JP4378937B2 - ポンプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ピストンあるいはダイヤフラム等により、ポンプ室内の容積を変更して流体の移動を行う容積形ポンプに関連し、特に、信頼性が高くかつ流量が多いポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種のポンプとしては、入口流路及び出口流路と容積が変更可能なポンプ室との間に、逆止弁が取り付けられている構成のものが一般的である。(例えば特許文献1参照)
また、流体の粘性抵抗を利用して一方向への流れを生じさせるポンプ構成として、出口流路に弁を備え、その弁の開弁時には入口流路が出口流路よりも大きい流体抵抗を有するようにした構成のものがある。(例えば特許文献2参照)
【0003】
さらに、弁部に可動部品を使わず、ポンプの信頼性を向上させるポンプ構成として、入口流路、出口流路ともに圧力降下が流れの方向によって異なる流路形状をした圧縮構成要素を備えた構成のものがある。(例えば特許文献3及び非特許文献1参照)
【0004】
【特許文献1】
特開平10-220357号公報
【特許文献2】
特開平08-312537号公報
【特許文献3】
特表平08-506874号公報
【非特許文献1】
Anders Olsson, An improved valve‐less pump fabricate using deep reactive ion etching,1996 IEEE 9th Internationa1 Workshop on Micro E1ectro Mechanical Systems,p.479-484
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1の構成では、入口流路及び出口流路ともに逆止弁が必要であり、流体が2個所の逆止弁を通過すると圧力損失が大きいという問題がある。また、逆止弁は繰り返し開閉するために疲労損傷する危険があり、逆止弁の数が多いほど信頼性が低くなるという問題もある。
【0006】
特許文献2の構成では、ポンプ吐出行程時に入口流路に生じる逆流を少なくするために、入口側流路の流体抵抗を大きくする必要がある。すると、ポンプ吸入行程では、その流体抵抗に逆らって流体をポンプ室内へ導入するために、吐出行程に比べ吸入行程がかなり長くなる。従って、ポンプの吐出吸入サイクルの周波数はかなり低くなってしまう。
【0007】
ピストンあるいはダイヤフラムを上下動させるポンプは、ピストンあるいはダイヤフラムの面積が等しい場合、一般的に上下動させる周波数が高いほど流量が多くなり出力が高くなる。しかし、特許文献2の構成では前述したように低い周波数でしか駆動できないため、小型で高出力なポンプを実現できない問題がある。
【0008】
特許文献3の構成は、ポンプ室体積の増減に従い圧縮構成要素を通過する流体の、流れの方向による圧力降下の違いにより正味流量を一方向に流す構成のため、ポンプ出口側の外部圧力(負荷圧力)が高くなるにつれて逆流量が増えてしまい、高負荷圧力ではポンプ動作をしなくなる問題がある。非特許文献1によると、最大負荷圧力は0.760気圧程度である。
【0009】
そこで本発明は、機械的開閉弁の個数を減らして、圧力損失を減らすとともに信頼性を高め、高負荷圧力に対応し、高周波駆動に対応し、さらに、ポンピング一周期当たりの吐出流体体積も増加させ駆動効率の良いポンプの提供を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、可動壁を変位させるアクチュエータと、該アクチュエータを駆動する駆動手段と、前記可動壁の変位により容積が変更可能なポンプ室と、前記ポンプ室へ流体を流入させる入口流路と、前記ポンプ室から前記流体を流出させる出口流路とを備えたポンプであって、前記入口流路は、前記ポンプ室に前記流体が流入する場合の流体抵抗が、前記ポンプ室から前記流体が流出する場合の流体抵抗よりも小さくなる流体抵抗要素を備え、前記駆動手段は、前記可動壁が前記ポンプ室の容積を減少させるように動作する行程中または前記可動壁が前記ポンプ室の容積を最小にする位置にある場合に、前記ポンプ室の圧力が概略吸入側圧力と等しい値以下となるように前記アクチュエータを駆動するようにした。
【0011】
また、請求項2記載の発明は、請求項1に記載のポンプにおいて、前記ポンプ室内部の圧力を検出するポンプ圧力検出手段をさらに備え、前記駆動手段は、前記ポンプ圧力検出手段によって検出された前記ポンプ室内部の圧力値が、前記概略吸入側圧力と等しい値以下となるように、前記可動壁の変位する速度を制御する変位制御手段を備えている。
【0012】
また、請求項3記載の発明は、請求項2記載のポンプにおいて、前記変位制御手段は、前記可動壁の一周期の変位が終了した時点から、前記ポンプ圧力検出手段が当該変位終了後の一定の圧力に対して上昇する圧力の変化を検出するまでの時間を測定し、前記時間が長くなるように前記可動壁の変位する速度を制御することを特徴としている。
【0013】
また、請求項4記載の発明は、請求項2に記載のポンプにおいて、前記変位制御手段は、前記ポンプ圧力検出手段で検出した前記ポンプ室内部の圧力値が前記出口流路よりも下流側の負荷圧力に略相当する下流側負荷圧力値以上となる期間について、前記検出値と前記下流側負荷圧力値との差を時間積分した演算値を算出し、前記演算値が大きくなるように前記可動壁の変位する速度を制御することを特徴としている。
【0014】
また、請求項5記載の発明は、請求項2乃至4の何れか1項に記載のポンプにおいて、前記変位制御手段は、前記可動壁の前記ポンプ室の容積を最小にする位置を一定として、前記可動壁が前記ポンプ室の容積を減少させる方向へ変位するときの変位時間を変更することによって、前記可動壁が前記ポンプ室の容積を減少させるように動作する行程における前記可動壁の変位する速度を制御することを特徴としている。
【0015】
また、請求項6記載の発明は、請求項2記載のポンプにおいて、前記変位制御手段は、前記ポンプ圧力検出手段が検出した前記ポンプ室内部の圧力値が前記出口流路よりも下流側の負荷圧力に略相当する下流側負荷圧力値よりも低下した以後に、前記可動壁が前記ポンプ室の容積増大の方向へ変位するように制御を行うこと特徴としている。
【0018】
また、請求項7記載の発明は、請求項4又は6の何れかに記載のポンプにおいて、前記下流側負荷圧力値は、予め入力された値であることを特徴としている。
【0019】
また、請求項8記載の発明は、請求項4又は6の何れかに記載のポンプにおいて、前記下流側負荷圧力値を検出する負荷圧力検出手段をさらに備え、前記下流側負荷圧力値は、前記負荷圧力検出手段の測定値であることを特徴としている。
【0020】
また、請求項9記載の発明は、請求項1乃至8の何れか1項に記載のポンプにおいて、前記入口流路の合成イナータンス値は前記出口流路の合成イナータンス値よりも小さいことを特徴としている。
ここで、イナータンス値Lとは、流路の断面積をS、流路の長さをl、動作流体の密度をρとした場合に、L=ρ×l/Sで与えられる。流路の差圧をΔP、流路を流れる流量をQとした場合に、イナータンス値Lを用いて流路内流体の運動方程式を変形することで、ΔP=L×dQ/dtという関係が導き出される。つまり、イナータンス値Lとは、単位圧力が流量の時間変化に与える影響度合を示しており、イナータンス値Lが大きいほど流量の時間変化が小さく、イナータンス値Lが小さいほど流量の時間変化が大きくなる。また、複数の流路の並列接続や、複数の形状が異なる流路の直列接続に関する合成イナータンス値は、個々の流路のイナータンス値を、電気回路におけるインダクタンスの並列接続、直列接続と同様に合成して算出すれば良い。また、ここで言う入口流路とは、入口接続管の流体流入側端面までの流路のことを言う。ただし、管路の途中に脈動吸収手段が接続されている場合は、ポンプ室内から脈動吸収手段との接続部までの流路のことを言う。さらに、複数のポンプの入口流路が合流している場合は、ポンプ室内から合流部までの流路のことを言う。出口流路についても同様である。
【0021】
また、請求項10記載の発明は、請求項1乃至9の何れか1項に記載のポンプにおいて、前記出口流路は、ポンプ動作時に前記ポンプ室と連通していることを特徴としている。
【0022】
また、請求項11記載の発明は、請求項1乃至10の何れか1項に記載のポンプにおいて、前記駆動手段は、前記ポンプ室内部の圧力が概略吸入側圧力よりも低下している時に、前記可動壁が前記ポンプ室の容積増大の方向へ変位する行程のほぼ全行程を運動するよう前記アクチュエータを駆動することを特徴としている。
【0023】
また、請求項12記載の発明は、請求項1乃至11の何れか1項に記載のポンプにおいて、前記アクチュエータは、圧電素子であることを特徴としている。
【0024】
また、請求項13記載の発明は、請求項1乃至11の何れか1項に記載のポンプにおいて、前記アクチュエータは、超磁歪素子であることを特徴としている。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る複数の実施形態を図面に基づいて説明する。
先ず、本発明に係わるポンプの第1実施形態の構造について図1で説明する。図1は、本発明のポンプの縦断面を示している。円筒形状のケース7の底部に円形のダイヤフラム5を配置している。ダイヤフラム5は、外周緑がケース7に固定支持されて弾性変形自在となっている。ダイヤフラム5の底面には、ダイヤフラム5を動かすためのアクチュエータとして、図面の上下方向に伸縮する圧電素子6が配置されている。
【0040】
ダイヤフラム6とケース7の上壁との間の狭い空間がポンプ室3であり、このポンプ室3へ向けて流体抵抗要素である逆止弁4を設けた入口流路1と、ポンプ動作中でも常にポンプ室と運通した細い穴のあいた管路である出口流路2とが開口している。そして、入口流路1を構成する部品の外周の一部は、ポンプに図示していない外部要素と接続するための入口接続管8となっている。また、出口流路2を構成する部品の外周の一部は、ポンプに図示していない外部要素と接続するための出口接続管9となっている。また、入口流路、出口流路ともに、動作流体の入口側を丸めた丸め部分15a,15bがある。
【0041】
ここで、イナータンス値Lの定義を行なう。流路の断面積をS、流路の長さをl、動作流体の密度をρとした場合に、L=ρ×l/Sで与えられる。流路の差圧をΔP、流路を流れる流量をQとした場合に、イナータンス値Lを用いて流路内流体の運動方程式を変形することで、ΔP=L×dQ/dtという関係が導き出される。
【0042】
つまりイナータンス値Lとは、単位圧力が流量の時間変化に与える影響度合を示しており、イナータンス値Lが大きいほど流量の時間変化が小さく、イナータンス値Lが小さいほど流量の時間変化が大きくなる。
また、複数の流路の並列接続や、複数の形状が異なる流路の直列接続に関する合成イナータンス値は、個々の流路のイナータンス値を、電気回路におけるインダクタンスの並列接続、直列接続と同様に合成して算出すれば良い。
【0043】
また、ここで言う入口流路とは、ポンプ室3内から入口接続管8の流体流入側端面までの流路のことを言う。ただし、管路の途中に脈動吸収手段が接続されている場合は、ポンプ室3内から脈動吸収手段との接続部までの流路のことを言う。さらに、複数のポンプの入口流路1が合流している場合は、ポンプ室3内から合流部までの流路のことを言う。出口流路についても同様である。
【0044】
図1に基づいて、入口流路1、出口流路2の流路長さ、面積の記号関係を説明する。入口流路1において、逆止弁4近傍の縮径管路部の長さをL1、面積をS1とし、残りの拡大された管路部の長さをL2、面積をS2とする。また、出口流路2において、出口流路2の管路の長さをL3、面積をS3とする。
以上の記号と、動作流体の密度ρを用いて、入口流路1、出口流路2のイナータンス関係を説明する。
【0045】
入口流路1のイナータンスは、ρ×L1/S1+ρ×L2/S2として算出される。一方、出口流路2のイナータンスは、ρ×L3/S3として算出される。そして、これら流路は、ρ×L1/S1+ρ×L2/S2<ρ×L3/S3を満たす寸法関係となっている。
以上の構成において、ダイヤフラム5の形状は円形に限定するものではない。また、例えばポンプ停止時に万一加えられる過大な負荷圧力からポンプ構成部品を守るために、出口流路2に弁要素が配置されても、少なくともポンプ動作時にポンプ室と連通していれば構わない。また、逆止弁4は、流体の圧力差によって開閉するものだけではなく、流体の圧力差以外の力で開閉を制御することができるタイプのものを使用しても構わない。
【0046】
さらに、ダイヤフラム5を動かすアクチュエータ6には伸縮するものであれば何を使用しても良いが、本発明のポンプ構造は、アクチュエータとダイヤフラム5とが変位拡大機構を介さずに接続され、ダイヤフラムを高い周波数で運転可能なため、本実施形態のように応答周波数が高い圧電素子6を使用することで、高周波駆動による流量増加ができ、小型高出力なポンプが実現できる。同様に高い周波数特性を有する超磁歪素子を使用しても良い。
【0047】
また、機械的開閉弁は吸入側のみに配置すれば良いため、弁による流量減少を減らすとともに信頼性も高くなる。
次に、第1実施形態におけるダイヤフラムの運動方法について、図2、図3、図4、図5を用いて説明する。
図2には、ポンプを運転したときの、ダイヤフラム5の変位の波形W1、ポンプ室3の内圧の波形W2、出口流路2を通過する流体の体積速度(出口管路の断面積×流体の流速であり、この場合は流量と等しい量。)の波形W3、逆止弁4を通過する流体の体積速度の波形W4を示している。また、図2に示している負荷圧力Pfuは、出口流量2より下流側位置の流体圧力であり、吸入側圧力Pkyは、入口流路1より上流側の流体圧力である。
【0048】
ダイヤフラム5の変位の波形W1に示すように、波形の傾きが正の領域が、圧電素子6が延びてポンプ室3の容積が減少している過程である。また、波形の傾きが負の領域は、圧電素子6が縮んでポンプ室3の容積が増大している過程である。
そして、約4.5μm変位した平坦な波形区間が、ダイヤフラム5の到達変位位置、即ち、ポンプ室3の容積が最小となるダイヤフラム5の変位位置である。
【0049】
ポンプ室3の内圧変化の波形W2に示すように、ポンプ室3の容積を減少する過程が始まると、ポンプ室3の内圧上昇が開始する。そして、ポンプ室3の容積を減少する過程が終了する前に、ポンプ室3の内圧最大値を迎えて減少し始めている。この内圧最大の地点は、ダイヤフラム5による排除流体の体積速度と、波形W3で示した出口流路2の流体の体積速度とが等しくなる点である。
【0050】
この理由は、この時刻より前では、
排除流体の体積速度 − 出口流路2の流体の体積速度 > 0
の関係を有しているので、その分ポンプ室3内の流体が圧縮され、ポンプ室3内の圧力が上昇し、この時刻より後では、
排除流体の体積速度 − 出口流路2の流体の体積速度 < 0
の関係を有しているので、その分ポンプ室3内の流体の圧縮量が減少し、ポンプ室3内の圧力は降下するからである。
【0051】
ポンプ室3内の圧力は、各時刻によるポンプ室3内の流体の体積変化をΔVとすると、
ΔV = ダイヤフラムによる排除流体体積 + 吸入流体体積 − 吐出流体体積と流体の圧縮率との関係に従って変化する。したがって、ポンプ室3の容積が減少している過程であっても、負荷圧力Pfuよりもポンプ室3内の圧力が低下する場合もある。
【0052】
さらに、図2の場合では、ポンプ室3内圧力が吸入側圧力Pkyよりも低下し、絶対0気圧に近づいたところで、動作流体中に溶けていた成分がガス化して気泡となるエアレーションやキャビテーンヨンが起こり、絶対0気圧付近で飽和している。ただし、ポンプを含んだ流路系全体が加圧され吸入側圧力Pkyも十分に高い場合は、エアレーションやキャビテーションは発生しない場合もある。
【0053】
また、出口流路2の流体の体積速度の波形W3に示すように、出口流路2内では、ポンプ室3内圧力が負荷圧力Pfuよりも大きい期間が、ほぼ流体の体積速度の増加期間となっている。そして、ポンプ室3内圧力が負荷圧力Pfuより低下すると、出口流路2内の流体の体積速度も減少し始める。
ポンプ室3内圧力と負荷圧力Pfuとの差圧をΔPout、出口流路2での流体抵抗をRout、イナータンスをLout、流体の体積速度をQoutとおくと、出口流路2内の流体には、
【0054】
【数1】
【0055】
という関係が成り立つため、これら流体の体積速度の変化率は、ΔPoutとRout×Qoutとの差をイナータンス値Loutで割ったものと等しい。そして、一周期分の波形W3で示されている流体の体積速度を積分した値が、一周期当たりの吐出流体体積となる。
また、逆止弁4を通過する流体の体積速度変化の波形W4に示すように、入口流路1では、ポンプ室3内圧力が吸入側圧力Pkyよりも減少すると、その圧力差によって逆止弁4が開き、流体の体積速度が増加し始める。また、ポンプ室3内圧力が上昇し、吸入側圧力Pkyよりも増加すると、流体の体積速度が減少し始める。そして、逆止弁4の逆止効果によって逆流は防がれている。
【0056】
ポンプ室3内圧力と吸入側圧力Pkyとの差圧をΔPin、出口流路2での流体抵抗をRin、イナータンスをLin、流体の体積速度をQinとおくと、入口流路1内の流体でも、
【0057】
【数2】
【0058】
という関係が成り立つため、これら流体体積速度の変化率も、ΔPinとRin×Qinとの差を入口流路1のイナータンス値Linで割ったものと等しい。
そして、一周期分の波形W4で示されている流体の体積速度を積分した値が、一周期当たりの吸入流体体積である。そして、この吸入流体体積は、波形W3で算出した吐出流体体積と等しい。
【0059】
本実施形態のポンプ構造では、入口流路1のイナータンス値を出口流路2のイナータンス値よりも小さくしてあるので、入口流路1の流体は、大きな流体速度の変化率で流入し、吸入流体体積(=吐出流体体積)を増加させることができる。
一方、図3は、圧電素子の変位量は等しいものの、ポンプ室の容積を減少させる方向への変位時間が長く、ポンプ室の内圧が十分に上昇しない場合の各波形を示してある(W1:ポンプを運転したときのダイヤフラムの変位の波形、W2:ポンプ室の内圧の波形)。
【0060】
図3の動作状態では、図示していないポンプ室容積増加行程を開始するタイミングには、ポンプ室内圧力が負荷圧力Pfuと等しくなってしまっており、ダイヤフラム変位を減少させポンプ室の容積増大によってポンプ室内圧力が低下しても、ポンプ室内圧を吸入側圧力よりも低下させるために、多くのダイヤフラム変位が必要となってしまいポンプ性能が大幅に低下する。場合によっては、ポンプ室の内圧が吸入側圧力より低下せず、吸入弁は開かずに出口流路内において吐出方向への流量とポンプ室内方向へ逆流する流量とが等しくなり、ポンプとしては機能しない状態となる。
【0061】
このように、本構造のポンプは一周期のポンピング動作でダイヤフラムの変位による排除体積(正確には、排除体積×容積効率)を吐出する、従来の容積型ポンプと動作原理が異なっており、ダイヤフラム5のポンプ室容積減少行程における変位速度やポンプ室容積増大行程とポンプ内部の圧力変動とのタイミングがポンプ出力に大きな影響を及ぼすという特徴をもつ。
【0062】
そこでまず、ポンプとして充分に機能させるためのダイヤフラムの運動方法について説明する。
ポンプ室3内の圧力は、前述の通り、ポンプ室3内の流体の体積変化と流体の圧縮率との関係従って変化するため、排除体積と吸入流体体積との和より吐出流体体積が大きい場合、ポンプ室3の容積が減少している過程であってもポンプ室3内の圧力が低下することが起こり得る。そして、ダイヤフラム5のポンプ室容積減少行程の変位速度によって、このポンプ室内の圧力低下量が変わる。
【0063】
そこで、ポンプ室容積減少行程中または前記可動壁を到達変位位置で停止させた場合に、ポンプ室3内圧力が概略吸入側圧力と等しい値以下となるような変位速度を選んでダイヤフラム5を駆動すると、ダイヤフラム5をポンプ室容積増大方向に変位させることなく、ポンプ室3内圧力を吸入側圧力以下に低下させることができる。この条件の中で速い変位速度でダイヤフラムを駆動すると、ダイヤフラムをポンプ室容積減少方向に動かして到達変位位置で停止させている間であっても、ポンプ室3内圧力はしばらく吸入側圧力よりも低く保たれ、入口流路より流体を吸入できる。
さらに、ポンプ室3内圧力を吸入側圧力以下に低下している間にポンプ室容積増大行程を行えば、ダイヤフラム5の変位量のほぼ全てをポンプ内部の圧力を吸入側圧力よりも低く保ちポンプ室内に流体を吸入することに利用でき、アクチュエータの限られた変位量を有効に活用して流量増大を図ることができる。
【0064】
また、ポンプ室3内圧力の最大値が、負荷圧力の2倍から吸入側圧力を引いた値以上となるように、ダイヤフラム5を駆動しても良い。図3のW2はその条件ぎりぎりの圧力状態を示している。
こうすることでポンプ室と出口流路との内部に存在する流体の固有振動によって、ポンプ内部の圧力は負荷圧力と吸入側圧力との差圧とほぼ等しい値を振幅とし負荷圧力を中心に振動し、圧力振動の効果だけによってポンプ内部の圧力を吸入側圧力近傍以下まで低下させることができる。
【0065】
特に、ポンプ室3内圧力の最大値が負荷圧力の2倍以上の値となるようにダイヤフラム5を駆動することによって、ポンプ室3内部の圧力を吸入側圧力よりも確実に低下させることができ、ポンプ室3内圧力はしばらく吸入側圧力よりも低く保たれ、入口流路より流体を吸入できるようになる。
その際、ダイヤフラム5のポンプ室容積減少行程の変位速度によっては、ダイヤフラムをポンプ室容積減少方向に動かして到達変位位置で停止させているだけで、ポンプ室3内圧力の最大値が負荷圧力の2倍以上の値となり、その間ポンプ室内に入口流路から流体を吸入させることができる。
さらに、ポンプ室3内圧力を吸入側圧力以下に低下している間にポンプ室容積増大行程を行えば、ダイヤフラム5の変位量のほぼ全てをポンプ内部の圧力を吸入側圧力よりも低く保ちポンプ室内に流体を吸入することに利用でき、アクチュエータの限られた変位量を有効に活用して流量増大を図ることができる。
【0066】
また、ダイヤフラム運動1周期のうちポンプ内部の圧力が吸入側圧力よりも低下している時間が60%以上となるように、ダイヤフラム5を駆動しても良い。図2の駆動はこの条件を満たしている一例を示している。このように駆動すると、ポンプの吸入時間が長くなり、より多くの流体を入口流路からポンプ室内に吸入することができる。
その際、ダイヤフラム5のポンプ室容積減少行程の変位速度によっては、ダイヤフラムをポンプ室容積減少方向に動かして到達変位位置で停止させているだけで、ダイヤフラム運動1周期のうちポンプ内部の圧力が吸入側圧力よりも低下している時間が60%以上となり、その間ポンプ室内に入口流路から流体を吸入させることができる。
【0067】
この時さらに、ポンプ室3内圧力を吸入側圧力以下に低下している間にポンプ室容積増大行程を行えば、ダイヤフラム5の変位量のほぼ全てをポンプ内部の圧力を吸入側圧力よりも低く保ちポンプ室内に流体を吸入することに利用できるとともに、吸入時間をより長くすることができ、アクチュエータの限られた変位量を有効に活用して流量増大を図ることができる。
次に別な課題を解決するためのダイヤフラムの運動方法について説明する。
ここで、イナータンスの定義式を時間積分すると、
【0068】
【数3】
【0069】
となる。イナータンス値は一定なので、ある管路において、その両端の差圧の積分値が大きいほどその期間での管路内流体の流体体積速度Qの変化量が大きくなる。出口流路2で考えると、ポンプ室3の内圧と負荷圧力Pfuとの差圧の積分値が大きいほど、出口流路2内部の流体には吐出方向へ向う速い流れ(=大きな運動量も持った流れ)が生じる。その運動量が減少するまでに、入口流路1側から多くの流体をポンプ室3内に導入することができる。つまり、出口流路2において(3)式の左辺の値を大きくすることは、1サイクル当りのポンプの吐出流量(=吸入流量)を多くするのに効果がある。そして、ダイヤフラムのポンプ室容積減少行程における変位速度を速くすると、この(3)式の左辺の値は増加する傾向にある。
【0070】
図4には、ポンプ室3の内圧が負荷圧力Pfuよりも低下した以降にも、ダイヤフラム5をポンプ室3の圧縮方向へ変位させた場合の各波形を示している。この場合、図3と異なりポンプとしては動作するものの、次のような問題がある。それは、ポンプ室3の内圧が負荷圧力Pfuよりも低下した以降におけるダイヤフラム5の変位は、ポンプ内圧上昇に寄与せず、(3)式でいう左辺の値を増やす効果もなく、ポンプ出力も増加しない。その一方で、圧電素子6を変位させるためにエネルギーを消費するため、ポンプの入力が増大し、ポンプ効率が低下するという問題である。
【0071】
このような問題を解決するのに必要なダイヤフラム5のポンプ室容積減少行程における変位速度について、次に説明する。
図3で説明したように、ポンプ室3の圧力は、負荷圧力Pfuを中心にポンプ室3と出口流路2との内部にある流体の固有振動周期で振動するため、ポンプ室3の圧力が負荷圧力Pfu以上となっている期間は、ポンプ室3と出口流路2との内部にある流体の固有振動周期の略1/2である。
【0072】
従って、ダイヤフラム5のポンプ室容積減少行程における変位速度が、到達変位位置に固有振動周期Tの1/2の時間で到達する変位速度以上であれば、ダイヤフラム5の変位量を無駄なく(3)式の左辺の値の増加に寄与させ、ポンプ出力を増加させることができる。
ここで、ダイヤフラム5は、図2、図4のようにポンプ室容積減少方向へ一定変位速度で変位せず、時間と共に変位速度が変化すように変位しても構わない。その際には、ダイヤフラム5のポンプ室容積減少方向への全行程のうち少なくとも半分以上の行程における変位速度の平均をとり、その平均変位速度が到達変位位置に固有振動周期Tの1/2の時間で到達する変位速度以上とすれば、ダイヤフラム5の変位量をほぼ無駄なく(3)式の左辺の値の増加に寄与させ、ポンプ出力を増加させる効果がある。
【0073】
また、図5は、第1実施形態のポンプにおいて、ダイヤフラム5の到達変位位置を一定として、到達変位位置へ達するまでの時間と一周期の吐出流体体積の関係を示したグラフである。この図では、ポンプ室3と出口流路2に存在する流体の固有振動周期をT(このグラフは固有振動数1/T=9.5kHz)としている。この図に示すように、ポンプ室3の容積が減少する方向へのダイヤフラム5の変位時間を短くしすぎると、一周期の吐出流体体積がが増加しないにもかかわらずポンプ室3の内圧が上昇しすぎる。そしてその結果、ポンプ室3を構成する逆止弁4やダイヤフラム5に耐久性の問題が発生する。つまり、ダイヤフラム5のポンプ室容積減少行程における平均変位速度が、到達変位位置に固有振動周期Tの1/10の時間より小さい時間で到達する変位速度より小さくなると、逆止弁4やダイヤフラム5に耐久性の問題が発生する。
【0074】
以上、第1実施形態のように圧電素子6を駆動制御することで、ポンプの耐久性を向上し、且つ、限られたダイヤフラム5の変位量を有効に利用して流量増大を図ることができる。したがって、圧電素子6の性能を十分に行かした小型軽量高出力のポンプを実現でき、高負荷圧力にも対応することができるとともに、ポンピング一周期当たりの吐出流体体積も増加させて駆動効率の良いポンプを提供することができる。
【0075】
また、ポンプ室3と出口流路2の固有振動周期Tの1/2の時間を過ぎると、ポンプ室3内の圧力が負荷圧力より小さくなるので、前記可動壁がポンプ室容積減少方向への運動を開始した時点からT/2の時間以降においてダイヤフラム5をポンプ室3の容積が増大する方向へ変位させれば、(3)式の左辺の値を減少させないで済む。すなわち、ポンプの吐出流量を低下させないで、ダイヤフラムを変位前の状態に戻すことができる。
【0076】
以下に説明する第2〜第5実施形態は、ダイヤフラム5のポンプ室3容積減少方向への運動を制御することで一周期の吐出流体体積を多くする実施形態である。
第2実施形態を示す図6は、圧電素子6の駆動制御を行う駆動手段20のブロック図である。
【0077】
駆動手段20は、トリガー信号を発生するトリガー発生回路22と、電圧増幅アンプ回路24と、変位制御手段26とで構成されている。
トリガー発生回路22は、ある決まった周期でトリガー信号を発生する回路であり、電圧増幅アンプ回路24は、入力された信号を、駆動に必要な所定の電力に増幅し圧電素子6に供給するものである。
【0078】
変位制御手段26は、トリガー信号を受けると一周期分の電圧波形を出力するものである。そして、出口流路2やポンプ室3を含むポンプ内に配置した圧力センサ(ポンプ圧力検出手段)28の検出値に基づいて、ダイヤフラム5の到達変位位置を一定としたまま変位時間を変更することで、変位速度を制御するものであり、I/OポートやROMを内蔵したマイコンで構成されている。
【0079】
図7に、前述した変位制御手段26の処理手順をフローチャートで示す。
先ず、ステップS2において、圧力の閾値Pshを設定する。この閾値Pshは、圧力センサ28に吸入側圧力Pkyが加わった時の出力値以上の値を使用している。このようにすると、低圧時の微妙な圧力上昇による誤検出がない。
次いで、ステップS4に移行し、ダイヤフラム5の複数の変位時間Hti(i=1、2、3…)のうち変位時間Ht1を選ぶ。なお、次回以降は、他の変位時間Htiを変更して選択する。
【0080】
次いで、ステップS6に移行し、ダイヤフラム5の全ての変位時間Htiについて後述する経過時間TMmiの計測が終了したかを確認し、終了していない場合にはステップS12に移行し、終了した場合にはステップS10に移行する。
次いで、ステップS12では、トリガー信号Siの入力により圧電素子6へ一周期分の電圧波形の出力を開始する。この際より好ましくは、ポンプ室内の圧力が定常状態になっていることを確認してからトリガー信号を出力する。
【0081】
次いで、ステップS14に移行し、ポンプ内圧力が閾値Pshより低下したかを確認し、終了した場合にはステップS16に移行する。
ステップS16では、タイマTMによる時間計測を開始する。
次いで、ステップS18に移行し、圧力センサ28により第1回目のポンプ室3の圧力Pin1を計測する。
【0082】
次いで、ステップS20に移行し、圧力センサ28により第2回目のポンプ室3の圧力Pin2を計測する。
次いで、ステップS22に移行し、閾値Pshと、第1回目のポンプ室3の圧力Pin1と、第2回目のポンプ室3の圧力Pin2の関係が、Pin1<Psh<Pin2の関係になっているか否かを確認する。Pin1<Psh<Pin2の関係になっている場合には、ステップS24に移行し、Pin1<Psh<Pin2の関係になっていない場合には、ステップS26に移行する。
【0083】
ステップS26では、第2回目のポンプ室3の圧力Pin2の値を、第1回目のポンプ室3の圧力Pin1としてステップS20に戻る。
また、ステップS24では、タイマTMによる時間計測を停止する。
次いで、ステップS28に移行し、タイマTMの値を、経過時間TMmi(i=1、2、3…)に記憶してからステップS4に戻る。
【0084】
そして、ステップS6において、ダイヤフラム5全ての変位時間Htiの経過時間TMmiの計測が終了した場合に移行するステップS10では、これまで記憶した経過時間TMm1、TMm2、TMm3…の中の最大値を算出する。
次いで、ステップS30に移行し、最大値となった所定の経過時間TMmiに対応するダイヤフラム5の変位時間Htiを選択した後、処理を終了する。
【0085】
そして、選択した変位時間Htiでダイヤフラム5が変位するように、駆動手段20が圧電素子6の駆動制御を行う。
図7で示した変位制御手段26の処理行うことで、ポンプ室3の圧力が予め設定した閾値Psh超えて増える点までの経過時間が最も長くなるように、ダイヤフラム5がポンプ室3の容積を減少する方向へ変位するときの変位時間を設定することができ、以下の理由により、ポンピング一周期当たりの吐出流体体積が増加して駆動効率の良いポンプを提供することができる。
【0086】
その理由を、図8、図9を用いて説明する。図8及び図9は、本実施形態のポンプの圧電素子6に、異なる駆動電圧波形を単発パルス状に印可して発生したダイヤフラム5の変位と、その変位に対応したポンプ室3の圧力の変化を示すものである。
図8、図9から明らかなように、ダイヤフラム5を単発パルスで変位させると、ダイヤフラム5が静止しても、ポンプ室3の内圧が一旦、絶対圧で0atm付近に下がってから所定時間経過した後に、ポンプ室3の内圧が再び上昇していく。
【0087】
このポンプ室3の内圧の現象を説明すると、ポンプ室3の内圧は、ポンプ室33内の流体体積変化をΔVとすると、
ΔV= ダイヤフラム5による排除体積 + 吸入流体体積 − 吐出流体体積と流体の圧縮率とで決まる。そのため、ダイヤフラム5を静止させて排除体積を零としていても、吸入流体体積と吐出流体体積の変化によって、ポンプ室内圧力が変化する。そして、単発パルスでダイヤフラム5が一周期の変位を行った後は、次第に吸入流体体積の増加量が吐出流体体積の増加量よりも多くなっていき、ポンプ室3の圧力が徐々に増加していくのである。
【0088】
そして、図9で示すダイヤフラム5の変位波形の立ち上がりの傾きが、図8で示すダイヤフラム5の変位波形の立ち上がりの傾きより大きいので、図9の方が、ダイヤフラム5の変位速度が速くなっている。そして、図8と比較して図9の方がポンプ室3の内圧が再び上昇していく時間が長い(t1<t2)。ポンプ室3の内圧が再び上昇する時間tは、エアレーションやキャビテーンヨンが生じている場合は、一周期の吐出流体体積が多いほど長くなるため前記時間tを計測し、それが長くなるよう、ダイヤフラム5が到達変位位置まで変位するときの変位時間Ht(立ち上げ速度)を適宜選択すると、一周期の吐出流体体積を多くすることができる。
【0089】
なお、ポンプ圧力検出手段としては、圧力センサ28以外にも、ダイヤフラムの歪量を歪ゲージや変位センサで測定して、ポンプ室3の圧力を算出してもよい。また、ポンプ自体の変形を歪ゲージで測定して、ポンプ室3の圧力を算出してもよい。また、入口流路1側に受動弁を備え、その弁が閉じている状態でのポンプ室3の圧力による変形を、歪ゲージや変位センサで測定して、ポンプ室3の圧力を算出してもよい。また、圧電素子6の変位を測定するために、圧電素子6に歪ゲージが取り付けられていて、圧電素子6への印可電圧、若しくは印可電荷(目標変位量)と歪ゲージによる測定値(実変位量)と圧電素子6のヤング率から、ポンプ室3の圧力を算出するようにしてもよい。これらの方法は、ポンプ室3の内部に設けなくて済むので、ポンプの小型化を促進することができる。また、歪ゲージとしては、歪量を抵抗変化、静電容量変化、または、電圧変化で検出するもの等のどのタイプを使用しても構わない。
【0090】
また、ある変位速度の際の経過時間と、それを理想的な最大経過時間にするためにその変位速度に加える補正量とを、予め実験等により求め、それを変位制御手段のROM内にマップ化して保有しておき、経過時間を測定すると、そのマップを参照し、ダイヤフラム5がポンプ室3の容積を減少する方向へ変位するときの変位速度を補正する手段を設けると、同様の効果を得ながら、より高速に変位速度を制御することができる。
【0091】
次に、図10は、第3実施形態を示すものである。
この図も、変位制御手段26の処理手順を示すフローチャートである。図6で示した構成と同一構成なので、駆動手段20のブロック図を省略する。
先ず、ステップS30において、ダイヤフラム5の複数の変位時間Hti(i=1、2、3…)のうち変位時間Ht1を選ぶ。なお、次回以降は、他の変位時間Htiを変更して選択する。
【0092】
次いで、ステップS32に移行し、ダイヤフラム5の全ての変位時間Htiに対して後述する演算値Fiの算出が終了したかを確認し、終了していない場合にはステップS38に移行し、終了した場合にはステップS36に移行する。
ステップS38では、トリガー信号Siの入力により圧電素子6へ一周期分の電圧波形の出力を開始する。
【0093】
次いで、ステップS44に移行し、圧力センサ28によりポンプ室3の圧力Pinを計測する。
次いで、ステップS46に移行し、基準値(所定の値)Paとポンプ室3の圧力Pinとの関係が、Pa≦Pinの関係になっているか否かを確認する。ここで、基準値Paは、圧電素子6が駆動する前のポンプ室の圧力値である。Pa≦Pinの関係になっている場合には、ステップS50に移行し、Pa≦Pinの関係になっていない場合には、ステップS44に戻る。
【0094】
次いで、ステップS50では、計測したポンプ室3の圧力Pinを記憶圧力値Pmj(j=1、2、3…と、このステップを処理するたびにjの値はインクリメントする。)に記憶し、ステップS52では、その計測時の時刻をTMmj(j=1、2、3…)に記憶してからステップS54に移行する。
ステップS54では、ポンプ室の圧力Pinを測定し、その測定値と基準値Paとの関係が、Pa>Pinの関係になっているか否かを確認する。Pa>Pinの関係になっている場合には、ステップS56に移行し、Pa>Pinの関係になっていない場合には、ステップS50に戻る。
【0095】
そして、ステップS56において、記憶圧力値Pmj(j=1、2、3…)、基準値Pa、時刻TMmj(j=1、2、3…)を使用し、記憶圧力値Pmjと基準値Paとの差を時間積分して演算値Fiを算出する。
そして、ステップS32においてダイヤフラム5の全ての変位時間Htiに対する演算値Fiの算出が終了した場合に移行する先であるステップS36では、これまで記憶した演算値F1、F2、F3…の中の最大値を算出する。
【0096】
次いで、ステップS58に移行し、最大値となった所定の演算値Fiに対応するダイヤフラム5の変位時間Htiを選択した後、処理を終了する。
そして、選択した変位時間Htiでダイヤフラム5が変位するように、駆動手段20が圧電素子6の駆動制御を行う。
以上の変位制御手段26の処理行うことで、前述した式(3)の左辺の値を算出して、それが最も大きくなるように、ダイヤフラム5がポンプ室3の容積を減少する方向へ変位するときの変位時間を設定することができ、ポンピング一周期当たりの吐出流体体積が増加して駆動効率の良いポンプを提供することができる。
【0097】
なお、演算値としては本実施形態のように、圧力値Piと基準値Paとの差を時間積分すると高精度に圧電素子6の制御を行えるが、例えばポンプ室3の圧力Piのピーク値と基準値Paとの差と、基準値Pa≦圧力Piとなっている時間とを積算したものを使用することもできる。
ところで、本発明に係るポンプは、出口流路2に接続した出口管路(出口流路2より下流側)とポンプ室3とが連通しているので、駆動する前のポンプ室3の圧力は負荷圧力Pfuと等しい。
【0098】
そこで、圧電素子6が駆動する前のポンプ室の圧力を基準値Paとせずに、負荷圧力Pfuを基準値(所定の値)として図10で示した第3実施形態の変位制御手段26の処理手順を行うこともできる。
負荷圧力Pfuを基準値とする場合には、負荷圧力Pfuが事前にわかっている場合はその値を使用するのが簡便で望ましい。また、負荷圧力Pfuを測定する手段を設け、その測定値を使用することも、事前に想定できない様々な負荷圧力Pfuに対応できる点で望ましい。また、ポンプ駆動時に一時的に数波形分駆動を停止すると(例えば、2kHzで駆動しているときに、2000波形駆動すると10波形停止し、また、2000波形駆動する)、停止している間にポンプ室3の圧力振動が停止するので、そのときのポンプ室3の圧力は負荷圧力Pfuと等しい。そこで、ポンプ圧力検出手段である圧力センサ28のそのときの値を負荷圧力Pfuを使用するのが、様々な負荷圧力Pfuに対応でき、更に負荷圧力を測定する新たな手段を備えなくても済む点で好ましい。
【0099】
また、ある変位速度の際の演算値Fiと、それを理想的な最大演算値Fmaxにするためにその変位速度に加える補正量とを、予め実験等により求め、それを変位制御手段のROM内にマップ化して保有しておき、演算値Fiを算出すると、そのマップを参照し、ダイヤフラム5がポンプ室3の容積を減少する方向へ変位するときの変位速度を補正する手段を設けると、同様の効果を得ながら、より高速に変位速度を制御することができる。
【0100】
次に、図11及び図12は、第4実施形態を示すものである。
図11は、圧電素子6の駆動制御を行う駆動手段20のブロック図を示すものであり、本実施形態の変位制御手段26は、ポンプ内の出口流路2に配置した流速センサ(流速測定手段)30の検出値に基づいてダイヤフラム5の変位時間を変更して決定する。
【0101】
図12に、本実施形態の変位制御手段26の処理手順をフローチャートで示す。なお、第3実施形態で示した図10のフローチャートと同一ステップは、同一ステップ番号を付し、その説明は省略する。なお、ステップS32において全てのダイヤフラム5の変位時間Htiに対して、後述する流速差ΔVの算出が終了した場合には、ステップS60に移行する。
【0102】
このフローチャートにおいて、ステップS38でトリガー信号Siの入力により圧電素子6へ一周期分の電圧波形の出力を開始すると、ステップS62に移行し、流速センサ30により出口流路2の流速を計測する。
次いで、ステップS64に移行し、出口流路2の最大流速Vmaxを算出する。次いで、ステップS66に移行し、出口流路の最小流速Vminを算出する。
【0103】
次いで、ステップS68に移行し、最大流速Vmaxと最小流速Vminとの流速差ΔVを算出する。
次いで、ステップS70に移行し、流速差ΔVを記憶流速値ΔVi(i=1、2、3…)に記憶してからステップS30に戻る。
そして、ダイヤフラム5の全ての変位時間Htiに対する流速差ΔViの記憶が終了した場合には、ステップS60に移行し、これまで記憶した速度差ΔV1、ΔV2、ΔV3…の中の最大値を算出する。
【0104】
次いで、ステップS70に移行し、最大値となった所定の速度差ΔViに対応するダイヤフラム5の変位時間Htiを選択した後、処理を終了する。
そして、選択した変位時間Htiでダイヤフラム5が変位するように、駆動手段20が圧電素子6の駆動制御を行う。
本実施形態によると、前述した(3)式で説明したように、積分期間での流体体積速度の差が大きいほど、ポンプ室3の圧力と負荷圧力との差圧の積分値が大きくなるため、ポンピング一周期当たりの吐出流体体積が増加して駆動効率の良いポンプを提供することができる。
【0105】
また、ある変位速度の際の流速差ΔVと、それを理想的な最大流速差ΔVmaxにするためにその変位速度に加える補正量とを、予め実験等により求め、それを変位制御手段のROM内にマップ化して保有しておき、最大流速Vmaxと最小流速Vminとの流速差ΔVを測定すると、そのマップを参照し、ダイヤフラム5がポンプ室3の容積を減少する方向へ変位するときの変位速度を補正する手段を設けると、同様の効果を得ながら、より高速に変位速度を制御することができる。
【0106】
なお、本実施形態の流速センサ30は、超音波式、流速を圧力に変換して測定する方式、或いは、熱線式の流速センサなどが利用可能である。
また、第2、第3、第4の実施形態では、駆動手段の回路構成を簡単にするため、圧電素子への最大印加電圧を一定値にして、ダイヤフラムの到達変位位置は一定値のままでポンプ室容積減少行程の変位時間を変更して、変位速度を制御している。しかし、到達変位位置と変位時間の両方を変更して変位速度を制御しても構わない。到達変位位置を増加させた場合でも、第2、第3、第4の実施形態で示した制御を行うことで、到達変位位置の増加によるダイヤフラムの排除体積増加分によるポンプ出力の増加以上に、ポンプ出力を増加させることができる。
【0107】
さらに、図13は、第5実施形態を示すものである。
本実施形態は、ポンプの出口流路2に、流体を溜めることができるチャンバ32が接続している。このチャンバ32と、その内部に備えられた液面センサ34とで移動流体体積測定手段が構成されており、液面センサ34から液面高さの検出情報が駆動手段20に入力するようになっている。
【0108】
駆動手段20は、ポンプの出口流路2から流体が吐出されると、吐出時間と液面高さを計測し、ダイヤフラム5の一周期当りの吐出体積を算出する。そして、その吐出体積が最大となるように、ダイヤフラム5がポンプ室3の容積を減少する方向へ変位するときの変位速度を適宜設定する。その結果、ポンピング一周期当たりの吐出流体体積が増加し、駆動効率の良いポンプを提供することができる。
【0109】
また、図示しないが、入口流路1、或いは出口流路2に脈動吸収用のバッファを設け、そのバッファの膜の変位量を測定して駆動手段20に出力し、バッファの膜の変位量が最大になるように、ダイヤフラム5がポンプ室3の容積を減少する方向へ変位するときの変位速度を設定することで、ポンピング一周期当たりの吐出流体体積を増加させることができる。というのは、吐出流体体積が多いほどバッファが吸収/吐出する流体体積が多く、バッファ膜が大きな変位で振動するからである。
【0110】
ここで、第2、第3、第4、第5実施形態の処理は、ポンプ駆動開始時に毎回行っても良いし、ポンプ駆動中に適当なタイミングで行っても良い。
次に、図14は、第6実施形態を示すものである。
本実施形態の駆動手段は、図6に示した第2実施形態の駆動手段と同一構成であり、図14には、ダイヤフラム5がポンプ室3の容積を増大する方向へ変位するときの立ち下げタイミングを制御することで、一周期の吐出流体体積を多くする変位制御手段26の処理手順をフローチャートで示している。
【0111】
先ず、ステップS80において、トリガー信号Sの入力により一周期分の電圧波形の印加を開始する。
次いで、ステップS84に移行し、圧力センサ28により第1回目のポンプ室3の圧力Pin1を計測する。
次いで、ステップS86に移行し、圧力センサ28により第2回目のポンプ室3の圧力Pin2を計測する。
【0112】
次いで、ステップS88に移行し、第1回目のポンプ室3の圧力Pin1と、第2回目のポンプ室3の圧力Pin2の関係が、Pin2<Pin1の関係になっているか否かを確認する。Pin2<Pin1の関係になっている場合には、ステップS90に移行し、Pin2<Pin1の関係になっていない場合には、ステップS84に戻る。
【0113】
ステップS90では、第2回目のポンプ室3の圧力Pin2と、負荷圧力Pfuとの関係が、Pin2<Pfuの関係になっているか否かを確認する。Pin2<Pfuの関係になっている場合には、ステップS94に移行し、Pin2<Pfuの関係になっていない場合には、ステップS86に移行する。
そして、ステップS94では、電圧波形の電圧の立ち下げを開始し、処理を終了する。
【0114】
本実施形態の処理を行うことで、前述した(3)式の左辺の値を減少させないで、ダイヤフラム5がポンプ室3の容積を増大する方向へ変位する立ち下げタイミングを設定することができる。その結果、ポンピング一周期当たりの吐出流体体積が増加して駆動効率の良いポンプを提供することができる。
なお、本実施形態ではポンプ室3の圧力センサ28使用したが、第5実施形態で使用した流速センサを使用し、図2、図4に示したようにポンプ室3の圧力が負荷圧力Pfuより低下すると、出口流路2の流体体積速度も減少し始めることを利用して、出口流路2の流体体積速度が減少し始めるタイミングで、圧電素子6への印加電圧の立ち下げを開始するように処理しても同様の効果を奏することができる。
ここで、アクチュエータ変位量の少なくとも半分以上をこのタイミングで立ち下げるようにすれば、ほぼ同様の効果が得られる。
【0115】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のポンプは、弁を入口流路だけに配置すればよく、弁等の流体抵抗要素を入口流路だけに配置すればいいので、流体抵抗要素での圧力損失を減らすとともに、ポンプの信頼性を高めることができる。
また、ピストン或いはダイヤフラムと、それを駆動するアクチュエータとの間には変位拡大機構が配置されておらず、弁に粘性抵抗を利用していないので高周波駆動に対応し、高周波駆動することでポンプの出力を増加することができる。特に、アクチュエータとして圧電素子や超磁歪素子を使用するときには、素子の高い周波数応答性を十分に生かし小型軽量で高出力のポンプを実現できる。
【0116】
また、変位制御を行うことで、ポンプ室の圧力を高圧にすることが可能であり、高負荷圧力にも対応することができるとともに、一周期当りの吐出流体体積も増大させて駆動効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る第1実施形態のポンプ構造の縦断面を示す図である。
【図2】第1実施形態のポンプ動作時の各状態量を示すグラフである。
【図3】ポンプ室の容積を減少させる時間が長く、ポンプ室内圧が十分に上昇しない状態を示すグラフである。
【図4】第1実施形態のポンプの動作で、ポンプ室内圧が負荷圧力よりも低下した以降にも、ダイヤフラムがポンプ室圧縮方向へ変位している時の各状態量を示すグラフである。
【図5】本発明に係る第1実施形態のポンプにおいてダイヤフラムが到達変位位置へ達するまでの時間(立ち上げ時間)と吐出流体体積の関係を示したグラフである。
【図6】本発明に係る第2実施形態の駆動手段を示すブロック図である。
【図7】第2実施形態の駆動手段が行う処理手順を示すフローチャートである。
【図8】本発明のポンプにおいて所定の単発パルスをダイヤフラムに入力した状態を示すグラフである。
【図9】本発明のポンプにおいて図8と異なる所定の単発パルスをダイヤフラムに入力した状態を示すグラフである。
【図10】本発明に係る第3実施形態の駆動手段が行う処理手順を示すフローチャートである。
【図11】本発明に係る第4実施形態の駆動手段を示すブロック図である。
【図12】第4実施形態の駆動手段が行う処理手順を示すフローチャートである。
【図13】本発明に係る第5実施形態のポンプを示す図である。
【図14】第6実施形態の駆動手段が行う処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1:入口流路
2:出口流路
3:ポンプ室
4:逆止弁
5:ダイヤフラム(可動壁)
6:圧電素子(アクチュエータ)
20:駆動手段
22:トリガー発生回路
24:電圧増幅アンプ回路
26:変位制御手段、
28:圧力センサ(ポンプ圧力検出手段)
30:流速センサ(流速測定手段)
32:チャンバ、34:液面センサ
Claims (13)
- 可動壁を変位させるアクチュエータと、該アクチュエータを駆動する駆動手段と、前記可動壁の変位により容積が変更可能なポンプ室と、前記ポンプ室へ流体を流入させる入口流路と、前記ポンプ室から前記流体を流出させる出口流路とを備えたポンプであって、
前記入口流路は、前記ポンプ室に前記流体が流入する場合の流体抵抗が、前記ポンプ室から前記流体が流出する場合の流体抵抗よりも小さくなる流体抵抗要素を備え、
前記駆動手段は、前記可動壁が前記ポンプ室の容積を減少させるように動作する行程中または前記可動壁が前記ポンプ室の容積を最小にする位置にある場合に、前記ポンプ室の圧力が概略吸入側圧力と等しい値以下となるように前記アクチュエータを駆動することを特徴とするポンプ。 - 前記ポンプ室内部の圧力を検出するポンプ圧力検出手段をさらに備え、
前記駆動手段は、前記ポンプ圧力検出手段によって検出された前記ポンプ室内部の圧力値が、前記概略吸入側圧力と等しい値以下となるように、前記可動壁の変位する速度を制御する変位制御手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のポンプ。 - 前記変位制御手段は、前記可動壁の一周期の変位が終了した時点から、前記ポンプ圧力検出手段が当該変位終了後の一定の圧力に対して上昇する圧力の変化を検出するまでの時間を測定し、前記時間が長くなるように前記可動壁の変位する速度を制御することを特徴とする請求項2記載のポンプ。
- 前記変位制御手段は、前記ポンプ圧力検出手段で検出した前記ポンプ室内部の圧力値が前記出口流路よりも下流側の負荷圧力に略相当する下流側負荷圧力値以上となる期間について、前記検出値と前記下流側負荷圧力値との差を時間積分した演算値を算出し、前記演算値が大きくなるように前記可動壁の変位する速度を制御することを特徴とする請求項2に記載のポンプ。
- 前記変位制御手段は、前記可動壁の前記ポンプ室の容積を最小にする位置を一定として、前記可動壁が前記ポンプ室の容積を減少させる方向へ変位するときの変位時間を変更することによって、前記可動壁が前記ポンプ室の容積を減少させるように動作する行程における前記可動壁の変位する速度を制御することを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載のポンプ。
- 前記変位制御手段は、前記ポンプ圧力検出手段が検出した前記ポンプ室内部の圧力値が前記出口流路よりも下流側の負荷圧力に略相当する下流側負荷圧力値よりも低下した以後に、前記可動壁が前記ポンプ室の容積増大の方向へ変位するように制御を行うこと特徴とする請求項2記載のポンプ。
- 前記下流側負荷圧力値は、予め入力された値であることを特徴とする請求項4又は6の何れかに記載のポンプ。
- 前記下流側負荷圧力値を検出する負荷圧力検出手段をさらに備え、
前記下流側負荷圧力値は、前記負荷圧力検出手段の測定値であることを特徴とする請求項4又は6の何れかに記載のポンプ。 - 前記入口流路の合成イナータンス値は前記出口流路の合成イナータンス値よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載のポンプ。
- 前記出口流路は、ポンプ動作時に前記ポンプ室と連通していることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載のポンプ。
- 前記駆動手段は、前記ポンプ室内部の圧力が概略吸入側圧力よりも低下している時に、前記可動壁が前記ポンプ室の容積増大の方向へ変位する行程のほぼ全行程を運動するよう前記アクチュエータを駆動することを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載のポンプ。
- 前記アクチュエータは、圧電素子であることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項に記載のポンプ。
- 前記アクチュエータは、超磁歪素子であることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項に記載のポンプ。
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