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JP4377635B2 - 有機スズ化合物及びその製造方法 - Google Patents
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Description

本発明は、新規な有機スズ化合物、遷移金属触媒を用いてアルキニルスズと水素分子から有機スズ化合物(スタニルアルケン類など)を製造する方法、この方法に有用な触媒(又は触媒系)に関する。
有機スズ化合物は、多くの医薬品・機能性物質などの鍵中間体として有機合成分野での利用が提案されている。さらに、有機スズ化合物は、有機合成的手法において類似の反応に用いられるアルカリ金属やアルカリ土類金属を含む有機金属化合物と比べ水や空気に対して安定であるという利点を有する。このような背景から、有機スズ化合物の安全かつ経済的な製造方法の開発が期待されている。
例えば、Organometallics, 1994, 13, 947(非特許文献1)には、アルケニルハライドから生成させた有機マグネシウム化合物とハロゲン化スズとのカップリングによるアルケニルスズの製造方法が報告されている。また、Synlett, 1999, 246(非特許文献2)及びChemistry Letters, 1989, 981(非特許文献3)には、パラジウムなどの遷移金属触媒を用い、アルキンとスズハイドライド試薬との反応によるアルケニルスズの製造方法が報告されている。
しかし、非特許文献1の方法では、環境に対する負荷が高い有機ハロゲン化合物を用いる必要がある。また、非特許文献2〜3の製造法では、得られるアルケニルスズの異性体比が必ずしも高くない。そのため、高い立体選択性でアルケニルスズ化合物を得ることが困難である。
特開2002−275186号公報(特許文献1)には、遷移金属元素で構成される触媒存在下、不飽和炭化水素類(オレフィン系又はアセチレン系不飽和化合物)と、アルキニルスズ化合物とを反応させ、不飽和結合を有する有機スズ化合物を製造する方法が開示されている。この方法では共役エンイン部位又は共役ジエン部位をもつ有機スズ化合物を製造することはできても、単純なアルケニルスズ化合物は製造できない。
Organometallics, 1994, 13, 947 Synlett, 1999, 246 Chemistry Letters, 1989, 981 特開2002−275186号公報(特許請求の範囲)
従って、本発明の目的は、新規なアルケニルスズ化合物を提供することにある。
本発明の他の目的は、簡便かつ効率よくスタニルアルケン類を製造できる方法、及びこの方法に有用な触媒(又は触媒系)を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、高い立体選択性でアルケニルスズ化合物を製造できる方法、及びこの方法に有用な触媒(又は触媒系)を提供することにある。
本発明の別の目的は、重水素化アルケニルスズ化合物(又は重水素化オレフィン類)を簡便かつ効率よく製造できる方法、及びこの方法に有用な触媒(又は触媒系)を提供することにある。
本発明者は前記目的を達成するため鋭意検討した結果、遷金属触媒の存在下、水素分子とアルキニルスズ化合物とを反応させると、スタニル基の転位を伴うアルキニルスズの水素化が進行し、新規化合物を含む有機スズ化合物(2−スタニル−1−アルケン類)が高い収率で得られること、有機スズ化合物が高い位置選択性で効率よく生成することを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明の新規な有機スズ化合物は、下記式(1a)で表される。
Figure 0004377635
(式中、X1及びX2は同一又は異なって水素原子又は重水素原子を示し、X1及びX2が水素原子であるとき、R1はアルキル基又はアリール基を示し、R2は、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、およびN−置換アミド基から選択された置換基を有するアルキル基;アルコキシ基;置換アリール基;複素環基;又は基R1 3Sn−C≡C−(R1は上記に同じ)を示す。X1及びX2が重水素原子であるとき、R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、複素環基又は前記式R1 3Sn−C≡C−(R1は上記に同じ)で表される基を示し、前記アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、複素環基は置換基を有していてもよい)
なお、前記式(1a)中、R1は、通常、アルキル基を示し、R2は、通常、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、およびN−置換アミド基から選択された置換基を有するアルキル基;アルコキシ基;置換アリール基;複素環基;又は基R1 3Sn−C≡C−(R1は上記に同じ)を示し、X1及びX2は、通常、同一又は異なって水素原子又は重水素原子である。
本発明では、遷移金属元素で構成された触媒の存在下、水素分子又は重水素分子と、アルキニルスズ化合物とを反応させ、有機スズ化合物を製造する。前記遷移金属元素は、通常、周期表4族元素乃至周期表11族元素から選択される少なくとも1つの元素(例えば、周期表第6族元素および周期表第8族元素から選択される少なくとも1つの遷移金属元素)であってもよい。前記触媒は、触媒系を構成してもよい。例えば、周期表15族元素及び周期表16族元素から選択された少なくとも一種の元素(例えば、周期表15族元素を含む化合物)を含む化合物(助触媒又は反応促進剤)と組み合わせて触媒系を構成してもよい。すなわち、反応は前記助触媒の共存下で反応させてもよい。
前記反応は、前記触媒又は触媒系の存在下、水素分子又は重水素分子と、アルキニルスズ化合物とを反応させればよく、生成物としては、アルキニルスズ化合物に対応する水素化又は重水素化有機スズ化合物、例えば、スタニルアルケン類などが挙げられる。すなわち、重水素分子と、アルキニルスズ化合物とを反応させると、重水素化有機スズ化合物を製造できる。
本発明は、水素分子又は重水素分子と、アルキニルスズ化合物とを反応させ、有機スズ化合物を製造するための触媒又は触媒系も包含する。この触媒又は触媒系は、少なくとも遷移金属元素で構成できる。触媒又は触媒系は、さらに、周期表15族元素及び周期表16族元素から選択された少なくとも一種の元素を含む化合物を含んでいてもよい。例えば、水素分子又は重水素分子と、アルキニルスズ化合物とを反応させ、スタニルアルケン類を製造するための触媒は、周期表第6族元素および周期表第8族元素から選択される少なくとも1つの遷移金属元素を含む化合物と、周期表15族元素を含む化合物とで構成してもよい。
なお、本明細書において、重水素(ジューテリウム)D及び/又は三重水素(トリチウム)Tを含む分子を「重水素分子」と総称する場合がある。さらに、「水素分子及び重水素分子」を単に「水素分子」と総称する場合がある。
本発明では、末端アルケニル基(ビニル基など)を有する新規な有機スズ化合物を提供できる。また、触媒の存在下、水素分子又は重水素分子をアルキニルスズ化合物と反応させるので、簡便かつ効率よく有機スズ化合物(スタニルアルケン類など)を製造できる。特に、高い位置選択性でスタニルアルケン類を製造できる。さらに、重水素を用いるだけで、重水素化アルケニルスズ化合物(又は重水素化オレフィン類)を簡便かつ効率よく製造できる。
本発明は、特定の触媒の存在下、水素分子又は重水素分子とアルキニルスズ化合物とを反応させ、対応する有機スズ化合物(又は水素化有機スズ化合物)を生成させる。
[触媒又は触媒系]
触媒は遷移金属元素で構成され、遷移金属元素には、周期律表3族元素乃至11族元素が含まれる。このような遷移金属元素としては、周期表第3族元素(Sc、Y 及び希土類元素など)、周期表第4族元素、周期表第5族元素、周期表第6族元素、周期表第7族元素、周期表第8族元素、周期表第9族元素、周期表第10族元素(Ni,Pd、Ptなど)、周期表第11族元素(Cu、Ag、Auなど)などが例示できる。これらの遷移金属元素は、少なくとも一種(単独で又は二種以上組み合わせて)使用できる。
好ましい遷移金属元素には、例えば、周期表第4族元素(Ti、Zr、Hfなど)、周期表第5族元素(V、Nb、Taなど)、周期表第6族元素(Cr、Mo、Wなど)、周期表第7族元素(Mn、Tc、Reなど)、周期表第8族元素(Fe、Ru、Osなど)、周期表第9族元素(Co、Rh、Irなど)、白金から選択された少なくとも一種が含まれる。さらに好ましい遷移金属には、周期表第6族元素(クロム、モリブデン、タングステン)、周期表第8族元素(ルテニウム)、周期表第9族元素(ロジウム、イリジウム)が含まれる。特に、周期表第6族元素(クロム、タングステン)および周期表第8族元素(ルテニウム)から選択された少なくとも1つの遷移金属元素、例えば、ルテニウムが含まれる。前記元素の酸化数は、特に制限されず、元素の種類に応じて、例えば、0、+2、+3、+4などであってもよい。
前記遷移金属源は、金属単体であってもよいが、通常、遷移金属元素の化合物として使用される。遷移金属元素の化合物は、例えば、無機酸塩(例えば、硝酸塩、硫酸塩、過ハロゲン酸塩、塩化水素酸、臭化水素酸などのハロゲン化水素酸塩など)、有機酸塩(例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのスルホン酸塩、ホスホン酸塩、ギ酸、酢酸、プロピオン酸などの炭素数12以下のカルボン酸塩など)、ハロゲン化物(例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物など)、金属酸化物(酸化クロム、酸化タングステン、酸化ルテニウムなど)、錯体(又は錯塩)などが含まれる。また、遷移金属触媒としては、前記金属又は金属化合物が活性炭、シリカ、アルミナ、チタニアなどの担体に固定された固体触媒であってもよい。
錯体を構成する配位子としては、例えば、OH(ヒドロキソ)、C1-4アルコキシ基、C1-4アシル基、C1-4アルコキシ−カルボニル基、アセチルアセトナト、シクロペンタジエニル基、シクロオクタジエニル基、ベンジリデン基、ビニリデン基、ベンジリデンアセトン、ベンジリデンアセチルアセトナト、ベンジリデンアセトフェノン、シクロオクタジエンなどのシクロアルカジエン、ベンゼン、トルエン、シメン、クメン、キシレン、ナフタレンなどの芳香族化合物、ハロゲン原子、CO、CN、酸素原子、H2O(アコ)、ホスフィン(例えば、トリフェニルホスフィンなどのトリアリールホスフィン)、ホスファイト(例えば、トリフェニルホスファイトなどのトリアリールホスファイト)、NH3(アンミン)、NO、NO2(ニトロ)、NO3(ニトラト)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェナントロリン、ビピリジル、アセトニトリル、ベンゾニトリル、tert−オクチルイソシアニドなどの窒素含有化合物などが挙げられる。錯体又は錯塩において、同種又は異種の配位子が一種又は二種以上配位してもよい。また、例えば、ドデカカルボニル三ルテニウムなどのクラスター化合物などのように、1分子の錯体又は錯塩の中に複数の前記遷移金属原子が含まれていてもよい。
代表的な錯体又は錯塩としては、例えば、カルボニル(ジヒドリド)トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム[RuH2(CO)(PPh3)3]、ジカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム[Ru(CO)2(PPh3)3]、ドデカカルボニル三ルテニウム[Ru3(CO)12]、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム[RuCl2(PPh3)3]、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウムRu(cod)Cl2、トリクロロルテニウム[RuCl3]、ルテニウム(アセチルアセトナート)[Ru(acac)3]、ルテノセン、テトラクロロビス(η−p−シメン)二ルテニウム[RuCl2(η−p−シメン)]2、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムクロライド、(1,5−シクロオクタジエン)(1,3,5−シクロオクタトリエン)ルテニウムRu(cod)(cot)、ジ(ジメチルフマレート)(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウムRu(cod)(dmfu)2などのルテニウム錯体又は錯塩、およびこれらに対応する前記遷移金属源のうち、遷移金属元素の化合物、特に錯体又は錯塩を用いる場合が多い。また、錯体又は錯塩は、反応系中で生成させてもよく、例えば、テトラクロロビス(η−ベンゼン)二ルテニウムに対してp−シメンを別に添加する方法などにより反応系中でテトラクロロビス(η−p−シメン)二ルテニウムを生成させてもよい。
[助触媒(又は配位子)]
本発明の触媒は助触媒(又は配位子)と組み合わせて触媒系を構成してもよい。このような助触媒(又は配位子、反応促進剤)の共存下で反応させると、反応性及び選択率を向上できる。
配位子(又は助触媒)としては、前記「錯体を構成する配位子」の中でも、通常、周期表15族元素(窒素、リンなど)及び周期表16族元素(酸素、硫黄など)から選択された少なくとも一種の元素を含む化合物で構成できる。例えば、CN、ホスフィン(例えば、トリフェニルホスフィンなどのトリアリールホスフィン、トリブチルホスフィンなどのトリアルキルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィンなどのトリシクロアルキルホスフィン)、ビスホスフィン(1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンなどのビス(アリールホスフィノ)アルカンなど)、ホスファイト(例えば、トリフェニルホスファイトなどのトリアリールホスファイト)、窒素含有化合物[NH3(アンミン)、NO、NO2(ニトロ)、NO3(ニトラト)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェナントロリン、ビピリジル、アセトニトリル、ベンゾニトリル、tert−オクチルイソシアニドなど]などが挙げられる。配位子は、分子内に周期表15族元素乃至周期表16族元素を2個以上含む配位子、例えば、アミノホスフィン類[例えば、ジアルキルアミノ基と、ジフェニルホスフィノ基又はジアルキルホスフィノ基とを有するベンゼン類、例えば、N,N−ジメチル−N−{[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]メチル}アミン、N,N−ジメチル−N−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル]アミンなど]などであってもよい。反応系においては、同種又は異種の配位子を一種又は二種以上用いてもよい。
配位子の割合は、例えば、遷移金属触媒1モルに対して0.001〜1000モル、好ましくは0.1〜100モル、さらに好ましくは1〜50モル程度であり、2〜20モル程度である場合が多い。
[有機スズ化合物の製造方法]
本発明では、前記触媒又は触媒系の存在下、下記式(2)で表されるアルキニルスズ化合物と、下記式(3)で表される水素分子又は重水素分子とを反応させることにより、下記式(1)で表される有機スズ化合物を製造できる。この反応で、重水素分子と、アルキニルスズ化合物とを反応させると、重水素化有機スズ化合物を得ることができる。
Figure 0004377635
[式中、R1a、R1b、R1c及びR2aは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、アルコキシ基又は下記式(4)で表される基
Figure 0004377635
(R1a、R1b、R1cは上記に同じ)を示し、前記アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、複素環基又はアルコキシ基は置換基を有していてもよく、X1及びX2は同一又は異なって水素原子又は重水素原子を示す]
[アルキニルスズ化合物]
アルキニルスズ化合物(2)において、ハロゲン原子には、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素原子が含まれる。アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-20アルキル基(好ましくはC1-10アルキル基、特にC1-6アルキル基)が例示できる。アルケニル基には、ビニル、プロペニル、イソプロペニル、アリル、ブテニル基などの直鎖状又は分岐鎖状C2-20アルケニル基(好ましくはC2-10アルケニル基、特にC2-6アルケニル基)が例示できる。
アリール基には、フェニル、ナフチル基などのC6-14アリール基が含まれ、アラルキル基には、ベンジル、フェネチル基などのC6-10アリール−C1-4アルキル基が含まれる。
複素環基には、窒素、酸素及び硫黄原子から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を環の構成原子として含む5又は6員複素環基、複素環と炭化水素環とが縮合した縮合複素環基が例示でき、複素環基は芳香族性又は非芳香族性複素環基であってもよい。このような複素環基に対応する複素環化合物としては、例えば、チオフェンなどの硫黄含有複素環化合物、フラン、クロメン、クロマンなどの酸素含有複素環化合物、ピロール、イミダゾール、ピリジン、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、フェナジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリンなどの窒素含有複素環化合物などが例示できる。
アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、t−ブトキシなどの直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルコキシ基(好ましくはC1-6アルコキシ基)が例示できる。
置換基は、前記アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、複素環基又はアルコキシ基の種類に応じて選択できる。置換基としては、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子)、直鎖状又は分岐鎖状アルキル基(メチル、エチル、ブチル、t−ブチル基などのC1-6アルキル基、特にC1-4アルキル基)、直鎖状又は分岐鎖状ハロアルキル基(トリクロロメチル、トリフルオロメチル、テトラフルオロプロピル基などのハロC1-4アルキル基など)、直鎖状又は分岐鎖状アルケニル基(ビニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル基などのC2-6アルケニル基、好ましくはC2-4アルケニル基)、アリール基(フェニル基などのC6-14アリール基)、アラルキル基(ベンジル、フェネチル基などのC6-10アリール−C1-4アルキル基)、ヒドロキシル基、直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、ブトキシ、t−ブトキシ基などのC1-6アルコキシ基)、上記アルコキシ基に対応するC1-6アルキルチオ基、アリールオキシ基(フェノキシ基など)、カルボニル基(又はケト基)、アシル基(ホルミル基、アセチル、プロピオニル基などのC1-6アルキル−カルボニル基、ベンゾイル基などの芳香族アシル基など)、カルボキシル基、直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ−カルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル基などのC1-6アルコキシ−カルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル基など)、アミノ基、N−置換アミノ基(メチルアミノ、ブチルアミノ基などのN−モノC1-4アルキルアミノ基、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジブチルアミノ基などのN,N−ジC1-4アルキルアミノ基、アセチルアミノ基などのアシルアミノ基など)、アミド基、N−置換アミド基(N−C1-4アルキルアミド基、N,N−ジC1-4アルキルアミド基など)、ニトロ基、シアノ基などが例示できる。なお、基R1a、R1b、R1c及びR2aの置換基は、通常、基R1a、R1b、R1c及びR2aとは異種の置換基であり、例えば、R1a、R1b、R1c及びR2aがアルキル基やアリール基などの炭化水素基を有する場合、ハロゲン原子、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基などが置換していてもよい。
アルキニルスズ化合物(2)としては、分子内に少なくとも1つのエチニルスズ部分を含む化合物(又はエチニルスズ結合などを含むアルケニルスズ化合物)である限り特に制限されず、種々の化合物、例えば、トリアルキルアルキニルスズ化合物、ジアルキルジアルキニルスズ化合物、モノアルキルトリアルキニルスズ化合物、テトラアルキニルスズ化合物などが使用でき、これらの化合物は置換基を有していてもよい。
トリアルキルアルキニルスズとしては、例えば、トリメチル(エチニル)スズ、トリブチル(エチニル)スズ、トリメチル(プロピニル)スズ、トリブチル(プロピニル)スズ、トリメチル(オクチニル)スズ、トリブチル(オクチニル)スズなどのトリC1-10アルキルC2-16アルキニルスズ、好ましくはトリC1-4アルキル(C2-10アルキニル)スズ;トリメチル(フェニルエチニル)スズ、トリブチル(フェニルエチニル)スズなどのトリC1-10アルキル(C6-10アリール−C2-16アルキニル)スズ、好ましくはトリC1-4アルキル(フェニル−C2-10アルキニル)スズ;トリブチル(3−チエニルエチニル)スズなどのトリC1-10アルキル(C5-6へテロサイクル−C2-16アルキニル)スズ、好ましくはトリC1-4アルキル(C5-6へテロサイクル−C2-10アルキニル)スズなどが例示できる。
ジアルキルジアルキニルスズとしては、例えば、ジブチルジ(エチニル)スズ、ジブチルジ(プロピニル)スズ、ジブチルジ(オクチニル)スズなどのジC1-10アルキルジ(C2-16アルキニル)スズ、好ましくはジC1-6アルキルジ(C2-10アルキニル)スズ;ジブチルジ(フェニルエチニル)スズなどのジC1-10アルキルジ(C6-14アリール−C2-16アルキニル)スズ、好ましくはジC1-6アルキルジ(フェニル−C2-10アルキニル)スズなどが例示できる。
モノアルキルトリアルキニルスズとしては、例えば、ブチルトリ(エチニル)スズ、ブチルトリ(プロピニル)スズ、ブチルトリ(オクチニル)スズなどのC1-10アルキルトリ(C2-16アルキニル)スズ、好ましくはC1-6アルキルトリ(C2-10アルキニル)スズ;ブチルトリ(フェニルエチニル)スズC1-10アルキルトリ(C6-14アリール−C2-16アルキニル)スズ、好ましくはC1-6アルキルトリ(フェニル−C2-10アルキニル)スズなどが例示できる。
テトラアルキニルスズとしては、テトラエチニルスズ、テトラプロピニルスズ、テトラオクチニルスズなどのテトラC2-16アルキニルスズ、好ましくはテトラC2-10アルキニルスズ;テトラフェニルエチニルスズなどのテトラ(C6-14アリール−C2-16アルキニル)スズ、好ましくはテトラ(フェニル−C2-10アルキニル)スズなどが例示できる。
置換基を有する代表的なアルキニルスズとしては、ハロゲン原子を有する化合物[トリブチル(4−クロロフェニルエチニル)スズ、トリブチル(4−ブロモフェニルエチニル)スズなどのトリC1-10アルキル(ハロフェニルエチニル)スズなど]、アルキル基を有する化合物[トリブチル(4−メチルフェニルエチニル)スズなどのトリC1-10アルキル(C1-4アルキルフェニルエチニル)スズなど]、ハロアルキル基を有する化合物[トリブチル(4−トリフルオロメチルフェニルエチニル)スズなどのトリC1-10アルキル(ハロC1-4アルキルフェニルエチニル)スズなど]、ヒドロキシル基を有する化合物[6−トリブチルスタニル−5−ヘキシン−1−オールなどのトリC1-10アルキル(ヒドロキシC2-16アルキニル)スズ、トリブチル(4−メトキシフェニルエチニル)スズなどのトリC1-10アルキル(C1-4アルコキシフェニルエチニル)スズなど]、アルコキシ基を有する化合物[2−トリブチルスタニルエチニルエチルエーテルなどのトリC1-10アルキル(C1-4アルコキシC2-16アルキニル)スズ]、カルボキシル基又はアルコキシカルボニル基を有する化合物[7−トリブチルスタニル−6−ヘプチン酸メチルエステルなどのトリC1-10アルキル(カルボキシ又はC1-4アルコキシ−カルボニルC2-16アルキニル)スズ]、アミド基を有する化合物[N,N−ジメチル−7−トリブチルスタニル−6−ヘプチン酸アミドなどのトリC1-10アルキル(カルバモイルC2-16アルキニル)スズ又はそのN−アルキル置換アミドなど]、ニトリル基を有する化合物[6−トリブチルスタニル−5−ヘキシノニトリルなどのトリC1-10アルキル(シアノC2-16アルキニル)スズなど]などが例示できる。
なお、アルキニルスズ化合物には、スズ原子に水素原子を有するチンハイドライド(例えば、ジブチル(エチニル)チンハイドライドなどのジC1-10アルキル(C2-10アルキニル)チンハイドライドなど)、スズ原子にハロゲン原子を有するチンハライド(例えば、ジブチル(エチニル)チンクロライドなどのジC1-10アルキル(C2-10アルキニル)チンハライド)なども含まれる。さらに、アルキニルスズ化合物には、アセチレン系化合物のアルキニル基の水素原子がスズ原子で置換した化合物も含む。なお、アルキニルスズ化合物は、ヒドロスタニル化やジスタニル化反応、ハロゲン化スズとアセチレン系化合物との反応などにより反応系中で発生するアルキニルスズ化合物を利用してもよい。
[水素分子]
水素分子は、質量数1の通常の水素原子(1H)で形成された水素分子(H−H)以外に、水素同素体原子(重水素(ジューテリウム)2H:D、三重水素(トリチウム)3H:T)で構成された分子、例えば、H−D、D−D、H−T、D−T、T−Tを含む。これらの水素分子は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。水素分子としては、通常の水素分子又は重水素分子が使用される。
さらには、水素分子は、脱水素可能な化合物(シクロヘキサンなどの炭化水素、2−プロパノールなどの2級又は1級アルコール類など)から反応系中で発生させてもよい。また、水やアルコールを還元して系中で水素分子を発生させてもよい。
前記反応により生成した有機スズ化合物のうち、好ましい化合物(3)は、スタニルアルケン類である。前記有機スズ化合物は新規化合物を含んでいる。すなわち、本発明の新規な有機スズ化合物は、下記式(1a)で表され、通常の水素原子と特定の置換基とを有する有機スズ化合物と、重水素原子(D又はT)を有する有機スズ化合物とを含んでいる。
Figure 0004377635
(式中、X1及びX2は同一又は異なって水素原子又は重水素原子を示し、X1及びX2が水素原子であるとき、R1はアルキル基又はアリール基を示し、R2は、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、およびN−置換アミド基から選択された置換基を有するアルキル基;アルコキシ基;置換アリール基;複素環基;又は基R1 3Sn−C≡C−(R1は上記に同じ)を示す。X1及びX2が重水素原子であるとき、R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、複素環基又は前記式(4)で表される基を示し、前記アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、複素環基は置換基を有していてもよい)
前記式(1a)において、通常、R1はアルキル基又はアリール基を示し、R2は、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、およびN−置換アミド基から選択された置換基を有するアルキル基;アルコキシ基;置換アリール基;複素環基;又は基R1 3Sn−C≡C−(R1は上記に同じ)を示し、X1及びX2は同一又は異なって水素原子又は重水素原子を示す。
前記式(1a)の置換基としては前記式(1)〜(3)の項で例示のR1a、R1b、R1c及びR2aに対応する原子や置換基がそのまま挙げられる。すなわち、式(1)〜(3)におけるR1a、R1b、R1cは前記式(1a)のR1に対応しており、式(1)〜(3)のR2aは前記式(1a)のR2に対応している。
式(1a)において、R1で表されるアルキル基は、通常、直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルキル基(特にC1-6アルキル基)である。R1で表されるアリール基は、通常、C6-10アリール基(特にフェニル基)である。これらのアルキル基やアリール基は、R2a又はR2で表されるアルキル基及びアリール基と同様の置換基を有していてもよい。
2で表されるアルキル基は、通常、直鎖状又は分岐鎖状C1-20アルキル基(好ましくはC1-10アルキル基、特にC1-6アルキル基)である。R2の置換基としてのアルコキシカルボニル基は、通常、C1-6アルコキシ−カルボニル基(特にC1-4アルコキシ−カルボニル基)である。アミド基は、置換基、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基などのC1-4アルキル基やC1-4アルキルカルボニル基を有していてもよく、N−置換アミド基は、モノ置換アミド基(N−アルキルアミド基など)であってもよく、ジ置換アミド基(N,N−ジアルキルアミド基など)であってもよい。これらの置換基の数は特に制限されず、通常、1〜4程度であってもよい。置換基の置換位置は、アルキル基末端、側鎖又は分岐鎖であってもよい。
2で表されるアルコキシ基は、通常、直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルコキシ基(特にC1-4アルコキシ基)である。
置換アリール基としては、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素原子)、直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基(特にC1-4アルキル基)、直鎖状又は分岐鎖状ハロC1-6アルキル基(クロロメチル、フルオロメチル、トリクロロメチル、トリフルオロメチル、パーフルオロプロピル基などの特にハロC1-6アルキル基)、ヒドロキシル基、直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルコキシ基(特にC1-4アルコキシ基)、カルボキシル基、直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルコキシ−カルボニル基(特にC1-4アルコキシ−カルボニル基)、アミド基、前記N−置換アミド基などから選択された少なくとも一種の置換基を有するC6-10アリール基(特にフェニル基)などが例示できる。アリール基に対する置換基の数は、通常、1〜4程度であってもよい。置換基の置換位置は、アリール基(例えば、フェニル基)のo−,m−,p−位、2,6−、3,5−、3,4,5−、2,4,6−位などであってもよい。
2で表される複素環基としては、前記例示の複素環基、例えば、窒素、酸素及び硫黄原子から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を環の構成原子として含む5又は6員複素環基(例えば、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピリジル基、モルホリノ基など)、これらの5又は6員複素環基と炭化水素環(ベンゼン環など)とが縮合した縮合複素環基などが例示できる。
1及びX2のうち少なくとも一方(一方又は双方)が重水素原子であるとき、R1およびR2で表される前記アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、複素環基としては、前記と同様の基が例示できる。これらの基の置換基としては、前記アルキニルスズ化合物の項で記載したのと同様の置換基(ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、N−置換アミノ基、アミド基、N−置換アミド基、シアノ基など)が例示できる。
なお、式(1a)において、R1は、通常、アルキル基であり、R2は、通常、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基、又は基R1 3Sn−C≡C−(R1は上記に同じ)である。
このような新規化合物も、前記触媒の存在下、式(2)で表される化合物のうち式(1a)に対応するアルキニルスズ化合物と水素分子又は重水素分子とを反応させることにより容易に製造できる。
[反応溶媒]
前記アルキニルスズ化合物(2)と水素分子又は重水素分子(3)との反応は、溶媒の非存在下で行ってもよく溶媒の存在下で行ってもよい。例えば、溶媒を用いる溶液系、溶媒を用いない無溶媒系、気相流通反応系などで反応させてもよい。好ましい反応は、反応温度の制御などの容易な溶液系である。
溶媒としては、特に制限はなく、例えば、エーテル類(ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラハイドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタンなど)、炭化水素類(n−ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキセン、シクロペンテンなどの脂環族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類)、ハロゲン化炭化水素類、ジメチルスルホキサイド、スルフォランなどの含硫黄系溶媒などが挙げられる。また、超臨界状態の二酸化炭素、エタン、フルオロカーボンなどの常温・常圧で液体でない成分であっても、流体の状態で利用可能であれば使用できる。
さらに、溶媒は、含窒素系溶媒であってもよい。含窒素系溶媒としては、分子内に窒素原子を有する化合物なら特に制限はない。例えば、液体アンモニア、アンモニア水などのアンモニア系溶媒、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、エチレンジアミン、ピロリジン、ピペリジンなどのアミン系化合物、ピリジン、α−ピコリン、イミダゾール、ピロールなどの含窒素複素環化合物、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノンなどのアミド系化合物、N、N−ジメチルプロピレンウレアなどの尿素系化合物、ヘキサメチルホスホラミドなどのリン酸アミド系化合物、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系化合物などが含まれる。溶媒は混合溶媒としても使用できる。
溶媒の量は、アルキニルスズ化合物1重量部に対して、例えば、0〜10000重量部、好ましくは、0〜100重量部、さらに好ましくは、0〜50重量部である。
反応での各成分の割合は、各触媒成分の種類などに応じて、触媒活性が損なわれず、安定性を維持できる範囲で選択できる。前記遷移金属触媒の割合は、例えば、アルキニルスズ化合物1モルに対して0.000001〜1モル、好ましくは0.0001〜0.5モル、さらに好ましくは0.0005〜0.2モル程度であり、0.001〜0.1モル倍程度である場合が多い。また、配位子の割合は、前記の通りである。
反応温度は、例えば、−100〜300℃(例えば、−50〜200℃)程度の広い範囲から選択でき、通常、0〜150℃(例えば、30〜120℃)程度である。反応時間は、例えば、経済性などを考慮にして任意に選択できる。
水素分子は、反応容器内に水素ガスとして適当な割合(例えば、アルキニルスズに対して1モル以上の割合)で仕込めばよく、水素分子の圧力や濃度などの条件に特に制限されない。また、圧力や温度条件によっては、水素分子は、液化水素の形態で使用してもよく、臨界状態で使用してもよい。
反応容器内の空間部には、水素以外に気体を充填してもよく、充填する気体としては、酸素などの支燃性の気体を、安全性を考慮に入れた濃度範囲内で使用すること以外に特に制限はない。このような気体としては、例えば、メタン、エタン、エチレン、ブタジエンなどの炭化水素、アンモニア、二酸化窒素、一酸化窒素、シアン化水素などの窒素化合物、硫化水素、二硫化炭素、二酸化硫黄などの硫黄化合物、一酸化炭素や二酸化炭素などであってもよい。好ましい反応は、水素だけを用いる反応系、水素とともに、アルゴンなどの希ガスや窒素などの不活性気体を用いる反応系で行われる。反応系の圧力は、その反応温度において、反応器内の合計圧力として、例えば、0.0001〜100MPa、好ましくは0.001〜10MPa、さらに好ましくは0.01〜1MPaであってもよい。
反応終了後、慣用の分離精製手段、例えば、濃縮、乾固、晶析、再結晶、濾過、抽出、蒸留、クロマトグラフィなどの方法を利用して、生成物を単離してもよい。
本発明は、アルキニルスズ化合物からアルケニルスズ化合物(オレフィン化合物)を得ることができ、試薬、医薬又は農薬の中間体、重合性化合物を得るのに有用である。また、重水素化化合物は、標識化合物としても利用できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1
20mLのガラス製反応容器に溶媒としてジメチルスルフォキサイド(DMSO)(0.3mL)、カルボニル(ジヒドリド)トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(RuH2(CO)(PPh33、5モル%、18.4ミリグラム、0.020ミリモル)、トリブチルホスフィン(30モル%、0.12ミリモル)を加えて攪拌した。さらに、トリブチル(オクチニル)スズ(0.40ミリモル)を加えて、十分に水素ガス(常圧)で置換した。80℃で6時間攪拌した。反応終了液をガスクロマトグラフィーで測定することにより、トリブチル(オクチニル)スズの転化率を求めたところ100%であった。反応液を水(5mL)で処理し、エーテルで抽出操作を行った(20mL×3回)。その後、有機層を併せて飽和食塩水(10mL)で洗い、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。濃縮後、ゲルパーミエーションクロマトグラフィGPC(クロロホルム)で単離したところ、2−トリブチルスタニル−1−オクテンをアルキニルスズ基準で収率89%(モル%)で得られた。
2−トリブチルスタニル−1−オクテン:黄色の油状物質
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ:0.85−0.91(m,18H)
,1.25−1.54(m,20H),2.23(t,J=7.5Hz,2H),5.08(dt,J=3.0,1.2Hz,1H),5.67(dt,J=3.0,1.5Hz,1H);
13C−NMR(75MHz,CDCl3)δ:9.5,13.6,14.0,22.
6,27.3,28.9,29.1,29.6,31.7,41.4,124.6,156.0;
119Sn{1H}−NMR(186MHz,CDCl3)δ:−47.5;
元素分析(C2042Sn)
計算値 C 59.87; H 10.55
実測値 C 59.99; H 10.19。
比較例1
カルボニル(ジヒドリド)トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムを添加することなく反応時間を30時間にする以外、実施例1と同様にして反応したところ、全く生成物は得られなかった。
実施例2
カルボニル(ジヒドリド)トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムに代えてドデカカルボニル三ルテニウム(Ruとして5モル%、4.3ミリグラム、6.7μモル)を用いるとともに反応時間を30時間とする以外、実施例1と同様にして反応したところ、転化率100%で、2−トリブチルスタニル−1−オクテンが収率79%で得られた。なお、収率は、ガスクロマトグラフィの測定により求めたアルキニルスズ基準でのモル%である。
実施例3
トリブチル(オクチニル)スズに代えて6−トリブチルスタニル−5−ヘキシン−1−オールを用いるとともに反応時間を12時間とする以外、実施例1と同様にして反応したところ、転化率100%で、5−トリブチルスタニル−5−ヘキセン−1−オールが収率89%で得られた。
5−トリブチルスタニル−5−ヘキセン−1−オール:黄色油状物質
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ:0.85−0.91(m,13
H),1.24−1.62(m,19H),2.26(t,J=7.5Hz,2H),3.65(t,J=6.2Hz,2H),5.10(dt,J=3.0,0.9Hz,1H),5.66(dt,J=3.0,1.2Hz,1H);
13C−NMR(75MHz,CDCl3)δ:9.4,13.5,25.5,27.
3,29.0,32.3,40.8,62.7,125.0,155.3;
119Sn{1H}−NMR(186MHz,CDCl3)δ:−47.2。
実施例4
トリブチル(オクチニル)スズに代えて7−トリブチルスタニル−6−ヘプチン酸メチルエステルを用いるとともに反応時間を30時間とする以外、実施例1と同様にして反応させたところ、転化率100%、メチル−6−トリブチルスタニル−6−ヘプテノエートが収率65%で得られた。
メチル−6−トリブチルスタニル−6−ヘプテノエート:黄色油状物質
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ:0.85−0.91(m,15H
),1.24−1.67(m,16H),2.25(t,J=7.5Hz,2H),2.31(t,J=7.5Hz,2H),3.66(s,3H),5.10(dt,J=3.0,1.2Hz,1H),5.66(dt,J=3.0,1.5Hz,1H);
13C−NMR(75MHz,CDCl3)δ:9.4,13.5,24.5,27.
3,28.9,29.0,33.8,40.7,51.4,125.1,155.0,174.3;
119Sn{1H}−NMR(186MHz,CDCl3)δ:−47.0。
実施例5
トリブチル(オクチニル)スズに代えてN,N−ジメチル−7−トリブチルスタニル−6−ヘプチン酸アミドを用いたことと反応時間を14時間にしたこと以外は実施例1と同様に反応したところ、転化率100%、N,N−ジメチル−6−トリブチルスタニル−6−ヘプタン酸アミドが収率71%で得られた。
N,N−ジメチル−6−トリブチルスタニル−6−ヘプタン酸アミド:黄色の油状物質
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ:0.85−0.91(m,15H)
,1.24−1.66(m,16H),2.26(t,J=7.5Hz,2H),2.31(t,J=7.5Hz,2H),2.94(s,3H),3.00(s,3H),5.10(dt,J=2.7,0.9Hz,1H),5.66(dt,J=2.7,1.5Hz,1H);
13C−NMR(75MHz,CDCl3)δ:9.4,13.6,24.8,27.
3,29.0,29.2,33.2,35.3,37.2,40.9,125.0,155.3,173.2;
119Sn{1H}−NMR(186MHz,CDCl3)δ:−47.2。
実施例6
トリブチル(オクチニル)スズに代えて6−トリブチルスタニル−5−ヘキシノニトリルを用いたことと反応時間を48時間にしたこと以外、実施例1と同様にして反応したところ、転化率100%、5−トリブチルスタニル−5−ヘキセノニトリルが収率70%で得られた。
5−トリブチルスタニル−5−ヘキセノニトリル:黄色油状物質
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ:0.85−0.92(m,15H)
,1.31(sext,J=7.2Hz,6H),1.43−1.53(m,6H),1.74(quint,J=7.2Hz,2H),2.31(t,J=7.2Hz,2H),2.38(t,J=7.2Hz,2H),5.20(q,J=1.2Hz,1H),5.66(q,J=1.2Hz,1H);
13C−NMR(75MHz,CDCl3)δ:9.4,13.5,16.2,24.
8,27.3,29.0,39.6,119.7,127.0,152.9;
119Sn{1H}−NMR(186MHz,CDCl3)δ:−45.8。
実施例7
トリブチル(オクチニル)スズに代えて2−トリブチルスタニルエチニルエチルエーテルを用いたこと以外は実施例1と同様にして反応したところ、転化率100%、1−エトキシ−1−トリブチルスタニルエチレンが収率65%で得られた。
1−エトキシ−1−トリブチルスタニルエチレン:黄色油状物質
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ:0.85−0.91(m,15H)
,1.21(t,J=6.9Hz,3H),1.30(sext,J=7.2Hz,6H),1.45−1.56(m,6H),3.77(q,J=7.2Hz,2H),4.50(d,J=7.2Hz,1H),6.77(d,J=7.2Hz,1H);
13C−NMR(75MHz,CDCl3)δ:9.9,13.6,15.2,27.
2,29.1,66.7,97.7,157.2;
119Sn{1H}−NMR(186MHz,CDCl3)δ:−49.9;
元素分析(C1634OSn)
計算値 C, 53.21; H, 9.49
実測値 C, 53.48; H, 9.33。
実施例8
トリブチルホスフィンに代えてN,N−ジメチル−2−(ジフェニルホスフィノ)フェニルメチルアミン(10モル%、0.04ミリモル)を用い、溶媒としてトルエンを用い、トリブチル(オクチニル)スズに代えてトリブチル(フェニルエチニル)スズを用いるとともに反応時間を4時間にする以外は実施例1と同様にして反応させたところ、転化率100%、1−フェニル−1−トリブチルスタニルエチレンが収率88%で得られた。
1−フェニル−1−トリブチルスタニルエチレン:黄色油状物質
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ:0.86(t,J=7.2Hz,9
H),0.97(t,J=8.1Hz,6H),1.29(sext,J=7.2Hz,6H),1.43−1.54(m,6H),5.42(d,J=2.4Hz,1H),6.03(d,J=2.4Hz,1H),7.15−7.22(m,3H),7.26−7.32(m,2H);
13C−NMR(75MHz,CDCl3)δ:10.1,13.5,27.2,28
.9,126.3,126.4,126.9,128.3,146.5,154.8;
119Sn{1H}−NMR(186MHz,CDCl3)δ:−40.1。
実施例9
トリブチル(フェニルエチニル)スズに代えてトリブチル(4−メトキシフェニルエチニル)スズを用いたこと以外は実施例8と同様にして反応させたところ、転化率100%、1−(4−メトキシフェニル)−1−トリブチルスタニルエチレンが収率81%で得られた。
1−(4−メトキシフェニル)−1−トリブチルスタニルエチレン:黄色の油状物質
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ:0.88(t,J=7.2Hz,9
H),0.99(t,J=8.1Hz,6H),1.32(sext,J=7.2Hz,6H),1.46−1.56(m,6H),3.82(s,3H),5.35(d,J=2.4Hz,1H),6.02(d,J=2.4Hz,1H),6.86(d,J=8.7Hz,2H),7.15(d,J=8.4Hz,2H);
13C−NMR(75MHz,CDCl3)δ:10.1,13.5,27.2,28
.9,55.2,113.8,125.3,127.5,138.8,153.7,158.5;
119Sn{1H}−NMR(186MHz,CDCl3)δ:−40.3。
実施例10
トリブチル(フェニルエチニル)スズに代えてトリブチル(4−トリフルオロメチルフェニルエチニル)スズを用いたこと以外は実施例8と同様にして反応させたところ、転化率100%、1−(4−トリフルオロメチルフェニル)−1−トリブチルスタニルエチレンが収率25%、及び、2−(4−トリフルオロメチルフェニル)−1−トリブチルスタニルエチレンが収率53%(トランス/シス=58/42)で得られた。
1−(4−トリフルオロメチルフェニル)−1−トリブチルスタニルエチレン:黄色油状物質
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ:0.86(t,J=7.2Hz,9
H),0.97(t,J=8.1Hz,6H),1.29(sext,J=7.2Hz,6H),1.42−1.53(m,6H),5.50(d,J=2.4Hz,1H),6.03(d,J=2.4Hz,1H),7.22(d,J=8.1Hz,2H),7.54(d,J=8.1Hz,2H);
元素分析(C21333Sn)
計算値 C, 54.69; H, 7.21
実測値 C, 54.57; H, 7.055。
実施例11
トリブチル(フェニルエチニル)スズに代えてトリブチル(4−ブロモフェニルエチニル)スズを用いたこと以外は実施例8と同様にして反応させたところ、転化率100%、1−(4−ブロモフェニル)−1−トリブチルスタニルエチレンが収率55%で得られた。
1−(4−ブロモフェニル)−1−トリブチルスタニルエチレン:黄色油状物質
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ:0.86(t,J=7.2Hz,9
H),0.96(t,J=8.1Hz,6H),1.29(sext,J=7.2Hz,6H),1.42−1.52(m,6H),5.43(d,J=2.4Hz,1H),6.00(d,J=2.4Hz,1H),7.00−7.04(m,2H),7.41(d,J=8.7Hz,2H);
13C−NMR(75MHz,CDCl3)δ:10.1,13.5,27.2,28
.9,120.1,127.5,128.0,131.4,145.6,153.8;
119Sn{1H}−NMR(186MHz,CDCl3)δ:−38.6。
実施例12
トリブチル(フェニルエチニル)スズに代えてトリブチル(3−チエニルエチニル)スズを用いたこと以外は実施例8と同様にして反応させたところ、転化率100%、1−(3−チエニル)−1−トリブチルスタニルエチレンが収率65%で得られた。
1−(3−チエニル)−1−トリブチルスタニルエチレン:黄色油状物質
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ:0.87(t,J=7.2Hz,9
H),0.99(t,J=8.1Hz,6H),1.30(sext,J=7.2Hz,6H),1.44−1.53(m,6H),5.36(d,J=2.4Hz,1H),6.12(d,J=2.4Hz,1H),6.97(dd,J=3.0,1.2Hz,1H),7.10(dd,J=5.1,1.2Hz,1H),7.25(dd,J=5.1,3.0Hz,1H);
13C−NMR(75MHz,CDCl3)δ:10.2,13.4,27.2,29
.0,120.0,125.4,125.8,126.0,147.7;
119Sn{1H}−NMR(186MHz,CDCl3)δ:−39.4。
実施例13
トリブチル(オクチニル)スズに代えて1,4−ビス(トリブチルスタニル)−1,3−ブタジインを用いたことと反応時間を16時間にしたこと以外は実施例1と同様にして反応させたところ、転化率100%、2,4−ビス(トリブチルスタニル)ブタ−1−エン−3−インが収率38%、及び2,3−ビス(トリブチルスタニル)−1,3−ブタジエンが収率2%で得られた。
2,4−ビス(トリブチルスタニル)ブタ−1−エン−3−イン:黄色油状物質
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ:0.89(t,J=7.2Hz,9
H),0.90(t,J=7.2Hz,9H),0.98−1.04(m,12H),1.25−1.40(m,12H),1.45−1.61(m,12H),6.50(s,2H)。
実施例14
軽水素に代えて重水素を用いたこと以外は実施例2と同様にして反応させたところ、転化率100%、1,1−ジジューテリオ−2−トリブチルスタニル−1−オクテンが収率71%で得られた。生成物のD原子の含有率を1H−NMRの測定結果より見積もったところ、99%以上であった。
1,1−ジジューテリオ−2−トリブチルスタニル−1−オクテン:黄色油状物質
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ:0.85−0.91(m,18H)
,1.25−1.54(m,20H),2.23(t,J=7.5Hz,2H);
13C−NMR(75MHz,CDCl3)δ:9.4,13.6,14.0,22.
6,27.3,28.9,29.0,29.6,31.7,41.2,124.0,155.7;
119Sn{1H}−NMR(186MHz,CDCl3)δ:−47.5。
実施例15
軽水素に代えて重水素を用いたこと以外は実施例1と同様にして反応させたところ、転化率100%、1,1−ジジューテリオ−2−トリブチルスタニル−1−オクテンが収率87%で得られた。生成物のD原子の含有率は97%であった。
実施例16
軽水素に代えて重水素を用いたこと以外は実施例8と同様にして反応させたところ、転化率100%、2,2−ジジューテリオ−1−フェニル−1−トリブチルスタニルエチレンが収率70%で得られた。生成物のD原子の含有率は96%であった。
2,2−ジジューテリオ−1−フェニル−1−トリブチルスタニルエチレン:黄色油状物質
1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ:0.86(t,J=7.2Hz,9
H),0.97(t,J=8.1Hz,6H),1.29(sext,J=7.2Hz,6H),1.43−1.54(m,6H),7.15−7.22(m,3H),7.26−7.32(m,2H);
13C−NMR(75MHz,CDCl3)δ:10.1,13.5,27.2,28
.9,126.3,126.4,126.9,128.3,146.5,154.5;
119Sn{1H}−NMR(186MHz,CDCl3)δ:−39.6。

Claims (8)

  1. 下記式(1a)
    Figure 0004377635
    (式中、X及びX は水素原子を示し、R はアルキル基又はアリール基を示し、R、アミド基、およびN−置換アミド基から選択された置換基を有するアルキル基;直鎖状又は分岐鎖状C 1−6 アルキル基、直鎖状又は分岐鎖状ハロC 1−6 アルキル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、直鎖状又は分岐鎖状C 1−6 アルコキシ−カルボニル基、アミド基、N−置換アミド基から選択された少なくとも一種の置換基を有するC 6−10 アリール基少なくとも1つの硫黄原子を環の構成原子として含む5又は6員複素環基;少なくとも1つの硫黄原子を環の構成原子として含む5又は6員複素環基と炭化水素環とが縮合した縮合複素環基;又は基R Sn−C≡C−(Rは上記に同じ)を示す。)で表される有機スズ化合物。
  2. 遷移金属元素で構成された触媒の存在下、下記式(3)で表される水素分子又は重水素分子と、下記式(2)で表されるアルキニルスズ化合物とを反応させ、下記式(1)で表される有機スズ化合物を製造する方法。
    Figure 0004377635
    [式中、R 1a 、R 1b 、R 1c 及びR 2a は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、アルコキシ基又は下記式(4)で表される基
    Figure 0004377635
    (R 1a 、R 1b 、R 1c は上記に同じ)を示し、前記アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、複素環基又はアルコキシ基は置換基を有していてもよく、X 及びX は同一又は異なって水素原子又は重水素原子を示す]
  3. 遷移金属元素が、周期表4族元素乃至周期表11族元素から選択される少なくとも1つの元素である請求項2記載の製造方法。
  4. 周期表15族元素及び周期表16族元素から選択された少なくとも一種の元素を含む化合物の共存下で反応する請求項2記載の製造方法。
  5. 周期表第6族元素および周期表第8族元素から選択される少なくとも1つの遷移金属元素で構成された触媒と、周期表15族元素を含む化合物との共存下反応させる請求項2記載の製造方法。
  6. 下記式(3)で表される水素分子又は重水素分子と、下記式(2)で表されるアルキニルスズ化合物とを反応させ、下記式(1)で表される有機スズ化合物を製造するための触媒であって、遷移金属元素で構成されている触媒。
    Figure 0004377635
    [式中、R 1a 、R 1b 、R 1c 及びR 2a は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、アルコキシ基又は下記式(4)で表される基
    Figure 0004377635
    (R 1a 、R 1b 、R 1c は上記に同じ)を示し、前記アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、複素環基又はアルコキシ基は置換基を有していてもよく、X 及びX は同一又は異なって水素原子又は重水素原子を示す]
  7. さらに、周期表15族元素及び周期表16族元素から選択された少なくとも一種の元素を含む化合物を含む請求項6記載の触媒。
  8. 期表第6族元素および周期表第8族元素から選択される少なくとも1つの遷移金属元素を含む化合物と、周期表15族元素を含む化合物とで構成されている請求項6記載の触媒。
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