JP4379935B2 - 機能性被膜及び機能性物品並びにそれらの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、防曇、撥水、抗菌、帯電防止などの機能を有し、かつその性能が長期間持続する機能性被膜及び機能性物品並びにそれらの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
樹脂板等の基材表面に機能性被膜を形成する場合、基材と被膜の密着性を改良する方法として、基材表面を化学的及び物理的に処理して極性基を導入する方法がある。基材と化学的に結合させる方法として、放射線やプラズマなどによって基材表面に過酸化物結合を導入した後に機能性単量体を重合する方法も知られている。
【0003】
また、活性水素を有する高分子基材に単量体と三重項増感剤を接触させてグラフト重合させ、機能性被膜を形成する方法も知られている(特公昭56−5416号公報)。
【0004】
さらに、ラジカル重合性単量体をゲル化させた後に機能性単量体を接触させて界面で共重合させ、機能性被膜を形成する方法も知られている(特公昭61−4069号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、基材表面を化学的及び物理的に処理して極性基を導入する方法は、極性基の導入量が少なく、基材に対する被膜の密着性は充分とはいえなかった。また、放射線やプラズマなどによって表面に過酸化物結合を導入した後に機能性単量体を重合する方法は特殊な装置と技術が必要であり、基材表面に機能性被膜を容易に形成することができなかった。
【0006】
さらに、特公昭56−5416号公報に記載の方法では、高分子基材に対する単量体の結合量が少ないため、機能性被膜として充分な機能を発現することは困難であるという問題があった。
【0007】
加えて、特公昭56−5416号公報に記載の方法では、ラジカル重合性単量体のゲル化を制御することが困難なために、機能性被膜に白化や凹凸が生じたり、密着性が不充分であるなどの問題があった。
【0008】
この発明は、以上のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、防曇、撥水、抗菌、帯電防止などの機能を有効に発揮できるとともに、外観に優れ、かつ機能を発現する被膜の密着性を良好に維持し、前記機能を長期にわたって持続できる機能性被膜及び機能性物品を提供することにある。その他の目的とするところは、機能を長期にわたって有効に発揮できる機能性被膜又は機能性物品を簡便に得ることができる機能性被膜及び機能性物品の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の目的を達成するために鋭意研究した結果、この発明を完成した。
【0010】
すなわち第1の発明の機能性被膜は、基材表面上に、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンとラジカル重合性単量体を含有する組成物(A)を、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンの複数の過酸化物結合の一部が残るように硬化させることにより組成物(A)より形成される層を形成する第1の工程と、第1の工程で形成された層の表面に機能性単量体を含有する組成物(B)を接触させた状態で重合させることによって組成物(B)より形成される層を形成する第2の工程とにより得られ、基材表面上に被覆される機能性被膜である。
【0011】
第2の発明の機能性被膜は、第1の発明において、ラジカル重合性単量体を含有する組成物(A)及び機能性単量体を含有する組成物(B)の少なくとも一方が、ラジカル重合性基を2個以上有する単量体を含有するものである。
【0012】
第3の発明の機能性被膜は、第1又は第2の発明において、ラジカル重合性単量体を含有する組成物(A)が、更に加水分解性シリル基を有する化合物を含有するものである。
【0013】
第4の発明の機能性被膜は、第1乃至第3のいずれかの発明において、ラジカル重合性単量体を含有する組成物(A)が、更に無機微粒子を含有するものである。
【0014】
第5の発明の機能性被膜は、第1乃至第4のいずれかの発明において、機能性単量体を含有する組成物(B)が、更に防曇剤を含有するものである。
第6の発明の機能性物品は、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンとラジカル重合性単量体を含有する組成物(A)を、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンの複数の過酸化物結合の一部が残るように硬化させることにより基体を形成する第1の工程と、第1の工程で形成された基体の表面に機能性単量体を含有する組成物(B)を接触させた状態で重合させることによって組成物(B)より形成される層を形成する第2の工程とにより得られるものである。
【0015】
第7の発明の機能性被膜の製造方法は、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンとラジカル重合性単量体を含有する組成物(A)を、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンの複数の過酸化物結合の一部が残るように硬化させることにより組成物(A)より形成される層を形成する第1の工程と、第1の工程で形成された層の表面に機能性単量体を含有する組成物(B)を接触させた状態で重合させることによって組成物(B)より形成される層を形成する第2の工程とからなる第1乃至第5のいずれかの発明の機能性被膜を製造するものである。
【0016】
第8の発明の機能性物品の製造方法は、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンとラジカル重合性単量体を含有する組成物(A)を、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンの複数の過酸化物結合の一部が残るように硬化させることにより基体を形成する第1の工程と、第1の工程で形成された基体の表面に機能性単量体を含有する組成物(B)を接触させた状態で重合させることによって組成物(B)より形成される層を形成する第2の工程とからなる第6の発明の機能性物品を製造するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態について詳細に説明する。
この発明の機能性被膜は、基材表面上に、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンとラジカル重合性単量体を含有する組成物(A)を、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンの複数の過酸化物結合の一部が残るように硬化させることにより組成物(A)より形成される層を形成する第1の工程と、第1の工程で形成された層の表面に機能性単量体を含有する組成物(B)を接触させた状態で重合させることによって組成物(B)より形成される層を形成する第2の工程とにより得られ、基材表面上に被覆されるものである。この機能性被膜は、ラジカル重合性単量体を含有する組成物(A)より形成される層と、その層上に機能性単量体を含有する組成物(B)より形成される層とが3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンの断片を介して化学的に結合しているものである。
【0018】
つまり、機能性被膜は2層構造を有するものである。この場合の2層構造とは、上層と下層との間に明確な界面がある場合の他に、界面付近が混合した不完全なものでもよい。なお、この明細書では便宜上、組成物(A)より形成される層を下層、組成物(B)より形成される層を上層と称する。
【0019】
また、機能性物品は、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンとラジカル重合性単量体を含有する組成物(A)を、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンの複数の過酸化物結合の一部が残るように硬化させることにより基体を形成する第1の工程と、第1の工程で形成された基体の表面に機能性単量体を含有する組成物(B)を接触させた状態で重合させることによって組成物(B)より形成される層を形成する第2の工程とにより得られるものである。この機能性物品は、ラジカル重合性単量体を含有する組成物(A)より形成される基体と、その基体上に機能性単量体を含有する組成物(B)より形成される層とが3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンの断片を介して化学的に結合しているものである。
【0020】
上記3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン(以下、BTTBと略記する。)は下記化学式(1)で表される化合物である。
【0021】
【化1】
【0022】
このBTTBは分子内に複数の過酸化物結合を有し、この過酸化物結合は、加熱、光照射や、酸化還元反応などによってラジカルを生じ、ラジカル重合や硬化を容易に開始することができる。特に、BTTBは光分解の量子収率(φ)が約1であり、通常の光重合開始剤と比較して効率が良いため、少ない光照射量で短時間にラジカル重合や硬化を行うことができる。
【0023】
更に、BTTBの複数の過酸化物結合は、逐次でラジカル開裂するため、重合や硬化を2工程で行う場合に第1工程の終了時に過酸化物結合の一部を開裂せずに残存させることができるという利点を有している。このため、組成物(A)より形成される層又は組成物(A)より形成される基体と、組成物(B)より形成される層とを化学的に結合させることができる。
【0024】
従って、この3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンを用いることにより、上層と下層とが断片により化学的に結合して密着性が確保される。
【0025】
そして、機能性単量体から形成される重合物が被膜の表面に高濃度で存在することによって高度な表面機能を発現することができる。
機能性被膜は、ラジカル重合性単量体を含有する組成物(A)(以下、組成物(A)と略記する。)により下層を形成する第1の工程と、第1の工程で形成された下層の表面に機能性単量体を含有する組成物(B)(以下、組成物(B)と略記する。)を接触させた状態で重合させることによって上層を形成する第2の工程からなり、かつBTTBを組成物(A)及び組成物(B)の少なくとも一方に含有させることにより製造することができる。好ましくは、BTTBを組成物(A)に含有させ、かつ第1の工程で下層を硬化させるのがよい。
【0026】
また、機能性物品は、前記組成物(A)を硬化させることにより基体を形成する第1の工程と、第1の工程で形成された基体の表面に機能性単量体を含有する組成物(B)を接触させた状態で重合させることによって組成物(B)より形成される層を形成する第2の工程とにより製造される。
【0027】
まず、下層又は基体について説明する。
下層又は基体に形成される組成物(A)は、ラジカル重合性単量体を必須成分として含有するものであり、好ましくは、組成物(A)がBTTBとラジカル重合性単量体を必須成分として含有するものである。
【0028】
更に、組成物(A)は、ラジカル重合性単量体が、ラジカル重合性基を2個以上有する単量体であってもよい。また、組成物(A)が、更に加水分解性シリル基を有する化合物を含有するものであってもよく、また組成物(A)が更に無機微粒子を含有するものであってもよい。
【0029】
更に、組成物(A)はその他通常用いられる紫外線吸収剤、老化防止剤、レベリング剤、界面活性剤、硬化剤、可塑剤、チタネートやアルミネートなどのカップリング剤などを含有していてもよい。
【0030】
また、必要に応じて溶剤で希釈して用いてもよい。溶剤は、組成物(B)を接触させる前に加熱などによって除去するのが好ましい。
前記BTTBは、分子内に複数の過酸化物結合を有する化合物であり、この過酸化物結合は、加熱、光照射や、酸化還元反応などによってラジカルを生じ、ラジカル重合や硬化を開始することができる。
【0031】
組成物(A)の必須成分であるラジカル重合性単量体は、分子内にビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基などのラジカル重合性基を1個以上有するものであり、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0032】
具体的には、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N,−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド類、フマル酸エステル類、マレイン酸エステル類、酢酸ビニル、スチレン、N−ビニルピロリドンなどのビニル単量体等の単官能単量体、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジアリルカーボネートなどや、不飽和ポリエステル、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエポキシアクリレート等の多官能単量体や重合性オリゴマーなどが挙げられる。これらの中で、ラジカル重合性基は、重合性等の点から(メタ)アクリル基であることが好ましい。
【0033】
また、これらのうち、ラジカル重合性基を2個以上有する単量体を、ラジカル重合性単量体全体の主成分、すなわち50〜100重量%用いると、高強度の下層が得られるため好ましい。
【0034】
組成物(A)中のBTTBの量は特に限定されないが、ラジカル重合性単量体100重量部に対して、1〜500重量部が好ましく、少なすぎると重合や硬化が完結せず、多すぎると硬化後の下層の強度が不足する。
【0035】
組成物(A)中には、更に加水分解性シリル基を有する化合物、無機微粒子などを含有していてもよい。これらを用いると、下層の硬度が上がるため機能性被膜の耐擦傷性などが向上する。
【0036】
また、基材としてガラスを用いる場合には、加水分解性シリル基含有化合物を用いると基材との密着性が向上するため好ましい。
加水分解性シリル基を有する化合物は、アルコキシ基又はハロゲン基置換シリル基を有するものであり、具体的には、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0037】
無機微粒子としては、コロイダルシリカ、アルミナゾルなどが挙げられ、これらの表面は公知の処理方法によって変性されていてもよい。
更に、光照射による場合には、増感剤を含有していてもよい。増感剤としては、チオキサントン類、ケトクマリン類、チオピリリウム塩類などが挙げられる。
【0038】
また、組成物(A)には、熱や光により分解する通常用いられるラジカル重合開始剤を含有していてもよく、また熱や光によるカチオン重合開始剤とエポキシ基やビニルエーテル基などを有するカチオン重合性単量体とを含有していてもよい。
【0039】
また、カルボン酸、水酸基、エポキシ基、イソシアネート基、シリル基などの硬化性基を有する化合物を含有させて、加熱などによる硬化を併用してもよい。この場合、硬化性基を有する化合物がさらに分子内にラジカル重合性基を有するのが好ましい。
【0040】
前記基体を形成する方法としては、例えば、金型や二枚のガラス板とガスケットで組み立てた鋳型などに注入する方法などが挙げられる。この場合は、組成物(B)を接触させる前に硬化させるのが好ましく、シート状、フィルム状、三次元構造物などとして得られる。
【0041】
また、基材に塗布する方法としては、スピンコート、フローコート、スプレーコート、ロールコート、ディップコートなどの塗工法や、凸版、平版、凹版、スクリーン版などの印刷法などが挙げられる。塗布は必要により、全面でも一部分でもよい。
【0042】
基材としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂等の有機系基材や、ガラス、金属等の無機系基材及び有機無機複合材などが挙げられる。
【0043】
基材の形状は特に限定されず、成形品、シート、フィルムなどに適用できる。また、これらの基材には、プライマー処理やコロナ放電処理などの前処理が施されていてもよい。
【0044】
通常は組成物(A)を組成物(B)と接触させる前に完全に又は不完全に硬化して下層又は基体を形成するが、硬化させずに次の工程に用いて組成物(B)と接触させた状態で重合させることによって上層を形成しても良い。
【0045】
硬化させる方法と硬化させない方法の選択は特に限定されず、組成物(A)から形成された下層又は基体の表面に組成物(B)を接触させたときに、均一に溶解しなければよい。
【0046】
硬化させない場合又は不完全に硬化させた場合には、下層が組成物(B)に溶解又は膨潤して重合、硬化することによる弊害として表面の機能を充分に発現できなかったり、白化や凹凸のある表面になってしまう等の問題が生じることがある。
【0047】
従って、完全に硬化するのがより好ましい。完全硬化後にBTTBの複数の過酸化物結合の一部が残るように硬化条件を選ぶことにより、次の工程の組成物(B)中の機能性単量体の重合を開始することができる。従来公知の方法で下層を完全硬化すると、機能性単量体の重合が遅かったり、また、上層と下層の密着性が不充分であるなどの問題があったが、本発明の製造方法では充分な密着性と表面機能を有する被膜を得ることができる。
【0048】
なお、ここで完全な硬化とは、表面を擦ってもすり痕がつかない硬化乾燥(JIS K−5400)の状態になることである。硬化後のラジカル重合性単量体の残存量は5重量%以下が好ましい。
【0049】
硬化させる場合には、酸素による障害を防ぐために、窒素などの不活性ガス雰囲気下で行ったり、シートやフィルムで覆ってもよい。光照射によって硬化させるときに覆いを用いる場合には、光を透過する材質、例えばガラス、石英、透明プラスチック製の板、フィルムなどを用いることができる。
【0050】
硬化させる方法としては、BTTBからラジカルが生じて硬化反応を開始できる方法であればよく、加熱や光照射による方法や、アミン化合物や鉄、コバルト、銅などの金属塩などの存在下での酸化還元反応などが挙げられ、これらを併用してもよい。これらの中では硬化を確実に行うために加熱又は光照射が好ましい。
【0051】
硬化させる場合の条件は、硬化が進行し、かつ過酸化物結合の一部が残存するように選択すればよい。
加熱による場合の温度は、50〜250℃が好ましく、80〜200℃が更に好ましい。また、加熱時間は、化合物(I)の配合量及び温度にもよるが、完全に硬化させる場合には15分〜20時間が好ましい。
【0052】
光照射による場合の光の波長は、200〜800nmが好ましく、250〜400nmが更に好ましい。また、増感剤を併用する場合には、増感剤の吸収に合わせればよい。
【0053】
光照射量は、BTTBの配合量によっても異なるが、完全に硬化させる場合には0.001〜10mJ/cm2 が好ましい。BTTB中の過酸化物結合の光分解は速く、照射量が多すぎると過酸化物結合が全て消失してしまうので、硬化が完結したら照射を止める必要がある。
【0054】
光源としては、高圧水銀灯、低圧水銀灯、ハロゲン灯、キセノン灯、エキシマレーザー、色素レーザー、YAGレーザー、太陽光などが挙げられる。
次に、上層について説明する。
【0055】
上層は、前述した方法により形成された下層の表面に、機能性単量体を必須成分として含有する組成物(B)を接触させた状態で機能性単量体を重合させることにより形成される。
【0056】
この組成物(B)は、機能性単量体のみでもよいが、機能性単量体が溶解しかつ下層が任意に溶解しないような溶媒で希釈して用いてもよい。また、組成物(B)中には、界面活性剤や親水性化合物等の防曇剤、増粘剤等の添加剤を含有していても良い。また、BTTBからの重合を阻害しない範囲内で、他の重合開始剤を含有していてもよい。
【0057】
機能性単量体とは、分子内にラジカル重合性基を1個以上有し、その重合体又は重合体と添加剤の混合物が所望する機能を発現できるものであれば特に限定されない。機能としては、親水性、防曇性、帯電防止性、抗菌性、撥水性、撥油性、防汚性、反射防止性、難燃性、生体適合性などが挙げられる。この発明の機能性被膜又は機能性物品の製造方法によれば、機能性単量体の重合体自体が基材と密着性がないものであっても、密着性の良い機能性被膜が得られる。
【0058】
また、組成物(B)中に、BTTBを含有していてもよい。特に、組成物(A)中にBTTBを含有しない場合には、組成物(B)中にBTTBを含有する必要がある。
【0059】
組成物(B)は、機能性単量体を必須成分として含有するものである。
親水性被膜を得るための機能性単量体としては、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、リン酸基、これらのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、アルキレンオキシド基、アミノ基、アミド基、シアノ基、酸無水物基のいずれかの官能基を1種以上かつ1個以上有する親水性単量体を用いるのが好ましい。
【0060】
親水性単量体を使用した場合には、防曇機能を発現することができる。また、これらの中で、アンモニウム塩やホスホニウム塩を含有する単量体を用いた場合には、帯電防止性や抗菌性の機能を発現することができる。
【0061】
親水性単量体を具体的に示すと、下記の (1)〜(15)の単量体が挙げられる。
(1) (メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネートなどの不飽和カルボン酸類
(2) マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、4−メタクリロキシエチルトリメリット酸無水物などの不飽和酸無水物類
(3) ヒドロキシフェノキシエチル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイドの付加モル数が2〜90のヒドロキシフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイドの付加モル数が2〜90のヒドロキフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ビニルフェノール、ヒドロキシフェニルマレイミドなどのフェノール基含有単量体類
(4) スルホキシエチル(メタ)アクリレート、スチレンスルホン酸、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸などのスルホン酸基含有単量体類
(5) モノ2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートなどのリン酸基含有単量体類
(6) N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類
(7) N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノアルキル(メタ)アクリレート類
(8) 2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類
(9) エチレンオキサイドの付加モル数が2〜98のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイドの付加モル数が2〜98のメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加モル数が2〜98のフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加モル数が1〜4のノニルフェノールモノエトキシレート(メタ)アクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリオキシエチレンのモノ(メタ)アクリレート類
(10) (メタ)アクリル酸のナトリウム塩、スチレンスルホン酸ナトリウム、スルホン酸ナトリウムエトキシ(メタ)アクリレート、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸のナトリウム塩などの酸基含有単量体のアルカリ金属塩類
(11) (メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドなどの四級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート類
(12) アリルグリコール、エチレンオキサイド付加モル数が3〜32のポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノアリルエーテルなどの(メタ)アリル化合物類
(13) N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムなどの環状複素環含有化合物類
(14) アクリロニトリル、メタクリロニトリル、シアン化ビニリデンなどのシアン化ビニル類
(15) 反応性乳化剤。
【0062】
また、撥水性や防汚性を発現させるための機能性単量体としては、パーフルオロアルキル(メタ)アクリレートやポリジメチルシロキシ基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0063】
更に、難燃性を発現させるためには、臭素やリン酸エステル基含有単量体などを用いることができる。
機能性被膜及び機能性物品の製造方法においては、これらの単量体の中から適宜、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0064】
また、機能性単量体として、ラジカル重合性基を2個以上有するものを20〜100重量部含有させることもできる。この場合には、重合によって形成される上層中には機能性単量体の単独重合体が生成しないのでこれらを除去する必要がない。
【0065】
また、重合後の上層中に所望とする機能を更に高めるための添加剤を存在させることもできる。例えば、防曇機能の場合には界面活性剤や親水性化合物、帯電防止機能や抗菌機能の場合には無機系金属微粒子や有機化合物、撥水機能の場合にはフッ素系樹脂微粒子等を挙げることができる。
【0066】
前記ラジカル重合性基を2個以上有する機能性単量体を具体的に示すと、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコール変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビスアクリルアミドなどの親水性単量体、フッ化アルキレンジ(メタ)アクリレートなどのフッ素系単量体、ポリオルガノシロキサンジ(メタ)アクリレートなどのシリコーン系単量体などを挙げることができる。
【0067】
接触させる方法としては、下層の上に組成物(B)を塗布してもよく、また組成物(B)中に浸漬してもよい。塗布する方法としては、前述の下層の組成物(A)の塗布方法と同様の方法が挙げられる。
【0068】
下層に組成物(B)を接触させる際に、下層が組成物(B)に溶解してしまうと、得られる機能性被膜の外観が白化等により悪くなったり、上層が均一な層にならないなどの弊害が生じるおそれがあるため、溶解しないものが好ましい。
【0069】
下層に組成物(B)を接触させて重合させる方法としては、BTTBに由来する過酸化物結合からラジカルが生じて重合を開始できる方法であればよく、前述の下層を硬化させる場合と同様に、加熱や光照射による方法や、酸化還元反応などが挙げられ、これらを併用してもよい。これらの中では加熱及び光照射の少なくとも一方が好ましい。
【0070】
加熱による場合の温度は、50〜250℃が好ましく、80〜200℃が更に好ましい。また、加熱時間は、化合物(I)の配合量及び温度にもよるが、15分〜20時間が好ましい。
【0071】
光照射による場合の光の波長は、200〜800nmが好ましく、250〜400nmが更に好ましい。また、増感剤を併用する場合は、増感剤の吸収に合わせればよく、この範囲に限定されない。光照射量は、0.001〜10mJ/cm2 が好ましい。光源は、前述したものが用いられる。光照射は全面でもよく、またレーザーやフォトマスクにより一部分に上層を形成することもできる。
【0072】
また、機能性単量体を重合させる際に酸素による障害を防ぐために、前述の下層を硬化させる場合と同様に、窒素などの不活性ガス雰囲気下で行ったり、組成物(B)の上をシートやフィルム等で覆ってもよい。光照射によって重合させる場合には光を透過する材質のものを用いるのがよい。
【0073】
さらに、組成物(B)中に増粘剤などを含有する場合には空気中で行うこともできる。
機能性単量体を重合させた後に未反応の機能性単量体や機能性単量体の単独重合体などがある場合には、必要に応じて水や溶剤などによって洗浄することが好ましい。
【0074】
本発明の製造方法によって得られる機能性被膜を有する物品又は機能性物品としては、所望の機能を発現させるものであれば特に限定されない。例えば、機能として防曇性能を発現させる場合を例として挙げると、レンズ、鏡、プリズムなどの光学部品あるいは車輌、船舶、家屋などの窓ガラス、スキーゴーグル、水中メガネ、ヘルメットシールド、計器カバー、農園芸用フィルムなどの用途に用いられる、ガラスやプラスチック成形材料、フィルムの様な透明な材料に適用できる。
【0075】
以上詳述したように、実施形態によれば次のような効果が発揮される。
・ 実施形態の機能性被膜及び機能性物品によれば、使用されるBTTBが分子内に複数の過酸化物結合を有し、ラジカル重合や硬化を容易に開始することができる。特に、BTTBは少ない光照射量で短時間にラジカル重合や硬化を行うことができる。更に、BTTBの複数の過酸化物結合は、重合や硬化を2工程で行う場合に第1工程の終了時に過酸化物結合の一部を開裂せずに残存させることができる。このため、組成物(A)より形成される層又は組成物(A)より形成される基体と、組成物(B)より形成される層とを化学的に結合させることができる。
【0076】
従って、機能性被膜及び機能性物品は、防曇、撥水、抗菌、帯電防止などの機能を有効に発揮することができる。
・ 実施形態の機能性被膜及び機能性物品によれば、組成物(A)又は組成物(B)がBTTBにより効率良くラジカル重合又は硬化されることから、得られる機能性被膜又は機能性物品の外観に優れている。
【0077】
・ 実施形態の機能性被膜及び機能性物品によれば、前述のように組成物(A)より形成される層又は組成物(A)より形成される基体と、組成物(B)より形成される層とが化学的に強固に結合されるとともに、ラジカル重合性単量体を含有する組成物(A)が基材と親和性を有することにより、機能を発現する被膜の密着性を良好に維持することができる。従って、防曇、撥水、抗菌、帯電防止などの機能を長期にわたって持続することができる。
【0078】
・ 実施形態の機能性被膜によれば、組成物(A)及び組成物(B)の少なくとも一方がラジカル重合性基を2個以上有する単量体を含有することにより架橋構造が形成され、組成物(A)及び組成物(B)の少なくとも一方より形成される層の強度を向上させることができる。
【0079】
・ 実施形態の機能性被膜によれば、組成物(A)が、更に加水分解性シリル基を有する化合物を含有することにより、基材としてガラスを用いた場合、ガラスに対する密着性を向上させることができる。
【0080】
・ 実施形態の機能性被膜によれば、無機微粒子により帯電防止機能や抗菌機能を発揮できるとともに、硬度を向上させて耐擦傷性を高めることができる。
・ 実施形態の機能性被膜によれば、防曇剤により透明基材などの表面に優れた防曇機能を発揮させることができる。
【0081】
・ 実施形態の機能性被膜及び機能性物品の製造方法によれば、組成物(A)を重合又は硬化させる第1の工程と、その後組成物(B)を接触させた状態で重合させる第2の工程とにより、機能性被膜又は機能性物品を簡便に得ることができる。
【0082】
【実施例】
次に、実施例及び比較例により前記実施形態をさらに具体的に説明するが、この発明はこれらの例により限定されるものではない。
【0083】
本文中の略号は以下の通りである。
BTTB:3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン
PPZ:ホスファゼン系6官能メタクリレート(出光石油化学社製「出光PPZ」)
KBM503:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製「KBM−503」)
DMAA:N,N−ジメチルアクリルアミド
ATBSNa:アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸(東亜合成社製「ATBS」)のナトリウム塩
QA:メタクリル酸ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(日本油脂社製「ブレンマーQA」)
PM:トリオクチル(4−ビニルベンジル)ホスホニウムクロリド(日本化学工業社製「サイダップスPM−8CMS」)
FA:2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート
MAANa:メタクリル酸のナトリウム塩
A600:ポリエチレングリコールジアクリレート(新中村化学社製「NKエステルA−600」)
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート
MEK:メチルエチルケトン
PGM:プロピレングリコールモノメチルエーテル
OP80:ノニオン系界面活性剤(日本油脂社製「ノニオンOP−80」)
SIA:コロイダルシリカ(日産化学社製「スノーテックスO」)をγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製「KBM−503」)で処理したアクリル変性コロイダルシリカの20%MEK溶液
BUO:t−ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエート(日本油脂製「パーブチルO」)
BPO:ベンゾイルペルオキシド
Darocur1173:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(日本チバガイギー社製)
PPI:1−{4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル}−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンとメチルメタクリレートの重量比1:1の共重合体
(実施例1)
縦10cm、横10cm、厚さ2mmのアクリル板に、下記の塗布液A1を乾燥膜厚が0.5μmになるようにバーコーターを用いて塗布した。次いで、これを60℃で10分間乾燥した後、1kW高圧水銀灯により3秒間光照射して硬化させて下層を形成した。なお、このときの光照射量は0.3J/cm2 であった。
【0084】
塗布液A1: BTTB 0.5重量%、PPZ 1.5重量%、PGM 98重量%
硬化後の塗膜表面はタックフリーであり、また、塗膜の赤外線吸収スペクトル(IR)測定で重合性基が消失しており、活性酸素の測定で過酸化物結合が残っていることを確認した。
【0085】
得られた塗膜上に下記の塗布液B1を塗布し、ガラス板で挟んだ後、1kW高圧水銀灯により5秒間光照射した。このときの光照射量は0.5J/cm2 であった。
【0086】
塗布液B1: DMAA 20重量%、イオン交換水 80重量%
光照射後、水洗、乾燥することにより、無色透明な被膜を得た。
次に、得られた被膜について下記に示す評価方法により物性を評価した。
(1) 塗膜硬度
JIS K−5400に準じた鉛筆引っかき試験を行い、塗膜硬度を鉛筆の硬さで表した。
(2) 密着性
JIS K−5400の碁盤目テープ法に準じて、塗膜をカッターナイフで縦横方向に切断して基材に達するような100個のクロスカット(切断片)を作り、セロハン粘着テープ(ニチバン株式会社製)を貼り付けた。そして、接着面と垂直方向に剥離し、剥がれずに残ったクロスカットの数を次のような記号で表した。
【0087】
○:100、 △:80以上100未満、 ×:80未満
(3) 防曇性
(a)呼気試験
20℃、相対湿度50%の恒温室内で塗膜に息を吹きかけ、曇りの状態を目視によって次の基準にて判定した。
【0088】
○:全く曇らない、 △:やや曇りが見られる、 ×:全面が曇る
(b)蒸気試験
60℃の恒温水槽上の水面から1cmの位置に試験板を固定し、10分後の曇りの状態を目視により次の基準にて判定した。
【0089】
◎:水滴が全くない、 ○:直径5mm以下の水滴がない、 △:直径5mm以下の水滴が部分的にある、 ×:全面に5mm以下の水滴がある
(4) 持続性
試験板を水中に1カ月間浸漬した後、乾燥し、上記の呼気試験及び蒸気試験を行った。
【0090】
以上の結果を表1に示した。
(実施例2)
ポリカーボネート板に、前記塗布液A1を乾燥膜厚が0.5μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、130℃で60分間加熱して硬化させて下層を形成した。硬化後の塗膜表面はタックフリーであり、また、塗膜のIR測定で重合性基が消失しており、活性酸素の測定で過酸化物結合が残っていることを確認した。
【0091】
得られた塗膜上に下記の塗布液B2を塗布し、ガラス板で挟んだ後、130℃で90分間加熱した。
塗布液B2: ATBSNa 30重量%、DMF 70重量%
加熱後、水洗、乾燥することにより、無色透明な被膜を得た。得られた被膜について実施例1と同様に物性を評価した。その結果を表1に示した。
(実施例3)
ガラス板に、下記の塗布液A2を乾燥膜厚が0.5μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、80℃で20分間乾燥した後、1kW高圧水銀灯により3秒間光照射して硬化させて下層を形成した。なお、このときの光照射量は0.3J/cm2 であった。
【0092】
塗布液A2: BTTB 0.5重量%、PPZ 1重量%、KBM503 1重量%、PGM 97.5重量%
硬化後の塗膜表面はタックフリーであり、また塗膜のIR測定で重合性基が消失しており、活性酸素の測定で過酸化物結合が残っていることを確認した。
【0093】
得られた塗膜上に下記の塗布液B3を塗布し、窒素雰囲気下、1kW高圧水銀灯により5秒間光照射した。このときの光照射量は0.5J/cm2 であった。
塗布液B3: MAANa 30重量%、A600 50重量%、TMPTA18重量%、OP80 2重量%
光照射後、表面がタックフリーな無色透明な被膜を得た。得られた被膜について実施例1と同様に物性を評価した。その結果を表1に示した。
(実施例4)
ポリカーボネート板に、下記の塗布液A3を乾燥膜厚が0.5μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、130℃で60分間加熱して硬化させて下層を形成した。硬化後の塗膜表面はタックフリーであり、また塗膜のIR測定で重合性基が消失しており、活性酸素の測定で過酸化物結合が残っていることを確認した。
【0094】
塗布液A3: BTTB 0.5重量%、TMPTA 1.5重量%、SIA1重量%、PGM 97重量%
得られた塗膜上に下記の塗布液B4を塗布し、厚さ50μmのPETフィルムで挟んだ後、1kW高圧水銀灯により5秒間光照射した。このときの光照射量は0.5J/cm2 であった。
【0095】
塗布液B4: QA 40重量%、イオン交換水 60重量%
光照射後、水洗、乾燥することにより、無色透明な被膜を得た。得られた被膜について表面固有抵抗を測定した結果、107 Ωであり、帯電防止性能を有する被膜が形成されていることを確認した。
(実施例5)
ガラス板に、下記の塗布液A4を乾燥膜厚が0.5μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、130℃で60分間加熱して硬化させて下層を形成した。硬化後の塗膜表面はタックフリーであり、また塗膜のIR測定で重合性基が消失しており、活性酸素の測定で過酸化物結合が残っていることを確認した。
【0096】
塗布液A4: BTTB 1重量%、PPZ 1重量%、KBM503 1重量%、PGM 97重量%
得られた塗膜上に下記の塗布液B5を塗布し、ガラス板で挟んだ後、1kW高圧水銀灯により5秒間光照射した。このときの光照射量は0.5J/cm2 であった。
【0097】
塗布液B5: FA 40重量%、エタノール 60重量%
光照射後、エタノール洗浄、乾燥することにより、無色透明な被膜を得た。得られた被膜について接触角を測定した結果110゜であり、撥水性能を有する被膜が形成されていることを確認した。
(実施例6)
アクリル板に、前記塗布液A1を乾燥膜厚が0.5μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、60℃で10分間乾燥した後、1kW高圧水銀灯により3秒間光照射して硬化させて下層を形成した。なお、このときの光照射量は0.3J/cm2 であった。硬化後の塗膜表面はタックフリーであり、また塗膜のIR測定で重合性基が消失しており、活性酸素の測定で過酸化物結合が残っていることを確認した。
【0098】
得られた塗膜上に下記の塗布液B6を塗布し、ガラス板で挟んだ後、1kW高圧水銀灯により5秒間光照射した。このときの光照射量は0.5J/cm2 であった。
【0099】
塗布液B6: PM 40重量%、メタノール 60重量%
光照射後、メタノール洗、乾燥することにより、無色透明な被膜を得た。得られた被膜について抗菌性試験を行った結果、大腸菌、黄色ブドウ球菌ともに減少しており、抗菌性能を有する被膜が形成されていることを確認した。
(実施例7)
ガラス板に、前記塗布液A4を乾燥膜厚が0.5μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、100℃で15分間加熱した後、1kW高圧水銀灯により3秒間光照射して硬化させて下層を形成した。なお、このときの光照射量は0.3J/cm2 であった。硬化後の塗膜表面はタックフリーであり、また塗膜のIR測定で重合性基が消失しており、活性酸素の測定で過酸化物結合が残っていることを確認した。
【0100】
得られた塗膜上に下記の塗布液B7を塗布した後、1kW高圧水銀灯により5秒間光照射した。このときの光照射量は0.5J/cm2 であった。
塗布液B7: ATBSNa 40重量%、ポリグリセリン 10重量%、イオン交換水 49重量%、OP80 1重量%
光照射後、水洗、乾燥することにより、無色透明な被膜を得た。得られた被膜について実施例1と同様に物性を評価した。その結果を表1に示した。
(実施例8)
ポリカーボネート板に、前記塗布液A1を乾燥膜厚が2μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、60℃で10分間乾燥した後、1kW高圧水銀灯により3秒間光照射して硬化させて下層を形成した。なお、このときの光照射量は0.3J/cm2 であった。硬化後の塗膜表面はタックフリーであり、また塗膜のIR測定で重合性基が消失していることを確認した。
【0101】
得られた塗膜上に下記の塗布液B8を塗布し、窒素雰囲気下、1kW高圧水銀灯により5秒間光照射した後、130℃で1時間加熱し、表面がタックフリーな無色透明な被膜を得た。
【0102】
塗布液B8: DMAA 40重量%、A600 40重量%、TMPTA 17重量%、ポリグリセリン 2重量%、OP80 1重量%
得られた被膜について実施例1と同様に物性を評価した。その結果を表1に示した。
(比較例1)
ポリカーボネート板に、下記の塗布液A5を乾燥膜厚が0.5μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、110℃で60分間加熱して不完全に硬化させて下層を形成した。塗膜のIR測定で重合性基が50%残存していることを確認した。
【0103】
塗布液A5: BPO 0.5重量%、TMPTA 2.5重量%、PGM 97重量%
得られた塗膜上に塗布液B1を塗布し、ガラス板で挟んだ後、120℃で90分加熱した。加熱後、水洗、乾燥した。得られた被膜は白く、凹凸もあり、平滑で透明な被膜が得られなかった。
(比較例2)
ポリカーボネート板に、塗布液A5を乾燥膜厚が2μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、110℃で90分間加熱して不完全に硬化させて下層を形成した。塗膜のIR測定で重合性基が10%残存していることを確認した。
【0104】
塗布液A5: BPO 0.5重量%、TMPTA 2.5重量%、PGM 97重量%
得られた塗膜上に塗布液B3を塗布し、ガラス板で挟んだ後、130℃で90分加熱した。得られた被膜について実施例1と同様に物性を評価した。その結果を表1に示した。
(比較例3)
アクリル板に、下記の塗布液A6を乾燥膜厚が0.5μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、60℃で10分間乾燥した後、1kW高圧水銀灯により3秒間光照射して硬化させて下層を形成した。なお、このときの光照射量は0.3J/cm2 であった。硬化後の塗膜表面はタックフリーであり、また塗膜のIR測定で重合性基が消失していることを確認した。
【0105】
塗布液A6: Darocur1173 0.5重量%、TMPTA 1.5重量%、PGM 98重量%
得られた塗膜上に塗布液B1を塗布し、ガラス板で挟んだ後、1kW高圧水銀灯により5秒間光照射した。このときの光照射量は0.5J/cm2 であった。光照射後、水洗、乾燥した。得られた被膜について実施例1と同様に物性を評価した。その結果を表1に示した。
(比較例4)
ポリカーボネート板に、下記の塗布液A7を乾燥膜厚が0.5μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、110℃で60分間加熱して硬化させて下層を形成した。硬化後の塗膜表面はタックフリーであり、また塗膜のIR測定で重合性基が消失しており、活性酸素の測定で過酸化物結合が残っていることを確認した。
【0106】
塗布液A7: BUO 0.5重量%、PPZ 1.5重量%、PGM 98重量%
得られた塗膜上に前記塗布液B2を塗布し、ガラス板で挟んだ後、130℃で90分間加熱した。加熱後、水洗、乾燥した。得られた被膜について実施例1と同様に物性を評価した。その結果を表1に示した。
(比較例5)
アクリル板に、下記の塗布液A8を乾燥膜厚が0.5μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、60℃で10分間乾燥した後、1kW高圧水銀灯により3秒間光照射して硬化させて下層を形成した。なお、このときの光照射量は0.3J/cm2 であった。硬化後の塗膜表面はタックフリーであり、また塗膜のIR測定で重合性基が消失していることを確認した。
【0107】
塗布液A8: PPI 1重量%、TMPTA 1重量%、PGM 98重量%
得られた塗膜上に塗布液B1を塗布し、ガラス板で挟んだ後、1kW高圧水銀灯により5秒間光照射した。この時の光照射量は0.5J/cm2であった。
光照射後、水洗、乾燥した。得られた被膜について実施例1と同様に物性を評価した。結果を表1に示した。
【0108】
【表1】
【0109】
(比較例6)
アクリル板に、塗布液A7を乾燥膜厚が0.5μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、室温で乾燥させて下層を形成した。塗膜表面はタックがあり、また、塗膜のIR測定で重合性基が残っていることを確認した。
【0110】
得られた塗膜上に塗布液B1を塗布し、ガラス板で挟んだ後、1kW高圧水銀灯により5秒間光照射した。この時の光照射量は0.5J/cm2 であった。
光照射後、水洗、乾燥した。得られた被膜は白く、凹凸もあり、平滑で透明な被膜が得られなかった。
(比較例7)
ポリカーボネート板に、下記の塗布液A9を乾燥膜厚が2μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、60℃で10分間乾燥した後、1kW高圧水銀灯により3秒間光照射して硬化させて下層を形成した。なお、このときの光照射量は0.3J/cm2 であった。硬化後の塗膜表面はタックフリーであり、また塗膜のIR測定で重合性基が消失していることを確認した。
【0111】
塗布液A9: PPI 1重量%、PPZ 1重量%、PGM 98重量%
得られた塗膜上に塗布液B8を塗布し、窒素雰囲気下、1kW高圧水銀灯により5秒間光照射した後、130℃で1時間加熱した。得られた被膜の表面はタックがあり、重合が完結していなかった。
(比較例8及び9)
アクリル板2枚に、前記塗布液B1及び塗布液B7をそれぞれ塗布し、ガラス板で挟んだ後、1kW高圧水銀灯により5秒間光照射した。このとき、塗布液はそれぞれゲル化しており、重合が進行していることを確認した。光照射後、水洗、乾燥したが、どちらも呼気で曇り、機能性被膜は形成されていなかった。
【0112】
以上に述べた実施例及び比較例の結果から次のことがわかる。すなわち、比較例2ではベンゾイルペルオキシド(BPO)を使用して機能性被膜を形成したことから、アクリル板に対する機能性被膜の密着性が不良であった。また、比較例3〜5のように下層を第1工程で硬化させた場合には高機能な被膜が形成されず、比較例1及び6のように下層を第1工程で硬化させない場合には得られる被膜の外観が不良であった。さらに、比較例7は重合が完結しておらず、実施例8と比較すると重合が遅かった。また、比較例8及び9のように、下層がない場合には、重合は進行するが、密着性の良い機能性被膜は形成されなかった。
【0113】
これに対して実施例1〜8では、外観、密着性、性能共に良好な被膜が得られた。このことは以下に示す理由によると考えられる。すなわち、BTTBは分子内に複数の過酸化物結合を有する化合物であり、この過酸化物結合は、加熱、光照射や、酸化還元反応などによってラジカルを生じ、ラジカル重合や硬化を開始することができる。
【0114】
特に、BTTBは光分解の量子収率(φ)が約1であり、通常の光重合開始剤と比較して効率が良いため、少ない光照射量で短時間にラジカル重合、硬化を行うことができる。また、BTTBは複数の過酸化物結合を有しているため、上層と下層を化学的に結合することができる。更に、BTTBの複数の過酸化物結合は、逐次でラジカル開裂するため、重合や硬化を2工程で行う場合に第1工程の終了時に過酸化物結合の一部を開裂せずに残存させることができるという利点を有している。
【0115】
なお、前記実施形態より把握される技術的思想について以下に記載する。
・ 前記組成物(A)は、ラジカル重合性基を2個以上有する単量体を主成分とするものである請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の機能性被膜。
【0116】
このように構成した場合、組成物(A)より形成される層の強度を向上させることができる。
・ 前記組成物(A)は組成物(B)に不溶解のものである請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の機能性被膜。
【0117】
このように構成した場合、組成物(B)より形成される層が白化等により外観が低下したり、均一な層にならないなどの弊害を防止することができる。
・ 前記硬化は、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンの過酸化物結合の一部が残存するように行われる請求項7に記載の機能性被膜の製造方法。
【0118】
この製造方法によれば、残存した過酸化物結合により組成物(B)の機能性単量体が重合し、組成物(B)より形成される層が3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンの断片を介して組成物(A)より形成される層と化学的に結合することができる。
【0119】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば次のような優れた効果を奏する。
第1の発明の機能性被膜によれば、防曇、撥水、抗菌、帯電防止などの機能を有効に発揮できるとともに、外観に優れ、かつ機能を発現する被膜の密着性を良好に維持し、前記機能を長期にわたって持続させることができる。
【0120】
第2の発明の機能性被膜によれば、第1の発明の効果に加え、ラジカル重合性単量体を含有する組成物(A)及び機能性単量体を含有する組成物(B)の少なくとも一方より形成される層の強度を向上させることができる。
【0121】
第3の発明の機能性被膜によれば、第1又は第2の発明の効果に加え、基材としてガラスを用いた場合、ガラスに対する密着性を向上させることができる。
第4の発明の機能性被膜によれば、第1乃至第3のいずれかの発明の効果に加え、無機微粒子により帯電防止機能や抗菌機能を発揮できるとともに、硬度を向上させて耐擦傷性を高めることができる。
【0122】
第5の発明の機能性被膜によれば、第1乃至第4のいずれかの発明の効果に加え、防曇剤により透明基材などの表面に優れた防曇機能を発揮させることができる。
【0123】
第6の発明の機能性物品によれば、第1の発明の効果と同様の効果を発揮させることができる。
第7の発明の機能性被膜の製造方法によれば、機能を長期にわたって有効に発揮できる機能性被膜を簡便に得ることができる。
【0124】
第8の発明の機能性被膜の製造方法によれば、機能を長期にわたって有効に発揮できる機能性物品を簡便に得ることができる。
Claims (8)
- 基材表面上に、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンとラジカル重合性単量体を含有する組成物(A)を、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンの複数の過酸化物結合の一部が残るように硬化させることにより組成物(A)より形成される層を形成する第1の工程と、第1の工程で形成された層の表面に機能性単量体を含有する組成物(B)を接触させた状態で重合させることによって組成物(B)より形成される層を形成する第2の工程とにより得られ、基材表面上に被覆される機能性被膜。
- ラジカル重合性単量体を含有する組成物(A)及び機能性単量体を含有する組成物(B)の少なくとも一方が、ラジカル重合性基を2個以上有する単量体を含有する請求項1に記載の機能性被膜。
- ラジカル重合性単量体を含有する組成物(A)が、更に加水分解性シリル基を有する化合物を含有する請求項1又は請求項2に記載の機能性被膜。
- ラジカル重合性単量体を含有する組成物(A)が、更に無機微粒子を含有する請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の機能性被膜。
- 機能性単量体を含有する組成物(B)が、更に防曇剤を含有する請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の機能性被膜。
- 3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンとラジカル重合性単量体を含有する組成物(A)を、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンの複数の過酸化物結合の一部が残るように硬化させることにより基体を形成する第1の工程と、第1の工程で形成された基体の表面に機能性単量体を含有する組成物(B)を接触させた状態で重合させることによって組成物(B)より形成される層を形成する第2の工程とにより得られる機能性物品。
- 3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンとラジカル重合性単量体を含有する組成物(A)を、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンの複数の過酸化物結合の一部が残るように硬化させることにより組成物(A)より形成される層を形成する第1の工程と、第1の工程で形成された層の表面に機能性単量体を含有する組成物(B)を接触させた状態で重合させることによって組成物(B)より形成される層を形成する第2の工程とからなる請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の機能性被膜の製造方法。
- 3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンとラジカル重合性単量体を含有する組成物(A)を、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンの複数の過酸化物結合の一部が残るように硬化させることにより基体を形成する第1の工程と、第1の工程で形成された基体の表面に機能性単量体を含有する組成物(B)を接触させた状態で重合させることによって組成物(B)より形成される層を形成する第2の工程とからなる請求項6に記載の機能性物品の製造方法。
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