を用いた。PCR産物3μl、10×シークエンシングプライマー1μl、Dye solution 1μl、希釈液(1.5M Tris pH 8.8 267μl、3M MgCl2 3μl、H2O 730μl) 3.5μl、ジメチルスルホン酸(DMSO) 1μl、ddH2O 10.5μlを混合し、全量20μlの反応系を調整し、シークエンス反応を行なった。シークエンス反応産物は、余分な塩・色素などを取り除くため、シークエンス反応精製スピンカラムを用いて精製を行なった。凍結遠心乾燥機を用いてシークエンス反応産物を凍結乾燥した。Template Supplession Reagent(TSR)を12μl加え、1時間振とうした。その後、95度で2分間denatureを行なった後、サンプルを0.5mlシークエンス用チューブに入れ、オートシークエンサーABI310にて塩基配列を決定した。
【0020】
〔プライマーデザイン〕
オートシークエンサーにて得られた塩基配列は、Ribosomal Database Project( HYPERLINK http://www.cme.msu.edu/RDP/) http://www.cme.msu.edu/RDP/)のCHIMERA CHECKを行なった後、National Center for Biotechnology Information (NCBI: http://www.nibi.nlm.nih.gov/)のBLASTにより多重アライメントを行い、その結果から類縁種の16SrDNA配列を選択した。そして、得られた配列をDNASIS、 Seq pop及びClastal W1.6.1により多重アライメントを行なった。アライメントを行なった配列を目視にて、目的菌株と類縁種において異なる塩基配列を示す場所をプライマーの長さ及びTm(Melting Temperature)値に注意し、20mer程度の領域をいくつか選択した。また、Oligo 4.0-sを用いて、16SrDNAの配列から最適プライマー領域を検索した。その際、Tm値、ヘアピン構造の有無に注意した。リアルタイム定量的PCRでは、伸長反応のとき、増幅産物は完全な長さで増幅されて増えていくことを前提条件としているため、伸長反応時間内で完全に増幅できるように増幅産物の長さは200bp以下になるように増幅産物の長さにも注意した。そして、最終的にDNASIS、NCBIのBLASTによる多重アライメントの結果、アライメント配列の目視及びOligo 4.0-sによる最適プライマー領域の検索結果を総合的に評価してプライマーの設計を行なった。
【0021】
〔プライマー評価〕
抽出・精製されたDPH-1株のDNAを用いて、設計したプライマーの評価を行なった。設計したプライマーは、1130F(forward)、1226R(reverse)、1294R(reverse)、1211F(forward)の4種類であり、それぞれの塩基配列は図4に示す通りである(配列番号1〜配列番号4)。プライマーの組合せは、1130F+1294R、1211F+1294R、1130F+1230RでPCRを行なった。このときのPCR反応条件は図5に示す通りである。反応終了後、電気泳動を行ないUVトランスイルミネーターFASIIIにより画像解析を行なった。各プライマーセットにおける増幅産物を比較し、各プライマーの評価を行なった。プライマーの評価を行なった後、DPH-1株のときと同様の手順で、E.coli JM109株、Bacillus sp.、Methanothermobacter sp. RHT-3、C.paraputrificum、Clostridium sp. RHT-4よりDNA抽出・精製を行ない、各プライマーセットによりPCRを行なった。反応終了後、電気泳動を行ないUVトランスイルミネーターFASIIIにより画像解析を行なった。
【0022】
〔リアルタイム定量的PCRによるDPH-1の検出〕
本実施の形態では、リアルタイム定量的PCRはABI7700(Applied Biosystems)を用いて行なった。そして、検出色素には、SYBR Green 1を使用した。SYBR Green 1は、2本鎖DNAに結合して蛍光を発する性質を持つ物質である。
SYBR Green 1を用いたアッセイの原理は、最初に鋳型となる2本鎖DNAに結合して蛍光を発する。次に、denatureにより2本鎖DNAが1本鎖DNAになるとSYBR Green 1はDNAから外れ、蛍光が減弱する。Annealingとextension反応を経て、PCR産物の増幅が起こり、extension反応終了後にSYBR Green 1が再び2本鎖DNAに結合することによって全体の蛍光が増加する。
ABI7700では、各サイクルの反応終了後にCCDカメラにより蛍光を記録し、プロットしていくことでリアルタイムでの増幅産物の定量を行なっている。
【0023】
〔純粋培養におけるDPH-1株の検出、標準曲線の作成〕
純粋培養したクロストリジウム・ビフェルメンタンスDPH-1株からDNAを抽出・精製し、DNA濃度の測定を行なった。このDNAを既知濃度のサンプルとして標準曲線を作成した。また、定量的PCRには、qPCRTMMastermix for SybrTM Green1(EUROGENTEC)を使用した。ddH2Oを6.25μl、1130Fと1294Rを2.5μlずつ、SYBR Green1を0.75μl、鋳型をDNA 0.5μl、2×reaction buffer(dNTPs(dUTPを含む),Hot Goldstar DNA polymerase,Uracil-N-Glycosylase 5mM MgCl2 ROX)を12.5μlを加えて、全量25μlの反応系を調整した。調整した反応液を96well プレートに移し、ABI7700を用いてリアルタイム定量的PCRを行い、データの解析を行なった。このときの定量的PCRの反応条件は図6に示す通りである。
【0024】
〔リアルタイム定量的PCR条件下でのプライマー評価〕
C.bifermentans DPH-1、C.paraputrificum、Clostridium sp.RHT-4、E.coli、Bacillus sp.のゲノムをそれぞれ10ngずつ用意し、リアルタイム定量的PCRを行い、プライマーの特異性の評価を行なった。
また、環境中には、数多くの種の微生物が住んでおり、共存関係を取りながら生きており、単独で生活していることは稀である。そのため、その他の微生物との共生関係が定量的PCRの結果にどのような影響を与えるかを調べるため、C.bifermentans DPH-1株と他の微生物1種類の培養液を混合し、一緒にDNA抽出を行なった。そして、リアルタイム定量的PCRを行ない、その影響について調べた。なお、各微生物の菌数は、図7(C.paraputrificum strain M21)、図8(Bacillus sp.)、図9(E.coli)に示す培地を用いてそれぞれプレートカウント法によって確認した。
【0025】
〔結果〕
(1)FISH法及びリアルタイム定量的PCRには、オリゴヌクレオチドプライマー及びプローブが必要であるため、これらがDPH-1株に対して特異的に作用する領域を決定する必要がある。
そこで、本実施の形態では、初めに全16SrDNAについて検討を行ない、次いでClostridium属細菌に特異的な領域を検討した。本実施の形態では、主に、16SrDNA配列における発現領域(V領域:variable regions、V1〜V10まで存在)に注目し、中でも細菌属に特異的な配列多く存在するといわれているV2、細菌種に特異的な配列が多く存在しているといわれるV3という2つの領域(339〜539、E.coli numbering)をターゲットとし特異的領域を検討した。その結果、クロストリジウム・ビフェルメンタンスDPH-1株に特異的であろうと推測される幾つかの領域が得られた。得られた領域をもとに、これらの領域を増幅できるプライマー領域を検討した。その結果、DPH-1株に特異的であると思われるプライマーを4つ設計することができた(配列番号1〜配列番号4)。設計されたプライマーの評価として、プライマーセット(1130F+1294R)により、供試菌株、グラム陰性菌とその他のグラム陽性菌を用いてPCRを行なった。このPCRにより増幅させた16SrDNAの電気泳動による解析結果を図10に示した。図10に示す写真において、上側に付された1〜6の番号及びMの記号は、1:DPH-1株、2:C.praputrificum、3:Methanothermobacter sp.RHT-3、4:Clostridium sp.RHT-4、5:E.coli、6:Bacillus sp.、M:100bp markerによる結果であることをそれぞれ示している。この結果より、DPH-1株で目的とするサイズのバンド(約150bp)が増幅されていることが確認された。また、それ以外の微生物では増幅が見られなかったことから、設計したプライマーはDPH-1株に特異的なものであることが判明した。
【0026】
(2)また、プライマーセットの一例として、プライマーセット(1130F+1294R)を使用し、リアルタイム定量的PCRにより標準曲線を描いた。得られた標準曲線の一例を図11に示す。標準曲線の式は、
Ct=−2.969(LogC0)+22.428 r2=0.9961
C0:初期DNA濃度
Ct:閾値を越えたときのサイクル数
となった。これにより、検体中に存在するDNAを130Fと1294Rのプライマーセットを用いて増幅させ、SYBR Green 1を用いて1130Fと1294Rのプライマーセットを使用してDPH-1株を定量化することが可能であることが判明した。
【0027】
すなわち、本実施の形態では、検体中に存在するDPH-1株の存在量を、以下の(a)〜(c)のステップにより定量化する方法を確立することができた。
(a)リアルタイム定量的PCRにより、DPH-1株の初期DNA濃度C0と閾値を越えたときのサイクル数Ctとの相関関係を、標準曲線を示す式やグラフなどの形で予め決定しておく。このとき、PCR反応には、DPH-1株の16SrDNAの特定領域を特異的に増幅させるプライマーとして機能する、配列番号1〜配列番号4のいずれかに記載の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを用いる。このようなプライマーとして、例えば図4に記載した4つのプライマー(1130F、1226R、1294R、1211F)を用いることができる。
(b)検体中に存在する微生物のDNAを、(a)のステップで使用したプライマーを用いてリアルタイム定量的PCRにより増幅させる。そして、増幅させたDNAの量が特定の閾値を越えたときのサイクル数Ctを決定する。
(c)検体中に存在するDPH-1株の初期DNA濃度C0を、(a)で決定したC0とCtとの相関関係(標準曲線を示すグラフや式)に基づいて、(b)で決定したサイクル数Ctより逆算して求める。
【0028】
(3)プライマーセットの一例として、プライマーセット(1130F+1294R)のDPH-1株に対する特異性を調べた結果を図12に示す。
DPH-1株は、10ng中9.73ngを定量することができ、その他には、Clostridium sp. RHT-4がほんの僅かに検出されただけで、それ以外は検出されないという結果となり、特異的にC.bifermentans DPH-1株を検出できることが判明した。
【0029】
(4)DPH-1株と他の微生物とを混合したサンプルからDNAを抽出し、プライマーセット(1130F+1294R)を用いて定量的PCRを行なった結果を図13に示す。C.paraputrificum、Clostridium sp.RHT-4、E.coli、Bacillus sp.を混合したすべてのケースにおいて、DNAの検出ができた。また、C.paraputrificumを除き概ねコントロールである DPH-1株と同レベルぐらい検出することができた。したがって、他の微生物が共存しているような条件からでも、本実施の形態において設計した4つのプライマー(配列番号1〜配列番号4)を用いてPCRを実行することにより、検体中に存在するDPH-1株を特異的に検出できることを確認することができた。
【0030】
すなわち、本実施の形態では、検体中に存在するDPH-1株を、以下の(a)〜(b)のステップにより検出する方法を確立することができた。
(a)配列番号1〜配列番号4のいずれかに記載の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをPCR法におけるプライマーとして機能させて、検体中に存在するDNAの増幅を試みる。
(b)前記(a)の操作によって検体中のDNA濃度が増加した場合に、その検体中にクロストリジウム・ビフェルメンタンスDPH-1株が存在していると判定する。
【0031】
2.FISH法によるクロストリジウム・ビフェルメンタンスDPH-1株の検出
以下では、DPH-1株のDNAの特定領域に特異的に作用するオリゴヌクレオチドを、FISH法におけるプローブとして用いることでDPH-1株を検出する方法について説明する。
【0032】
〔FISH法の原理について〕
FISH(Fluorescence In Situ Hybridaization)法は、ある特定の遺伝子配列を標的として、蛍光色素などで標識した1本鎖DNAを相補性部位にハイブリダイゼーションさせて顕微鏡下で直接的に検出する方法である。本来、この方法は、染色体の遺伝子座を決定するために開発された技術である。近年では、遺伝子座の決定だけでなく細菌などの組織中のDNAやRNAの局在性の分析にも使われる。FISH法は、R. I. Amannの方法にしたがって行なった。この方法は、例えば文献「Amann, R.I.:in situ identification of micro-organisms by whole cell hybridization with rRNA-targeted nucleic acid probe.Molecular microbial ecology manua InMOLECULAR ECOLOGY MANUAL. Edited by A.D.L.Akkermans, J. D. van Elsas & R. J. de Brujin. Kluwer Academic Publishers, London (1995)」等に開示されている。
【0033】
〔供試菌株の固定化について〕
<試薬>
・ 1× Phosphate buffered saline (PBS)
3×PBSを1×PBSとなるようにddH2O(滅菌済み)で希釈した。
3×PBS
390mM NaCl
30mM Na2HPO4
pH7.2
・4%パラホルムアルデヒド固定液
(あらかじめ調整しておいた20%パラホルムアルデヒド(1ヶ月保存可能、要冷蔵)をddH2O(滅菌済み)で4%に希釈した。また、20%パラホルムアルデヒドは、ドラフトの中で粉末(パラホルムアルデヒド)にddH2Oを加え、10M NaOHを数滴加えながら50〜60℃で温めて溶かした。)
MY培地において培養したDPH-1株の新鮮な培養液300μlを1.5ml容エッペンドルフチューブに移し、3倍量の4%パラホルムアルデヒドを添加し、4℃で一晩放置し、固定化した。固定化した菌体は、遠心分離(8000rpm,15min,4℃)して上清をマイクロピペッターで除去した。固定化した菌体に1×PBSを500μl加えて再懸濁し、遠心分離(8000rpm,10min,4℃)して、上清をマイクロピペッターで除去した。1×PBSを10μl加えて、細胞壁浸透性の改善のため、freeze-and-thawサイクルを5回繰り返した。等量のエタノール(氷冷済み)を添加し、ボルテックミキサーを用いてよく攪拌した。これを菌体固定化溶液とし、使用するまで-20℃で保存した。
【0034】
〔ハイブリダイゼーション用スライドガラスの調整〕
<試薬>
・ スライドコーティング水溶液
0.1% ゼラチン
0.01% 硫酸カリウムクロム(III)
10% 硫酸カリウムクロム水溶液を作成し、使用時に希釈して使用。
8穴(φ8mm)のハイブリダイゼーション用スライドガラスを洗浄液に1時間浸し(アルカリ処理)、スライドガラスの表面の洗浄を行なった後、ddH2Oですすぎ、風乾した。ウォーターバスにより、あらかじめ70℃にしておいたスライドコーティング水溶液にスライドガラスを浸し、ゼラチンコーティングを行なった。その後、風乾した。
【0035】
〔ゼラチンコーティングスライドガラスへの菌体固定〕
保存しておいた菌体固定液3μlをゼラチンコーティングしたスライドガラスのウェルに添加し、風乾した。風乾した後、50%、80%、99.5%エタノールの順番にそれぞれ3分ずつ浸し、固定化菌体を脱水固定し、再び風乾した。
【0036】
〔ハイブリダイゼーション〕
<試薬>
・ハイブリダイゼーション緩衝液
2×ハイブリダイゼーション緩衝液(pH 7.2)
1.8M NaCl
40mM Tris-HCl
1% SDS
x% ホルムアルデヒド
ハイブリダイゼーション緩衝液は、上記の組成の通り2×ハイブリダイゼーション緩衝液をあらかじめ調整しておいたものを用意しておき、各終濃度が1×ハイブリダイゼーション緩衝液、0.1% SDS、x% ホルムアルデヒド(x:例.バクテリアプローブEUB338の場合5%、古細菌用プローブARC915の場合35%)となるように調整し、ハイブリダイゼーション緩衝液とした。
<操作>
ハイブリダイゼーション緩衝液を浸した密閉容器をウォーターバスを用いてあらかじめ62℃に設定し、これを恒温チャンバーとした。菌体を固定化したスライドガラスの上に50ng/μlに調整したプローブ(図14参照)1.0μlを含む9.0μlのハイブリダイゼーション緩衝液を滴下し、恒温チャンバーに素早く移動し、62℃で2時間ハイブリダイゼーションを行なった。なお、この作業以降、全ての作業は遮光して行なった。ハイブリダイゼーションが終了した後、恒温チャンバーからスライドガラスを取りだし、あらかじめ62℃で温めておいたハイブリダイゼーション緩衝液を用いてスライドガラスからプローブを洗い流し、ハイブリダイゼーションを停止した。2重染色を行なう場合は、この作業をもう一度行なった。その時、Td(dissolved temperature)値に注意し、Td値の高いものからハイブリダイゼーション行なった。ハイブリダイゼーション緩衝液50mlが入った遠心管にスライドガラスを浸し、62℃で20分間インキュベートした。その後、ddH2Oでスライドガラスを洗浄し、余分な塩を取り除いた。スライドガラスを風乾し、グリセロールとPBSを1:1で混合させたものに0.1%(w/v)パラフェニレンジアミンを加えたものをスライドガラスのウェルに滴下し、カバーガラスを被せた後、共焦点レーザー顕微鏡(confocal laser scanning microscope :CLSM)により観察を行なった。
【0037】
〔ハイブリダイゼーション条件の最適化〕
最適ホルムアルデヒド濃度を決めるため、ハイブリダイゼーション緩衝液中のホルムアルデヒド濃度を0%、5%、10%と変化させてハイブリダイゼーションを行なった。共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察を行ない、得られた画像を用いて、各ホルムアルデヒド濃度におけるハイブリダイゼーション効率を評価した。
【0038】
〔ハイブリダイゼーションプローブの評価〕
本実験で設計したプローブを評価するため、グラム陰性細菌E.coli JM109株、グラム陽性細菌Bacillus sp.、Clostridium sp.RHT-4を用いてハイブリダイゼーションを行なった。
上記菌体を用いて上述と同様な手順で菌体固定化溶液を調整し、ゼラチンコーティングしたスライドガラスのウェルに菌体を脱水固定した。ハイブリダイゼーション緩衝液中のホルムアルデヒド濃度を変化させ、ハイブリダイゼーションを行なった。そして、共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察し、得られた画像を用いて、ハイブリダイゼーション効率を評価した。
【0039】
〔結果〕
本実施の形態では、DPH-1株の16SrDNAの特定領域に特異的にハイブリダイズすることのできる2つのプローブ(16SC135及びDPH302)の設計を行った。そして、DPH-1株に特異的なオリゴヌクレオチドプローブである16SC135(配列番号7)、DPH302(配列番号8)、及び、ユニバーサルプローブUNI1392(配列番号9)を用いてFISH法を行い、共焦点レーザー顕微鏡を用いて細菌を観察した。これら3つのプローブを構成するオリゴヌクレオチドの塩基配列は図14に示す通りである。なお、16SC135及びDPH302についてはFITCでラベルを行い、UNI-1392についてはカルボキシルローダミン(carboxyl rhodamine)でラベルを行った。
最初に上記プローブの最適ホルムアルデヒド濃度の検討をDPH-1株を用いて行なった。ホルムアルデヒド濃度を0%、5%、10%と変化させてFISH法を行なった。そして、UNI1392との2重染色を行ない最適ホルムアルデヒド濃度を5%と決定した。プローブの感度は16SC135に比べてDPH302の方が高かった。次に、プローブの特異性を調べるためClostrdium sp.RHT-4、E.coli JM109株とBacillus sp.を用いてFISH法を行なった。その結果、DPH302は、今回使用した供試菌株の中ではDPH-1にハイブリダイゼーションし、他の菌にはハイブリダイゼーションしないことが分かった。
【0040】
すなわち、本実施の形態では、検体中に存在するDPH-1株を、以下の(a)〜(b)のステップにより検出する方法を確立することができた。
(a)配列表の配列番号7もしくは配列番号8に記載の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをFISH法におけるプローブとして機能させて、検体中に存在するDNAとのハイブリダイゼーションを試みる。このようなプローブとしては、例えば図14に記載した2つのプローブ(16SC135、DPH302)を用いることができる。
(b)前記(a)の操作によって検体中のDNAとのハイブリダイゼーションが確認された場合に、その検体中にクロストリジウム・ビフェルメンタンスDPH-1株が存在していると判定する。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、クロストリジウム・ビフェルメンタンスDPH-1株に特異的なオリゴヌクレオチドを利用することにより、クロストリジウム・ビフェルメンタンスDPH-1株をより簡易に検出できる方法及び定量化方法を確立することができた。
【0042】
【配列表】
Figure 0004375607
Figure 0004375607
Figure 0004375607
Figure 0004375607
Figure 0004375607

【図面の簡単な説明】
【図1】 MY培地の組成を示す図である。
【図2】 16SrDNAの増幅に用いたプライマーの塩基配列を示す図である。
【図3】 16SrDNA増幅のためのPCR条件を示す図である。
【図4】 DPH-1株に特異的な4つのプライマーの塩基配列を示す図である。
【図5】プライマー評価のためのPCR条件を示す図である。
【図6】定量的PCRの反応条件を示す図である。
【図7】 C.paraputrificum strain M21用の培地組成を示す図である。
【図8】 Bacillus sp.用の培地組成を示す図である。
【図9】大腸菌(E.coli)用の培地組成を示す図である。
【図10】プライマーセット(1130F+1294R)による16SrDNAの増幅を解析するための電気泳動の結果を示す写真である。
【図11】リアルタイム定量的PCRによる標準曲線の一例を示す図である。
【図12】プライマーセット(1130F+1294R)のDPH-1株に対する特異性を調べた結果を示す図である。
【図13】 DPH-1株と他の微生物とを混合したサンプルからDNAを抽出し、プライマーセット(1130F+1294R)を用いて定量的PCRを行なった結果を示す図である。
【図14】 FISH法に用いた3つのプローブを構成するオリゴヌクレオチドの塩基配列を示す図である。

Claims (5)

  1. 配列表の配列番号1及び配列番号3に記載の塩基配列からなるとともに、PCR法におけるプライマーとして機能することでクロストリジウム・ビフェルメンタンスDPH−1株の16SrDNAの特定領域を選択的に増幅させることのできるオリゴヌクレオチドセット
  2. 検体中に存在するクロストリジウム・ビフェルメンタンスDPH−1株を検出する方法であって、
    請求項1に記載のオリゴヌクレオチドセットをPCR法におけるプライマーとして機能させることで検体中に存在するDNAの増幅を試みる第1のステップと、
    前記第1のステップにおいて検体中のDNA濃度が増加した場合に、その検体中にクロストリジウム・ビフェルメンタンスDPH−1株が存在していると判定する第2のステップと、を有することを特徴とするクロストリジウム・ビフェルメンタンスDPH−1株を検出する方法。
  3. 検体中に存在するクロストリジウム・ビフェルメンタンスDPH−1株を定量化する方法であって、
    請求項1に記載のオリゴヌクレオチドセットを定量的PCR法におけるプライマーとして機能させることでDPH−1株の初期DNA濃度と閾値を越えたときのサイクル数との相関関係を予め決定しておく第1のステップと、
    検体中に存在する微生物のDNAを前記第1のステップで使用したプライマーを用いて定量的PCR法により増幅させてその増幅させたDNAの量が特定の閾値を越えたときのサイクル数を決定する第2のステップと、
    検体中に存在するDPH−1株の初期DNA濃度を、前記第1のステップで決定した初期DNA濃度と閾値を越えたときのサイクル数との相関関係に基づいて、前記第2のステップにおいて決定したサイクル数より逆算して求める第3のステップと、を有することを特徴とするクロストリジウム・ビフェルメンタンスDPH−1株を定量化する方法。
  4. 配列表の配列番号8に記載の塩基配列からなるとともに、FISH法におけるプローブとして機能することでクロストリジウム・ビフェルメンタンスDPH−1株の16SrDNAの特定領域に選択的にハイブリダイゼーションすることのできるオリゴヌクレオチド。
  5. 検体中に存在するクロストリジウム・ビフェルメンタンスDPH−1株を検出する方法であって、
    請求項4に記載のオリゴヌクレオチドをFISH法におけるプローブとして機能させることで検体中に存在するDNAとのハイブリダイゼーションを試みる第1のステップと、
    前記第1のステップにおいて検体中に存在するDNAとのハイブリダイゼーションが確認された場合に、その検体中にクロストリジウム・ビフェルメンタンスDPH−1株が存在していると判定する第2のステップと、を有することを特徴とするクロストリジウム・ビフェルメンタンスDPH−1株を検出する方法。
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